(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918477
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20060101AFI20160428BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20160428BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
B60L3/00 N
H02J7/00 P
H01M10/48 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-99331(P2011-99331)
(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公開番号】特開2012-120420(P2012-120420A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2014年4月17日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0122440
(32)【優先日】2010年12月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 一
(72)【発明者】
【氏名】成 基 澤
(72)【発明者】
【氏名】金 宇 成
(72)【発明者】
【氏名】黄 道 性
【審査官】
東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭58−038726(JP,B1)
【文献】
特開平09−191505(JP,A)
【文献】
特開2003−219503(JP,A)
【文献】
特開2009−126464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
H02J 7/00
H01M 10/48
G01F 9/00
G01C 21/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電直前の学習燃費計算部(10)と、
現在走行中の累積燃費計算部(20)と、
充電直前の学習燃費の割合と現在走行中の累積燃費間の反映割合とを、バッテリーの充電量(SOC)を基準に相対的に組み合せて、累積燃費を計測する累積燃費計測部(30)と、
累積燃費計測部(30)で計測された累積燃費を、残り走行距離の計算のために出力する累積燃費出力部(40)と、
で構成され、
前記充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の相対的な 反映割合 は、バッテリーの充電量が1%変動するたびに、前記充電直前の学習燃費の反映割合が減少するように、且つゲインの合計が1になるように組み合されることを特徴とする電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置。
【請求項2】
充電直前の学習燃費を計算する段階と、
現在走行中の累積燃費を計算する段階と、
累積燃費の計測のために、バッテリーの充電量を基準に、前記充電直前の学習燃費と前記現在走行中の累積燃費との間の反映割合を組み合わせる段階と、
前記充電直前の学習燃費と前記現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合が組み合わされて計測される前記累積燃費を、残り走行距離の計算のために出力する段階と、を含み,
前記充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合は、バッテリーの充電量が1%変動する度に、前記充電直前の学習燃費の反映割合が減少するように、且つゲインの合計が1になるように組み合されることを特徴とする電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定方法。
【請求項3】
前記充電直前の学習燃費及び前記現在走行中の累積燃費は、1秒間のバッテリーの充電量(SOC)の変化量と、1秒間の実際の移動距離の変化量とを、1秒毎に累積して計算されたものであることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定方法。
【請求項4】
一定の期間、前記充電直前の学習燃費と前記現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合は、バッテリーの充電量(SOC)が1%変動する度に変化することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定方法。
【請求項5】
一定の期間後、現在走行中の累積燃費のみが残り走行距離の計算のために出力されることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定方法。
【請求項6】
前記一定の期間は、走行中のバッテリーの充電量(SOC)が10%消耗するまでであることを特徴とする請求項4又は5に記載の電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置及び方法に係り、より詳細には、電気自動車の残り走行距離の予測において、初期誤差を改善できるようにした電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車において、現在の残りの燃料(ガソリン、ディーゼル、LPG)で走行できる距離を残り走行距離(Distance to empty:DTE)という。
このような残り走行距離は、使用者の便宜のために提供する重要な車両運行情報のうちの一つであって、多くの場合、車両のクラスターなどに含まれたトリップコンピュータ(trip computer)に表示される(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特に、バッテリーに対する充電自由度が低い電気自動車において、残り走行距離の情報は、運転手にとって重要な情報であり、その正確度が重視される項目の一つである。
従って、残り走行距離の情報に対する正確性を向上させるためには、初期予測に発生する予測誤差を改善することが非常に重要である。
【0004】
残り走行距離は、運転手の性向によって大きく変動し、運転手の性向は測定不可であることから、予測に頼るしかない情報である。電気自動車の残り走行距離は、電気量、即ちバッテリーの残存量に大きく関係する。
従って、電気自動車の残り走行距離の正確な予測のために、バッテリーの残存量推定技術が先行しなければならず、その後に正確な残り走行距離の予測方法が要求される。
【0005】
残り走行距離の予測のために、運転手の運転性向を把握する必要があり、そのために累積燃費(ここではkm/SOC)を測定する。この累積燃費による残り走行距離の予測は、累積時間が増えるほどその正確度が向上する。これは、運転手の運転性向をより正確に把握できるからである。
従って、電気自動車の運行初期時においては、残り走行距離に対する予測誤差が大きく発生することになる。一般の車両では公認燃費と直前の学習燃費などの多様な組み合せを通じて予測誤差を容易に修正できるのに対し、電気自動車の場合は、その実例が存在せず、残り走行距離の予測に対する初期誤差が大きいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−137211号公報
【特許文献2】特開平10−155243号公報
【特許文献3】特開2003−219503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、現在のバッテリーの残存容量で走行可能な残り走行距離を予測する電気自動車において、運行開始から終わりまでより正確な残り走行距離の情報を提供できるようにした電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置は、充電直前の学習燃費計算部と、現在走行中の累積燃費計算部と、充電直前の学習燃費の割合と現在走行中の累積燃費間の反映割合とを、バッテリーの充電量(SOC)を基準に相対的に組み合わせて、累積燃費を計測する累積燃費計測部と、累積燃費計測部で計測された累積燃費を残り走行距離の計算のために出力する累積燃費出力部と、で構成され,
充電直前の
学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の相対的な 反映割合 は、バッテリーの充電量が1%変動するたびに、充電直前の累積燃費の反映割合が減少するように、且つゲインの合計が1になるように組み合されることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定方法は、充電直前の学習燃費を計算する段階と、現在走行中の累積燃費を計算する段階と、累積燃費の計測のために、バッテリーの充電量を基準に、充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の反映割合を組み合せる段階と、充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合が組み合されて計測される累積燃費を、残り走行距離の計算のために出力する段階と を含み、
充電直前の
学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合は、バッテリーの充電量が1%変動する度に、充電直前の累積燃費の反映割合が減少するように、且つゲインの合計が1になるように組み合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、次のような効果を奏する。
本発明によれば、走行直前(充電直前)の学習累積燃費と現在走行中のリアルタイムの累積燃費との間の相対的な反映割合を組み合せた累積燃費を残り走行距離の計算に用いることにより、以前の走行パターンと現在の走行パターンとの間の乖離と誤差を最大限に縮めることができる。
このように、電気自動車の残り走行距離の予測において、走行の後半部だけでなく、運転手の性向をリアルタイムに反映させることにより、残り走行距離の予測に対する正確性を向上させることができ、電気自動車の正確な使用可能情報を、初期の走行時から運転手に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置及び方法を説明する制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の望ましい実施例について図面を参照して詳細に説明する。
上述したように、累積燃費を通じて運転手の性向をリアルタイムに学習(把握)し、電気自動車の残り走行距離を予測する本発明において、累積燃費(ここではkm/SOC)がデータが積まれるほど残り走行距離を予測する正確度が向上するが、このような累積燃費の特性上、初期の走行時には、累積燃費に関するデータが十分でなく、残り走行距離の予測に大きな誤差が発生する。
【0013】
これを克服するために、本発明は、バッテリーの充電量(SOC:state of charge)を基準に、初期走行においては、特定の累積SOC使用量と走行距離を用いて累積燃費を計算し、また、その期間中に以前の学習累積燃費と現在走行中のリアルタイムの累積燃費との反映割合を相対的に変化させ、以前の走行パターンと現在の走行パターンとの間の乖離と誤差を最大限に縮めることができるようにしたことを特徴とする。
本発明による電気自動車の残り走行距離適応型初期値設定装置は、
図1に示すとおり、電気自動車の走行直前、即ち、バッテリーの充電直前の学習燃費を計算する充電直前の学習燃費計算部10と、現在走行中の電気自動車の累積燃費を計算する現在走行中の累積燃費計算部20と、充電直前の学習燃費の割合と現在走行中の累積燃費間の組み合せ割合を相対的に変化させながら最終の累積燃費を計測する累積燃費計測部30と、累積燃費計測部で計測された最終の累積燃費を残り走行距離計算のために出力する累積燃費出力部40とを含んで構成される。
【0014】
次に、上記構成に基づいてなされる本発明の電気自動車用残り走行距離適応型初期値設定方法を説明する。
まず、電気自動車の残り走行距離の計算のための累積燃費算出用制御器の充電直前の学習燃費計算部10で充電直前の学習燃費を計算し、それと同時に現在走行中の累積燃費計算部20で現在走行中の累積燃費を計算する。
このとき、上記充電直前の学習燃費及び現在走行中の累積燃費は、同一の方法で計算される。即ち、1秒間のバッテリーの充電量(SOC)の変化量と、1秒間の実際の移動距離の変化量とを1秒毎に累積して計算される。
【0015】
このように、充電直前の学習燃費及び現在走行中の累積燃費が、同一の方法で計算されることにより、同一の値になり得るが、初期の走行時には、充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費とが運転手の運転性向によって変わることがあるので、以前の初期走行時に学習された学習燃費と現在走行中に累積する累積燃費とを相互に組み合せ、以前の初期走行パターンと現在の初期走行パターンとの間の乖離及び誤差を最大限に縮めることができるようにする。
従って、バッテリーの充電量(SOC)を基準に充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の反映割合を相対的に組み合せ、最終的な累積燃費を算出する。
【0016】
一定の期間、望ましくは走行中のバッテリーの充電量(SOC)が10%消耗するまで、充電直前の学習燃費計算部10で計算された充電直前の学習燃費と、現在走行中の累積燃費計算部20で計算された現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合を、累積燃費計測部30で変化させるが、バッテリーの充電量が1%変動する度に変化させ、最終的な累積燃費を算出する。
より詳細には、バッテリーの充電量が1%変動する度に、充電直前の
学習燃費と、現在走行中の累積燃費との間の相対的な反映割合を、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9、0:10などで組み合せ、最終的な累積燃費を算出する。
このように、累積燃費計測部30で算出された最終の累積燃費は、電気自動車の走行初期の残り走行距離の計算のために累積燃費出力部40により出力され、出力された最終の累積燃費は、初期の残り走行距離を計算する通常のロジックに入力され、初期の残り走行距離を正確に計算するのに用いられる。
【0017】
一方、一定の期間後(走行中のバッテリーの充電量(SOC)が10%消耗完了した時点)には、累積燃費データが増えるほどその正確度が向上するので、累積燃費計測部30で充電直前の学習燃費と現在走行中の累積燃費との間の組み合せを行わず、現在走行中の累積燃費のみを累積燃費出力部40に伝達し、結局、累積燃費出力部40で残り走行距離の計算のために現在走行中の累積燃費のみを出力する。
【符号の説明】
【0018】
10 充電直前の学習燃費計算部
20 現在走行中の累積燃費計算部
30 累積燃費計測部
40 累積燃費出力部