特許第5918251号(P5918251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918251
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】日射反射性コーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20160428BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20160428BHJP
   B64C 1/12 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   B32B27/20 A
   B64C1/00 B
   B64C1/12
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-537708(P2013-537708)
(86)(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公表番号】特表2014-501638(P2014-501638A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2011058172
(87)【国際公開番号】WO2012061209
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年5月16日
(31)【優先権主張番号】12/917,576
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】エイボン, ウィリアム イー.
(72)【発明者】
【氏名】ディロン, ブライアン
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0047620(US,A1)
【文献】 特表2010−517817(JP,A)
【文献】 特表2013−509484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
C09D 1/00− 10/00
C09D 101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングシステムであって、
(a)CIELAB L値が40以下であり、
(i)膜形成樹脂;および
(ii)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料を含む第1のコーティング層と、
(b)該第1のコーティング層の少なくとも一部の下に堆積され、
(i)膜形成樹脂;
(ii)10〜2,000の範囲のその幅のその厚みに対する比率を有する薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料;および
(iii)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料を含む第2のコーティング層とを含み、
該第1のコーティング層および該第2のコーティング層は、コントラスト比(L第2:L第1)が0.8:1〜1.6:1であり、
該第1のコーティング層(a)および該第2のコーティング層(b)は2.54〜50.8ミクロンの合計乾燥膜厚を有しており、そして該第2のコーティング層(b)は、単独で30.5ミクロンを超えない乾燥膜厚を有しており、
該コーティングシステムは、総日射反射率%が少なくとも25%であり、
該第2のコーティング層は、TSR%が少なくとも25%である、
コーティングシステム。
【請求項2】
前記コントラスト比が1.0〜1.5:1である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項3】
前記コントラスト比が0.8〜1未満:1である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項4】
前記第2のコーティング層は、L値が30以下である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項5】
前記第2のコーティング層は、L値が25から30未満である、請求項4に記載のコーティングシステム。
【請求項6】
前記可視光を吸収し赤外線透過性の顔料が、前記第2のコーティング層をなす組成物の固形物総重量を基準として少なくとも20重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項7】
前記第2のコーティング層をなす組成物中の(b)(ii)と(b)(iii)の重量比が1.5以上:1である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項8】
前記重量比が5以上:1である、請求項7に記載のコーティングシステム。
【請求項9】
前記重量比が10以上:1である、請求項8に記載のコーティングシステム。
【請求項10】
前記重量比が20以上:1である、請求項9に記載のコーティングシステム。
【請求項11】
前記薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料が、0.05ミクロン〜10ミクロンの厚みを有する、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項12】
前記金属アロイの赤外線反射顔料が、アルミニウムを含む、請求項11に記載のコーティングシステム。
【請求項13】
前記第1のコーティング層(a)中の前記可視光を吸収し赤外線透過性の顔料(ii)がペリレン系顔料を含む、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項14】
前記第2のコーティング層(b)中の前記可視光を吸収し赤外線透過性の顔料(ii)がペリレン系顔料を含む、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項15】
物品表面に配置された請求項1に記載のコーティングシステムを含む、物品。
【請求項16】
前記物品が航空機用部品である、請求項15に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、日射反射性コーティングシステムに関する。これらのコーティングシステムは、第1のコーティング層と、第1のコーティング層の下に堆積される第2のコーティング層という少なくとも2つのコーティング層を含む。第1のコーティング層は、外観が暗いが、赤外線には実質的に透過性である。第2のコーティング層は、赤外線を反射するが、第1のコーティング層と同様の暗い外観を示し、第1のコーティング層の色に寄与し、比較的薄い膜厚で塗布されたときに、その下にある基材と、その下にある任意のコーティング層を隠す。
【背景技術】
【0002】
自動車用コーティング、宇宙航空用コーティング、産業用コーティング、建築用コーティングのような多くのコーティング用途では、美観という目的で、黒色および紺青色のような暗い色が特に望ましい。しかし、暗い色のコーティングは、歴史的に見て、可視光線に加えて近赤外線も吸収するカーボンブラックのような顔料の使用に依存していることが多いため、近赤外線吸収の影響を受けやすかった。近赤外線(すなわち、波長が700〜2500ナノメートルの光エネルギー)は、地球表面に到達する太陽エネルギーの約45%を構成している。熱は、近赤外線を吸収した直接的な結果である。結果として、暗い色のコーティングは、歴史的に見て、特に、晴れた日にかなりの温度上昇を受けやすく、このことは、多くの理由のため望ましくないことが多い。したがって、太陽熱(近赤外)を反射するコーティングが望まれている。
【0003】
暗い太陽熱を反射するコーティングを得るための種々の手法が検討されてきた。ある手法では、上側の層が、可視光線を吸収するが近赤外線には透過性の顔料、例えば、有機黒色顔料(ペリレンブラックが一例である)または他の有機顔料(例えば、フタロシアニンブルーおよびグリーンならびにカルバゾールジオキサジンバイオレット)で着色されており、近赤外線を反射する下側の層(例えば、非常に反射性の高い白色アンダーコート)が、コーティングシステムの温度上昇を低減するような2層コーティングシステムが使用される。このようなコーティングシステムの一例は、特許文献1に記載されている。
【0004】
今日まで、この手法にはいくつかの欠点があった。例えば、下側の層は、外観が明るいことが多く、上側の層が損傷を受けたときには、「透けて見える(grin through)」傾向がある。外観が決定的に重要であるが、コーティングが、コーティングの損傷がまれではない環境にさらされるような用途では、特に問題となり得る。
【0005】
第2に、多くの暗い色の上側の層の配合物は、下側の層(典型的には、プライマー)に依存して、適切な暗い色の達成に貢献するような配合物である。白色または明るい色の下側の層は、このようなことは起こらないだろう。
【0006】
第3に、ある用途では、下側の層は、比較的膜厚が小さい状態で不透明でなければならない。これは、他のコーティング層(例えば、電着した耐腐食性プライマー)が、下側の層と基材との間に置かれることが多いためである。これらのコーティング層は、紫外線にあたると多くは分解しやすい。このようなコーティング層を下側の層によって隠すのは、例えば、費用の考慮事項から、比較的薄い膜厚で達成されなければならない。
【0007】
結果として、これらの欠点を克服しない日射反射性コーティングシステムと比較して、日射反射性能を依然として提供しつつ、上に記載した欠点を克服する日射反射性コーティングシステムを提供することが望ましいだろう。本明細書に記載の発明は、上述の要望の観点で作られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0191540号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の観点で、本発明は、第1のコーティング層と、第1のコーティング層の少なくとも一部の下に堆積された第2のコーティング層とを含む、コーティングシステムに関する。第1のコーティング層は、暗く、すなわち、このシステムは、CIELAB L値が40以下を示し、(a)膜形成樹脂と;(b)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料とを含む。第2のコーティング層は、(a)膜形成樹脂と;(b)薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料と;(c)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料とを含む。第1のコーティング層および第2のコーティング層は、コントラスト比(L第2/L第1)が0.8:1〜1.7:1である。コーティングシステムは、総日射反射率%(「TSR」)が少なくとも25%であり、第2のコーティング層は、TSR%が少なくとも25%である。
【0010】
本発明はさらに、特に、基材をコーティングする関連する方法およびコーティングされた基材にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な記載のために、別段明らかに表記されていない限り、本発明が、種々の代替的な変形例および工程順序を仮定してもよいことを理解すべきである。さらに、任意の操作例以外に、または他に指定がない限り、例えば、明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量をあらわすあらゆる数字は、全ての場合に「約」という用語で修飾されていると理解すべきである。したがって、別段示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータはおおよその値であり、本発明によって得られるべき望ましい特性によって変わってもよい。最低限でも、特許請求の範囲の均等論の適用を制限しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、通常の丸め技術の適用によって報告されている有効桁の数字の観点で解釈されるべきである。
【0012】
本発明の広い範囲に記載されている数値範囲およびパラメータはおおよその値であるが、具体的な例に記載されている数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定でみられる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を固有に含む。
【0013】
また、本明細書に引用されているあらゆる数値範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲を含むことを意図していることも理解すべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、引用されている最小値である1と、引用されている最大値である10の間の(を含む)あらゆる部分範囲(つまり、1以上の最小値から10以下の最大値を有する)を含むことを意図している。
【0014】
本出願では、別段具体的に示されていない限り、単数形の使用は、複数形を含み、複数形は、単数形を包含する。それに加え、本出願では、「または」の使用は、別段具体的に示されていない限り、特定の場合に「および/または」を明示的に使用してもよい場合であっても、「および/または」を意味する。
【0015】
示されているように、本発明の特定の実施形態は、第1のコーティング層と、第1のコーティング層の下に堆積された第2のコーティング層とを含む、コーティングシステムに関する。本発明のコーティングシステムは、任意の数の異なる基材の上に堆積させることができる。それに加え、コーティングシステムは、多くの場合にそうであるが、第1のコーティング層および第2のコーティング層に加え、さらなるコーティング層を含んでいてもよい。
【0016】
本発明のコーティングシステムを堆積させてもよい基材は、多くの形態をなしていてもよく、種々の材料から製造されてもよい。特定の実施形態では、基材は、特に、(i)自動車用要素(例えば、内側もしくは外側の金属パネル、革もしくは布製の座席領域、プラスチック要素、例えば、ダッシュボードまたはステアリングホイール、および/または他の内側の車両表面);(ii)宇宙航空用要素、例えば、航空機用外側パネル(金属、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウムアロイであってもよく、または例えば、ポリマーコンポジット材料から製造されてもよい)、革、プラスチックまたは布製の座席領域、およびコントロールパネルを含む内側パネルなど;(iii)建造物要素、例えば、外側パネルおよび屋根材料;(iv)産業用要素の形態をなす。
【0017】
適切な基材材料としては、セルロースを含有する材料(紙、板紙、厚紙、合板、プレス加工した繊維板、硬材、軟材、ベニヤ板、パーティークルボード、チップボード、配向性ストランドボード、繊維板が挙げられる。このような材料は、全体的に木材(例えば、松、オーク、カエデ、マホガニー、サクラなど)から作製されてもよい。しかし、ある場合には、材料は、別の材料と組み合わせて、木材を含んでいてもよい(例えば、樹脂性材料、すなわち、木材/樹脂コンポジット、例えば、フェノール系コンポジット、木材繊維と熱可塑性ポリマーのコンポジット、セメント、繊維またはプラスチッククラッディングによって強化された木材コンポジット)。
【0018】
適切な金属系基材材料としては、限定されないが、冷延鋼板、ステンレス鋼、ならびに亜鉛金属、亜鉛化合物および亜鉛アロイのいずれかで処理された鋼鉄表面(電気亜鉛めっき鋼、溶融めっき鋼、GALVANNEAL鋼、亜鉛アロイでめっきされた鋼を含む)、銅、マグネシウム、ならびにこれらのアロイ、アルミニウムアロイ、亜鉛−アルミニウムアロイ、例えば、GALFAN、GALVALUME、アルミニウムめっきされた鋼、アルミニウムアロイでめっきされた鋼基材で構築された箔、シートまたは作業片も使用してもよい。溶接可能な亜鉛を豊富に含むか、またはリン化鉄を豊富に含む有機コーティングでコーティングされた鋼基材(例えば、冷延鋼板または上に列挙したいずれかの鋼基材)も適している。このような溶接可能なコーティング組成物は、例えば、米国特許第4,157,924号および第4,186,036号に開示されている。例えば、金属リン酸溶液、少なくとも1つのIIIB族またはIVB族の金属を含む水溶液、有機ホスフェート溶液、有機ホスホネート溶液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される溶液で前処理されるとき、冷延鋼板も適している。また、適切な金属基材としては、銀、金、およびこれらのアロイが挙げられる。
【0019】
適切なシリケート基材(silicatic substrate)の例は、ガラス、磁器、セラミックである。
【0020】
適切なポリマー基材の例は、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよび対応するコポリマーおよびブロックコポリマー、生分解可能なポリマーおよび天然ポリマー(例えば、ゼラチン)である。
【0021】
適切なテキスタイル基材の例は、ポリエステル、改質ポリエステル、ポリエステルブレンド布地、ナイロン、コットン、コットンブレンド布地、黄麻、亜麻、麻(hemp)およびラミー、ビスコース、ウール、絹、ポリアミド、ポリアミドブレンド布地、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル微細繊維およびガラス繊維布地で構成される、繊維、ヤーン、スレッド、ニット、織布、不織布、および衣類である。
【0022】
適切な革基材の例は、銀面皮(例えば、ヒツジ、ヤギまたはウシからのナパ革、子ウシまたはウシからのボックス革)、スエード革(例えば、ヒツジ、ヤギまたは子ウシからのベロア、およびハンチング革)、床ベロア(split velours)(例えば、ウシまたは子ウシの皮膚から)、バックスキンおよびヌバック革;さらにまた、紡毛の皮膚および毛皮(woolen skins and furs)(例えば、毛皮を含むスエード革)である。革を、特に、植物、鉱物、合成によるなめし、または組み合わせによるなめしのような任意の従来のなめし方法(例えば、クロムによるなめし、ジルコニルによるなめし、アルミニウムによるなめし、または半クロムによるなめし)によってなめしてもよい。所望な場合、革を再びなめしてもよく、再なめしのために、再なめしに従来から使用されている任意のなめし剤、例えば、鉱物、植物または合成のなめし剤、例えば、クロム誘導体、ジルコニウム誘導体またはアルミニウム誘導体、ケブラコ、クリまたはミモザ抽出物、芳香族合成タンニン(aromatic syntans)、ポリウレタン、(メタ)アクリル酸化合物の(コ)ポリマー、またはメラミン、ジシアノジアミドおよび/または尿素/ホルムアルデヒド樹脂を使用してもよい。
【0023】
適切な圧縮可能な基材の例としては、フォーム基材、液体が満たされたポリマー嚢、空気および/もしくは気体が満たされたポリマー嚢、ならびに/または血漿が満たされたポリマー嚢が挙げられる。本明細書で使用する場合、「フォーム基材」との用語は、連続気泡フォームおよび/または独立気泡フォームを含むポリマーまたは天然材料を指す。本明細書で使用する場合、「連続気泡フォーム」との用語は、フォームが、複数の相互に連結した空気の小部屋を含むことを意味する。本明細書で使用する場合、「独立気泡フォーム」との用語は、フォームが、一連の別個の閉じた孔を含むことを意味する。フォーム基材の例としては、ポリスチレンフォーム、ポリメタクリルイミドフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、およびポリオレフィンフォームが挙げられる。ポリオレフィンフォームの例としては、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォームおよび/またはエチレンビニルアセテート(EVA)フォームが挙げられる。EVAフォームとしては、平坦なシートまたはスラブまたは成型したEVAフォーム、例えば、靴のミッドソールを挙げることができる。異なる種類のEVAフォームは、異なる種類の表面空隙率を有していてもよい。成型したEVAは、高密度な表面または「スキン」を含んでいてもよく、一方、平坦なシートまたはスラブは、多孔性表面を示していてもよい。
【0024】
特定の実施形態では、例えば、自動車産業または宇宙航空産業で使用されるコーティングシステムにおいて、例えば、前処理した金属基材(例えば、上述)を電着したコーティングでコーティングしてもよい。電着したコーティングを硬化した後、プライマー表面コーティングを、電着したコーティングの少なくとも一部に塗布する。プライマー表面コーティングは、電着したコーティングに塗布され、その後に別のコーティングを塗布する前に硬化されることが多い。
【0025】
プライマー表面コーティングは、その後に塗布されるコーティング層の耐チッピング性を高め、その後に塗布されるコーティング層の外観を助けるように働くことが多い。本発明の特定の実施形態では、第2のコーティング層は、プライマー表面コーティングである。ある実施形態では、コーティングシステムの第1のコーティング層は、プライマー表面コーティング層の少なくとも一部に堆積する色を付与するベースコートとして作用する。
【0026】
ある実施形態では、本発明のコーティングシステムは、実質的に透明なコーティング(すなわち、クリアコート)をさらに含む。本明細書で使用する場合、「実質的に透明」との用語は、実質的に透過性であり、不透明ではないコーティングを指す。ある実施形態では、クリアコートは、着色剤を含んでいてもよいが、このような場合に、着色剤は、コーティングを不透明にするのに十分な量では存在しない。例えば、米国特許第5,989,642号;第6,245,855号;第6,387,519号;第7,005,472号に記載されるクリアコートを本発明のコーティングシステムに使用することができる。特定の実施形態では、クリアコートは、クリアコート(例えば、クリアコート表面)に分散した粒子(例えば、シリカ粒子)を含む。
【0027】
示されるように、本発明のコーティングシステムにおいて、第1のコーティング層は暗く、すなわち、CIELAB L値が40超、例えば、35以下、30以下、またはある場合には、28以下を示す。本発明の目的のために、CIELAB L値は、Gretag MacBeth ColorEye 7000A(反射鏡を備えている)を用いて測定する。さらに、本発明のコーティングシステムの第1のコーティング層は、(a)膜形成樹脂と;(b)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料とを含む。
【0028】
本明細書で使用する場合、「膜形成樹脂」という用語は、膜形成樹脂とともに存在する任意の希釈剤または担体を除去するか、または周囲温度または高温で硬化したときに、基材の少なくとも水平方向の表面の上に自立性の連続膜を形成することができる樹脂を指す。
【0029】
第1のコーティング層で使用可能な膜形成樹脂としては、限定されないが、特に、自動車用OEMコーティング組成物、自動車用再仕上げコーティング組成物、産業用コーティング組成物、建築用コーティング組成物、コイルコーティング組成物、包装コーティング組成物、保護および海洋コーティング組成物、ならびに宇宙航空用コーティング組成物で使用されるものが挙げられる。
【0030】
特定の実施形態では、本明細書で記載されるコーティングの中に含まれる膜形成樹脂は、熱硬化性膜形成樹脂を含む。本明細書で使用する場合、「熱硬化性」との用語は、硬化させる(curing)または架橋させると不可逆的に「硬化する(set)」樹脂を指し、ポリマー要素のポリマー鎖が共有結合によって一緒に連結している。この特性は、通常は、例えば、熱または放射線によって誘導されることが多い組成物の構成要素の架橋反応と関連がある。Hawley、Gessner G.、The Condensed Chemical Dictionary、Ninth Edition.、856頁;Surface Coatings、vol.2、Oil and Colour Chemists’ Association、Australia、TAFE Educational Books (1974)を参照。また、硬化反応または架橋反応は、周囲条件下で行われてもよい。硬化または架橋すると、熱硬化性樹脂は、熱を加えても溶融せず、溶媒に不溶性である。他の実施形態では、本明細書に記載するコーティングに含まれる膜形成樹脂は、熱可塑性樹脂を含む。本明細書で使用する場合、「熱可塑性」との用語は、共有結合によって連結しておらず、それによって、加熱すると液体の流れになることができ、溶媒に可溶性のポリマー要素を含む樹脂を指す。Saunders、K.J.、Organic Polymer Chemistry、pp.41−42、Chapman and Hall、London(1973)を参照。
【0031】
本明細書に記載のコーティングは、当該技術分野で公知の任意の種々の熱可塑性組成物および/または熱硬化性組成物を含んでいてもよい。コーティングは、水系または溶媒系の液体組成物から堆積させてもよく、または、固体粒子状形態の組成物(すなわち、粉末コーティング)から堆積させてもよい。
【0032】
熱硬化性コーティング組成物は、典型的には、例えば、アミノプラスト、保護されたイソシアネートを含むポリイソシアネート、ポリエポキシド、β−ヒドロキシアルキルアミド、ポリ酸、無水物、有機金属酸官能性材料、ポリアミン、ポリアミド、および上のいずれかの混合物から選択されてもよい架橋剤を含む。
【0033】
熱硬化性または硬化性のコーティング組成物は、典型的には、架橋剤と反応性である官能基を有する膜形成樹脂を含む。本明細書に記載するコーティング中の膜形成樹脂は、当該技術分野で周知の種々のいずれかのポリマーから選択されてもよい。膜形成樹脂は、例えば、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリシロキサンポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの混合物から選択されてもよい。一般的に、これらのポリマーは、当業者に公知の任意の方法によって作製されるこれらの種類の任意のポリマーであってもよい。膜形成樹脂の官能基は、例えば、カルボン酸基、アミン基、エポキシド基、ヒドロキシル基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、イソシアネート基(保護されたイソシアネート基を含む)、メルカプタン基、およびこれらの組み合わせを含む任意の種々の反応性官能基から選択されてもよい。
【0034】
また、膜形成樹脂の適切な混合物を、本明細書に記載するコーティングの調製に使用してもよい。
【0035】
本発明のコーティングシステム中の第1のコーティング層は、可視光を吸収し赤外線透過性の顔料も含む。本明細書で使用する場合、「赤外線透過性の顔料」という用語は、例えば、米国特許公開第2004/0191540号の[0020]〜[0026]に記載されるような、近赤外波長領域(700〜2500ナノメートル)で、このような波長の放射線を相当量散乱または吸収することなく実質的に透過性の顔料を指し、この引用部分は、本明細書に参考として組み込まれる。特定の実施形態では、赤外線透過性の顔料は、近赤外波長領域での平均透過率が少なくとも70%である。本明細書で使用する場合、「可視光を吸収する」は、400〜700ナノメートルの可視光領域の中の少なくともある波長の放射線を実質的に吸収する顔料を指す。ある場合には、本コーティング組成物で使用される可視光を吸収する顔料は、約400〜約500ナノメートルの範囲の可視光スペクトルの合計吸光度が少なくとも約70%(さらに好ましくは、少なくとも約80%)である。ある場合には、可視光を吸収する顔料は、約500〜約600ナノメートルの範囲の可視光スペクトルの合計吸光度が少なくとも約70%(さらに好ましくは、少なくとも約75%)である。ある場合には、可視光を吸収する顔料は、約600〜約700ナノメートルの範囲の可視光スペクトルの合計吸光度が少なくとも約60%(さらに好ましくは、少なくとも約70%)である。
【0036】
適切な可視光を吸収し赤外線透過性の顔料の非限定的な例としては、例えば、銅フタロシアニン顔料、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、キノフタロン顔料、インダントロン顔料、ジオキサジン顔料、透過性酸化鉄褐色顔料、透過性酸化鉄赤色顔料、透過性酸化鉄黄色顔料、カドミウムオレンジ顔料、ウルトラマリン青色顔料、カドミウム黄色顔料、クロム黄色顔料、アルミン酸コバルト青色顔料、コバルトクロマイト青色顔料、チタン鉄褐色スピネル顔料、マンガンアンチモンチタンバフ色ルチル顔料、亜鉛鉄クロマイト褐色スピネル顔料、イソインドリン顔料、ジアリーリド黄色顔料、ブロモ化アントラントロン顔料(brominated anthranthron pigment)などが挙げられる。
【0037】
特定の実施形態では、赤外線透過性の顔料は、例えば、上述の米国特許出願公開第2004/0191540に記載されるように、電磁スペクトルに沿って750〜850ナノメートルの波長で増加する反射率%を有する。ある場合には、赤外線透過性の顔料は、電磁スペクトルに沿って750ナノメートルの波長で少なくとも10%から、900ナノメートルの波長で少なくとも90%までの範囲の反射率%を有する。
【0038】
特定の実施形態では、赤外線透過性の顔料は、以下に示す赤外線透過性の黒色顔料、例えば、一部がペリレン型構造に依存する顔料を含む。
【0039】
【化1】
【0040】
このような顔料の市販例として、BASF Corporation(サウスフィールド、ミシガン)製のLumogen(登録商標)Black FK 4280顔料、BASF製のColour Indexが「Pigment Black 32」(Part I)および「71133」(Part 2)であるPaliogen(登録商標)Black L0086、およびColour Indexが「Pigment Black 31」(Part 1)および「71132」(Part 2)であるPaliogen(登録商標)Black S0084が挙げられる。本発明の特定の実施形態に適した赤外線透過性の黒色顔料のさらなる例は、米国特許出願公開第200910098476 A1号の[0030]〜[0034]に記載されており、その引用部分は、本明細書に参考として組み込まれ、ペリレンイソインドレン構造、アゾメチン構造、および/またはアニリン構造を有するものを含む。
【0041】
赤外線透過性の顔料は、多くは、組成物であって、第1のコーティング層がそこから堆積される組成物の固形物総重量を基準として少なくとも0.5重量%、または少なくとも1重量%、および/または少なくとも5重量%存在する。また、赤外線透過性の顔料は、典型的には、組成物であって、第1のコーティング層がそこから堆積される組成物の固形物総重量を基準として20重量%未満、または15重量%未満、または10重量%未満の量で存在する。このような組成物中に存在する赤外線透過性の顔料の量は、引用されている値を含め、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であってもよい。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、第1のコーティング層は、カーボンブラックを実質的に含まないか、または、ある場合には、カーボンブラックをまったく含まない。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」という用語は、コーティング組成物中のカーボンブラックの量について使用するとき、カーボンブラックが、組成物の固形物総重量を基準として、0.1重量%以下、ある場合には、0.05重量%以下の量で存在することを意味する。本明細書で使用する場合、「まったく含まない」という用語は、コーティング組成物中のカーボンブラックの量について使用するとき、カーボンブラックが組成物中にまったく存在しないことを意味する。
【0043】
所望な場合、第1のコーティング層は、表面コーティングを配合する分野で周知の他の任意材料、例えば、可塑剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤、UV光吸収剤、安定化剤、界面活性剤、流動制御剤、チキソトロープ剤(例えば、ベントナイトクレイ)、顔料、フィラー、有機共溶媒、触媒(ホスホン酸を含む)および他の慣習となっている補助剤を含んでいてもよい。
【0044】
すでに示したように、本発明のコーティングシステムは、第1のコーティング層の少なくとも一部の下に堆積した第2のコーティング層をさらに含む。第2のコーティング層は、(a)膜形成樹脂と;(b)薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料と;(c)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料とを含む。膜形成樹脂と、可視光を吸収し赤外線透過性の顔料は、例えば、第1のコーティング層についてすでに記載したいずれかのものを含んでいてもよい。ある実施形態では、第2のコーティング層中に存在する膜形成樹脂および/または可視光を吸収し赤外線透過性の顔料は、第1のコーティング層中の膜形成樹脂および/または可視光を吸収し赤外線透過性の顔料と同じである。ある実施形態では、第2のコーティング層中に存在する膜形成樹脂および/または可視光を吸収し赤外線透過性の顔料は、第1のコーティング層中の膜形成樹脂および/または可視光を吸収し赤外線透過性の顔料と異なる。
【0045】
本発明のコーティングシステム中の第2のコーティング層は、さらに、薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料を含む。本明細書で使用する場合、「赤外線反射顔料」という用語は、コーティング組成物中に含まれるとき、近赤外線の反射率を有する硬化したコーティングを与える顔料を指し、本明細書で使用する場合、赤外線反射顔料を含まない同じ組成物から同じ様式で堆積し、硬化させたコーティングよりも大きな700〜2500ナノメートルの波長を有する光エネルギーを指す。
【0046】
適切な金属および金属アロイとしては、例えば、アルミニウム、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、ニッケル、銀、金、鉄、スズ、亜鉛、青銅、真鍮(これらのアロイ、例えば、特に、亜鉛−銅アロイ、亜鉛−スズアロイ、亜鉛−アルミニウムアロイを含む)が挙げられる。ある具体的な例としては、ニッケルアンチモンチタン、ニッケルニオブチタン、クロムアンチモンチタン、クロムニオブ、クロムタングステンチタン、クロム鉄ニッケル、クロム鉄酸化物、酸化クロム、チタン酸クロム、マンガンアンチモンチタン、マンガンフェライト、クロムグリーン−ブラック、チタン酸コバルト、クロマイト、またはホスフェート、コバルトマグネシウム、およびアルミナイト、酸化鉄、鉄コバルトフェライト、鉄チタン、亜鉛フェライト、亜鉛鉄クロマイト、銅クロマイト、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
本発明では、このような顔料は、薄いフレークの形態である。例えば、「葉状の」アルミニウムフレークが適していることが多い。本明細書で使用する場合、「薄いフレーク」という用語は、粒子は、幅と厚みの比率(アスペクト比と呼ばれる)が少なくとも2であり、多くは、10〜2,000、例えば、3〜400、またはある場合には、10〜200(10〜150を含む)であることを意味する。このように、「薄いフレーク」粒子は、実質的に平坦な構造を有するものである。ある場合には、このようなフレークは、例えば、シリカでコーティングされた銅フレークを有する場合には、その上に堆積したコーティングを有していてもよい。
【0048】
特定の実施形態では、このような薄いフレーク粒子は、厚みが0.05ミクロン未満〜10ミクロン、例えば、0.5〜5ミクロンである。特定の実施形態では、このような薄いフレーク粒子は、最大幅が10〜150ミクロン、例えば、10〜30ミクロンである。
【0049】
特定の実施形態では、第2のコーティング層は、ぎざぎざのある縁とは対照的に、丸い縁を含み、平滑で平坦な表面を含む薄いフレーク粒子を含む。角張った縁および不均一な表面を有するフレークは、当該技術分野で「コーンフレーク」として知られている。一方、もっと丸い縁を有し、もっと平滑であり、もっと平坦な表面によって区別されるフレークは、「ドル銀貨」フレークと呼ばれる。さらに、特定の実施形態では、丸い縁を含む薄いフレーク状金属または金属アロイ粒子は、ISO 1524にしたがって測定されるとき、最大幅が25ミクロン以下、例えば、10〜15ミクロンである。
【0050】
さらに適切な薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料としては、着色した金属顔料、例えば、着色している顔料が金属顔料の表面に化学的に吸着した顔料が挙げられる。このような着色した金属顔料は、米国特許第5,037,745号の第2欄第55行〜第7欄第54行に記載され、その引用部分は、本明細書に参考として組み込まれる。いくつかのこのような着色した金属顔料も市販されており、U.S.Aluminum,Inc.(フレミントン、NJ)から商品名FIREFLAKEで入手可能なものが挙げられる。特定の実施形態では、赤外線透過性の顔料(例えば、以下に記載するペリレン系顔料)は、金属顔料の表面に化学的に吸着させ、暗い(ある場合には黒い)色の赤外線反射金属顔料を与えることができる。
【0051】
特定の実施形態では、薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料が、組成物であって、第2のコーティング層がそこから堆積される組成物の固形物総重量を基準として少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、またはある場合には、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、または少なくとも10重量%の量で堆積する。特定の実施形態では、赤外線反射顔料は、上のコーティング組成物中に、コーティング組成物の固形物総重量を基準として、50重量%以下、25重量%以下、またはある場合には、15重量%以下の量で存在する。
【0052】
特定の実施形態では、第2のコーティング層は、すでに記載した薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料に加えて、赤外線反射顔料をさらに含んでいてもよい。このようなさらなる赤外線反射顔料は、着色していてもよく、または本質的に無色、半透明または不透明であってもよい。本明細書で使用する場合、「本質的に無色」という用語は、顔料が色をもたず、すなわち、顔料の吸収曲線が、400〜700ナノメートル範囲に吸収ピークをもたず、日光の下で見ると反射光または透過光に色合いまたは色相が存在しないことを意味する。着色した赤外線反射顔料は、本質的に無色ではない赤外線反射顔料である。別の言い方をすれば、「着色した」赤外線反射顔料は、以下に定義されるように、可視光を吸収してもよい顔料である。「半透明」の顔料は、可視光が、顔料を拡散して通過することができることを意味する。「不透明」の顔料は、半透明ではない顔料である。半透明であってもよく、本質的に無色であってもよい赤外線反射顔料の一例は(コーティングに少量の十分な量で使用される場合)、ダルムシュタット、ドイツのMerck KGaAから市販されるSolarflair 9870顔料である。この市販顔料は、二酸化チタンでコーティングされたマイカ基材を含む干渉顔料(以下に記載)の一例でもある。
【0053】
適切な着色したおよび/または不透明の赤外線反射顔料の例としては、例えば、任意の種々の金属および金属アロイ、無機酸化物、および干渉顔料が挙げられる。例示的な色としては、例えば、二酸化チタンの場合のように、白色;鉄チタン褐色スピネルの場合のように、褐色;酸化クロムグリーンの場合のように、緑色;酸化鉄レッドの場合のように、赤色;チタン酸クロムイエローおよびチタン酸ニッケルイエローの場合のように、黄色;特定のTiOコーティングされたマイカフレークの場合のように、青色および紫色が挙げられる。
【0054】
適切な赤外線反射顔料を含有する無機酸化物としては、特に、例えば、酸化鉄、酸化チタン(TiO)顔料、コンポジット酸化物システム顔料、酸化チタンコーティングされたマイカ顔料、酸化鉄コーティングされたマイカ顔料、酸化亜鉛顔料が挙げられる。
【0055】
特定の実施形態では、赤外線反射顔料は、可視光領域(400〜700ナノメートル)の反射率よりも、近赤外波長領域(700〜2500ナノメートル)において、大きな反射率を示す。特定の実施形態では、近赤外領域の反射率と可視光領域の反射率の比率は、1より大きい:1、例えば、少なくとも2:1、またはある場合には、少なくとも3:1である。特定の干渉顔料は、このような赤外線反射顔料の例である。
【0056】
本明細書で使用する場合、「干渉顔料」という用語は、異なる屈折率の材料の交互の層を有する多層構造を有する顔料を指す。適切な光干渉顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、チタン鉄酸化物または酸化クロム、またはこれらの組み合わせの1つ以上の層でコーティングされたマイカ、SiO、Al、TiOまたはガラスの基材を含む顔料、または金属および金属酸化物の組み合わせを含む顔料、例えば、酸化鉄層および/または二酸化ケイ素の層でコーティングされたアルミニウムが挙げられる。
【0057】
特定の実施形態では、組成物であって、第2のコーティング層がそこから堆積される組成物中に存在する赤外線反射顔料と、可視光を吸収し赤外線透過性の顔料の重量比は、少なくとも1.5:1、例えば、少なくとも5:1、少なくとも10:1、またはある場合には少なくとも20:1である。
【0058】
本発明のコーティングシステムの特定の実施形態では、第2のコーティング層自体が暗く、すなわち、第2のコーティング層自体が、CIELAB L値が50以下、例えば、45以下、40以下、またはある場合には、35以下、または30以下を示す。ある場合には、第2のコーティング層は、CIELAB L値が25から30未満、例えば、25〜29、または25〜28、または25〜27を示す。
【0059】
本発明の特定の実施形態では、第2のコーティング層は、第1のコーティング層と同様に、カーボンブラックを実質的に含まないか、またはある場合には、カーボンブラックをまったく含まない。所望な場合、第2のコーティング層は、配合した表面コーティングの当該技術分野で周知の他の任意の材料、例えば、第1のコーティング層について上に記載したいずれかを含んでいてもよい。
【0060】
本発明のコーティングシステムの利点の1つは、第2のコーティング層に視覚的に不透明な赤外線反射顔料(例えば、すでに記載した薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料)を適切に使用すると、比較的薄い膜厚、例えば、2ミル以下、またはある場合には1ミル以下で必要な覆い隠すコーティング層を製造することができる。
【0061】
すでに示されたように、本発明のコーティングシステムは、従来の赤外線反射コーティングシステムでは存在しない属性の固有の組み合わせを含む。第1に、本発明のコーティングシステムの第2のコーティング層において、薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料と、可視光を吸収し赤外線透過性の顔料およびそれぞれの量を適切に選択することによって、第1のコーティング層および第2のコーティング層が、コントラスト比(L第2/L第1)が0.8:1〜1.7:1、例えば、0.8〜1.6:1、またはある場合には、1:1〜1.5:1であるようなコーティングシステムを達成することができることが発見された。さらに、ある場合には、0.8から1未満:1のコントラスト比が達成された。結果として、本発明のコーティングシステムにおいて、第2のコーティング層は、第1のコーティング層よりもほんのわずか外観が明るい(ある場合には、外観が明るくないか、または外観が暗い場合さえある)。さらに、このことは、驚くべきことに、コーティングシステムの総日射反射率に顕著に影響を与えることなく達成された。したがって、本発明のコーティングシステムでは、コーティングシステムは、総日射反射率%(「TSR」)が少なくとも25%であり、第2のコーティング層自体は、TSR%が少なくとも25%である。本明細書で報告されるTSR%値は、300〜2500ナノメートルの波長にわたってCary 50(Varian)分光光度計を用いて測定したデータから、ASTM E 903およびASTM E 891の方法を用いて計算することができる。
【0062】
上述のそれぞれのコーティングを堆積させるコーティング組成物を、特に浸し塗りまたは浸漬、吹付け塗り、断続的な吹付け塗り、浸し塗りの後に吹付け塗り、吹付け塗りの後に浸し塗り、刷毛塗り、またはロールコーティングのような任意の種々の方法によって基材に塗布することができる。しかし、特定の実施形態では、コーティング組成物を吹付け塗りによって塗布し、したがって、このような組成物は、周囲条件で吹付け塗りすることによる用途に適した粘度を有することが多い。
【0063】
基材にコーティング組成物を塗布した後、合体し、基材の上に実質的に連続した膜を形成することができる。典型的には、膜厚は、0.01〜20ミル(約0.25〜508ミクロン)、例えば、0.01〜5ミル(0.25〜127ミクロン)、またはある場合には、0.1〜2ミル(2.54〜50.8ミクロン)の厚みである。したがって、本発明のコーティング膜を形成する方法は、コーティング組成物を、コーティングされる基材または物品の表面に塗布することと、コーティング組成物を合体して実質的に連続した膜を形成することと、次いで、このようにして得られたコーティングを硬化させることとを含む。特定の実施形態では、これらのコーティングの硬化は、周囲温度または高温でのフラッシュの後、熱的に焼き上げることを含む。ある実施形態では、硬化は、例えば、20℃〜175℃の周囲温度で行うことができる。
【0064】
本発明の説明は、以下の例であり、これらの例は、本発明をその詳細に限定するとは考えない。実施例および明細書全体のあらゆる部およびパーセントは、別段示されていない限り、重量基準である。
【実施例】
【0065】
(実施例1〜5)
実施例1〜5のコーティング組成物は、表1に列挙した成分および量(グラム)を含む基剤配合物を使用した。基剤配合物を、プロペラ型撹拌ブレードを用いて撹拌しつつ、表1の材料を順に加えることによって調製した。
【0066】
【表1】
酸官能性ポリエステル樹脂溶液(70重量%樹脂)
Baramite 10(Cinbar Performance Minerals製)のポリエステル樹脂中分散物
Cytec Industriesから入手可能なCymel 1156
無水コポリマー溶液(73重量%樹脂)
Cytec Industriesから入手可能なCymel U−80
King Industriesから入手可能なNacure 155
DuPontから入手可能なRK−5345ポリ(アクリル酸ブチル)。
【0067】
基剤組成物を用い、表2に列挙した成分および量(グラム)を用い、実施例1〜5のコーティング組成物を調製した。プロペラまたはカウル型撹拌ブレードを用いて撹拌しつつ、表2の材料を順に加えることによってコーティング組成物を調製した。
【0068】
【表2】
BASF Corporation製のLumogen(登録商標)Black FK 4280顔料
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
Eckart製のSTAPA(登録商標)METALLIC R 507アルミニウム顔料ペースト(固形分65%)。
【0069】
(用途および試験)
白黒のブラッシュアウトドローダウンカード(brushout drawdown card)(Leneta Opacity Chart (Form 2a))の上にドローダウンとして実施例1〜5のコーティング組成物を塗布した。このコーティングを強制換気オーブンによって302°Fで30分間硬化させた。それぞれのコーティングの乾燥した膜厚を表3に報告している。コーティングについて、総日射反射率および色を分析した。結果を表3に報告している。
【0070】
【表3】
Fischerパーマスコープを用い、コーティングの厚みを測定し、記録した。
日射反射率の値をASTM E903にしたがって計算した。
Gretag MacBeth ColorEye 7000Aを用い、色の測定を行った(光沢が含まれていた)。
【0071】
(実施例6〜21)
実施例8〜21のコーティングシステムは、2種類の塗料配合物実施例6および7を使用し、表4に列挙した成分および量(グラム)が含まれていた。実施例8〜21のコーティングシステムは、実施例1〜5、他の市販コーティング、実施例6および7のコーティング組成物の種々の層の組み合わせを使用した。プロペラ型の撹拌ブレードを用いて撹拌しつつ、表4の材料を順に加えることによって、実施例6および7の組成物を調製した。
【0072】
【表4】
PPG Industries,Inc.から入手可能な透明な水系樹脂基剤混合物
PPG Industries,Inc.から入手可能な水系ペリレン顔料分散物
PPG Industries,Inc.から入手可能な水系カーボンブラック顔料分散物
BASF Corporation製のMearlin(登録商標) Super Red 4303Z−Ext.CFS
PPG Industries,Inc.から入手可能な水系ペリレン顔料分散物
Silberline Mfgから入手可能なアルミニウム顔料ペースト
Lubrizol Corporationから入手可能なLubrizol 2602
BASF Corporation製。
【0073】
(用途および試験)
以下の実施例8〜21は、ED6060(PPGから市販されるカチオン電気めっき可能なプライマー)でエレクトロコーティングされた、試験基材である4インチ×12インチのACT CRSパネルの上に塗布されたコーティングシステムを示す。これらのパネルは、ヒルズデール、ミシガンのACT Laboratoriesから入手可能である。プライマーを塗布した試験基材を302°Fで30分間硬化させ、次いで、ベースコートでコーティングした。ベースコートを200°Fで10分間硬化させた。次いで、全ての試験パネルを、PPG Industries,Inc.から市販されている透明のDCT5002ダイヤモンドコートでコーティングした。このコーティングを強制換気オーブンによって硬化させた。それぞれのコーティングの乾燥した膜厚を表5に報告している。コーティングシステムについて、総日射反射率を分析し、ベースコートの色を測定した。結果を表5に報告している。
【0074】
【表5】
PPG Industries,Inc.から市販されているHP77−224E
PPG Industries,Inc.から市販されているHP77−9753
平均コーティング乾燥膜厚(単位ミクロン)をFischerパーマスコープを用いて測定した。
日射反射率の値をASTM E903にしたがって計算した。
Gretag MacBeth ColorEye 7000Aを用い、色の測定を行った(光沢が含まれていた)。
【0075】
(実施例22〜29)
表6に列挙した成分および量(グラム)を用い、実施例22および23のコーティング組成物を作製した。プロペラ型撹拌ブレードを用いて撹拌しつつ、表6の材料を順に加えることによって組成物を調製した。
【0076】
【表6】
酸官能性ポリエステル樹脂溶液(70重量%樹脂)
Baramite 10(Cillbar Performance Minerals製)のポリエステル樹脂中分散物
Cytec Industriesから入手可能なCymel 1156
無水コポリマー溶液(73重量%樹脂)
Cytec Industriesから入手可能なCymel U−80
二酸化チタン(DuPont製Ti−Pure(登録商標)R−960)のポリエステル樹脂中分散物
King Industriesから入手可能なNacure 155
DuPontから入手可能なRK−5345ポリ(アクリル酸ブチル)
Eckartから入手可能なSTAPA METALLIC R−507
10Lumogen(登録商標)Black FK 4280顔料(BASF Corporation製)のポリエステル樹脂中分散物
11Paliogen(登録商標)Black L0086顔料(BASF Corporation製)のポリエステル樹脂中分散物。
【0077】
以下の実施例24〜31は、ED6060(PPGから市販されるカチオン電気めっき可能なプライマー)でエレクトロコーティングされた、試験基材である4インチ×12インチのACT CRSパネルの上に塗布されたコーティングシステムを示す。これらのパネルは、ヒルズデール、ミシガンのACT Laboratoriesから入手可能である。プライマーを塗布した試験基材を302°Fで30分間硬化させ、次いで、ベースコートでコーティングした。ベースコートを200°Fで10分間硬化させた。次いで、全ての試験パネルを、PPG Industries,Inc.から市販されている透明のDCT5002ダイヤモンドコートでコーティングした。このコーティングを強制換気オーブンによって硬化させた。それぞれのコーティングの乾燥した膜厚を表7に報告している。コーティングシステムについて、総日射反射率を分析し、ベースコートの色を測定した。結果を表7に報告している。
【0078】
【表7】
PPG Industries,Inc.から市販されているHP77−224E
PPG Industries,Inc.から市販されているHP77−9753
平均コーティング乾燥膜厚(単位ミクロン)をFischerパーマスコープを用いて測定した。
日射反射率の値をASTM E903にしたがって計算した。
Gretag MacBeth ColorEye 7000Aを用い、色の測定を行った(光沢が含まれていた)。
【0079】
上述の実施形態に対し、広範囲の本発明の概念から逸脱することなく、変化をなすことができることが当業者には理解される。したがって、本発明が、開示されている具体的な実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の精神および範囲に含まれる改変を包含することを意図していることが理解される。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
コーティングシステムであって、
(a)CIELAB L値が40以下であり、
(i)膜形成樹脂;および
(ii)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料を含む第1のコーティング層と、
(b)該第1のコーティング層の少なくとも一部の下に堆積され、
(i)膜形成樹脂;
(ii)薄いフレーク状金属または金属アロイの赤外線反射顔料;および
(iii)可視光を吸収し赤外線透過性の顔料を含む第2のコーティング層とを含み、
該第1のコーティング層および該第2のコーティング層は、コントラスト比(L第2/L第1)が0.8:1〜1.6:1であり、
該コーティングシステムは、総日射反射率%が少なくとも25%であり、
該第2のコーティング層は、TSR%が少なくとも25%である、
コーティングシステム。
(項2)
前記コントラスト比が1.0〜1.5:1である、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項3)
前記コントラスト比が0.8〜1未満:1である、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項4)
前記第2のコーティング層は、L値が30以下である、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項5)
前記第2のコーティング層は、L値が25から30未満である、上記項4に記載のコーティングシステム。
(項6)
前記可視光を吸収し赤外線透過性の顔料が、前記組成物であって、第2のコーティング層がそこから堆積される組成物の固形物総重量を基準として少なくとも20重量%の量で存在する、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項7)
前記組成物であって、第2のコーティング層がそこから堆積される組成物中の(b)(ii)と(b)(iii)の重量比が少なくとも1.5:1である、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項8)
前記重量比が少なくとも5:1である、上記項7に記載のコーティングシステム。
(項9)
前記重量比が少なくとも10:1である、上記項8に記載のコーティングシステム。
(項10)
前記重量比が少なくとも20:1である、上記項9に記載のコーティングシステム。
(項11)
前記IR反射顔料が、金属および/または金属アロイのフレーク顔料を含む、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項12)
前記フレーク顔料が、アルミニウムを含む、上記項11に記載のコーティングシステム。
(項13)
前記第1のコーティング層中の暗いIR透過性の顔料がペリレン系顔料を含む、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項14)
前記第1のコーティング層中の暗いIR透過性の顔料がペリレン系顔料を含む、上記項1に記載のコーティングシステム。
(項15)
物品表面に配置された上記項1に記載のコーティングシステムを含む、物品。
(項16)
前記物品が航空機用部品である、上記項15に記載の物品。