(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪実施形態≫
以下、本発明に係る放射線測定装置及び放射線測定方法の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る放射線検出装置の構成を模式的に示した図である。以下では、一例として、ガンマ線を測定するためのガンマカメラ100を備えた放射線測定装置Aについて説明する。
図1に示すように、放射線測定装置Aは、ガンマカメラ100と、光学カメラ200と、距離計300と、コンピュータ400と、を備えて構成される。
【0012】
<ガンマカメラ>
ガンマカメラ100は、放射線検出器101と、フロントエンド回路102と、収集回路103と、遮蔽体104と、ピンホールコリメータ105と、を有している。
放射線検出器101は、自身に入射してくるガンマ線を検出するものであり、複数の放射線検出素子101aが2次元的(m×nのマトリックス状)に配列された位置有感型の検出器である。
ガンマカメラ100を小型・軽量化するために、放射線検出器101は小型であることが好ましい。したがって、放射線検出器101を構成する複数の放射線検出素子101aは、光デバイスを必要としない半導体放射線検出器を素材とすることが好ましい。
【0013】
前記した複数の放射線検出素子101aとして、例えば、シリコン、ゲルマニウム、CdTe、CdZnTe、TlBr、HgI
2、GaAsなどの半導体素子を用いることができる。このように、放射線検出素子101aとして半導体素子を用いた放射線検出器101は、半導体放射線検出器と呼ばれる。
前記した半導体素子(つまり、放射線検出素子101a)にガンマ線が入射した場合、当該半導体素子はガンマ線と相互作用を起こし、フロントエンド回路102にパルス状の電気信号を出力する。
【0014】
ちなみに、複数の放射線検出素子101aとして、NaI(Tl)、CsI(Tl)、GSO(Ce)、LSO(Ce)、BGOなどの結晶シンチレータに光デバイス(光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、ガイガーモードアバランシェフォトダイオードなど)を結合させたものを用いてもよい。
【0015】
フロントエンド回路102は、放射線検出器101から入力される電気信号に、そのガンマ線が検出された放射線検出素子101aの素子IDを対応付け、後段の収集回路103に出力する機能を有している。すなわち、それぞれの放射線検出素子101aには、固有の素子IDが付されている。そして、ガンマ線を検出したというイベント情報(時刻情報も含む)を、放射線検出素子101aの素子IDを対応付けることで、前記したm×nのマトリックスのうちどの放射線検出素子101aによってガンマ線が検出されたかを特定することができる。
【0016】
収集回路103は、フロントエンド回路102から入力される電気信号に対し、前置増幅処理、波形整形処理、ピークホールド処理、AD変換処理などを順次実行し、デジタルの波高値情報に変換する。そして、収集回路103は、前記変換後のデータ(素子ID、検出時刻、放射線のエネルギなどが対応付けられている)を蓄積し、コンピュータ400の制御装置401に出力する。
ちなみに、
図1では、収集回路103と制御装置401との間に介在するインタフェースの図示を省略している。
【0017】
遮蔽体104は、入射孔105hを通過したもの以外のガンマ線が放射線検出器101に入射することを防ぐためのものであり、鉛やタングステンなどガンマ線の遮蔽能力に優れた材料から構成されている。また、遮蔽体104には、前端(ガンマ線の測定対象に臨む側の端部)にピンホールコリメータ105が設置された状態において、矩形状の内部空間が形成されている。
そして、当該内部空間の後端に、前記した放射線検出器101が設置されている。なお、
図1では、遮蔽体104が箱型である場合を示したが、その他の形状(例えば、前端側が四角錐型又は円錐型で、後端側が角型)でもよい。
【0018】
ピンホールコリメータ105は、遮蔽体104の前端に装着され、その中央に入射孔105h(ピンホール)が空けられている。ちなみに、入射孔105hの口径は制御装置401によって調整可能であり、当該口径に応じてガンマ線の検出感度や位置分解能を調整することができる。
ちなみに、前記した口径を狭くすると位置分解能は向上するが、検出感度は低下する傾向がある。
【0019】
放射線源Qから放出されたガンマ線が入射孔105hを介して遮蔽体104の内部に入射すると、放射線検出素子101aがm×nのマトリックス状に配列された放射線検出素子101aの上に像を形成する(放射線検出素子101aのいずれかによりガンマ線が検出される)。そして、当該像に対応する放射線検出素子101aからパルス状の電気信号が出力される。
ちなみに、
図1に示すように、地面付近から放射されたガンマ線は、放射線検出器101の上方に位置する放射線検出素子101aによって検出される。また、被写体の左方から放射されたガンマ線は、放射線検出器101の右方に位置する放射線検出素子101aによって検出される。つまり、上下左右が反転して放射線検出器101で検出される。
【0020】
この放射線検出器101から出力されたパルス状の電気信号は、フロントエンド回路102によって放射線検出素子101aの素子IDと対応付けられ、コンピュータ400の制御装置401に出力される。なお、制御装置401が実行する処理については後記する。
【0021】
<光学カメラ>
光学カメラ200は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラであり、測定対象である被写体を撮像して光学画像を取得するものである。光学カメラ200は遮蔽体104に装着され、後記する回動手段500の回動に応じて、遮蔽体104とともに回動するようになっている。
また、光学カメラ200とガンマカメラ100とは、撮像範囲が一致するように設定されている。これは、制御装置401において光学カメラ200による撮像結果(光学画像)と、ガンマカメラ100による測定結果(放射線源の分布)と、を重ね合わせることでガンマ線源の位置を特定するためである。
光学カメラ200は、入射孔105hの視野内に存在する被写体を撮像し、当該被写体の光学画像を制御装置401に出力する。
【0022】
<距離計>
距離計300は、ピンホール光学系の視野(つまり、入射孔105h及び光学カメラ200の視野)に対応する領域に対し、対象までの距離を測定するものである。距離計300は遮蔽体104に装着され、後記する回動手段500の回動に応じて、遮蔽体104とともに回動するようになっている。
距離計300は、ガンマカメラ100の視野内の各領域を走査することで前記視野内に存在する対象までの距離を計測し、距離情報として制御装置401に出力する。当該距離情報は、制御装置401がガンマカメラ10から入力されるガンマ線の測定データを補正して、空間線量率を演算する際に用いられる。なお、距離計300として、例えばレーザ距離計を用いることができる。
ちなみに、光学カメラ200のピント調整を行う際にも距離を検出することが可能であるから、独立した距離計300を省略することも可能である。
【0023】
また、後記する制御装置401で算出される測定地点での空間線量率への寄与と、距離計300から入力される距離情報とを組み合わせることにより、放射線源Qの絶対強度、例えばベクレル数や表面汚染密度(単位面積当たりのベクレル数)を求めることが可能である。そして、これらの情報を、後記する画像表示装置404に表示させてもよい。
【0024】
<コンピュータ>
コンピュータ400は、通常のパーソナルコンピュータが用いられ、制御装置401と、入力装置(キーボード402及びマウス403)と、画像表示装置404と、を備えている。また、コンピュータ400は、例えばUSBインタフェース(図示せず)を介して、ガンマカメラ100、光学カメラ200、及び距離計300と接続されている。
以下では、制御装置401の機能について説明する。
【0025】
図2は、放射線検出装置の構成のブロック図であり、制御装置の詳細な構成を模式的に示した図である。
図2に示すように、制御装置401は、光学画像生成手段401aと、距離情報演算手段401bと、放射線画像生成手段401cと、画像合成手段401dと、表示制御手段401eと、駆動制御手段401fと、を有している。
【0026】
光学画像生成手段401aは、光学カメラ200から入力されるデータに基づいて光学画像のビットマップデータを生成し、画像合成手段401dに出力する。
距離情報演算手段401bは、距離計300から入力されるデータに基づいて対象までの距離を示す距離情報を生成し、放射線画像生成手段401cに出力する。
放射線画像生成手段401cは、ガンマ線が検出された放射線検出素子101aの素子IDに基づいてガンマ線の入射方向(ガンマ線を検出した放射線検出素子101aの素子IDに対応する。)を特定する。そして、放射線画像生成手段401cは、ガンマカメラ100から入力される情報と、前記した距離情報演算手段401bから入力される距離情報と、に基づいて放射線情報を生成する。
ちなみに、放射線検出素子101aの位置(配列)は、前記した素子IDに対応して予め記憶手段(図示せず)に格納されている。
【0027】
なお、放射線画像生成手段401cは、ガンマ線が一回入射するごとにこのような処理を行う。これによって、ガンマ線の入射方向ごと(放射線検出素子101aごと)の計数率、つまり単位時間当たりのガンマ線の検出回数を算出できる。
【0028】
さらに、放射線画像生成手段401cは、ガンマ線の入射方向や計数率などに基づいて、ガンマ線画像を作成する。ここで、ガンマ線画像とは、例えば、ガンマ線の入射方向が二次元的に表示されるとともに、ガンマ線の入射量が色調別で表示される画像である。これによって、ユーザは、どの方向からどれくらいのガンマ線が入射(飛来)してきているか(つまり、放射線源の位置及びその放射線量)を視覚的に認識できる。
【0029】
また、放射線画像生成手段401cは、ピンホールコリメータ105のピンホール径、放射線検出器101の検出効率、及び距離情報演算手段401bから入力される距離情報に基づいて、ガンマ線のエネルギや計数率を算出する。そして、放射線画像生成手段401cは、前記した計数率を空間線量率に変換する。これによって、測定地点における放射線源20からの空間線量率の寄与を算出することができる。
なお、放射線検出器から入力される検出信号に基づいて、被写体における放射線源の分布を測定する「測定処理手段」は、距離計300と、距離情報演算手段401bと、放射線画像生成手段401cと、を含んで構成される。
【0030】
画像合成手段401d(合成画像生成手段)は、光学画像生成手段401aから入力される光学画像の情報と、放射線画像生成手段401cから入力される放射線画像の情報と、を合成して(つまり、重ね合わせて)合成画像情報を生成し、表示制御手段401eに出力する。
表示制御手段401eは、画像合成手段401dから入力される合成画像情報に基づいて、画像表示装置404に合成画像を表示させる。その結果、
図3に示すように、光学画像とガンマ線画像とが重ね合わされた合成画像が画像表示装置404に表示される。
また、表示制御手段401eは、画像合成手段401dによって生成される複数の合成画像を、回動手段500の回動角度と対応付けて画像表示装置404に表示させる(パノラマ画像として表示させる)機能も有している。なお、当該機能については後記する。
【0031】
駆動制御手段401fは、入力装置(キーボード402、マウス403)を介して入力される指令信号に応じて、回動手段500を所定角度ずつ回動させるものである。また、駆動制御手段401fは、前記回動を行う際の回動角度情報を表示制御手段401eに出力する。この回動角度情報は、画像合成手段401dが、後記するパノラマ画像を生成する際に参照される。
【0032】
図3に示す例では、合成画像において符号Kで示す領域に放射線源が存在することが分かる。また、合成画像の右側に、当該放射線源の空間線量率と、画素の濃淡との対応関係を示す情報が表示されている(
図3の符号Lを参照)。これによって、ユーザは放射線源Q(
図1参照)の位置を視覚的に把握することができる。
また、表示制御手段401eは、回動手段500から入力される回動角度情報に基づいて複数の合成画像を繋ぎ合わせ、画像表示装置404に出力する。なお、当該処理の詳細については後記する。
【0033】
<回動手段>
図1に示す回動手段500は、例えば左右方向(水平方向)に回動可能であり、その回動角度に応じて放射線の測定対象となる領域を変更するものである。
図4は、ガンマカメラ、光学カメラ、距離計、及び回動手段を互いに組み付けた状態の斜視図である。回動手段500は、軸線Gを中心に回動可能であり、前記した駆動制御手段401fからの制御信号に従って所定角度(例えば、60°)ごとに回動するようになっている。
【0034】
ガンマカメラ100(遮蔽体104)が回動手段500に設置された状態において回動手段500が回動すると、これにともなって遮蔽体104も回動する。すなわち、ガンマカメラ100と、当該ガンマカメラ100に装着される光学カメラ200及び距離計300と、は回動手段500との相対位置が不変のまま回動する。
【0035】
例えば、ガンマカメラ100の水平方向の視野角が60°である場合、制御装置401は、回動手段500を60°(=視野角60°)ずつ回動させることによって合計6回の放射線測定を行う。つまり、回動角度として60°を1ステップとし、回動するたびに放射線の測定処理及び撮像処理を順次実行する。
この場合、入力装置(キーボード402、マウス403:
図1参照)を介した入力操作に応じて、制御装置401は、設置された際の方向で1回目の放射線測定を実行する。つまり、制御装置401は、ガンマカメラ100から入力される電気信号と、距離計300から入力される距離情報と、に基づいて放射線の分布画像を生成し、光学カメラ200によって取得される光学画像に重ね合わせた合成画像を生成する。
【0036】
次に、制御装置401は、モータ(図示せず)を駆動させて回動手段500を右向きに60°回動させ、1回目の測定領域(領域P1:
図5参照)と隣り合う領域(領域P2:
図5参照)がガンマカメラ100の視野に入るようにする。この状態において制御装置401は、前記と同様の方法で2回目の放射線測定を実行する。
2回目の放射線測定が終了すると、制御装置401は回動手段500をさらに右向きに60°回動させ、2回目の測定領域と隣り合う領域(領域P3:
図5参照)がガンマカメラ100の視野に入るようにする。このようにして、制御装置401は、6回の放射線測定処理を順次実行する。
【0037】
前記したようにガンマカメラ100の視野角は60°であり、回動手段500を水平方向に60°ずつ回動させて6回の放射線測定を実行することで、領域P1〜P6のガンマ線画像及び光学画像を取得できる。制御装置401は、1つの領域の撮像が終了するたびにガンマ線画像と光学画像とに基づく合成画像の情報を生成し、記憶手段(図示せず)に格納する。
【0038】
そして、制御装置401は、6回目の測定が終了すると、前記した記憶手段から合成画像の情報を読み出し、合成画像が水平方向(実空間での水平方向)において連続するように6枚分の合成画像を繋ぎ合わせてパノラマ画像を生成する。そして、制御装置401は、前記したパノラマ画像を画像表示装置404に表示させる。
図6に示すようなパノラマ画像(360°全方位のガンマ線画像および光学画像の重ね合わせ図)を見ることによってユーザは、測定地点を取り囲む環状領域P1〜P6(
図5参照)の放射線量を正確に把握することができる。
【0039】
ちなみに、屋外での測定を想定した場合、一般に空から飛来するガンマ線は少ない。したがって、前記した水平方向の回転だけで(上下方向にチルトさせて全ての立体角をカバーせずとも)測定地点での空間線量率を適切に算出することができる。
また、
図6の符号S1で示すように、制御装置401は、領域P1〜P6において放射線が集中的に分布している放射線領域を抽出し、入力装置(マウス403:
図1参照)を介して当該放射線領域を選択できるようにグループ化する。ちなみに、
図5に示す例では、領域P1〜P6において4つの放射線領域が存在する。
【0040】
この場合において、制御装置401は、選択された領域S1から測定地点の空間線量率への寄与を算出し、空間線量率と併せて表示する。
図6に示すように、制御装置401は、「空間線量率:3.0μSv/h」、「対象領域から空間線量率への寄与:1.0μSv/h」のように画像表示装置404に表示させている。ちなみに、前記した「対象領域」とは、入力手段(マウス403:
図1参照)を介してユーザにより選択された領域S1を意味している。
これによって、どこにある放射線源が測定地点の空間線量率に対してどのくらい寄与しているのか、という定量的な情報を得ることができる。
【0041】
<効果>
本実施形態によれば、ガンマカメラ100から入力される放射線分布データと、光学カメラ200から入力される光学画像データとに基づいて、放射線画像と光学画像とを重ね合わせて合成画像を生成し、画像表示装置404に表示させることができる。
これによってユーザは、放射線源の正確な位置、及び放射線源における放射線の強さをリアルタイムで把握でき、当該放射線源の除去又は遮蔽を適切に遂行することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、回動手段500を回動させて所定の回動角度ごとに放射線を測定し、被写体(測定対象領域)を撮像することで、複数の合成画像を得ることができる。さらに前記した複数の合成画像を繋ぎ合わせることによってパノラマ画像を生成し、画像表示装置404に表示させることができる。これによって、ユーザは、測定地点を取り囲む全方位(環状領域)の放射線源の分布を正確に把握することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、測定地点を取り囲む全方位の放射線源の分布を用いて、当該測定地点における空間線量率を算出し、画像表示装置404に表示させることができる。さらに、ユーザが選択した対象領域(
図6に示す領域S1)から空間線量率への寄与を求め、前記した空間線量率と併せて画像表示装置404に表示する。これによって、ユーザは、どこにある放射線源が測定地点の空間線量率に対してどのくらい寄与しているのか、という定量的な情報を容易に得ることができる。
【0044】
以上より、本実施形態によれば、特定の放射線源を除去又は遮蔽した場合に空間線量率がどのくらい低下するかという推測や、目標となる空間線量率を達成するためにどの放射線源を除去又は遮蔽するべきかという作業計画を立案することが可能となる。したがって、作業環境又は生活環境を改善するための空間線量率低減作業への指針を与えることができる。
【0045】
≪変形例≫
以上、本発明に係る故障検出装置について前記実施形態により説明したが、本発明の実施態様はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、前記した回動手段500では左右方向(水平方向)のみで回動する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、回動手段500を、左右方向に加えて上下方向にチルトできる機構としてもよい。
【0046】
これによって、全ての立体角(つまり、4π)に対してガンマ線画像と光学画像とを取得することができる。この場合において、測定地点での空間線量率への寄与を、測定地点を中心とする球状の領域で加算すると、測定地点での正確な空間線量率を求めることができる。
【0047】
また、前記実施形態に係る放射線測定装置Aが、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)によって放射線の測定位置を特定するための信号を受信する受信機(図示せず)を備える構成としてもよい。この場合において制御装置401は、前記受信機によって受信される信号に基づいて放射線の測定位置(放射線測定装置Aの設置位置)を特定し、当該測定位置における空間線量率と対応付けて記憶手段(図示せず)に格納する。
これによって、屋外で多点の測定を実施する際に、どの地点での情報であるのかを記録する手間を省くことができる。また、得られた情報を地図データと組み合わせることで、放射線源が広範囲に分布している際にその様子を地図データ上に展開して可視化することが可能となる。
【0048】
なお、全地球測位システムに代えて、方位磁針を設置してもよい。これによって、手動で回動手段500を回動させる際、ガンマカメラ100が備える入射孔105hの軸線方向を把握し、測定地点を囲む全方位の放射線量を適切に測定できる。
また、全地球測位システムに加えて、方位磁針を設置してもよい。そして、全地球測位システムによって放射線検出装置Aの設置位置を特定し、方位磁針によって入射孔105hが臨む方位を特定する。これによって、放射線検出装置Aの測定対象となる領域が、地図上のどの領域に対応するかを特定することができる。この場合において、制御装置401は、入力手段(キーボード402、マウス403:
図1参照)を介したユーザの操作に応じて、入射孔105が臨む方位に関する情報(方位情報)を受け付ける。そして、制御装置401は、放射線測定処理を実行する度に、放射線検出装置Aの設置位置に関する情報(位置情報)と、前記した方位情報とを、放射線検出装置Aの設置位置における空間線量率に対応付けて記憶手段(図示せず)に格納する。当該記憶手段に格納される情報を用いて、放射線分布を示す地図データを容易に作成することができる。
なお、前記した方位磁針の代わりに地磁気センサ(方位検出手段)を設置してもよい。この場合、制御装置401は、放射線測定処理を実行する度に、地磁気センサから入力される方位情報を受け付ける。
【0049】
また、前記実施形態では、入力手段(キーボード402、マウス403)を介して選択された対象領域(領域S1:
図6参照)について、測定地点での空間線量率の寄与を絶対値(μSv/h単位)として算出する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、測定地点での空間線量率の寄与を、空間線量率に対する相対値(%単位)で算出してもよい。
【0050】
また、遮蔽体104で放射線検出器101を囲ったとしても、透過力の強い宇宙線などが遮蔽体104を透過し、バックグラウンドとなる可能性がある。
このようなバックグラウンドの影響を低減し、より高精度な測定を実施するために、バックグラウンド測定を併せて実施してもよい。この場合、ピンホールコリメータ105の入射孔105hを塞ぐように遮蔽体(図示せず)を設置することでバックグラウンド測定を実施する。その後、入射孔105hを開けた状態で放射線を検出し、前記バックグラウンド測定の検出結果を差し引くことで、バックグラウンドの影響を打ち消すようにする。
【0051】
また、測定地点の空間線量率への寄与が小さいと事前にわかっている方向(例えば、海や遮蔽体のある方向など)がある場合、必ずしも全方位のガンマ線画像を取得しなくても空間線量率及びその内訳(対象領域ごとの寄与)を算出できる。
【0052】
また、前記実施形態では、回動手段500が、1回目の測定が終了した時点で自動的に回動する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、1回の測定ごとにユーザが手動で回動手段500を回転させ、入力装置から1回分の測定開始の操作を実行する構成としてもよい。
この場合、回動手段500は、容易に規定の角度(例えば、60°)だけ回転させられる機構とすることが好ましい。
図7は、本発明の変形例に係る放射線検出装置における回動手段の分解斜視図(模式図)である。
【0053】
図7に示すように、回動手段500は、円盤状を呈している支持部材501及び回動部材502を有し、これらが同軸で組み付けられている。支持部材501は、回動部材502を下方から支持し、回動部材502は、ユーザによる手動の操作に応じて所定角度(例えば、60°)ずつ回動する構成となっている。
図7に示す例では、支持部材501には、径方向に延びる6条の溝部501a,501b,…,501fが、回転方向において60°ごとに形成されている。なお、溝部501a,501b,…,501fは、設置状態において上方に臨んでいる。
一方、回動部材502の下面には、前記した溝部の形状に対応し、下向きに突出する突起部502aが設けられている。これによって、ユーザは、溝部501a,501b,…,501fに対応する位置で回動部材502を容易に固定することができる。
なお、このように溝部501a,501b,…,501f及び突起部502aを形成しなくとも、回動部材502に60°ごとに印を設け、これを目印としてユーザが手動で回動させてもよい。
【0054】
また、回動手段500の回動角度は、ガンマカメラ100の水平方向の視野と同じである必要はなく、これよりも小さく設定してもよい。例えば、ガンマカメラ100の視野角が60°である場合において回動手段500を51度ずつ回動させ、7回の測定で全方位をカバーするようにしてもよい。
そして、視野の端(対象領域が隣接する箇所)において2つのガンマ線画像が重複する部分については、2回の測定の平均値を採用する。これによって、測定精度をさらに向上させることができる。
【0055】
また、放射線検出器101は1つに限定される必要はなく、異なる方向を視野とする複数の放射線検出器およびピンホールコリメータを1つの放射線検出装置に搭載してもよい。例えば、背中合わせに2つの放射線検出器部およびピンホールコリメータを搭載することによって、放射線の測定回数を3回に減らすことができ、半分の所要時間で測定地点の空間線量率を算出できる。
【0056】
また、前記実施形態では、ガンマ線の入射方向を算出する手法として、ピンホールコリメータ105を用いたピンホール光学系を例に説明したが、これに限らない。すなわち、例えば、マルチピンホールコリメータ、符号化開口マスク、コンプトン運動学を利用した光学系などを用いても、前記実施形態と同様の機能を実現することができる。
【0057】
また、前記実施形態では、平面的な画像の情報取得する光学カメラ200を用いる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、光学カメラとして、立体的な画像を取得可能なものを用いてもよい。この場合、画像表示装置404を立体的な画像を表示できるようにすると、ユーザは放射線源の分布の様子をより認識しやすくなる。
【0058】
例えば、符号化開口マスクを用いた光学系を採用した場合、放射線画像についても立体的な画像を取得することが可能である。ピンホール光学系の場合は立体的な放射線画像が取得できないが、放射線源の位置を推定し、光学画像と放射線画像を重ね合わせて表示させてもよい。前記推定方法として、例えば、距離計300で得られた値を放射線源の位置とする方法や、放射線の入射方向に沿って伸びる直線が、光学カメラで得られた立体的画像内の構造(例えば壁や地面)とぶつかる点に放射線源があると考える方法を用いてもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、制御装置401が空間線量率を算出して画像表示装置404に表示させる場合について説明したが、これに限らない。例えば、制御装置401が、入射孔105hを介して入射する放射線のエネルギを算出し、放射線源の分布として画像表示装置404に表示させてもよい。これによって、放射線のエネルギ分布を正確に把握することができる。
また、前記実施形態では、放射線としてガンマ線を検出する場合について説明したが、これに限らず、その他の放射線(例えば、中性子線)を検出してもよい。