【実施例】
【0017】
[液圧測定ユニットの実施例]
図1、
図2において、液圧測定ユニットは、フランジ1と、フランジ1に重ねられている押えフランジ2を有してなる。フランジ1と押えフランジ2はともに金属などの強度の高い素材からなる外周形状が円形の部材である。フランジ1は円板状、押えフランジ2は中心孔28を有するリング状である。
【0018】
図5にも示すように、フランジ1には、外周の円形と同心の円に沿ってOリング溝11が全周にわたり形成されている。Oリング溝11の外周縁に続いて平面方向から見て円形の突堤15がフランジ1の全周にわたりかつ同心円に沿って形成されている。突堤15の幅方向中心には突起16がフランジ1の全周にわたりかつ同心円に沿って形成されている。フランジ1のOリング溝11よりも内周側は、突堤15の高さよりも若干低い平面17になっている。
【0019】
フランジ1の中心部には、フランジ1を厚さ方向に貫通して排気ポート12が形成されている。フランジ1には、Oリング溝11よりも半径方向内側で、排気ポート12よりも半径方向外側に、圧縮空気供給ポート14がフランジ1を厚さ方向に貫通して形成されている。排気ポート12、圧縮空気供給ポート14はいずれも
図5においてフランジ1の底面側と平面17側で開口している。
【0020】
排気ポート12は、フランジ1の底面側が大径でこの大径部に雌ねじが形成され、平面17側が小径部122となり、小径部122と前記大径部との間に段部121が形成されている。圧縮空気供給ポート14もフランジ1の底面側が大径でこの大径部に雌ねじが形成され、平面17側が小径部171となっている。平面17における小径部171の開口端は、後で詳細に説明するように圧力検出端9になっている。
【0021】
フランジ1の排気ポート12には、
図1に示すように、パッキン7とジョイント8が装着されている。
図8はパッキン7の縦断面を示す。パッキン7は、平面から見て円形のベース部分72と、ベース部分72から立ち上がった小径部分73と、ベース部分72および小径部分73を上下に貫通する排気通路74を有する。排気通路74の上端は開口端71になっている。パッキン7はフランジ1の排気ポート12に挿入され、小径部分73が前記小径部122に嵌められ、ベース部分72が前記段部121に当たっている。
【0022】
パッキン7がフランジ1の排気ポート12に挿入されている状態でジョイント8が排気ポート12の雌ねじにねじ込まれ、ジョイント8がフランジ1に装着されている。ジョイント8はパッキン7の排気通路74に連通する排気通路81を有している。ジョイント8はパッキン7のベース部分72を排気ポート12の段部121に押し付け、パッキン7をフランジ1の排気ポート12に強固に固着している。
【0023】
このようにして、排気ポート12の空気通路は、実質的にはパッキン7の排気通路74で制限され、パッキン7の上端の開口端71が排気ポート12の開口端となっている。以下、パッキン7の上端の開口端71は排気ポート12の開口端としても説明する。フランジ1に固着されているパッキン7の開口端すなわち排気ポート12の開口端71は、フランジ1の平面17から若干突出し空気室6内に位置している。開口端71は、空気室6内においてダイヤフラム5に若干の隙間をおいて対面している。
【0024】
フランジ1の圧縮空気供給ポート14には、ジョイント10がねじ込まれ、フランジ1にジョイント10が装着されている。ジョイント10には中心孔が形成されている。ジョイント10には圧縮空気供給源が切換え弁を介して接続されるとともに、圧力センサに至る気圧検出経路が切換え弁を介して接続される。この切換え弁は、圧縮空気供給ポート14を、圧縮空気供給源と空気圧測定器に選択的につなぐ。さらに言えば、前記切換え弁は、圧縮空気供給ポート14を、圧縮空気供給源に一時的につないだ後、空気圧測定器につなぐ。圧縮空気供給源から供給される圧縮空気は、水分の結露などによるセンサ回路の短絡などの不具合をなくすために、乾燥した空気すなわちドライエアであることが望ましい。
【0025】
図6は、フランジ1に重ねて互いに結合する押えフランジ2を示している。
図6では押えフランジ2が上下反転して示されていて、
図6に示す押えフランジ2は、上下に反転してフランジ1に重ねられる。
図6に示すように、押えフランジ2はフランジ1のOリング溝11と重なる位置にOリング溝21を有し、Oリング溝21の外周縁に続いてフランジ1の突堤15と重なる段部22を有する。段部22には、フランジ1の突起16と重なる溝24が形成されている。Oリング溝21、段部22、溝24はそれぞれ同心円に沿って押えフランジ2の
全周にわたり形成されている。
【0026】
押えフランジ2の中心孔28は、押えフランジ2の厚さ方向の両側から直径が若干広げられることによりそれぞれ大径部261、271が形成され、大径部261に続く段部26、大径部271に続く段部27が形成されている。大径部271はフランジ1と対面する側にあり、押えフランジ2の厚さ方向における大径部271の寸法すなわち深さは、押えフランジ2の厚さ方向における他方の大径部261の寸法すなわち深さよりも大きい。押えフランジ2のフランジ1との対向面側には、Oリング溝11と大径部271との間に、前記段部22の面よりも低い位置に平面23が形成されている。
【0027】
押えフランジ2の大径部261には緩衝板30が嵌められ、段部26に緩衝板30が固着されている。緩衝板30は、
図7に示すようないわゆるパンチングメタルを用いることができ、円板状の金属板に多数の孔を開けた形をしている。押えフランジ2の大径部271には緩衝板32が嵌められ、段部27に緩衝板32が固着されている。緩衝板32も緩衝板30と同様の形状のパンチングメタルを用いることができる。ただし、緩衝板30と緩衝板32の厚さは、嵌められる大径部261、271の深さに応じて、緩衝板30は薄く、緩衝板32は厚い。そして、緩衝板32の外側の面は平面23とほぼ同一面にある。
【0028】
押えフランジ2には、外周面の1か所から半径方向内側に向かってドレーン孔25が形成されている。ドレーン孔25は、押えフランジ2の半径方向内側において前記平面23において開口している。押えフランジ2の外周側におけるドレーン孔25の開口部には雌ねじ251が形成されている。
【0029】
図1は、フランジ1に押えフランジ2を重ねて結合した液圧測定ユニットの構造を示している。フランジ1に押えフランジ2を重ねる前に、フランジ1のOリング溝11にOリング3を嵌める。Oリング3の上に、Oリング3全体を上から覆うようにしてダイヤフラム5を重ねる。さらにダイヤフラム5の上にもう一つのOリング4を重ねる。Oリング4はOリング3と同じ径および同じ太さで、Oリング3の位置に合わせてOリング4を重ねる。
【0030】
次に、押えフランジ2をフランジ1に対し位置合わせして重ねる。フランジ1の突起16に押えフランジ2の溝24が嵌って、フランジ1と押えフランジ2の相対位置が決められる。フランジ1の突堤15の面と押えフランジ2の段部22の面が重なり、押えフランジ2のOリング溝21のOリング4が嵌る。
【0031】
次に、フランジ1の外周縁付近に設けられている結合孔18、押えフランジ2の外周縁付近に設けられている結合孔29、ボルト35(
図2、
図4参照)などを用いてフランジ1と押えフランジ2を締結する。フランジ1と押えフランジ2の締結により、フランジ1側のOリング3と押えフランジ2側のOリング4が圧縮され、Oリング3,4がダイヤフラム5の外周縁部を挟み込む。
【0032】
このようにして、ダイヤフラム5は、一面側にあるフランジ1側の空間と他面側にある押えフランジ2側の空間を分離している。フランジ1側に面するダイヤフラム5の一面側には、このダイヤフラム5の一面とフランジ1の平面17およびOリング3で画される空気室6が形成されている。空気室6内には、排気ポートの開口端すなわちパッキン7の開口端71が位置し、開口端71がダイヤフラム5に対面している。開口端71とダイヤフラム5は、ダイヤフラム5の一面側と他面側にかかる圧力がほぼ釣り合うことにより開口端71を塞ぐリップ構造になっている。
【0033】
リップ構造を構成する開口端71およびこれに連なる排気通路74は、大量の空気を排出する必要はなく、少量ずつ空気を排出すればよいので、横断面積を小さく絞った構造にするのが望ましい。
【0034】
次に、以上説明したように構成されている液圧測定ユニットの使用態様および液圧測定ユニットを用いた液面計について説明する。
図9は液圧測定ユニットをタンク40に装着した状態を示す概略図であって、符号42は、タンク40に収容されている液体を示している。
【0035】
図1に示すように、押えフランジ2側をタンク40に向け、タンク40に収納される液体の圧力が、緩衝板30,32を介してダイヤフラム5にかかるように設置する。したがって、ダイヤフラム5の押えフランジ2側の面が測定対象である液体による圧力受け面になっている。ダイヤフラム5の液体圧力受け面と空気室6側の面とは、Oリング3,4によって隔絶される。
【0036】
図3、
図4、
図9に示すように、ジョイント8は、配管50を経て、圧縮空気供給ポート14を圧縮空気供給源と空気圧測定器に接続する。配管50と圧縮空気供給源と空気圧測定器の間には電磁弁などからなる切換え弁が介在している。切換え弁は、圧縮空気供給ポート14を、圧縮空気供給源と空気圧測定器に選択的につなぐ。より具体的には、切換え弁は、圧縮空気供給ポート14を、圧縮空気供給源に一時的につないだ後、空気圧測定器の圧力センサにつなぎ変える。
【0037】
切換え弁が空気圧測定器側に切換えると、空気室6の空気圧は、圧力検出端9からジョイント10を経て空気圧測定器の圧力センサにかかり、圧力センサで空気室6の空気圧が検出される。ドレーン孔25はジョイント26を経てドレーン回収部に接続する。
図3、
図9に示すように、液圧測定ユニットとタンクとの間にバルブ44を介在させるとよい。
【0038】
前記液圧測定ユニットは、以下のようにして液圧測定装置あるいは液面計として使用する。液圧測定装置あるいは液面計として使用するのに先立ち、切換え弁をゼロ点調整モードに切換え、空気室6を大気圧に開放することによってゼロ点調整を行う。ゼロ点調整を行うことにより、精度の高い液圧測定を行うことができる。
【0039】
ゼロ点調整後、切換え弁を圧縮空気供給源側に切換え、圧縮空気供給源側から空気室6に、配管50(
図4、
図9参照)、圧縮空気供給ポート14を通じて一時的かつ間欠的に圧縮空気を供給する。圧縮空気の空気圧は、測定対象である液体の液面レベルが最大であるときにダイヤフラム5にかかる圧力よりも大きい圧力とする。
【0040】
一時的に圧縮空気を供給した後、切換え弁で圧縮空気供給ポート14を空気圧測定器側に切換える。圧縮空気供給ポート14を空気圧測定器側に切換えた当初は、ダイヤフラム5の空気室6側にかかる空気圧がダイヤフラム5の液体による圧力受け面側にかかる液圧に打ち勝ち、ダイヤフラム5と排気ポート12の開口端71との間に隙間ができる。したがって、空気室6の空気が開口端71を通じて排気され、空気室6の空気圧が降下していく。やがて、空気室6側にかかる空気圧と液体による圧力受け面側の圧力が釣り合うと、開口端71がダイヤフラム5で塞がれて前記排気が停止し、空気室6の空気圧が安定する。この安定したときの空気圧を前記圧力センサで測定する。
【0041】
圧縮空気は圧縮空気供給源から一時的かつ間欠的に空気室6に供給されるため、
図10に示すように、空気室6の気圧が上記間欠的な周期に合わせて変化を繰り返す。タンク内の液面レベルが変化すると、空気室6の気圧の安定するレベルも液面レベルに応じて変化するため、安定したときの気圧を検出することにより、変化した液面レベルを算出することができる。
【0042】
圧縮空気供給源から圧縮空気を一時的かつ間欠的に供給するための切換え弁の動作制御、空気室6の気圧を検出するための切換え弁の動作制御などは、本願発明の本質的なものではないので、説明は省略する。ちなみに、圧縮空気を間欠的に供給するための切換え弁の制御などは、特許文献1や特許文献2に記載されているものを適用することができる。
【0043】
本発明に係る液圧測定ユニットは、液体を収納するタンクの底板に取り付けてもよいし、底板近くの側壁に取り付けてもよい。
タンク内の液体を排出したとき、ドレーン孔25につながる弁を開放して、ダイヤフラム5の液体による圧力受け面がわに溜まっている残渣を排出する。
【0044】
[実施例の効果]
以上説明した本発明に係る液圧測定ユニットおよび液面計の実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
ダイヤフラム5が一方向に移動するときにのみ測定対象である液体の圧力を測定するので、ダイヤフラム特有の不感帯の影響を受けることがなく、高い精度で液圧を測定することができる。
【0045】
測定対象である液体による圧力受け面と空気圧受け面とがダイヤフラム5によって隔絶され、液体が曝気されることはない。したがって、実施例に係る液圧測定ユニットおよび液面計を船舶のバラストタンクなどに装着しても、バクテリアなどがバラスト水に増殖することを抑制することができる。
【0046】
ダイヤフラム5の、空気圧受け面側に形成されている空気室6の容積はごく小さな容積であっても空気室6にかかる空気圧を測定することにより、測定対象である液体の圧力を測定することができる。また、空気室6に供給する圧縮空気は一時的かつ間欠的に供給すればよく、小型の圧縮空気供給源で足りる。
【0047】
空気室6の空気圧の降下が停止して空気圧が安定したときの空気圧を測定すればよいから、空気圧測定中に空気圧の変動や脈動がなく、高い精度で液圧を測定することができる。