【課題を解決するための手段】
【0011】
液相中の固形物検出用の装置は、デジタル化された画像を作るためのカメラおよびプロセッサユニットを備える。デジタル化された画像は、画素値を伴う画素の配列として記録される。固形物および液相は、少なくとも部分的に透明な容器に混合物として封入される。本発明の文脈における「部分的に透明な容器」という用語は、容器を形成する壁の少なくとも一部が、感知できるほどの吸収なしに電磁放射を伝送できることを意味する。残りの容器壁は、設計の制約を受けず、本発明の目的を支援するように設計してもよい。したがって、本装置に使用される部品は、使用されている電磁放射に適合している必要がある。例えば、昼光を使用し、これで混合物の照明として十分である場合、照明装置に対する切実な必要性はない。しかし、以下で説明するように、最良の結果を得るためには、照明装置の使用が勧められる。
【0012】
本装置は、容器を保持するため、および容器に運動を与えるためにアジテータ装置をさらに備える。それによって、運動エネルギーが混合物に伝送される。運動エネルギーを注入する主目的は、容器の内側の混合物を運動の状態に保つことである。一般に、混合物または溶液は、アジテータ装置のスイッチが切られた後もしばらくの間、運動の状態に留まるものである。本明細書で後述するように、混合物のこれらの運動は、液相内で固形物質を検出するために、使用される。
【0013】
運動エネルギーを注入することによって、さらに2つの目的を達成できる。第1に、混合および乱流運動により、固形物は、液相中により急速に溶解する。容器が完全に封止されているので、アジテータ装置で全方向に容器を倒し、また振ることができる。その結果、第2の目的として、固形粒子がすべて、溶解できるように液相に接触することになる。
【0014】
本文脈では、「プロセッサユニット」という用語は、デジタルデータを処理し、記憶する能力のある任意の装置を意味し、例えば、本装置の他の部品に接続できる、マスタプロセッサシステム、コンピュータもしくはラップトップ、または、アジテータ装置に配置された、プロセッサを有する回路基板、カメラに組み込まれたコンピュータユニット、もしくは記憶モジュールと接続入力/出力ユニットとを有するフィールドプログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)など集積概念をも意味する。
【0015】
カメラは、運動中の混合物の画像を撮影するために、容器の透明部分に向けられる。記録段階の間、カメラは、運動中の混合物のデジタル化された画像を撮影し、それらをプロセッサユニットに送信する。デジタル化された画像を撮影する目的は、次の評価工程で、画像の静的部分を動的部分から分離することを可能にすることにある。静的部分は、容器のすべての部分および容器の近傍を含み、一方、動的画像部分は、容器の内側で動き回っている混合物を対象にする。
【0016】
評価工程に適したデジタル化された画像を生成する最も簡単な方法は、カメラを静的な位置に設置し、容器の運動を休止段階によって一定時間ごとに中断する構成で実現される。もちろん、カメラを容器にしっかりと結合させることもでき、また記録段階の間にカメラが容器のあらゆる運動を追跡するように、記録段階の間カメラを容器と同期して動かすことができる。この第2の構成では、記録段階は、容器が休止している時のみならず、容器が運動エネルギーを受け取っている時も生じ得る。第3の概念によると、画像を撮影するためにカメラを始動させる時機は、容器が常にその周囲に対して同じ位置に現れるように、容器の特定の位置に結び付けることができる。第4の実現可能性としては、運動する容器の画像を無作為に撮影することである。しかし、これには、次の評価工程でこれまでより相当多くの計算能力が必要となるので、推奨しない。
【0017】
記録段階の間、運動中の混合物の少なくとも2つのデジタル化された画像の少なくとも1つのシリーズが生成される。これらのデジタル化された画像を次の評価工程で利用可能にするために、それらを一時記憶装置に記憶することが好ましい。デジタル化された画像の最低限2つで、運動中の混合物の解析表現を生成することができる。
【0018】
本発明の最初の実施形態では、解析表現は、同じシリーズの2つのデジタル化された画像からプロセッサユニットで、第2の画像の画素値から第1の画像の画素値を引くことによって生成される。混合物の運動する固形物粒子は、解析表現においてコントラスト領域、すなわち異なる画素値を有することによって区別される領域として現れることになる。
【0019】
本発明の第2の実施形態では、前のデジタル化された画像のシリーズの共通部分が計算される。次いで、解析表現は、デジタル化された画像の画素値から共通部分の画素値を引くことによって、生成される。この解析表現では、混合物の運動する固形成分は、再び、コントラスト領域、すなわち異なる画素値の領域として現れる。
【0020】
本発明の第3の実施形態では、解析表現は、少なくとも2つのデジタル化された画像の個々の画素の運動の見積もりによって、生成される。ここで、運動の見積もりでは、1つの画像から他の画像への運動ベクトルがゼロであるすべての画素が、静的画像部分と見なされることになる。これにより、個々の画素の位置およびそれらの画素値の、隣接した画素およびそれらの画素値に対する比較が必要になり、それには、これまでよりも相当多くの計算能力が必要となる。この解析表現では、混合物の運動する固形部分は、再び、コントラスト領域、すなわち異なる画素値の領域として現れる。
【0021】
本カメラは、運動中の混合物の画像を像平面に投影するためにレンズまたはピンホール隔膜を有することができる。像平面は、放射センサの2次元配列で占められている。この放射センサの2次元配列は、これ以降、センサ要素と呼ばれる。電磁放射用のセンサ要素は、幅広い種類、例えば、CCD(電荷結合デバイス)センサ、能動画素センサ、焦点面アレイ、X線センサ要素等にわたっている。像平面に投影された2次元画像は、画像要素、すなわち画素の2次元配列の形でカメラによって捉えられ、各画素に対して生成されたデータは、色および輝度を表す。運動中の混合物の異なる点から反射された光の寄与は、通常、特定の画素の色および強度を表す画素値を構成する。論理的には、階調カメラを使用するならば、色データは全くないことになる。
【0022】
容器全体の画像を撮影するようにカメラを設定することが好ましいので、意味のある評価をより困難にする容器の部分が含まれることが起こり得る。例として、容器が円筒断面の瓶であり得る。その場合、容器の周辺領域でのガラスの曲率により、運動する混合物の、評価を受けうる画像は、ほとんど得られないことになる。しかし、原理的には、閉じることのできる容器は、少なくとも1つの透明部分を有していれば、その形状にかかわらず、使用することができる。
【0023】
装置および容器は、解析だけの目的に使用され得る。これは、未知の液体が固体の存在に関して調べられること、あるいは、溶解の可能な過程が既に行われて、検査すべき仕上がった溶液が本発明による装置内にセットされた容器に注ぎ込まれることを意味する。しかし、分別のある手続きは、溶液を容器自体の中で準備することである。容器のデザインは、混合物の準備および解析容器としてその目的に従って最適化されてよく、これにより、液相中の容器の内部輪郭が、運動エネルギーの注入の結果として固形物溶解過程を最適に支援するようになされる。このことは、例えば、容器の部分がより狭くされるデザインによって、また、その場所に集積した固形物の溶解の過程を阻害するであろう「不感帯」が生じることのある隅部を避けることによって、可能である。容器の壁は、光学的解析法用にさらに最適化することができる。例えば、デジタル化された画像を撮影するために、そこを通してカメラが向けられる、ひずみのない領域を壁に形成することができる。光集束または発散レンズを壁に形成することもまた可能である。原理的には、透明部分用に任意の透明材料、具体的にはガラスおよび透明合成材料を使用することができる。適切な材料の選択は、液相、すなわち溶媒の選択ならびに固形物の、固体および/または溶解形状での性質に本質的に依存する。さらに、検査中の混合物の照明を最適化するために、容器は、別の透明部分または不透明度の低下した領域を有することができる。
【0024】
本発明のさらに発展した概念によれば、解析表現内で少なくとも1つの評価域を選定することによって、なんらの有益な情報を含まない画像部分が評価から除去され得る。その後、コントラスト領域を探して、評価域を調べる。もちろん、第1の画像および第2の画像からそれぞれ区域を選択し、これらの区域から評価域として使用する解析表現を生成することもまた可能である。
【0025】
少なくとも1つの評価域を、等しいまたは異なる寸法のセグメントにさらに細分することができる。このことは、個々のセグメントが別々に評価されることが可能であって、その結果、データのより小さなバッチが順次処理されるという利点を有する。さらに、セグメントで作業することによって、次の統計解析において局所極大極小の探索を実行させることができ、このことで装置は、粒子の検出においてより敏感になる。
【0026】
本調査は、解析表現またはセグメント内の画素値の度数分布を評価する工程を含む。カメラ関連雑音を除去するために、度数分布内の画素値の所定の帯域幅は、引き続く評価での考察対象から外される。画素値の所定の帯域幅は、例えば、非溶解物を何も含まない澄んだ参照溶液で見積もることができる。
【0027】
本装置は、カメラのセンサ要素と整合した電磁放射を放出する光源をさらに含むことができる。市販のカメラが可視光の範囲内で働き、したがって、費用対効果の高い解決を表すので、装置は、面光源の形状の少なくとも1つの照明装置を備えることが好ましい。容器は、アジテータ装置によって運動状態に保たれているが、例えば、面光源とカメラとの間に配置されてよい。したがって、混合物は面光源によって背面から照らされる。もちろん、この場合、透明部分に対向する容器壁は、これもまた透明である必要があるか、または、これを、光に対するいくらかの透過性を有するように、少なくとも設計すべきである。明らかに、面光源も、固形物の粒子によって散乱または/偏向された光のみがカメラに到達するように選択された、いかなる空間配置での容器に向けることができる。
【0028】
面光源に加えて、または代わりに、装置は少なくとも1つの点光源を備えることができる。少なくとも1つの点光源の電磁波、具体的には光波は、カメラ画像によって対象とされるはずの透明な容器壁部分に向けられる。混合物の粒子によって反射された、屈折された、または部分的に吸収された光線は、カメラのセンサ要素で明および暗コントラスト領域として捉えられ、結果として、液相の画素値から区別できる画素値が得られる。
【0029】
本明細書で前述のように、容器はアジテータ装置によって動かされる。その運動は、どの方向にも向けられてよい。例えば、アジテータ装置は、長手方向に振動的な運動を発生させ、容器を旋回もしくは回転し、または容器を繰り返し上下逆にすることができる。唯一の重要な側面は、固形物粒子が、容器に対して動き、したがって検出され得るように、固形物粒子がすべて運動中となるように設定すべきであることである。液相中に固形物質が存在するかどうかの信頼のできるチェックは、どの粒子も容器の内側の壁に付着しないならば、実行され得る。固形物粒子がすべて液相によって達することができ、例えば、容器の濡らされていない壁部分に貼り付いたままでいられないことを保証するために、アジテータ装置は、容器もまた長手方向の中心軸を中心に回転可能なように設計され得る。アジテータ装置は、溶解過程用として使用されてもよい。アジテータ装置の消耗を低減するために、溶解過程または溶解過程の少なくとも主要な部分もまた、容器を本発明による装置にセットする前に、すでに起こしておくことができる。
【0030】
以下の方法は、液相中の固形物を検出するために使用され得る。本発明によれば、固形物および液相は、少なくとも部分的に透明な容器に混合物として封入されなければならない。本発明の方法は、少なくとも、
― 容器が運動させられる状況にあり、それによって運動エネルギーが混合物に注入されるステップと、
― 記録段階では、容器の内側で運動中の混合物の少なくとも2つのデジタル化された画像のシリーズが、画素値を伴う画素の配列の形でカメラで撮影されるステップと、
― 画素の前記配列およびそれに伴う画素値に基づいて、解析表現が計算され、そこでは、前記運動する固形物粒子が、コントラスト領域、すなわち異なる画素値を有することによって区別される領域として現れるステップと、
― 解析表現が、コントラスト領域または異なる画素値を有する領域が存在するかどうか、探索されるステップと
を含む。
【0031】
少なくとも1つの評価域が解析表現から選定されることが、さらなるステップとして、本方法に追加され得る。もちろん、同じシリーズの2つのデジタル化された画像のそれぞれから区域を選択し、これらの区域から評価域として使用する解析表現を生成することもまた可能である。
【0032】
本発明による方法に追加され得るさらなるステップでは、解析表現または少なくとも1つの評価域は、等しいまたは異なる寸法のセグメントに細分され、異なる画素値を有することによって同じセグメントの残りから区別されるコントラスト領域が存在するかどうか、各セグメントは探索される。
【0033】
解析表現またはセグメントは、画素値の度数分布を評価することによって、調べることができる。カメラ関連雑音を除去するために、度数分布内の画素値の所定の帯域幅が、引き続く評価での考察対象から外される。
【0034】
本方法は、度数分布が画素値の所定の帯域幅の外部にある画素値を含むセグメントの数が決定され、セグメントのその数が、存在する固形物質の量および/または溶解過程の進度の尺度を表す、さらなるステップを含むことができる。代替案として、帯域幅の外側にあり、予め定義された閾値を越える画素値の数を決定することもまた可能である。外れた画素値を有するセグメントの数が小さいほど、溶液中に存在する粒子はより少ない。混合物の一部だけを調べる場合、検査中の混合物の状態についての信頼できる結論を引き出すことができるために、画像の数シリーズをとり、各シリーズを前の説明に従って処理および評価することが好ましい。シリーズとシリーズの間に、混合物にはアジテータ装置で運動エネルギーを再び注入することができる。
【0035】
度数分布が所定の画素値帯域幅の外部にある画素値を含むセグメントに、重みを割り当てて、セグメントの重み付けされた数を互いに加算し、その数の和が、存在する固形物質の量および/または溶解過程の進度の尺度を同様に表す、さらなるステップによって、より正確な結論が達成され得る。重み付けされた和を用いることで、例えば、非常に暗くかつ非常に明るいコントラストをなす領域は、大きな粒子を示すので、より大きくカウントされるという効果がある。よく知られているように、粒子の寸法は、溶解過程および溶解に必要な時間の量に影響を強く及ぼす。
【0036】
本発明による装置および方法は、図面を参照して、以下により詳しく説明する。