(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918475
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】EGR装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/22 20160101AFI20160428BHJP
【FI】
F02M25/07 580E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-71831(P2011-71831)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-207549(P2012-207549A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩山 悦弘
(72)【発明者】
【氏名】内田 登
(72)【発明者】
【氏名】下川 清広
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/114431(WO,A1)
【文献】
特開平11−200955(JP,A)
【文献】
特開2001−041110(JP,A)
【文献】
特開2008−138638(JP,A)
【文献】
特開平11−117815(JP,A)
【文献】
特開2004−293385(JP,A)
【文献】
特開2006−132470(JP,A)
【文献】
特開2007−092715(JP,A)
【文献】
特表2007−530869(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0149080(US,A1)
【文献】
特開2009−174362(JP,A)
【文献】
特開2010−065601(JP,A)
【文献】
特開2010−071108(JP,A)
【文献】
特表2011−518279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
F02B 47/08−47/10
F02D 13/00−28/00
F02M 26/00−26/74
F01N 3/00−3/02
F01N 3/04−3/38
F01N 9/00
F28F 21/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気側から排気ガスの一部を抜き出してEGRガスとして吸気側へ再循環するEGRパイプと、該EGRパイプの途中に装備された前段水冷式EGRクーラと、該前段水冷式EGRクーラより下流側のEGRパイプに装備された後段水冷式EGRクーラと、該後段水冷式EGRクーラを迂回してEGRガスを流す第一バイパスパイプと、前段水冷式EGRクーラを迂回してEGRガスを流す第二バイパスパイプと、EGRパイプを流れるEGRガスの流れを第一バイパスパイプ及び第二バイパスパイプの夫々に切り替える流路切替手段とを備え、前段水冷式EGRクーラに対しエンジンの冷却水を冷媒として経由せしめ且つ後段水冷式EGRクーラに対し専用の水冷系統から前記エンジンの冷却水より低い温度の冷却水を冷媒として経由せしめるように構成すると共に、前記流路切替手段によりEGRガスを前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方に流したり、何れか一方に流したり、両方を迂回させて流したりすることで、エンジンの運転状態に応じてEGRガスの温度を適宜に変更し得るように構成したことを特徴とするEGR装置。
【請求項2】
流路切替手段が、第一バイパスパイプ及び第二バイパスパイプにおける中途箇所、最上流端の分岐箇所、最下流端の合流箇所の何れかに設けられた開閉式の切替バルブにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のEGR装置。
【請求項3】
流路切替手段が、第一バイパスパイプ及び第二バイパスパイプにおける中途箇所、最上流端の分岐箇所、最下流端の合流箇所の何れかに設けられた開度調整可能な切替バルブにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のEGR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気側から吸気側へ排気ガスの一部をEGRガスとして再循環してNOxの低減化を図るためのEGR装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のエンジンなどでは、排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へと戻し、その吸気側に戻された排気ガスでエンジン内での燃料の燃焼を抑制させて燃焼温度を下げることによりNOx(窒素酸化物)の発生を低減するようにした、いわゆる排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われている。
【0003】
一般的に、この種の排気ガス再循環を行う場合には、排気マニホールドから排気管に亘る排気通路の適宜位置と、吸気管から吸気マニホールドに亘る吸気通路の適宜位置との間をEGRパイプにより接続し、該EGRパイプを通して排気ガスをEGRガスとして再循環するようにしている。
【0004】
尚、エンジンに再循環するEGRガスをEGRパイプの途中で冷却すると、EGRガスの温度が下がり且つその容積が小さくなることにより、エンジンの出力を余り低下させずに燃焼温度を低下して効果的にNOxの発生を低減させることができるため、エンジンにEGRガスを再循環するEGRパイプの途中に水冷式のEGRクーラが装備されている。
【0005】
図6は前述した排気ガス再循環を行うためのEGR装置の一例を示すもので、図中1はディーゼル機関であるエンジンを示し、該エンジン1は、ターボチャージャ2を備えており、エアクリーナ3から導いた吸気4を吸気管5を通し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへ送り、該コンプレッサ2aで加圧された吸気4をインタークーラ6へと送って冷却し、該インタークーラ6から更に吸気マニホールド7へと吸気4を導いてエンジン1の各気筒(
図6では直列6気筒の場合を例示している)に分配するようにしてある。
【0006】
また、このエンジン1の各気筒から排出された排気ガス8を排気マニホールド9を介し前記ターボチャージャ2のタービン2bへ送り、該タービン2bを駆動した排気ガス8を排気管10を介し車外へ排出するようにしてある。
【0007】
そして、排気マニホールド9の一端部と吸気マニホールド7の入口付近の吸気管5との間がEGRパイプ11により接続されており、排気マニホールド9から排気ガス8の一部をEGRガス8’として抜き出して吸気管5に導き得るようにしてある。
【0008】
前記EGRパイプ11には、EGRガス8’の再循環量を適宜に調節し得るよう開度調整可能なEGRバルブ12と、EGRガス8’を冷却するための水冷式EGRクーラ13とが装備されており、該水冷式EGRクーラ13では、冷却水14とEGRガス8’とを熱交換させることによりEGRガス8’の温度を低下し得るようになっている。
【0009】
ここで、前記水冷式EGRクーラ13では、エンジン1の冷却に使用している冷却水14の一部が抜き出されて冷媒として用いられるようになっており、EGRガス8’との熱交換により昇温した冷却水14は、サーモスタットケース15を介しエンジン1の冷却水14を冷却する系統に戻され、該エンジン1を経た冷却水14と共にラジエータ16に送られて外気との熱交換により冷却され、然る後に、サーモスタット17を経由してサーモスタットケース15に戻され、ここからクーラントポンプ18によりエンジン1へ再び送り込まれるようになっている。
【0010】
尚、冷間始動時等における冷却水14の温度が低い時には、サーモスタット17の作動によりエンジン1とラジエータ16との間で冷却水14を循環する水路が閉じ且つエンジン1からの冷却水14をラジエータ16を経由させずにエンジン1に戻す水路が開くことにより、冷却水14をラジエータ16を経由させずに循環させてエンジン1の暖機を優先するようになっている。
【0011】
この種のEGR装置に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−530869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、斯かる従来のEGR装置においては、エンジン1の冷却に使用している冷却水14の一部を抜き出して水冷式EGRクーラ13でのEGRガス8’の冷却に使用しているため、該EGRガス8’の温度をエンジン1の冷却水14より低い温度まで下げることができないという問題があり、将来的に排気ガス規制が益々厳しくなることを考えると、更なるNOx低減を図るためには、EGRガス8’の温度を吸気温度レベルまで低減する必要があると考えられているが、EGRガス8’の過度な冷却は、エンジン1の冷機状態において白煙の排出を招き、暖機後においても、軽負荷運転時に大量のHC,COを排出してしまう問題があった。
【0014】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、白煙やHC,COの排出を招くことなく適切な運転状態でEGRガスの温度をエンジンの冷却水より低い温度まで下げてNOx低減効果の向上を図り得るEGR装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、排気側から排気ガスの一部を抜き出してEGRガスとして吸気側へ再循環するEGRパイプと、該EGRパイプの途中に装備された前段水冷式EGRクーラと、該前段水冷式EGRクーラより下流側のEGRパイプに装備された後段水冷式EGRクーラと、該後段水冷式EGRクーラを迂回してEGRガスを流す第一バイパスパイプと、前段水冷式EGRクーラを迂回してEGRガスを流す第二バイパスパイプと、EGRパイプを流れるEGRガスの流れを第一バイパスパイプ及び第二バイパスパイプの夫々に切り替える流路切替手段とを備え、前段水冷式EGRクーラに対しエンジンの冷却水を冷媒として経由せしめ且つ後段水冷式EGRクーラに対し専用の水冷系統から前記エンジンの冷却水より低い温度の冷却水を冷媒として経由せしめるように構成
すると共に、前記流路切替手段によりEGRガスを前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方に流したり、何れか一方に流したり、両方を迂回させて流したりすることで、エンジンの運転状態に応じてEGRガスの温度を適宜に変更し得るように構成したことを特徴とするEGR装置、に係るものである。
【0016】
而して、流路切替手段によりEGRパイプを流れるEGRガスの流れを前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方に流すように切り替えると、EGRガスが前段水冷式EGRクーラにてエンジンの冷却水を冷媒として先行して冷却された後、下流側の後段水冷式EGRクーラにて専用の水冷系統からの冷却水を冷媒として更に冷却されることになり、排気側から吸気側へ再循環されるEGRガスの温度をエンジンの冷却水より低い温度まで下げることが可能となる。
【0017】
しかも、流路切替手段によりEGRパイプを流れるEGRガスの流れを第一バイパスパイプに切り替えれば、後段水冷式EGRクーラを迂回させてEGRガスを流すことが可能となり、流路切替手段によりEGRパイプを流れるEGRガスの流れを第二バイパスパイプに切り替えれば、前段水冷式EGRクーラを迂回させてEGRガスを流すことが可能となるので、エンジンの運転状態に応じ流路切替手段を切り替えてEGRガスを前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの何れか一方に対して流したり、或いは、前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方を迂回させて流したりすることが可能となる。
【0018】
例えば、エンジンの冷間始動時及び極軽負荷時に、流路切替手段によりEGRガスを前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方を迂回させて流すようにすれば、高温のEGRガスを冷却せずに再循環することでエンジンの暖機が優先されることになり、過度に冷却されたEGRガスにより燃焼性が低下して白煙の排出を招く虞れが回避される。
【0019】
また、エンジンの軽負荷時に、流路切替手段によりEGRガスを後段水冷式EGRクーラを迂回させて前段水冷式EGRクーラだけに流すようにすれば、EGRガスの冷却を前段水冷式EGRクーラの冷却だけに留めて前記EGRガスの温度を過度に冷却しなくて済み、大量のHC,COを排出してしまう虞れが回避される。
【0020】
尚、エンジンの中・高負荷時にあっては、流路切替手段によりEGRパイプを流れるEGRガスの流れを前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方に流し、EGRガスの温度をエンジンの冷却水より低い温度まで下げても、白煙やHC,COの増大を招く虞れがなく、これまで以上のEGRガスの温度低下によりNOxを効果的に低減することが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、第一バイパスパイプ及び第二バイパスパイプにおける中途箇所、最上流端の分岐箇所、最下流端の合流箇所の何れかに設けられた開閉式の切替バルブ、或いは、開度調整可能な切替バルブにより流路切替手段を構成することが可能であり、開閉式の切替バルブを採用すれば、前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方を迂回したり、何れか一方を選択したり、両方に流したりする切り替えを選択的に行うことが可能となり、開度調整可能な切替バルブを採用すれば、同様の切り替えを段階的に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記した本発明のEGR装置によれば、EGRパイプを流れるEGRガスの流れを流路切替手段により切り替え、前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方を迂回させたり、何れか一方を選択させたり、両方を流させたりすることができ、エンジンの運転状態に応じてEGRガスの温度を適宜に変更することができるので、EGRガスの過度な冷却によりエンジンの冷機状態において白煙の排出を招いてしまったり、暖機後において負荷の低い運転状態で大量のHC,COを排出してしまったりすることを確実に防止することができ、しかも、EGRガスの温度をエンジンの冷却水より低い温度まで下げても支障のない暖機後の負荷の高い運転状態では、前段水冷式EGRクーラ及び後段水冷式EGRクーラの両方を使用してEGRガスを二段階で冷却し、EGRガスの温度をエンジンの冷却水より低い温度まで下げることができるので、同じEGR率でEGRガスを再循環しても従来よりNOx低減効果を大幅に向上することができる等種々の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は本発明の第一形態例を示すもので、
図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0026】
図1に示す如く、本形態例のEGR装置においては、排気マニホールド9の一端部と吸気マニホールド7の入口付近の吸気管5との間を接続しているEGRパイプ11の途中に、水冷式EGRクーラ13(前段水冷式EGRクーラ)が従来と同様に装備されていると共に、該水冷式EGRクーラ13より下流側のEGRパイプ11には、別の水冷式EGRクーラ19(後段水冷式EGRクーラ)が新たに装備されている。
【0027】
更に、前記EGRパイプ11には、水冷式EGRクーラ13の出側から水冷式EGRクーラ19を迂回してEGRバルブ12の入側に繋がる第一バイパスパイプ20と、排気マニホールド9の出側から水冷式EGRクーラ13を迂回して水冷式EGRクーラ13と切替バルブ22との間のEGRパイプ11に繋がる第二バイパスパイプ21とが付設されている。
【0028】
また、前記EGRパイプ11に対する第一バイパスパイプ20の最上流端の分岐箇所には、EGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを第一バイパスパイプ20に切り替える流路切替手段としてスリーウェイ方式の切替バルブ22が配設されており、前記第二バイパスパイプ21の中途箇所には、EGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを第二バイパスパイプ21に切り替える流路切替手段としてツーウェイ方式の切替バルブ23が配設されている。
【0029】
ここで、上流側の水冷式EGRクーラ13には、先に
図6で説明したものと同様に、エンジン1の冷却に使用している冷却水14の一部が抜き出されて冷媒として用いられるようになっているが、下流側の水冷式EGRクーラ19には、専用の水冷系統から前記エンジン1の冷却水14より低い温度の冷却水24が冷媒として用いられるようになっており、EGRガス8’との熱交換により昇温した冷却水24は、該冷却水24のための低温用ラジエータ25に送られて外気との熱交換により冷却され、然る後に、低温用サーモスタット26を介し低温用サーモスタットケース27に戻され、ここから低温用クーラントポンプ28により下流側の水冷式EGRクーラ19へ再び送り込まれるようになっている。
【0030】
また、
図1に示している例では、ターボチャージャ2のコンプレッサ2aで加圧されて昇温した吸気4を冷却するためのインタークーラ6を水冷式としており、前記水冷式EGRクーラ19に送り込まれる冷却水24の一部を前記インタークーラ6に振り分けて冷媒として用いるようにしており、該インタークーラ6で吸気4との熱交換により昇温した冷却水24は、前記水冷式EGRクーラ19からの冷却水24と共に前記低温用ラジエータ25に送り込まれるようになっている。
【0031】
尚、冷間始動時等における冷却水24の温度が低い時には、低温用サーモスタット26の作動により低温用ラジエータ25を経由する水路が閉じ且つインタークーラ6からの冷却水24を低温用ラジエータ25を経由させずに低温用サーモスタットケース27に戻す水路が開くことにより、冷却水24を低温用ラジエータ25を経由させずに循環させて吸気4の過冷却を回避(エンジン1の暖機を優先)するようになっている。
【0032】
而して、このようにEGR装置を構成した場合に、切替バルブ22,23によりEGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方に流すように切り替えると、EGRガス8’が上流側の水冷式EGRクーラ13にてエンジン1の冷却水14を冷媒として先行して冷却された後、下流側の水冷式EGRクーラ19にて専用の水冷系統からの冷却水24を冷媒として更に冷却されることになり、排気側から吸気側へ再循環されるEGRガス8’の温度をエンジン1の冷却水14より低い温度まで下げることが可能となる。
【0033】
しかも、切替バルブ22によりEGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを第一バイパスパイプ20に切り替えれば、下流側の水冷式EGRクーラ19を迂回させてEGRガス8’を流すことが可能となり、切替バルブ23によりEGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを第二バイパスパイプ21に切り替えれば、上流側の水冷式EGRクーラ13を迂回させてEGRガス8’を流すことが可能となるので、エンジン1の運転状態に応じ切替バルブ22,23を切り替えてEGRガス8’を水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の何れか一方に対して流したり、或いは、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方を迂回させて流したりすることが可能となる。
【0034】
例えば、エンジン1の冷間始動時及び極軽負荷時(一般車両のアイドリング時、若しくは、ミキサー車等の特装車におけるエンジン動力による補機駆動時等)に、切替バルブ22の下流側の水冷式EGRクーラ19に向かう流路を閉じた上で切替バルブ23を開け、EGRガス8’を第二バイパスパイプ21及び第一バイパスパイプ20を介し水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方を迂回させて流すようにすれば、高温のEGRガス8’を冷却せずに再循環することでエンジン1の暖機が優先されることになり、過度に冷却されたEGRガス8’により燃焼性が低下して白煙の排出を招く虞れが回避される。
【0035】
また、エンジン1の軽負荷時に、切替バルブ22の水冷式EGRクーラ19に向かう流路のみを閉じた上で切替バルブ23を閉じることにより、EGRガス8’を下流側の水冷式EGRクーラ19を迂回させて上流側の水冷式EGRクーラ13だけに流すようにすれば、EGRガス8’の冷却を上流側の水冷式EGRクーラ13の冷却だけに留めて前記EGRガス8’の温度を過度に冷却しなくて済み、大量のHC,COを排出してしまう虞れが回避される。
【0036】
尚、エンジン1の中・高負荷時にあっては、切替バルブ22の第一バイパスパイプ20に向かう流路のみを閉じた上で切替バルブ23を閉じ、EGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方に流し、これによりEGRガス8’の温度をエンジン1の冷却水14より低い温度まで下げても、白煙やHC,COの増大を招く虞れがなく、これまで以上のEGRガス8’の温度低下によりNOxを効果的に低減することが可能となる。
【0037】
また、本形態例のEGR装置においては、切替バルブ22,23がオン・オフ的な開閉式のものであっても良いし、開度調整可能なものであっても良く、開閉式の切替バルブ22,23を採用すれば、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方を迂回したり、何れか一方を選択したり、両方に流したりする切り替えを選択的に行うことが可能となり、開度調整可能な切替バルブ22,23を採用すれば、同様の切り替えを段階的に行うことが可能となる。
【0038】
従って、上記形態例によれば、EGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを切替バルブ22,23により切り替え、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方を迂回させたり、何れか一方を選択させたり、両方を流させたりすることができ、エンジン1の運転状態に応じてEGRガス8’の温度を適宜に変更することができるので、EGRガス8’の過度な冷却によりエンジン1の冷機状態において白煙の排出を招いてしまったり、暖機後において負荷の低い運転状態で大量のHC,COを排出してしまったりすることを確実に防止することができ、しかも、EGRガス8’の温度をエンジン1の冷却水14より低い温度まで下げても支障のない暖機後の負荷の高い運転状態では、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方を使用してEGRガス8’を二段階で冷却し、EGRガス8’の温度をエンジン1の冷却水14より低い温度まで下げることができるので、同じEGR率でEGRガス8’を再循環しても従来よりNOx低減効果を大幅に向上することができる。
【0039】
図2は本発明の第二形態例を示すもので、
図1の第一形態例で第二バイパスパイプ21の中途箇所に配設されていたツーウェイ方式の切替バルブ23を、EGRパイプ11に対する第二バイパスパイプ21の最上流端の分岐箇所にスリーウェイ方式の切替バルブ23として変更すると共に、水冷式EGRクーラ13と切替バルブ22との間のEGRパイプ11に繋がるようになっていた第二バイパスパイプ21の最下流端を、第一バイパスパイプ20の途中に繋がるように変更し、更に、EGRパイプ11に対する第一バイパスパイプ20の最上流端の分岐箇所に配設されていたスリーウェイ方式の切替バルブ22を、EGRパイプ11に対する第一バイパスパイプ20の最下流端の合流箇所にスリーウェイ方式の切替バルブ22として変更したものである。
【0040】
また、
図3は本発明の第三形態例を示すもので、
図2の第二形態例で第一バイパスパイプ20に対する第二バイパスパイプ21の最下流端の合流箇所に配設されていたスリーウェイ方式の切替バルブ23を、EGRパイプ11に対する第二バイパスパイプ21の最上流端の分岐箇所に変更したものである。
【0041】
更に、
図4は本発明の第四形態例を示すもので、
図3の第三形態例でEGRパイプ11に対する第二バイパスパイプ21の最上流端の分岐箇所に配設されていたスリーウェイ方式の切替バルブ23を、EGRパイプ11に対する第二バイパスパイプ21の最下流端の合流箇所に変更したものである。
【0042】
また、
図5は本発明の第五形態例を示すもので、
図4の第四形態例でEGRパイプ11に対する第二バイパスパイプ21の最下流端の合流箇所に配設されていたスリーウェイ方式の切替バルブ23を、第二バイパスパイプ21の中途箇所にツーウェイ方式の切替バルブ23として変更したものである。
【0043】
以上に述べた第二〜第五形態例の何れにおいても、前述した第一形態例の場合と同様に、EGRパイプ11を流れるEGRガス8’の流れを切替バルブ22,23により切り替え、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の両方を迂回させたり、何れか一方を選択させたり、両方を流させたりすることができ、同様の作用効果を奏することができる。
ここで、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の何れか一方を選択する場合につき補足しておくと、第一及び第二形態例では、水冷式EGRクーラ13及び水冷式EGRクーラ19の何れかを択一的に選択できる一方、第三〜第五形態例では、水冷式EGRクーラ13のみを選択することができる。
【0044】
尚、本発明のEGR装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、形態例中に一例として挙げた制御例は、定常運転時の制御手法に関するものであり、過渡運転時では、流路切替手段を吸気温度、排気温度、冷却水温度、吸気酸素濃度等を勘案して別の制御手法を用いても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン
4 吸気
5 吸気管
7 吸気マニホールド
8 排気ガス
8’ EGRガス
9 排気マニホールド
10 排気管
11 EGRパイプ
13 水冷式EGRクーラ(前段水冷式EGRクーラ)
14 冷却水
19 水冷式EGRクーラ(後段水冷式EGRクーラ)
20 第一バイパスパイプ
21 第二バイパスパイプ
22 切替バルブ(流路切替手段)
23 切替バルブ(流路切替手段)
24 冷却水