特許第5918188号(P5918188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918188
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/36 20060101AFI20160428BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20160428BHJP
   F16K 1/46 20060101ALI20160428BHJP
   F16K 31/42 20060101ALN20160428BHJP
   F16K 31/06 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   F16K1/36 E
   F16K1/00 E
   F16K1/46 A
   !F16K31/42 A
   !F16K31/06 305L
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-189421(P2013-189421)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-55311(P2015-55311A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 聡士
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−140136(JP,A)
【文献】 特開平11−257523(JP,A)
【文献】 特開2001−124440(JP,A)
【文献】 特開2000−035147(JP,A)
【文献】 特開2012−197908(JP,A)
【文献】 特開2012−202521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00− 1/54
F16K 31/12−31/42
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通路に接続される入口ポートと、第2の通路に接続される出口ポートとを有し、該入口ポートおよび該出口ポートに連通し、該出口ポートを開閉制御するピストンユニットを移動可能に収容する収容部を備える弁本体部と、
前記ピストンユニットに、前記出口ポートを開閉制御する動作を行わせるピストンユニット駆動機構と、を備え、
前記ピストンユニットが、前記出口ポートの周縁に形成される弁座に選択的に当接するシール部材と、該シール部材に係合され該シール部材を保持する保持用リング部材であって前記弁本体部の収容部および該シール部材の周囲に形成される隙間に連通する溝、および、該溝に連なる通路を、該シール部材に当接する端部に有する保持用リング部材と、を有することを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記保持用リング部材は、向かい合う端面にそれぞれ、形成される半径方向に延びる少なくとも1つの溝と、周囲に通路を形成する該溝に連なる面取り部を外周部に有することを特徴とする請求項1記載の制御弁。
【請求項3】
前記保持用リング部材は、向かい合う端面にそれぞれ、半径方向に延びる少なくとも1つの溝と、厚さ方向に貫通する貫通孔を該溝に有することを特徴とする請求項1記載の制御弁。
【請求項4】
前記ピストンユニットは、前記シール部材および前記保持用リング部材をそれぞれ収容する第1の凹部および第2の凹部を前記出口ポートの周縁に形成される弁座に向かい合って有するピストン部材を備え、前記シール部材の外周部と該ピストン部材の第1の凹部の内周部との隙間が、前記保持用リング部材の溝および前記面取り部に連通することを特徴とする請求項2載の制御弁。
【請求項5】
前記シール部材における環状部の一部が前記保持用リング部材の溝の一部に挿入されるとともに、前記ピストン部材の第2の凹部の周縁の一部が、該保持用リング部材の溝の一部に連なる他の部分に押し込まれることを特徴とする請求項4に記載の制御弁。
【請求項6】
前記ピストンユニットが前記出口ポートを閉状態とする場合、前記保持用リング部材が前記出口ポートの周縁に形成される弁座に連なるストッパー部に当接することを特徴とする請求項4記載の制御弁。
【請求項7】
前記弁本体部のストッパー部の立下り部における該弁本体部の中心軸線回りの直径は、前記ピストン部材の第1の凹部の内周部の最大径よりも大であることを特徴とする請求項6記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン部材を有する制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置等に用いられる制御弁としての切換弁は、例えば、特許文献1にも示されるように、チャンバーの開口端周縁に弁座を有する弁本体に、パイロット電磁弁機構を備えている。そのチャンバーは、第1の通路および第2の通路に連通している。そのパイロット電磁弁機構は、プランジャーチューブ内に摺動可能に配されるプランジャーと、プランジャーの下端部の内周部に配されるニードルと、一端にニードルの先端が当接される弁座を有しニードルにより上述のチャンバーの開口端周縁における弁座に選択的に当接する弁体と、プランジャーチューブの外周部の周りに配される電磁コイルとを主な要素として含んで構成されている。
【0003】
弁体は、特許文献1における図5(A),(B)に示されるように、チャンバーの開口端周縁における弁座に当接し開口端を密封するパッキンを下端部に有しているものが提案されている。そのようなシール部材としてのパッキンは、金属片の両端により弁体の下端部に保持されている。また、その金属片の両端における弁体外縁部が、チャンバーの開口端周縁における弁座の段付部に当接するように構成されている。
【0004】
斯かる構成において、電磁コイルが励磁される場合、プランジャーおよびニードルが押し下げられることによって、ニードルの下端が弁体の弁座に当接しながら下降せしめられることにより、弁体のパッキンがチャンバーの開口端周縁における弁座に当接し第1の通路と第2の通路との間が閉状態とされる。一方、電磁コイルが励磁されない場合、弁体のパッキンが、チャンバーの開口端周縁における弁座に対し離隔されるので第1の通路と第2の通路との間が開状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−124440号公報
【特許文献2】特開2001−330167号公報
【特許文献3】特開平2001−263527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に示される弁体のように、パッキンが、弁体の下端部に密着した状態で金属片の両端により保持される場合、弁体が上述の閉状態の位置をとるとき、パッキンが弁座に当接し押圧された後、金属片の両端における弁体外縁部が、チャンバーの開口端周縁における弁座の段付部に当接するものとされる。
【0007】
しかしながら、パッキンが、弁体の下端部に密着した状態で金属片の両端により保持され、パッキンと弁体の下端部との隙間に対し流体抜き通路(ガス抜き孔)がないので特許文献2における段落[0008]にも示唆されているように、パッキンと弁体の下端部との隙間で圧力の溜まり込み、所謂、液封が生じる虞がある。従って、その液封に起因してパッキンが弁体の下端部から外れる場合がある。
【0008】
以上の問題点を考慮し、本発明は、ピストン部材を有する制御弁であって、簡単な構成によりピストン部材に保持されるシール部材において圧力の溜まりこみを回避できる制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明に係る制御弁は、第1の通路に接続される入口ポートと、第2の通路に接続される出口ポートとを有し、入口ポートおよび出口ポートに連通し、出口ポートを開閉制御するピストンユニットを移動可能に収容する収容部を備える弁本体部と、ピストンユニットに、出口ポートを開閉制御する動作を行わせるピストンユニット駆動機構と、を備え、ピストンユニットが、出口ポートの周縁に形成される弁座に選択的に当接するシール部材と、シール部材に係合されシール部材を保持する保持用リング部材であって弁本体部の収容部およびシール部材の周囲に形成される隙間に連通する溝、および、溝に連なる通路を、シール部材に当接する端部に有する保持用リング部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る制御弁によれば、ピストンユニットが、シール部材に係合されシール部材を保持する保持用リング部材であって弁本体部の収容部およびシール部材の周囲に形成される隙間に連通する溝、および、溝に連なる通路を、シール部材に当接する端部に有する保持用リング部材を備えることにより、シール部材の周囲に形成される隙間に溜まりこむ圧力が、溝、および、溝に連なる通路を通じて回避されるので簡単な構成によりピストン部材に保持されるシール部材において圧力の溜まりこみを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る制御弁の一例に用いられるピストンユニットの外観を示す斜視図である。
図2】本発明に係る制御弁の一例の構成を、配管用パイプとともに示す断面図である。
図3図2に示される例における要部を拡大して示す部分断面図である。
図4図1に示される例における分解斜視図である。
図5図2に示されるV部を拡大して示す部分拡大図である。
図6図2に示される例における保持用リング部材の動作説明に供される部分拡大図である。
図7】(A),(B),および、(C)は、それぞれ、図1に示されるピストンユニットに用いられる保持用リング部材の一例を示す斜視図である。
図8】本発明に係る制御弁の他の一例の構成を、配管用パイプとともに示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2は、本発明に係る制御弁の一例の構成を、配管用パイプとともに概略的に示す。
【0013】
図2において、制御弁は、例えば、常閉型の電磁弁とされ、空調機器内の冷媒回路における配管に配置されている。電磁弁は、ボール弁34を有しプランジャチューブ26内に移動可能に配されるプランジャ28と、プランジャ28のボール弁34により開閉される排出通路36bを内側に有するピストンユニットと、プランジャチューブ26の一端に結合される弁本体部10と、プランジャチューブ26の外周部に配されプランジャ28を選択的に励磁する電磁コイルユニットと、を主な要素として含んで構成されている。
【0014】
電磁コイルユニットは、プランジャチューブ26の外周部に配されるコイル部20と、プランジャチューブ26の一端を閉塞する吸引子24と、コイル部20を覆い内側に収容するケーシング16とを主な要素として構成されている。コイル部20は、リード線22を介して図示が省略される駆動制御部に電気的に接続されている。小ネジ18がケーシング16の取付孔を介して吸引子24の雌ネジ孔に捻じ込まれることにより、ケーシング16は、吸引子24に固定されている。吸引子24がコイル部20により励磁される場合、磁力により後述するプランジャ28が吸引子24に引き寄せられる。
【0015】
プランジャ28は、図2に示されるように、プランジャチューブ26内における吸引子24の端部と後述するピストン部材36との間で移動可能に配されている。プランジャ28は、内部に連通路28aを有している。吸引子24の端部に向かい合う連通路28aの一端の拡大部には、コイルスプリング30の一端が受け止められ収容されている。コイルスプリング30は、プランジャ28を吸引子24に対し離隔する方向に、即ち、ピストンユニット側に付勢するものとされる。連通路28aの他端の拡大部には、図3に拡大されて示されるように、コイルスプリング38の一端が受け止められ収容されている。コイルスプリング38は、ボール弁34を保持するボールキャップ28Aの開口端に向けてボール弁34を付勢するものとされる。ボールキャップ28Aは、プランジャ28の端部に接合されている。ボールキャップ28Aの開口端は、連通路28aの他端に向き合うように形成されている。ボールキャップ28Aの開口端の直径は、ボール弁34の直径よりも小に設定されている。また、ボールキャップ28Aは、開口端の中心軸線に対し略直交するように複数個の細孔を有している。これにより、連通路28aの他端は、複数個の細孔を介してボールキャップ28Aの外周部と後述するピストン部材36の孔36Aの内周部との間の隙間に連通することとなる。
【0016】
弁本体部10は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金等により作られ、ボールキャップ28Aとともにピストンユニットを収容するピストンユニット収容部10Aを内側に有している。ピストンユニット収容部10Aには、プランジャ28の中心軸線に対し略直交する軸線上に第1の通路としての高圧側配管用パイプ12の一端が接続される入口ポート10PIと、プランジャ28の中心軸線と共通の軸線上に第2の通路としての低圧側配管用パイプ14の一端が接続される出口ポート10PEと、が形成されている。
【0017】
ピストンユニット収容部10Aの内周部における出口ポート10PEの開口端部には、環状の弁座10Vが形成されている。弁座10Vの円弧状の先端には、後述するシール部材としての弁体42が選択的に当接するものとされる。弁座10Vに連なる周囲には、図6に拡大されて示されるように、平坦なストッパー部10Sが形成されている。ストッパー部10Sは、弁座10Vの基端と共通の平面上に形成されている。これにより、ピストン部材36が押し下げられる場合、図6に二点鎖線で示されるように、後述する保持用リング部材44がストッパー部10Sに当接されることにより、押し下げられたピストン部材36の下端が、所定位置に位置決めされることとなる。
【0018】
また、弁本体部10におけるプランジャチューブ26の一端が結合された結合端部の内側には、止め輪32がプランジャチューブ26の一端に隣接して設けられている。これにより、ピストン部材36の一端が止め輪32に当接することにより、弁座10Vに対し離隔したピストン部材36の位置が規制されることとなる。ピストン部材36の外周部と弁本体部10の内周部における段差部との間には、ピストン部材36を弁座10Vに対し離隔する方向に付勢するコイルスプリング40が配されている。
【0019】
従って、後述するピストンユニットの駆動機構は、電磁コイルユニットと、ボール弁34を備えるプランジャ28と、コイルスプリング40とを含んで構成されている。
【0020】
ピストンユニットは、図4に示されるように、上述の弁本体部10におけるピストンユニット収容部10A内に移動可能に配されるピストン部材36と、ピストン部材36の第1の凹部36Cに保持されるシール部材としての弁体42と、弁体42に係止されピストン部材36の第1の凹部36Cに弁体42を保持する保持用リング部材44と、を含んで構成されている。
【0021】
ピストン部材36は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金で円筒状に作られ、図3に示されるように、ボールキャップ28Aおよびボール弁34が挿入される孔36Aを内部に有している。孔36Aの底部には、ボール弁34が開状態のとき、孔36A内の高圧側の流体を出口ポート10PEに排出する排出通路36bの一方の端部が開口している。排出通路36bの一方の端部には、ボール弁34を受け止める弁座が形成されている。なお、図3は、ボール弁34の閉状態を示す。
【0022】
排出通路36bの他方の端部は、出口ポート10PEに向けて開口している。排出通路36bは、上述のプランジャ28の中心軸線と共通の軸線上に配されるように形成されている。また、排出通路36bの他方の端部の周縁には、弁体42を位置決めする環状の突起部36Bが形成されている。また、突起部36Bの周囲には、弁体42が挿入される環状の第1の凹部36Cが形成されている。図5に拡大されて示されるように、ピストン部材36の中心軸線に対し略直交する第1の凹部36Cを形成する内周面からその中心軸線に沿った突起部36Bの先端までの高さHは、後述する弁体42の厚さTよりも若干大に設定されている。その際、第1の凹部36Cの内周部の最大径Dcは、所定の隙間をもって弁体42の最大直径よりも若干大に設定されている。最大径Dcは、弁本体部10のストッパー部10Sの立下り部における弁本体部10の中心軸線回りの直径Dbよりも小に設定されている。これにより、ピストン部材36の押圧力が、保持用リング部材44に曲げモーメントを作用させることなく、保持用リング部材44を介して弁本体部10のストッパー部10Sで受け止められることとなるので後述するかしめ部36Eが破損することなく、しかも、弁体42のクリープの増大が回避される。
【0023】
さらに、第1の凹部36Cの周縁には、図5に示されるように、第1の凹部36Cの内周部の最大径Dcよりも大なる直径を有する環状の第2の凹部36Dが形成されている。第2の凹部36Dには、後述する保持用リング部材44が挿入されている。第2の凹部36Dにおけるピストン部材36の中心軸線に沿った深さHbは、保持用リング部材44の厚さと略同一もしくは小であって、第1の凹部36Cの深さHaよりも小に設定されている。なお、深さHbは、斯かる例に限られることなく、深さHaと同一寸法、あるいは、大であってもよい。
【0024】
保持用リング部材44は、ピストン部材36の先細部に形成されるかしめ部36Eにより係止され第2の凹部36Dに保持されている。かしめ部36Eは、全周にわたり形成されている。なお、かしめ部36Eは、弁体42および保持用リング部材44が順次、第1の凹部36C、第2の凹部36Dに装着された後、図1に拡大されて示されるように、プレス加工により所定のかしめ代をもって形成される。その際、かしめ部36Eの一部は、後述する保持用リング部材44の各溝44G内に押し込まれる。
【0025】
かしめ部36Eの先端におけるピストン部材36の中心軸線回りの直径Daは、上述の直径Dbよりも大に設定されている。これにより、図3に示されるように、ピストンユニットが出口ポート10PEを閉状態とする場合、かしめ部36Eの先端が、弁本体部10のストッパー部10Sの立下り部に干渉する虞がない。なお、かしめ部36Eは、斯かる例に限られることなく、例えば、円周方向に沿って離隔した複数箇所に、個別に形成されてもよい。
【0026】
シール部材としての弁体42は、樹脂材料、例えば、エンジニアリングプラスチック、または、弾性材料としてのゴム材料で図4に拡大されて示されるように、環状に成形されている。弁体42は、上述のピストン部材36の突起部36Bが挿入される円形の貫通孔42aを中央に有している。弁体42は、第1の凹部36Cを形成する内周面に当接する大径部42Aと、大径部42Aと一体に形成され上述の弁座10Vに当接する小径部42Bとから構成されている。
【0027】
小径部42Bは、上述の弁座10Vに選択的に当接し出口ポート10PEの開口端を密封する。小径部42Bと大径部42Aとの境界部分には、図5および図6に拡大されて示されるように、保持用リング部材44の環状面で受け止められる段差部42Sが形成されている。
【0028】
保持用リング部材44は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金、あるいは、セラミックで環状に作られている。なお、保持用リング部材44の材質は、斯かる例に限られることなく、例えば、ピストン部材36の先細部に形成されるかしめ部36Eにより係止されるとき、破損しない強度を有するとともに作動流体に対し耐蝕性を有する材質であればよい。
【0029】
保持用リング部材44は、図7(A)に拡大されて示されるように、中央部に、弁体42の小径部42Bが挿入される貫通孔44aを有している。また、保持用リング部材44は、厚さ方向の両端面にそれぞれ、環状面を有している。各環状面における円周方向に沿って90°の間隔で、半径方向に沿って環状面を横切る溝44Gが、4箇所に向かい合って形成されている。また、保持用リング部材44の外周部における溝44Gに対応する位置には、切欠部としての円弧状の面取り44Cが施されている。なお、面取り44Cの形状は、斯かる例に限られることなく、例えば、平坦状、矩形状、V型であってもよい。これにより、図5および図6に示されるように、保持用リング部材44が弁体42を保持する場合、弁体42における小径部42Bの一部が各溝44Gの一部に押し込まれるとともに、弁体42の外周部と第1の凹部36Cの内周部との間の隙間と溝44Gの他の部分とが連通することとなる。これにより、図5に矢印で示されるように、弁体42の外周部と第1の凹部36Cの内周部との間の隙間にある作動流体、もしくはガスが溝44G,面取り44Cと第2の凹部36Dの内周部との間を通じて放出されることとなる。その結果、所謂、液封が回避される。また、図5に示されるように、弁体42における小径部42Bの一部が各溝44Gの一部に押し込まれるので弁体42の緩み防止となる。さらに、図6に二点鎖線で示されるように、保持用リング部材44の環状面がストッパー部10Sに当接する場合、弁体42の過剰な変形によるクリープが防止される。その際、各溝44Gにより、保持用リング部材44の環状面のストッパー部10Sに対する貼り付きも、回避される。
【0030】
斯かる構成において、コイル部20により吸引子24、プランジャ28が励磁されない場合、図3に示されるように、弁体42が弁座10Vに当接することにより、高圧側配管用パイプ12からの流体が遮断される。一方、コイル部20により吸引子24、プランジャ28が励磁される場合、プランジャ28がピストン部材36に対し離隔されることにより、ボール弁34が排出通路36bを開状態とし、ピストンユニット収容部10A内の高圧の流体が、出口ポート10PEに排出される。これにより、ピストンユニット収容部10A内の圧力が低下するのでピストン部材36の弁体42が、コイルスプリング40の付勢力により弁座10Vに対し離隔される。その際、ピストンユニット収容部10A内に作動流体が供給される。従って、高圧側配管用パイプ12からの作動流体が図3の矢印Fの示す方向に沿って低圧側配管用パイプ14に供給されることとなる。その後、吸引子24、プランジャ28が励磁されない場合、コイルスプリング30の付勢力によりプランジャ28におけるボール弁34が排出通路36bの開口端に当接することにより、弁体42が弁座10Vに当接し、高圧側配管用パイプ12からの作動流体が遮断される。
【0031】
保持用リング部材44は、斯かる例に限られることなく、例えば、図7(B)に拡大されて示されるように、溝54GAおよび54GBを有する保持用リング部材54が形成されてもよい。図7(A)に示される保持用リング部材44は、向かい合って形成される溝44Gを有するものとされるが、図7(B)に示される例においては、一方の環状面に形成される溝54GAと他方の環状面に形成される溝54GBとが向かい合っておらず、所定の円周角をもって、偏倚した位置に形成されているものとされる。これにより、保持用リング部材54における溝54GAおよび54GBに対応した位置の厚みを、図7(A)に示される例に比して大にとれるので保持用リング部材54の曲げ剛性が高められる。
【0032】
保持用リング部材54は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金、または、セラミックで環状に作られている。保持用リング部材54は、中央部に、弁体42の小径部42Bが挿入される貫通孔54aを有している。また、保持用リング部材54は、厚さ方向の両端面にそれぞれ、環状面を有している。各環状面における円周方向に沿って120°間隔で、半径方向に沿って各環状面を横切る溝54GAおよび54GBが、3箇所に形成されている。また、保持用リング部材54の外周部における溝54GAおよび54GBに対応する位置には、平坦面を形成する面取り54Cが3箇所に施されている。
【0033】
さらに、保持用リング部材は、図7(A)および(B)に示される例に限られることなく、例えば、図7(C)に拡大されて示されるような、保持用リング部材64であってもよい。
【0034】
保持用リング部材64は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金、または、セラミックで環状に作られている。保持用リング部材64は、中央部に、弁体42の小径部42Bが挿入される貫通孔64aを有している。保持用リング部材64は、厚さ方向の両端面にそれぞれ、溝44Gよりも幅広の溝64Gが、3箇所に向かい合って形成されている。溝64Gは、各環状面における円周方向に沿って120°の間隔で形成され、半径方向に沿って環状面を横切っている。溝64Gには、貫通孔64Hが形成されている。
【0035】
従って、図7(A)〜(C)に示される保持用リングは、それぞれ、所謂、液封の防止、弁体42のクリープ防止(緩み防止)、ストッパー部10Sへの貼り付き防止という複数種の機能を有している。
【0036】
図8は、本発明に係る制御弁の他の一例の構成を、配管用パイプとともに概略的に示す。
【0037】
図8において、制御弁は、例えば、常閉型の電磁弁とされ、空調機器内の冷媒回路における配管に配置されている。図2に示される電磁弁のピストンユニットは、円筒形のピストン部材36と、弁体42、および、保持用リング部材44とを備える構成とされるが、図8に示される例においては、電磁弁のピストンユニットは、中実軸であるピストン部材48、弁体42、および、保持用リング部材44とを備えるものとされる。なお、図8において、図2に示される例における同一の構成要素について同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0038】
電磁弁は、プランジャチューブ26内に移動可能に配されるピストンユニットと、プランジャチューブ26の一端に結合される弁本体部50と、プランジャチューブ26の外周部に配され後述する吸引子24およびピストンユニットを選択的に励磁する電磁コイルユニットと、を主な要素として含んで構成されている。
【0039】
電磁コイルユニットは、プランジャチューブ26の外周部に配されるコイル部20と、プランジャチューブ26の一端を閉塞する吸引子24と、コイル部20を覆い内側に収容するケーシング16とを主な要素として構成されている。コイル部20は、リード線22を介して図示が省略される駆動制御部に電気的に接続されている。吸引子24の一方の端面には、コイルスプリング30の一端が受け止められている。コイルスプリング30は、吸引子24の一方の端面とピストン部材48の凹部における底部との間に配され、ピストン部材48を吸引子24に対し離隔する方向に、即ち、弁本体側に付勢するものとされる。
【0040】
弁本体部50は、金属材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼、アルミニウム合金等により作られ、ピストンユニットを収容するピストンユニット収容部50Aを内側に有している。ピストンユニット収容部50Aには、ピストン部材48の中心軸線に対し略直交する軸線上に第1の通路としての高圧側配管用パイプ12の一端が接続される入口ポート50PIと、ピストン部材48の中心軸線と共通の軸線上に第2の通路としての低圧側配管用パイプ14の一端が接続される出口ポート50PEと、が形成されている。
【0041】
ピストンユニット収容部50Aの内周部における出口ポート50PEの開口端部には、環状の弁座50Vが形成されている。弁座50Vの円弧状の先端には、シール部材としての弁体42が選択的に当接するものとされる。弁座50Vに連なる周囲には、平坦なストッパー部50Sが形成されている。ストッパー部50Sは、弁座50Vの基端と共通の平面上に形成されている。これにより、ピストン部材48が押し下げられる場合、保持用リング部材44がストッパー部50Sに当接されることにより、押し下げられたピストン部材48の下端が、所定位置に位置決めされることとなる。
【0042】
従って、後述するピストンユニットの駆動機構は、電磁コイルユニットと、コイルスプリング30とを含んで構成されている。
【0043】
ピストンユニットは、上述の弁本体部50におけるピストンユニット収容部50A内に移動可能に配されるピストン部材48と、ピストン部材48の第1の凹部48Cに保持されるシール部材としての弁体42と、弁体42に係止されピストン部材48の第1の凹部48Cに弁体42を保持する保持用リング部材44と、を含んで構成されている。
【0044】
中実軸のピストン部材48は、例えば、磁性材料で作られ、図8に示されるように、コイルスプリング30の他端が挿入される孔を一方の端部の内部に有している。
【0045】
ピストン部材48の他方の端部には、弁体42が挿入される環状の第1の凹部48Cが形成されている。第1の凹部48Cの内周部の最大径Dcは、所定の隙間をもって弁体42の最大直径よりも若干大に設定されている。最大径Dcは、弁本体部50のストッパー部50Sの立下り部における弁本体部50の中心軸線回りの直径Dbよりも小に設定されている。これにより、ピストン部材48の押圧力が、保持用リング部材44に曲げモーメントを作用させることなく、保持用リング部材44を介して弁本体部50のストッパー部50Sで受け止められることとなるので後述するかしめ部48Eが破損することなく、しかも、弁体42のクリープの増大が回避される。
【0046】
さらに、第1の凹部48Cの周縁には、第1の凹部48Cの内周部の最大径Dcよりも大なる直径を有する環状の第2の凹部48Dが形成されている。第2の凹部48Dには、保持用リング部材44が挿入されている。
【0047】
保持用リング部材44は、ピストン部材48の先細部に形成されるかしめ部48Eにより係止され第2の凹部48Dに保持されている。かしめ部48Eは、全周にわたり形成されている。なお、かしめ部48Eは、弁体42および保持用リング部材44が順次、第1の凹部48C、第2の凹部48Dに装着された後、プレス加工により所定のかしめ代をもって形成される。その際、かしめ部48Eの一部は、保持用リング部材44の各溝44G内に押し込まれる。
【0048】
かしめ部48Eの先端におけるピストン部材48の中心軸線回りの直径Daは、上述の直径Dbよりも大に設定されている。これにより、図8に示されるように、ピストンユニットが出口ポート50PEを閉状態とする場合、かしめ部48Eの先端が、弁本体部50のストッパー部50Sの立下り部に干渉する虞がない。なお、かしめ部48Eは、斯かる例に限られることなく、例えば、円周方向に沿って離隔した複数箇所に、個別に形成されてもよい。
【0049】
斯かる構成において、コイル部20により吸引子24、ピストン部材48が励磁されない場合、図8に示されるように、弁体42が弁座50Vに当接することにより、高圧側配管用パイプ12からの流体が遮断される。一方、コイル部20により吸引子24、ピストン部材48が励磁される場合、吸引子24およびピストン部材48が互いの吸引力により近接され、ピストン部材48の弁体42が、コイルスプリング30の付勢力に抗して弁座50Vに対し離隔される。その際、ピストンユニット収容部50A内に作動流体が供給される。従って、高圧側配管用パイプ12からの作動流体が図8の矢印Fの示す方向に沿って低圧側配管用パイプ14に供給されることとなる。その後、吸引子24、ピストン部材48が励磁されない場合、コイルスプリング30の付勢力により弁体42が弁座50Vに当接し、高圧側配管用パイプ12からの作動流体が遮断される。
【0050】
なお、上述の図7(A)〜(C)に示される例においては、保持用リング部材の溝が、環状面において3箇所または4箇所に形成されているが、斯かる例に限られることなく、溝が、少なくとも1箇所、あるいは、5箇所以上に設けられるものであってもよい。
【0051】
また、上述の例においては、本願発明に係る制御弁の一例がピストン部材を備える電磁弁に適用されたが、斯かる例に限られることなく、例えば、特許文献3にも示されるような、軸心部にパイロット孔を有する弁体ホルダーを備えるパイロット式電磁弁に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 弁本体部
28 プランジャ
36 ピストン部材
42 弁体
44、54,64 保持用リング部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8