(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン経路最適化装置の機能的な構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るクレーン経路最適化装置100は、軌跡・作業識別子記録部101、経路決定部102、干渉領域推定部103、表示制御部104及び表示部105を備える。
【0012】
軌跡・作業識別子記録部101は、クレーンの作業実績に関する情報として、クレーンが移動した軌跡を表す軌跡情報、及び、クレーンが行った作業の識別子である作業コードを記録する。本実施形態においては、軌跡情報として、クレーンが重量物や部品等の荷物を吊ったときや下ろしたときの座標を使用するが、クレーンの軌跡を特定できる情報であればこれに限定されないことは勿論である。また、以下では、建屋内に配置される天井クレーンを想定して説明を行うが、本発明に適用可能なクレーンはこれに限らず、ガントリークレーン等、他のクレーンについて適用することができる。
【0013】
経路決定部102は、軌跡・作業識別子記録部101から軌跡情報を読み出し、当該軌跡情報に対して予め定められた最適化ルールを適用し、当該軌跡情報において示される軌跡よりもクレーンの移動距離が短く、且つ、移動の際に他のクレーンや荷物と衝突しない経路を、クレーンの最適な経路として決定する。
【0014】
干渉領域推定部103は、軌跡・作業識別子記録部101において複数のクレーンについて記録される軌跡情報を参照し、当該複数のクレーン間の距離が所定の閾値より近くなる時間範囲或いは場所としての領域を、当該複数のクレーンが干渉する可能性の高い領域として推定する。
【0015】
表示制御部104は、軌跡・作業識別子記憶部101に記録される軌跡情報に基づいて、クレーンが移動した軌跡を表示部105においてグラフィカルに表示させる。また、グラフィカルに表示された軌跡上にユーザがポインタを位置させること等によって、当該ポインタの位置に該当する作業内容が作業コードに基づいて例えばポップアップ表示される。
【0016】
図2は、本実施形態に係るクレーン経路最適化装置100のハードウェア構成を示す図である。CPU201は、システムバスに接続される各デバイスやコントローラを統括的に制御する。ROM203又はハードディスク(HD)207には、CPU201の制御プログラムであるBIOS(Basic Input / Output System)、オペレーティングシステムプログラム、及び、クレーン経路最適化装置100によって実行される処理のプログラム等が記憶されている。
【0017】
なお、
図2の例では、HD207がクレーン経路最適化装置100の内部に配置された構成としているが、他の実施形態として、HD207に相当する構成がクレーン経路最適化装置100の外部に配置された構成としてもよい。また、本実施形態に係るクレーン経路最適化装置100の処理を実行するためのプログラムは、フレキシブルディスク(FD)やCD−ROM等、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、それらの記録媒体から供給される構成としてもよいし、インターネット等の通信媒体を介して供給される構成としてもよい。
【0018】
RAM202は、CPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU201は、処理の実行に際して必要なプログラム等をRAM202にロードして、プログラムを実行することで各種動作を実現するものである。
【0019】
ディスクコントローラ205は、HD207等の外部メモリへのアクセスを制御する。通信IFコントローラ204は、インターネットやLANと接続し、例えばTCP/IPによって外部との通信を制御するものである。
【0020】
ディスプレイコントローラ208は、ディスプレイ209における画像表示を制御する。KB(キーボード)コントローラ210は、キーボード(KB)211からの操作入力を受け付け、CPU201に対して送信する。なお、図示していないが、キーボード211の他に、マウス等のポインティングデバイスもユーザの操作手段として本実施形態に係るクレーン経路最適化装置100に適用可能である。
【0021】
なお、
図1の経路決定部102及び干渉領域推定部103は、例えばHD207内に記憶され、必要に応じてRAM202にロードされるプログラム及びそれを実行するCPU201に相当する構成である。
【0022】
また、軌跡・作業識別子記録部101は、例えばHD207内の一部の記憶領域に相当する構成である。表示制御部104は、例えばディスプレイコントローラ208に相当する構成であり、表示部105は、例えばディスプレイ209に相当する構成である。
【0023】
図3は、建屋の長手方向(X)のみに移動可能なクレーンを模式的に示す図である。
図3において、301はクレーンであり、302は建屋である。クレーン301は、建屋302の長手方向(X)0m〜30mの範囲内で移動することが可能である。以下、
図3に示すクレーン301を例に挙げて、クレーン経路最適化装置100の処理について説明する。
【0024】
図4は、
図3に示すクレーン301を対象とした場合に軌跡・作業識別子記録部101において記録される、作業コード管理テーブルと軌跡情報との例を示す図である。
図4(a)に示すように、作業コード管理テーブルでは、作業コードとクレーン301の作業内容とが対応付けて記録される。また、
図4(b)に示すように、軌跡情報では、クレーン301によって実施された各作業に対して付与されるシリアルナンバである作業番号、当該作業に対応する作業コード、当該作業が行われた時刻、及び、当該作業時のクレーン301の座標が対応付けて記録される。
【0025】
なお、
図4(a)における「パレットに置く(吊り)」とは、荷物をパレットに置く際にクレーン301が当該荷物を吊る作業を意味する。クレーン301が荷物をパレットに置くために当該荷物を吊った際、作業コード1−1に対応する作業座標がクレーン301側からクレーン経路最適化装置100に対して出力され、軌跡情報として記録される。また、
図4(a)における「パレットに置く(下ろし)」とは、荷物をパレットに置くためにクレーン301が当該荷物を下ろす作業を意味する。クレーン301が荷物をパレットに置くために当該荷物を吊った際、作業コード1−2に対応する作業座標がクレーン301側からクレーン経路最適化装置100に対して出力され、軌跡情報として記録される。また、
図4(a)における「ラインにはらう(吊り)」とは、荷物をラインに置くためにクレーン301が当該荷物を吊る作業を意味する。クレーン301がラインに荷物を置くために当該荷物を吊った際、作業コード2−1に対応する作業座標がクレーン301側からクレーン経路最適化装置100に対して出力され、軌跡情報として記録される。また、
図4(a)における「ラインにはらう(下ろし)」とは、荷物をラインに置くためにクレーン301が当該荷物を下ろす作業を意味する。クレーン301がラインに荷物を置くために当該荷物を下ろす作業を意味する。クレーン301が荷物をラインに置くために当該荷物を下ろした際、作業コード2−2に対応する作業座標がクレーン301側からクレーン経路最適化装置100に対して出力され、軌跡情報として記録される。また、
図4(a)における「配替え(吊り)」とは、積み上げられた荷物の配置を変更する作業(例えば、下に積まれている荷物を取り出すために、その上に積まれている荷物を一旦下ろし、その後、対象の荷物を取り出す作業)のために荷物を吊る作業を意味する。配替えのためにクレーン301が荷物を吊った際、作業コード3−1に対応する作業座標がクレーン301側からクレーン経路最適化装置100に対して出力され、軌跡情報として記録される。また、
図4(b)における「配替え(下ろし)」とは、積み上げられた荷物の配置を変更する作業のために荷物を下ろす作業を意味する。配替えのためにクレーン301が荷物を下ろした際、作業コード3−2に対応する作業座標がクレーン301側からクレーン経路最適化装置100に対して出力され、軌跡情報として記録される。
【0026】
図5は、
図4(b)に示す軌跡情報に基づいて、クレーン301が移動した軌跡を表示部105においてグラフィカルに表示した例を示す図である。表示制御部104は、
図4(b)に示す軌跡情報を軌跡・作業識別子記録部101から読み出し、
図4(b)の作業番号“0001”〜“0006”の作業時刻及び作業座標に対応する各座標を線分で結ぶことにより、クレーン301の軌跡をグラフィカルに表示させる。また、表示された軌跡上にポインタ501を位置することにより、
図5の502に示すように、ポインタ501の位置に該当する作業内容が作業コード2−1に基づいてポップアップ表示される。これにより、ユーザは、ポインタ501の位置に該当する作業内容を把握することが可能となる。なお、本実施形態では、作業内容をポップアップ表示させているが、クレーン301の軌跡に関連付けて作業内容を提示できればよく、その表示方法は限定されない。
【0027】
また、このようにクレーンの軌跡をグラフィカルに表示させることで、ユーザは作業効率を分析することが可能となる。例えば、クレーンの移動が激しい(すなわち、移動距離が長い、移動回数が多いなど)場合には、作業効率が悪いと判断できる。そこで、ユーザは、次回以降、同じ種類の作業を行う場合、クレーンの移動距離が少なく、近場での動きが多い軌跡となるようにクレーンの経路を見直すことで、作業効率を高めることができるようになる。
【0028】
図6は、建屋の長手方向(X)のみに移動可能な2つのクレーンを模式的に示す図である。
図6において、601−1及び601−2は夫々、建屋の長手方向(X)のみに移動可能なクレーンA及びクレーンBである。602は建屋である。クレーンA601−1及びクレーンB601−2はともに、建屋602の長手方向0〜30mの範囲内で移動することが可能である。
図6に示したクレーンA601−1及びクレーンB601−2を対象とした場合、軌跡・作業識別子記録部101においては、クレーンA601−1及びクレーンB601−2の夫々について
図4(b)に示すような軌跡情報が記録されることになる。なお、軌跡・作業識別子記録部101において記録される作業コード管理テーブルは、
図4(a)に示した例と同一である。以下、
図6に示すクレーンA601−1及びクレーンB601−2を例に挙げて、クレーン経路最適化装置100の処理について説明する。
【0029】
図7は、クレーンA601−1について記録された軌跡情報とクレーンB601−2について記録された軌跡情報とに基づいて、クレーンA601−1及びクレーンB601−2の移動した軌跡を表示部105においてグラフィカルに表示した例を示す図である。即ち、
図7において、701は、クレーンA601−1の軌跡に対応するグラフであり、702は、クレーンB601−2の軌跡に対応するグラフである。表示制御部104は、クレーンA601−1及びクレーンB601−2夫々について記録された軌跡情報を軌跡・作業識別子記録部101から読み出し、各軌跡情報において記録された各作業番号の作業時刻及び作業座標に対応する各座標を線分で結ぶことにより、クレーンA601−1及びクレーンB601−2の軌跡をグラフィカルに表示させる。なお、
図7の703は、クレーンA601−1とクレーンB601−2とが干渉(衝突)する可能性の高い領域であり、表示部105において識別可能に(ここでは、楕円で囲まれて)表示される。干渉領域推定部103は、クレーンA601−1について記録された軌跡情報と、クレーンB601−2について記録された軌跡情報とを参照し、クレーンA601−1とクレーンB601−2間の距離が閾値より近くなる時間範囲或いは場所としての領域を探索する。そして、干渉領域推定部103は、クレーンA601−1とクレーンB601−2間の距離が閾値より近くなる時間範囲或いは場所としての領域を検出した場合、それを、クレーンA601−1とクレーンB601−2が干渉する可能性の高い領域として推定する。
【0030】
本実施形態においては、クレーンが干渉する可能性が高い領域を推定し、ユーザに対して提示することにより、ユーザは、次回以降、同じ種類の作業を行う場合、干渉する可能性が高いと推定された領域について、クレーンの経路を見直すことが可能となる。
【0031】
図8は、建屋の長手方向(X)及び短手方向(Y)に移動可能なクレーンを模式的に示す図である。
図8において、801はクレーンであり、802は建屋である。クレーン801は、建屋802の長手方向0m〜30mの範囲内で移動することが可能であるとともに、建屋802の短手方向0m〜10mの範囲内で移動することが可能である。
【0032】
図9は、
図8に示したクレーン801を対象とした場合に軌跡・作業識別子記憶部101において記録される軌跡情報の例を示す図である。なお、軌跡・作業識別子記憶部101において記録される作業コード管理テーブルは、
図4(a)に示した例と同一である。
【0033】
図9に示す軌跡情報では、クレーン801によって実施された各作業に対して付与されるシリアルナンバである作業番号、当該作業に対応する作業コード及び当該作業が行われた時刻に対応付けて、建屋802の長手方向(X)におけるクレーン801の座標(走行値(X))及び建屋802の短手方向(Y)におけるクレーン801の座標(横行値(Y))が記録される。
【0034】
図10は、
図9に示す軌跡情報に基づいて、クレーン801が移動した軌跡を表示部105においてグラフィカルに表示した例を示す図である。より具体的には、表示制御部104は、
図9に示す軌跡情報を軌跡・作業識別子記録部101から読み出し、
図8の作業番号“0001”〜“0006”の作業時刻及び走行値(X)に対応する各座標を線分で結ぶことにより、
図10の1001に示すように、建屋802の長手方向におけるクレーン801の軌跡をグラフィカルに表示させる。また、表示制御部104は、
図8の作業番号“0001”〜“0006”の作業時刻及び横行値(Y)に対応する各座標を線分で結ぶことにより、
図10の1002に示すように、建屋802の短手方向におけるクレーン801の軌跡をグラフィカルに表示させる。
【0035】
以上では、建屋内の長手方向のみ、或いは、長手方向及び短手方向に移動可能なクレーンについて説明したが、これに加え、建屋の高さ方向にも移動可能なクレーンにも適用することができる。この場合、軌跡・作業識別子記録部101において記録される軌跡情報では、例えば、
図9に示す走行値(X)及び横行値(Y)のほかに、高さ(Z)が記録される。そして、クレーンの軌跡を表示する際には、例えば、横軸を時間軸とし、縦軸を走行値(X)とする第1のグラフと、横軸を時間軸とし、縦軸を横行値(Y)とする第2のグラフと、横軸を時間軸とし、縦軸を高さ(Z)とする第3のグラフとの全てを表示するようにすればよい。その他、第1〜第3のグラフを一度に表示するのではなく、そのうちの一部を選択して表示するようにしてもよい。
【0036】
以上のように、本実施形態においては、クレーンが移動した経路とともに、各作業座標で行われた作業内容も記録し、当該軌跡ととともに、当該軌跡に関連付けて作業内容を提示するようにしているため、ユーザは、クレーンがどのような作業を行った場合にどのような軌跡を通ったのかを認識することが可能となる。従って、ユーザは、表示されたクレーンの軌跡に基づいて、次回以降、同じ種類の作業を行う場合に最適な経路を検討し、クレーンの経路を最適化することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態においては、クレーンの3次元の軌跡を提示することができるため、ユーザはクレーンの平面的な軌跡だけではなく、高さ方向の軌跡も考慮して最適な経路を検討することが可能となる。
【0038】
図11は、経路決定部102の処理を具体的に説明するための図である。経路決定部102は、軌跡・作業識別子記録部101から軌跡情報を読み出し、例えば、
図11の1101に示すように、クレーンが建屋における座標(x,y,z)から座標(x+Δx,y,z)を経由して座標(x+Δx,y,z+Δz)に移動したことを認識する。そして、経路決定部102は、このクレーンの経路に対して最適化ルールを適用する。ここでの最適化ルールは、クレーンの移動距離をより短くし、且つ、移動の際に他のクレーンや荷物と衝突しない経路を算出するためのルールを想定している。従って、経路決定部102は、
図11の1102に示すように、座標(x+Δx,y,z)を経由せず、座標(x,y,z)から座標(x+Δx,y,z+Δz)に直接移動する経路が最短の経路であることを認識する。次に、経路決定部102は、この最短の経路上に他のクレーンや荷物が存在しないかを判定する。ここで、当該他のクレーンや荷物の位置座標は、適宜更新される情報である。当該最短の経路上に他のクレーンや荷物が存在せず、当該最短の経路と他のクレーンや荷物とが干渉しない場合、経路決定部102は、当該最短の経路を最適な経路として決定する。もし、当該最短の経路上に他のクレーンや荷物が存在し、当該最短の経路と他のクレーンや荷物とが干渉する場合、経路決定部102は、次に短い経路を決定し、その経路上に他のクレーンや荷物が存在しないかを判定する。最適な経路が見つかるまで以上の処理が繰り返される。表示制御部104は、経路決定部102により最適な経路が決定されると、当該最適な経路を表示部105においてグラフィカルに表示させる。
【0039】
図12は、経路決定部102の他の処理を具体的に説明するための図である。
図12(a)は、1001→1002→1003→1004→1005の順番で作業を行った場合のクレーンの軌跡を示している。なお、ここでは図示を省略しているが、1001〜1005は、
図4(b)の作業番号と同様、各作業に対して付与されるシリアルナンバであり、当該作業に対応する作業コード、当該作業が行われた時刻、及び、当該作業時のクレーンの座標が対応づけて軌跡・作業識別子記録部101に記録される。
【0040】
ここで、例えば、作業番号1002〜1004の作業の順番が任意に入れ替え可能な場合には、経路決定部102は、直前の作業の位置(座標)から近い順番に作業が行われるように経路を最適化してもよい。より具体的には、経路決定部102は、
図12(b)に示すように、作業の順番が1001→1003→1002→1004→1005の順番となるように経路を決定する。この場合、経路決定部102は、作業の順番が入れ替え変え可能な作業について、作業の順番の全ての組合せパターンに対してクレーンの移動距離を算出し、移動距離が最も短くなるような作業の順番となるように経路を決定すればよい。
【0041】
このように、本実施形態によれば、クレーンが移動した経路に基づいて、最適な経路を決定することができるため、次回以降、同じ種類の作業を行う場合、その最適な経路に採用することにより、作業効率を向上させることが可能となる。