(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る薬剤変更通知システムの構成を示した図である。この薬剤変更通知システム100は、医師が診療を行う診療部R1に配置され、医師が診療した患者の状態、経過、所見等を示す診療データや、医師によりオーダ(処方)された薬剤の種類、投与開始日、投与終了日、投与量等を示す薬剤オーダデータの入力を行う複数の診療部端末装置10と、診療部端末装置10により入力された診療データや薬剤オーダデータの登録を行う医療情報管理装置20とを備えている。
【0011】
また、薬剤変更通知システム100は、医師によりオーダされた薬剤を調剤する薬剤部R2に配置され、医療情報管理装置20により登録された薬剤オーダデータに基づいて薬剤の払出し等の調剤状況を示す調剤状況データの入力を行う薬剤部端末装置30と、患者に薬剤が投与される病棟R3に配置され、患者の体温、血圧、心拍等の測定により得られる体温データ、血圧データ、心拍データ等のバイタルデータの入力を行う病棟端末装置40とを備えている。
【0012】
更に、薬剤変更通知システム100は、医師によりオーダされた薬剤の内、オーダ変更が予測される薬剤及びこの薬剤の薬剤部R2へ返却される確率の高さや廃棄される確率の高さを示す変更指数をオーダした医師に通知するための変更薬剤リストを作成する変更予測装置50を備えている。そして、診療部端末装置10、医療情報管理装置20、薬剤部端末装置30、病棟端末装置40及び変更予測装置50の各装置は、LAN等のネットワーク60を介して各データの送受信を行う。
【0013】
診療部端末装置10は、診療データ、薬剤オーダデータ、この薬剤オーダデータに含まれる薬剤の調剤の一時停止等の入力を行う操作部11と、操作部11により入力された診療データや薬剤オーダデータを表示する表示部12とを備えている。そして、操作部11により入力された診療データや薬剤オーダデータを医療情報管理装置20へ送信する。また、操作部11により入力された一時停止薬剤の情報を薬剤部端末装置30へ送信する。
【0014】
また、操作部11からの各医師を識別する医師ID等の入力により、薬剤オーダデータの送信に応じて変更予測装置50から送信される変更薬剤リストを受信する。そして、医師IDで識別される医師によりオーダされた薬剤の変更薬剤リストを表示部12に表示する。
【0015】
医療情報管理装置20は、データベース21を備えている。そして、診療部端末装置10から送信される診療データ及び薬剤オーダデータをデータベース21へ登録する。また、病棟端末装置40から送信されるバイタルデータをデータベース21へ登録する。また、登録した薬剤オーダデータに含まれる薬剤の、調剤を指示するオーダ情報を薬剤部端末装置30へ送信すると共に患者への投与等を指示する指示情報を病棟端末装置40へ送信する。また、登録した薬剤オーダデータやバイタルデータを登録毎に変更予測装置50へ送信する。
【0016】
薬剤部端末装置30は、表示部31及び操作部32を備えている。そして、医療情報管理装置20から送信されたオーダ情報を表示部31に表示する。また、診療部端末装置10から送信された一時停止薬剤の情報を表示部31に表示する。また、表示部31に表示されたオーダ情報を受付けて、操作部32により入力される薬剤部R2でミキシングの必要な薬剤のミキシング予定時刻、払出し予定時刻、払い出し時刻等の調剤状況データを入力毎に病棟端末装置40及び変更予測装置50へ送信する。
【0017】
病棟端末装置40は、表示部41及び操作部42を備えている。そして、医療情報管理装置20から送信された指示情報や薬剤部端末装置30から送信された調剤状況データを表示部41に表示する。また、薬剤部R2から払い出された薬剤の内の病棟R3でミキシングの必要な薬剤のミキシング予定時刻が操作部42により追加入力された調剤状況データを、追加入力毎に変更予測装置50へ送信する。
【0018】
変更予測装置50は、オーダが変更される薬剤を選定するための選定条件及び薬剤のオーダが変更される変更確率等の薬剤情報を薬剤毎に保管する薬剤情報保管部51と、医師によりオーダされた薬剤の内、オーダ変更が予測される薬剤の選定及び選定した薬剤の変更確率を導出する薬剤オーダ変更予測部52と、薬剤オーダ変更予測部52で変更確率が導出された薬剤の薬剤部R2へ返却される確率や廃棄される確率の高さを示す変更指数を算出する変更薬剤リスト作成部53とを備えている。
【0019】
薬剤オーダ変更予測部52は、薬剤情報保管部51に保管された薬剤情報及び登録毎に医療情報管理装置20から送信される薬剤オーダデータやバイタルデータに基づいて、オーダ変更が予測される薬剤を選定する。次いで、選定した薬剤の変更確率を導出する。そして、導出した変更確率を変更薬剤リスト作成部53へ出力する。
【0020】
変更薬剤リスト作成部53は、薬剤オーダ変更予測部52で導出された変更確率、及び薬剤部端末装置30や病棟端末装置40から送信される調剤状況データに基づいて、変更確率が導出された薬剤の内、薬剤部R2から払い出される前のミキシング不要な薬剤、薬剤部R2から払い出される前のミキシングを予定している薬剤、及び薬剤部R2から払い出された後に病棟R3でミキシングを予定している薬剤の変更指数を算出する。そして、医師に通知するための、オーダ変更が予測される薬剤及びこの薬剤の変更指数を含む変更薬剤リストを作成する。
【0021】
ここで、ミキシング不要な薬剤である場合、及びミキシングが必要な薬剤であり、且つ、病棟R3でミキシングが行われる薬剤である場合、薬剤部R2の払出しまでにオーダ変更が間に合わない予め設定された確率(返却確率)に変更確率を乗ずることにより返却発生確率を求め、求めた返却発生確率に予め設定された返却係数を乗ずることにより変更指数を算出する。そして、返却確率は、薬剤変更通知システム100が導入される施設の状況によって異なるために施設毎に設定され、時間との関係により導き出される確率である。また、返却係数は、返却にかかる作業時間に基づいて計算される損失金額である。なお、返却発生確率を変更指数として用いるように実施してもよい。
【0022】
また、ミキシングが必要な薬剤である場合、ミキシングまでにオーダ変更が間に合わない予め設定された確率(廃棄確率)に変更確率を乗ずることにより廃棄発生確率を求め、求めた廃棄発生確率に予め設定された廃棄係数を乗ずることにより変更指数を算出する。そして、廃棄確率は、薬剤変更通知システム100が導入される施設の状況によって異なるために施設毎に且つ薬剤毎に設定され、時間との関係により導き出される確率である。また、廃棄係数は、廃棄にかかる薬剤の損失金額である。なお、廃棄発生確率を変更指数として用いるように実施してもよい。
【0023】
そして、変更予測装置50は、変更薬剤リスト作成部53で作成した変更薬剤リストをこのリストに含まれる薬剤をオーダした医師の医師IDが入力された診療部端末装置10へ送信する。
【0024】
以下、
図1乃至
図9を参照して、薬剤変更通知システム100の動作の一例を説明する。
【0025】
図2は、薬剤変更通知システム100の動作を示したフローチャートである。また、
図3は、薬剤変更通知システム100の各装置間で送受信される各データを示した図である。
【0026】
医師D1により例えば糖尿病であると診断された患者HTの診療データ及び薬剤オーダデータ、医師D2により悪性腫瘍があると診断された患者TTの診療データ及び薬剤オーダデータ、及び医師D3によりインフルエンザであると診断された患者IOの診療データ及び薬剤オーダデータの入力が各診療部端末装置10の操作部11から行われると、薬剤変更通知システム100は、動作を開始する(
図2のステップS1)。
【0027】
各診療部端末装置10は、例えば2011年7月12日に、操作部11により入力された各患者HT,TT,IOの診療データ及び薬剤オーダデータを医療情報管理装置20へ送信する。医療情報管理装置20は、診療部端末装置10から送信された診療データ及び薬剤オーダデータをデータベース21へ登録する(
図2のステップS2)。
【0028】
図4は、データベース21に登録された各患者HT,TT,IOの薬剤オーダデータの一例を示した図である。このデータベース21に、患者HTの薬剤オーダデータ80、患者TTの薬剤オーダデータ81及び患者IOの薬剤オーダデータ82等が登録されている。
【0029】
薬剤オーダデータ80は、患者HTの血糖値を下げるために1回目にオーダされた薬剤のデータであり、患者HTを識別する患者IDである「101」、この患者IDの患者名である「HT」、この患者HTにオーダされた薬剤名である「インスリン」、この薬剤の投与の開始日である「2011/07/05」及び終了日である「2011/07/07」等により構成される。また、1回目にオーダされた薬剤の例えば投与量を変更するために2回目にオーダされた薬剤のデータであり、「101」、「HT」、「インスリン」、開始日である「2011/07/08」及び終了日である「2011/07/10」等により構成される。更に、2回目にオーダされた薬剤の投与量を変更するために3回目にオーダされた薬剤のデータであり、「101」、「HT」、「インスリン」、開始日である「2011/07/11」等により構成される。そして、「2011/07/11」に対する終了日が登録されていないことから、3回目のオーダによる投与が継続していることを示している。
【0030】
薬剤オーダデータ81は、患者TTの腫瘍の増殖を抑制するために1回目にオーダされた薬剤のデータであり、患者TTを識別する患者IDである「102」、この患者IDの患者名である「TT」、この患者TTにオーダされた薬剤名である「抗がん剤A」、この薬剤の投与の開始日である「2011/06/14」等により構成される。そして、終了日が登録されていないことから、1回目のオーダによる投与が継続していることを示している。
【0031】
薬剤オーダデータ82は、患者IOのインフルエンザウィルスの増殖を抑制するために1回目にオーダされた薬剤のデータであり、患者IOを識別する患者IDである「103」、この患者IDの患者名である「IO」、この患者IOにオーダされた薬剤名である「オセルタミビル」、この薬剤の投与の開始日である「2011/07/07」等により構成される。そして、終了日が登録されていないことから、1回目のオーダによる投与が継続していることを示している。
【0032】
医療情報管理装置20は、データベース21へ登録した各薬剤オーダデータ80,81,82を変更予測装置50へ送信する。また、薬剤部端末装置30へオーダ情報を送信すると共に病棟端末装置40へ指示情報を送信する。
【0033】
薬剤部端末装置30は、医療情報管理装置20から送信されたオーダ情報を表示部31に表示する。そして、表示部31に表示されたオーダ情報を受付けて、操作部32から調剤状況データの入力が行われると、表示部31に調剤状況データを表示する(
図2のステップS3)。
【0034】
図5は、表示部31に表示された調剤状況データの一例を示した図である。この調剤状況データ83は、オーダを患者毎に識別するオーダIDである「1001」と、このオーダIDに該当する患者名である「HT」と、医師D1によりオーダされた薬剤名である「インスリン」とにより構成される。また、オーダされた薬剤の薬剤部R2における調剤の状況として準備中であることを示す「準備中」と、オーダされた薬剤のミキシングが病棟R3で行われるため、薬剤部R2でミキシングを行わないことを示す「ミキシングの予定なし」と、オーダされた薬剤の払出し予定時刻である「15:00」とにより構成される。
【0035】
また、調剤状況データ83は、オーダIDである「1002」と、このオーダIDに該当する患者名である「TT」と、医師D2によりオーダされた薬剤名である「抗がん剤A」とにより構成される。また、オーダされた薬剤の薬剤部R2における調剤の状況である「準備中」と、オーダされた薬剤の薬剤部R2でミキシングが行われる予定時刻である「15:20」と、オーダされた薬剤の払出し予定時刻である「15:40」とにより構成される。
【0036】
更に、調剤状況データ83は、オーダIDである「1003」と、このオーダIDに該当する患者名である「IO」と、医師D3によりオーダされた薬剤名である「オセルタミビル」とにより構成される。また、オーダされた薬剤の薬剤部R2における調剤の状況である「準備中」と、ミキシング不要な薬剤であることを示す「ミキシングなし」と、オーダされた薬剤の払出し予定時刻である「16:20」とにより構成される。
【0037】
ここでは、オーダIDである「1001」、「1002」及び「1003」に対して、オーダされた薬剤の払出しを薬剤部R2で終了していないため、払出し時刻は表示されていない。
【0038】
薬剤部端末装置30は、操作部32により入力された調剤状況データ83を病棟端末装置40及び変更予測装置50へ送信する。なお、操作部32からの入力により調剤状況データ83が更新されると、入力毎に更新した調剤状況データを変更予測装置50へ送信する。
【0039】
病棟端末装置40は、医療情報管理装置20から送信された指示情報を表示部41に表示する。そして、患者IOの指示情報に含まれている例えば検温に基づいて看護師が患者IOの体温を測定し、その体温データの入力操作を行う。病棟端末装置40は、操作部42により入力された体温データを、医療情報管理装置20へ送信する。医療情報管理装置20は病棟端末装置40から送信された体温データをデータベース21に登録し、登録した患者IOの体温データを変更予測装置50へ送信する。
【0040】
なお、病棟端末装置40から入力された体温データ等のバイタルデータを医療情報管理装置20へ送信すると共に変更予測装置50へ送信するように実施してもよい。これにより、より迅速に変更予測装置50へ送信することが可能となり、変更予測装置50で患者IOの症状に応じて迅速に変更薬剤リストを作成することができる。
【0041】
また、病棟端末装置40は、薬剤部端末装置30から送信された調剤状況データ83を表示部31に表示する。そして、調剤状況データ83に病棟R3でミキシングを行う薬剤である「インスリン」が含まれていることから、病棟R3のミキシング予定時刻を調剤状況データ83へ追加する入力操作が操作部42から行われると、
図6に示すように、ミキシング予定時刻である「15:30」が追加入力された調剤状況データ83aを変更予約装置50へ送信する。
【0042】
変更予測装置50の薬剤情報保管部51は、医療情報管理装置20から送信された各薬剤オーダデータ80,81,82に含まれる薬剤名の薬剤情報を薬剤オーダ変更予測部52へ出力する。
【0043】
図7は、各薬剤オーダデータ80,81,82に含まれる薬剤名の薬剤情報の一例を示した図である。この薬剤情報84は、薬剤名である「インスリン」と、この薬剤のオーダを見直すパラメータである「血糖値」と、「血糖値」の正常値範囲である「70〜130mg/dL」と、「血糖値」が正常値範囲から外れている場合に変更候補となる選定条件である「オーダを2回以上連続で且つ同周期で変更」と、この選定条件で選定された場合の予め設定された変更確率である「3回目:80% 4回目:75% 5回目以降:70%」とにより構成される。そして、糖尿病では、薬剤の投与を開始してから定期的に血糖の検査を行い、その血糖値により薬剤の投与量を調整して治療が行われる。この治療方法に基づいて選定条件が定められている。また、変更確率は、例えば多数の患者に対してオーダが選定条件で変更された割合を統計的に求めた確率である。
【0044】
また、薬剤情報84は、薬剤名である「抗がん剤A」と、この薬剤が変更候補となる選定条件である「同じオーダで4週間継続」と、この選定条件で選定された場合の予め設定された変更確率である「75%」とにより構成される。そして、「抗がん剤A」による治療では、4週間を1クールとして行われる。この治療方法に基づいて選定条件が定められている。
【0045】
更に、薬剤情報84は、薬剤名である「オセルタミビル」と、この薬剤の副作用としてのパラメータである「体温」と、この「体温」の正常値範囲である「36〜37℃」と、副作用パラメータが正常値範囲よりも低い場合に変更候補となる選定条件である「低体温(36℃未満)」と、この選定条件で選定された場合の予め設定された式Y1又は式Y2で示される変更確率である「X1(34.5℃〜35.4℃):Y1=−28.5X1+1040.4 X2(33.5℃〜34.4℃):Y2=−14.3X2+557.6」とにより構成される。そして、インフルエンザでは、「オセルタミビル」を投与したときの副作用として低体温の症状を呈したときにオーダを変更する。この症状に基づいて選定条件が定められている。また、変更確率は、低体温により「オセルタミビル」からインフルエンザ治療薬であるザナミビルに変更されるオーダの内、変更されたときの体温とこの体温で変更されたオーダ数のパレート図を作成して求めたものである。
【0046】
薬剤オーダ変更予測部52は、薬剤情報保管部51から出力される薬剤情報84及び医療情報管理装置20から送信される各薬剤オーダデータ80,81,82や体温データに基づいて、オーダ変更が予測される薬剤を選定する。次いで、選定した薬剤の変更確率を導出する(
図2のステップS4)。
【0047】
ここでは、患者HTに投与されている「インスリン」がオーダ変更の候補となりうるか否かを調べる。薬剤オーダデータ80によれば、1回目のオーダにより「2011/07/05」から「2011/07/07」までの3日間投与した次の日に投与量を変更し、2回目のオーダにより「2011/07/08」から「2011/07/10」までの3日間投与した次の日に投与量を変更して3回目のオーダによる投与を継続している。
【0048】
従って、3回目のオーダによる投与の開始日である2011年7月11日から2日経過した2011年7月12日に薬剤情報84の選定条件に適合してオーダの変更候補となる。そして、今日が2011年7月12日であることから、薬剤情報84より80%の変更確率を導出して変更薬剤リスト作成部53に出力する。
【0049】
また、薬剤オーダ変更予測部52は、患者TTに投与されている「抗がん剤A」が変更候補となりうるか否かを調べる。薬剤オーダデータ81によれば、1回目のオーダにより「2011/06/14」に開始した投与を継続している。従って、2011年6月14日から、薬剤情報84の選定条件である4週間後の2011年7月12日に変更候補となる。そして、今日が2011年7月12日であることから、薬剤情報84より75%の変更確率を導出して変更薬剤リスト作成部53に出力する。
【0050】
更に、薬剤オーダ変更予測部52は、患者IOに投与されている「オセルタミビル」が変更候補となりうるか否かを調べる。そして、患者IOの体温データが35.5℃以上である場合に変更候補外となり、35.4℃以下である場合に薬剤情報84の選定条件である低体温に適合するため体温を測定した日に変更候補となる。
【0051】
従って、医療情報管理装置20から受信した患者IOの体温データが例えば34.0℃とすると、薬剤情報84の選定条件に適合してオーダの変更候補となる。そして、薬剤情報84より71.4%の変更確率を導出して変更薬剤リスト作成部53に出力する。
【0052】
なお、体温データが34.0℃である場合、薬剤情報84の「Y2=(−14.3)X2+557.6」のX2の項に34.0を代入してY2を求めることにより71.4%の変更確率を導出する。
【0053】
このように、薬剤情報保管部51に保管された薬剤情報及び登録毎に医療情報管理装置20から送信される薬剤オーダデータやバイタルデータに基づいて、オーダされた薬剤の内、オーダ変更が予測される薬剤の選定及び選定した薬剤の変更確率を導出することができる。
【0054】
変更薬剤リスト作成部53は、病棟端末装置40から送信された調剤状況データ83a及び薬剤オーダ変更予測部52で導出された変更確率に基づいて、変更確率が導出された薬剤の内、薬剤部R2から払い出される前のミキシング不要な薬剤、薬剤部R2から払い出される前のミキシングを予定している薬剤、及び薬剤部R2から払い出された後に病棟R3でミキシングを予定している薬剤の変更指数を算出する(
図2のステップS5)。
【0055】
ここで、調剤状況データ83aにおけるオーダID「1001」の「インスリン」に基づく変更指数の計算例を説明する。この薬剤はオーダされた後にミキシングを必要とし、病棟R3でミキシングが行われる。そして、現在時刻が例えば14時55分である場合、調剤状況データ83aに含まれる薬剤部R2の払出し予定時刻「15:00」の5分前となり、5分前の返却確率は例えば予め設定された50%である。また、現在時刻が14時57分である場合、払出し予定時刻「15:00」の3分前となり、3分前の返却確率は予め設定された95%である。
【0056】
従って、現在時刻が14時55分である場合には50%に薬剤オーダ変更予測部52で導出された変更確率である80%を乗ずることにより返却発生確率を求め、現在時刻が14時57分である場合には95%に80%を乗ずることにより返却発生確率を求める。そして、求めた返却発生確率に返却係数を乗ずることにより変更指数を算出する。これにより、オーダ変更の確率及び/又は返却の確率が高いほど変更指数が高くなることが分かる。
【0057】
なお、
図8に示すように、調剤状況データ83bにおけるオーダID「1001」の「インスリン」が薬剤部R2で15時00分に払い出され、現在時刻が払い出された5分後の15時5分であり、病棟R3のミキシシング予定時刻が15時30分である場合、ミキシング予定時刻の25分前の予め設定された廃棄確率に薬剤オーダ変更予測部52で導出された変更確率である80%を乗ずることにより廃棄発生確率を求める。次いで、求めた廃棄発生確率に廃棄係数を乗ずることにより変更指数を算出する。これにより、オーダ変更の確率及び/又は廃棄の確率が高いほど変更指数が高くなることが分かる。
【0058】
変更薬剤リスト作成部53は、薬剤及び変更指数を含む変更薬剤リストを作成する(
図2のステップS6)。
【0059】
図9は、変更薬剤リストの一例を示した図である。この変更薬剤リスト85は、薬剤オーダデータ80及び調剤状況データ83aに基づいて例えば14時55分に作成されたリストであり、変更薬剤リスト851乃至853により構成される。
【0060】
変更薬剤リスト851は、患者IDである「101」、この患者IDの患者名である「HT」、この患者HTにオーダされた薬剤名である「インスリン」及びこの薬剤の薬剤部R2における払出し予定時刻である「15:00」、病棟R3のミキシング予定時刻である「15:30」により構成される。また、払出し予定時刻の5分前の返却確率に変更確率を乗ずることにより返却発生確率を求め、求めた返却発生確率に返却係数を乗ずることにより算出された変更指数である「60」により構成される。また、「インスリン」の投与量を変更することが予測される理由を示す文言である例えば「インスリン投与量調整中」により構成される。
【0061】
変更薬剤リスト852は、患者IDである「102」、この患者IDの患者名である「TT」、この患者TTにオーダされた薬剤名である「抗がん剤A」により構成される。また、薬剤部R2におけるミキシング予定時刻の25分前の廃棄確率に変更確率を乗ずることにより廃棄発生確率を求め、求めた廃棄発生確率に廃棄係数を乗ずることにより算出された変更指数である「78」により構成される。また、「抗がん剤A」のオーダを見直すことが予測される理由を示す文言である「抗がん剤治療4週間経過」により構成される。
【0062】
変更薬剤リスト853は、患者IDである「103」、この患者IDの患者名である「IO」、この患者IOにオーダされた薬剤の名称である「オセルタミビル」により構成される。また、払出し予定時刻の15分前の返却確率に変更確率を乗ずることにより返却発生確率を求め、求めた返却発生確率に返却係数を乗ずることにより算出された変更指数である「55」により構成される。また、「オセルタミビル」のオーダを見直すことが予測される理由を示す文言である「低体温 副作用の恐れ」により構成される。
【0063】
このように、医師D1によりオーダされた後にオーダ変更が予測される薬剤部R2から払い出される前の病棟R3でミキシングを予定している薬剤及び変更指数を含む変更薬剤リスト851を作成することができる。また、医師D2によりオーダされた後にオーダ変更が予測され、薬剤部R2から払い出される前のミキシングを予定している薬剤及び変更指数を含む変更薬剤リスト852を作成することができる。更に、医師D3によりオーダされた後にオーダ変更が予測され、薬剤部R2から払い出される前のミキシング不要な薬剤及び変更指数を含む変更薬剤リスト853を作成することができる。
【0064】
なお、
図8に示すように、調剤状況データ83bにおけるオーダID「1001」の「インスリン」が薬剤部R2で15時00分に払い出され、現在時刻が払い出された5分後の15時5分であり、病棟R3のミキシシング予定時刻が15時30分である場合、医師D1によりオーダされた後にオーダ変更が予測され、薬剤部R2から払い出された後の病棟R3でミキシングを予定している薬剤及び変更指数を含む変更薬剤リストを作成することができる。
【0065】
変更予測装置50は、変更薬剤リスト作成部53で作成した変更薬剤リスト851を、その薬剤をオーダした医師D1の医師IDが入力された診療部端末装置10へ送信する。また、変更薬剤リスト852を、その薬剤をオーダした医師D2の医師IDが入力された診療部端末装置10へ送信する。また、変更薬剤リスト853を、その薬剤をオーダした医師D3の医師IDが入力された診療部端末装置10へ送信する。
【0066】
診療部端末装置10は、変更予測装置50から送信され、操作部11から入力された医師IDで識別される医師D1によりオーダされた薬剤の変更薬剤リスト851を表示部12に表示し、また操作部11から入力された医師IDで識別される医師D2によりオーダされた薬剤の変更薬剤リスト852を表示部12に表示し、更に操作部11から入力された医師IDで識別される医師D3によりオーダされた薬剤の変更薬剤リスト853を表示部12に表示する(
図2のステップS6)。
【0067】
このように、表示部12に変更薬剤リスト851を表示することにより、オーダ変更が予測される薬剤部R2から払い出される前の病棟R3でミキシングを予定している薬剤及び変更指数を医師D1に通知することができる。また、表示部12に変更薬剤リスト852を表示することにより、オーダ変更が予測される薬剤部R2でミキシングが行われる前薬剤及び変更指数を医師D2に通知することができる。更に、表示部12に変更薬剤リスト853を表示することにより、オーダ変更が予測される薬剤部R2から払い出される前のミキシング不要な薬剤及び変更指数を医師D3に通知することができる。
【0068】
なお、例えば医師D1によりオーダされた薬剤が複数あり、変更薬剤リストに複数の薬剤が含まれている場合、変更指数の高い薬剤から順に医師が認識しやすい例えば表示部12の画面上段に配列表示する。これにより、オーダ変更の確率及び/又は返却の確率、又はオーダ変更の確率及び/又は廃棄の確率が高い薬剤を容易に認識することができる。
【0069】
ここで、表示部12に表示された変更薬剤リスト851を見た医師D1により、オーダした薬剤の調剤を一時停止するために、操作部11から一時停止する薬剤の入力操作が行われると、診療部端末装置10は入力された一時停止薬剤の情報を薬剤部端末装置30へ送信する。薬剤部端末装置30は、診療部端末装置10から送信された一時停止薬剤の情報を表示部31に表示する。表示部31に表示された一時停止薬剤の情報に基づいて、薬剤部R2では、患者HTにオーダされた薬剤の払出しを停止する。
【0070】
このように、表示部12に変更薬剤リスト851を表示して医師D1に通知することにより、オーダ変更が予測される薬剤の薬剤部R2からの払出しを未然に防ぐことができるため、薬剤部R2へ薬剤を返却する処理作業を低減することができる。これにより、薬剤のオーダ変更により発生する無駄を低減することができる。
【0071】
また、表示部12に表示された変更薬剤リスト852を見た医師D2により、患者TTにオーダした薬剤の調剤を一時停止するために、操作部11から一時停止する薬剤の入力操作が行われると、診療部端末装置10は入力された一時停止薬剤の情報を薬剤部端末装置30へ送信する。薬剤部端末装置30は、診療部端末装置10から送信された一時停止薬剤の情報を表示部31に表示する。表示部31に表示された一時停止薬剤の情報に基づいて、薬剤部R2では、患者TTにオーダされた薬剤のミキシング及び払出しを停止する。
【0072】
このように、表示部12に変更薬剤リスト852を表示して医師D2に通知することにより、オーダ変更が予測される薬剤のミキシングを未然に防ぐことができるため、ミキシングした薬剤の廃棄を低減することができる。これにより、薬剤のオーダ変更により発生する無駄を低減することができる。
【0073】
更に、表示部12に表示された変更薬剤リスト853を見た医師D3により、患者IOの詳細なデータを取得するために、表示部12に表示された変更薬剤リスト853を指定する操作が操作部11から行われると、患者IOの診療データ、体温データ及び薬剤オーダデータ80を表示部12に表示する。
【0074】
ここでは、現在の体温データが正常値範囲よりも低い低体温の症状であり、その低体温が薬剤情報84の選定条件に適合しているため、データベース21に登録された患者IOの体温データの時系列的変化を示すグラフ、副作用の恐れのある薬剤の薬歴及び診療データと共にアラートアイコンを表示部12に表示する。そして、操作部11からアラートアイコンを指定する操作により、例えば「低体温です。オセルタミビルの副作用の恐れがあります。まもなく、薬剤部から払い出されます。薬剤を見直しますか?」等のメッセージを表示部12に重畳表示する。
【0075】
そして、操作部11から調剤を一時停止する薬剤の入力操作が行われると、診療部端末装置10は入力された一時停止薬剤の情報を薬剤部端末装置30へ送信する。薬剤部端末装置30は、診療部端末装置10から送信された一時停止薬剤の情報を表示部31に表示する。表示部31に表示された一時停止薬剤の情報に基づいて、薬剤部R2では患者IOにオーダされた薬剤の払出しを停止する。
【0076】
このように、表示部12に各変更薬剤リスト853を表示して医師D3に通知することにより、オーダ変更が予測される薬剤の薬剤部R2からの払出しを未然に防ぐことができるため、薬剤部R2へ薬剤を返却する処理作業を低減することができる。これにより、薬剤のオーダ変更により発生する無駄を低減することができる。
【0077】
各医師D1,D2,D3によりオーダされた薬剤が各患者HT,TT,IOへ投与され、診療部端末装置10、薬剤部端末装置30及び病棟端末装置40からの入力が終了すると、薬剤変更通知システム100は動作を終了する(
図2のステップS8)。
【0078】
以上述べた実施形態によれば、薬剤情報保管部51に保管された薬剤情報及び登録毎に医療情報管理装置20から送信される薬剤オーダデータやバイタルデータに基づいて、各医師D1,D2,D3によりオーダされた薬剤の内、オーダ変更が予測される薬剤の選定及び選定した薬剤の変更確率の導出を行うことができる。次いで、導出した変更確率及び病棟端末装置40から送信される調剤状況データ83aに基づいて、各医師D1,D2,D3によりオーダされた後にオーダ変更が予測される薬剤の内、薬剤部R2から払い出される前のミキシング不要な薬剤、薬剤部R2から払い出される前のミキシングを予定している薬剤、及び薬剤部R2から払い出された後に病棟R3でミキシングを予定している薬剤並びに変更指数を含む各変更薬剤リスト851,852,853を作成することができる。
【0079】
そして、表示部12に変更薬剤リスト851を表示することにより、オーダの変更が予測される薬剤部R2から払い出される前の病棟R3でミキシングを予定している薬剤、及び変更指数を医師D1に通知することができる。そして、医師D1に通知することにより、オーダ変更が行われる前の薬剤の薬剤部R2からの払出しを未然に防ぐことができるため、薬剤部R2へ薬剤を返却する処理作業を低減することができる。これにより、薬剤のオーダ変更により発生する無駄を低減することができる。
【0080】
また、表示部12に変更薬剤リスト852を表示することにより、オーダ変更が予測される薬剤部R2でミキシングが行われる前の薬剤及び変更指数を医師D2に通知することができる。そして、医師D2に通知することにより、オーダ変更が予測される薬剤のミキシングを未然に防ぐことができるため、ミキシングした薬剤の廃棄を低減することができる。これにより、薬剤のオーダ変更により発生する無駄を低減することができる。
【0081】
更に、表示部12に変更薬剤リスト853を表示することにより、オーダ変更が予測される薬剤部R2から払い出される前のミキシング不要な薬剤を医師D3に通知することができる。そして、医師D3に通知することにより、オーダ変更が予測される薬剤の薬剤部R2からの払出しを未然に防ぐことができるため、薬剤部R2へ薬剤を返却する処理作業を低減することができる。これにより、薬剤のオーダ変更により発生する無駄を低減することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。