(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918349
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】光学に基づくセンサ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/12 20060101AFI20160428BHJP
B66B 3/02 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
B66B5/12 A
B66B3/02 P
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-502527(P2014-502527)
(86)(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公表番号】特表2014-509581(P2014-509581A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2011030754
(87)【国際公開番号】WO2012134482
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】カン,クンモ
(72)【発明者】
【氏名】デヴァルヴ,ティモシー,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロネージ,ウィリアム,エー.
(72)【発明者】
【氏名】カルプ,スレイド,アール.
(72)【発明者】
【氏名】テリー,ハロルド
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン,ダリル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アギルマン,イスマイル
【審査官】
筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−127851(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/115903(WO,A1)
【文献】
特表2005−512921(JP,A)
【文献】
特開2000−118903(JP,A)
【文献】
特開平07−010412(JP,A)
【文献】
特開平03−008681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 − 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステム(10)のモータ(20)用のフィードバックシステム(24)であって、
エレベータシステム(10)のトラクションシーブ(18)に近接して配置されており、トラクションシーブ(18)の表面の不規則性に基づいてトラクションシーブ(18)の位置の変化を検出するように構成された第1のセンサ(26)と、
エレベータシステム(10)の張力部材(16)に近接して配置されており、張力部材(16)の位置の変化を検出するように構成された第2のセンサ(26)と、
第1のセンサ(26)からトラクションシーブ(18)の位置の変化に相当する第1のデータ信号および第2のセンサ(26)から張力部材(16)の位置の変化に相当する第2のデータ信号を受け取るように構成されるとともに、第1および第2のデータ信号の間の差異に基づいて張力部材(16)とトラクションシーブ(18)の間のトラクションの状態を決定し、第1のデータ信号に基づいてモータ(20)を制御するフィードバック信号を生成するように構成された処理回路(28)と、
を備えることを特徴とするフィードバックシステム(24)。
【請求項2】
処理回路(28)は、第1のデータ信号に基づいてモータ(20)に対するロータ(32)の角変位および角速度のうちの少なくとも一方を決定するように構成されることを特徴とする請求項1記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項3】
第1のセンサ(26)は、センサ信号を送信する送信機と、センサ信号の反射を受信する受信機とを備えており、送信されたセンサ信号は、所定の周波数を有することを特徴とする請求項1記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項4】
処理回路(28)は、第1のセンサ(26)によって送信されたセンサ信号と受信された反射されたセンサ信号の間の周波数のシフトを検出するように構成されるとともに、周波数のシフトに基づいてモータ(20)に対するロータ(32)の角変位および角速度のうちの一方または両方を決定するように構成されることを特徴とする請求項3記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項5】
第1のセンサ(26)は、レーザ源、発光ダイオード(LED)源、赤外光源、超音波源、およびマイクロ波源のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項1記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項6】
駆動構成要素(16、18、32)は、張力部材(16)、トラクションシーブ(18)、およびエレベータシステム(10)のモータ(20)に回転可能に結合されたロータ(32)のうちの少なくとも1つまたは複数を備えることを特徴とする請求項1記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項7】
エレベータシステム(10)のモータ(20)を制御するフィードバックシステム(24)であって、
モータ(20)に回転可能に結合され、トラクションシーブ(18)に固定して結合されたロータ(32)に近接して配置されており、ロータ(32)の表面の不規則性に基づいてロータ(32)の位置の変化に相当する第1のデータ信号を出力するように構成された第1のセンサ(26)と、
エレベータシステム(10)の張力部材(16)に近接して配置されており、張力部材(16)の位置の変化に相当する第2のデータ信号を出力するように構成された第2のセンサ(26)と、
第1および第2のセンサ(26)から第1および第2のデータ信号を受け取り、第1および第2のデータ信号の間の差異に基づいて張力部材(16)とトラクションシーブ(18)の間のトラクションの状態を決定し、第1および第2のデータ信号に基づいてモータ(20)に対するロータ(32)の少なくとも角変位を決定し、ロータ(32)の角変位に基づいてフィードバック信号を生成するように構成された処理回路(28)と、
フィードバック信号を受け取り、フィードバック信号に基づいてモータ(20)を駆動する駆動信号を生成するように構成された制御装置(22)と、
を備えることを特徴とするフィードバックシステム(24)。
【請求項8】
処理回路(28)は、ロータ(32)の速度に基づいてエレベータかご(12)の位置および速度のうちの一方または両方をさらに決定するように構成されることを特徴とする請求項7記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項9】
第1および第2のセンサ(26)のそれぞれは、所定の周波数のセンサ信号を送信する送信機と、センサ信号の反射を受信する受信機とを備え、センサ信号は、ロータ(32)および張力部材(16)で反射されることを特徴とする請求項7記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項10】
処理回路(28)は、第1および第2のセンサ(26)のそれぞれについて反射されたセンサ信号の周波数のシフトを検出するように構成されるとともに、周波数のシフトに基づいてロータ(32)の角速度を決定するように構成されることを特徴とする請求項9記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項11】
第1および第2のセンサ(26)のそれぞれは、レーザ源、発光ダイオード(LED)源、赤外光源、超音波源、およびマイクロ波源のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項7記載のフィードバックシステム(24)。
【請求項12】
エレベータかご(12)を有するエレベータシステム(10)のモータ(20)を制御する方法であって、
エレベータシステム(10)の第1の駆動構成要素(16、18、32)にすぐに近接して、第1の駆動構成要素(16、18、32)の表面の不規則性に基づいて決定された第1の駆動構成要素(16、18、32)の位置の変化に応じた第1のデータ信号を生成するように構成された第1のセンサ(26)を設け、
エレベータシステム(10)の第2の駆動構成要素(16、18、32)にすぐに近接して、第2の駆動構成要素(16、18、32)の位置の変化に応じた第2のデータ信号を生成するように構成された第2のセンサ(26)を設け、
トラクションシーブ(18)の位置の変化に相当する第1のデータ信号および張力部材(16)の位置の変化に相当する第2のデータ信号の間の差異に基づいて第1および第2の駆動構成要素(16、18、32)の間のトラクションの状態を決定し、
第1の駆動構成要素(16、18、32)の位置の変化に基づいて少なくともエレベータかご(12)の位置の変化を決定し、
第1の駆動構成要素(16、18、32)およびエレベータかご(12)の位置の変化に少なくとも部分的に基づいたフィードバック信号であって、エレベータシステム(10)のモータ(20)を駆動するフィードバック信号を生成する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
第1のデータ信号は、送信されたセンサ信号と反射されたセンサ信号の間の周波数シフトに相当し、反射されたセンサ信号は、第1の駆動構成要素(16、18、32)の表面で反射されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
第1のセンサ(26)は、レーザ源、発光ダイオード(LED)源、赤外光源、超音波源、およびマイクロ波源のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、モータ制御に関し、より詳細には、エレベータシステムのモータを制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータかごがエレベータ昇降路に沿って移動する際のエレベータかごの位置または速度を追跡するために、エレベータ用のフィードバックシステムが使用される。より詳細には、エレベータでは、昇降路を通してエレベータかごを駆動している可能性があるトラクションモータの回転変位および/または速度を監視するように構成されたエンコーダが使用される。エンコーダによって提供されるデータは、次いで、トラクションモータ、トラクションシーブ、張力部材、昇降路の間の既知の機械的関係を用いて、昇降路に関するエレベータかごの位置および/または速度を決定するために使用されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エンコーダは、エレベータ制御を監視するための適切な解決策だと判明するかもしれないが、エンコーダやその具体化の費用のため、エンコーダなしでエレベータ制御の効率的なフィードバックを提供する同等の解決策を開発するいっそうの努力が払われるようになった。しかしながら、エンコーダなしの既存の具体化は、設計が過度に複雑で、実際的でない可能性がある。エンコーダなしの既存の適用はまた、騒音、信頼性、非効率性(特にエレベータかごの低速において)の問題があり得る。
【0004】
従って、適切な信頼性および性能でエレベータを制御する手段であって、エンコーダなしで費用対効果の大きい手段を提供する、システムおよび方法が必要とされている。さらに、エレベータの作動速度の全範囲に亘って一貫したエレベータ制御用フィードバックを提供することができる、比較的静かなシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、エレベータシステムのモータ用のフィードバックシステムが提供される。フィードバックシステムは、第1のセンサと、処理回路とを備えることができる。第1のセンサは、エレベータシステムの駆動構成要素に近接して配置されることができ、駆動構成要素の位置の変化を検出するように構成されることができる。処理回路は、第1のセンサから駆動構成要素の位置の変化に相当する第1のデータ信号を受け取り、第1のデータ信号に基づいてモータを制御するフィードバック信号を生成するように構成されることができる。
【0006】
追加としてまたは代替として、処理回路は、第1のデータ信号に基づいてモータに対するロータの角変位および角速度のうちの少なくとも一方を決定するように構成されることができる。
【0007】
別の改善では、第1のセンサは、センサ信号を送信する送信機と、センサ信号の反射を受信する受信機とを備えることができる。送信されたセンサ信号は、所定の周波数を有することができる。
【0008】
関連する改善では、処理回路は、第1のセンサによって送信されたセンサ信号と受信された反射されたセンサ信号の間の周波数のシフトを検出し、周波数のシフトに基づいてモータに対するロータの角変位および角速度のうちの一方または両方を決定するように構成されることができる。
【0009】
別の改善では、第1のセンサは、駆動構成要素の表面の不規則性に基づいて駆動構成要素の位置の変化を検出するように構成されることができる。
【0010】
別の改善では、第1のセンサは、レーザ源、発光ダイオードLED源、赤外光源、超音波源、およびマイクロ波源のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0011】
別の改善では、駆動構成要素は、張力部材、トラクションシーブ、およびエレベータシステムのモータに回転可能に結合されたロータのうちの少なくとも1つまたは複数を備えることができる。
【0012】
なお別の改善では、処理回路は、第2のセンサから第2のデータ信号を受け取り、第1および第2のデータ信号に基づいてフィードバック信号を生成するように構成されることができる。
【0013】
関連する改善では、第1のデータ信号は、トラクションシーブの位置の変化に相当することができ、第2のデータ信号は、張力部材の位置の変化に相当することができる。処理回路はさらに、第1および第2のデータ信号の間の差異に基づいて張力部材とトラクションシーブの間のトラクションの状態を決定するように構成されることができる。
【0014】
開示の別の態様によれば、エレベータシステムのモータを制御するフィードバックシステムが提供される。フィードバックシステムは、第1のセンサと、第2のセンサと、処理回路と、制御装置とを備えることができる。第1のセンサは、モータに回転可能に結合されたロータに近接して配置されることができ、ロータの位置の変化に相当する第1のデータ信号を出力するように構成されることができる。第2のセンサは、エレベータシステムの張力部材に近接して配置されることができ、張力部材の位置の変化に相当する第2のデータ信号を出力するように構成されることができる。処理回路は、第1および第2のセンサから第1および第2のデータ信号を受け取り、第1および第2のデータ信号に基づいてモータに対するロータの少なくとも角変位を決定し、ロータの角変位に基づいてフィードバック信号を生成するように構成されることができる。制御装置は、フィードバック信号を受け取り、フィードバック信号に基づいてモータを駆動する駆動信号を生成するように構成されることができる。
【0015】
追加としてまたは代替として、処理回路は、ロータの速度に基づいてエレベータかごの位置および速度のうちの一方または両方をさらに決定するように構成されることができる。
【0016】
別の改善では、第1および第2のセンサのそれぞれは、所定の周波数のセンサ信号を送信する送信機と、センサ信号の反射を受信する受信機とを備えることができる。センサ信号は、ロータおよび張力部材で反射されることができる。
【0017】
関連する改善では、処理回路は、第1および第2のセンサのそれぞれについて反射されたセンサ信号の周波数のシフトを検出するように構成されることができる。処理回路は、周波数のシフトに基づいてロータの角速度を決定するように構成されることができる。
【0018】
別の改善では、第1および第2のセンサのそれぞれは、レーザ源、発光ダイオードLED源、赤外光源、超音波源、およびマイクロ波源のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0019】
別の改善では、ロータは、トラクションシーブに固定して結合されることができ、処理回路は、第1および第2のデータ信号の間の差異に基づいて張力部材とトラクションシーブの間のトラクションの状態を決定するように構成されることができる。
【0020】
なお別の改善では、ロータの表面には、1つまたは複数のしるしが設けられることができ、第1のセンサは、しるしの少なくとも一部を視覚的に捕捉するように構成されたカメラを備えることができる。処理回路は、カメラによって捕捉されたしるしのパターンに基づいてロータの現在の角変位を決定するように構成されることができる。
【0021】
本開示のなお別の態様によれば、エレベータかごを有するエレベータシステムのモータを制御する方法が提供される。方法は、エレベータシステムの第1の駆動構成要素にすぐに近接して第1のセンサを設けることができ、第1のセンサは、第1の駆動構成要素の位置の変化に応じた第1のデータ信号を生成するように構成されることができる。方法はまた、第1の駆動構成要素の位置の変化に基づいて少なくともエレベータかごの位置の変化を決定し、エレベータシステムのモータを駆動するフィードバック信号を生成することができる。フィードバック信号は、第1の駆動構成要素およびエレベータかごの位置の変化に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0022】
追加としてまたは代替として、第1のデータ信号は、送信されたセンサ信号と反射されたセンサ信号の間の周波数シフトに相当することができる。反射されたセンサ信号は、第1の駆動構成要素の表面で反射されることができる。
【0023】
別の改善では、第1のセンサは、レーザ源、発光ダイオードLED源、赤外光源、超音波源、およびマイクロ波源のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0024】
なお別の改善では、方法は、エレベータシステムの第2の駆動構成要素にすぐに近接して第2のセンサをさらに設けることができる。第2のセンサは、第2の駆動構成要素の位置の変化に応じた第2のデータ信号を生成し、第1および第2のデータ信号の間の差異に基づいて第1および第2の駆動構成要素の間のトラクションの状態を決定することができる。
【0025】
本開示のこれらと他の態様は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むとより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本開示の教示に従って構成されたフィードバックシステムの例示的な一実施例の概略図。
【
図4】センサ装置のなお別の例示的な構成によって生成された波形のグラフ。
【
図5】エレベータシステムを制御する方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、さまざまな修正例および代替の構成を実施することができるとはいえ、その特定の例示的な実施例が図面に示されており、以下に詳細に説明される。しかしながら、開示された特定の形態に限定される意図はなく、それどころか、本開示の趣旨および範囲に含まれる全ての修正例、代替の構成、および均等物を含むことを意図していることを理解されたい。
【0028】
ここで
図1を参照すると、例示的なエレベータシステム10の概略図が提供される。
図1に示されるエレベータシステム10の説明は、例示的な目的のために過ぎず、一般的なエレベータシステムのさまざまな構成要素の一部についての背景を提供するためのものであることを理解されたい。本発明の理解に必要とされないエレベータシステムの他の構成要素(例えば、安全装置、ガイドレール、その他)については説明しない。
【0029】
図1に示すように、エレベータスシステム10は、1つまたは複数の張力部材16によってつり合いおもり14に接続されたかご12を備えることができる。張力部材16は、トラクション機械またはモータ20によって駆動されるトラクションシーブ18の周りに延在することができる。シーブ18と張力部材16の間のトラクションによって、かご12およびつり合いおもり14は、昇降路を通して駆動されることができる。モータ20の作動は、主制御装置22によって制御されることができる。エレベータシステム10はさらに、張力部材16、トラクションシーブ18および/またはモータ20に近接した位置に配置されており、エレベータかご12の位置および/または速度のフィードバックを制御装置22に電気的に提供するように構成されたフィードバックシステム24を備えることができる。
【0030】
図2を参照すると、センサ装置26と、関連する処理回路28とを有するフィードバックシステム24の例示的な実施例が提供される。関連するエレベータシステム10は、制御装置22がトラクション機械またはモータ20と電気的に連通し、トラクション機械またはモータ20がさらに1つまたは複数の駆動構成要素18、32と機械的に連通するように、構成されることができる。より詳細には、制御装置22によって提供される駆動信号によって、モータ20は、トルクを生成し、モータ20に回転可能に結合された駆動軸30を回転させることができる。次いで、駆動軸30は、エレベータかご12を昇降路内の適切な位置に昇降させるように、張力部材16、トラクションシーブ18、ロータ32、および同様のものなどを所定の速度で回転させる。フィードバックシステム24のセンサ装置26は、トラクションシーブ18および/またはロータ32の表面の変位を検出するようにトラクションシーブ18およびロータのうちの一方または両方に近接して配置されることができる。センサ装置26は次いで、さらなる解析のために、検出された変位に相当するデータ信号を処理回路28に通信することができる。
【0031】
データ信号に含まれる情報に基づいて、信号処理回路28は、エレベータシステム10の制御装置22に通信されるフィードバック信号を生成するように構成されることができる。例えば、センサ装置26によって提供されたデータ信号と、モータ20と駆動構成要素18、32の間の所定の特性または機械的関係とに基づいて、処理回路28は、モータ20に対するロータ32の角変位および/または速度を計算または決定することができ得る。ロータ32の角変位または速度から、処理回路28はさらに、昇降路内のエレベータかご12の実際の位置または速度を決定することができ得る。制御装置22はさらに、モータ20の実際の出力と、エレベータかご12の観察された位置および/または速度とのずれを監視するために、フィードバック信号に含まれる情報を使用することができる。例えば、フィードバック信号が、エレベータかご12の観察された変位と、予想される変位の間のずれを示す場合、制御装置12は、ずれを補償するようにモータ20への駆動信号を調節するように構成されることができる。さらに、検出されたずれが大きい場合、制御装置22は、可能性のある故障状態を示す警報を生成することができる。処理回路28はさらに、信号処理を妨げ得る電気的ノイズの影響を最小限に抑えるように、フィルタ、例えばカルマンフィルタを提供することができる。
【0032】
さらなる修正例では、
図2のフィードバックシステム24はさらに、駆動構成要素16、18、32のうちの2つまたは3つ以上の間のトラクションの状態を監視するように構成されることができる。
図3に示すように、例えば、1つのセンサ装置26がトラクションシーブ18またはロータ32の表面にすぐに近接して配置されるとともに、別のセンサ装置26が張力部材16の表面にすぐに近接して配置されるように、2つのセンサ装置26が構成されることができる。さらに、センサ装置26は、差異を求めて、張力部材16およびトラクションシーブ18またはロータ32の両方の移動を同時に監視するように構成されることができる。典型的な張力部材16は、ロープ、ベルト、ケーブル、および同様のものなどの任意の組み合わせを備えることができ、これら全ては、時間が経つにつれ伸張または摩耗してしまい、トラクション部材16とトラクションシーブ18の間での、トラクションの低下、または滑りを生じさせ得る。トラクションシーブ18またはロータ32と張力部材16の移動を比較することで、張力部材16とトラクションシーブ18の間のトラクションの大幅な喪失を初期に検出することが可能となり得る。
【0033】
図2および
図3のセンサ装置26のそれぞれは、エレベータシステム10の作動中に駆動構成要素16、18、32の表面のパターン、グラデーション、または不規則性の動きを検出するように構成されることができる。センサ装置26は一般に、駆動構成要素16の表面にセンサ信号を送信する送信機と、反射し戻されるセンサ信号の成分を受信する受信機とを備えることができる。さらに、センサ装置26は、周波数シフトまたは画像認識技術に基づいて、駆動構成要素16、18、32の表面における動きを検出することができる。
【0034】
周波数シフト技術を用いて、センサ装置26は、送信される基準センサ信号と、特定の表面の物理的不規則性で反射される検出されたセンサ信号の間で生じる周波数のさまざまなシフトを追跡することで、特定の表面の物理的不規則性を区別することができ得る。不規則性を追跡することで、センサ装置26は、関連する駆動構成要素16、18、32の変位または速度を決定することができ得る。従って、センサ装置26は、発光ダイオード(LED)などの光源からの可視光、レーザ光、赤外光、および同様のものなどの形態でセンサ信号を送信しかつ受信するように構成された光学に基づく装置とすることができる。センサ装置26はまた、マイクロ波、超音波、または周波数シフトが可能な任意の他の適切な波形の形態を取ることができるセンサ信号を使用することができる。センサ装置26の受信機は、フォトダイオード、フォトレジスター、または光に応じて変化する出力を生成する任意の他の適切な検出装置を使用することができる。
【0035】
画像認識技術を用いて、センサ装置26は、駆動構成要素の表面の特定のしるしまたは視覚的に識別可能なグラデーションに基づいて駆動構成要素16、18、32の変位または速度を決定することができる。このような実施例では、センサ装置26は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)カメラなどの画像またはスペックルパターン運動検出装置、または駆動構成要素16、18、32の表面の特徴を追跡することができる任意の他の装置を使用することができる。例えば、
図3のトラクションシーブ18の外周の表面は、正弦、余弦、および基準ゼロ波形で目に見えるようにしるしを付けられることができる。さらに各波形は、波形の1つの完全な周期がトラクションシーブ18の1つの完全な回転に相当するように、トラクションシーブ18の周りに提供されることができる。トラクションシーブ18の一区画に固定してねらいを定めたカメラを使用して、センサ装置26は、例えば
図4に示すように、トラクションシーブ18が回転する間に波形の画像を捕捉することができ得る。
【0036】
波形を追跡することで、センサ装置26は、トラクションシーブ18またはロータ32の回転位置を、従って変位および速度を決定し、追跡することができ得る。例えば、正弦値が0.6と決定され、余弦値が−0.8と決定された場合、トラクションシーブ18の対応する回転位置は、逆正接またはatan(0.6/−0.8)を使用して導出されることができる。これから、この場合におけるトラクションシーブ18の結果として得られる回転位置は、原点から約2.5ラジアンまたは143°であることが決定されることができる。同様に、代替の実施例では、1つだけの正弦または余弦波形に相当するしるしがトラクションシーブ18の外面に提供されることができ、この場合、トラクションシーブ18の回転位置は、それぞれ、逆正弦または逆余弦関係を用いて決定されることができる。さらなる代替例では、2つの引数の逆正接関数などの逆正接関数の他の変形例が、トラクションシーブ18またはロータ32の回転位置を導出するために使用されることができる。なおさらなる代替例では、逆余接、逆正弦、逆余弦、および同様のものなどといった他の三角関数が使用されることができる。
【0037】
ここで
図5を参照すると、実施例の方法またはアルゴリズム40が概略示されており、この方法またはアルゴリズム40によって、例えば、処理回路28は、モータ制御をエレベータシステム10に提供することができる。センサ装置26を使用して、アルゴリズム40は最初に、ステップ41において、変位を求めて、トラクションシーブ18などの駆動構成要素の表面を監視することを含むことができる。センサの読みに基づいて、処理回路28は、ステップ42において、トラクションシーブ18の回転変位および/または速度を決定することができ得る。ステップ43の間に、処理回路28は一般に、トラクションシーブ18の変位および/または速度を解析し、フィードバックとして情報を制御装置22に通信するように構成されることができる。例えば、1つの特定の実施では、処理回路28は、トラクションシーブ18の検出された変位に基づいて、モータ20に対するロータ32の角変位および/または速度を決定または計算することができる。トラクションシーブ18またはロータ32の角変位および/または速度と、エレベータシステム10の既知の機械的関係とを用いて、処理回路28はさらに、昇降路内のエレベータかご12の位置および/または速度を導出するように構成されることができる。制御装置22は、エレベータかご12の適切かつ一貫した制御を確認するようにセンサ装置26によって提供されるフィードバックを参照することができる。フィードバックが不一致を示す場合、制御装置22は、不一致を補償するようにモータ20の制御を調節することができる。フィードバックが故障状態を示す場合、制御装置22は、作動の停止、および/または故障状態を示すとの警報の提供を、安全に行うことができる。
【0038】
図5の方法をさらに参照すると、方法またはアルゴリズム40はさらに、ステップ44において、第2のセンサ装置26を使用して、変位を求めて張力部材16などの第2の駆動構成要素の表面を監視することができる。ステップ42におけるように、処理回路28は、ステップ45において、張力部材16の変位および/または速度を決定するように第2のセンサ装置26によって提供される読みを使用することができる。張力部材16に対応する情報は次いで、任意選択的に、さらなる処理のためにトラクションシーブ18および/またはロータ32に対応する情報と組み合わされることができる。例えば、処理回路28は、ステップ43において、ロータ32またはエレベータかご12の対応する位置および/または速度を計算して、フィードバックとして情報を制御装置22に送るように、両方のセンサ装置26によって提供されたデータを使用することができる。任意選択のステップ46において、処理回路28はさらに、2つのセンサ装置26の間の観察された差異に基づいて、例えば、1つまたは複数の張力部材16とトラクションシーブ18の間のトラクションの状態を決定することができる。なおさらなる代替例では、エレベータシステム10の各駆動構成要素16、18、32には、フィードバックが3つまたは4つ以上のセンサの読みに応じて生成されるように、センサ装置26を設けることができる。
【0039】
上述に基づいて、本開示は、最小の複雑さでかつより費用対効果の大きい具体化で、エレベータシステムを制御するシステムおよび方法を提供することができることが理解され得る。さらに、開示されたセンサに基づくフィードバック制御システムは、エレベータ駆動システムにおいてより費用のかかるエンコーダに有効に取って代わるように使用されることができる。本開示はまた、エレベータシステムの駆動構成要素間のトラクションの状態を監視するように使用されることができる。
【0040】
特定の実施例のみを説明してきたが、上述の説明から当業者には代替例および修正例が明らかであろう。これらと他の代替例は、均等物と見なされ、本開示の趣旨および範囲に含まれる。