特許第5918273号(P5918273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5918273工業的電気化学的方法における酸素発生用電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918273
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】工業的電気化学的方法における酸素発生用電極
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20160428BHJP
   C25D 17/10 20060101ALI20160428BHJP
   C25D 17/12 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C25C7/02 306
   C25D17/10 101A
   C25D17/12 B
   C25C7/02 307
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-550860(P2013-550860)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-507563(P2014-507563A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2012051079
(87)【国際公開番号】WO2012101141
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】MI2011A000089
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100161595
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 梓
(72)【発明者】
【氏名】カルデラーラ,アリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】サラ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ティムパノ,ファビオ
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−099294(JP,A)
【文献】 特開2000−104199(JP,A)
【文献】 米国特許第06251254(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00− 7/08
C25D 13/00−21/22
C25B 11/00−11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ金属基材と、金属を基準としてIrが60〜70%、Taが30〜40%のモル組成を有するイリジウムおよびタンタルの酸化物の第1の層を含む触媒コーティングと、2〜7g/mの単一のバルブ金属酸化物からなる外部コーティングとを含
前記第1の層と前記外部コーティングとの間に介在して、前記触媒コーティングが、金属を基準としてIrが76〜84%、Taが15〜23%、Tiが0.2〜1.3%のモル組成を有するイリジウム、タンタル、およびチタンの酸化物の第2の層をさらに含む、
電気化学的方法における酸素発生用電極。
【請求項2】
前記バルブ金属酸化物が、酸化タンタル、酸化スズおよび酸化ジルコニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記外部コーティングが、酸化タンタル、酸化スズ、および酸化ジルコニウムの中から選択される2.9〜3.5g/mのバルブ金属酸化物からなる、請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記触媒コーティングのイリジウムの面積あたりの使用量が5〜50g/mである、請求項1〜のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記基材と前記触媒コーティングとの間に介在する、チタンまたはタンタルの酸化物を主成分とする中間保護層を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記触媒コーティングのイリジウムの面積あたりの使用量が8〜15g/mである、請求項に記載の電極。
【請求項7】
タンタルまたはスズまたはジルコニウムの前駆体を含有する溶液を塗布し、続いて熱分解させることによって、前記外部コーティングを形成するステップを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の電極上で、電解槽からアノードで酸素を発生させるステップを含む、工業的電気化学的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル中のアノードとして、たとえば電気冶金的方法のための電気分解セル中の酸素発生アノードとしての使用に好適な電極に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、工業的電気化学的方法において、たとえばアノードにおける酸素発生が意図される電気分解用途において使用するための電極に関する。酸素発生用アノードは、種々の電気分解用途で広く使用され、そのいくつかは電気冶金分野に関し、印加電流密度に関して広い範囲にわたり、非常に低い値(たとえば、電解採取法の場合などで数百A/m)であってよく、非常に高い値(たとえば高速電気めっきにおいては、アノード表面を基準として10kA/mを超える値で使用可能)であってもよく;酸素発生アノードの別の応用分野は、印加電流下でのカソード保護である。アノードでの酸素発生に好適な電極は、バルブ金属、たとえばチタンおよびその合金の基材から出発して、遷移金属またはその酸化物を主成分とする触媒組成物をコーティングすることで得ることができ、アノードでの酸素放出反応の過電圧を低下させる能力を特徴とし、この過電圧が大きすぎると、触媒系の非存在下での工業的方法が実施できない。アノードでの酸素発生反応の触媒に好適な組成物は、たとえば、イリジウム酸化物とタンタル酸化物との混合物からなり、ここでイリジウムは触媒活性種の役割を果たし、タンタルは、特に攻撃的な電解質を用いて使用される場合に、腐食現象からバルブ金属基材を保護することが可能な緻密なコーティングの形成を促進する。多くの工業的電気化学的方法のアノードでの酸素発生に適したアノード配合物は、チタン基材と、65%のIrおよび35%のTaの金属を基準としたモル組成のイリジウムおよびタンタルの酸化物からなる触媒コーティングとを含む。場合によっては、たとえば、非常に酸性またはその他の腐食性の電解質とともに使用可能となるために、チタン基材と触媒コーティングとの間に中間保護層、たとえば金属を基準として80%のTiおよび20%のTaのモル組成を有するチタンおよびタンタルの酸化物からなる保護層を介在させると好都合となりうる。この種類の電極は、種々の方法で作製することができ、たとえば、高温、たとえば400〜600℃で前駆体溶液を熱分解させることによって作製することができる。上記規定の組成を有する電極は、低い電流密度および高い電流密度の両方でいくつかの工業用途の要求を満たし、妥当な動作寿命を有する必要がある。にもかかわらず、一部の製造方法、特に冶金分野(たとえばプリント回路および銅箔を製造するためのガルバニックプロセスにおける銅の堆積)における経済性のためには、より長い持続時間の電極と、電流密度が高い場合でも適度に低い酸素発生電位とを併せ持つことが必要であり:酸素発生の電位は、実際に、プロセスの動作電圧、したがって全体のエネルギー消費を決定する主要な要因の1つである。さらに、バルブ金属基材上の貴金属またはその酸化物を主成分とするアノードの動作寿命は、アノード表面の急速な腐食現象または汚染を引き起こしうる特に攻撃的な汚染物質の存在下において顕著に短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、低酸素発生過電位と、高電流密度、またはたとえば汚染種の存在による特に攻撃的な電解質の存在などの、特に深刻なプロセス条件の場合でも動作寿命が長いこととを特徴とする酸素発生アノードの必要性が明らかとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の種々の態様は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0005】
一実施形態においては、本発明は、バルブ金属基材と、金属を基準としてIrが60〜70%、Taが30〜40%のモル組成のイリジウムおよびタンタルの酸化物の内部層を含む触媒コーティングと、2〜7g/mのバルブ金属酸化物を含有する外部コーティングとを含む、電気化学的方法における酸素発生用電極に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の目的では、バルブ金属酸化物は、酸化させた場合、カソードとして使用する場合には電流が流れるが、アノードとして使用する場合には電流の流れに抵抗する金属を本明細書では意図しており、米国特許第6,287,673号明細書に記載の定義に準拠している。バルブ金属の例としては、マグネシウム、トリウム、カドミウム、タングステン、スズ、鉄、銀、ケイ素、タンタル、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、およびニオブが挙げられる。
【0007】
一実施形態においては、外部コーティングは、1種類のバルブ金属酸化物からなる。これによって、外部層のバルブ金属挙動が維持されるという利点を有することができるが、その理由は、外部層のバルブ金属と異なる価数を有する別の元素との相互作用によって、ドーピング作用が生じて、アノード電流に対する抵抗を妨害することがあるからである。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、指定の使用量でバルブ金属酸化物の外部コーティングを加えることで、アノードでの酸素発生に使用される電極の持続時間を顕著に増加させることができ、同時に、酸素発生電位に対する影響はわずかで、汚染種の存在に対する許容性を改善できることを見出した。
【0009】
一実施形態においては、触媒コーティングは複数の層からなり、金属を基準としてIrが76〜84%、Taが15〜23%、Tiが0.2〜1.3%のモル組成のイリジウム、タンタル、およびチタンの酸化物の第2の中間層をも含み、この層は第1の触媒層と外部層との間に介在する。これによって、電極の持続時間をさらに向上させる利点を有することができる。
【0010】
一実施形態においては、触媒層中のイリジウムの面積あたりの使用量は5〜50g/mである。一実施形態においては、本発明による触媒層の外部層の酸化物の面積あたりの使用量は2.9〜3.5g/mである。
【0011】
一実施形態においては、触媒層中のイリジウムの個別の使用量は5〜50g/mである。一実施形態においては、本発明による触媒層の外部層の酸化物の個別の使用量は2.9〜3.5g/mである。これによって、酸素発生電位に対する影響が無視できるまたは0になることが保証されるという利点を得ることができる。
【0012】
一実施形態においては、電極は、基材と触媒コーティングとの間に介在する、チタンの酸化物またはタンタルの酸化物を主成分とする中間保護層を含む。
【0013】
別の一態様においては、本発明は、上記特徴を有する電極の製造方法であって、タンタルまたはスズまたはジルコニウムの前駆体を含有する溶液を塗布し、続いて熱分解させることによって、本明細書で前述した組成を有する外部層を形成するステップを含む方法に関する。
【0014】
別の一態様においては、本発明は、上記特徴を有する電極上で電解槽からアノードで酸素を発生させるステップを含む工業的電気化学的方法に関する。
【0015】
本発明者らが得た最も重要な結果の一部を以下の実施例に示すが、これらの実施例は、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0016】
実施例1
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを脱脂し、最初に70〜100μmの表面粗さ値Rzが得られるまで鉄グリットでサンドブラストし、次に20重量%のHCl中90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0017】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/mの全使用量(酸化物を基準とすると0.87g/mに相当)でシートに塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加えることにより得られる前駆体溶液を3回塗装し、続いて500℃で熱分解させることによって行った。
【0018】
次に、65:35の重量比(約66.3:36.7のモル比に相当)のイリジウムおよびタンタルの酸化物を主成分とする触媒コーティングを、イリジウムの全使用量が10g/mとなるように保護層上に塗布した。
【0019】
この電極を515℃で2時間熱処理し、次に外部コーティング(酸化物を基準として3g/m)の塗布を、HClで酸性化したTaClの水溶液を2回塗装することによって行った。
【0020】
こうして得られた電極から1cmの表面を有する3つのサンプルを切り取り、アノードでの酸素発生下での加速寿命試験を行い、不活性化時間(1Vの電位上昇が観察されるまでに必要な動作時間として定義される)を150g/lのH2SO4中、60℃の温度および30kA/mの電流密度で測定した。
【0021】
3つのサンプルの平均不活性化時間は1370時間であった。
【0022】
実施例2
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを脱脂し、最初に70〜100μmの表面粗さ値Rzが得られるまで鉄グリットでサンドブラストし、次に20重量%のHCl中90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0023】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/mの全使用量(酸化物を基準とすると0.87g/mに相当)でシートに塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加えることにより得られる前駆体溶液を3回塗装し、続いて500℃で熱分解させることによって行った。
【0024】
次に、65:35の重量比(約66.3:36.7のモル比に相当)のイリジウムおよびタンタルの酸化物を主成分とする触媒コーティングを、イリジウムの全使用量が10g/mとなるように保護層上に塗布した。この電極を515℃で2時間熱処理し、次に外部コーティング(酸化物を基準として3.4g/m)を、Snの0.9M酢酸溶液を2回塗装することによって行った。
【0025】
こうして得られた電極から1cmの表面を有する3つのサンプルを切り取り、アノードでの酸素発生下での加速寿命試験を行い、不活性化時間(1Vの電位上昇が観察されるまでに必要な動作時間として定義される)を150g/lのH2SO4中、60℃の温度および30kA/mの電流密度で測定した。
【0026】
3つのサンプルの平均不活性化時間は1440時間であった。
【0027】
実施例3
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを脱脂し、最初に70〜100μmの表面粗さ値Rzが得られるまで鉄グリットでサンドブラストし、次に20重量%のHCl中90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0028】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/mの全使用量(酸化物を基準とすると0.87g/mに相当)でシートに塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加えることにより得られる前駆体溶液を3回塗装し、続いて500℃で熱分解させることによって行った。
【0029】
次に2つの別個の層からなる触媒コーティングを保護層上に塗布した:第1の(内部)層は、65:35の重量比(約66.3:36.7のモル比に相当)のイリジウムおよびタンタルの酸化物を主成分とし、イリジウムの全使用量は2g/mであり、第2の(外部)層は、78:20:2の重量比(約80.1:19.4:0.5のモル比に相当)のイリジウム、タンタル、およびチタンの酸化物を主成分とし、イリジウムの全使用量は10g/mであった。
【0030】
内部触媒層の塗布は、Ir濃度が76g/lに到達するまでH2IrCl6をTaCl5水溶液に加えることで得られる前駆体溶液を2回塗装し、続いて520℃で熱分解させることによって行った。
【0031】
外部触媒層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加え、次にIr濃度が195g/lに到達するまでH2IrCl6を加えることで得られる前駆体溶液を4回塗装し、続いて480℃で熱分解させることによって行った。この電極を515℃で2時間熱処理し、次に外部コーティング(酸化物を基準として3g/m)の塗布を、HClで酸性化したTaCl5水溶液を2回塗装することによって行った。
【0032】
こうして得られた電極から10cmの表面を有する3つのサンプルを切り取り、アノードでの酸素発生下での加速寿命試験を行い、不活性化時間(1Vの電位上昇が観察されるまでに必要な動作時間として定義される)を150g/lのH2SO4中、60℃の温度および30kA/mの電流密度で測定した。
【0033】
3つのサンプルの平均不活性化時間は2420時間であった。
【0034】
実施例4
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを脱脂し、最初に70〜100μmの表面粗さ値Rzが得られるまで鉄グリットでサンドブラストし、次に20重量%のHCl中90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0035】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/mの全使用量(酸化物を基準とすると0.87g/mに相当)でシートに塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加えることにより得られる前駆体溶液を3回塗装し、続いて500℃で熱分解させることによって行った。
【0036】
次に2つの別個の層からなる触媒コーティングを保護層上に塗布した:第1の(内部)層は、65:35の重量比(約66.3:36.7のモル比に相当)のイリジウムおよびタンタルの酸化物を主成分とし、イリジウムの全使用量は2g/mであり、第2の(外部)層は、78:20:2の重量比(約80.1:19.4:0.5のモル比に相当)のイリジウム、タンタル、およびチタンの酸化物を主成分とし、イリジウムの全使用量は10g/mであった。
【0037】
内部触媒層の塗布は、Ir濃度が76g/lに到達するまでH2IrCl6をTaCl5水溶液に加えることで得られる前駆体溶液を2回塗装し、続いて520℃で熱分解させることによって行った。
【0038】
外部触媒層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加え、次にIr濃度が195g/lに到達するまでH2IrCl6を加えることで得られる前駆体溶液を4回塗装し、続いて480℃で熱分解させることによって行った。この電極を515℃で2時間熱処理し、次に外部コーティング(酸化物を基準として3.4g/m)の塗布を、Snの0.9M酢酸溶液を2回塗装することによって行った。
【0039】
こうして得られた電極から10cmの表面を有する3つのサンプルを切り取り、アノードでの酸素発生下での加速寿命試験を行い、不活性化時間(1Vの電位上昇が観察されるまでに必要な動作時間として定義される)を150g/lのH2SO4中、60℃の温度および30kA/mの電流密度で測定した。
【0040】
3つのサンプルの平均不活性化時間は1800時間であった。
【0041】
比較例1
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを脱脂し、最初に70〜100μmの表面粗さ値Rzが得られるまで鉄グリットでサンドブラストし、次に20重量%のHCl中90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0042】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/mの全使用量(酸化物を基準とすると0.87g/mに相当)でシートに塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加えることにより得られる前駆体溶液を3回塗装し、続いて500℃で熱分解させることによって行った。
【0043】
次に、65:35の重量比(約66.3:36.7のモル比に相当)のイリジウムおよびタンタルの酸化物を主成分とする触媒コーティングを、イリジウムの全使用量が10g/mとなるように保護層上に塗布した。
【0044】
こうして得られた電極から1cmの表面を有する3つのサンプルを切り取り、アノードでの酸素発生下での加速寿命試験を行い、不活性化時間(1Vの電位上昇が観察されるまでに必要な動作時間として定義される)を150g/lのH2SO4中、60℃の温度および30kA/mの電流密度で測定した。
【0045】
3つのサンプルの平均不活性化時間は660時間であった。
【0046】
比較例2
200×200×3mmの大きさのグレード1のチタンシートを脱脂し、最初に70〜100μmの表面粗さ値Rzが得られるまで鉄グリットでサンドブラストし、次に20重量%のHCl中90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0047】
乾燥後、80:20の重量比のチタンおよびタンタルの酸化物を主成分とする保護層を、金属を基準として0.6g/mの全使用量(酸化物を基準とすると0.87g/mに相当)でシートに塗布した。保護層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加えることにより得られる前駆体溶液を3回塗装し、続いて500℃で熱分解させることによって行った。
【0048】
次に2つの別個の層からなる触媒コーティングを保護層上に塗布した:第1の(内部)層は、65:35の重量比(約66.3:36.7のモル比に相当)のイリジウムおよびタンタルの酸化物を主成分とし、イリジウムの全使用量は2g/mであり、第2の(外部)層は、78:20:2の重量比(約80.1:19.4:0.5のモル比に相当)のイリジウム、タンタル、およびチタンの酸化物を主成分とし、イリジウムの全使用量は10g/mであった。
【0049】
内部触媒層の塗布は、Ir濃度が76g/lに到達するまでH2IrCl6をTaCl5水溶液に加えることで得られる前駆体溶液を2回塗装し、続いて520℃で熱分解させることによって行った。
【0050】
外部触媒層の塗布は、HClで酸性化したTaCl5水溶液をTiCl4水溶液に加え、次にIr濃度が195g/lに到達するまでH2IrCl6を加えることで得られる前駆体溶液を4回塗装し、続いて480℃で熱分解させることによって行った。
【0051】
こうして得られた電極から10cmの表面を有する3つのサンプルを切り取り、アノードでの酸素発生下での加速寿命試験を行い、不活性化時間(1Vの電位上昇が観察されるまでに必要な動作時間として定義される)を150g/lのH2SO4中、60℃の温度および30kA/mの電流密度で測定した。
【0052】
3つのサンプルの平均不活性化時間は1320時間であった。
【0053】
以上の説明は、本発明を限定するものとして意図されたものではなく、本発明は、本発明の範囲から逸脱しない種々の実施形態により使用することができ、その範囲は添付の特許請求の範囲によって一義的に定義される。
【0054】
本出願の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「含む」(comprise)、ならびに「含むこと」(comprising)および「含む」(comprises)などのその変形は、他の要素または添加物の存在の排除を意図したものではない。
【0055】
文献、行為、材料、装置、物品などの議論は、本発明の状況を提供する目的でのみ本明細書中に含まれる。これらの事項のいずれかまたはすべてが、従来技術の基礎の一部を形成したり、本出願の各請求の優先日以前の本発明と関連のある分野における共通の一般知識であったりすると示唆したり表したりするものではない。