(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、患者が必要とする成分だけを輸血する成分輸血が広汎に行われている。この成分輸血を行う場合、ドナーから採取した血液(全血)を複数の血液成分に分けて収容、保存するための血液バッグシステムが用いられる。
【0003】
この種の血液バッグシステムでは、ドナーに対して採血針を刺した直後に流出する所定量の血液(初流血)を初流血バッグに収容し、前記初流血バッグの初流血を採血器具にて採血ホルダーに移送して輸血のための検査用血液として利用する。
【0004】
採血器具は、例えば、前記採血管が挿入可能な筒状の採血ホルダーと、前記採血管のゴム栓(栓部材)を貫通可能な中空針と、前記中空針の基端側を支持して前記採血ホルダーが装着されるハブと、前記中空針の先端側を被覆した状態で前記ハブに外嵌されたゴム製の針カバーとを備えている。
【0005】
この種の採血器具では、採血ホルダー内に採血管を挿入すると、該採血管のゴム栓によって針カバーが長手方向に押し縮められ、中空針が該針カバーから露出して該ゴム栓を貫通する。このとき、針カバーは、中空針の径方向外側に向けて拡径するように蛇腹状(波状)に弾性変形するため、針カバーのハブに対する外嵌部位が膨らみ前記針カバーと前記ハブとの嵌合力が低下してしまう。
【0006】
また、針カバーの先端部は、ゴム栓に形成された貫通孔に食い込むことがあり、このような状態で採血管を中空針から引き抜くと、該針カバーが前記ゴム栓に引張られて前記ハブから抜けてしまい、その結果、初流血が採血器具から漏出することがある。
【0007】
このような問題を解決した採血器具として、採血管のゴム栓に中空針を貫通させた際に針カバーの蛇腹状の弾性変形が前記外嵌部位にまで達することを防止するためのプレートを採血ホルダーに固定することにより、採血器具からの初流血(血液)の漏出を防止したものが知られている(例えば、特開2012−16496号公報参照)。
【0008】
また、ハブを囲繞する筒体を採血ホルダーに対して一体的に設け、該筒体の先端部を針先側に向かうに従って徐々に縮径させて針カバーの外嵌部位に近接させることにより、該針カバーが該ハブから抜けることを抑えたものが知られている(例えば、米国特許第7435231号明細書参照)。
【発明の概要】
【0009】
ところで、採血器具を構成する採血ホルダーは、採血管が挿入可能な筒体と、前記筒体に対してヒンジを介して接続された開閉蓋とを有したものがある。このような採血器具を用いる場合、作業者は、初流血の移送作業において前記開閉蓋が邪魔にならないように、ハブに対して採血ホルダーを回転させることが好ましい。
【0010】
しかしながら、上述した特開2012−16496号公報に記載の従来技術では、プレートを採血ホルダーに対して固定しているので、前記採血ホルダーをハブに対して回転させると、プレートも一緒に回転することとなる。そうすると、前記プレートと針カバーとが接触した際に、該針カバーの外嵌部位が前記ハブから剥離し、前記外嵌部位と前記ハブとの嵌合力が低下して初流血が採血器具から漏出することがある。なお、上述した米国特許第7435231号明細書に記載の従来技術についても同様である。
【0011】
このような前記外嵌部位の剥離を防止するために、針カバーとプレートとの間隔を広く設定すると、針カバーの蛇腹状の弾性変形が前記外嵌部位に達するため、前記針カバーがハブから抜けるおそれがある。
【0012】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、採血ホルダーをハブに対して回転させる際に針カバーの外嵌部位が前記ハブから剥離することを防止することができ、且つ採血管の栓部材を中空針から引き抜く際に前記針カバーが前記ハブから抜けることを抑えることができる採血器具及び血液バッグシステムを提供することを目的とする。
【0013】
本発明に係る採血器具は、採血管が挿入可能な採血ホルダーと、前記採血管の栓部材を貫通可能な中空針と、前記中空針の基端側を支持する支持部を有し、且つ前記採血ホルダーが回転可能に装着されるハブと、前記中空針の先端側を被覆した状態で前記支持部に外嵌されたゴム製の針カバーと、前記採血ホルダーとは独立して前記支持部に設けられて前記針カバーの前記支持部からの抜けを防止する抜け止め手段と、を備え
、前記抜け止め手段は、前記針カバーのうち前記支持部に外嵌されている外嵌部位よりも前記中空針の先端側に位置して前記針カバーに接触又は近接する変形規制部を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る採血器具によれば、針カバーの支持部からの抜けを防止する抜け止め手段を備えているので、採血管の栓部材に中空針を貫通させて前記針カバーが蛇腹状に弾性変形したとしても、前記栓部材を前記中空針から引き抜く際に該針カバーがハブの支持部から抜けることを抑えることができる。また、前記抜け止め手段を採血ホルダーとは独立して前記支持部に設けているので、前記採血ホルダーをハブに対して回転させる際に、抜け止め手段が該採血ホルダーと一緒に回転することはない。これにより、採血ホルダーをハブに対して回転させる際に、針カバーが支持部から剥離することを防止することができる。
さらに、針カバーに接触又は近接する変形規制部を支持部よりも中空針の先端側に位置しているので、前記針カバーの蛇腹状の弾性変形が外嵌部位にまで達することを抑えることができる。これにより、外嵌部位が膨らむことを抑えることができるため、外嵌部位と支持部との嵌合力が保持される。よって、針カバーが支持部から抜けることを確実に抑えることができる。
【0017】
上記の採血器具において、前記変形規制部は、前記針カバーを内方に押圧してもよい。
【0018】
このような構成によれば、変形規制部が針カバーを内方に押圧しているので、前記針カバーと支持部との摩擦力を増大させることができる。これにより、該針カバーが支持部から抜けることを一層確実に抑えることができる。
【0019】
上記の採血器具において、前記変形規制部は、環状に形成されていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、変形規制部を環状に形成しているので、針カバーの蛇腹状の弾性変形が外嵌部位にまで達することを好適に抑えることができ、針カバーが支持部から抜けることを一層確実に抑えることができる。
【0021】
上記の採血器具において、前記抜け止め手段は、前記針カバーのうち前記支持部に外嵌されている外嵌部位を囲繞する囲繞部を有していてもよい。
【0022】
このような構成によれば、針カバーの外嵌部位を囲繞部で囲繞しているので、前記外嵌部位が膨らむことを好適に抑えることができる。これにより、外嵌部位と針カバーとの嵌合力が低下することを確実に抑制することができるので、針カバーを支持部から一層抜け難くすることができる。
【0023】
上記の採血器具において、前記抜け止め手段は、前記支持部に嵌合する係止部と、前記係止部から前記中空針の先端方向に延出すると共に前記外嵌部位を囲繞する囲繞部と、前記囲繞部から延設され該囲繞部よりも縮径した前記変形規制部と、を有していてもよい。
【0024】
このような構成によれば、係止部が支持部に対してしっかりと固定され、且つ縮径した変形規制部により蛇腹状の弾性変形が外嵌部位に達することを好適に抑えることができるため、前記針カバーが前記支持部から抜けることを一層効果的に抑制することができる。
【0025】
本発明に係る血液バッグシステムは、初流血を収容するための初流血バッグと、前記初流血バッグ内の前記初流血を採血管に移送するための採血器具と、前記初流血を除去した後の血液を収容するための採血バッグと、前記採血バッグに収容され前記血液を複数の血液成分に分けると共に各成分を異なるバッグに収容する分離処理部と、を備えた血液バッグシステムであって、前記採血器具は、上述した採血器具であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る血液バッグシステムによれば、上述した採血器具と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る採血器具及び血液バッグシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0029】
血液バッグシステム12は、複数の成分を含有する血液を比重の異なる複数の成分(例えば、軽比重成分、中比重成分、及び重比重成分の3つの成分、あるいは、軽比重成分及び重比重成分の2つの成分)に遠心分離し、各成分を異なるバッグに分けて収容、保存するためのものである。
【0030】
本実施形態に係る血液バッグシステム12は、全血から白血球及び血小板を除去した残余の血液成分を血漿及び濃厚赤血球の2つの成分に遠心分離し、血漿及び濃厚赤血球を異なるバッグに分けて収容、保存するように構成されている。
【0031】
図1に示すように、血液バッグシステム12は、ドナーから血液(全血)を採取する血液採取部14と、全血から所定の血液成分を除去する前処理部16と、所定成分が除去された残余の血液成分を遠心分離して複数の血液成分に分けると共に各成分を異なるバッグに収容(貯留)する分離処理部18とを有する。
【0032】
血液採取部14は、採血針20と、一端が採血針20に接続された第1採血チューブ22と、第1採血チューブ22の他端に接続されたY字状の分岐コネクタ24と、封止部材(破断連通部材)26を介して分岐コネクタ24に接続された第2採血チューブ28と、第2採血チューブ28の他端に接続された親バッグ(採血バッグ)30と、分岐コネクタ24を介して第1採血チューブ22に連通する分岐チューブ32と、分岐チューブ32の他端に接続されてドナーに対して採血針20を刺した直後に流出する所定量の血液(初流血)を収容(貯留)するための初流血バッグ33とを有する。
【0033】
採血針20には、使用前までは、ニードルキャップ34が装着されており、使用後はニードルガード36が装着される。ニードルガード36は、第1採血チューブ22に長手方向に沿って移動可能に配設されている。封止部材26は、初期状態では流路が閉塞しているが、破断操作を行うことで流路が開通するように構成されたものである。
【0034】
分岐チューブ32の途中部位には、分岐チューブ32の流路を閉塞及び開放するクランプ38が設けられている。このクランプ38は、一旦閉じたら開かないように構成されている。このようなクランプ38としては、例えば、特公平5−23792号公報に開示されたクランプと同様のものを用いることができる。
【0035】
初流血バッグ33は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンのような軟質樹脂製の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁のシール部において融着(熱融着、高周波融着)又は接着し、袋状に構成されたものである。親バッグ30についても同様に構成される。また、後述するフィルタ48、第1子バッグ54、第2子バッグ56、及び薬液バッグ58についても同様に構成されている。
【0036】
初流血バッグ33には、取出チューブ40を介して採血器具10が接続されており、この採血器具10に採血管200を装着することにより、初流血バッグ33内の初流血が減圧状態(真空状態)の採血管200内に移送される(
図5参照)。採血器具10の詳細な説明は後述する。
【0037】
前処理部16は、封止部材44を介して親バッグ30に接続された入口側チューブ46と、入口側チューブ46から導かれた血液から所定細胞(例えば、白血球及び血小板)を除去するためのフィルタ48と、フィルタ48にて所定細胞が除去された残余の血液成分を分離処理部18に導くための出口側チューブ50とを有する。
【0038】
封止部材44は、上述した封止部材26と同様の構成及び機能を有している。なお、後述する封止部材62、72についても同様である。出口側チューブ50の途中部位には、出口側チューブ50の流路を閉塞及び開放するクランプ52が設けられている。
【0039】
分離処理部18は、出口側チューブ50から導かれた前記血液成分を収容(貯留)する第1子バッグ(第1バッグ)54と、第1子バッグ54内の血液成分を遠心分離して得られた上清成分を収容及び保存する第2子バッグ(第2バッグ)56と、赤血球保存液を収容する薬液バッグ(第3バッグ)58と、第1子バッグ54、第2子バッグ56、及び薬液バッグ58に接続された移送ライン60とを有する。
【0040】
第1子バッグ54は、フィルタ48で所定細胞が除去された残余の血液成分を収容(貯留)するためのバッグと、当該血液成分を遠心分離して得られた沈降成分(濃厚赤血球)を保存するためバッグとを兼ねている。
【0041】
移送ライン60は、破断可能な封止部材62を介して第1子バッグ54に接続された第1チューブ64と、第1チューブ64の他端に接続されたY字状の分岐コネクタ66と、分岐コネクタ66と第2子バッグ56とを接続する第2チューブ68と、薬液バッグ58に設けられた破断可能な封止部材72と分岐コネクタ66とを接続する第3チューブ70とを含む。
【0042】
次に、本実施形態に係る採血器具10について説明する。
図2〜
図4に示すように、採血器具10は、初流血バッグ33に接続された取出チューブ40が接続されるハブ76と、ハブ76に装着されて採血管200が挿入可能な採血ホルダー78と、ハブ76に設けられた状態で採血管200のゴム栓(栓部材、
図5及び
図6参照)202を貫通可能な中空針80と、中空針80の先端側を被覆した状態でハブ76に装着されるゴム製の針カバー82と、針カバー82がハブ76から抜けることを防止するためのキャップ(抜け止め手段)84とを有する。
【0043】
以下の説明では、ハブ76及びその構成要素に関し、中空針80の先端側を「先端側」又は「先端方向」と呼び、その反対側を「基端側」又は「基端方向」と呼ぶ。
【0044】
ハブ76は、例えば、樹脂等の一体成形品であって一方向に延在している。ハブ76は、基端側に形成されたチューブ装着部86と、チューブ装着部86の先端側に設けられたホルダー装着部88と、ホルダー装着部88の先端側に設けられた針支持部90とを有する。
【0045】
チューブ装着部86とホルダー装着部88には、ハブ76の延在方向に沿って延びた初流血通路92が形成されている。ホルダー装着部88には、チューブ装着部86の先端側に設けられたフランジ部94と、フランジ部94から先端側に向けて突出した中間部96と、中間部96の先端側に設けられたストッパ部98とが形成されている。ストッパ部98は、中間部96よりも僅かに大径に形成されている。
【0046】
針支持部90には、ハブ76の長手方向に沿って延びて上述した初流血通路92に連通する針挿入孔100が形成されている。針支持部90には、ストッパ部98の先端面から突出した突出部102と、突出部102の先端面から突出した小径部104と、小径部104の先端側に設けられた大径部106が形成されている。
【0047】
突出部102の外周面の先端側には、径方向外方に突出する複数(本実施形態では、4つ)の嵌合突起108a〜108dが形成されている。これら嵌合突起108a〜108dは、突出部102の周方向に沿って等間隔に位置しており、各嵌合突起108a〜108dは平面視で矩形状に形成されている。
【0048】
大径部106の外周面は、その先端側(中空針80の先端側)に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されている。一方、大径部106のうち前記針挿入孔100の一部を構成する内周面は、その先端側に向かって徐々に拡径するテーパ状に形成されている。これにより、採血器具10の組立工程において、中空針80の基端側を大径部106の内周面に摺動させながら針挿入孔100に挿入させることができるので、中空針80の針挿入孔100への挿入が容易になる。
【0049】
採血ホルダー78は、ホルダー装着部88に装着される基部110と、基部110に一端部が接続された筒体112と、筒体112の他端部にヒンジ114を介して接続された開閉蓋116とを有している(
図5参照)。開閉蓋116には、筒体112に係止可能な係止爪118が設けられている。
【0050】
基部110には、針支持部90が配設可能な配設孔120が形成されており、配設孔120を構成する壁面には、ハブ76を構成するフランジ部94とストッパ部98との間に配置されて内方に突出し且つ周方向に延在する係合部122が形成されている。すなわち、本実施形態では、係合部122をフランジ部94とストッパ部98とで挟み込むように係合させることにより、採血ホルダー78がハブ76に対してハブ76の軸線回りに沿って回転可能な状態で支持される。
【0051】
中空針80は、任意の材料で構成可能であるが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、或いはNi−Ti合金等の超弾性合金等の各種金属材料、又はポリフェニレンサルファイド等の各種硬質樹脂材料等で構成することができる。中空針80は、その基端側が針挿入孔100に挿入された状態でハブ76を構成する針支持部90によって支持される。
【0052】
針カバー82は、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロブレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン‐プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料で構成することができる。
【0053】
針カバー82は、中空針80に沿って延在しており、その基端側がハブ76を構成する小径部104及び大径部106に対して外嵌されている。すなわち、針カバー82は、その弾性力によって小径部104及び大径部106に保持されている。この状態で、針カバー82の内面は、小径部104の外周面と大径部106のテーパ状の外周面に接触している。また、針カバー82は、中空針80の針先を含む針支持部90から突出した部分の全体を覆っている。
【0054】
キャップ84は、例えば、樹脂等の一体成形品であって、ハブ76を構成する針支持部90に装着される係止部124と、係止部124から先端側に延出した囲繞部126と、囲繞部126に延設された変形規制部128とを有している。
【0055】
係止部124は、円筒状に構成されており、その周壁には内外面を貫通する複数(上述した嵌合突起108a〜108dと同数であって、本実施形態では4つ)の嵌合孔130a〜130dが形成されている。これら嵌合孔130a〜130dは、係止部124の周方向に沿って等間隔に位置しており、各嵌合孔130a〜130dは各嵌合突起108a〜108dに対応している。
図4から諒解されるように、各嵌合孔130a〜130dを構成する壁部のうち基端側の部分は、先端側に向かうに従って徐々に肉厚になるように内方に突出しており、この突出した部分が各嵌合突起108a〜108dに接触する。
【0056】
囲繞部126は、針カバー82のうち小径部104及び大径部106に外嵌された部位(外嵌部位)140を囲繞するように筒状に形成されている。なお、本実施形態では、囲繞部126は、外嵌部位140に対して非接触となっているが、外嵌部位140に対して接触していても構わない。
【0057】
囲繞部126を外嵌部位140に非接触とした場合にはキャップ84をハブ76に対して装着し易くすることができる一方で、囲繞部126を外嵌部位140に接触させた場合には外嵌部位140が径方向外方に膨れるように弾性変形することを確実に抑えることができる。
【0058】
変形規制部128は、環状に構成されており、キャップ84をハブ76に嵌合させた状態で大径部106よりも中空針80の先端側に位置している。変形規制部128は、その内端で針カバー82を内方に押圧している。これにより、針カバー82の内面を大径部106のテーパ状の外面に対して確実に接触させて針カバー82と大径部106との摩擦力を増大させることができる。
【0059】
以上のように構成される採血器具10は次のように組み立てられる。すなわち、先ず、ハブ76の針挿入孔100に対して中空針80の基端側を挿入する。このとき、大径部106の内面がその先端側に向かって徐々に拡径したテーパ状になっているので、中空針80の基端側を針挿入孔100に円滑に挿入することが可能となっている。
【0060】
続いて、針カバー82を中空針80の先端側に被せ、針カバー82の基端側を径方向外方に広げながらその内孔に小径部104及び大径部106を押し入れる。これにより、針カバー82が針支持部90に対して外嵌されることとなる。
【0061】
そして、キャップ84を針カバー82に通して係止部124を針支持部90に装着する。具体的には、針支持部90の各嵌合突起108a〜108dがキャップ84の各嵌合孔130a〜130dに嵌合するようにキャップ84をハブ76に対して押し込む。これにより、キャップ84はハブ76に対して固定される。
【0062】
次いで、採血ホルダー78の内孔に針カバー82を通して係合部122をハブ76のフランジ部94とストッパ部98との間に配置する。これにより、採血ホルダー78がハブ76の軸線回りに沿って回転可能な状態でハブ76に対して支持されることとなる。この段階で採血器具10の組立が完了する。
【0063】
このような採血器具10の組立を行えば、全ての部品を同一方向から組付けることができるので、組立効率を向上することができる。
【0064】
以上のように構成された血液バッグシステム12では、封止部材26を初期状態(閉塞状態)にすると共にクランプ38を開放状態とした上で採血針20をドナーに対して刺入する。そうすると、ドナーから流出した初流血が採血針20、第1採血チューブ22、分岐コネクタ24、及び分岐チューブ32を介して初流血バッグ33に導かれる。
【0065】
初流血バッグ33内の初流血が所定量に達すると、クランプ38を閉じて初流血バッグ33への初流血の採取を停止する。その後、採血器具10を用いて初流血バッグ33内の初流血を採血管200に移送する。
【0066】
具体的には、下垂配置されている初流血バッグ33の下端に接続された取出チューブ40を湾曲させることにより、採血ホルダー78の開口部142を上方に指向させる(
図5参照)。そして、採血ホルダー78の開閉蓋116が作業の邪魔にならないように、採血ホルダー78をハブ76に対して回転させる。
【0067】
このとき、キャップ84が採血ホルダー78とは独立してハブ76の針支持部90に嵌合されているので、該キャップ84が採血ホルダー78と一緒に回転することはない。
【0068】
すなわち、キャップ84は、採血ホルダー78から分離した状態でハブ76に固定されているため、採血ホルダー78をハブ76に対して回転させた際でも、採血ホルダー78の回転に伴ってキャップ84がハブ76に対して回転することがなく、キャップ84に押圧された針カバー82が変形することはない。これにより、採血ホルダー78をハブ76に対して回転させた際に、外嵌部位140が小径部104及び大径部106から剥離することを防止することができる。
【0069】
次いで、採血管200を採血ホルダー78内に挿入する。そうすると、採血管200のゴム栓202が針カバー82の先端に接触して針カバー82をハブ76側に押し縮める。針カバー82が中空針80の長手方向に縮むと、中空針80の先端が針カバー82を貫通してその外側に露出することになる。
【0070】
採血管200をハブ76側にさらに挿入すると、
図6に示すように、中空針80がゴム栓202を貫通すると共に、針カバー82が中空針80の径方向外方に蛇腹状に弾性変形する。このとき、針カバー82の蛇腹状の弾性変形部144は、変形規制部128に接触するため、針カバー82の蛇腹状の弾性変形が外嵌部位140にまで達することはない。また、このとき、針カバー82の先端部は、ゴム栓202に形成された貫通孔146に食い込まれることがある。
【0071】
中空針80の先端部が採血管200内に露出すると、初流血バッグ33内の初流血が、取出チューブ40、初流血通路92、及び中空針80を介して減圧状態の採血管200内に移送されることとなる。
【0072】
採血管200への初流血の移送が完了すると、採血管200を中空針80から引き抜く。このとき、針カバー82は、元の状態に復帰して中空針80の先端側を被覆する。これにより、採血器具10から初流血が漏出することが抑えられる。
【0073】
針カバー82の先端部がゴム栓202の貫通孔146に食い込んでいる場合には、ゴム栓202を中空針80から引き抜いた際に針カバー82がゴム栓202に引張られることになるが、変形規制部128により蛇腹状の弾性変形が外嵌部位140にまで達していない、換言すれば、外嵌部位140と小径部104及び大径部106との嵌合力が保持されているため、針カバー82が針支持部90から抜けることが抑制される。
【0074】
しかも、囲繞部126により外嵌部位140の弾性変形を防止しているため、針カバー82は針支持部90から抜け難い。さらに、針カバー82が変形規制部128によって内方に押圧されているため、針カバー82の外嵌部位140が針支持部90から抜けることが一層抑えられる。
【0075】
一方、初流血採取が終了すると、封止部材26に対して破断操作を行って、第2採血チューブ28の流路を開通させることにより、所定量の血液(全血)を親バッグ30に採取する。その後、親バッグ30の全血の白血球及び血小板をフィルタ48で除去し、残余の血液成分を第1子バッグ54に移送する。そして、図示しない遠心分離移送装置を用いて、第1子バッグ54の血液成分を血漿及び濃厚赤血球の2つの成分に分離し、血漿及び濃厚赤血球を異なるバッグ(第1子バッグ54と第2子バッグ56)に分けて収容、保存する。
【0076】
本実施形態によれば、キャップ84を採血ホルダー78とは独立して針支持部90に嵌合しているので、採血ホルダー78をハブ76に対して回転させる際に、キャップ84が一緒に回転することはない。これにより、採血ホルダー78をハブ76に対して回転させる際に、針カバー82に余計な応力が作用することがないので、針カバー82の外嵌部位140が小径部104及び大径部106から剥離することを防止することができる。
【0077】
また、本実施形態では、針カバー82の針支持部90からの抜けを防止するキャップ84を設けているので、採血管200のゴム栓202に中空針80を貫通させて針カバー82が蛇腹状に弾性変形したとしても、ゴム栓202を中空針80から引き抜く際に針カバー82が針支持部90から抜けることを抑えることができる。
【0078】
すなわち、針カバー82に接触する変形規制部128を針支持部90の大径部106よりも中空針80の先端側に位置しているので、針カバー82の蛇腹状の弾性変形が外嵌部位140にまで達することを抑えることができる。これにより、外嵌部位140が膨らむことを抑えることができるため、外嵌部位140と針支持部90との嵌合力が保持される。よって、針カバー82が針支持部90から抜けることを確実に抑えることができる。
【0079】
また、変形規制部128が針カバー82を内方に押圧しているので、針カバー82と針支持部90との摩擦力を増大させることができる。これにより、針カバー82が針支持部90から抜けることを一層確実に抑えることができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、変形規制部128を環状に形成しているので、針カバー82の蛇腹状の弾性変形が外嵌部位140にまで達することを好適に抑えることができ、針カバー82が針支持部90から抜けることを一層確実に抑えることができる。
【0081】
本実施形態によれば、キャップ84が針カバー82の外嵌部位140を囲繞する囲繞部126を有しているので、外嵌部位140が膨らむことを好適に抑えることができる。これにより、外嵌部位140と針カバー82との嵌合力が低下することを確実に抑制することができるので、針カバー82を針支持部90から一層抜け難くすることができる。
【0082】
また、キャップ84の係止部124が針支持部90に対してしっかりと固定され、且つ縮径した変形規制部128により針カバー82の蛇腹状の弾性変形が外嵌部位140に達することを好適に抑えることができるため、針カバー82が針支持部90から抜けることを一層効果的に抑制することができる。
【0083】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【0084】
例えば、採血器具10が組み立てられた状態で、変形規制部128は針カバー82に対して非接触状態で近接していてもよい。すなわち、変形規制部128は、針カバー82が蛇腹状に弾性変形した際に、その弾性変形が外嵌部位140にまで達しないように該弾性変形部144に接触可能であればよい。
【0085】
ハブ76とキャップ84の嵌合形態は上述した構造のものに限られない。例えば、ハブ76には、上述した嵌合突起108a〜108dに換えて1つの環状突起が形成されていても構わない。この場合、例えば、キャップ84には、上述した嵌合孔130a〜130dに換えて前記環状突起に嵌合可能な環状溝を形成すればよい。このような嵌合形態にすれば、ハブ76の周方向の位置とキャップ84の周方向の位置とを合わせる必要が無く、周方向において任意の位置でハブ76に対してキャップ84を組付けることができるため、採血器具10の組立工数の低減を図ることができる。
【0086】
また、キャップ84には嵌合孔130a〜130dが形成されていなくてもよい。すなわち、キャップ84は、ハブ76の嵌合突起108a〜108dに嵌合可能な嵌合部を有していればよい。
【0087】
さらに、キャップ84に嵌合孔130a〜130dを形成する場合であっても、嵌合孔130a〜130dの数と嵌合突起108a〜108dの数とが同数である必要はない。例えば、ハブ76に嵌合突起を1つ設けると共にキャップ84に嵌合孔を2つ形成しても構わない。このように嵌合孔の数を嵌合突起の数よりも多くすることにより、嵌合突起と嵌合孔を同数設けた場合と比較して、周方向において嵌合突起の位置と嵌合孔の位置とを合わせ易くなるので、採血器具10の組立工数の低減を図ることができる。
【0088】
また、ハブ76に対して嵌合溝(嵌合穴)を形成すると共にキャップ84に対して前記嵌合溝に嵌合可能な嵌合突起を形成しても構わない。