(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
図1に従って本発明に係わるシート処理装置Bと、これを内蔵した後処理装置Cと、このシート後処理装置Bを含む画像形成システムAについて説明する。
図1(a)はコンピュータネットワークを示している。ネットワークNにはパーソナルコンピュータなどの入力端末N1と、プリンタなどの出力端末N2が連結されている。入力端末N1としてはコンピュータ、スキャナー装置、通信機器などが、出力端末N2としてはプリンタ装置、ファクシミリ装置などが用いられる。
【0024】
本発明のシート後処理装置は、画像形成装置Aに接続された後処理装置Cに採用される場合と、画像形成されたシートを収納するスタック装置に採用される場合がある。この他、本発明のシート処理装置は、順次送られてくるシートをトレイ上の所定位置に位置決めする機構として後処理装置、スタック装置に限らず広くシート取扱い装置に採用可能である。
【0025】
図1(b)は画像形成装置Aに内蔵された胴内フィニッシャ構成の後処理装置Cを示す。画像形成ユニットと画像読取ユニットの間に設けられた排紙エリアに後処理装置Cが内蔵されている。同図(c)は画像形成ユニットAに連設された後処理装置Cのレイアウト構成を示し、画像形成装置Aの排紙口に後処理装置Cの搬入口が連結されている。以下、画像形成装置A、後処理装置Cの順に説明する。
【0026】
[画像形成装置A]
図2に示す画像形成装置Aについて説明する。画像形成装置Aはハウジング1に、給紙部2と、画像形成部3と、排紙部4と、画像読取部5とを、内蔵している。ハウジング1はフロア据付タイプ、テスクトップタイプなど適宜形状の外装ケーシングで構成されている。
【0027】
給紙部2は、異なったサイズのシートを収納する複数の給紙カセット2a、2b、2c(以下カセット2aで総称する)と、汎用されるシートを大量に収納する大容量カセット2dと、手差し給紙トレイ2eで構成されている。給紙カセット2aの構造は特に特定する必要はないが、各カセットには紙載台と、紙載台上のシートを繰出す給紙ローラ2xと、シートを一枚に分離する分離手段(分離爪、リタード部材など)が内蔵されている。各カセット2aはハウジング1に引出し状に着脱可能に装着されている。
【0028】
また大容量給紙カセット2dは、大量に消費されるシートを収納する給紙ユニットであり、ハウジング1に内蔵される構造と、ハウジング1の外部に付設されるオプション構造が採用される。上記手差し給紙トレイ2eは、カセットに収納する必要のないシート、若しくはカセットに収納することができないシート、例えば厚紙シート、特殊コーティングシートなどを後述する画像形成部3の画像形成タイミングに合わせて供給する。
【0029】
なお、本発明にあって給紙カセット2aの数、大容量カセット2dの要否、手差し給紙機構2eの要否は、少なくとも異なる二つ以上の給紙機構を備えれば良い、その給紙機構は例えば第1給紙カセット2aと第2給紙カセット2bの組合せ、1つの給紙カセット2aと大容量給紙カセット2dの組合せで構成する。
【0030】
上述の給紙部2の下流側には給紙経路6が設けられ、各カセット2aから供給されたシートを下流側の画像形成部3に給送する。このため給紙経路6にはシートを搬送する搬送機構(搬送ローラなど)と、画像形成部3の直前にレジストローラ機構7が設けられている。レジストローラ機構7は互いに圧接した1対のローラ対で構成され、停止状態のローラにシート先端を突き当ててループ状に湾曲させることによってシートの先端揃え(スキュ修正)を行う。
【0031】
このようなレジスト修正機構はよく知られた構造であり、比較的簡単な機構でシートのスキュを修正することができる。このレジスト機構で修正できないシートのスキュ或いは横レジは、その未修正状態で画像形成部に送られる。このシートのスキュと横レジについて説明する。「シートスキュ」はシートが搬送方向に対し所定角度傾斜して送られる現象であり、スキュ状態となったシートは搬送経路に沿って斜行し、画像形成、後処理位置などに送られる。「横レジ」は、カセットからシートを繰り出す際に給紙ローラが左右何れかに偏っているとシートはスキュして繰り出されるが、このシート側縁が搬送ガイドなどで規制されるとシートは左右何れかに偏った位置に幅寄せされる。そしてこのシートは左右何れかに偏った姿勢で下流側に送られる。
【0032】
なおこのシートのスキュと横レジはいずれもシートが正しい姿勢から位置ズレした状態で送られる。本発明ではシート姿勢が曲がっているか否かに拘わらず搬送直交方向に位置ズレしている状態を「横レジ」と定義する。
【0033】
図2に示すように給紙経路6には、その経路端部にレジストローラ7が配置され、経路ガイドにはシートをループ状に湾曲させるレジストエリアが形成されている。従って複数の給紙カセットから送られたシートはレジストローラ7で先端揃えされ、その位置で画像形成のタイミングを待つように待機する。
【0034】
画像形成部3は、インクジェット印刷機構、オフセット印刷機構、インクリボン印刷機構などの画像形成機構が採用可能である。図示のものは静電式画像形成機構を示している。感光ドラム8の周囲に印字ヘッド9(レーザー発光器)と現像器10が配置してありドラム表面にレーザヘッドで潜画像を形成し、現像器10でトナー画像を形成する。これと共にレジストローラ7で待機しているシートをドラム周面に向けて送り、チャージャー11でトナー画像をシート上に転写する。そして定着器12で定着し排紙部4に送る。
【0035】
排紙部4は、画像形成部3で画像形成されたシートをハウジング1に形成された排紙口13に案内する排紙経路15で構成されている。これと共に排紙部4にはデュープレックス経路14が設けられ、表面に画像形成したシートを表裏反転して再びレジストローラ7に案内し、画像形成部3でシート裏面に画像を形成した後に排紙経路15から排紙口13に案内する。このデュープレックス経路14は、画像形成部3から送られたシートの搬送方向を反転するスイッチバックパス(図示のものは排紙経路15と後処理装置Cのシート移送経路26で構成している)とシートを表裏反転するUターンパスを有するデュープレックス経路14が配置されている。
【0036】
図2に示す画像読取部5は、読取プラテン16と、このプラテンに沿って往復動する読取キャリッジ17と、光電変換手段18で構成されている。キャリッジ17には光源ランプ(不図示)が内蔵されプラテン16にセットされたシート原稿に読取光を照射する。原稿からの反射光は集光レンズを介して光電変換素子18上に集光される。このような構成でプラテン上にセットした原稿をキャリッジ17で走査して光電変換素子18で電気信号に変換する。この電気信号は、画像データとして画像形成部3のデータ処理部に送られる。
【0037】
なお、図示19は原稿送り装置である。給紙トレイ20にセットした原稿を1枚ずつ分離して読取プラテン16に案内する。このプラテン16で画像読取されたシート原稿は排紙トレイ21に収納される。
【0038】
[後処理装置]
上述の画像形成装置Aには排紙口13に連なるように後処理装置Cが連設されている。この後処理装置Cについて説明する。後処理装置Cは
図3に示すように、ケーシング24と、後述のケーシングに設けられた搬入口25を有するシート移送経路26と、この経路26から送られたシートを後処理のために一時的に収容する処理トレイ27と、このトレイに配置された後処理手段28と、後処理されたシートを収納するスタックトレイ29で構成されている。
【0039】
シート移送経路26はケーシング24に水平方向に配置された略直線経路で構成され、排紙口30を備えている。搬入口25は画像形成装置Aの排紙口13に連なる位置に配置され、排紙口30は処理トレイ27の上方に段差を形成して配置されている。処理トレイ27は、下流側に配置されたスタックトレイ29との間でシートをブリッジ支持するように配置されている。シート先端側をスタックトレイ29で支持し、シート後端側を処理トレイ27で支持する。
【0040】
このスタックトレイ29は昇降トレイで構成され、図示しない昇降機構によって積載された最上シートが処理トレイ27上に支持されるシートとほぼ同一平面となるように高さ調節可能に構成されている。
【0041】
シート移送経路26には送られるシートにファイル穴を穿孔するパンチユニット28pが配置されている。シート移送経路26にはシートを搬入口25から排紙口30に向けて搬送する搬送ローラと、排紙口30には排紙ローラ31bが配置されている。また搬入口25の近傍にはシートセンサ(入口センサ)Se1が排紙口30近傍にはシートセンサ(排紙センサ)Se2が配置されている。
【0042】
排紙口30と処理トレイ27との間には段差が形成され、排紙口30からシート先端をトレイ上の最上シートの上に送り、シート後端を排紙口から落下させて集積するようになっている。この処理トレイ27にはシートを所定位置に位置決めする規制ストッパ32と、このストッパにシートを送る反転ローラ33と、整合回転体34が配置されている。
【0043】
図示の後処理手段28は、トレイ上に集積されたシート(束)を綴じ処理するステープル装置で構成されている。この他、後処理手段28としては穿孔装置、捺印装置などで構成する。従って処理トレイ27は排紙口30から送られたシートを束状に堆積させて部揃え集積する構成(後処理装置がステープル装置のとき)に限定されない。排紙口30から送られたシートを1枚ずつ後処理する構成(後処理装置が捺印装置のとき)としても良い。
【0044】
上記反転ローラ33は、排紙口30から送られたシートを下流側(
図3左側)に移送する機能と、シート後端が排紙口30から処理トレイ上に落下した後にこのシートを規制ストッパ32に向けて移送する機能とを有している。このため反転ローラ33は正逆転可能な駆動モータに連結され、同時に処理トレイ上方の待機位置からトレイ上の作動位置に上下昇降可能に装置フレームに支持されている。そして図示しない昇降モータによって待機位置と作動位置との間で上下動する。
【0045】
反転ローラ33の動作は、シート先端が排紙口30から処理トレイ27上に進入するまでは情上方の待機位置に位置し、シート先端がローラ位置に進入した後に、このシートの上に降下するとともにローラが排紙方向に回転してシートをスタックトレイ方向に送る。そしてシート後端が排紙口30から処理トレイ27上に落下した後には反転ローラ33は排紙逆方向(
図3反時計方向)に回転する。そしてシート後端が整合回転体34に喰え込まれた後にシートと係合する作動位置から待機位置に上昇して待機する。この動作の前後に反転ローラ33の回転は停止する。
【0046】
整合回転体34は、排紙口30から処理トレイ上に落下したシート後端を掻き込み搬送する回転体で構成され、シート後端を規制ストッパ32に向けて移送する。このため整合回転体34は、フレキシブルベルト(タイミングベルト、リング状ベルト)、或いは上下揺動するアーム部材(ブラケット)に軸支持された昇降ローラなどで構成される。これは処理トレイ上に積載されたシートの高さ位置に応じて上下動させるためである。
【0047】
上記規制ストッパ32は、
図4に示すように処理トレイ後端部27aに配置された突当て規制面32xを有するストッパ片32a、32bで構成されている。図示のストッパ32は後述するステープル装置28の移動動作の関係で、間隔を隔てて配置された複数のストッパ片で32a、32b構成されている。
【0048】
[整合手段の構成]
図3の装置には、給紙部2からスタックトレイ29に搬送されるシートを基準に基準ラインが設定され、この「基準ライン」を基準に各機構(給紙・搬送・後処理・排紙収納)の機能部品がレイアウトされている。従ってサイズの異なるシートはこの基準ラインが一致するように搬送され、後処理される。
【0049】
本発明は上記基準ラインを「センター基準」に設定する場合に係わり、シートセンタScが基準ラインと一致させる。そこで処理トレイ27には、シートを搬送直交方向(横レジ方向;
図4Y−Y方向)に位置決めする整合機構35が配置されている。
【0050】
前述したように処理トレイ27には排紙口30から搬入されたシートを規制ストッパ32に突当規制する。この排紙方向のシート整合は反転ローラ33と整合回転体34の作用で行う。処理トレイ27に搬出された全てのシートは、排紙方向後端(先端であっても良い)を規制ストッパ32に位置決めされる。このときシートに搬送直交方向の位置ズレ(横レジ;以下同様)が生ずると後続する後処理の処理位置が狂う問題が生ずる。そこでシートの横レジを修正するため処理トレイ27には左右一対の整合板36a、36bが配置される。
【0051】
この左右の整合板36a、36bは排紙直交方向に移動可能に配置されシートの側縁を位置修正する。このため左右の整合板36a、36bは処理トレイ27に設定された基準ラインにシートセンタScが一致するようにシートを位置修正する。
【0052】
本発明は、左右一対の整合板(部材)36a、36bを排紙直交方向に移動する整合動作を処理トレイ上に搬出されたシートの姿勢に従って基準ラインを設定することを特徴としている。つまり処理トレイ27上に右偏りで排出されるシートは基準ラインを物理的な中央ライン(後述するSc0)ではなく右側にオフセットさせた基準ライン(後述するラインSc1)に、左側にオフセットされた基準ライン(後述するラインSc2)に設定することを特徴としている。
【0053】
以下本発明に係わる整合機構を
図4乃至
図7に従って説明する。
図4及び
図5は処理トレイ27の構成を示し、
図4は斜視状態、
図5は平面状態である。処理トレイ27には左右一対の整合板(部材)36a、36bが配置されている。各整合板36a、36bにはシート側縁と係合する規制面36xが設けられ、排紙直交方向(
図4Y−Y方向)に移動する整合動作で規制面36xがシート側縁を幅寄せ移動する。整合板の移動機構については後述する。
【0054】
処理トレイ27の中央には排紙方向(図示X−X方向)に基準ラインSc0が設定されている。
図5において、基準ラインSc0が中心に位置するように、画像形成装置Aの給紙カセット2aの繰出ローラ2rの中心が位置し、同様にシート移送経路26の搬送ローラ31aの中心が位置し、処理トレイ27の反転ローラ33の中心が位置するようにレイアウトされている。また左右一対の整合板36a、36bは処理トレイ27に排紙直交方向に移動可能に配置されている。図示27xはスリット溝であり左右の整合板36a、36bを移動可能に係合している。
【0055】
なお
図5は画像形成装置Aの給紙カセット2と後処理装置Cのシート移送経路26と処理トレイ27をそれぞれ平面状態に展開した概念図である。このような平面構成において、サイズの異なるシートが、そのシートセンタが基準ラインSc0に一致するように給紙部2から送られ、搬送部で搬送され、処理トレイ27で後処理される。このように送られるシートが、シート材質、給紙機構、搬送機構、後処理機構の各機構部でスキュ或いは横レジが発生する。このスキュ及び横レジの原因については前述した通りである。
【0056】
[整合板駆動機構]
次に
図6に示す整合板36a、36bの駆動機構について説明する。処理トレイ27に左右一対配置された整合板36a、36bは、真ん中に搬入されたシートを整合するため排紙直交方向に移動し、その過程でシートを幅寄せ整合する。その駆動機構の第1実施形態を
図6(a)に、第2実施形態を
図6(b)に示す。
【0057】
「第1実施形態」
この形態は、左右一対の整合板36a、36bを異なる駆動モータで左右独立して移動する場合を示す。処理トレイ27には排紙直交方向にスリット溝27xが設けられ、この溝に左右の整合板36a、36bはスライド可能に支持され、左右互いに接近及び離反するようになっている。左右の整合板36a、36bは第1第2の駆動モータMa、Mb(以下「整合モータ」という)に連結されている。
【0058】
図6(a)は処理トレイ27の背面図であり、トレイ背面に整合モータMa、Mbがマウントされている。各モータ(減速機構を内蔵したギァードモータ)に連結されたプーリ38a、38b間にタイミングベルト37が架け渡され、このベルトの一端に左右の整合板36a、36bが固定されている。従って、整合モータMa、Mbを正方向回転すると左右の整合板36a、36bは互いに接近し、モータを逆方向回転すると左右の整合板36a、36bは互いに離間する。
【0059】
図6(a)において、図示32は後端規制ストッパであり、処理トレイの後端部27aに配置されている。図示のストッパ片32a、32bは同図左右方向に移動可能に支持されている。これと共に処理トレイの後端部27aには後処理手段(ステープル装置)28が設けられている。図示のステープル装置28は同図左右方向に移動可能にガイドレール39に支持され、タイミングベルト40とシフトモータMSによって左右方向(幅方向)に移動可能に支持されている。
【0060】
このようにステープル装置28と規制ストッパ32をシート幅方向に移動可能としたのは次の理由による。ステープル装置28は処理トレイ27上に集積され、整合されたシート束を幅方向の複数箇所(例えば2箇所綴じ)をステープル綴じするために移動可能に構成されている。また規制ストッパ32はステープル装置28の移動に伴ってその動作を支障しないように、シートの綴じ領域外(トレイに載置されたシートの領域外)に退避移動する。その移動は整合板36a、36bと連動させることも可能で、図示36gは連動突起(係合部)である。
【0061】
このような構成によって整合板36a、36bと規制ストッパ32a、32bは、シートを処理トレイ上に集積するときには、シートと係合する位置に位置する。そしてシートに後処理を施すときには処理トレイ上のシートの外側に退避して後処理動作を実行させる。この第1実施形態のとき左右の整合板36a、36bそれぞれに駆動モータMa、Mbを必要とするが、左右の整合板36a、36bをそれぞれ独立して待機位置と整合位置を設定することも、整合動作させることも可能となる。
【0062】
そこで後述する制御手段は複数準備された基準ラインの一つを選択して左右の整合板の移動位置(待機位置と整合位置)を設定する。このとき制御手段は後処理手段28の作動位置(ステープル綴じ位置)を設定された基準ラインScに従って位置設定(オフセット)する。
【0063】
「第2実施形態」
図6(b)に示す形態は、左右一対の整合板36a、36bを互いに連動して接近・離反する構成を示す。処理トレイ27には左右の整合板36a、36bを移動可能に支持するスリット溝27xが設けられている。左右の整合板36a、36bは処理トレイ27の背面側でラック41a(右整合板)、41b(左整合板)と、ピニオン42で互いに歯合されている。そしてピニオン42には駆動モータ(整合モータ)MCに連結されている。
【0064】
従って整合モータMCの回転によって左右の整合板36a、36bは互いに接近し、反対方向回転によって互いに離間する。このような整合機構によって駆動機構は一つの駆動モータで構成でき、駆動機構の簡素化が可能である。
【0065】
そして本発明の特徴とする構成は、ピニオン42と整合モータMCを可動フレーム43にマウントし、この可動フレーム43を処理トレイ27の幅方向(図示Y−Y方向)に移動可能(オフセット可能)に連結してある。従って、可動フレーム43を左右方向に位置移動することによって左右一対の整合板36a、36bを同時に右方向又は左方向に位置移動することができる。
【0066】
また、可動フレーム43にはシフトモータMTが設けてあり、このモータの正逆転で可動フレーム43を左右に位置移動する制御が可能となる。図示28はステープラ装置(後処理手段手段)であり、所定間隔で左右に1対配置され、シートの後端縁の2箇所を同時に綴じ処理する。この場合(複数の後処理手段配置)のシフトモータMTは後述する基準ラインの設定のためのオフセット機構であり、このシフトモータMTによって可動フレーム43にマウントされている左右の整合板36a、36bと左右の後処理手段28の位置をシフトする。
【0067】
[整合動作]
上述の構成の整合機構についてその整合動作を説明する。本発明は左右一対の整合板(部材;以下同様)36a、36bで処理トレイ上のシートを整合する際に、整合動作の基準ラインScを複数ライン(
図8に示すSc0、Sc1、Sc2)設け、この複数ラインの一つを選択して整合動作を実行することを特徴としている。
【0068】
図7は本発明の概念構成を示し、
図8は
図7の概念に基づく基準ラインの設定方法の説明図であり、
図9は設定された基準ラインに基づく整合板の移動ストロークの説明図である。
図7に示すように、処理トレイ27上に搬出されるシートは、上流側の機構(機体差)、シートの紙質、シートサイズに応じてトレイ上に搬出されるシートの姿勢が異なることが知られている。
【0069】
例えば給紙機構(画像形成装置Aにおける給紙部2の構成など)、搬送機構(画像形成装置Aにおけるデュープレックス経路14を経由するシート(両面印刷)と経由しないシート(片面印刷))、集積機構(後処理装置Cにおける反転ローラ33、整合回転体34などの機構及び機体差)によって処理トレイ上に搬出されるシートの姿勢には傾向が生ずる。
【0070】
これは装置製造時の機体差によって例えば第1給紙カセット2aの給紙ローラが右側に、第2給紙カセット2bの給紙ローラが左側に傾いていると処理トレイ27に排出されるシートも右偏り、左偏り姿勢で排出される。同様にシートの搬送経路の機構についても機体差が発生する。また、シートの材質、普通紙であるか、再生紙であるか、シートとローラ間の摩擦差、経路ガイドとシートの摩擦差によって例えば再生紙は右偏りに排出され、コーティング紙は左偏りに排出されるなどの傾向が生ずる。同様にシートサイズ例えばJISA3サイズシートとA4サイズシートでは、排出姿勢に傾向が生ずる。
【0071】
そこで本発明は
図7に示すように搬出シートの横レジの傾向をデータ化する(St01)。レジスト傾向から複数の基準ラインを設定する(St02)。シートの送り条件の設定(St04)。これは画像形成装置Aの画像形成条件あるいは後処理装置Cの後処理条件の設定に応じてシートの送り条件が異なり、このシートの送り条件を設定する。
【0072】
シート送り条件の代表的な例は、第1給紙カセット2aからシートを送りだすときと第2給紙カセット2bからシートを送り出すときには、一方は右偏りに他方は左偏りに搬出される傾向がある場合について本発明を説明する。
【0073】
次いで、上述のレジスト傾向のデータ化に基づいて複数の基準ラインを設定する。この基準ラインは、第1給紙カセット2aなど右偏り傾向のシート送り条件のときには基準ラインSc1に、第2給紙カセット2bなど左偏り傾向のシート送り条件のときには基準ラインSc2に設定する(St04)。後述の設定は、後述する第1実施形態の場合は「マニュアル設定」で(St05)、第2実施形態の場合は「自動設定」する(St06)。
【0074】
設定され基準ライン(Sc0、Sc1、Sc2)に基づいて整合板(整合部材;以下同様)36a、36bの待機位置Wpと整合位置Apを設定(算出)する(St06)する。この整合板36a、36bの整合動作位置は、設定された基準ライン(Sc0〜Sc2)から予め決められた距離離れた位置に待機位置Wpを設定し、整合位置Apは基準ラインとシートサイズ情報から算出する。
【0075】
なお、上記待機位置Wpはシートのバラツキ量(Δy)によって実験的に設定し、制御部のROMに準備(記憶)しておく。そして整合板36a、36bを設定された基準ライン(Sc0〜Sc2)に従って算出された待機位置Wpに移動する。この場合、整合板36a、36bは処理トレイ上のシート載置エリアから離れた退避位置にホームポジジョンを設定しておくことが好ましい。
【0076】
次いでシートを搬出する。この動作は画像形成装置Aでシート上に画像を形成し排紙口13から搬出する。そして後処理装置Cではシート排紙の指示信号を受けてシート移送経路26からこのシートを受け入れる(St09)。
【0077】
そこでシート移送経路26には、排紙口30に向けて送られるシートのレジスト量を検出する(St10)。このシートのレジスト量の検出は、例えばシート移送経路26にシート側縁を検出するセンサアレイSe3、Se4を配置する(後述の
図8参照)。シートのレジスト量を検出する構成は後述するが、その検出値は「過去送りデータ」として記憶手段52に記憶する。後述の記憶したレジスト量値は、後述する「マニュアル設定」時の参考値として使用するか、或いは後述する「自動設定」時の基礎データとして使用する。
【0078】
また、シートのレジスト量値に基づいて正常搬送可能か否か判断する(St11)。この判断で正常搬送可能なときにはシートを処理トレイ上に搬出する(St12)。一方レジスト量の検出結果で「正常搬送が不可能」なときには次の「基準変更する」か、「基準変更しない」か何れかの方法を装置設計時に採用する。この場合レジスト量の検出結果によって変更するか変更しないか選択できるように構成することも可能である。
【0079】
「基準変更しないとき」
基準変更しないとき(St14)にはシートジャムとして装置を停止する(St15)か、整合ストロークを変更する(St16)か、何れかに(設計値として)設定する。この整合ストローク変更の方法については
図8に従って後述するが、この新たに変更したストロークで基準ラインを変更することなく整合動作を継続して実行する(St17)。例えば給紙カセットが第1カセット2aから第2カセット2bに変更されたとき、先の第1カセット2aのレジスト傾向に従って設定した第2基準ラインSc1を変更することなく整合動作を継続する。このときには整合板36a、36bの整合ストロークを変更する。
【0080】
「基準を変更するとき」
基準を変更するとき(St18)には新たな基準ラインを設定する(St19)。この基準ラインの設定は前述した(St04)と同様に新しい基準ラインを設定する。例えば給紙カセットが第1カセット2aから第2カセット2bに変更されたとき、先の第1カセット2aのレジスト傾向に従って設定した基準ラインSc1を、第2カセットのレジスト傾向に従って設定した基準ラインSc2に変更する(St19)。
【0081】
新たな基準ライン(例えばSc2)の設定に従って整合板36a、36bの整合ストロークを設定し、待機位置Wpと、整合位置Apを前述のものと同様に設定(算出)する。これら基準の変更に伴って処理トレイ27上に集積されている集積済みシート束を先の基準ラインSc1から新たに設定した基準ラインSc2と一致するように束移動する。この束移動動作は後述する
図8に従って説明する。
【0082】
図8に従って処理トレイに搬出されるシート姿勢について説明する。同図(a)に設計基準として設定された第1基準ラインSc0を示すが、このラインを基準に給紙部、搬送部、後処理部の各機構が配置されている。従って構成部品などに精度差がなく、同時にシートサイズ、シート材質に差がないと仮定すれば、すべてのシートはこの第1基準ラインSc0にシートセンタが一致するように搬出される。
【0083】
しかし、給紙部構造、搬送部構造などでシートが図示「α」だけ右側に偏った状態で搬出されたときには、シートセンタは基準ラインSc0から「α」だけオフセットして処理トレイ上に積み上げられる。このようなシート搬出の偏りは、給紙カセットの給紙ローラの偏り、シート搬送経路の摩擦、シート材質の変化などに原因する。
【0084】
そこで装置の機体差を含めて実験によってオフセット量αを設定する。このオフセット量αに基づいて第2基準ラインSc1を設定すると、シートを整合するための整合板36a、36bの移動量は同図に示すストロークSy1でシート整合できる。なお図示Δyはシート搬出のばらつき量であり実験によって定める。このときオフセット量αと搬出バラツキΔyとは[α>Δy]の関係が設立する必要がある。α<Δyのときには基準を設計値である第1基準ラインSc0に設定する。
【0085】
このことから基準ラインを設計値である第1基準ラインSc0に設定するときの整合板の移動量はストロークSy0であり、シートを整合するための移動量が第1基準と第2基準とでは異なり、第2基準の移動量が少ないことがこととなる。
【0086】
同様に
図8(b)はシートが第1基準ラインSc0から先と反対側、左側に偏って(オフセット量β)で搬出された場合を示す。この場合もΔyはシート搬出のバラツキ量で実験値によって決定する。そして第1基準ラインSc0でシート整合する場合に比べ、オフセット量βで設定した第3基準ラインSc2にシートセンタが一致するように整合することによって整合のためのシートの移動量が少ないこととなる。
【0087】
このように整合のための「シートの移動量」を少なくすると、シート移動のための整合機構の小型化、特に小さくて軽い整合板を処理トレイに配置することが出来、同時に駆動トルクが小さく、コンパクトに構成することが可能である。これと共にシートは修正のための移動量が少ないから、ばらつきが少なく所定の位置に整然と整合される。
【0088】
次に整合板36a、36bのストロークについて
図9に従って説明する。上述のようにシート整合のための基準ライン(Sc0,1,2)を複数設けてその1つに設定するとこの基準から外れたシートが搬出されることがある。これは例えば第1給紙カセット2aから先行シートを繰出し、後続シートを第2カセットから繰出す場合を想定すると、第1カセット2aは右偏りに、第2カセット2bは左偏りにシートが搬出される。この場合には、
図7で説明したようにシート移送経路26でのシートレジスト量に応じて「基準変更しない」場合と「基準変更する」場合、何れかの整合方法を採用する。
【0089】
「基準変更しないとき」
図9(a)に示すように整合板36a、36bの移動ストロークを外れて搬出されるシートに対し整合板の移動ストロークをSy1からSy2に変更する。その方法は整合板36bの待機位置射Wp1をWp2に変更する。これによって後続するシートは既に設定してある第2基準ラインSc1にシートセンタが一致するように整合される。
【0090】
「基準位置を変更するとき」
図9(b)に示すようにシートが整合板36a、36bの移動ストロークsy1を外れて搬出されたとき制御手段(制御CPUなど)は給紙・搬送・集積などの条件が変化したときには、既に設定してある基準ラインを新しい基準ラインに変更する。この基準ラインの変更は前述した基準ライン設定と同様に行う(St19〜St23)。このとき処理トレイ上に先の第2基準ラインSc1に集積されているシートを新しい第3基準ラインSt2にシートセンタが一致するように束移動する。このシート束の移動は図示のように整合板36aを位置移動する。
【0091】
[制御構成]
上述した画像形成システムの制御構成を
図10のブロック図に従って説明する。
図1に示す画像形成システムは画像形成装置Aの制御部(以下「本体制御部」という)45と後処理装置Cの制御部(以下「後処理制御部」という)50を備えている。本体制御部45は印字制御部46と給紙制御部47と入力部(コントロールパネル)48を備えている。
【0092】
そしてこの入力部(コントロールパネル)48から「画像形成モード」と「後処理モード」の設定を行う。画像形成モードはカラー・モノクロ印刷、両面・片面印刷などのモード設定と、シートサイズ、シート紙質、プリントアウト部数、拡大・縮小印刷、などの画像形成条件を設定する。また「後処理モード」は、例えば「プリントアウトモード」「ステープル仕上げモード」「製本綴じ仕上げモード」などに設定する。
【0093】
また、本体制御部45は後処理制御部50に後処理の仕上げモードとシート枚数、部数情報と綴じモード(1個所止綴じか2個所以上複数綴じか)情報、及び画像形成するシートの紙厚情報などをデータ転送する。これと同時に本体制御部45は画像形成の終了毎にジョブ終了信号を後処理制御部50に転送する。
【0094】
上述の後処理モードについて説明すると、上記「プリントアウトモード」は排紙口30からのシートを、後処理を施すことなくスタックトレイ29に収容する。この場合にはシートを処理トレイ27に部揃え集積することなく、排紙口30からスタックトレイ29に搬出する。上記「ステープル仕上げモード」は、排紙口30からのシートを処理トレイ27上に集積して部揃えし、このシート束にステープラ装置28で綴じ仕上げした後に、スタックトレイ29に収容する。この場合には画像形成されるシートは原則として同一紙厚さで同一サイズのシートにオペレータによって指定される。
【0095】
上記「製本綴じ仕上げモード」は、画像形成装置Aで画像形成されたシートを処理トレイ27に部揃え集積し、最後に表紙シートを画像形成装置Aで画像形成して処理トレイ上のシートに重ね合わせ、ステープル綴じした後に、スタックトレイ29に収容する。この場合には表紙シートは給紙部2に準備された厚紙シートがオペレータによって指定される。
【0096】
[後処理制御部]
後処理制御部50は、指定された後処理モードに応じて後処理装置Bを動作させる制御CPU(制御手段;以下同様)で構成される。この後処理制御部50には、動作プログラムを記憶したROM51と、制御データを記憶するRAM52が備えられている。
【0097】
後処理制御部50には基準ライン設定手段53と整合動作実行手段54が設けられている。これらの手段は制御CPUの実行プログラムによって構成される。ここではその概念について説明する。
【0098】
「基準ライン設定手段」
基準ライン設定手段53は予め設定され制御データ52に記憶されている基準ラインデータを呼出してその一つを選択する。この基準ライン設定手段53は、後述する「マニュアル設定」と「自動設定」何れかの選択方法を採用する。これと共に基準ライン設定手段53は、整合板36a、36bの待機位置Wpと作動位置Apを設定(算出)するように構成されている。
【0099】
この場合、作動位置Ap設定はマニュアル設定又は自動設定で設定された基準ラインにシートセンタが一致するようにシート側縁の整合位置を算出する。つまりシートサイズ情報からの長さ(幅方向長さ)の2分の1が基準ラインと一致するように整合板の作動位置を決定(算出)する。また待機位置Wpは、予めシートの搬送誤差として実験で求めたばらつき量Δyから設定する。
【0100】
整合動作実行手段54は、制御CPU50で構成される。シートサイズ情報及び基準ラインが設定され、その両情報を取得したタイミングで整合板36a、36bをホームポジションHpから待機位置Wpに移動する。ホームポジションHpは先に説明したように処理トレイ27のシート収納領域から外側に外れた位置に設定され、この位置から基準ライン設定手段53で算出された待機位置Wpに位置移動する。
【0101】
次いで整合動作実行手段54は、シート後端が排紙センサSe2を通過した信号に基づいて反転ローラ33と整合回転体34の作用でシート後端が規制ストッパ32に突当て整合されたタイミングで(このとき反転ローラ33は待機位置に移動している)整合板36a、36bを待機位置Wpから作動位置Apに移動し、次いで作動位置Apから待機位置Wpに復帰移動する。この動作で処理トレイ27上に搬出され後端を規制ストッパ32に位置決めされたシートは(ストッパ)規制面32xに沿って排紙直交方向に移動する。そしてその移動量はシートセンタが基準ラインScと一致する位置に移動される。このように順次上方に集積されたシートは束状に積み上げられてその後端位置は規制ストッパ32、その側縁は基準ラインScと一致するように位置決めされることとなる。
【0102】
この処理トレイ上へのシート整合を繰り返して一連のシートが集積されるとジョブ終了信号を得て制御手段50は後処理手段28に後処理動作を実行させ、実行後のシートをスタックトレイ29に移送する。
【0103】
[基準ライン設定手段(第1実施形態)]
前述した基準ライン設定手段53について説明する。
図7で説明したように、複数に設定され記憶手段52記憶された基準ライン(Sc0,1,2)から一つのラインを選定する。この基準設定を「マニュアル設定」で行う場合について説明する。
【0104】
図示しないコントロールパネルには、後処理装置Cのモード設定と同時に処理トレイ27に集積する整合基準設定の表示を実行する。この基準ライン設定の表示は、例えばシート整合位置をデフォルト値と+Hミリ、−Fミリなどオフセット量をオペレータが選択できるように表示する。後述の表示は、後処理を施したシートが不完全であったとき、オペレータは再作成を実行する必要がある。このとき同一条件で繰り返すことは不合理であるため、オペレータは先の不完全仕上げの状態から、シート整合の基準ラインを変更することを選択する。この場合、先の処理(前ジョブ)のレジ量を検出したセンサアレイSe3、Se4の検出値(平均値が好ましい)をパネル表示する。これによってオペレータは前ジョブの状態を修正する感覚で基準ライン設定が可能となる。
【0105】
そこでオペレータは設計値として、設定(デフォルト)されている第1基準ラインSc0から+15ミリ、−10ミリなど基準ラインのオフセット量を設定する。
【0106】
[基準ライン設定手段(第2実施形態)]
次に基準ライン設定を自動で行う場合について説明する。装置製造時に処理トレイ上のシート搬出の偏り傾向を制御データとして記憶手段52に記憶する。この記憶データは例えば第1給紙カセット2aから搬出したシートは、右偏り3ミリ、或いはデュープレックス経路を経由したシートは左偏り5ミリなどシートの給紙条件と搬送条件から処理トレイ上に搬出されるシートの偏り傾向をデータとして記憶してある。そして画像形成条件、後処理条件、などのモード設定がコントロールパネルで設定されたとき、基準位置ラインを記憶手段52に記憶されているデータに基づいて例えば第1基準ラインSc1、第2基準ラインSc2などに設定する。
【0107】
この場合には処理トレイ27に集積したシートのレジスト量を検出して前ジョブデータとして記憶手段52に記憶する。そしてモード設定時に同一条件で実行された過去データを呼び出して基準ラインとして設定する。