特許第5918181号(P5918181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918181
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】保冷材
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20160428BHJP
   B27L 11/06 20060101ALI20160428BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   A61F7/10 300G
   B27L11/06
   A47G9/10 C
   A61F7/10 312
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-177435(P2013-177435)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-43901(P2015-43901A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年7月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599174982
【氏名又は名称】横内 靖英
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】横内 靖英
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−156319(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3177696(JP,U)
【文献】 特開2009−207875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/10
A47G 9/10
B27L 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ半円から円形の範囲で円弧状にカールした木材チップの集合体からなる含水構造物に対して、含水率が180重量%〜390重量%となるよう水分を保持させたことを特徴とする保冷材。
【請求項2】
前記木材チップの集合体からなる含水構造物は、その水分1に対してグリセリンを0.1〜1の割合で配合されていることを特徴とする請求項1に記載の保冷材。
【請求項3】
前記集合体を構成する木材チップは、ヒノキその他の放香性のある木材や間伐材類からなることを特徴とする請求項1または2に記載の保冷材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は特にヒノキの間伐材等の木材をチップ状に加工した木材チップやおがくず(ひきぬか)の集合体、または連通構造の気泡を備えた発泡体からなる含水構造物を利用した保冷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで木材チップを袋詰め等をして人体の適所、例えば頭部その他の部位に当てて使用する枕として利用する例が従来からよく知られている。
例えば、以下の先行技術のようにして得た木材チップを利用することができる。
1)特公昭30−6296号公報
2)特公昭39−29015号公報
3)特開平2−213310号公報
4)実用新案登録第3056889号公報
5)特開2001−127111号公報
【0003】
なお、前記各先行技術において得られる木材チップはそれぞれ以下のような形状となっている。
前記1)細幅の多少カーブした楔状板材(第3,4図
前記2)細幅の多少カーブした楔状板材(第7,8図)
前記3)幅広の円筒状の厚さの同じ板材(第1図)
前記4)幅広の渦巻き状の厚さの同じ板材(第1,2図)
前記5)幅広の渦巻き状の厚さを変化させた板材(第5図)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭30−6296号公報
【特許文献2】特公昭39−29015号公報
【特許文献3】特開平2−213310号公報
【特許文献4】実用新案登録第3056889号公報
【特許文献5】特開2001−127111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記1)ないし5)の方法で得た木材チップをクッション材として枕に充填して使用する場合、通気性があって熱がこもりにくいという利点はあるものの、例えば夏場に使用する際には冷却機能を備えていることが望まれている。
【0006】
この発明は、枕やその他の身体を支えたり保護したりするための緩衝材に充填する木材チップ、おがくずに水分を保持させ、それを冷却あるいは冷凍して保冷材として利用することが可能であり、しかもその冷たさが長持ちするようにした保冷材を提供しようとするものである。
同様に、前記木材チップやおがくずに代えて連通構造の気泡を備えた発泡体を用いた場合も、木材チップ、おがくずを用いた場合と同様、冷たさが飛躍的に長持ちする保冷材が得られた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、この発明の保冷材は、ほぼ半円から円形の範囲で円弧状にカールした木材チップの集合体からなる含水構造物に対して、含水率が180重量%〜390重量%となるよう水分を保持させたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明の保冷材において、前記木材チップの集合体からなる含水構造物は、その水分1に対してグリセリンを0.1〜1の割合で配合されていることをも特徴とするものである。
【0009】
この発明の保冷材において、前記集合体を構成する木材チップ、おがくずが、ヒノキその他の放香性のある木材や間伐材類からなることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は以上のように構成したので、枕やその他の身体を支えたり保護したりするための緩衝材に充填する木材チップ、おがくずの集合体、または連通構造の気泡を備えた発泡体からなる含水構造物に水分を保持させ、それを冷却あるいは冷凍して保冷材として利用することを可能としたものであり、しかもその冷たさが長持ちするようにした保冷材を提供することができる。
【0011】
また、前記木材チップは、ほぼ半円から円形の範囲で円弧状にカールさせてあるので、袋詰めの際に適度の密集度で収納することができるためクッション材の嵩密度の変化が少ない、いわゆるクッション材がヘタリにくい保冷材を得ることができ、しかも薄片状で表面積が大きいので効率的に水分を保持させることが可能である。
さらにおがくず(ひきぬか)を用いた場合、袋詰めの際により高密度に充填することができ、したがってより一層、効率的に水分を保持させることが可能である。これらは環境に優しい素材であり、何ら問題なく廃棄処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の保冷材の木材チップの集合体からなる実施例を示す斜視図である。
図2】この発明の保冷材に使用される木材チップの形状の1例を示す斜視図である。
図3】この発明の保冷材に使用される木材チップの形状の他の例を示す斜視図である。
図4】この発明の保冷材の連通構造の気泡を備えた発泡体からなる実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下この発明の保冷材の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1はこの発明の保冷材を木材チップの集合体(含水構造物)で作製した実施例を示す斜視図である。
図1において11は、ヒノキその他の放香性のある木材や間伐材類を伐採した後、好ましくは生木の状態でチップ状に加工した木材チップであり、該木材チップ11の集合体21に対して所定の含水率となるよう水分を保持させてある。この含水した木材チップの集合体21を不織布や市販の緩衝材用の布、防水性のある各種シート類22を用いて袋詰めすれば保冷材20が得られる。この保冷材20を冷蔵庫、冷水や氷水中で冷蔵ないし冷凍させれば、いわゆる保冷材として好適に用いることができる。
もちろん、前記木材チップに代えておがくず(ひきぬか)を用いることもでき、おがくずは袋詰めの際に木材チップよりも高密度に充填することができ、したがってより一層、効率的に水分を保持させることが可能である。
このようにして得た保冷材20は、夏場の暑い盛りに冷たく心地よい保冷材として、あるいは病気の際の熱さまし用の保冷材として便利であり、かつ扱いやすい保冷材となる。
【0015】
この発明の保冷材において、前記集合体を構成する木材チップ11は、ほぼ半円から円形の範囲で円弧状にカールしていることが望ましい。このように前記木材チップ11をほぼ半円から円形の範囲で円弧状にカールさせておけば、袋詰めの際に適度の密集度で収納することができるためクッション材の嵩密度の変化が少ない、いわゆるクッション材がヘタリにくい保冷材を得ることができ、しかも薄片状で表面積が大きいので効率的に水分を保持させることが可能となる。
また、前記集合体を構成する木材チップ11として、ヒノキその他の放香性のある木材や間伐材類を使用すれば、枕として用いた場合にフィトンチッドの芳香が漂う寝心地の良い保冷材を提供することができる。
【0016】
本発明の保冷材の製作工程を以下に説明する。
まず、前記集合体21を構成する木材チップ11は、所定の時間水中に浸漬して十分に木材チップ11中に水分を保持させる。
前記集合体21を構成する木材チップ11は、その含水率を180重量%〜390重量%となるようにすれば緩衝材としての使用感、保冷材としての温度の維持等において好ましい。
なお、前記木材チップ11においては白身の方が含水しやすく、赤身の方が含水しにくいため、それぞれの特性を考慮の上で含水率を調節することが望ましい。
単純に水を凍らせたものと比較したときにおいて、おおむね25%程度の冷却維持効果を得ることができた。
【0017】
得た含水率が180重量%〜390重量%の木材チップ11の集合体21は不織布や市販の緩衝材用の布、防水性のある各種シート類22から好みの素材を用いて袋詰めすれば、所望の保冷材20を得ることができる。
得た保冷材20は冷凍庫で所定の時間冷凍すれば、保冷材20中の水分が凍結した状態となり、保冷材として所定の時間使用することができるようになった。この冷凍時間は、木材チップ11の集合体21のボリューム、含水率や冷凍機の仕様等に応じて適宜決定することが望ましい。
単純に水を凍らせたものと比較したときにおいて、おおむね25%程度の冷却維持効果を得ることができた。
【実施例2】
【0018】
前記集合体21を構成する木材チップ11は、所定の時間、水1:グリセリン0.3の割合で混合した混合液中に浸漬して十分に木材チップ11中に混合液を保持させる。この比率は−20℃で凍り始める比率であり、製品化した場合には凍ることなく冷たさを維持し、クッション性を持たせることが可能で、頭部や頸部の冷却に好適に使用することができる。
上述のように180重量%〜390重量%となるようにすることが緩衝材としての使用感、保冷材としての温度の維持等において好ましい。
【0019】
得た含水率が180重量%〜390重量%の木材チップ11の集合体21は不織布や市販の緩衝材用の布、防水性のある各種シート類22から好みの素材を用いて袋詰めすれば、所望の保冷材20を得ることができる。
得た保冷材20は冷凍庫で所定の時間冷凍すれば、保冷材20中の水分が凍結した状態となり、保冷材としてより長時間使用することができるようになった。
このように木材チップの含水率を180重量%〜390重量%となるようにすることにより、水分を長時間保持する機能と、緩衝材としての好適な使用感が得られる効果とを両立させることができる。
【0020】
[参考例1]
参考例では、前記木材チップに代えておがくず(ひきぬか)を用いる。おがくずは袋詰めの際に木材チップよりも高密度に充填することができ、したがってより一層、効率的に水分を保持させることが可能である。
この場合にも、おがくずを所定の時間、水1:グリセリン0.3の割合で混合した混合液中に浸漬して十分におがくず中に混合液を保持させる。
前記おがくずは、その含水率を360重量%〜1080重量%となるようにすることが緩衝材としての使用感、保冷材としての温度の維持等において好ましい。
そして、単純に水を凍らせたものと比較したときにおいて、おおむね25%程度の冷却維持効果を得ることができた。
得た含水率が360重量%〜1080重量%のおがくずの集合体は不織布や市販の緩衝材用の布、防水性のある各種シート類から好みの素材を用いて袋詰めすれば、所望の保冷材を得ることができる。
得た保冷材は冷凍庫で所定の時間冷凍すれば、保冷材中の水分が凍結した状態となり、保冷材としてより長時間使用することができるようになった。
このようにおがくずの含水率を360重量%〜1080重量%となるようにすることにより、水分を長時間保持する機能と、緩衝材としての好適な使用感が得られる効果とを両立させることができる。
このようにして得た保冷材は、夏場の暑い盛りに冷たく心地よい保冷材として、あるいは病気の際の熱さまし用の保冷材として便利であり、かつ扱いやすい保冷材となる。
【0021】
例えば、実施例2の保冷材の上に参考例1の保冷材を重ねて枕として使用すれば、水分が多くて柔軟な参考例1の保冷材が頭部をやさしく保持するとともに、硬さのある実施例2の保冷材により優れた冷却維持効果を得ることが可能となる。
もちろん、このような積層構造に限定されるものではなく、異なる条件の種々の保冷材を積層して使用することができることはいうまでもない。
【0022】
[参考例2]
図4はこの発明の保冷材を連通構造の気泡を備えた発泡体(含水構造物)で作製した参考例を示す斜視図である。
まず、前記連通構造の気泡を備えた発泡体31を構成する素材は、スポンジやウレタン、ポリオレフィン系等からなるその他の合成樹脂製発泡体であり、いずれも内部の気泡が連通して通水性のある構造となっている。
その上で該発泡体31に対して所定の含水率となるよう水分を保持させてある。
この含水した発泡体31を不織布や市販の緩衝材用の布、防水性のある各種シート類32を用いて袋詰めすれば保冷材30が得られる。この保冷材30を冷蔵庫、冷水や氷水中で冷蔵ないし冷凍させれば、いわゆる保冷材として好適に用いることができる。
このようにして得た保冷材30は、夏場の暑い盛りに冷たく心地よい保冷材として、あるいは病気の際の熱さまし用の保冷材として便利であり、かつ扱いやすい保冷材となる。
【0023】
参考例の保冷材の製作工程を以下に説明する。
まず、前記発泡体31は、所定の時間水中に浸漬して強制的に発泡体31中に水分を保持させる。
前記発泡体31は、その含水率を1900重量%となるようにすれば緩衝材としての使用感、保冷材としての温度の維持等において好ましい。
単純に水を凍らせたものと比較したときにおいて、おおむね25%程度の冷却維持効果を得ることができた。
【0024】
得た含水率が1900重量%の発泡体31は不織布や市販の緩衝材用の布、防水性のある各種シート類32から好みの素材を用いて袋詰めすれば、所望の保冷材30を得ることができる。
得た保冷材30は冷凍庫で所定の時間冷凍すれば、保冷材30中の水分が凍結した状態となり、保冷材として所定の時間使用することができるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明の保冷材は以上の構成を有しており、袋詰め等の処理を施されて、人体の適所、例えば頭部やわきの下、その他の部位に当てて保冷材として好適に利用することができる。
もちろん、本発明は保冷材として説明したが、長時間にわたって冷却することが必要とされる種々の用途に適宜使用することができる。
本発発明の保冷材の用途を列挙すると次の通りである。もちろん、例示のものに限定されるものではない。
<人体に使用する保冷剤>
1)保冷枕、保冷シートなど
2)スポーツや怪我をした時のアイシング、クーリングなどの目的で使用される保冷剤:マフラーやハチマキ状のものもある。
<食品の腐敗を防ぐために使用される保冷剤>
3)梱包用保冷材。
食品の宅配用の梱包材
ケーキの箱の裏に貼りつける保冷シート
【符号の説明】
【0026】
11 木材チップ
20 保冷材
21 木材チップの集合体
22 各種シート類
30 保冷材
31 発泡体
32 各種シート類
図1
図2
図3
図4