(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指標図形は、前記第1マーカを中心とし前記標準範囲の下限値を半径とする円または円弧形状の第1の二次元形状、および、前記第1マーカを中心とし前記標準範囲の上限値を半径とする円または円弧形状の第2の二次元形状を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の超音波画像処理装置。
前記第2マーカ表示手段は、指定された前記第1計測点に前記第2マーカを初期表示させ、前記第2マーカが移動したときに、前記第1計測点からの前記第2マーカの移動方向であって、前記第1の二次元形状と前記第2の二次元形状との間の範囲に前記第2マーカを移動させる、
ことを特徴とする、請求項4に記載の超音波画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術においては、始点が指定された後にガイドが表示されるため、始点の位置決めのサポートを得られるものではない。したがって、超音波画像にアーチファクトが多く含まれている場合などにおいては、始点の位置決めを正確に行うことは難しい。始点の位置決めを失敗した場合、すなわち本来計測点とすべき位置ではない位置を始点として指定してしまった場合には、ユーザは、その後、表示されるガイドと終点の候補となる輪郭位置との関係を見て始点の位置決めに失敗した可能性を認識できるものの、それを認識できるのはあくまで始点を指定した後である。この場合、一度指定した始点位置をキャンセルし再度始点位置の指定をやり直さなければならなくなり、このためにユーザに手間がかかってしまっている。
【0008】
本発明の目的は、超音波画像上で指定された2つの計測点(始点および終点)の間で距離計測を行う超音波画像処理装置において、2つの計測点(特に始点)の指定を支援することにある。あるいは、本発明の目的は、超音波画像として現れた組織構造上において、終点が取り得る範囲を認識しながら始点を指定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波画像処理装置は、超音波画像上において順次指定される第1計測点と第2計測点との間の距離を計測する計測手段と、前記第1計測点を指定するためのユーザ操作に従って前記超音波画像上を移動する第1マーカを表示する第1マーカ表示手段と、少なくとも前記第1計測点が指定される前に、前記第1マーカ
からの距離が前記第1計測点と前記第2計測点との間の距離の標準範囲
内となる位置を示す指標図形を前記超音波画像上に表示する指標図形表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、第1計測点(始点)の指定過程において第1マーカと共に超音波画像上に指標図形が表示される。ユーザは当該指標図形を通じて第2計測点候補範囲、つまり終点候補範囲を認識しながら、第1計測点の指定を行うことができる。すなわち、超音波画像として表示された組織構造との関係で、第2計測点が取り得る標準的な範囲を認識しながら、つまり将来指定する第2計測点の位置の妥当性を考慮しながら、現在指定しようとしている第1計測点の位置の妥当性を総合的に評価することが可能である。よって、上記構成によれば、第1計測点の指定に当たってユーザ負担を軽減でき、また第1計測点の指定精度を向上できる。
【0011】
第1計測点の指定後も指標図形の表示を維持するならば、第2計測点の指定に際しても当該指標図形による支援を受けられる。指標図形は、計測対象となった距離についての標準範囲を示すことができる限りにおいて、各種の形態をもって表現することが可能である。望ましくは、それは標準範囲の上限および下限を示す2つの図形からなり、その概念には2つの縁を有する帯状図形も含まれる。
【0012】
望ましくは、前記指標図形は、前記第1マーカを中心とし前記標準範囲の下限値を半径とする円または円弧形状の第1の二次元形状、および、前記第1マーカを中心とし前記標準範囲の上限値を半径とする円または円弧形状の第2の二次元形状を含む。距離計測の始点の指定前の段階において、超音波画像処理装置は、現在の第1マーカの位置からどの方向に向かって距離計測が行われるかを把握することができない。したがって、指標図形は、第1マーカからの複数の方位(望ましくは全方位)における標準距離範囲を示すよう、第1および第2の二次元形状を円または円弧形状とするのが好ましい。なお、第1マーカの現在位置などに基づいて距離計測の方向を推測し、推測された方向のみに指標図形を表示させるのも好適である。
【0013】
望ましくは、前記指標図形表示手段は、前記指標図形を
表示させながら前記第1マーカの移動に追従移動させる。
【0014】
望ましくは、本発明に係る超音波画像処理装置は、前記第1計測点が指定された後に前記第2計測点を指定するためのユーザ操作に従って前記超音波画像上を移動する第2マーカを表示する第2マーカ表示手段、をさらに備え、前記指標図形表示手段は、前記第1計測点が指定された場合、前記第1および第2の二次元形状の表示位置を固定させ、その後前記第2マーカが移動した場合に、前記第1計測点から前記第2マーカの表示位置を通る方向を中心とした角度範囲に前記第1および第2の二次元形状の表示範囲を制限する。
【0015】
始点が指定されると、第1および第2の二次元形状の表示位置が固定され、始点指定後においても第1および第2の二次元形状は引き続き表示される。これにより、ユーザは、第2計測点(距離計測の終点)の位置決めの目安としても第1および第2の二次元形状を利用することができる。始点が指定された後、終点を指定するための第2マーカが表示される。超音波画像処理装置は、始点と第2マーカとの位置関係により距離計測の方向を推測することができる。そして、指標図形表示手段は、距離計測方向として推測された方向を中心とした角度範囲に第1および第2の二次元形状の表示範囲を制限する。これにより、第1および第2の二次元形状を終点の位置決めの目安として表示しつつ、第1および第2の二次元形状のうち不要と思われる部分を表示させないことで、表示の煩雑さを解消する。
【0016】
望ましくは、前記指標図形表示手段は、前記第1計測点と前記第2マーカとの間の距離が大きくなる程、前記角度範囲を小さくする。なお、当該角度範囲に下限値を設け、始点位置と第2マーカの距離が大きくなっても終点の位置決めの目安として利用できる程度に二次元形状を残して表示させるのが好適である。
【0017】
望ましくは、前記第2マーカ表示手段は、指定された前記第1計測点に前記第2マーカを初期表示させ、前記第2マーカが移動したときに、前記第1計測点からの前記第2マーカの移動方向であって、前記第1の二次元形状と前記第2の二次元形状との間の範囲に前記第
2マーカを移動させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超音波画像上で指定された2つの計測点(始点および終点)の間で距離計測を行う超音波画像処理装置において、2つの計測点(特に始点)の指定を支援することができる。あるいは、本発明によれば、超音波画像として現れた組織構造上において、終点が取り得る範囲を認識しながら始点を指定できるようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
超音波診断装置10は、一般に病院などの医療機関に設置され、被検体に対して超音波診断を実行する医療上の機器である。超音波診断装置10は、様々な検査や計測に用いられる超音波画像を形成する。超音波診断装置10は、形成される超音波画像上において指定される2つの計測点間の距離を計測する機能を有している。以下、胎児の発育状態を確認するための児頭大横径の計測を例にとり、超音波診断装置10が有する距離計測機能について説明する。なお、超音波診断装置10は本願明細書において超音波画像処理装置の一種である。
【0022】
図1は、超音波診断装置10の構成概略図である。プローブ12は、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波探触子である。プローブ12は複数の振動子からなる振動子アレイを有している。送信時において、振動子アレイを構成する複数の振動子に対して、送受信部14からの複数の送信信号が供給され、それらが励振される。これにより超音波ビーム(送信ビーム)が生成される。一方、受信時において、振動子アレイを構成する複数の振動子が反射エコーを受信すると、各振動子において音響信号が電気信号である受信信号に変換される。これにより生じた複数の受信信号が送受信部14へ出力される。本実施形態では、被検体である胎児の頭部に対して超音波の送受波が行われるように、ユーザによって、プローブ12の位置および姿勢が調整される。
【0023】
送受信部14は、プローブ12が有する複数の振動子を励振する複数の送信信号をプローブ12へ送ることで、プローブ12において超音波を発生させる。また、送受信部14は、反射エコーを受信した複数の振動子で生成される複数の受信信号を整相加算処理して、超音波ビームの走査方向に並ぶビームデータを形成する。整相加算処理は受信ビームを電子的に形成する処理である。各ビームデータは、深度方向に並ぶ複数の反射エコー信号により構成される。このように、送受信部14は、送信ビームフォーマの機能と受信ビームフォーマの機能を備えている。送受信部14の後段には、検波回路等を含むビームデータ処理部が設けられているが、それについては図示省略されている。
【0024】
超音波画像形成部16は、例えばデジタルスキャンコンバータ(DSC)などにより構成され、送受信部14からの複数のビームデータに基づいて生体イメージとしての超音波画像を形成する。本実施形態においては、超音波画像形成部16において形成される超音波画像は、いわゆるBモード画像であり、特に胎児の頭部断面が映し出された画像である。より詳しくは、超音波画像形成部16は、受信フレームデータ列に基づいて表示フレームデータ列を生成する。1つの受信フレームデータは1回のビーム走査によって得られた複数のビームデータからなるものである。表示フレームデータ列が動画像としてのBモード画像を構成する。超音波画像形成部16で順次生成される一連の超音波画像は、本実施形態において、表示処理部30および画像記憶部18に送られている。
【0025】
画像記憶部18は、超音波画像形成部16で形成された複数の超音波画像を記憶するリングバッファである。例えば、最新フレームから所定時間前までのフレームがリングバッタ上に常時一時的に格納される。超音波画像形成部16の前段に画像記憶部を設けてもよい。その場合、超音波画像形成部16による処理が施される前のビームデータ群がフレーム毎に記憶される。本実施形態では、リアルタイム動作中ではなく、フリーズ後の画像再生動作中に計測が実行される。具体的には、画像記憶部18に記憶された複数の超音波画像が再生され、それらの中からユーザにより特定の超音波画像が選択される。当該超音波画像を静止画像として画面表示している状態において児頭大横径の計測が行われる。
【0026】
制御部20は、例えばCPUまたはマイクロプロセッサにより構成され、超音波診断装置10が備える各部の制御を行う。制御部20は、距離計測において動作する複数の機能を備えており、それらが
図1において複数のブロックとして表現されている。それらの機能は、本実施形態では、ソフトウェア機能として実現されている。但し、それらの機能が例えば電気電子回路やプロセッサ等のハードウェアを利用して実現されてもよい。あるいは、それらの機能が、CPU、プロセッサなどのハードウェアと、ソフトウェア(プログラム)との協働により実現されてもよい。以下、各ブロックについて説明する。
【0027】
標準範囲特定部22は、計測対象である児頭大横径の標準範囲の下限値および上限値を特定する。本実施形態では、標準範囲特定部22は、統計的な観点から算出される児頭大横径の正常範囲を標準範囲としている。児頭大横径の正常範囲は妊娠週数によって異なることから、標準範囲特定部22は妊娠週数に応じて児頭大横径の正常範囲の下限値および上限値を標準範囲として特定する。具体的には、児頭大横径の正常範囲の下限値および上限値と妊娠週数との対応関係を示す対応情報、およびユーザによって入力される妊娠週数に基づいて、児頭大横径の標準範囲の下限値および上限値を特定する。なお、標準範囲の下限値および上限値は、ユーザにより直接入力されてもよい。
【0028】
グラフィックイメージ形成部24は、超音波画像上における距離計測にあたり超音波画像に重畳して表示される各種グラフィック要素を形成する。グラフィックイメージ形成部24が形成するグラフィック要素としては、距離計測の始点(第1計測点)を指定するために超音波画像上を移動する第1移動マーカ、距離計測の終点(第2計測点)を指定するために超音波画像上を移動する第2移動マーカ、および標準範囲特定部22が特定した児頭大横径の標準範囲を示す標準範囲表示図形などである。もちろん、グラフィック要素としては上記に限られず、例えば始点マーカと第2移動マーカを結ぶラインなど、距離計測をサポートするためのイメージも形成されてよい。形成されたグラフィック要素群は表示処理部30により超音波画像に重畳され表示部32に表示される。
【0029】
児頭大横径の標準範囲を示す標準範囲表示図形は、距離計測の始点が指定される前、すなわち始点指定の過程において表示部32に表示される。標準範囲表示図形を始点指定前に表示させることで、当該標準範囲表示図形を始点の指定にあたって目安とすることができる。本実施形態においては、標準範囲表示図形として第1移動マーカを中心とした円または円弧形状(以下「円形状」と記載)の図形が用いられる。標準範囲表示図形を円形状としたことで、第1移動マーカから複数の方位(円であれば全方位)に対する児頭大横径の標準範囲が示されることになる。
【0030】
本実施形態では、標準範囲表示図形は、第1移動マーカを中心とし標準範囲特定部22が特定した標準範囲の下限値に基づく値を半径とする下限値円、および第1移動マーカを中心とし標準範囲特定部22が特定した標準範囲の上限値に基づく値を半径とする上限値円の二重の円状図形から構成される。具体的には、下限値円および上限値円の半径は、特定された標準範囲の下限値および上限値と表示部32の表示スケールとを考慮して決定される。
【0031】
標準範囲表示図形としては、児頭大横径の標準範囲を示す限りにおいて様々な構成を取り得る。例えば、上述の下限値円および上限値円を破線などで表すようにしてもよいし、ユーザにとって標準範囲がより分かりやすいよう、下限値円と上限値円との間の部分を着色するようにしてもよい。また、下限値円および上限値円に加え、第1移動マーカを中心とし児頭大横径の平均値に基づく値を半径とする平均値円を表示するようにしてもよい。
【0032】
また、標準範囲表示図形は、始点が指定された場合には始点位置を中心とする位置に表示位置が固定され、その後引き続き表示される。これにより、ユーザは第2移動マーカによる終点の位置決めにおいても当該円形状の標準範囲表示図形を目安とすることができる。
【0033】
グラフィックイメージ形成部24が形成する標準範囲表示図形の詳細については、
図2−7を用いて後に詳述する。
【0034】
計測部26は、超音波画像上において指定された2つの計測点間の距離を算出する。2つの計測点はユーザにより指定される。具体的には、表示部32に表示された超音波画像上において、ユーザは、入力部34に含まれるトラックボールを用いて上記第1移動マーカを移動させ、決定ボタンを押すことで距離計測の始点位置を確定させる。同様に、第2移動マーカを移動させ決定ボタンを押すことで終点位置を確定させる。計測部26は、こうして指定された2つの計測点間の距離を計測する。2つの計測点間の距離は、超音波画像上における距離および超音波画像の表示スケールを考慮して算出される。
【0035】
記憶部28は、例えばハードディスクやROMやRAMなどであり、超音波診断装置10の各部を動作させるためのプログラムや、超音波診断装置10における演算処理結果などを記憶する。また、標準範囲特定部22が参照する児頭大横径の正常範囲の下限値および上限値と妊娠週数との対応関係を示す対応情報を記憶する。当該対応情報は関数として記憶してもよいし、テーブルなどの形で記憶してもよい。
【0036】
表示処理部30は、超音波画像形成部16が形成した超音波画像を表示部32に表示させる処理を行う。また、上述の通り、グラフィックイメージ形成部24が形成したグラフィック要素群を超音波画像に重畳させて表示部32に表示させる。また、表示処理部30は、計測部26の計測結果をレポートの形などで表示部32に表示させてもよい。
【0037】
表示部32は、例えば液晶ディスプレイであり、上記超音波画像やグラフィック要素群などを表示する。入力部34は、ボタン、スイッチ、トラックボールなどを含み、妊婦の妊娠週数の入力、第1および第2移動マーカの移動操作、距離計測の始点および終点の指定などのためにユーザによって用いられる。
【0038】
以下、
図1を参照しながら
図2−7を用いて、グラフィックイメージ形成部24が形成する児頭大横径の標準範囲を示す標準範囲表示図形の詳細について説明する。
【0039】
図2は、記憶部28に記憶される、児頭大横径の正常範囲と妊娠週数との関係を表す関数を示す図である。
図2に示された5本のグラフのうち、中央のグラフ40は、各妊娠週数における児頭大横径の平均値を示すグラフである。グラフ40の1つ下に位置するグラフ42は、平均−1.5SD(Standard Deviation;標準偏差)を示すグラフであり、グラフ40の1つ上に位置するグラフ44は、平均+1.5SDを示すグラフである。これらのグラフは、過去における児頭大横径の計測結果に基づいて算出されている。各妊娠週数において、−1.5SDから+1.5SDまでの間には全体の約86.6%の胎児が含まれる。例えば、妊娠18週においては、全体の約86.6%の胎児の児頭大横径のサイズは約35mmから約44mmまでの間となる。したがって、本実施形態では、±1.5SDの範囲を児頭大横径の標準範囲とし、−1.5SDの値を標準範囲の下限値、+1.5SD値を標準範囲の上限値としている。標準範囲特定部22は、ユーザから入力される妊娠週数に基づいて、
図2に示す関数から標準範囲の上限値および下限値を特定する。
【0040】
なお、−1.5SDを示すグラフ42のさらに下に位置するグラフ46は、平均−2.0SDを示すグラフであり、+1.5SDを示すグラフ44のさらに上に位置するグラフ48は、平均+2.0SDを示すグラフである。本実施形態では、児頭大横径の計測を行うため±1.5SDを標準範囲としているが、標準範囲は±1.5SDの範囲に限られない。現在、日本においては、児頭大横径の計測における標準範囲の基準は±1.5SDとなっているが、標準範囲の基準は各国において異なり、また日本においても基準が変更される可能性もある。また、児頭大横径以外の他の計測においても、+1.5SDのみならず他の範囲が標準範囲とされる場合もある。これらの基準に応じて標準範囲を設定してよい。
【0041】
図3は、児頭大横径の標準範囲を示す標準範囲表示図形の表示例を示す図である。
図3に示されるように、表示部32には、超音波画像形成部16が形成したBモード画像50が表示される。Bモード画像50には胎児の頭部断面52が含まれている。頭部断面52は、頭頂部側から見た断面であり、顔の前面は左側となっている。したがって、胎児の左側側頭部は頭部断面52の下側になり、右側側頭部は頭部断面52の上側となる。児頭大横径の計測は、両側側頭部間の距離を測定するため、
図3の例においては、始点候補位置は頭部断面52の輪郭の下部中央付近(上部中央付近であってもよい)、終点候補位置は頭部断面52の輪郭の上部中央付近(始点を上部中央付近とした場合は下部中央付近)となる。
【0042】
距離計測が開始されると、表示部32には距離計測の始点を指定するための第1移動マーカ54が表示される。それと同時に、第1移動マーカ54を中心とした円形状の下限値円56および上限値円58が表示される。上述の通り、下限値円56の半径は児頭大横径の標準範囲の下限値に基づく値となっており、上限値円58の半径は同標準範囲の上限値に基づく値となっている。すなわち、第1移動マーカ54からの距離が児頭大横径の標準範囲の下限値を示す位置および上限値を示す位置が複数の方位に亘って表示されることになる。
【0043】
なお、
図3に示されるように、本実施形態では、下限値円56および上限値円58のうち、Bモード画像50の表示範囲外にはみ出す部分は表示されない。これにより、下限値円56および上限値円58がBモード画像50の表示範囲外に表示されている各情報の表示の妨げとなることを防止している。
【0044】
図4は、第1移動マーカ54が始点候補位置に合わせられた場合の表示例である。第1移動マーカ54の移動に従って下限値円56および上限値円58も移動し、これらの相対的な位置関係は維持される。したがって、第1移動マーカ54が始点候補位置に移動すると、始点候補位置からの距離が標準範囲の下限値および上限値となるラインが下限値円56および上限値円58により示されることになる。
【0045】
この状態において、終点候補位置である右側側頭部中央(頭部断面52の輪郭の上部中央付近)と下限値円56および上限値円58との位置の比較を行うことで、第1移動マーカ54の現在の位置が距離計測の始点として適切であるか否かを判定することができる。
【0046】
終点候補位置が下限値円56と上限値円58との間に位置していれば、始点位置の指定前に被検体である胎児の児頭大横径が標準範囲内であることが把握できる。すなわち、これは、第1移動マーカ54の現在の位置が距離計測の始点として適切な位置であることを意味するものである。
【0047】
一方、終点候補位置が下限値円56と上限値円58との間に位置していない場合、いくつかの可能性が考えられる。第1に、第1移動マーカ54の現在の位置が始点として適切な位置ではない場合が考えられる。第2に、Bモード画像50に含まれる頭部断面52が適切な断面となっていないことが考えられる。第3に、本当に胎児のサイズが標準範囲から外れていることが考えらえる。胎児のサイズが正常でない場合には再度超音波画像を取り直すなどして再計測を行うのが一般的である。つまり、上記いずれの場合であっても、第1移動マーカ54の現在の位置を距離計測の始点としても良好な計測結果は得られないことになる。したがって、終点候補位置が下限値円56と上限値円58との間に位置していない場合、第1移動マーカ54の現在の位置は距離計測の始点として適切な位置ではないということが把握できる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、距離計測の始点が指定される前に、始点候補位置が距離計測の始点として適切な位置であるか否かを把握することができる。始点候補位置が距離計測の始点として適切でない場合、より早期にそのことをユーザは把握することができ、始点候補位置の見直しや超音波画像の再選択あるいは撮り直しなどの対応を早期に行うことができる。これにより、ユーザの手戻り作業量を低減させ、距離計測に係る手間を低減させている。
【0049】
下限値円56および上限値円58は、指定した始点候補位置が適切な位置であるか否かの判断の他、始点候補位置をどの位置にすべきか決定する場合の目安として利用することができる。
図5は、下限値円56および上限値円58の他の利用例を示す図である。例えば、
図5(a)および(b)に示す通り、左側側頭部中央の輪郭がアーチファクトなどの影響により不明りょうとなっており、輪郭が二重に見えてしまっているような場合がある。この場合、2つの輪郭線上に第1移動マーカ52を合わせることでいずれの輪郭が正しい輪郭位置であるかを推認することができる。すなわち、
図5(a)のように、二重の輪郭線のうち第1の輪郭線に第1移動マーカ54を合わせたときには、右側側頭部中央が下限値円56と上限値円58との間に位置しないが、
図5(b)のように第2の輪郭線に第1移動マーカ54を合わせたときには、右側側頭部中央が下限値円56と上限値円58との間に位置する場合、第2の輪郭線が左側側頭部中央の正しい輪郭線であるということを推認することができる。
【0050】
本実施形態では、児頭大横径の標準範囲を示す二次元図形として下限値円56および上限値円58を表示している。これは、始点の指定前においては、制御部20が第1移動マーカ54からどの方向に対して距離計測が行われるかを把握することができないため、第1移動マーカ54から全方位に対して児頭大横径の標準範囲を示すのが好ましいためである。但し、第1移動マーカ54の位置などに応じて下限値円56および上限値円58の表示部分を限定するようにしてもよい。
【0051】
図6は、下限値円56および上限値円58の他の表示形態の例を示す図である。例えば、第1移動マーカ54がBモード画像50の表示領域の半分よりも下側に位置している場合、距離計測の方向は第1移動マーカ54よりも上側に向かう方向である可能性が高い。したがって、この場合は、第1移動マーカ54よりも上側の領域において児頭大横径の標準範囲を示せば十分であると考えらえる。そこで、
図6(a)に示すように、第1移動マーカがBモード画像50の表示領域の半分よりも下側にある場合は、下限値円56および上限値円58の上半分のみを表示するようにしてもよい。同様に、
図6(b)に示すように、第1移動マーカがBモード画像50の表示領域の半分よりも上側にある場合は、下限値円56および上限値円58の下半分のみを表示するようにしてもよい。また、第1移動マーカがBモード画像50の表示領域の半分よりも左側にある場合は、下限値円56および上限値円58の右半分のみ、第1移動マーカがBモード画像50の表示領域の半分よりも右側にある場合は、下限値円56および上限値円58の左半分のみを表示するようにしてもよい。あるいは、下限値円56および上限値円58の表示部分は、ユーザにより指定されるようにしてもよい。
【0052】
図7は、始点が指定された後の表示例を示す図である。ユーザにより決定ボタンが押されるなどして始点が指定されると、指定始点位置に第1移動マーカがフィックスされる。本実施形態では、移動中の(すなわち始点指定前の)第1移動マーカとフィックス後の第1移動マーカ(以後「始点マーカ」と記載)を区別するために、両者の形状を異なる形状としている。始点が指定されると、下限値円56および上限値円58の表示位置が始点マーカ60を中心とした位置に固定される。
【0053】
始点指定後ユーザによりトラックボールが操作されると、距離計測の終点を指定するための第2移動マーカ62が表示される。本実施形態では、第2移動マーカ62の形状を第1移動マーカ54と同一としているが、これを異なる形状としてもよい。第2移動マーカ62が表示された後、すなわち終点を指定する段階においても下限値円56および上限値円58は引き続き表示される。これにより、ユーザは、終点の位置決めの目安として下限値円56および上限値円58を利用することができる。
【0054】
第2移動マーカ62が移動すると、始点マーカ60と第2移動マーカ62の位置関係により、制御部20は、距離計測の方向を把握することができる。すなわち、制御部20は、始点マーカ60から第2移動マーカ62へ伸びる方向を距離計測の方向であると把握する。下限値円56および上限値円58は距離計測の方向にのみ表示されれば足りるため、表示処理部30は、距離計測方向に従って下限値円56および上限値円58の表示範囲を限定する。
【0055】
具体的には、
図7に示すように、表示処理部30は、始点マーカ60と第2移動マーカ62の位置関係から推測された距離計測方向(図中破線矢印)を中心とした一定角度θ1の範囲において下限値円56および上限値円58の表示を限定する。これにより、終点の位置決めの目安として利用する部分は残しつつ、他の不要な部分の表示を消去することができ、表示の煩雑さを解消することができる。
【0056】
図8は、さらに第2移動マーカが移動した場合の表示例を示す図である。表示処理部30は、始点マーカ60と第2移動マーカ62との間の距離に応じて下限値円56および上限値円58の表示角度範囲を変更する。具体的には、始点マーカ60と第2移動マーカ62の距離が大きくなる程表示角度を小さくする。
図8の表示例においては、
図7に比べて始点マーカ60と第2移動マーカ62との間の距離が大きい。したがって、
図8における表示角度θ2はθ1よりも小さくなっている。
【0057】
なお、下限値円56および上限値円58が終点の位置決めの目安となる機能を果たすように、下限値円56および上限値円58の表示角度範囲には下限値が設けられており、始点マーカ60と第2移動マーカ62の間の距離がいかに大きくなっても、下限値円56および上限値円58の表示角度範囲は当該下限値以下にならないようになっている。
【0058】
図9は、第2移動マーカ62の移動方法の変形例を示す図である。上述のように、第2移動マーカ62が移動すると、始点マーカ60と第2移動マーカ62との位置関係によって、制御部20は、距離計測の方向が把握できる。さらに、把握された距離計測方向であって、下限値円56と上限値円58との中間位置が距離計測の終点の有力候補位置であることが把握できる。したがって、表示処理部30は、制御部20からの指示に基づき、第2移動マーカ62が始点マーカ60からの移動を開始したら、第2移動マーカの移動方向であって下限値円56と上限値円58との間の範囲に第2移動マーカ62をジャンプさせる。好適には、下限値円56と上限値円58との中間地点あるいはその近傍に第2移動マーカ62をジャンプさせる。第2移動マーカ62をジャンプさせるタイミングは、始点マーカ60と第2移動マーカ62との距離に従って決定されてよい。例えば、第2移動マーカ62が始点マーカ60から一方向に所定距離移動したときにジャンプするようにする。あるいは、第2移動マーカ62が始点マーカ60から一方向に所定時間移動したときにジャンプさせるようにしてもよい。第2移動マーカ62をジャンプさせることで、距離計測の終点の指定にかかるユーザの手間をより軽減させることができる。
【0059】
図10は、終点が指定された後に始点が修正される場合の表示例を示す図である。超音波診断装置10は、指定した始点あるいは終点を修正する機能を有している。以下、終点が指定された後に始点が修正される場合の表示例について説明する。なお、指定された始点位置を終点指定前に修正する場合は、
図3に示す表示に戻りユーザは再度第1移動マーカ54により始点を指定する。また、指定された終点位置を修正する場合は、
図7に示す表示に戻りユーザは再度第2移動マーカ62により終点を指定する。
【0060】
図10(a)に示される通り、終点が指定されると、指定終点位置に終点マーカ64が表示される。その後、ユーザが始点マーカ60の位置が頭部断面52の輪郭位置からずれていることに気付き、入力部34に含まれる修正ボタンを押し始点位置の修正を指示すると、
図10(b)に示すように、表示処理部30は、始点マーカ60を削除し、始点マーカ60が表示されていた位置あるいはその近傍に再度第1移動マーカ54を表示させる。さらに、表示処理部30は、再度下限値円56および上限値円58を表示させる。この場合、表示される下限値円56および上限値円58は終点マーカ64を中心とした位置に表示される。これにより、ユーザは、下限値円56および上限値円58を目安として始点位置の修正を行うことができる。なお、
図7あるいは
図8に示した例同様、終点マーカ64と第1移動マーカ54との間の距離に応じて下限値円56および上限値円58の表示角度範囲が変化する。
【0061】
図11は、超音波診断装置10の動作の流れの他の例を示すフローチャートである。
図1を参照しながら
図11の各ステップについて説明する。
【0062】
ユーザにより距離計測に用いる超音波画像が指定され、超音波診断装置10において距離計測が開始されると、ステップS10において、標準範囲特定部22は、ユーザによって入力される妊婦の妊娠週数に基づいて、胎児の児頭大横径の標準範囲の下限値および上限値を特定する。
【0063】
ステップS12において、表示処理部30は、表示部32上に距離計測の始点を指定するための第1移動マーカを表示部32に表示させる。さらに、第1移動マーカを中心とし、ステップS10で特定した下限値および上限値に基づく値を半径とする2つの円状図形を表示させる。これら形成された図形は超音波画像に重畳されて表示される。
【0064】
ステップS14において、制御部20は、ユーザにより始点が指定されたか否かを判断する。始点が指定されるまでは、表示処理部30は第1移動マーカおよび2つの円状図形の表示を継続する。
【0065】
始点が指定されると、ステップS16において、表示処理部30は、始点指定位置に始点マーカを表示させ、さらに、始点マーカを中心とする位置に2つの円状図形の表示位置を固定させる。
【0066】
ステップS18において、制御部20は、ユーザによりトラックボールが操作させられたか否かを判断する。すなわち、終点位置を指定するための第2移動マーカの移動操作がされたか否かを判断する。
【0067】
ユーザによりトラックボールが操作されると、ステップS20において、表示処理部30は第2移動マーカを表示させる。さらに、始点マーカから第2移動マーカへと伸びる方向を中心とした一定の角度範囲において2つの円状図形の表示範囲を限定する。
【0068】
ステップS22において、制御部20は、ユーザにより終点が指定されたか否かを判断する。終点が指定されるまでは、表示処理部30は第2移動マーカおよび始点マーカを中心とする2つの円状図形の表示をその表示範囲を変更させつつ継続する。終点位置が指定されると、表示処理部30は、第2移動マーカを消去し指定された終点位置に終点マーカを表示させる。
【0069】
ステップS24において、制御部20は指定された計測点の修正指示をユーザから受けたか否かを判断する。本フローチャートでは特に始点の修正指示を受けた場合について説明する。ユーザにより修正指示を受けなかった場合は、計測部26は、指定された始点と終点との間の距離計測を行う。
【0070】
ユーザにより始点の修正指示を受けた場合は、ステップS26において、表示処理部30は、始点マーカを消去して第1移動マーカを再度表示させる。さらに、終点マーカを中心とし、終点マーカからの距離が児頭大横径の標準範囲の下限値および上限値となる2つの円状図形を表示させる。
【0071】
ステップS28において、制御部20は、再度ユーザにより始点が指定されたか否かを判断する。始点が指定されるまでは、表示処理部30は、第1移動マーカおよび終点マーカを中心とした2つの円状図形の表示を継続する。ステップS28において始点が再度指定されると、計測部26は、指定した始点と終点との間の距離計測を行う。
【0072】
本実施形態では、児頭大横径の計測を例に説明したが、本発明は児頭大横径の計測に限られず、超音波画像上において指定される2点間の距離の計測について適用することができる。この場合は、記憶部28に記憶される標準範囲の下限値および上限値を示すテーブルあるいは関数は、計測対象に応じたものが用意される。
【0073】
また、本実施形態では、超音波画像処理装置として超音波診断装置10を例に説明したが、超音波画像処理装置として、例えばPCなどを用いることができる。この場合は、超音波診断装置で形成された超音波画像がPCに送信され、PCにおいて標準範囲の特定、グラフィックイメージの重畳、および距離計測などが実行される。