特許第5918223号(P5918223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918223
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】骨プレート
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/68 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A61B17/58 310
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-513176(P2013-513176)
(86)(22)【出願日】2011年5月4日
(65)【公表番号】特表2013-528075(P2013-528075A)
(43)【公表日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】US2011035181
(87)【国際公開番号】WO2011152951
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】61/350,691
(32)【優先日】2010年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507215725
【氏名又は名称】シンセス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SYNTHES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173587
【弁理士】
【氏名又は名称】西口 克
(74)【代理人】
【識別番号】100173602
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 悌二
(74)【代理人】
【識別番号】100183139
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 稜
(72)【発明者】
【氏名】ロート,ビート
(72)【発明者】
【氏名】ヒュリガー,ウルス
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−506450(JP,A)
【文献】 特表2009−502336(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0300637(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/058969(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/023666(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨プレートであって、
第1の長手軸線に沿って前記プレートを貫通し、前記プレートの近位面から、前記プレートが骨の目標部分に所望の向きで配置されたときに骨と対面する前記プレートの骨側の遠位面に至る第1の貫通孔と、
骨ネジのネジ頭を受容するための突設部を有し、直線または凸状である三つの壁部分を具備する、前記第1の貫通孔の外壁と
を備え、
前記骨プレートは複数の第1の周辺孔をさらに備え、各前記第1の周辺孔は、前記骨プレートの前記近位面から前記遠位面に向かって対応する第1の孔軸に沿って前記骨プレートを貫通しまた周辺骨ネジのネジ頭を受容するように設計されており、各前記第1の周辺孔は前記第1の貫通孔の周辺と重ね合わさって、周辺骨ネジを前記第1の周辺孔を介して受容し、中央骨ネジを前記第1の貫通孔を介して受容する設計である複合孔構造を形成する、骨プレート。
【請求項2】
前記第1の貫通孔が前記骨プレートの前記近位面から前記遠位面の側に向かう方向に大きさが先細りする請求項1に記載の骨プレート。
【請求項3】
前記突設部が各前記壁部分の全長にわたって延在するネジ山またはネジ山状の構造を備える請求項1に記載の骨プレート。
【請求項4】
前記ネジ山またはネジ山状の構造が前記壁部分において一定の深さのネジ山を有する請求項に記載の骨プレート。
【請求項5】
前記ネジ山またはネジ山状の構造の深さが各前記壁部分の近位端及び遠位端に向かって減少し、前記ネジ山の深さは前記近位面と前記遠位面との間の壁部分の中央部分において最大となる請求項に記載の骨プレート。
【請求項6】
前記ネジ山またはネジ山状の構造の深さが各前記壁部分の近位端及び遠位端に向かって増加し、前記ネジ山の深さは前記近位面と前記遠位面との間の壁部分の中央部分において最小となる請求項に記載の骨プレート。
【請求項7】
各前記第1の周辺孔は前記近位面から前記骨プレートへと部分的に入り込む球状凹部を備える請求項1に記載の骨プレート。
【請求項8】
各前記第1の周辺孔は、対応する前記第1の孔軸に対する固定角度で、その内部にネジを係止するためのネジ山を備え、前記第1の貫通孔は、ユーザに選択された前記第1の長手軸線に対する所定の角度で、その内部に挿入された骨ネジを係止するように設計されたネジ山を備える請求項1に記載の骨プレート。
【請求項9】
各前記第1の周辺孔は、ユーザに選択された対応する前記第1の孔軸に対する所定の角度で、その内部に周辺骨ネジを係止するように設計されたネジ山を備え、前記第1の貫通孔は、前記第1の長手軸線に対する固定角度で、その内部に骨ネジを係止するように設計されたネジ山を備える請求項1に記載の骨プレート。
【請求項10】
前記ネジ山は各前記第1の周辺孔の円周の少なくとも半分にわたって延在する請求項に記載の骨プレート。
【請求項11】
前記第1の貫通孔が多角形であり、各前記第1の周辺孔は前記第1の貫通孔の角に設けられる請求項1に記載の骨プレート。
【請求項12】
前記第1の周辺孔のうち二つの隣接する前記第1の周辺孔の中心が4〜15mm隔てて離れている請求項11に記載の骨プレート。
【請求項13】
前記骨プレートがCoCr合金で構成される請求項12に記載の骨プレート。
【請求項14】
少なくとも1つの前記第1の孔軸が前記第1の長手軸線に対して±5°〜±20°の角度で配向される請求項11に記載の骨プレート。
【請求項15】
第2の貫通孔をさらに含み、前記第2の貫通孔の外壁は直線または凸状である三つの壁部分を具備する請求項1に記載の骨プレート。
【請求項16】
骨プレートであって、
長手軸線に沿って前記プレートを貫通し、近位面から、前記プレートが骨に所望の向きで配置されたときに前記骨と対面する骨側の遠位面に至る貫通孔と、
前記貫通孔に挿入された骨ネジのネジ頭を係止嵌合するための突設部を有するN≧3の壁部分を備えた前記貫通孔の外壁と
を具備し、
前記骨プレートは複数の第1の周辺孔をさらに備え、各前記第1の周辺孔は、前記骨プレートの前記近位面から前記遠位面に向かって対応する第1の孔軸に沿って前記骨プレートを貫通しまた周辺骨ネジのネジ頭を受容するように設計されており、各前記第1の周辺孔は前記貫通孔の周辺と重ね合わさって、周辺骨ネジを前記第1の周辺孔を介して受容し、中央骨ネジを前記貫通孔を介して受容する設計である複合孔構造を形成する、骨プレート。
【請求項17】
骨固定用キットであって、
骨プレートであって、
長手軸線に沿って前記プレートを貫通し、近位面から、前記プレートが骨に所望の向きで配置されたときに前記骨と対面する骨側の遠位面に至る貫通孔と、
前記貫通孔に挿入された骨ネジのネジ頭を係止嵌合するための突設部を有するN≧3の壁部分を備えた前記貫通孔の外壁と、
を有し、
前記骨プレートは複数の第1の周辺孔をさらに備え、各前記第1の周辺孔は、前記骨プレートの前記近位面から前記遠位面に向かって対応する第1の孔軸に沿って前記骨プレートを貫通しまた周辺骨ネジのネジ頭を受容するように設計されており、各前記第1の周辺孔は前記貫通孔の周辺と重ね合わさって、周辺骨ネジを前記第1の周辺孔を介して受容し、中央骨ネジを前記貫通孔を介して受容する設計である複合孔構造を形成する、
骨プレートと、
前記貫通孔に挿入されるように設計された中央骨ネジであって、前記中央骨ネジは前記貫通孔内の前記突設部と係止嵌合する大きさ及び形状のネジ山付きのネジ頭を備えてなる中央骨ネジと、
複数の周辺骨ネジであって、各前記周辺骨ネジは対応する一つの前記第1の周辺孔に挿入される大きさ及び形状である周辺骨ネジと
を具備する、骨固定用キット。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
この出願は、2010年6月2日出願の「骨プレート」と称する米国仮特許出願第61/350,691号の優先権を主張するものであり、その全開示内容が参考としてここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して、骨ネジを介して骨に固定され得る骨プレートに関する。さらに詳細には、本発明は、雌ネジを備えた貫通孔であって、係止用骨ネジを螺合可能に収容する貫通孔を有する骨プレートに関する。
【背景技術】
【0003】
骨接合分野においては、係止用頭部付きの骨ネジを収容する円筒状または円錐状の雌ネジを備えた貫通孔を有する骨プレートが一般に用いられている。骨ネジの頭部と骨プレート内の貫通孔とのネジ結合により、骨ネジは骨プレートの貫通孔内に確実に固定される。しかし、起こり得る問題点として、骨ネジが貫通孔の軸に対して正確に同軸に挿入されなかった場合、貫通孔のネジ山が損傷するおそれがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも中央骨ネジを、骨ネジを挿入する際に骨プレートの貫通孔のネジ山が損傷しないような様式で収容し得る骨プレートに関する。
【0005】
本発明において説明される骨プレートは、近位面と、骨側の遠位面と、貫通孔とを備えた骨プレートであり、貫通孔の壁は、骨ネジのネジ頭を収容するためのネジ山またはネジ山状の構造などの突設部を備えた三つまたはそれ以上の直線または凸状部分を有する。
【0006】
本発明の骨プレートの利点の一つは、骨ネジが貫通孔の長手軸線に対して同軸に挿入されなかったとしても貫通孔のネジ山が損傷しないような様式で、任意の様々な角度で骨ネジを取り付けられるコンパクトエントリーを実現したことである。さらに、貫通孔が三つまたはそれ以上の直線または凸状部分を有するという構成であることにより、貫通孔に挿入される骨ネジは、貫通孔のネジ山への損傷が減じられた状態で貫通孔の長手軸線に対して傾斜させることが可能となる。
【0007】
骨プレートの典型的な実施形態では、貫通孔は長手軸線に対して直角をなす断面領域を有しており、ここで断面領域の中心は長手軸線の周りにあり、三つまたはそれ以上の直線または凸状部分の各々は、前記中心において互いに交差して360°/n以下の角度Ωをなす二つの半径によって画定される(ここでnは直線または凸状部分の数を示す)が、このことは以下でより詳細に説明する。
【0008】
骨プレートの別の典型的な実施形態では、貫通孔は、長手軸線に対して直角をなす断面領域であって、略多角形、好適には丸み角を備えた多角形である断面領域を有する。
【0009】
骨プレートの別の実施形態では、貫通孔は骨プレートの遠位面に向かって先細る形状である。
【0010】
骨プレートのさらに別の実施形態では、三つまたはそれ以上の直線または凸状部分は放射相称をしている。
【0011】
骨プレートの別の実施形態では、ネジ山またはネジ山状の構造が三つまたはそれ以上の直線または凸状部分の全長にわたって延在する。
【0012】
骨プレートの別の実施形態では、ネジ山またはネジ山状の構造は、直線または凸状部分内において一定の深さのネジ山を有する。
【0013】
骨プレートのさらに別の実施形態では、ネジ山またはネジ山状の構造のネジ山の深さは、各々の直線または凸状部分の各々の端部に向かって減少する。
【0014】
骨プレートのさらに別の実施形態では、ネジ山またはネジ山状の構造のネジ山の深さは、各々の直線または凸状部分の各々の端部の外側に向かって減少する。
【0015】
骨プレートのさらに別の実施形態では、ネジ山またはネジ山状の構造は貫通孔の周辺全体にわたって延在する。
【0016】
本発明の骨プレートのさらに別の実施形態では、骨プレートは、貫通孔に接続されかつ貫通孔に向かって開口している二つまたはそれ以上の周辺孔を備える。周辺孔はその内部に、周辺骨ネジを収容するためのネジ山を具備する。二つまたはそれ以上の周辺孔は、貫通孔と重ね合わさるように貫通孔の周囲に配置されて、中央骨ネジを貫通孔に収容している状態でありながらも二つまたはそれ以上の周辺骨ネジを内部に収容することが可能である複合孔構造を形成する。
【0017】
骨プレートのさらに別の実施形態では、各々の周辺孔は、骨プレートの近位面から骨プレートへと部分的に入り込む球状凹部を備える。この構成がもつ利点は、ネジ山のない球状頭部を備えた従来周知の皮質骨ネジを、長手軸線に対するユーザが選択した角度で上述の周辺孔内へと導入できることである。
【0018】
本発明の骨プレートのさらに別の実施形態では、各周辺孔と貫通孔は、その内部に収容されたネジを固定角度で係止するためのネジ山を備える。
【0019】
骨プレートの別の実施形態では、貫通孔が中央骨ネジを固定角度で収容するように設計されている一方で、周辺孔は、これらの周辺孔の長手方向軸に対するユーザが選択した様々な角度で周辺骨ネジを収容するためのネジ山を備える。
【0020】
骨プレートのさらに別の実施形態では、孔のネジ山は各孔の円周の少なくとも半分にわたって延在する。
【0021】
骨プレートのさらに別の実施形態では、N個の孔がN個の角を有する略多角形状である中央貫通孔の角に設けられる。貫通孔の長手軸線に対して直角をなす断面からみたとき、N個の孔の孔軸によって画定される多角形は三角形、四角形、五角形または六角形であり得る。
【0022】
骨プレートの別の実施形態では、周辺孔における骨ネジの挿入の固定角度は、長手軸線に対して±0〜±20°、好適には±8〜±15°である。
【0023】
骨プレートのさらに別の実施形態では、ネジ山のピッチは0.30〜2.00mm、好適には0.5〜1.0mmである。
【0024】
骨プレートのさらに別の実施形態では、ネジ山は多条ネジである。これにより、ピッチが骨ネジのネジ山のピッチと整合するという利点が実現する。
【0025】
骨プレートのさらに別の実施形態では、二つの隣接する孔の各中心は互いに4〜15mm隔てて離れている。
【0026】
骨プレートのさらに別の実施形態では、各孔の直径は3〜10mmである。
【0027】
骨プレートのさらに別の実施形態では、中央貫通孔の壁に内接する内接円の直径は2〜10mm、好適には3〜7mmである。
【0028】
本発明の別の実施形態では、骨プレートは少なくとも一つの周辺骨ネジを備え、前記骨プレートはステンレス鋼で構成されて前記少なくとも一つの周辺骨ネジはCoCr合金で構成されるが、あるいは逆の構成もまたあり得る。こうして、本発明に係るプレートによるネジ山の損傷がより少ないため、プレートとネジとの間に生じる腐食もまたより少ない、という利点を達成し得る。
【0029】
骨プレートのさらに別の実施形態では、少なくとも一つの孔の孔軸は、貫通孔の長手軸線とは平行でなく、好適には貫通孔の長手軸線に対して±5°〜±20°で傾斜する。
【0030】
さらに別の実施形態では、骨プレートは一つを上回る貫通孔を備える。
【0031】
骨プレートのさらに別の実施形態では、貫通孔の壁はn=3の直線または凸状部分を有する。
【0032】
さらに別の実施形態では、骨プレートは、近位面と、骨側の遠位面と、前記近位面と前記遠位面とをつなぐ長手軸線を備えた貫通孔とを具備し、貫通孔の壁は、骨ネジのネジ頭を収容するためのネジ山またはネジ山状の構造を備えたn≧3の非凹状部分を有する。
【0033】
本発明の別の目的によると、本発明の骨プレートと、中央骨ネジと、N個の周辺骨ネジとを具備した骨固定用キットが提供される。
【0034】
前記キットの特別な実施形態では、中央骨ネジは、骨プレートの貫通孔内のネジ山またはネジ山状の構造と整合する雄ネジを備えたネジ頭を具備し、N個の周辺骨ネジは各々、N≧2の孔の内部のネジ山と整合する雄ネジを備えたネジ頭を具備する。
【0035】
前記キットの別の実施形態では、中央骨ネジのネジ頭は円錐形状または球状であり、周辺骨ネジのネジ頭は円錐形状または球状である。
【0036】
さらに別の実施形態では、前記キットは、異なる形状のネジ頭を有する一つを上回る中央骨ネジと、異なる形状のネジ頭を有する2×N個の周辺骨ネジとを具備する。この構成により、外科医は以下から選択できるという利点が達成される。すなわち、
− ネジ山付きの円錐形状のネジ頭を備え、骨プレートに対して固定角度で配置された中央骨ネジ、
− ネジ山付きの球状のネジ頭を備え、骨プレートに対して可変角度で配置された中央骨ネジ、
− ネジ山付きの円錐形状のネジ頭を備え、骨プレートに対して固定角度で配置されたN個の周辺骨ネジ、または
− ネジ山付きの球状のネジ頭を備え、骨プレートに対して可変角度で配置されたN個の周辺骨ネジ。
【0037】
さらに別の実施形態では、キットは、骨プレートと、円錐形状または球状であって雄ネジを備えたネジ頭を具備する中央骨ネジと、周辺骨ネジとしてのN個の従来周知の皮質骨ネジとを具備する。
【0038】
本発明のいくつかの典型的な実施形態を、例として、そして添付図面を参照しつつ以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係る骨プレートの典型的な実施形態の斜視図を示す。
図2】中央骨ネジを挿入した状態の図1の骨プレートを示す。
図3図2の骨プレートの側面図を示す。
図4図2の骨プレートの断面図を示す。
図5】周辺骨ネジを挿入した状態の図1の骨プレートの上面の斜視図を示す。
図6】周辺骨ネジを挿入した状態の図1の骨プレートの下面の斜視図を示す。
図7図5の骨プレートの断面図を示す。
図8図5の骨プレートの側面図を示す。
図9】本発明に係る骨プレートの別の典型的な実施形態の斜視図を示す。
図10図9の実施形態における骨プレートの断面図を示す。
図11図9の実施形態における骨プレートの側面図を示す。
図12】本発明に係る骨プレートのさらに別の実施形態の上面図を示す。
図13図12における細部Aの拡大斜視図を示す。
図14図12における細部Aの概略上面図を示す。
図15】本発明に係る骨プレートの貫通孔の別の典型的な実施形態の概略上面図を示す。
図16】本発明に係る骨プレートの貫通孔のさらに別の典型的な実施形態の概略上面図を示す。
図17】本発明に係る骨プレートの貫通孔のまたさらに別の実施形態の概略上面図を示す。
図18図17における線A−Aに沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、骨ネジを骨プレート孔に可変角度と固定角度とのいずれか一方または双方で挿入することによって、骨折またはその他の損傷を受けた骨を固定するためのシステムに関する。特に本発明に係る骨プレートは、アンギュレーションの許容範囲内で貫通孔の長手軸線に対するユーザの選択した角度で第1の骨ネジを収容するよう設計された中央貫通孔を備える。骨プレート孔の、それぞれ別個のプレート孔軸を画定する周辺部に複数の第2の骨ネジを挿入することとしてもよい。骨プレート孔の前記周辺部は、前記貫通孔と重ね合わさる設計であって前記貫通孔に向かって開口する設計である略円形の周辺孔として形成され、周辺孔の貫通孔に対する配置及び周辺孔の数に応じて設定されたいかなる複数の形状を有する複合孔を形成するが、この点は以下に特定の実施形態との関連でより詳細に論じる。周辺孔を、選択された孔軸を備えた設計として、第2の骨ネジが骨プレートの表面に対して所定の角度でのみ周辺孔に挿入され得るようにしてもよい。周辺孔と貫通孔とは本発明のシステムにおいて所定の角度を有するものとして示されているが、これらの骨プレート孔は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、いかなる角度で骨プレートを貫通してもよく、また特定の手術の要請に合うように選択することができることに留意するべきである。
【0041】
図1〜8は、一つの貫通孔9と、貫通孔9の周囲に配列され貫通孔9と重ね合わさり貫通孔9に向かって開口している三つの部分的に円筒状の周辺孔2とを備えた骨プレート1を具備する本発明の第1の典型的な実施形態を示すが、この点は以下に詳しく説明する。貫通孔9は三角の断面形状を有するものとして示されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、他のいかなる断面形状を採用することができることに留意するべきである。骨プレート1は、近位面7と骨側の遠位面8とを備える。貫通孔9は近位面7と遠位面8とを接続する長手軸線6を有し、長手軸線6は近位面7に対して直角に延在する。貫通孔9は壁10によって少なくとも部分的に境され、壁10は中央骨ネジ30を可変角度で収容するための、ネジ山5またはネジ山状の構造などの突設部を備えた三つの凸状部分15を有する。以下に詳述するように、図1の三つの凸状部分15はそれぞれ所定の曲率半径で湾曲する。別の実施形態(図示せず)では、いずれかの数及び組合せの凸状部分15が第1の曲率半径を有し、残りの凸状部分15が第2の曲率半径を有するように形成してもよい。
【0042】
図6〜8に示すように、周辺孔2はそれぞれ、近位面7と遠位面8との間に延在する孔軸11を有しており、また周辺骨ネジ20を収容するためのネジ山4を備える。周辺孔2は貫通孔9の周囲に互いに対して同じ角度で配置される。ここで示される実施形態において、周辺孔2を三つ採用する場合、周辺孔2の軸11は、貫通孔9の長手軸線6に対して直角である断面において見たとき、正三角形をなす。さらに、三つの周辺孔2は、周辺孔2と貫通孔9とが、図5〜8に示すように三つの周辺骨ネジ20を、及び/又は図2〜4に示すように一つの中央骨ネジ30を収容するのに適した複合孔構造を形成するように、貫通孔9と重ね合わさる。図5に示すように、それぞれの周辺孔2はさらに、本発明の実施形態においては多条ネジとしてもよいネジ山4を具備する。
【0043】
貫通孔9の長手軸線6に対して直角である断面において見るとき、各凸状部分15は正三角形の各角の間の中心に配置される。各凸状部分15は近位面7から遠位面9に向かう方向に凸状に湾曲し、各凸状部分15の頂点は貫通孔9の外側に放射状に位置する。骨ネジ30は貫通孔9に外科医が選択した角度で挿入することができ、そのため骨ネジ30のネジ軸33は貫通孔9の長手軸線6に対して角度αでずらされる。本発明の貫通孔9は、貫通孔9に通挿可能な骨ネジ30が周辺孔2に通挿可能な骨ネジ20と比べてより小さく、より大きく、あるいは同じ大きさとなるように設計してもよい。
【0044】
したがって前記複合孔構造は、正三角形の辺の中心に位置する放射相称的に配置された三つの凸状部分15と、前記正三角形の角における三つの周辺孔2とを具備する。周辺孔2の軸11は長手軸線6から離れて配置され、長手軸線6は、周辺孔2が貫通孔9と重ね合わさりかつ各周辺孔2の貫通孔9への遷移部分同士が180°を上回る角度に広がるような大きさに形成される。貫通孔9の壁10はn=3の壁部分を備え、各壁部分は、各壁部分の一端においては第1の周辺孔2の周辺部分への遷移部分によって、そして各壁部分の他端においては第2の周辺孔2の周辺部分への遷移部分によって画定される。この実施形態において、各凸状部分15は、遷移部分によって画定される壁部分の全長にわたって延在するわけではない。ネジ山5またはネジ山状の構造は、三つの凸状部分15の全長においては一定深さのネジ山を有した状態で広がる。凸状部分15の各端と、一つの周辺孔2への二つの遷移部分各々との間では、ネジ山5またはネジ山状の構造のネジ山の深さは減少する。
【0045】
図2〜4に示すように、貫通孔9は骨プレート1の遠位面8に向かって内側に放射状に先細りする。ネジ軸33とネジ頭31とを備えた中央骨ネジ30が貫通孔9に挿入される。ネジ頭31は球状であって雄ネジ32を具備し、そのため中央骨ネジ30はネジ軸33と貫通孔9の長手軸線6との間のユーザが選択した角度αで貫通孔に挿入され得る。
【0046】
雄ネジ32を有する球状のネジ頭31を備えた中央骨ネジ30の代わりに、雄ネジを有する円錐形状のネジ頭を備えた中央骨ネジを貫通孔9に挿入してもよい。後者の場合、中央骨ネジは貫通孔9に固定角度(例えば、ネジ軸と貫通孔9の長手軸線6とが一致する角度)で挿入されることになる。
【0047】
図7及び8に示すように、周辺孔2は、孔軸11がそれぞれ貫通孔9の長手軸線6に対して約20°で傾斜するように設計される。本発明の別の実施形態では、周辺孔2は、当業者が理解するように、長手軸線6に対して上記とは別のいかなる角度で傾斜させてもよく、また必要に応じて周辺孔2をそれぞれ別の角度で広がるようにしてもよい。
【0048】
図7に示すように、各周辺孔2は骨プレート1の遠位面8に向かって内側に放射状に先細りする。ネジ軸23とネジ頭21とを備えた周辺骨ネジ20が各周辺孔に挿入される。ネジ頭21は円錐形状であって雄ネジ22を具備し、そのため各周辺骨ネジ20は、ネジ軸23と周辺孔2の孔軸11とが一致している状態で固定角度で周辺孔2のいずれか一つに挿入され得る。
【0049】
雄ネジ22を有する円錐形状のネジ頭21を備えた周辺骨ネジ20の替わりに、雄ネジを有する球状のネジ頭を備えた周辺骨ネジを周辺孔2に挿入してもよい。後者の場合、周辺骨ネジは、ネジ軸23と周辺孔2の孔軸11との間のユーザが選択した可変角度で挿入することができる。
【0050】
図9〜11において、その他の実施形態が図示されているが、図1〜8の実施形態との違いは、略多角形の貫通孔9が、角に配置されたN=3の周辺孔2の替わりに丸み角を備えているという点のみである。図1〜8の実施形態と同様に、貫通孔9の壁10はn=3の凸状部分15を備え、この凸状部分15は、長手軸線6に対して直角をなす断面からみたとき、正三角形の辺の中心に位置する。各凸状部分15は、貫通孔9の長手軸線6に対して直角をなす断面において凸状に湾曲し、各凸状部分15の頂点は前記正三角形の一辺に対して直角をなす中心線上に位置する。凸状部分15により、骨ネジ30は、軸6に対する外科医が選択した角度で貫通孔9に挿入することが可能となる。
【0051】
貫通孔9は正三角形の辺の中心に位置する放射相称的に配置された三つの凸状部分15と、前記正三角形の角における三つの凹状丸み部分とを具備する。したがって貫通孔9の壁10はn=3の壁部分を備え、ここで各壁部分は、正三角形の一辺に沿って延在し、かつ各壁部分の一端においては第1の凹状丸み部分への遷移部分によって、そして各壁部分の他端においては第2の凹状丸み部分への遷移部分によって画定される。この実施形態においては、各凸状部分15は、遷移部分によって画定される壁部分の全長にわたって延在する。ネジ山5またはネジ山状の構造は貫通孔9の周辺全体にわたって延在する。ネジ山5またはネジ山状の構造のネジ山の深さは、凹状丸み部分において減少することとしてもよい。
【0052】
図10に示すように、貫通孔9は骨プレート1の遠位面8に向かって先細りする。ネジ軸33とネジ頭31とを備えた中央骨ネジ30が貫通孔9に挿入される。ネジ頭31は球状であって雄ネジ32を具備し、そのため中央骨ネジ30はネジ軸33と貫通孔9の長手軸線6との間のユーザが選択した可変角度αで貫通孔に挿入され得る。
【0053】
図12〜14は二つの貫通孔9を備えた骨プレート1の別の実施形態を示す。図9〜11の実施形態と同様に、貫通孔9は、長手軸線6に対して直角をなして長手軸線6上に中心14が位置する断面領域を有し、n=3の凸状部分15はそれぞれ、中心14において互いに交差して120°未満の角度Ωをなす二つの半径によって画定される。二つの貫通孔9の各々の壁10はn=3の壁部分を備え、ここで各壁部分は、正三角形の一辺に沿って延在し、かつ各壁部分の一端においては第1の凹状丸み部分への遷移部分によって、そして各壁部分の他端においては第2の凹状丸み部分への遷移部分によって画定される。図9〜11の実施形態と同様に、各凸状部分15は、遷移部分によって画定される壁部分の全長にわたって延在する。この実施形態における貫通孔9と、図9〜11の実施形態における貫通孔9との違いは、ネジ山5またはネジ山状の構造が貫通孔9の周辺全体にわたって延在するわけではないという点のみである。ネジ山5またはネジ山状の構造のネジ山の深さは、凸状部分15と凹状丸み部分との間の遷移部分における凸状部分15の各端において減少し、凹状丸み部分の一部はネジ切りされていない状態となる。
【0054】
図13に示すように、貫通孔9は骨プレート1の遠位面8に向かって内側に放射状に先細りする。図9〜11の実施形態と同様に、ネジ軸33とネジ頭31とを備えた中央骨ネジ30が貫通孔9に挿入され得る。ネジ頭31が雄ネジ32を備えた球状である中央骨ネジ30を用いることによって、中央骨ネジ30はネジ軸33の貫通孔9の長手軸線6に対するユーザが選択した可変角度αで貫通孔に挿入され得る。
【0055】
図15は貫通孔9の別の実施形態を示すが、図12〜14の実施形態との違いは、図15の貫通孔9がn=4の凸状部分15を備える点のみである。n=4の凸状部分15の各々は、中心14において互いに交差して90°を下回る角度Ωをなす二つの半径によって画定される。二つの貫通孔9の各々の壁10はn=4の壁部分を備え、ここで各壁部分は、正方形の一辺に沿って延在し、かつ各壁部分の一端においては第1の凹状丸み部分への遷移部分によって、そして各壁部分の他端においては第2の凹状丸み部分への遷移部分によって画定される。図9〜11の実施形態と同様に、各凸状部分15は、遷移部分によって画定される壁部分の全長にわたって延在する。ネジ山5またはネジ山状の構造が貫通孔9の周辺全体にわたって延在するわけではない。ネジ山5またはネジ山状の構造のネジ山の深さは、凸状部分15と凹状丸み部分との間の遷移部分における凸状部分15の各端において減少し、凹状丸み部分の一部はネジ切りされていない状態となる。
【0056】
図16は貫通孔9のさらに別の実施形態を示すが、図15の実施形態との違いは、貫通孔9の壁10がn=4の直線部分15を備えること、そしてネジ山5またはネジ山状の構造のネジ山の深さは、正方形の一辺に対して直角をなす中心線から直線部分15と各凹状丸み部分との間の遷移部分に向かって減少し、凹状丸み部分はネジ切りされていない状態となることのみである。
【0057】
図17及び図18は貫通孔9のさらに別の実施形態を示すが、図14の実施形態との違いは、N=3の周辺孔2が従来周知の皮質骨ネジを収容する設計である点のみである。各周辺孔2は球状凹部25を備え、球状凹部25は、近位面7から骨プレート1へと部分的に入り込み、球状凹部25と骨プレート1の遠位面8との間に延在する円錐形状拡張下部26に軸方向で隣接する。球状凹部25により、球状頭部を備えた従来周知の皮質骨ネジは、各周辺孔2に周辺孔2の軸11に対するユーザが選択した角度で挿入されることが可能となる。貫通孔9の壁10のn=3の直線または凸状部分15は図14の実施形態と同様の設計である。
【0058】
本発明とその利点について詳細に説明したが、添付の請求項によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく本明細書において種々の変更、代替及び改変がなされ得ることが理解されるべきである。さらに本願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械、製品、物質の合成物、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定されるものとは意図されていない。当業者であれば本発明の開示内容から容易に理解し得るように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能をなしあるいは実質的に同じ結果を達成する、現存のもしくは後に開発されるプロセス、機械、製品、物質の合成物、手段、方法または工程は、本発明に基づいて利用することができる。
【0059】
本発明の種々の改良及び改変が添付の請求項の広い範囲から逸脱することなく当業者によってなされることが理解されるであろう。かかる改良及び改変の一部が上述されたが、他の改良及び改変も当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18