(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
GPS衛星から送信される電波を受信して機体の位置を算出するGPS位置算出手段と、操舵装置を回動する操舵駆動手段と、エンジン回転制御手段と、変速手段と、これらを制御する制御部を備え、前記機体の位置に基づいて設定経路に沿って走行するように前記操舵駆動手段、エンジン回転制御手段及び変速手段を制御して自動走行可能とする自動走行モードと、変速操作手段、操舵操作手段及びエンジン回転操作手段の人為的操作に応じて前記機体の走行を可能とする手動走行モードとを備える走行車両において、制御部には自動走行モードと手動走行モードを切り換えるモード切換操作手段が接続され、制御部は、モード切換操作手段が手動から自動に切り換えられると、車速が設定速度以下、かつ、操舵装置が略直進位置、かつ、前後進切換手段が中立、かつ、クラッチペダル16、ブレーキペダル15、パーキングレバー39が操作されていない、かつ、副変速装置が低速位置、かつ、走行車両に異常がなく、かつ、エンジン回転数が設定回転数以上の場合、自動走行準備モードに切り換わり、自動走行にかかる必要なデータがそろうと、自動走行モードとなり自動走行が開始されることを特徴とする走行車両。
前記制御部には、前記自動走行準備モードにおいて、車速が前記設定速度よりも速い、または、操舵操作手段が直進位置でない、または、モード切換操作手段による切換操作から設定時間経過した場合は、手動走行準備モードに移行することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、走行車両の一例としてトラクタ1の全体構成について説明する。但し、走行車両はトラクタに限定するものではなく、複数の走行輪を有して走行可能とし、操舵装置により操舵操作が可能な田植機や乗用管理機や運搬車等であってもよい。
【0013】
図1から
図3において、ボンネット2内にエンジン3が内設され、該ボンネット2の後部のキャビン11内にダッシュボード14が設けられ、ダッシュボード14上に操舵操作手段となるステアリングハンドル4が設けられている。該ステアリングハンドル4の回動により操舵装置を介して前輪9・9の向きが回動され、その回動角度は前輪9の回動基部に設けた舵角センサ7aにより検知され、舵角センサ7aにより得られた検出値は制御部30に入力される。前記ステアリングハンドル4の後方に運転席5が配設され、運転席5下方にミッションケース6が配置される。ミッションケース6の左右両側にリアアクスルケース8・8が連設され、該リアアクスルケース8・8には車軸を介して後輪10・10が支承される。エンジン3からの動力はミッションケース6内の主変速装置や副変速装置により変速されて、後輪10・10を駆動可能としている。後輪10の回転数は車速センサ27により検知され、走行速度として制御部30に入力される。但し、車速の検知方法や配置位置は限定するものではない。
【0014】
前記エンジン3を支持するフロントフレーム13にはフロントアクスルケース7が支持され、該フロントアクスルケース7の両側に前輪9・9が支承され、前記ミッションケース6からの動力が前輪9・9に伝達可能に構成している。前記前輪9・9は操舵輪となっており、ステアリングハンドル4の回動操作により回動可能とするとともに、操舵駆動手段となるパワステシリンダからなる操舵アクチュエータ40により前輪9・9が左右操舵回動可能となっている。操舵アクチュエータ40は制御部30と接続され、自動走行制御により駆動される。
【0015】
前記運転席5とステアリングハンドル4との間の下方にステップ12が形成される。前記ステップ12上のダッシュボード14の進行方向右下方に左右ブレーキペダル15・15やアクセルペダル28が配置され、その近傍にパーキングレバー39が配置され、ダッシュボード14の左下方にクラッチペダル16が配置される。前記ブレーキペダル15の踏込量はブレーキセンサ15aにより検知され、パーキングレバー39の操作はパーキングレバー位置センサ39aにより検知され、ブレーキセンサ15a及びパーキングレバー位置センサ39aは制御部30と接続され、ブレーキセンサ15a及びパーキングレバー位置センサ39aの検出値に応じて制動手段となるブレーキアクチュエータ41が作動され、リアアクスルケース8(またはミッションケース6)内に設けたブレーキにより制動可能としている。
【0016】
クラッチペダル16はエンジン3とデフ装置との間に設けるクラッチを入切操作するものであり、クラッチペダル16の回動基部にはクラッチセンサ16aが設けられ、クラッチはクラッチアクチュエータ46の作動により断接され、クラッチセンサ16a及びクラッチアクチュエータ46は制御部30と接続されている。クラッチペダル16を踏込操作すると、クラッチセンサ16aにより検知されて、制御部30を介してクラッチアクチュエータ46が作動されてクラッチを断(オフ)とする。なお、クラッチは作業車両に応じて、エンジン3と変速装置の間に配置しても、変速装置に配置しても、前後進切換装置に配置しても良く、クラッチの配置位置は限定するものではない。また、クラッチの構成も摩擦式、油圧式等限定するものではない。
【0017】
また、ダッシュボード14の右側にはアクセルレバー21や作業機昇降スイッチが配置され、ダッシュボード14の左側には前後進切換レバー22が配置されている。アクセルレバー21及び前記アクセルペダル28の操作量はアクセルセンサ21aにより検知され、アクセルセンサ21aは制御部30と接続され、検出値を入力する。制御部30にはエンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ60及びエンジン回転数センサ61が接続され、エンジンコントローラ60には回転数を変更するアクセルアクチュエータ42が接続されている。エンジン3の回転がアクセルレバー21またはアクセルペダル28または自動走行設定手段70により設定した回転数となるようにアクセルアクチュエータ42が作動される。アクセルアクチュエータ42はエンジンの種類に合わせて、スロットル変更モータや燃料噴射量を変更するラックアクチュエータや燃料噴射ノズルを開閉するソレノイド等で構成される。
【0018】
前後進切換レバー22の回動基部には切換位置検知センサ22aが配置されて切換位置を検知し、ミッションケース6内には前後進切換装置が配置されて前後進切換アクチュエータ43により切り換え可能としている。前記切換位置検知センサ22a及び前後進切換アクチュエータ43は制御部30と接続されて、前後進切換レバー22が操作されると前後進切換アクチュエータ43を作動させて前後進切換が行われる。なお、前後進を切り換えるための構成は、歯車摺動式や油圧クラッチ式やHST斜板変更式等により可能であり、限定するものではなく、また、前後進切換アクチュエータ43はモータやソレノイド等で構成することが可能であり、限定するものではない。
【0019】
前記ダッシュボード14上にはエンジン回転数や異常や設定値等を表示する表示手段49やキースイッチやモード切換操作手段となる自動・手動切換スイッチ71等が配置されている。自動・手動切換スイッチ71は自動走行モードと手動走行モードを人為的操作で切り換えるものであり、詳細は後述する。また、表示手段49や自動・手動切換スイッチ71の配置位置は限定するものではなく、キャビン11の柱等に設けてもよい。
【0020】
前記運転席5の右側には、主変速レバー17や作業機高さを調節する昇降レバー18やPTO入切スイッチ25等が配置され、主変速レバー17の回動基部には主変速レバー位置センサ17aが設けられて回動操作位置が検知され、主変速レバー位置センサ17aは制御部30と接続されて検出値が入力される。前記ミッションケース6には主変速装置を変速するための主変速アクチュエータ44が設けられ、主変速レバー17の操作に応じて作動されて変速される。主変速装置は本実施形態では油圧式無段変速装置により構成され、斜板をソレノイドまたはモータ等で構成した主変速アクチュエータ44により傾倒させて変速する構成としている。
【0021】
昇降レバー18の回動基部には昇降レバー位置センサ18aが配置されて回動操作位置が検知され、昇降レバー位置センサ18aは制御部30と接続されて検出値が入力される。昇降レバー18を操作すると、後述する昇降アクチュエータ48が切り換えられて昇降油圧シリンダ26が作動されてロータリ耕耘装置24を昇降することができる。
PTO入切スイッチ25はミッションケース6内に設けたPTOクラッチを断接操作するものであり、PTO入切スイッチ25及びPTOクラッチを切換作動するPTOクラッチアクチュエータ45は制御部30と接続され、PTO入切スイッチ25の操作によりPTOクラッチアクチュエータ45が作動されて、PTO軸への動力の断接を可能としている。
【0022】
前記運転席5の左側にはPTO変速レバー19や副変速レバー20等が配置される。副変速レバー20の回動基部には副変速レバー位置センサ20aが設けられ、副変速レバー位置センサ20aは制御部30と接続されて検出値が入力される。前記ミッションケース6には副変速装置を変速するための副変速アクチュエータ47が設けられ、副変速レバー20の操作に応じて作動されて変速される。主変速レバー17及び副変速レバー20は変速操作手段とし、主変速アクチュエータ44及び副変速アクチュエータ47は変速手段としている。
そして、運転席5やステアリングハンドル4や主変速レバー17や副変速レバー20の操作手段等はキャビン11により覆われている。なお、前記レバー類やスイッチ等の配置位置は限定するものではない。
【0023】
また、トラクタ機体後方に作業機装着装置23を介して作業機としてロータリ耕耘装置24が昇降自在に装設させて耕耘作業を行うように構成している。前記ミッションケース6上に昇降シリンダ26が設けられ、該昇降シリンダ26を伸縮させることにより、作業機装着装置23を構成する昇降アームを回動させてロータリ耕耘装置24を昇降できるようにしている。また、作業機装着装置23の左右一側には傾倒シリンダが設けられ、ロータリ耕耘装置24を左右傾倒可能に構成している。
【0024】
前記キャビン11上にGPS衛星37からの電波を受信する移動GPSアンテナ34が設けられ、移動GPSアンテナ34は移動受信機33と接続され、移動受信機33は制御部30と接続されている。該制御部30には、トラクタ1の走行状態を検出するための手段として、GPS位置算出手段と変位・方位算出手段を備え、ジャイロセンサ31と方位センサ32と移動受信機33と接続している。
【0025】
次に、トラクタ1の走行状態を取得する方法について説明する。
トラクタ1は、機体の姿勢情報を得るためにジャイロセンサ31、および方位センサ32を具備する。
ジャイロセンサ31はトラクタ1の機体前後方向の傾斜(ピッチ)の角速度、機体左右方向の傾斜(ロール)の角速度、および旋回(ヨー)の角速度、を検出するものである。該三つの角速度を積分計算することにより、トラクタ1の機体の前後方向および左右方向への傾斜角度、および旋回角度を求めることが可能である。ジャイロセンサ31の具体例としては、機械式ジャイロセンサ、光学式ジャイロセンサ、流体式ジャイロセンサ、振動式ジャイロセンサ等が挙げられる。ジャイロセンサ31は制御部30に接続され、当該三つの角速度に係る情報を制御部30に入力する。
【0026】
方位センサ32はトラクタ1の向き(進行方向)を検出するものである。方位センサ32の具体例としては磁気方位センサ等が挙げられる。方位センサ32は制御部30に接続され、機体の向きに係る情報を制御部30に入力する。
【0027】
こうして制御部30は、上記ジャイロセンサ31、方位センサ32から取得した信号を変位・方位演算手段により演算し、トラクタ1の姿勢(向き、機体前後方向及び機体左右方向の傾斜、旋回方向)を求める。
【0028】
次に、トラクタ1の位置情報をGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いて取得する方法について説明する。
GPSは、元来航空機・船舶等の航法支援用として開発されたシステムであって、上空約二万キロメートルを周回する二十四個のGPS衛星(六軌道面に四個ずつ配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成される。
GPSを用いた測位方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位など種々の方法が挙げられ、これらいずれの方法を用いることも可能であるが、本実施形態では測定精度の高いRTK−GPS測位方式を採用し、この方法について
図1、
図3より説明する。
【0029】
RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、位置が判っている基準局と、位置を求めようとする移動局とで同時にGPS観測を行い、基準局で観測したデータを無線等の方法で移動局にリアルタイムで送信し、基準局の位置成果に基づいて移動局の位置をリアルタイムに求める方法である。
【0030】
本実施形態においては、トラクタ1に移動局となる移動受信機33と移動GPSアンテナ34が配置され、基準局となる固定受信機35と固定GPSアンテナ36が圃場の作業の邪魔にならない所定位置に配設される。本実施形態のRTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、基準局および移動局の両方で位相の測定(相対測位)を行い、基準局の固定受信機35で観測した位相データを移動受信機33に送信する。
【0031】
トラクタ1に配置された移動GPSアンテナ34はGPS衛星37・37・・・からの信号を受信する。この信号は移動受信機33に送信され測位される。そして、同時に基準局となる固定GPSアンテナ36でGPS衛星37・37・・・からの信号を受信し、固定受信機35で測位し移動受信機33に送信し、観測されたデータを解析して移動局の位置を決定する。こうして得られた位置情報は制御部30に送信される。
【0032】
こうして、このトラクタ1における制御部30は、GPS衛星37・37・・・から送信される電波を受信して移動受信機33において設定時間間隔で機体の位置情報を求め、ジャイロセンサ31及び方位センサ32から機体の変位情報および方位情報を求め、これら位置情報と変位情報と方位情報に基づいて機体が予め設定した設定経路に沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、主変速アクチュエータ44等を制御する。自動耕耘作業にあっては、ロータリ耕耘装置24を設定深さ(耕深)となるように昇降アクチュエータ48を制御し、設定回転数となるようにエンジンコントローラ60によってエンジン3の回転数を制御する。設定経路および作業態様はキャビン11内の任意位置に配設した自動走行設定手段70により設定する。自動走行設定手段70はタッチパネル等で構成して表示手段49と一体的に構成してもよい。
【0033】
次に、本発明の手動運転(手動走行モード)と自動運転(自動走行モード)の切り換え制御について、
図4より説明する。
【0034】
制御部30は、手動走行モード80と自動走行モード81と自動走行準備モード82と手動走行準備モード83と、これらを切り換えるモード切換手段84とを備える。
【0035】
モード切換手段84は、各モードにおいて、後述する移行条件が満たされると、その条件に合うモードへ移行させるための手段である。
【0036】
手動走行モード80は、自動走行設定手段70の設定によるプログラムとは関係なく、ステアリングハンドル4、ブレーキペダル15、クラッチペダル16、主変速レバー17、昇降レバー18、PTO変速レバー19、副変速レバー20、アクセルレバー21、前後進切換レバー22、PTOスイッチ25等の人為的に操作によって、トラクタ1を走行させたり、作業させたり、停止させたりするモードである。手動走行モード80において、自動走行開始条件が満たされると(移行条件1)、モード切換手段84により自動走行準備モード82に移行される。
【0037】
自動走行準備モード82は、手動走行モード80から自動走行モード81への遷移モードであり、エンジン3はアイドル回転数とし、走行停止状態として走行作業開始指令が整うまで待機する。
自動走行準備モード82時において自動走行に必要なデータが揃い、そのデータが異常値ではなく、自動走行開始指示が出されていると(移行条件2)、モード切換手段84により自動走行モード81に移行される。また、自動走行準備モード82時において、自動走行中断条件が満たされていたり、遷移後設定時間以上経過したりしていると(移行条件3)、モード切換手段84により手動走行準備モード83に移行される。即ち、自動走行準備モード82がないと、直接、手動走行モード80から自動走行モード81へ移行してしまうので、遷移途中で異常が生じた場合やGPSの信号の処理中でも自動走行が開始され、作業開始時に乱れることがある。本実施例では自動走行準備モード82があるため、これらを回避して、スムーズな移行が可能となる。
【0038】
自動走行モード81は、自動走行設定手段70により設定した条件に従い、自動的に、予め設定した経路に沿うように、トラクタ1の位置や方向を検知しながら操舵アクチュエータ40やブレーキアクチュエータ41を制御して走行し、設定した速度となるように、エンジン回転数や変速装置を制御し、設定した作業を行うように昇降アクチュエータ48等を制御する。
自動走行モード81時において、自動走行に必要なデータが揃っていなかったり、データが異常値であったり、走行停止が指示されたり、自動走行中断条件が満たされると(移行条件4)、モード切換手段84により手動走行準備モード83に移行される。
【0039】
手動走行準備モード83は、自動走行モード81から手動走行モード80への遷移モードであり、自動走行設定手段70によるプログラムは無視し、エンジン3はアイドル回転数とし、走行を停止させる制御を行う。
手動走行準備モード83時において、手動走行開始条件が満たされると(移行条件5)、モード切換手段84により手動走行モード80に移行される。また、手動走行準備モード83時において、自動走行開始条件が満たされると(移行条件6)、モード切換手段84により手動走行準備モード83に移行される。即ち、自動走行モード81から手動走行モード80へ直接移行すると、急加速やエンジン回転数の急増の可能性があるので、自動走行モード81から手動走行モード80へ移行する際には、一旦、車速を最低速、エンジン回転数を最低回転数に落として安全を確保してから、手動走行に移行するようにしている。即ち、手動走行準備モード83がないと、直接、自動走行モード81から手動走行モード80へ移行してしまうので、変速操作手段の位置によっては急発進することがあり、アクセルレバー21の位置によってはエンストしたり、高回転となったりし、操舵装置の位置によっては急旋回したりすることがある。手動走行準備モード83を設けることでこれらを防止し、自動走行モード81への復帰も容易にできるようにしている。
【0040】
次に、各モードへの具体的な移行制御を説明する。
まず、手動操作でトラクタ1を圃場内の作業開始位置に移動する。エンジン3が作動され、機体の走行が停止され、手動走行モード80とした状態において自動走行を開始する場合、制御部30は、自動走行開始条件が満たされているか判断する。つまり、車速が設定速度(この設定速度は急発進しないような遅い速度で、例えば1km/h)以下で、前後進切換レバー22が中立、かつ、クラッチペダル16、ブレーキペダル15、パーキングレバー39が操作されていない、かつ、副変速レバー20が低速位置、かつ、エンジン回転数が設定回転数以上(この設定回転数はエンジン3が作動している最低回転数で、例えば250rpm以上)、かつ、ステアリングハンドル4が直進位置(以下「直進位置」は殆ど旋回しない略直進状態の位置とする)、かつ、トラクタに異常が発生していない状態で、自動・手動切換スイッチ71がオン(自動走行)に切り換えられているかを判断する。この自動走行開始条件(移行条件1)を満たしていると、自動走行準備モード82に移行される。
前記トラクタの異常とは、バッテリの電圧が設定値(最低作動電圧)以下であったり、油圧が設定値(最低作動圧)以下であったり、冷却水の温度が設定値(オーバーヒート水温)以上であったり、センサが反応していない場合等である。
【0041】
自動走行準備モード82に移行すると、自動走行に必要なデータがすべて揃っているか、自動走行中断条件を満たしているか、自動走行準備モード82に移行後設定時間(例えば1秒)以上経過したか、判断し、自動走行に必要なデータがすべて揃っていると(移行条件2)、自動走行モード81に移行し、自動走行中断条件を満たしている場合、または、自動走行準備モード82に移行後、設定時間以上経過した場合(移行条件3)、手動走行準備モード83に移行する。
【0042】
前記自動走行に必要なデータとしては、走行経路データや作業データやGPSからの位置データやジャイロセンサ31と方位センサ32からのデータ等である。
【0043】
また、前記自動走行中断条件とは、前後進切換レバー22が中立位置以外の位置にある、または、クラッチペダル16またはブレーキペダル15またはパーキングレバー39が操作されている、または、副変速レバー20が低速位置以外の位置、または、エンジン回転数が設定回転数未満(例えば250rpm未満)、または、トラクタに異常が発生した場合、または、自動・手動切換スイッチ71がオフに切り換えられた場合、または、PTOスイッチ25がオンまたはオフに操作された場合である。つまり、自動走行準備モード82に移行後に、作業者が手動操作を行うと、自動走行が中断されるようにして、手動操作を優先させている。
【0044】
自動走行が開始されて自動走行モード81に移行した状態においては、制御部30は、自動走行に必要なデータが揃わないか、または、自動走行に必要なデータが異常な値となっていないか、または、自動走行中断条件を満たしているか、または、自動走行停止を指示されたか(移行条件4)、判断し、これらのいずれか一つの条件が満たされると手動走行準備モード83に移行する。
自動走行に必要なデータが揃わない場合とは、走行経路データや作業データが消去されたり、変更された場合や、GPSからの位置データが届かない場合や、ジャイロセンサ31や方位センサ32からのデータが入力されない場合等である。
自動走行停止を指示された場合とは、自動走行プログラムが終了した場合や、自動走行設定手段70を用いて停止指令(プログラム)をした場合や、設定値等を変更した場合や、遠隔操作で停止が指示された場合等である。
【0045】
自動走行が中断されたりして手動走行準備モード83に移行すると、手動走行開始条件が満たされたか、自動走行開始条件が満たされたか判断する。手動走行開始条件が満たされると(移行条件5)手動走行モード80への移行を許可し、自動走行開始条件が満たされると(移行条件6)自動走行準備モード82への移行を許可する。
手動走行開始条件とは、前後進切換レバー22が中立で、主変速レバー17が最低速位置から設定範囲内の位置に変速され、アクセルレバー21が低回転域(例えば、最大回転数の50パーセント以下)にセットされ、自動・手動切換スイッチ71がオフ(手動)になっていることである。こうして、エンジン3が低回転で機体が停止しているときに手動走行モード80に移行できるようにして、急発進や急旋回等が生じないようにしている。
【0046】
以上のように、GPS衛星37から送信される電波を受信して機体の位置を算出するGPS位置算出手段と、操舵装置を回動する操舵駆動手段となる操舵アクチュエータ40と、エンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ60と、変速手段となる主変速アクチュエータ44と副変速アクチュエータ47と、これらを制御する制御部30を備え、前記機体の位置に基づいて設定経路に沿って走行するように前記操舵駆動手段、エンジン回転制御手段及び変速手段を制御して自動走行可能とする自動走行モード81と、変速操作手段となる主変速レバー17と副変速レバー20、操舵操作手段となるステアリングハンドル4及びエンジン回転操作手段となるアクセルレバー21の人為的操作に応じて前記機体の走行を可能とする手動走行モード80とを備える走行車両において、制御部30には自動走行モード81と手動走行モード80を切り換えるモード切換操作手段となる自動・手動切換スイッチ71が接続され、自動・手動切換スイッチ71が手動から自動に切り換えられると、車速が設定速度以下、かつ、操舵装置が略直進位置、かつ、前後進切換手段が中立、かつ、クラッチがオフ(クラッチペダル16が非操作)、かつ、ブレーキがオフ(ブレーキペダル15及びパーキングレバー39が非操作)、かつ、副変速装置が低速位置、かつ、トラクタに異常がなく、かつ、エンジン回転数が設定回転数以上の場合、自動走行準備モード82に切り換わり、自動走行にかかる必要なデータがそろうと、自動走行モード81となり自動走行が開始されるので、手動走行モード80から自動走行モード81に切り換わる途中で、自動走行準備モード82に切り換わり、急発進や急旋回することなくスムーズに自動走行が開始される。
【0047】
また、前記制御部30は、前記自動走行準備モード82において、車速が前記手動走行モード80から自動走行準備モード82への移行にかかる遅い設定速度よりも速い、または、操舵装置が直進位置でない、または、モード切換操作手段84による切換操作から設定時間経過した場合は、手動走行準備モード83に移行するので、車速が十分設定速度まで落ちずに自動走行に移行することがなく、または、自動走行移行時に旋回することもなく、モード切換操作手段となる自動・手動切換スイッチ71による切換操作により反応がない場合にはそのまま維持することなく手動走行準備モード83に移行する。そして、異常を認識して改善されると自動走行準備モード82へ復帰することもでき、または、自動走行をやめて手動走行モード80に速やかに移行することもできるようになる。
【0048】
また、前記自動走行準備モード82になると、制御部30は、エンジン3をアイドル回転に変更し、走行停止制御を行うので、強制的に一旦停止してから自動走行モード81に移行するので、急な変動が生じることがなく、確実に自動走行モード81へ移行ができ、安全性の向上が図れる。
【0049】
制御部30には自動走行モード81と手動走行モード80を切り換えるモード切換手段84が設けられ、制御部30は、自動走行モード81時に、前後進切換手段となる前後進切換レバー22が中立以外、または、クラッチペダル16が操作またはブレーキペダル15またはパーキングレバー39が操作された、または、副変速レバー20が低速以外、または、モード切換操作手段となる自動・手動切換スイッチ71が操作され、または、PTOスイッチ25の操作が行われた場合、または、エンジン回転数が設定回転数以下になった場合には、自動走行が中断され、手動走行準備モード83とするので、自動走行モード81時に、手動操作が行われたときや自動走行モード81では有り得ない回転数となると自動走行が中断され、容易に手動操作ができるようになり、意図しない走行を回避できる。また、自動走行モード81から直接手動走行モード80に移行しないため、急な車速変化やエンジン回転数変化や急旋回等が生じることがなく、スムーズな移行が図れる。また、手動操作の意思を確認することとなり、意図しないモード切換を防止できる。
【0050】
前記手動走行準備モード83になると、制御部30は、エンジン3をアイドル回転に変更するので、一旦エンジン3の回転数を落としてから手動走行モード80に移行することになり、急な速度変化が生じることがなくスムーズに手動走行モード80に移行できる。
【0051】
前記手動走行準備モード83において、制御部30は、自動走行開始条件を満たすと自動走行準備モード82に移行するので、自動走行が中断した状態から容易に自動走行モード81に復帰できてスムーズに発進できるようになる。