(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5918435
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】杭施工管理方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20160428BHJP
G01N 3/40 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
E02D1/02
G01N3/40
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-254925(P2015-254925)
(22)【出願日】2015年12月25日
【審査請求日】2015年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595101665
【氏名又は名称】株式会社オーク
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】樫本 孝彦
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−181704(JP,U)
【文献】
特開昭49−076306(JP,A)
【文献】
特開平09−279560(JP,A)
【文献】
特開昭57−187414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に杭孔を穿設後、その杭孔への杭の建て込み前に、先端が下向きに突出する軸状のノッキングブロックと、該ノッキングブロックを自由落下によって打撃するドライブハンマーと、落下後のドライブハンマーを吊り上げて所定高さで下放する吊上げ機構とを備える貫入試験機を該杭孔に挿入して着底させ、ノッキングブロックが孔底から所定深さまで貫入するのに要する打撃回数から孔底の支持強度を判定し、該支持強度が所定値以上である場合に該杭孔に杭を建て込む杭施工管理方法であって、
前記貫入試験機は、筒状の本体ケーシング内に、前記吊上げ機構及びドライブハンマーを内蔵する筒状のハンマーケーシングが昇降自在に保持され、該ハンマーケーシングの下端にノッキングブロックの上端部が固着されると共に、該ノッキングブロックの下部側が本体ケーシングの下端側を貫通して下方外部へ突出し、本体ケーシングの下端部周辺に複数本の接地脚を有してなることを特徴とする杭施工管理方法。
【請求項2】
杭孔への前記貫入試験機の挿入を、該杭孔内が液状物で満たされた状態で行う請求項1に記載の杭施工管理方法。
【請求項3】
前記貫入試験機は、筒状の本体ケーシングの上下端部が共に先細り形状である請求項2に記載の杭施工管理方法。
【請求項4】
前記貫入試験機は、ドライブハンマーを上限位置及び下限位置で検出するセンサーを内蔵してなる請求項1〜3のいずれかに記載の杭施工管理方法。
【請求項5】
前記貫入試験機は、ハンマーケーシングの沈下量を計測するエンコーダーを内蔵してなる請求項1〜4のいずれかに記載の杭施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリル工法やプレボーリング工法のように、地盤に予め穿設した杭孔内に場所打ち杭や既製杭を建て込む杭施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、場所打ち杭の施工にはケリーバー式アースドリル工法が汎用されている。この工法では、例えば
図5で工程順に示すように、(a)地盤Gに対する杭芯合わせ、(b)軸掘バケットB1によるスタントパイプ用の掘削、(c)スタントパイプPsの圧入、(d)孔内にベントナイト液等の安定液Lsを注水しつつ交換した径小の軸掘バケットB2による掘削、(e)地盤G下部の硬い支持層Ghまで掘削、(f)錘付きメジャーMによる掘削深さの検尺、(g)鉄筋籠Fcの挿入、(h)トレミー管Tpの挿入、(i)エアーA導入によるスライムSの排出、(j)生コンCの打設、(k)トレミー管Tpの抜出、(l)スタントパイプPsの引抜き、という手順で場所打ち杭PCを建て込む。図中、Gsは地盤Gの上部側の土や砂等よりなる軟弱層を示す。なお、拡底杭施工として、杭孔Hの底部を拡底バケットで拡大した上で、場所打ち杭PCを建て込む場合もある。
【0003】
一方、プレボーリング工法では、アースオーガに装着したスクリューロッドや掘削ビットを用いて地盤を掘削し、形成した杭孔内にソイルセメント等の根固め液及び杭周固定液を注入したのち、PHC杭、RC杭、鋼管杭等の既製杭を沈設する。
【0004】
しかして、これらアースドリル工法やプレボーリング工法において、建て込み完了後の杭の支持強度が充分であるか否かは一般的に載荷試験によって判定できるが、これによって支持強度不足が判明した場合は杭施工のやり直しに多大な労力と時間及びコストを費やすことになるため、掘削形成した杭孔について杭先端の支持力が充分であるか否かを杭建て込み前に判定できれば理想的である。従来、このような観点から、掘削部材の回転駆動用モータの電流値から掘削負荷の変化を捉え、この掘削負荷の増大によって杭孔が地盤深部の硬い支持層に達したことを確認する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【0005】
しかしながら、回転駆動用モータの電流値から掘削負荷の変化を捉える方法では、掘孔が深くなるに伴い、掘削部材と孔壁との摩擦抵抗が大きくなることで、支持層に達していなくとも掘削負荷が著しく増大したり、掘削部位で滑りが発生することで、逆に支持層に達していても掘削負荷が減少したり、更には作業者の掘削作業の巧拙によっても掘削負荷は大きく変動するから、支持層への到達を確認する指標として信頼性に乏しい。従って、一般的には、専ら施工予定地での試験ボーリングにて得られた地質試料のデータに基づき、所定の深度まで掘孔することで支持層に届いたものとみなすのが普通であるが、施工予定地全体の地下深部が一様な層序で均質であるとは限らず、地歴によっては局所的に支持層の深さが異なったり、支持層自体の硬さの違いが大きかったりすることも多々あるため、個々の杭孔の底部が実際に充分な杭先端の支持力を有するとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−280031号公報
【特許文献2】特開2000−245058号公報
【特許文献3】特開2003−74045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて、アースドリル工法やプレボーリング工法のように、地盤に予め穿設した杭孔内に場所打ち杭や既製杭を建て込む際に、杭孔について杭先端の支持力が充分であるか否かを杭建て込み前に極めて簡易に且つ確実に判定可能とし、もって支持強度不足による杭建て込み施工のやり直しの手間を省き得る杭施工管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る杭施工管理方法は、地盤Gに杭孔Hを穿設後、その杭孔Hへの杭(場所打ち杭P1,既製杭P2)の建て込み前に、先端が下向きに突出する軸状のノッキングブロック1と、該ノッキングブロック1を自由落下によって打撃するドライブハンマー2と、落下後のドライブハンマー2を吊り上げて所定高さで下放する吊上げ機構3とを備える貫入試験機10を該杭孔Hに挿入して着底させ、ノッキングブロック1が孔底Hbから所定深さまで貫入するのに要する打撃回数から孔底Hbの支持強度を判定し、該支持強度が所定値以上である場合に該杭孔Hに杭(場所打ち杭P1、既製杭P2)を建て込む杭施工管理方法
であって、
貫入試験機10は、筒状の本体ケーシング4内に、吊上げ機構3及びドライブハンマー2を内蔵する筒状のハンマーケーシング5が昇降自在に保持され、該ハンマーケーシング5の下端にノッキングブロック1の上端部(円板部12)が固着されると共に、該ノッキングブロック1の下部側(貫入軸11)が本体ケーシング4の下端側を貫通して下方外部へ突出し、本体ケーシング4の下端部周辺に複数本の接地脚6を有してなることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、上記請求項1の杭施工管理方法において、杭孔Hへの貫入試験機10の挿入を、該杭孔H内が液状物(安定液Ls,根固め液Lh、孔周固定液Lf)で満たされた状態で行うものとしている。
【0010】
請求項3の発明は、上記請求項2の杭施工管理方法において、貫入試験機10は、本体ケーシング4の上下端部(端部材41,42の周面部41a,42a)が共に先細り形状であるものとしている。
【0012】
請求項
4の発明は、上記請求項1〜
3のいずれかの杭施工管理方法において、貫入試験機10は、ドライブハンマー2を上限位置及び下限位置で検出するセンサー7を内蔵するものとしている。
【0013】
請求項
5の発明は、上記請求項1〜
4のいずれかの杭施工管理方法において、貫入試験機10がハンマーケーシング1の沈下量を計測するエンコーダー8を内蔵するものとしている。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明によれば、地盤Gに穿設した杭孔Hへ杭(場所打ち杭P1,既製杭P2)を建て込む前に、貫入試験機10を該杭孔Hに挿入して着底させ、そのノッキングブロック1が孔底Hbから所定深さまで貫入するのに要するドライブハンマー2の打撃回数から、孔底Hbの支持強度を実測値(N値)として極めて簡易に且つ確実に測定できるから、該支持強度が所定値以上である場合に建て込み可能と判定し、該杭孔Hに杭を建て込んで杭施工を効率よく完了させることができる。一方、該支持強度が所定値未満の場合には、建て込み不可となるから、更に深く掘削するか、もしくは当該杭孔Hを埋め戻して異なる位置で新たに掘孔して、同様に支持強度の判定を行うようにすればよい。従って、従来において杭施工完了後の載荷試験にて支持強度不足が判明した場合のように、杭建て込み施工をやり直すために多大な労力と時間及びコストを費やす事態を回避できる。また、貫入試験機10として従来より地盤のN値を求めるのに汎用されている標準貫入試験装置を利用できるから、この杭施工管理方法を実施する上で格別な新規設備を必要とせず、それだけ施工コストを抑えられると共に、国際標準のN値での管理を行えるので測定値の高い信頼評価が得られるという利点もある。
又本発明によれば、貫入試験機10が簡素な構造で安価に製作できることに加え、本体ケーシング4の下端部周辺に複数の接地脚6を有するから、杭孔Hにおける該貫入試験機10の着底姿勢が垂直状態で安定し、もってドライブハンマー2の打撃力が一定になるために支持強度の判定をより正確に行うことができる。
【0016】
請求項
2の発明によれば、杭孔Hへの貫入試験機10の挿入を、該杭孔H内が液状物(安定液Ls,根固め液Lh、孔周固定液Lf)で満たされた状態で行うから、該貫入試験機10の入出による孔壁の崩壊を抑制できる。
【0017】
請求項
3の発明によれば、貫入試験機10の本体ケーシング4の上下端部4a,4bが共に先細り形状であることから、杭孔H内が液状物(安定液Ls,根固め液Lh)で満たされた状態で該貫入試験機10を入出させる際の液状物の擾乱が少なくなり、孔壁の崩壊をより確実に防止できる。
【0018】
請求項
4の発明によれば、貫入試験機10がドライブハンマー2の上限位置及び下限位置で検出するセンサー7を内蔵するから、該センサー7からの出力信号によってドライブハンマー2による打撃回数を確実に捉えることができる。
【0019】
請求項
5の発明によれば、貫入試験機10がハンマーケーシング1の沈下量を計測するエンコーダー8を内蔵するから、ノッキングブロック1の打撃による孔底Hbへの貫入量を正確に捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の杭施工管理方法における孔底の支持強度の測定状況を示す縦断側面図である。
【
図2】同支持強度の測定に用いる貫入試験機を示し、(a)はドライブハンマーの作動前の状態、(b)はドライブハンマーを持ち上げた状態、(c)はドライブハンマーを自由落下させた状態、をそれぞれ示す縦断側面図である。
【
図4】貫入試験機における吊上げ機構の動作を示し、(a)はドライブハンマー吊り上げ時の側面図、(b)はドライブハンマー下放時の側面図である。
【
図5】ケリーバー式アースドリル工法を(a)〜(l)の工程順に示す概略縦断面図である。
【
図6】本発明に係る第2実施形態の杭施工管理方法を(a)〜(i)の工程順に示す概略縦断面図である。
【
図7】本発明に係る第3実施形態の杭施工管理方法における孔底の支持強度の測定状況を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る杭施工管理方法の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。第1実施形態はケリーバー式アースドリル工法による場所打ち杭の施工、第2及び第3実施形態はプレボーリング工法による既製杭の施工、にそれぞれ本発明の杭施工管理方法を適用している。
【0022】
第1実施形態の杭施工管理方法では、既述の
図5で示すケリーバー式アースドリル工法において、工程(e)で想定される地下深部の支持層Ghに達する深さの杭孔Hを形成し、バケットB2を引き上げ、工程(f)で掘削深さを検尺したのち、
図1で示すように、アースドリル掘削機DMのウインチワイヤーW1に吊持されて且つヨークYを介して保持されたケリーバーKの先端に、バケットB2に代えて貫入試験機10を接続し、この貫入試験機10を安定液Lsで満たされた杭孔Hに挿入し、杭底Hbに着底させる。そして、該貫入試験機10の作動によって杭底Hbの支持強度を測定する。
【0023】
貫入試験機10は、従来より地盤のN値を求めるのに汎用されている標準貫入試験装置を利用するものであり、
図2及び
図3に示すように、略円筒状の本体ケーシング4内の中央に、横断面正方形のガイド筒43が配置し、このガイド筒43内に円筒状のハンマーケーシング5が昇降自在に装填されると共に、該ハンマーケーシング5の下端にノッキングブロック1が基端側の円板部12で固着され、該ノッキングブロック1の貫入軸11が筒状の止水用パッキン44を介して本体ケーシング4の下端側を貫通して下方突出している。また、ガイド筒43は、
図3に示すように、内側四隅にそれぞれ、長手方向に連続する横断面略正方形のガイド枠部43aを構成し、これらガイド枠部43aによってハンマーケーシング5との摺接抵抗を小さくしている。そして、ハンマーケーシング5内には、上部側に吊上げ機構3として下向きの伸縮ロッド31aを備える油圧シリンダー31が固着されると共に、その下方にドライブハンマー2が昇降自在に装填されている。
【0024】
油圧シリンダー31の伸縮ロッド31aの先端部には、下端に内向きの係止爪32aを有する一対のフック32,32が相互に開閉動作可能に各々中間部で枢支ピン31bを介して枢着されると共に、該油圧シリンダー31の下端外周部に内側部がテーパ状をなす一対の把持解除フランジ34,34が固設されている。また、両フック32,32はスプリング33を介して常時は閉方向に付勢されており、各フック32の上端の外側部32bが把持解除フランジ34の内側部に対応したテーパ状をなしている。一方、ドライブハンマー2の上面側には、頂部を径大の円錐部21aとする係止軸21が植設されている。
【0025】
吊上げ機構3は、
図2(a)及び
図4(a)で示すように、油圧シリンダー31の伸縮ロッド31aが伸長した際に、両フック32,32の係止爪32a,32aが係止軸21の円錐部21aのテーパー面に接触し、傾斜誘導作用によって両フック32,32が開くことで、円錐部21aを乗り越えた両係止爪32a,32aが該円錐部21aの下側に係合する。次に、この係合状態で伸縮ロッド31aが短縮作動することで、
図2(b)の如くドライブハンマー2を把持して吊り上げるが、更に伸縮ロッド31aが縮退した際に、
図2(c)及び
図4(b)に示すように、両フック32,32の上端の外側部32bが把持解除フランジ34にテーパー面同士で接触し、傾斜誘導作用によって両フック32,32がスプリング33の付勢に抗して強制的に開くことで、把持解除されたドライブハンマー2が自由落下してハンマーケーシング5の底板部11を打撃し、この打撃力によってハンマーケーシング5が下降すると共に、ノッキングブロック1の貫入軸11が下方へ突き出される。
【0026】
なお、ノッキングブロック1の貫入軸11は、地質試料を採取できるように先端が開口した筒軸状をなし、図示を省略しているが、先端側のシューと、中間の二つ割り可能なスプリットバーレルと、基端側のボールバルブ入りのコネクターヘッドとを同軸状に螺着すして一体化している。
【0027】
本体ケーシング4は、
図2(a)〜(c)で示すように、円筒部材40と、その上下にボルト止めにて着脱自在に嵌着する端部材41,42とで構成されており、円筒部材40の下部寄りの周面に点検窓45が設けられると共に、上下の端部材41,42は共にテーパー状の周面部41a,42aによって先細り形状になっている。そして、ガイド筒43は、上端が上側の端部材41に固着され、下端が下側の端部材42の内側取付板42bにボルト止めされると共に、上部側に設けた外向きフランジ部43bにおいて円筒部材40に設けた内向きフランジ部40aにボルト止めされている。また、上側の端部材41にはケリーバー接続部46及びケーブル接続部47が突設される一方、下側の端部材42のテーバー状の周面部42aには複数本(図示の場合は4本)の接地脚6が周方向に等配形成されている。
【0028】
更に、本体ケーシング4には、ガイド筒43との間の環状空間40bを利用して、ドライブハンマー2を上限位置及び下限位置で検出するセンサー7,7と、ハンマーケーシング1の沈下量を計測するエンコーダー8が内蔵されており、センサー7,7の検出信号とエンコーダー8による計測信号がケーブル接続部47に接続した油圧・電気ケーブルCa(
図1参照)を介して地上の自動計測装置(図示省略)に送られて、打撃回数(N値)がカウントされて記録・表示されると共に、1打撃当たりの沈下量つまりノッキングブロック1の貫入軸11の地盤に対する貫入量及び累計貫入量が記録・表示される。
【0029】
本発明の杭施工管理方法では、
図1の如く杭底Hbに着底させた貫入試験機10を作動させることにより、ノッキングブロック1の貫入軸11が孔底Hbから所定深さまで貫入するのに要する打撃回数を計測し、その打撃回数に基づいて杭底Hbの地盤の支持強度が所定値以上であるか否かを判定する。しかして、JIS A 1219で規定される標準貫入試験では、質量63.5±0.5kgのドライブハンマー2を76±1cm自由落下させてノッキングブロック1を打撃し、外径51±1mm,内径35±1mmの貫入軸11が地盤に30cm貫入するのに要する打撃回数をN値として表すから、ここで用いる貫入試験機10でも、上記標準貫入試験に準拠して支持強度をN値として掌握すればよい。
【0030】
かくして測定される地盤の支持強度が所定値以上であった場合、該地盤は支持層Ghとして充分な杭先端の支持力を有して、杭の建て込み可能と判定されるから、以降は既述した
図5における工程(g)の鉄筋籠Rcの挿入から、工程(l)のスタントパイプPsの引抜きまでを順次経ることで、該杭孔Hに場所打ち杭P1を建て込んで杭施工を迅速に完了させることができる。一方、該支持強度が所定値未満の場合には、杭の建て込み不可と判定されるから、更に深く掘削するか、もしくは当該杭孔Hを埋め戻して異なる位置で新たに掘孔して、同様に支持強度の判定を行うようにすればよい。
【0031】
第2実施形態の杭施工管理方法は、プレボーリング工法による既製杭の施工に適用するものである。このプレボーリング工法では、まず
図6の工程(a)に示すように、三点式杭打機等のリーダ(図示省略)に沿って昇降するアースオーガーAのスクリューロッドRsを地盤Gに垂直に立て、工程(b)で示すように、スクリューロッドRsを回転駆動しつつ下降させて地盤G(軟弱層Gs)を掘削し、工程(c)で示すように、想定される地下深部の支持層Ghに達する深さの杭孔Hを形成したのち、スクリューロッドRsを引き上げつつ、工程(d)の如くソイルセメント等の根固め液Lsを注入し、続いて工程(e)の如く孔周固定液Lfを杭孔Hの上部まで注入し、スクリューロッドRsを抜出する。次に、工程(f)で示すように、アースオーガーAに連結用ロッドR1を介して第1実施形態と同様の貫入試験機10を垂下連結し、工程(g)で示すように、貫入試験機10を杭孔Hに挿入して着底させ、該貫入試験機10によって杭底Hbの支持強度を測定する。なお、工程(g)の図に示すCRは、貫入試験機10に接続した油圧・電気ケーブルCaのリールであって、杭打機に据え付けられている。
【0032】
この場合でも、既述の第1実施形態と同様に貫入試験機10を作動させ、ノッキングブロック1の貫入軸11(
図2参照)が孔底Hbから所定深さまで貫入するのに要する打撃回数を計測し、その打撃回数に基づいて杭底Hbの地盤の支持強度が所定値以上であるか否かを判定する。そして、該支持強度が所定値以上であれば、貫入試験機10を引き上げたのち、工程(h)で示すように、アースオーガーAに連結用ロッドR2を介してPHC杭やRC杭の如き既製杭P2を連結し、この既製杭P2を杭孔Hに挿入し、工程(i)で示すように、該既製杭P2を杭孔H内に埋入して連結用ロッドR2から切り離し、杭施工を完了する。また、該支持強度が所定値未満であれば、第1実施形態の場合と同じく、更に深く掘削するか、もしくは当該杭孔Hを埋め戻して異なる位置で新たに掘孔して、同様に支持強度の判定を行うようにすればよい。
【0033】
なお、第2実施形態では貫入試験機10を連結用ロッドR1を介してアースオーガーAに垂下連結しているが、
図7に示す第3実施形態のように、アースオーガを装備した杭打機とは別体の補助クレーン(図示省略)のワイヤW2に鉛直性ガイド9を介して貫入試験機10を吊下げ、この貫入試験機10を杭孔Hに挿入して着底させてもよい。
図7に示すCPは地上に設置した自動記録装置であり、貫入試験機10から伸びる油圧・電気ケーブルCaが接続している。
【0034】
これら第1〜第3実施形態で例示するように、本発明の杭施工管理方法では、地盤Gに穿設した杭孔Hへ場所打ち杭P1や既製杭P2を建て込む前に、貫入試験機10を該杭孔Hに挿入して着底させ、そのノッキングブロック1が孔底Hbから所定深さまで貫入するのに要するドライブハンマー2の打撃回数から、孔底Hbの支持強度を実測値(N値)として極めて簡易に且つ確実に測定できる。従って、該支持強度が所定値以上である場合には、該杭孔Hに杭を建て込んで杭施工を効率よく完了させることができる。また、支持強度が所定値未満の場合には、建て込み不可の判定になるから、更に深く掘削するか、もしくは当該杭孔Hを埋め戻して異なる位置で新たに掘孔して、同様に支持強度の判定を行うことになるが、従来において杭施工完了後の載荷試験にて支持強度不足が判明した場合のように、杭建て込み施工をやり直すために多大な労力と時間及びコストを費やす事態を回避できる。
【0035】
しかも、貫入試験機10として従来より地盤のN値を求めるのに汎用されている標準貫入試験装置を利用できるから、この杭施工管理方法を実施する上で格別な新規設備を必要とせず、それだけ施工コストを抑えられると共に、国際標準のN値での管理を行えるので測定値の高い信頼評価が得られる。加えて、実施形態で例示した貫入試験機10は、簡素な構造で安価に製作できることに加え、本体ケーシング4の下端部周辺に複数の接地脚6を有するから、杭孔Hにおける着底姿勢が垂直状態で安定し、もってドライブハンマー2の自由落下による打撃力が一定になるため、支持強度の判定をより正確に行うことができる。
【0036】
なお、実施形態では液状物(安定液Ls,根固め液Lh、孔周固定液Lf)で満たされた杭孔H内に貫入試験機10を挿入しているが、本発明の杭施工管理方法では空所になった杭孔Hでも該貫入試験機10を挿入・着底させて孔底地盤の支持強度を測定できる。しかして、孔壁崩壊を抑制するために液状物で満たされた杭孔Hを対象として、貫入試験機10を挿入する場合、実施形態のように本体ケーシング4の上下端部4a,4bが共に先細り形状である貫入試験機10を用いれば、該貫入試験機10を入出させる際の液状物の擾乱が少なくなるから、孔壁の崩壊をより確実に防止できるという利点がある。
【0037】
更に、実施形態の貫入試験機10のように、ドライブハンマー2の上限位置及び下限位置で検出するセンサー7を内蔵することで、センサー7からの出力信号によってドライブハンマー2による打撃回数を確実に捉えることができ、またハンマーケーシング1の沈下量を計測するエンコーダー8を内蔵することで、ノッキングブロック1の打撃による孔底Hbへの貫入量を正確に捉えることができるという利点がある。
【0038】
一方、第2実施形態では既製杭P2がコンクリート杭であるが、杭孔Hに既製杭として鋼管杭を挿入する工法にも本発明の杭施工管理方法を適用できる。また、本発明で対象とする杭孔Hは、底部側を拡底バケット等で拡大した拡底孔であってもよい。一方、本発明で使用する貫入試験機10は、吊上げ機構3の構成、本体ケーシング4の細部形状、ハンマーケーシング5の昇降ガイド部の形態、接地脚6の形状等、細部構成が実施形態での例示とは異なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ノッキングブロック
2 ドライブハンマー
3 吊上げ機構
4 本体ケーシング
5 ハンマーケーシング5
6 接地脚
7 センサー
8 エンコーダー
10 貫入試験機
H 杭孔
Hb 孔底
G 地盤
Gh 支持層
Lf 孔周固定液(液状物)
Lh 根固め液(液状物)
Ls 安定液(液状物)
P1 場所打ち杭
P2 既製杭
【要約】
【課題】地盤に穿設した杭孔内に場所打ち杭や既製杭を建て込む際、杭孔の杭先端支持力が充分であるか否かを杭建て込み前に極めて簡易に確実に判定可能とし、支持強度不足による杭建て込み施工のやり直しの手間を省き得る杭施工管理方法を提供する。
【解決手段】地盤Gに杭孔Hを穿設後、杭孔Hへの杭の建て込み前に、先端が下向きに突出する軸状のノッキングブロック1と、該ノッキングブロック1を自由落下によって打撃するドライブハンマー2と、落下後のドライブハンマー2を吊り上げて所定高さで下放する吊上げ機構3とを備える貫入試験機10を杭孔Hに挿入して着底させ、ノッキングブロック1が孔底Hbから所定深さまで貫入するのに要する打撃回数から孔底Hbの支持強度を判定し、該支持強度が所定値以上である場合に該杭孔Hに杭を建て込む。
【選択図】
図1