(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向を定義する。
【0029】
まず、
図1から
図14までを用いて、本発明の第一の実施形態に係る潤滑油供給機構を具備するエンジン1の構成について説明する。
【0030】
本実施形態に係るエンジン1は、直列4気筒16バルブのDOHCガソリンエンジンである。以下では、前後方向に並んだ4つの気筒のうち1つの気筒に主に着目して説明を行う。エンジン1は、主としてシリンダヘッド10、シリンダヘッドカバー20、動弁機構30、カムキャップ50及び給油部材100を具備する。
【0031】
図1、
図3及び
図5に示すシリンダヘッド10は、シリンダブロック(不図示)と共にエンジン1の主たる構造体となるものである。シリンダヘッド10は、前記シリンダブロック(不図示)の上部に固定される。シリンダヘッド10は、主として吸気側軸受部12、排気側軸受部14、オイルギャラリー16及びカムジャーナル用油路18を具備する。
【0032】
図1及び
図5に示す吸気側軸受部12は、後述する吸気側カムシャフト40を下方から回動可能に支持するものである。吸気側軸受部12は、正面視において上方が開放された半円状の凹部となるように、シリンダヘッド10の左部に形成される。
【0033】
図1、
図3及び
図5に示す排気側軸受部14は、後述する排気側カムシャフト42を下方から回動可能に支持するものである。排気側軸受部14は、正面視において上方が開放された半円状の凹部となるように、シリンダヘッド10の右部に形成される。
【0034】
図1及び
図3に示すオイルギャラリー16は、エンジン1の各部(例えば、後述するラッシュアジャスタ38等)へと潤滑油を案内するための油路である。オイルギャラリー16は、シリンダヘッド10の左右側壁近傍を前後方向に通るように形成される。
【0035】
図3に示すカムジャーナル用油路18は、シリンダヘッド10の右部に形成され、排気側軸受部14へと潤滑油を案内するための油路である。カムジャーナル用油路18の一端はオイルギャラリー16と連通され、カムジャーナル用油路18の他端はシリンダヘッド10の排気側軸受部14と連通される。
【0036】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、カムジャーナル用油路18はシリンダヘッド10の左部にも形成され、左側のオイルギャラリー16と吸気側軸受部12とを連通している。
【0037】
図1に示すシリンダヘッドカバー20は、シリンダヘッド10の上部を覆うものである。シリンダヘッドカバー20はシリンダヘッド10の上部に載置され、ボルト等によって適宜固定される。
【0038】
図1に示す動弁機構30は、エンジン1の吸気ポート及び排気ポート(不図示)を所定のタイミングで開閉させるためのものである。動弁機構30は、主として吸気バルブ32、排気バルブ34、ロッカアーム36・36、ラッシュアジャスタ38・38、吸気側カムシャフト40及び排気側カムシャフト42を具備する。
【0039】
吸気バルブ32は、エンジン1の吸気ポート(不図示)を開閉するものである。吸気バルブ32は、その長手方向を略上下方向に向けて配置される。吸気バルブ32の下端は前記吸気ポートまで延設される。
【0040】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、吸気バルブ32は1つの気筒に対して前後方向に並べて2つ設けられている。
【0041】
排気バルブ34は、エンジン1の排気ポート(不図示)を開閉するものである。排気バルブ34は、その長手方向を略上下方向に向けて配置される。排気バルブ34の下端は前記排気ポートまで延設される。
【0042】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、排気バルブ34は1つの気筒に対して前後方向に並べて2つ設けられている。
【0043】
ロッカアーム36・36は、吸気バルブ32及び排気バルブ34を開閉駆動させるためのものである。ロッカアーム36・36の一端は、それぞれ吸気バルブ32及び排気バルブ34の上端に上方から当接される。
【0044】
ラッシュアジャスタ38・38は、バルブクリアランスを調整するためのものである。ラッシュアジャスタ38・38は、それぞれロッカアーム36・36の他端に下方から当接される。
【0045】
図1、
図2及び
図4に示す吸気側カムシャフト40は、本発明に係るカムシャフトの実施の一形態であり、ロッカアーム36を所定のタイミングで揺動させることで、吸気バルブ32を開閉駆動させるためのものである。吸気側カムシャフト40は、その長手方向を前後方向に向けた状態で、シリンダヘッド10の吸気側軸受部12に載置される。吸気側カムシャフト40は、主としてカム40a・40aを具備する。
【0046】
カム40a・40aは、回転中心(吸気側カムシャフト40の中心)から外周までの距離が一定でない板状に形成された部分である。カム40a・40aは、吸気側カムシャフト40のうちシリンダヘッド10の吸気側軸受部12に載置された部分(カムジャーナル)よりも前方に2つ並べて形成される。当該カム40a・40aは、吸気バルブ32側のロッカアーム36に上方から当接される。
【0047】
図1、
図2及び
図4に示す排気側カムシャフト42は、本発明に係るカムシャフトの実施の一形態であり、ロッカアーム36を所定のタイミングで揺動させることで、排気バルブ34を開閉駆動させるためのものである。排気側カムシャフト42は、その長手方向を前後方向に向けた状態で、シリンダヘッド10の排気側軸受部14に載置される。排気側カムシャフト42は、主としてカム42a・42a及びシャフト内油路42bを具備する。
【0048】
カム42a・42aは、回転中心(排気側カムシャフト42の中心)から外周までの距離が一定でない板状に形成された部分である。カム42a・42aは、排気側カムシャフト42のうちシリンダヘッド10の排気側軸受部24に載置された部分(カムジャーナル)よりも前方に2つ並べて形成される。当該カム42a・42aは、排気バルブ34側のロッカアーム36に上方から当接される。
【0049】
図3に示すシャフト内油路42bは、排気側カムシャフト42のうちシリンダヘッド10の排気側軸受部24に載置された部分(カムジャーナル)に形成され、当該排気側カムシャフト42を貫通する油路である。シャフト内油路42bは、排気側カムシャフト42が所定の位置まで回転した際に、その一端(一方の開口部)がシリンダヘッド10のカムジャーナル用油路18と対向し、かつ、その他端(他方の開口部)が左方を向くように形成される。
【0050】
なお、本実施形態においては図示を省略しているが、吸気側カムシャフト40にも排気側カムシャフト42のシャフト内油路42bと同様の油路が形成される。
【0051】
図1から
図6までに示すカムキャップ50は、シリンダヘッド10の上部に固定され、当該シリンダヘッド10との間で吸気側カムシャフト40及び排気側カムシャフト42を保持するものである。カムキャップ50は、長手方向を左右方向に向けた略直方体状に形成される。
カムキャップ50は、主として吸気側軸受部52、吸気側凹部54、吸気側貫通孔56、吸気側連通油路58、排気側軸受部60、排気側凹部62、排気側貫通孔64及び排気側連通油路66を具備する。
【0052】
図4から
図6までに示す吸気側軸受部52は、吸気側カムシャフト40を上方から回動可能に支持するものである。吸気側軸受部52は、正面視において下方が開放された半円状の凹部となるように、カムキャップ50の左部に形成される。当該カムキャップ50の吸気側軸受部52は、シリンダヘッド10の吸気側軸受部12と対向する位置に形成され、当該吸気側軸受部52及び吸気側軸受部12の間に吸気側カムシャフト40が回動可能に支持(保持)される。
【0053】
吸気側凹部54は、本発明に係るガイド部及び凹部の実施の一形態であり、カムキャップ50の上面の左部(左右方向において、吸気側軸受部52のすぐ右側)に形成される。吸気側凹部54は、その周囲よりも下方に所定深さだけ凹むように、かつ上方、前方及び後方が開放されるように形成される。
【0054】
図5及び
図6に示す吸気側貫通孔56は、カムキャップ50をシリンダヘッド10に固定するために後述するボルト150が挿通されるボルト穴である。吸気側貫通孔56は、吸気側凹部54の底面の左部からカムキャップ50の下面までを貫通するように形成される。言い換えれば、吸気側貫通孔56の上端の周囲に吸気側凹部54が形成されることになる。吸気側貫通孔56の直径は、後述するボルト150の軸部の直径よりも大きくなるように、すなわち、吸気側貫通孔56にボルト150の軸部を挿通した際に、当該吸気側貫通孔56とボルト150との間に隙間ができるように形成される。
【0055】
図6に示す吸気側連通油路58は、吸気側軸受部52と吸気側貫通孔56とを連通する油路である。吸気側連通油路58は、カムキャップ50の下面の前後略中央部に形成される。吸気側連通油路58の一端は吸気側軸受部52と連通され、吸気側連通油路58の他端は吸気側貫通孔56と連通される。
【0056】
図3から
図6までに示す排気側軸受部60は、排気側カムシャフト42を上方から回動可能に支持するものである。排気側軸受部60は、正面視において下方が開放された半円状の凹部となるように、カムキャップ50の右部に形成される。当該カムキャップ50の排気側軸受部60は、シリンダヘッド10の排気側軸受部14と対向する位置に形成され、当該排気側軸受部60及び排気側軸受部14の間に排気側カムシャフト42が回動可能に支持(保持)される。
【0057】
排気側凹部62は、本発明に係るガイド部及び凹部の実施の一形態であり、カムキャップ50の上面の右部(左右方向において、排気側軸受部60のすぐ左側)に形成される。排気側凹部62は、その周囲よりも下方に所定深さだけ凹むように、かつ上方、前方及び後方が開放されるように形成される。
【0058】
図3、
図5及び
図6に示す排気側貫通孔64は、カムキャップ50をシリンダヘッド10に固定するために後述するボルト150が挿通されるボルト穴である。排気側貫通孔64は、排気側凹部62の底面の右部からカムキャップ50の下面までを貫通するように形成される。言い換えれば、排気側貫通孔64の上端の周囲に排気側凹部62が形成されることになる。排気側貫通孔64の直径は、後述するボルト150の軸部の直径よりも大きくなるように、すなわち、排気側貫通孔64にボルト150の軸部を挿通した際に、当該排気側貫通孔64とボルト150との間に隙間ができるように形成される。
【0059】
図3から
図6までに示す排気側連通油路66は、排気側軸受部60と排気側貫通孔64とを連通する油路である。排気側連通油路66は、カムキャップ50の下面の前後略中央部に形成される。排気側連通油路66の一端は排気側軸受部60と連通され、排気側連通油路66の他端は排気側貫通孔64と連通される。
【0060】
図1から
図5までに示す給油部材100は、潤滑油を吸気側カムシャフト40のカム40a及び排気側カムシャフト42のカム42aへと案内するためのものである。
【0061】
なお、吸気側カムシャフト40のカム40aへと潤滑油を案内する給油部材100(左側に配置される給油部材100)の構成は、排気側カムシャフト42のカム42aへと潤滑油を案内する給油部材100(右側に配置される給油部材100)の構成と左右対称であるため、以下では特に右側に配置される給油部材100についてのみ詳細に説明し、左側に配置される給油部材100については説明を省略する。
【0062】
給油部材100は、1枚の板材を折り曲げて形成される部材である。給油部材100は、主として第一平板部110、第二平板部120及び連結部140を具備する。
【0063】
なお、給油部材100は1枚の板材を折り曲げて形成される部材であるが、
図7から
図10までには、折り曲げられる前の状態の給油部材100を示している。
【0064】
また、
図2に示すように、給油部材100はエンジン1の複数の気筒(本実施形態においては、4つの気筒)に亘って一体的に形成される。給油部材100は、
図7及び
図11に示すように、4つの気筒にそれぞれ対応するように前後方向に並べられた4つの部分P・P・・・から構成されており、各部分P・P・・・は略同一の構成となっている。よって以下では、給油部材100の4つの部分P・P・・・のうち1つの部分Pに主に着目して説明を行う。
【0065】
図7から
図10までに示す第一平板部110は、給油部材100が折り曲げられた後に当該給油部材100の上部を構成する板上の部分である。第一平板部110は、その板面を上下方向に向けた状態で配置される。第一平板部110は、平面視略L字状となるように形成される。より詳細には、第一平板部110は、左右方向に向けられた短辺と、当該短辺の右端部から前方に延設された長辺と、を有する形状となるように形成される。
第一平板部110は、主として貫通孔112、第一油路114、第二油路116及び第三油路118を具備する。
【0066】
貫通孔112は、第一平板部110を上下方向に貫通する孔である。貫通孔112は、第一平板部110の短辺の左端部近傍に形成される。
【0067】
第一油路114は、本発明に係る油路の実施の一形態であり、第一平板部110の上面(給油部材100が折り曲げられる前(
図7から
図10までの状態)の上面)を凹ませることで形成された、潤滑油を案内するための油路である。第一油路114は第一平板部110の上面を凹ませることで形成されるため、当該第一平板部110の下面(第一油路114に対応する部分)は下方に向かって突出することになる。第一油路114は、貫通孔112の右端部から所定距離だけ右方に離間した位置からさらに右方へ延設され、当該右方へ延設された右端部から前方へ延設され、当該前方へ延設された前端部から左方へ延設される。
【0068】
第二油路116は、本発明に係る油路の実施の一形態であり、第一平板部110の上面(給油部材100が折り曲げられる前(
図7から
図10までの状態)の上面)を凹ませることで形成された、潤滑油を案内するための油路である。第二油路116は第一平板部110の上面を凹ませることで形成されるため、当該第一平板部110の下面(第二油路116に対応する部分)は下方に向かって突出することになる。第二油路116の一端は、第一油路114の一端(左前端)に連通される。第二油路116は、第一油路114の一端(左前端)から後方へ延設され、当該後方へ延設された後端部から左方へ延設される。
【0069】
第三油路118は、本発明に係る油路の実施の一形態であり、第一平板部110の上面(給油部材100が折り曲げられる前(
図7から
図10までの状態)の上面)を凹ませることで形成された、潤滑油を案内するための油路である。第三油路118は第一平板部110の上面を凹ませることで形成されるため、当該第一平板部110の下面(第三油路118に対応する部分)は下方に向かって突出することになる。第三油路118の一端は、第一油路114の一端(左前端)に連通される。第三油路118は、第一油路114の一端(左前端)から前方へ延設され、当該前方へ延設された前端部から左方へ延設される。
【0070】
上述の如く、第二油路116及び第三油路118は、第一油路114の一端(左前端)から分岐するようにして形成される。また、第二油路116及び第三油路118は、平面視において、第一油路114からの分岐点(第一油路114の一端)を通る左右方向の軸について前後方向に対称となるように形成される。また、第二油路116及び第三油路118の断面形状は互いに同一形状となるように形成される。
【0071】
第二平板部120は、給油部材100が折り曲げられた後に当該給油部材100の下部を構成する板上の部分である。第二平板部120は、その板面を上下方向に向けた状態で配置される。第二平板部120は、第一平板部110と左右略対称な平面視略L字状となるように形成される。より詳細には、第二平板部120は、左右方向に向けられた短辺と、当該短辺の左端部から前方に延設された長辺と、を有する形状となるように形成される。
第二平板部120は、主として貫通孔122、切欠部124、第一吐出口126、第二吐出口128及びガイド部130・130を具備する。
【0072】
貫通孔122は、第二平板部120を上下方向に貫通する孔である。貫通孔122は、第二平板部120の短辺の右端部近傍であって、給油部材100を折り曲げた際に平面視において第一平板部110の貫通孔112と重複する位置に形成される(
図13(a)参照)。貫通孔122の直径は、後述するボルト150の軸部の直径よりも大きくなるように、すなわち、貫通孔122にボルト150の軸部を挿通した際に、当該貫通孔122とボルト150との間に隙間ができるように形成される。
【0073】
切欠部124は、第二平板部120の貫通孔122の左端部を左方に所定長さだけ切り欠くように形成される。切欠部124の左端は、給油部材100を折り曲げた際に平面視において第一平板部110の第一油路114と重複する位置まで延設される(
図13(a)参照)。
【0074】
第一吐出口126は、第二平板部120を上下方向に貫通し、潤滑油を当該第二平板部120の下方へと吐出するための孔である。第一吐出口126は、給油部材100を折り曲げた際に平面視において第一平板部110の第二油路116の他端と重複する位置に形成される(
図13(b)参照)。
【0075】
第二吐出口128は、第二平板部120を上下方向に貫通し、潤滑油を当該第二平板部120の下方へと吐出するための孔である。第二吐出口128は、給油部材100を折り曲げた際に平面視において第一平板部110の第三油路118の他端と重複する位置に形成される。
第二吐出口128の形状(断面形状)は、第一吐出口126と同一形状となるように形成される。
【0076】
ガイド部130・130は、カムキャップ50に対する給油部材100の位置決めを行うためのものである。ガイド部130・130は、第二平板部120の短辺の前部及び後部をそれぞれ下方に凹ませることで形成される。
【0077】
連結部140は、第一平板部110と第二平板部120とを連結する部分である。連結部140は、第一平板部110の右端の一部と第二平板部120の左端の一部とを連結するように、当該第一平板部110及び第二平板部120と一体的に形成される。
【0078】
以下では、給油部材100の製造方法について説明する。
【0079】
給油部材100は、まず一枚の板材をプレス加工で打ち抜くことによってその外形や貫通孔等が形成される。さらに次のプレス加工によって当該給油部材100を塑性変形させることによって、油路(第一油路114、第二油路116及び第三油路118)及びガイド部130が形成される(
図7等参照)。
【0080】
次に、給油部材100は、連結部140・140・・・を中心として、第一平板部110が第二平板部120の上に重なるように折り曲げられる(
図11参照)。給油部材100は、折り曲げられた状態でプレス加工によってかしめられ、第一平板部110と第二平板部120とが当接した状態に保持される。当該給油部材100がかしめられた部分には、カシメ部160が形成される(
図12及び
図13(c)参照)。
【0081】
このように製造された給油部材100において、第二平板部120の貫通孔122及び切欠部124は、第一平板部110の第一油路114と連通される(
図13(a)参照)。また、第一平板部110の第二油路116は、第二平板部120の第一吐出口126と連通される(
図13(b)参照)。同様に、第一平板部110の第三油路118は、第二平板部120の第二吐出口128と連通される。これによって、貫通孔122から切欠部124、第一油路114、第二油路116及び第三油路118を介して第一吐出口126及び第二吐出口128まで、潤滑油を案内することが可能となる。すなわち、貫通孔122、切欠部124、第一油路114、第二油路116、第三油路118、第一吐出口126及び第二吐出口128によって、潤滑油が流通するための油路が構成される。
【0082】
また、
図3から
図5まで、並びに
図14に示すように、給油部材100の一部(第一平板部110及び第二平板部120の短辺部)は、カムキャップ50の排気側凹部62内に収容される。給油部材100の貫通孔(第一平板部110の貫通孔112及び第二平板部120の貫通孔122)は、カムキャップ50の排気側貫通孔64と平面視において重複するように配置され、当該各貫通孔に上方からボルト150が挿通され、当該ボルト150はシリンダヘッド10に締結される。このようにボルト150によって共締めされることにより、給油部材100がカムキャップ50に固定されるとともに、当該カムキャップ50がシリンダヘッド10に固定される。
【0083】
この際、
図3に示すように、給油部材100の第一油路114は、ボルト150が挿通される貫通孔112から所定距離だけ離間した位置に形成されているため、当該第一油路114を形成するために給油部材100(第一平板部110)が上方に突出した部分が、ボルト150を締結する際に邪魔になることはない。
【0084】
またこの際、給油部材100の厚さ(第一平板部110と第二平板部120の上下方向厚さの合計)は、カムキャップ50の排気側凹部62の深さと同程度となるように形成される。本実施形態においては、給油部材100の厚さは排気側凹部62の深さと略同一であり、第一油路114が形成された部分のみ排気側凹部62の深さよりも若干厚くなる。このため、給油部材100をカムキャップ50に固定しても、当該給油部材100の上端は、高さ方向(上下方向)においてカムキャップ50より上方へほとんど突出していない(厳密には、第一油路114が形成された部分のみ若干突出する)。
【0085】
また、
図14に示すように、給油部材100の一部(第一平板部110及び第二平板部120の短辺部)をカムキャップ50の排気側凹部62内に収容する際、給油部材100のガイド部130・130及びカムキャップ50の排気側凹部62によって位置決めを行うことができる。
【0086】
給油部材100のガイド部130・130は、カムキャップ50の前後幅と略同一距離だけ互いに前後に離間した状態で形成されている。従って、給油部材100をカムキャップ50の排気側凹部62内に収容する場合、当該ガイド部130・130の間にカムキャップ50を嵌め込むように配置すれば、当該給油部材100のカムキャップ50に対する前後方向の位置決めを行うことができる。
【0087】
また、カムキャップ50の排気側凹部62の左右幅は、給油部材100の当該排気側凹部62に収容される部分(第一平板部110及び第二平板部120の短辺部)の左右幅と略同一となるように形成されている。従って、給油部材100をカムキャップ50の排気側凹部62内に収容することによって、当該給油部材100のカムキャップ50に対する左右方向の位置決めを行うことができる。
【0088】
また、給油部材100がカムキャップ50に固定された場合、
図14(a)に示すように、第一吐出口126及び第二吐出口128は、それぞれ排気側カムシャフト42のカム42a・42aと前後方向において同一位置となるように形成される。従って、当該第一吐出口126及び第二吐出口128は、それぞれ排気側カムシャフト42のカム42a・42aの概ね上方に位置することになる。
【0089】
以下では、
図15から
図17までを用いて、上述の如く構成されたエンジン1の潤滑油供給機構による、排気側カムシャフト42のカム42a・42aへの潤滑油の供給の態様について説明する。
なお、エンジン1の潤滑油供給機構による、吸気側カムシャフト40のカム40a・40aへの潤滑油の供給の態様も略同様であるため、以下では説明を省略する。
【0090】
図15に示すように、エンジン1が駆動することによって排気側カムシャフト42が回転し、シャフト内油路42bの一端がシリンダヘッド10のカムジャーナル用油路18と対向していない場合、オイルギャラリー16を流通する潤滑油は、カムジャーナル用油路18を介して排気側軸受部14へと供給される。当該潤滑油はシャフト内油路42b内には供給されず、排気側カムシャフト42と排気側軸受部14(及び排気側軸受部60)との摺動面を潤滑する。
【0091】
図16(a)に示すように、排気側カムシャフト42が360度回転するごとに1度だけシャフト内油路42bの一端がシリンダヘッド10のカムジャーナル用油路18と対向すると共に、シャフト内油路42bの他端が排気側連通油路66と対向する。この場合、オイルギャラリー16を流通する潤滑油は、カムジャーナル用油路18を介してシャフト内油路42bへと供給される。さらに、当該潤滑油は当該シャフト内油路42b、排気側連通油路66を介して排気側貫通孔64へと供給される。当該排気側貫通孔64にはボルト150が挿通されているが、当該排気側貫通孔64とボルト150との間には隙間があるため、潤滑油は当該排気側貫通孔64内を流通することができる。当該潤滑油は、排気側貫通孔64を上方へと流通し、給油部材100(より詳細には、第二平板部120の貫通孔122)へと供給される。
【0092】
図16(b)に示すように、第二平板部120の貫通孔122へと供給された潤滑油は、切欠部124を介して第一平板部110の第一油路114内へと流入する。第一油路114へと供給された潤滑油は、第二油路116及び第三油路118(
図8等参照)へと分岐して供給される。第二油路116へと供給された潤滑油は、第一吐出口126を介して下方へと吐出される。また、第三油路118へと供給された潤滑油は、第二吐出口128を介して下方へと吐出される。
図17に破線の矢印で示すように、給油部材100の第一吐出口126及び第二吐出口128から吐出された潤滑油は、当該第一吐出口126及び第二吐出口128の下方に配置されたカム42a・42aに供給され、当該カム42a・42aを潤滑することができる。
【0093】
このようにして、排気側カムシャフト42が所定の角度まで回転した際に、潤滑油がカム42a・42aへと供給される。すなわち、潤滑油を間欠的に(排気側カムシャフト42が1回転する間に一度だけ)カム42a・42aへと供給することができる。このように、潤滑油は常時カム42a・42aへと供給されるわけではないため、当該カム42a・42aへ潤滑油が過剰に供給されるのを防止することができる。
【0094】
また、第二油路116及び第三油路118は、平面視において前後方向に対称となり、かつ断面形状が互いに同一形状となるように形成されている。すなわち、第二油路116及び第三油路118は、互いに同じ長さ、同じ断面形状、同じ屈曲回数及び同じ屈曲角度を有するように形成されている。これによって、第一油路114から供給される潤滑油が第二油路116及び第三油路118を流通する際の圧力損失は略同一となるため、当該第二油路116及び第三油路118を流通する潤滑油の流量は略同一となる。従って、カム42a・42aに略同量の潤滑油を供給することができる。
【0095】
以上の如く、本実施形態に係るエンジン1の潤滑油供給機構は、シリンダヘッド10、カムシャフト(吸気側カムシャフト40及び排気側カムシャフト42)、カムキャップ50及び給油部材100を介して動弁機構30のカム(カム40a及びカム42a)へと潤滑油を供給するエンジン1の潤滑油供給機構であって、給油部材100は、1枚の板材を折り曲げて形成されると共に、当該折り曲げた際に内側になる面を凹ませることで、カムキャップ50を介して供給される潤滑油を前記カムへと案内するための油路(第一油路114、第二油路116及び第三油路118)が形成されるものである。
このように構成することにより、プレス加工だけで給油部材100を成形することができ、製造コストの削減を図ることができる。また、面を凹ませることで油路を形成するため、当該油路が給油部材100の補強部材(リブ)としても作用し、当該給油部材100の剛性を向上させることができる。さらに、当該油路によって給油部材100の剛性を向上させることができるため、当該給油部材100の厚さをより薄くすることも可能となる。
【0096】
また、給油部材100は、エンジン1の複数の気筒に亘って一体的に形成されるものである。
このように構成することにより、気筒ごとに別個給油部材を設ける場合に比べて製造コストの削減を図ることができる。また、複数の気筒に亘る給油部材100を一体的に形成することによって、当該給油部材100の剛性の向上を図ることができる。さらに、給油部材100を複数のカムキャップ50・50・・・(複数の支点)によって支持することができるため、エンジン1の振動によって給油部材100が揺れ動くのを防止することができる。これによって、給油部材100の第一吐出口126及び第二吐出口128の位置が安定し、カム40a・40a・・・及びカム42a・42a・・・へと確実に潤滑油を供給することができる。
【0097】
また、給油部材100には、その一部を塑性変形させることにより、カムキャップ50に対する位置決めを行うためのガイド部130・130が形成される。
このように構成することにより、給油部材100のカムキャップ50への取付作業を容易に行うことができるようになる。また、ガイド部130・130もプレス加工で成形することができるため、製造コストの増加も抑制することができる。
【0098】
また、カムキャップ50には、給油部材100に対する位置決めを行うためのガイド部(吸気側凹部54及び排気側凹部62)が形成される。
このように構成することにより、給油部材100のカムキャップ50への取付作業を容易に行うことができるようになる。
【0099】
また、給油部材100は、カムキャップ50と共締めされてシリンダヘッド10に固定されるものである。
このように構成することにより、ボルト等の締結部材の個数を削減することができ、ひいては製造コストの削減を図ることができる。
【0100】
また、カムキャップ50には、凹部(吸気側凹部54及び排気側凹部62)が形成され、給油部材100は、当該給油部材100の一部がカムキャップ50の前記凹部に収容された状態で当該カムキャップ50に設けられるものである。
このように構成することにより、カムキャップ50の上方のスペースを必要とすることなく、前記カムへと潤滑油を供給することができる。これによって、部材同士の干渉を防止することができ、また当該干渉を避けるための設計変更等の必要が無くなる。
【0101】
また、給油部材100に形成される油路は、
その中途部において複数に(第一油路114から第二油路116及び第三油路118に)分岐されると共に、前記カムへと潤滑油を供給するための吐出口(第一吐出口130及び第二吐出口132)が複数形成されるものである。
このように構成することにより、複数の吐出口(第一吐出口130及び第二吐出口132)からカム(カム40a及びカム42a)へと潤滑油を供給することができる。従って、複数のカムに同時に潤滑油を供給することができる。また、前記吐出口の位置を変更すれば、1つのカムに複数の吐出口から潤滑油を供給することもできる。
【0102】
また、前記分岐された油路(第二油路116及び第三油路118)は、互いに同じ長さ、同じ断面形状、同じ屈曲回数及び同じ屈曲角度を有するように形成されるものである。
このように構成することにより、複数に分岐された油路へ同量の潤滑油を供給することができる。従って、複数に分岐された油路の終端にそれぞれ形成された吐出口(第一吐出口130及び第二吐出口132)から同量の潤滑油を吐出することができる。
【0103】
なお、本実施形態に係るエンジン1は、直列4気筒16バルブのDOHCガソリンエンジンであるものとして説明したが、本発明を適用することが可能なエンジンはこれに限るものではない。
また、本発明は、潤滑油を案内するためのオイルギャラリー16、カムジャーナル用油路18、シャフト内油路42b、排気側連通油路66及び排気側貫通孔64の形状を、本実施形態に限定するものではない。これらの形状は任意に決定することが可能である。
また、給油部材100の各部分P・P・・・の形状は、本実施形態の如く平面視略L字状に限るものではなく、カム(カム40a及びカム42a)に潤滑油を供給できる形状であれば良い。
また、本実施形態において、給油部材100は1枚の板材を折り曲げて形成されるものとしたが、当該板材の間にガスケット等のシール部材を介設する構成とすることも可能である。
また、本実施形態においては、給油部材100の油路は、その中途部(第一油路114)から2つ(第二油路116及び第三油路118)に分岐するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、給油部材100の油路は、その上流端部から2本に分岐して形成する構成、すなわち、1本の油路の中途部から分岐するのではなく最初から2本の油路で構成することも可能である。
また、本実施形態においては、第二油路116と第三油路118とは前後方向に対称となるように構成するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、第二油路116と第三油路118とを非対称となるような形状(互いに異なる長さ、異なる断面形状、異なる屈曲回数及び異なる屈曲角度を有する形状)に構成することも可能である。このように、第二油路116及び第三油路118をそれぞれ任意の形状となるように形成することで、当該油路を流通する潤滑油の流量を調節することも可能である。
また、給油部材100を折り曲げた状態に保持するためにプレス加工によってかしめられる部分(カシメ部160)の位置及び個数(
図12及び
図13(c)参照)は、本実施形態に係るものに限るものではない。例えば、油路の近傍を多くかしめることで、当該油路からの油漏れを抑制することも可能である。
また、本発明に係る給油部材を形成するための板材の材料は、金属や樹脂などを問わず、1枚の板材を折り曲げて形成できる材料であればよい。
【0104】
また、
図18(第二の実施形態)に示すように、給油部材100の各部分P・P・・・ごとに設けられていた複数の第一油路114・114・・・を一本の油路となるように連結することも可能である。この場合、当該一本の第一油路114には一箇所の貫通孔122及び切欠部124を介して潤滑油が供給されるように構成することで、エンジン1の潤滑油供給機構の構成を簡素化することができ、製造コストの削減を図ることができる。また、当該一箇所の貫通孔122及び切欠部124を給油部材100の前後方向略中央に設けることで、潤滑油を油路全体にできる限り均一に供給することができる。
【0105】
また、
図19(第三の実施形態)に示すように、給油部材100の油路を第一平板部110と第二平板部120とに分けることにより、油路レイアウトの省スペース化を図ることも可能である。
より具体的には、貫通孔122及び切欠部124を介して潤滑油が供給される第一油路135を第一平板部110に形成する。当該第一油路135を介して供給される潤滑油を前後に分岐させる第二油路136及び第三油路137を第二平板部120に形成する。当該第二油路136及び第三油路137を介して供給される潤滑油をさらに前後に分岐させ、第一吐出口126及び第二吐出口128まで案内する第四油路138及び第五油路139を第一平板部110に形成する。このように、前後方向に延設される複数の油路を第一平板部110と第二平板部120に交互に形成することで、それぞれの平板部(第一平板部110及び第二平板部120)における油路同士の間隔(本実施形態においては左右方向の間隔)を広く確保することができる。従って、プレス加工がし易くなり、油路同士の間隔をさらに狭めることが可能となり、ひいては当該油路が形成される範囲(本実施形態においては左右方向の幅)の省スペース化を図ることが可能となる。
【0106】
また、
図20(a)(第四の実施形態)に示すように、給油部材100を部分P・P・・・ごとに分割して構成することも可能である。すなわち本発明は、給油部材100をエンジン1の複数の気筒に亘って一体的に形成されるものに限定するものではない。
【0107】
また、
図20(b)(第五の実施形態)に示すように、給油部材100は、第一平板部110と第二平板部120とを前後方向に並べて配置すると共に、当該第一平板部110及び第二平板部120を連結部140で連結し、当該給油部材100を連結部140を中心として前後方向に折り曲げて形成することも可能である。すなわち本発明は、給油部材100の折り曲げ方向を限定するものではない。
【0108】
また、
図21(第六の実施形態)に示すように、給油部材100の第二平板部120にも、第一平板部110の第一油路114、第二油路116及び第三油路118と対向するような油路132を形成することも可能である。このように、第一平板部110だけでなく第二平板部120にも油路を形成することにより、潤滑油が当該油路を流通し易くなる。また、油路132も給油部材100の補強部材(リブ)として作用するため、当該給油部材100の剛性をさらに向上させることもできる。
【0109】
また、
図22(第七の実施形態)に示すように、給油部材100の第二平板部120に、当該給油部材100を折り曲げた際に第一平板部110の油路(第一油路114、第二油路116及び第三油路118)に嵌合するような凸部134を形成することも可能である。このように構成することにより、給油部材100が折り曲げられた際には当該凸部134が第一平板部110の油路(第一油路114、第二油路116及び第三油路118)に嵌合し、当該油路をより確実に閉塞することができる。これによって、当該油路内を流通する潤滑油の油漏れを抑制することができる。
【0110】
また、
図23(第八の実施形態)に示すように、4つの気筒に対応するようにそれぞれ設けられる4つのカムキャップ50・50・・・を、一体となるように構成することも可能である。具体的には、カムキャップ50・50・・・の左右両端部を互いに連結することで、4つのカムキャップ50・50・・・を一体化し、1つの部材として扱うことができる。このように構成することにより、当該カムキャップ50・50・・・の部品管理や、シリンダヘッド10への取り付けが容易になる。