特許第5918142号(P5918142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918142
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】セキュリティデバイス
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/328 20140101AFI20160428BHJP
   B42D 25/40 20140101ALI20160428BHJP
   B42D 25/425 20140101ALI20160428BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20160428BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20160428BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   B42D15/10 330
   B42D15/10 402
   B42D15/10 425
   G02B3/06
   G02B3/00 A
   G02B3/00 Z
   G02B5/10 A
   G02B5/18
【請求項の数】36
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-535919(P2012-535919)
(86)(22)【出願日】2010年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-509314(P2013-509314A)
(43)【公表日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】GB2010001995
(87)【国際公開番号】WO2011051670
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年10月7日
(31)【優先権主張番号】0919108.1
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/272,773
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598151304
【氏名又は名称】ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ウィリアム ホームズ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジョージ コマンダー
【審査官】 居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−365746(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/008635(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/106601(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/115119(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/061983(WO,A1)
【文献】 米国特許第04417784(US,A)
【文献】 国際公開第94/027254(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D25/00−25/485
G09F19/22
G02B5/18、5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有するセキュリティデバイスであって、対応する画像細片の組のアレイの上方に、それぞれの組からの対応する画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように、前記レンチキュラー集束要素が置かれ、前記画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造によって定められ、インクが施された隆起部を前記レリーフ構造が備えることを特徴とするセキュリティデバイス。
【請求項2】
前記隆起部に同じ色のインクが施される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
いくつかの隆起部に、他の隆起部の上に設けられたインクとは異なる色のインクが施される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
隆起部の対に同じインクが施され、前記インクが隣接する対同士の間で変化する、請求項に記載のデバイス。
【請求項5】
各画像細片の幅が50ミクロン未満、又は20ミクロン未満、又は5〜10ミクロンの範囲内である、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記レンチキュラー集束要素がシリンドリカルレンズまたは微小ミラーを備える、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に前記画像細片のレリーフ構造も設けられる、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの他のレリーフ構造がホログラフィー構造を備える、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
モアレ拡大に適した微小画像を前記少なくとも1つの他のレリーフ構造が備え、前記微小画像の上方に置かれたモアレ拡大レンズアレイを前記セキュリティデバイスがさらに備える、請求項またはに記載のデバイス。
【請求項10】
前記レンチキュラー集束要素と同一面内または同一面上に前記モアレ拡大レンズアレイが設けられる、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記レンチキュラー集束要素が前記モアレ拡大レンズアレイも提供する、請求項または10に記載のデバイス。
【請求項12】
レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有するセキュリティデバイスであって、対応する画像細片の組のアレイの上方に、それぞれの組からの対応する画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように、前記レンチキュラー集束要素が置かれ、前記画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造によって定められ、前記レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に前記画像細片のレリーフ構造も設けられ、
前記少なくとも1つの他のレリーフ構造はホログラム生成構造を含み、
前記レンチキュラーデバイスにより提供される前記画像と前記ホログラム生成構造により提供される前記画像は単一の画像の要素を構成することを特徴とするセキュリティデバイス。
【請求項13】
レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有するセキュリティデバイスであって、対応する画像細片の組のアレイの上方に、それぞれの組からの対応する画像細片が前記レンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように、前記レンチキュラー集束要素が置かれ、前記画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造によって定められ、前記レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に前記画像細片のレリーフ構造も設けられ、
モアレ拡大に適した微小画像を前記少なくとも1つの他のレリーフ構造が備え、前記微小画像の上方に置かれたモアレ拡大レンズアレイを前記セキュリティデバイスがさらに備えることを特徴とするセキュリティデバイス。
【請求項14】
前記レリーフ構造が回折性格子の構造を備える、請求項12又は13に記載のデバイス。
【請求項15】
異なる画像要素を細片内で表すように、異なる向きおよび/または異なるピッチで前記回折性格子の構造が配置されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
モスアイ構造、0次回折構造またはアステカ構造によって前記レリーフ構造が定められている、請求項12又は13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記レリーフ構造が部分的もしくは完全に金属化されているか、または前記レリーフ構造の上に高屈折率層が設けられる、請求項12から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
インクで充填された凹みを前記レリーフ構造が含む、請求項12から17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
インクが施された隆起部を前記レリーフ構造が備える、請求項12から18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記レリーフの隆起部または凹みのそれぞれに異なる着色インクが施される、請求項18または19に記載のデバイス。
【請求項21】
各画像細片の幅が50ミクロン未満、又は20ミクロン未満、又は5〜10ミクロンの範囲内である、請求項12から20のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記レンチキュラー集束要素がシリンドリカルレンズまたは微小ミラーを備える、請求項12から21のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記少なくとも1つの他のレリーフ構造がホログラフィー構造を備える、請求項12から22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記レンチキュラー集束要素と同一面内または同一面上に前記モアレ拡大レンズアレイが設けられる、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記レンチキュラー集束要素が前記モアレ拡大レンズアレイも提供する、請求項23または24に記載のデバイス。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載のセキュリティデバイスが設けられた物品。
【請求項27】
紙幣、小切手、パスポート、IDカード、内容証明書、収入印紙、および価値または個人情報を保証するための他の文書から選択される、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
透明部分をもつ基材を備え、前記透明部分の両側に前記レンチキュラー集束要素と画像細片がそれぞれ設けられる、請求項26または27に記載の物品。
【請求項29】
セキュリティデバイスを製造する方法であって、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の組のアレイを前記透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように前記画像細片と前記レンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを画定し、前記画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造として形成され、インクが施された隆起部を前記レリーフ構造が備えることを特徴とする方法。
【請求項30】
セキュリティデバイスを製造する方法であって、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の組のアレイを前記透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように前記画像細片と前記レンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを画定し、前記画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造として形成され、前記レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に前記画像細片のレリーフ構造も設けられ、
前記少なくとも1つの他のレリーフ構造はホログラム生成構造を含み、
前記レンチキュラーデバイスにより提供される前記画像と前記ホログラム生成構造により提供される前記画像は単一の画像の要素を構成することを特徴とする方法。
【請求項31】
前記レリーフ構造を前記透明基材内にエンボス加工または注型硬化するステップを含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記レリーフ構造の上または中にインクを供給するステップをさらに含む、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
平版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷またはフレキソ印刷を使用して前記インクが供給される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
2つのロールの間に前記透明基材を通過させることによって前記製造のステップが実行され、前記基材の一方の側に前記レンチキュラー集束要素のアレイを刻印するように一方のロールが構成され、同時に、前記基材の他方の側に前記画像細片のレリーフ構造を刻印するように他方のロールが構成されている、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造を前記基材上に設けるステップをさらに含む、請求項29から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
セキュリティデバイスを製造する方法であって、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の組のアレイを前記透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように前記画像細片と前記レンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを画定し、前記画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造として形成され、前記レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に前記画像細片のレリーフ構造も設けられ、モアレ拡大に適した微小画像を前記少なくとも1つの他のレリーフ構造が備え、前記微小画像の上方に置かれたモアレ拡大レンズアレイを前記セキュリティデバイスがさらに備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティデバイスに関し、例えば、紙幣、小切手、パスポート、IDカード、内容証明書(certificate of authenticity)、収入印紙、および価値または個人情報を保証するための他の文書などの貴重品用のセキュリティデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの様々な光学的セキュリティデバイスが知られている。その中で最も一般的なものはホログラムデバイスや他の回折性デバイスであり、それらはクレジットカードなどによく見られる。例えば、欧州特許出願公開第1695121号や国際公開第94/27254号に記載されているようなモアレ拡大鏡の形でセキュリティデバイスを提供することも知られている。モアレ拡大鏡の不都合な点はアートワークがより制限されることであり、例えばアニメーション効果はモアレ拡大鏡では不可能であろう。
【0003】
例えば、米国特許第4892336号に記載されているように、いわゆるレンチキュラーデバイスをセキュリティデバイスとして使用できることも知られている。しかしながら、これらのデバイスは、基材の厚さについて実用上の制約があり、その厚さで使用しなければならないため、セキュリティデバイスとしては商業的にあまり成功していない。この理由がわかるように、図1を参照する。
【0004】
図1は、画像A〜Gを観察するのに使用されるレンチキュラーデバイスを通した断面を示す。シリンドリカルレンズのアレイ2が透明基材4上に配置されている。各画像はいくつかの、例えば7個の細片にセグメント化されており、レンチキュラーアレイの各レンズ2の下には、画像A〜Gの特定のセグメント化された領域に対応する1組の画像細片がある。第1のレンズの下の細片は画像A〜Gの第1のセグメントにそれぞれ対応し、次のレンズの下の細片は画像A〜Gの第2のセグメントにそれぞれ対応し、その後も同様である。各レンズ2は、1つの観察位置から各レンズ2を通して1つの細片だけを見ることができるように細片の面内で焦点を合わせるように構成される。いかなる観察角度でも、画像(A,B,Cなど)のうちの1つに対応する細片のみが、対応するレンズを通して見えることになる。図示したように、直線上からは画像Dの各細片が見えるのに対し、軸線から数度傾けたときには画像CまたはEからの細片が見えることになる。
【0005】
細片は画像の薄片として構成され、すなわち細片Aはすべて1つの画像からの薄片であり、B,Cなどについても同様である。結果として、デバイスを傾けたときに、一続きの画像が見えることになる。それらの画像は関連付けられることもあるし、関連付けられないこともある。最も単純なデバイスは、デバイスを傾けたときに互いの間で反転する2つの画像を有するであろう。あるいは、それらの画像は、画像が動くように見えることで視差の深さを生じさせるように細片間で横方向にずらされる一続きの画像であってもよい。同様に、画像から画像への変化により、アニメーション(画像の一部が言わば連続的に変化する)、モーフィング(1つの画像がわずかなステップで別の画像に変形する)、またはズーミング(画像が次第に大きくなるかまたは小さくなる)を生じさせることもできるであろう。これらのより洗練された効果を出すには、より多くの画像と、したがってより多くの細片が必要になる。
【0006】
レンチキュラーデバイスについての実用上の問題は、織り交ぜられた画像細片の幅と個数に厚さが依存するということである。図1を参照すると、デバイスが機能するためには、レンズ2の後部焦点距離fはレンズ2が画像細片A,B,C,D,E,F,G上で焦点を合わせるようなものでなければならず、画像細片の繰返し周期pはレンズの直径Dと同じでなければならない。レンズの後部焦点距離は、レンズの裏面から焦点までの距離と定義される。ポリマー薄膜の場合の大まかな目安としては、fmin=1〜1.5×Dである。したがって、デバイスを30μmの厚さとするためには、レンズ直径は30μm未満でなければならない。その結果、画像細片の繰返し周期は、わずか30μmでなければならないことになる。これは、1200dpiに対応する高々20μm/画素の解像度しか実現することができないグラビアや平版、凹版などの従来の印刷技法については実用的でない。各色を互いにかつレンチキュラーに対して位置合わせする必要性により、さらなる要求がプリンタに課される。したがって、市販されているレンチキュラーデバイスは比較的厚く(>150μm)、このことが、それらのデバイスを、デバイスが典型的には1〜50μmの範囲内の厚さをもつ紙幣などの曲がりやすいセキュリティ文書に使用することを妨げている。
【0007】
セキュア文書に組み込まれるようにするためには、レンチキュラーデバイスを薄くする必要がある。結果として、そうした(微小な)レンチキュラーデバイスは、認証者がデバイスの厚さや曲げやすさを調べることができるので、何らかの固有の安全性をもつことになる。(紙幣の用紙などの)紙は典型的には100μm程度の厚さであり、理想的には、そのデバイスの中またはその上に組み込まれる微小なレンチキュラーデバイスは、その厚さの半分未満となる。微小なレンチキュラーデバイスは、薄ければ薄いほど、より一体化されているような手触りになる。しかしながら、従来の印刷技法について上記で概説したように、厚さを十分に減らすことはできていない。
【0008】
画像細片がレリーフにより形成されている構造の例は、米国特許第4417784号や米国特許出願公開第2006/0290136号で見つけることができる。米国特許出願公開第2006/0290136号に記載されているレリーフ構造は、単にエンボス加工またはデボス加工された構造であり、平坦な背景領域に対してほとんどまたは全くコントラストができず、さらに、色の使用は、専ら基材の色によるものであるため制限されている。米国特許第4417784号に記載されているレリーフ構造は、生成するには複雑な回折性の格子であり、認証者がレンチキュラーによる視覚的効果と回折による視覚的効果を区別することは困難である。一般に、レンチキュラーデバイスで回折性の構造を使用することは、それらの明るさや可視度が照明条件に左右され、乏しい照明条件では可視度が著しく低下することになるため、制限されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、セキュリティデバイスが、レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有し、対応する画像細片の組のアレイの上方に、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように、レンチキュラー集束要素が置かれ、画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造によって定められ、インクが施された浮出しフィーチャをレリーフ構造が備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、セキュリティデバイスが、レンチキュラー集束要素のアレイを備えるレンチキュラーデバイスを有し、対応する画像細片の組のアレイの上方に、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように、レンチキュラー集束要素が置かれ、画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造によって定められ、レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に画像細片のレリーフ構造も設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、セキュリティデバイスを製造する方法が、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の組のアレイを透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように画像細片とレンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを画定し、画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造として形成され、インクが施された浮出しフィーチャをレリーフ構造が備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、セキュリティデバイスを製造する方法が、レンチキュラー集束要素のアレイを透明基材の一方の側に設けるステップと、対応する画像細片の組のアレイを透明基材の他方の側に設けるステップとを含み、それぞれの組からの対応する画像細片がレンチキュラー集束要素のそれぞれを介して異なる観察方向で見られるように画像細片とレンチキュラー集束要素がレンチキュラーデバイスを画定し、画像細片が少なくとも部分的にはレリーフ構造として形成され、レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に画像細片のレリーフ構造も設けられることを特徴とする。
【0013】
構造をインク付けすることにより画像細片を全面的または部分的にレリーフ構造として形成すること、および/または別のレリーフ構造を設けることを利用するのが都合よいとわかった。注型硬化(cast−curing)またはエンボス加工を使用してレリーフ構造を設けることができ、注型硬化により複製の忠実度がより高くなる。
【0014】
以下でより詳細に記載するように、多様な異なるレリーフ構造を使用することができる。しかしながら、画像細片は、回折格子の区域として画像をエンボス加工/注型硬化することにより簡単に作り出すことができる。画像の異なる部分は、格子のピッチまたは向きを異ならせることを利用して、区別することができる。代替の(および/またはさらに差異を生じさせる)画像構造は、モスアイ(moth−eye)(例えば、国際公開第2005/106601号参照)などの反射防止構造、0次回折構造、アステカ(Aztec)構造(例えば、国際公開第2005/115119号参照)として知られている段状表面のレリーフ光学構造、または単純な散乱構造である。ほとんどの用途の場合、明るさおよびコントラストを高めるために、これらの構造を部分的または完全に金属化することができる。
【0015】
典型的には、各画像細片の幅は、50ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満、最も好ましくは5〜10ミクロンの範囲内である。
【0016】
本発明によるセキュリティデバイスの典型的な厚さは、レンズ高さが1〜50ミクロン、より好ましくは5〜25ミクロンで、2〜100ミクロン、より好ましくは20〜50ミクロンである。レンチキュラー集束要素についての周期性、したがって最大基礎直径は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜60μm、さらにより好ましくは20〜40μmの範囲内である。レンチキュラー集束要素についてのFナンバーは、好ましくは0.25〜16、より好ましくは0.5〜2の範囲内である。レリーフ深さはレリーフを形成するために使用する方法に依存し、レリーフが回折性格子により設けられる場合、その深さは典型的には0.05〜1μmの範囲内であり、より粗い回折性でないレリーフ構造を使用する場合、レリーフ深さは好ましくは0.5〜10μm、さらにより好ましくは1〜5μmの範囲内である。
【0017】
典型的には、レンチキュラー集束要素はシリンドリカルレンズを備えるが、レンチキュラー微小ミラーを利用することも可能であろう。
【0018】
本発明の第2および第4の態様のいくつかの場合には、一般に格子などの形のときは、画像細片はインク付けされない。しかしながら、レリーフ構造の凹みかまたはレリーフ構造の浮出しフィーチャの上を満たすことにより、インクを盛り込むことも可能である。レリーフ構造は、例えば、注型硬化またはエンボス加工を行い、次いで凹みまたは穴を液体インクで充填することにより作り出すことができ、過剰な分はドクターブレードなどによって取り除かれる。そのインクは、グラビアタイプまたはインクジェットタイプのインクとすることができる。
【0019】
本発明の第1および第3の態様による浮出し区域の場合には、オフセット平版印刷またはフレキソ印刷に類似の方法によってこれらをインク付けすることができる。異なるインク付けされた区域が修正(doctoring)プロセスにより必然的に混ざるため、浮出し区域のインク付けには、多数の色により適しているという利点がある。多数の色により、動くタイプの模様で異なる着色要素が互いのそばを通り過ぎることが可能になる。特に魅力的なことは、ウェットリソグラフィプロセスを使用して浮出し区域をインク付けすることである。というのは、これにより、より高い解像度の浮出し画像の効果があるとともに、いくつかの単純な色ベースの効果(例えば、画像反転またはレンズのピッチとは全く合わない色のピッチにより生成される動く線の単純なモアレ効果)が可能になるからである。
【0020】
浮出し区域をインク付けする場合は、浮出し区域の高さは、隣接する浮出しでない領域にインクが入ることを防ぐために、加えられるインクの厚さより大きくなければならない。
【0021】
場合によっては、セキュリティデバイスは、単にレンチキュラーデバイスだけを備えてもよい。しかしながら、特に好ましい例では、そして本発明の第2および第4の態様によれば、レンチキュラーデバイスとは異なる少なくとも1つの他のレリーフ構造が設けられた基材に、画像細片のレリーフ構造も設けられる。少なくとも1つの他のレリーフ構造を設けることにより、さらなる安全性を実現することが可能になる。例えば、その少なくとも1つの他のレリーフ構造は、ホログラフィー構造またはモアレ拡大に適した微小画像を備えてもよく、後者の場合、セキュリティデバイスは微小画像の上方に置かれたモアレ拡大レンズアレイをさらに備える。1次元のモアレ拡大デバイスの場合は、レンチキュラーデバイスとモアレ拡大鏡の両方が同じレンチキュラーレンズアレイとともに機能し、別個のレンズアレイは必要なくなる。
【0022】
レンチキュラーデバイスから観察される画像と他のレリーフ構造を結びつけることにより、またはそれらの間にコントラストを与えることにより、特にセキュアなデバイスを実現できることが、容易に理解されよう。場合によっては、他のレリーフ構造を使用して3次元のホログラフィー効果などの様々な効果を実現する一方で、レンチキュラーデバイスにより、デバイスを傾けたときに見かけ上動く画像を実現してもよい。他のレリーフ構造により、1次元の視差運動(例えば、レンチキュラー画像の視差運動と平行なもの)または2次元の視差運動も実現するモアレ拡大デバイスの一部を形成すれば、特に都合よい。
【0023】
セキュリティデバイスは、例えば、ある形成場所で基材の一方の側にレンチキュラー集束要素のアレイを、別の形成場所で基材の他方の側にレリーフ構造をエンボス加工または注型硬化することにより、色々なやり方で製造することができる。
【0024】
しかしながら、2つのロールの間に透明基材を通過させることによって製造のステップを実行し、基材の一方の側にレンチキュラー集束要素のアレイを刻印するように一方のロールを構成し、同時に、基材の他方の側に画像細片のレリーフ構造を刻印するように他方のロールを構成すれば、特に便利である。これにより、集束要素のアレイと画像細片の間で確実に位置合わせがされるようになる。
【0025】
確実に位置合わせをするための別のやり方は、まずレンチキュラー集束要素のアレイを設けて、次に2つのロールの間に基材を通すことであり、そのロールのうちの一方はレンチキュラー集束要素のアレイに沿う表面を有し、他方は画像細片のレリーフ構造を与えるのに使用する。このようにして、画像細片のレリーフ構造は、レンチキュラー集束要素のアレイに位置合わせされることになる。
【0026】
セキュリティデバイスは、画像構造の一部または別の層として金属化層を備えてもよい。好ましくは、そうした層は、いくつかの場所で選択的に非金属化されている。加えて、そのデバイスは、金属化層の上にレジスト層をさらに備えてもよい。金属化層および/またはレジスト層は、好ましくは証印として構成される。
【0027】
デバイスを機械読取り可能なように構成することも好ましい。このことは、いくつかのやり方で実現することができる。例えば、デバイスの少なくとも1つの層(オプションで別個の層として)が、機械読取り可能な材料をさらに備えてもよい。好ましくは、機械読取り可能な材料は、マグネタイトなどの磁性材料である。機械読取り可能な材料には、外的刺激に対する反応性があってもよい。さらに、機械読取り可能な材料が層内に形成されるとき、この層は透明でもよい。
【0028】
セキュリティデバイスは、多くの異なる用途で、例えば、価値のあるものに取り付けて使用することができる。好ましくは、セキュリティデバイスは、セキュリティ文書に付着されるか、またはセキュリティ文書内に実質的に含まれる。したがって、セキュリティデバイスは、そうした文書の表面に取り付けてもよいし、または部分的に文書内に埋め込んでもよい。セキュリティデバイスは、セキュリティ文書用に色々な異なる形態をとることができ、これらの形態には、限定的でない例として、セキュリティスレッドや、セキュリティファイバ、セキュリティパッチ、セキュリティストリップ、セキュリティストライプ、セキュリティフォイルが含まれる。
【0029】
では、添付の図面を参照して、本発明によるセキュリティデバイスおよび方法のいくつかの例を記載し、既知のデバイスと対比する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】既知のレンチキュラーデバイスを通した概略断面図である。
図2図1の既知のレンチキュラーデバイスの修正形態を上から見た斜視図である。
図3】異なる傾斜角での図2のデバイスの外観を示す。
図4】本発明による画像細片を定めるレリーフ構造の様々な例を示す。
図5A】本発明によるセキュリティデバイスの第1の例の平面図である。
図5b】一体化されたホログラフィーデバイスとレンチキュラーデバイスを示す。
図6a図5AのA−A線についての断面図を示す。
図6b図5AのB−B線についての断面図を示す。
図7】4つの画像細片をもつレンチキュラーデバイスを示す。
図8】本発明によるセキュリティデバイスの第2の例の平面図である。
図9】セキュリティストリップの形をした本発明によるセキュリティデバイスの第3の例を示す。
図10】モアレ拡大システムの構成要素を示す。
図11a】本発明によるセキュリティデバイスを製造する方法の第1の例における連続する段階を示す。
図11b】本発明によるセキュリティデバイスを製造する方法の第1の例における連続する段階を示す。
図12図11の方法を修正したものを示す。
図13a】本発明の別の例によるセキュリティデバイスを製造するための連続するステップを示す。
図13b】本発明の別の例によるセキュリティデバイスを製造するための連続するステップを示す。
図14】本発明によるセキュリティデバイスを製造するための装置の一部を概略的に示す。
図15】本発明によるセキュリティデバイスを製造するための装置の一部の第2の例を概略的に示す。
図16】レンズと微小ミラーの違いを示す光路図である。
図17】レンズと微小ミラーの違いを示す光路図である。
図18図7と同様だが、シリンドリカルレンズの代わりに微小ミラーを利用した場合の図である。
図19a】本発明によるセキュリティデバイスのさらに別の例を平面図で示す。
図19b】本発明によるセキュリティデバイスのさらに別の例を断面図で示す。
図20】別のレンチキュラー効果を示す。
図21】別のレンチキュラー効果を示す。
図22】別のレンチキュラー効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
既知のレンチキュラーデバイスを図1図3に示す。図1は既に上述した。一方、図2は、レンチキュラーデバイスを斜視図で示すが、簡単にするため、レンズにつき2つの画像細片だけをそれぞれA,Bでラベル付けして示している。図2に示したデバイスの、観察者に対する外観を、図3に示す。このように、上部を前方に傾けて(ビューTTF(top tilted forward))デバイスを配置すると画像細片Aが見えるが、底部を前方に傾けて(ビューBTF(bottom tilted forward))デバイスを配置すると画像細片Bが見えることになる。
【0032】
レンチキュラーデバイスでは、例えば細片A,Bなどの画像の薄片またはセグメントとして細片が配置されており、AとBは異なる画像かまたは同じ画像の異なるビューを表す。個々の細片は、画像区域と非画像区域を備える。既知のレンチキュラーデバイスでは、細片の画像領域は、基材、すなわちキャリア層4の上に印刷される。しかしながら、本発明では、細片の画像領域はレリーフ構造として形成される。これに適した色々な異なるレリーフ構造を図4に示す。
【0033】
例えば、図4のAは、エンボス加工された、またはくぼんだ線の形で細片の画像領域(IM)を示し、エンボス加工されていない線は細片の非画像領域(NI)に対応する。図4のBは、デボス加工された線、または隆起の形で細片の画像領域を示す。
【0034】
別の手法では、レリーフ構造を、回折格子(図4のC)またはモスアイ/ファインピッチ格子(図4のD)の形にすることもできる。
【0035】
図4のAおよびBの凹みまたは隆起には、図4のEおよびFにそれぞれ示すように、さらに格子を設けることができる。
【0036】
図4のGは、色消し効果を与える単純な散乱構造を使用したものを示す。
【0037】
さらに、上述のように、場合によっては、図4のAの凹みにインクを与えることができ、または、デボス加工された領域もしくは隆起にインクを与えることができる。後者は、本発明の第1の態様の特に重要な特徴であり、図4のHに示す。そこでは、隆起11の上にインク層10が設けられている。
【0038】
図4のIは、アステカ構造を使用したものを示す。
【0039】
加えて、画像区域と非画像区域は異なる要素の種類の組合せによって定めることができる。例えば、画像区域をモスアイ構造から形成し、非画像区域を格子から形成することができる。また、さらには、画像区域と非画像区域を異なるピッチまたは向きの格子によって形成することもできる。
【0040】
隆起/凹みの高さまたは深さは、好ましくは0.5〜10μmの範囲内、より好ましくは1〜5μmの範囲内である。隆起/凹みの典型的な幅は、アートワークの性質によって定められることになるが、典型的には100μm未満、より好ましくは50μm未満、さらにより好ましくは25ミクロン未満であろう。画像細片の幅と、したがって隆起または凹みの幅は、必要とされる視覚的効果の種類に依存し、例えば、集束要素の直径が30μmであれば、15μm幅の画像細片を使用して、2つのビューA,Bの間で単純な切換え効果を実現することができる。あるいは、アニメーション効果を滑らかにするために、典型的には少なくとも3個であるが理想的には30個ものできるだけ多くのビューを有することが好ましく、この場合、画像細片(および関連する隆起または凹み)の幅は0.1〜6μmの範囲内とすべきである。
【0041】
本発明によるこれらのレンチキュラーデバイスを使用してラベルを形成することができ、次にそのラベルを価値のある文書などの物品に付着させて、安全性を確保することができる。しかしながら、他の場合には、セキュリティデバイスを物品と一体化して形成することができる。したがって、図2に示したキャリア4は、実際は紙幣やIDカードなどの貴重品の基材とすることができる。セキュリティデバイスが設けられた基材の部分は、透明である必要があり、したがって、透明なウィンドウかまたは物品内の他の透明な領域とすることができる。
【0042】
他の例では、後述するように、セキュリティデバイスをセキュリティスレッドまたはセキュリティストリップの形とすることができる。
【0043】
特に好ましい例では、セキュリティデバイスは、1つまたは複数の他の光学的なセキュリティフィーチャも含む。この一例を図5および図6に示す。この例では、レンチキュラーデバイス27が、セキュリティデバイスの中央を横切って延びる線内に置かれた一連のシリンドリカルレンズ20によって形成され、この場合、セキュリティデバイスはラベル22である。微小レンズ20は、樹脂またはポリマーの層21の中にエンボス加工または注型硬化され、基材24または透明なポリマーのスペーサ層の上に形成され、基材24に接して透明ラッカー層26も設けられ、その中に画像細片A〜Cの組がシリンドリカルレンズ20と位置を合わせてエンボス加工されている。層24は、二軸延伸のPETやポリプロピレンなどの透明なポリマーでできた支持層または基材層である。この支持層24の厚さは、レンズ20の焦点距離に依存するが、典型的には6〜50ミクロンの範囲内となる。ポリマーの層21の厚さは、典型的には1〜100μm、より好ましくは1〜50μm、さらにより好ましくは5〜30μmの範囲内となる。
【0044】
図5および図6に示したレンチキュラーデバイス27に加えて、セキュリティデバイス22は、ラッカー層26内にエンボス加工されたいくつかのホログラフィー画像生成構造28を、本発明の第2の態様の一例として含む。
【0045】
レンチキュラー構造27に関連した画像細片A〜Cは、図5AのB−B軸の周りにデバイスを傾けたときに移動するV字模様の画像30,32が見えるように配置されている。これにより、レンチキュラーアニメーションのため主要なセキュリティ効果が得られる。しかしながら、これに加えて、ホログラフィー生成構造28により、非常に魅力的かつ特徴的な色の変化を見せるホログラフィー画像が生成される。図5Aでは3つの画像細片しか示していないが、これは単に説明を簡単にするためであり、動きの効果を出すには特に、より多くの画像細片を有するのが好ましいということに留意されたい。
【0046】
ホログラフィー生成構造28は、ホログラムまたはDOVID画像要素の形とすることができる。図5Aに示したラベルの構造22では、レンチキュラーデバイス27はラベルの中央の水平な帯または領域内に置かれ、ホログラフィー生成構造28はその両側に置かれる。しかしながら、この例は単に説明のためのものであり、例えば、ホログラフィー生成構造28を中央の帯または細片内に置き、レンチキュラーデバイスを両側の1つまたは複数の領域内に設けることができるということを理解されたい。あるいは、レンチキュラーデバイスにより提供される画像と、ホログラフィック生成構造により提供される画像とを、それぞれが単一の画像の構成要素を提供することで単一の画像に一体化させることもできる。図5bは、そうした一体化された模様の一例を示す。ここでは、ホログラフィー生成構造がスクロール170を形成し、そのスクロールの中ほどで、ホログラフィー構造をレンチキュラー画像180で使用されるレリーフ構造と置き換えて、この場合、スクロールの中ほどで移動するV字模様の強力なレンチキュラーアニメーションを作り出す。
【0047】
図5の例では、シリンドリカル小型レンズ20の曲率が周期的に変動する方向に対して垂直な軸の周りにセキュリティデバイスを傾けたときだけレンチキュラーアニメーションが起こるということを理解されたい。この場合、B−B線の周りにデバイスを傾けると、V字模様のレンチキュラーアニメーションがA−A線に沿って起こるであろう。
【0048】
逆に、シリンドリカルレンズのシステムおよび関連した画像細片を90度だけ回転させた場合、レンチキュラーアニメーションは、A−A線の周りにセキュリティデバイスを傾けたときだけ起こる。アニメーション自体は任意の方向で起こることができ、純粋にアートワークに依存する。
【0049】
好ましい実施形態では、シリンドリカル小型レンズの曲率が周期的に変動する方向が、x軸(図5AのA−A線)もしくはy軸(図5AのB−B線)に対して45度か、または有利とみなすことができる角度の間の任意の角度になるように、シリンドリカル微小レンズアレイと微小画像細片が配置される。デバイスによっては45度の角度が特に有利である。というのは、文書は南北または東西にのみ傾けられる傾向があり、どのように傾けてもデバイスが動くように見えるためである。安全性のさらなる利点は、従来の厚いレンチキュラーデバイスは南北または東西の向きのレンチキュラーのみで作られており、これにより、粗末な、厚みのある偽造物に対するさらなる防御が可能になるということである。
【0050】
今述べたような例の特別な利点は、ホログラフィー画像生成構造28を形成する画像細片A〜Cおよび表面レリーフがそれぞれ同じ基材内にエンボス加工され、これにより、製造プロセスが特に簡便になり、かつ画像細片とホログラフィー画像生成構造の間で正確な位置合わせを実現できるようになるということである。
【0051】
図7は、4つの画像細片A〜Dを備えるレンチキュラーデバイスの例を示しており、それらの画像細片は、レンチキュラーアニメーション効果を作り出すため、同じ画像の異なるビューである。この例では、PETスペーサ層の24に接して設けられた樹脂層26における一続きの浮出し領域または隆起を作成することによって、細片の画像区域が作り出される。樹脂層21が層24の反対側の表面上に設けられ、その中にレンズアレイ20がエンボス加工または注型硬化される。次いで、典型的には平版印刷、フレキソ印刷またはグラビア印刷のプロセスを使用して、浮出し領域上に着色インクが転写される。図7に示した例では、画像細片AおよびBがある色27で印刷され、画像細片CおよびDが別の色28で印刷される。このように、デバイスを傾けてレンチキュラーアニメーション効果を作り出すとき、観察者がビューBからビューCに移ると、画像には色の変化も見られるであろう。別の例では、デバイスのある領域内ですべての細片A〜Dが1つの色であり、デバイスの別の領域内ですべての細片が別の1つの色となる。あるいは、画像細片A,B,CおよびDをすべて異なる色にすることもできる。
【0052】
さらに別の実施形態では、画像細片Aが画像のあるビューの多色版を表し、画像細片C,Dがそれぞれ同じ画像の異なるように着色された多色版を表すこともできる。
【0053】
インク付けに適したレリーフ構造は、反射率が高くなく、かつインク付けされる前に異なる色光度/輝度を与える構造でないことが好ましい。というのは、そうでないと印刷されたインクの色で観察者を困惑させることになるためである。インク付けされていない回折性のレリーフ構造と比較したときのインク付けされた浮出し構造の利点は、着色されたインク構造により、インク付けされていない領域および異なるように着色された他のインク付けされた領域の両方とのコントラストを高められるということである。浮出しインク構造により形成された画像の可視度は、異なる照明条件のもとで著しく変化することはないであろう。このことは、照明条件が悪いときに可視度が著しく低下する回折性の構造と対照的である。さらに、インクの不透明度と色は、従来のインク生産技法を使用して容易に制御可能である。これに対し、回折格子を使用するとより複雑で作るのに費用がかかり、実際には、効果的に回折させるには格子に多数の周期が必要であり、したがって、画像細片の幅にわたって強力な着色効果を実現することは困難であろう。
【0054】
さらに別の実施形態では、細片の画像要素が回折格子から形成されると、次いで、1つの細片の中または別々の細片の中の異なる画像要素を、異なる格子により形成することができる。格子のピッチまたは回転に違いがあってもよい。このことを使って、アニメーションなどのレンチキュラーの視覚的効果も示すであろう多色の回折性画像を実現することができる。例えば、図5に示した例でV字模様を作り出す画像細片が各細片について異なる回折トラックを書くことによって作られた場合、図5のデバイスをB−B線の周りに傾けると、様々な回折格子のためにV字模様の色が次第に変化する間に、V字模様のレンチキュラーアニメーションが起こることになる。そうした格子を書くための好ましい方法は、電子ビーム描画技法またはドットマトリックス技法を使用することであろう。
【0055】
図8は、互いに90°の向きである2組のシリンドリカル微小レンズ20のアレイがある、図5Aと同様のさらに別の配置を示す。本実施形態では、東西に傾けるとA−A線に沿って互いに近付いたり離れるように動くV字模様の画像34をレンチキュラーデバイス32が提供し、南北に傾けるとB−B線に沿って互いに近付いたり離れるように動くV字模様の画像をレンチキュラーデバイス32’が提供する。加えて、そのレンチキュラーデバイス同士の間に定められるスペースに、5つの表面レリーフホログラフィー生成構造28が置かれている。
【0056】
ホログラフィー構造28の場合、これらは任意の従来の形態をもつことができ、完全にまたは部分的に金属化することができる。あるいは、反射を強化する金属化層を実質的に透明な無機の高屈折率層と置き換えることができる。
【0057】
いかなる配置を定めても、ホログラフィーデバイスまたはレンチキュラーデバイスに割り当てられた個々の領域が、それぞれホログラフィー効果とレンチキュラーアニメーション効果をはっきり視覚化しやすくするほど十分に大きければ、都合よい。
【0058】
レンチキュラーデバイスは、アニメーション効果を与えるものとして記載しているが、もちろん、画像モーフィングや画像スイッチングなどの他の効果も与えることができる。異なる種類の効果の例を図20図21および図22に示す。図20は、異なるビューが、異なるサイズの同じ画像、この場合は数字の100を、傾けたときに次第にサイズが大きくなるように見える(ズーム効果)ように表すデバイスを示す。図21はさらなる変形を示し、この場合は、デバイスを傾けたときに異なるビューを通して星形が拡大するように見える(拡大効果)。図22は、デバイスを傾けたときに第1の色のドル記号と第2の色の数字「40」の色が反転する(スイッチ効果)スイッチングデバイスの一例を示す。もちろん、インク付けされた浮出し構造を使用することで画像の色を変化させることにより、ズーム効果や拡大効果をさらに強くすることができる。
【0059】
図5図8に示したセキュリティデバイスは、レリーフ構造を含む外面に感熱性または感圧性の接着剤を塗布することが通常必要になるラベルとして利用するのに適している。加えて、シリンドリカルレンズを含む外面に、光保護コーティング/ワニスを塗布することができる。保護コーティング/ワニスの機能は、セキュリティ基材上に移され流通している間、デバイスの耐久性を高めることである。保護コーティングの屈折率は、シリンドリカルレンズの屈折率より著しく低くなければならない。
【0060】
ラベルではなく転写要素の場合、好ましくは、セキュリティデバイスはキャリア基材上に予め製作され、後続する作業ステップでその基材に転写される。セキュリティデバイスは、接着層を使用して文書に貼り付けることができる。接着層は、セキュリティデバイスか、またはデバイスを貼り付けるべきセキュア文書の表面に塗布される。転写後に、キャリア細片を取り除いてセキュリティデバイスを露出層として残すことができ、あるいは、キャリア層を外部保護層として働く構造の一部のまま残すことができる。微小な光学構造を備える注型硬化デバイスに基づきセキュリティデバイスを転写するための適当な方法が、欧州特許第1897700号に記載されている。
【0061】
図9は、セキュリティストリップまたはセキュリティスレッドの形のセキュリティデバイスを示す。セキュリティスレッドは、今では、世界の多くの通貨だけでなく、バウチャーや、パスポート、トラベラーズチェック、その他の文書にも見られる。多くの場合、スレッドは部分的に埋め込まれるかまたはウィンドウがある形で設けられ、そこでは、スレッドが紙面を縫って通っているように見える。いわゆるウィンドウがあるスレッドを有する紙を生産する1つの方法を、欧州特許第0059056号で見つけることができる。欧州特許第0860298号と国際公開第03095188号には、より幅広の部分的に露出したスレッドを紙の基材の中に埋め込むための異なる手法が記載されている。典型的には2〜6mmの幅をもつ幅広のスレッドは、本発明などの光学的に変動するデバイスを付加的な露出区域によってよりうまく使用することが可能になるため、特に有用である。図5に示したデバイス構造は、微小レンズアレイおよび/または微小画像アレイを含む外面に透明で無色の接着剤を塗布することにより、スレッドとして使用することができる。
【0062】
微小レンズと接触する接着剤の光学的な特性を注意深く選択することが重要である。接着剤の屈折率は微小レンズの材料より低くなければならず、微小レンズと接着剤の間の屈折率の差が大きくなるほど、レンズの後部焦点距離が短くなり、したがって、最終的なセキュリティデバイスがより薄くなる。
【0063】
図9のスレッドまたはストリップは、以前の例と同様に作られたホログラフィーデバイス40とレンチキュラーデバイス42を1つおきに備える。例えば、ホログラフィーデバイスとレンチキュラーデバイスの両方を表面レリーフ構造によって定めることができる一方で、レンチキュラーデバイスの画像細片は、インクを乗せるエンボス加工されたフィーチャによって定めることができる。この模様の中で、拡大する星形はホログラム要素を表し、V字模様はレンチキュラーアニメーションを表す。スレッドがその長軸の周りに回転すると、レンチキュラーデバイス42は画像が動く効果を示す。その一方で、水平に傾けたときに小さなものから大きなものに拡大し、鉛直に傾けたときに色が変化するように星形を示すことができ、V字模様はスレッドを横切って斜めの方向に動く。
【0064】
図9に示したものの代替の実施形態では、空間的に別個のレンチキュラー領域により異なる視覚的効果を示すことができる。例えば、ある組が画像スイッチングを示し、ある組がレンチキュラーアニメーション効果を示すことができる。
【0065】
他の例(図示せず)では、1つまたは複数のホログラフィー生成構造をモアレ拡大構造により置き換えることができ、その構造は2次元または1次元の構造とすることができる。2次元のモアレ拡大構造は、欧州特許出願公開第1695121号と国際公開第94/27254号により詳細に記載されている。モアレ拡大デバイスは、微小レンズと微小画像の組合せにより構成される。レンズアレイと画像アレイの間にわずかなピッチの不整合がある最も単純な場合には、一定倍率の一連の拡大画像が、レンズの垂直視差に起因する動きとともに見られる。1次元のモアレ拡大構造では、従来の2次元のモアレ拡大構造で使用される2次元の球面レンズアレイが、シリンドリカル小型レンズを繰り返した配置と置き換えられる。この結果、レンズの曲率またはレリーフがそれに沿って周期的に変動する唯一の軸内で、微小画像要素がモアレ拡大されることになる。その結果、微小画像は拡大軸に沿って大きく圧縮または縮小されるが、拡大軸に直交する軸に沿った微小画像要素のサイズまたは寸法は、観察者に見えるものと実質的に同じである。すなわち、拡大または引き伸ばしは起こらない。微小画像は、インクを用いて、またはインクなしで、レリーフ構造として印刷または形成することができる。
【0066】
例えば、図10を参照して、モアレ拡大画像が直径2mmの円の配列で構成されるようにする非常に単純なシナリオを考える。さらに、微小レンズアレイに対する微小画像アレイの周期性と配列により50倍のモアレ拡大が実現されるように定めたものと仮定する。便宜的にレンズの湾曲の軸をx軸に選ぶと、微小画像アレイが楕円形の画像要素のマトリックスで構成され、(x軸と一致する)楕円の短軸が0.04mmの幅と2mmの高さをもつことになる。
【0067】
1次元のモアレシステムでは、シリンドリカル小型レンズの曲率が周期的に変動する軸に沿ってのみ視差運動が起こることを理解されたい。したがって、今述べた例では、デバイスを東西に傾けたときに、x軸に沿って円形画像の視差運動(および拡大)が起こる。デバイスを南北に傾けたときには視差運動が見られないことに留意されたい。逆に、シリンドリカルレンズシステムと微小画像アレイを90度だけ回転させた場合、デバイスを南北に傾けたときに、y軸に沿って視差運動が起こる。
【0068】
視差の軸がx軸もしくはy軸に対して45度か、または有利とみなすことができる角度の間の任意の角度になるように、微小レンズアレイと微小画像アレイを配置することも、もちろん可能である。
【0069】
1次元のモアレ拡大デバイスとレンチキュラー構造の組合せは、それらが両方ともレンチキュラーレンズアレイを備え、したがって、デバイスの両方の領域について同じレンズアレイを使用できるため、特に有利である。レンチキュラー構造と1次元のモアレ拡大構造の組合せの典型的な例では、レンチキュラー構造により単純な画像切換えを見せることができ、1次元のモアレ拡大鏡により視差運動の効果を示すことになる。
【0070】
さて、上述のデバイスを製造するための方法のいくつかの例を記載する。第1の例(図11)では、PET層などのキャリア層24を、注型硬化または熱成形の樹脂21で被覆する(ステップ1)。次いで、この樹脂21を、シリンドリカルレンズアレイ20に注型またはエンボス加工する(ステップ2)。
【0071】
次いで、キャリア24の他方の側を、注型硬化または熱成形の樹脂26で被覆し(ステップ3)、細片AおよびB内の画像要素に対応する凹み50を、注型またはエンボス加工により、レンズ20と位置合わせしてその樹脂層内に形成する(ステップ4)。
【0072】
例えば、PET24などの透き通ったポリマー薄膜のロールの第1の表面上を、紫外線硬化性ポリマーの層21で被覆する。適当な紫外線硬化性ポリマーには、ニュージャージー州のNorland Products,Inc.から入手可能な感光性樹脂のNOA61や、Cibaから入手可能なXymara OVDプライマー、Akzo−Nobelから入手可能なUV9206が含まれる。次いで、その膜を、微小レンズアレイ20用の原盤構造の陰画を含む第1のエンボス加工ローラと接触させる。エンボス加工ローラを接触させる際、紫外線硬化性ポリマー層21内に微小レンズアレイ構造20が複製される。構造を複製したら、紫外線放射を当てることにより紫外線硬化性ポリマー層を硬化させ、次いで、被覆膜をエンボス加工ローラから放す。次いで、NOA61などの紫外線硬化性ポリマーの層26を、膜24の反対側の第2の表面上に被覆する。次いで、膜24の第2の表面を、画像細片の画像要素用の原盤構造の陰画を含む第2のエンボス加工ローラと接触させる。エンボス加工ローラを接触させる際、透き通ったポリマー薄膜の第2の表面側の紫外線硬化性ポリマー層内に、画像構造が複製される。構造を複製したら、紫外線放射を当てることにより紫外線硬化性ポリマー層を硬化させ、次いで、被覆膜をエンボス加工ローラから放す。
【0073】
上記の注型用樹脂の着色版などの第1の不透明な着色料52か、または例えばLuminescenceによる60473Gなどのグラビアインキを使用して、一様に着色または染めたコーティングを層26のエンボス加工された表面に塗布する。これにより凹み50が充填され、全体層26上にコーティングが与えられる(ステップ5)。そのコーティング方法は、典型的には、グラビア印刷、平版印刷もしくはフレキソ印刷、またはアニロックスローラの使用による。
【0074】
ステップ6では、細片内の画像要素を形成する凹み50内だけに第1の着色料が残るように、ドクターブレードプロセスを使用して過剰な第1の着色料52を取り除く。
【0075】
オプションとして、ステップ7では、典型的には、平版印刷、フレキソ印刷またはグラビア印刷のプロセスを使用して、レンズ20を通して細片の非画像領域内には第2の着色料54が見え、画像領域には第1の着色料52が見えるように、上記の注型用樹脂の着色版などの着色もしくは染めたコーティングか、または例えばLuminescenceによる60473Gなどのグラビアインキの形で、第2の着色料54を樹脂層26上に被覆する。したがって、観察者は、異なるように着色された背景に、着色画像を見ることになる。図11のレンチキュラーデバイスは各レンズの下に画像細片が2つだけある単純なスイッチングデバイスであり、もちろん、レンチキュラーアニメーション効果を与えるために必要となるであろうより多くの画像細片を備えるレンチキュラーデバイスにも同じ方法を使用できるということに留意されたい。
【0076】
図12は、その方法の修正形態を示す。この場合、ステップ1〜4は、図11を参照して前述したものである。しかしながら、ステップ5の代わりのステップ5Aでは、層26の浮き出た(くぼんでいない)直線的な領域上に第1の着色料52が移され、それにより、アニロックスローラもしくは印刷ブランケットからのオフセット転写方法、または平版印刷、フレキソ印刷もしくはグラビア印刷を使用して、細片内に画像要素が形成される。
【0077】
変形例では、例えば、ある要素を青色でインク付けし、他の要素を赤色インクでインク付けするように、デバイスの異なる区域では異なる色で全体のインク付けを構成する。理想的には、この色のパターンを、レリーフ構造の上に一度に転写する前に、一方の転写ローラ上に構成する。この同時転写により、色同士を互いに完全に位置合わせすることが可能になる。
【0078】
別の必須でないステップであるステップ6Aでは、ステップ6の代わりに、第2の着色料54を層26上に、凹み50も充填するように、一様に被覆する(ステップ6A)。これは、グラビア印刷またはオフセット平版印刷のプロセスなどを使用して実行することができる。この場合、第2の着色料54が画像要素を画定し、第1の着色料52が非画像要素を画定し、したがって、着色背景領域を形成することになる。
【0079】
上述の方法が専らレンチキュラーデバイスに関することは、容易に理解されよう。レンチキュラーデバイスをホログラムなどの別のレリーフ構造と組み合わせるべきであれば、そのデバイスを定める表面レリーフも層26内にエンボス加工されることになる。
【0080】
図13は、画像細片が回折性表面レリーフにより形成される代替の方法を示す。
【0081】
ステップ1では、キャリア層24を注型硬化または熱成形の樹脂層26で被覆する(ステップ1)。
【0082】
レンチキュラースイッチングデバイスのビューAおよびBを表す細片AおよびBは、画像領域と非画像領域を備える。細片Aでは、ある格子構造Xにより画像領域が定められ、細片Bでは、別の異なる格子構造Yにより画像領域が定められる。次いで、前もって作り出しておいた格子構造X,Yを、樹脂層26の露出した表面内にエンボス加工することにより同時に形成する(ステップ2)。AおよびBの画像領域について2つの異なる格子構造を使用することにより、異なる回折性の色彩効果に起因する視覚的なコントラストが与えられる。この差は本質的なものではなく、画像領域は同じ回折性格子の構造によって定めることができる。非画像領域も、画像領域のものとは異なる格子構造によって定めることができる。それらの格子構造は、例えば、回転やピッチにより異ならせることができる。
【0083】
次いで、格子表面のレリーフ構造の上に、反射コーティング層60を設ける(ステップ3)。この反射コーティングは、金属化層かまたは高屈折率層とすることができる。高屈折率の、典型的には無機の材料を使用することは、当技術分野でよく知られており、米国特許第4856857号に記載されている。高屈折率層に適した材料の典型的な例には、硫化亜鉛や、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムが含まれる。蒸着被覆した金属の反射強化層を透明な高屈折率層と置き換えることは、セキュア文書の(典型的には開口またはウィンドウとして知られている)透明な領域上に本発明のセキュリティデバイスを付けるときに、特に有益である。
【0084】
次いで、キャリア層24の他方の側を、注型硬化または熱成形の樹脂21で被覆し(ステップ4)、それから、細片AおよびBと位置合わせされるように、1組のシリンドリカルレンズ20を層21内にエンボス加工する(ステップ5)。
【0085】
そのエンボス加工のステップを実現することができるやり方がいくつかある。
【0086】
図14では、層21,24,26を備える基材64に、シリンドリカルレンズ20が既に設けられている。それが次に2つのローラ68,70の間を通過する。ローラ68は、各レンズ20がローラ68の表面内の対応する凹みに受けられるようにレンズ20と補完関係にある表面を有する。ローラ70は、層26内にエンボス加工されるレリーフ構造と補完関係にある表面を有する。この表面は、簡単にするため規則的なレリーフとして示しているが、典型的には不規則になる。そして、ローラ68内の凹みにより、ローラ70の表面に対して基材64が正しく置かれることが保証される。
【0087】
図15は、代替の例を示し、ここでは、全体を62で示している基材(および、いかなるエンボス加工もされる前の層21,24,26に当たるもの)が2つのエンボス加工ローラ64,66の間に送り込まれる。エンボス加工ローラ64は、エンボス加工されるシリンドリカルレンズの組20と補完関係にある表面を有し、一方、エンボス加工ローラ66は、基材62の他方の側にエンボス加工されレリーフ構造と補完関係にある表面を有する。この表面は、簡単にするため規則的なレリーフとして示しているが、典型的には不規則になる。この装置で、シリンドリカルレンズ20とレリーフ構造の間の位置合わせを確実なものにすることができる。
【0088】
今までに記載した例では、焦点を合わせることができるようにするために、シリンドリカルレンズを使用してきた。微小ミラーを含む、他のレンチキュラー集束要素を使用することもできる。微小ミラーを使用することには、今から記載するようないくつかの利点がある。
【0089】
レンズの後部焦点距離fは、(1次の近似までで)直径Dより短くならないように制限される(図16を参照)。
【0090】
または、数学的にはf≧Dである。
【0091】
本質的には、スネルの法則に従って、屈折により実現可能な偏向の量によって、その限度は動かされる。可能な偏向は、レンズのトポロジーと(1つまたは複数の)材料の屈折率により決定される。レンズのトポロジーにより、レンズの端部が表面に対してどれだけの角度をなすかが決定される。与えられる屈折は、表面角に加えて、レンズとその前方にある空気の間の屈折率の差により決定される。
【0092】
鏡があると、偏向角はスネルの法則ではなく、(反射角は入射角に等しいという)反射の法則により決定される。これは、屈折よりはるかに強力である。端部で表面に対して45°の角をなす湾曲した鏡により、光が最大90°だけ、すなわち表面と平行に偏向することになる(図17)。
【0093】
鏡面については、f≧0である。
【0094】
他に次のような利点がある。
− 与えられた焦点距離について、鏡面自体の高さ(または深さ)はより小さくなる。
− 鏡は金属化されているため、鏡と画像の両方を接着剤で上塗りすることができる。
【0095】
焦点距離(したがって、厚さ)が微小ミラーの直径によって制限されないという事実は、印刷可能な最小の線幅と無関係な厚さをレンチキュラーデバイスがもつことができるということを意味する。したがって、実際に、従来の平版印刷(200μmの高さの文字)を微小ミラーと組み合わせて、30μmの厚さをもつレンチキュラーデバイスを作ることが可能である。
【0096】
図18は、同じ色のインクを各隆起A〜D上に使用することを除いて図7の例に基づくが、微小ミラーを集束要素として利用するセキュリティデバイスの典型的な断面を示す。この例では、前述したように1組のシリンドリカルレンズを注型し、次いで、裏面上に金属層を蒸着被覆することにより、一続きの微小ミラー200が熱成形樹脂21内に形成される。レンチキュラーデバイスは、デバイスの頂面上に形成された4つの画像細片A〜Dを備え、その頂面では、浮出し領域(隆起)上に印刷することによりこれらの細片の画像領域が作り出されている。
【0097】
本発明のセキュリティデバイスは、検出可能な材料を任意の層に導入することにより、または別個の機械読取り可能な層を導入することにより、機械読取り可能にすることができる。外的刺激に反応する検出可能な材料には、これらに限定されないが、蛍光材料や、燐光材料、赤外線吸収材料、熱変色性材料、フォトクロミック材料、磁性材料、エレクトロクロミック材料、導電性材料、ピエゾクロミック材料が含まれる。
【0098】
本発明のセキュリティデバイスは、任意の所望の印刷画像や、金属性層などの別のセキュリティフィーチャを備えてもよく、それらは不透明か、半透明か、または覆われていてもよい。そうした金属性層は、既知の非金属化プロセスにより作られた陰画または陽画の証印を含んでもよい。
【0099】
セキュリティデバイスには、薄膜干渉要素や、液晶材料、フォトニック結晶材料などの別の光学的に変動する材料を含めることができる。そうした材料は、膜状の層の形で、または印刷により塗布するのに適した色素材料として存在してもよい。
【0100】
図19aおよび図19bは、本発明のセキュリティデバイスの中に組み込まれた非金属化画像250の形の第2のセキュリティフィーチャを示す。レンチキュラー構造260に関連した画像細片は、インク付けされた浮出し構造から形成され、図19aのB−B軸の周りにデバイスを傾けたときに移動するV字模様画像が見えるように配置されている。これにより、強力なレンチキュラーアニメーションのため主要なセキュリティ効果が得られる。図19bでわかるように、図19aに示したフィーチャの構造はPETスペーサ層300を備え、その上面上には、レンチキュラー構造260の一部を形成するシリンドリカル小型レンズアレイ310が設けられている。これは、以前の例のように樹脂層内に注型硬化またはエンボス加工することにより形成されることになる。
【0101】
層300の他方の表面には、レンチキュラー構造260の画像細片を定めるレリーフ構造がエンボス加工されているエンボス層320が設けられる。前述したように、浮出し領域上に着色インク層を塗布する(簡単にするために図示していない)。エンボス構造の上に金属性層330を被覆する。B−Bに沿った図19bの断面でわかるように、金属層330の一部が非金属化されて、非金属化画像250を定める。
【0102】
金属化層は、レリーフ構造を形成する画像を備える層の上に塗布されないか、またはその後に既知の非金属化プロセスを使用して取り除かれる。金属化層により、反射光、ただしより好ましくは透過光で見ることができる、非金属化された証印を作成することが可能になる。
【0103】
部分的に金属化/非金属化された膜であって、制御されはっきり定められた区域に金属が存在しない膜を生成する1つのやり方は、米国特許第4652015号に記載されているものなどのレジスト・エッチング技法を使用して、領域を選択的に非金属化することである。同様の効果を実現するための他の技法では、例えば、マスクを通してアルミニウムを真空蒸着することができ、または、プラスチックキャリアとアルミニウムの複合材の細片からエキシマレーザを使用してアルミニウムを選択的に取り除くことができる。あるいは、Eckartにより販売されているMetalstar(登録商標)インクなどの、見た目が金属性である金属効果インクを印刷することにより、金属性領域を設けてもよい。
【0104】
金属性層があることは、機械読取り可能な暗い磁性層の存在を隠すのに使用することができる。磁性材料がデバイス内に組み込まれていれば、その磁性材料を任意の模様で利用することができるが、一般的な例には、磁気トラムライン(magnetic tramline)を使用するか、または磁性ブロックを使用して、コード化された構造を形成することが含まれる。適当な磁性材料には、酸化鉄顔料(FeまたはFe)や、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらの合金が含まれる。この文脈では、「合金」の用語には、ニッケル・コバルトや、鉄・アルミニウム・ニッケル・コバルトなどの材料が含まれる。フレークニッケル材料を使用することができ、加えて、鉄フレーク材料が適当である。典型的なニッケルフレークは、横の寸法が5〜50ミクロンの範囲内で、厚さが2ミクロン未満である。典型的な鉄フレークは、横の寸法が10〜30ミクロンの範囲内で、厚さが2ミクロン未満である。
【0105】
代替の機械読取り可能な実施形態では、デバイス構造内の任意の位置に、透明な磁性層を組み込むことができる。所定のサイズでありかつ磁性層が透明のままの濃度で分布した磁性材料の粒子の分布を含む適当な透明な磁性層が、国際公開第03091953号や国際公開第03091952号に記載されている。
【0106】
さらに別の例では、本発明のセキュリティデバイスを、セキュリティ文書の透明な領域に組み込まれるように、その文書内に組み込んでもよい。セキュリティ文書は、紙やポリマーを含む任意の従来の材料から形成された基材を有してもよい。これらの種類の基材のそれぞれにおいて透明な領域を形成するための技法が、当技術分野で知られている。例えば、国際公開第8300659号には、基材の両側に不透明なコーティングを備える透明基材から形成されたポリマー紙幣が記載されている。透明な領域を形成するために、基材の両側の局所的な領域ではその不透明なコーティングは省かれる。
【0107】
欧州特許第1141480号には、紙の基材に透明な領域を作る方法が記載されている。紙の基材に透明な領域を作るための他の方法は、欧州特許第0723501号や、欧州特許第0724519号、欧州特許第1398174号、国際公開第03054297号に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19a
図19b
図20
図21
図22