(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態を、液状化対策地盤の改良を例に採って説明する。
<工法の概要>
図1は、マイクロバブル水(MB水)を地盤へ供給するシステムの一例を示す。
本明細書においてマイクロバブル水(MB水)とは、微細気泡(マイクロバブル)を多数有する水のことをいう。
前記マイクロバブルとして、直径が10〜100マイクロメートルの範囲内にある気泡を用いるのが好ましく、直径が10〜70マイクロメートルの範囲内にある気泡を用いるのがより好ましい。
また、マイクロバブル水は、直径10〜100マイクロメートルの気泡を70%以上、より好ましくは80%以上包含することが好ましいが、70%以上包含していなくてもよい。
なお、マイクロバブルの直径は、高圧下(400kPa)で生成したバブル水を、地盤に混入する直前の圧力(B.P.=200kPa)に減圧したカラムに混入した際の気泡の上昇速度を計測し、その計測した気泡上昇速度より、ストークスの法則から算出することができる。
このマイクロバブル水は、マイクロバブルジェネレーターによって生成される。マイクロバブルジェネレーターは、主に、余剰エア分離タンク1、渦流タービンポンプ3からなる。
このマイクロバブルジェネレーターは、例えば揚水孔5から地下水Wを汲み取り、ノッチタンク8で泥や土を沈殿させ、その上水と新たに取り入れた空気Hとを渦流タービンポンプ3で同時に吸引し、機内で発生する渦流により繰り返し加圧溶解を行う。そして、余剰エア分離タンクで余剰エアを分離し排出するとともに、余剰エアを分離した高濃度の空気溶存水を
供給管(例えば、供給ロッド10)の内部に挿入する内管20に設けた気泡発生ノズル7に通してマイクロバブル水を生成した後、地盤中に供給する。
【0029】
このシステムは
供給管を通じてマイクロバブル水を地盤中に供給するとともに改良地盤内の地下水位低下とマイクロバブル水の浸透を促すため、同時に揚水ポンプ9により用水孔5から地下水Wの汲み取りを行い、地下水Wを循環させながら対象地盤を不飽和化させる仕組みである。しかし、本発明において、揚水を行い液状化対策地盤に過圧密を生じさせた後に、マイクロバブル水の供給を行うことも可能である。また、過圧密を行わなかったとしても、本発明の効果は十分に発揮する。
【0030】
気泡発生ノズル
7としては、例えば前記先行技術文献の特許公開公報2010−209633に開示したものを用いることができる。気泡発生方式としては、超音波方式、超高速旋回方式、気液二層対流混合・せん断方式なども用いることができるが、前記特開2010−209633に開示した気泡発生ノズルを用いるのがより好ましい。
【0031】
<供給ロッドの例示>
図2に、マイクロバブル水を地盤に供給する際に使用する
供給管の一例として、供給ロッド10を示す。現場での簡易な施工を目的とし、比較的に径が小さく、簡易なサウンディングマシンでも施工可能な33.5mm径のボーリングロッドを使用している。この供給ロッド10の先端は貫入が容易なように円錐型のコーンの形状としている。
【0032】
図3に、供給ロッド10の一部分に設けられたゴムスリーブ式逆支弁35を示す。
(a)はゴムスリーブ式逆支弁35の外観、(b)はゴムスリーブ式逆支弁35の内部構造をそれぞれ示し、(c)は前記(a)(b)のA−A断面を示した図である。
ゴムスリーブ式逆支弁35は、供給ロッド10の外周の一部分を覆うようにリング状に取り付けられ、ゴムスリーブ式逆支弁35の中間にはスリット36が設けられている。そして、当該スリット36の内側に孔部34が設けられている。
このゴムスリーブ式逆止弁35は、供給ロッド10の深さ方向に所定の間隔を置いて複数取り付けられている。
【0033】
図4は、供給ロッド10を通じて、地盤中にマイクロバブル水(MB水)を供給している図である。
まず、地盤中に供給ロッド10を挿入する。この時、ゴムスリーブ式逆支弁35は閉まった状態であるため、供給ロッド10の内部に地盤中の砂や粘土が侵入しない。そして、マイクロバブル水(MB水)を供給して地盤を改良しようとする領域(以下、改良対象領域という。)内に、供給ロッド10のゴムスリーブ式逆支弁35が到達するまで、供給ロッド10の挿入を続ける。
なお、改良対象領域は、改良が必要な地盤であればよく、それ以上の限定は特になされない。
【0034】
改良対象領域内に供給ロッド10のゴムスリーブ式逆支弁35が到達したら供給ロッド10の挿入をやめ、供給ロッド10内に内管20を挿入する。この内管20は、供給ロッド10内を自由に上下動することができる。
この内管20の周方向には、所定の間隔を置いて吐出孔22が設けられている。
また、内管20の深さ方向に所定の間隔を置いてストレーナー(図示しない)が複数設けられ、このストレーナーの周囲に袋体21が取り付けられている。この袋体21はゴムまたはナイロン等からなる可塑性袋体で、その両端は内管20に止め付け輪(図示しない)で固定されている。
内管20の吐出孔22が、前記ゴムスリーブ式逆支弁35のスリット36と重なる位置まで内管20を挿入し、重なったところで挿入をやめる。
そして、内管20の内側からストレーナーを通じて袋体21内へ膨張材(図示しない)を注入し、袋体21を膨張材で充満させ、袋体21を供給ロッド10の内壁37に固定する。このようにして、内管20が供給ロッド10に固定される。
【0035】
その後、高濃度の空気溶存水Jを内管20の中に供給する。供給された高濃度の空気溶存水Jは、気泡発生ノズル7を通ってマイクロバブル水(MB水)になり、内管20に設けた吐出口22から外方へ勢いよく吐出される。吐出口22から吐出されたマイクロバブル水(MB水)は、ゴムスリーブ式逆止弁35の内側に圧力をかけ、孔部34を塞いでいるゴムスリーブ弁35のスリット36を開けて、地盤中の改良対象領域に供給される。
【0036】
前記の例においては、改良対象領域にマイクロバブル水(MB水)を供給する場合を説明したが、改良対象領域の上方に注入材料を供給する場合も同様に考えることができる。
【0037】
<地盤の改良方法の第一実施例>
以下、
図5〜
図7を用いて、地盤の改良方法の第一実施例を説明する。
図5は、地盤中へ注入材料M1を供給した時の断面図である。
第一実施例においては、改良対象領域Zの上方に、マイクロバブルMBが逸散することを防止する逸散防止層BLを地盤中に形成する。
具体的には、前記改良対象領域Zに供給ロッド10を挿入した後、供給ロッド10内に内管20Aを入れ、前記内管20Aを袋体21によって供給ロッド10に固定する。その後、前記内管20A内に注入材料M1を入れ、その注入材料M1を前記内管20Aに設けられた吐出口22、供給ロッド10に設けられたゴムスリーブ式逆支弁35のスリット36を通じて、地盤へと供給する。
地盤へ供給された注入材料M1は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散する。拡散した注入材料M1は所定の時間をかけて硬化し、逸散防止層BLを形成する。
本発明において、注入材料M1は硬化させなくても良いが、硬化させたほうが好ましい。注入材料M1を硬化させることで、硬化させない場合と比べてマイクロバブルの逸散防止効果を高めることができるからである。
なお、本明細書において逸散防止層BLとは、改良対象領域Zの上方に設ける
逸散防止領域のことをいう。
【0038】
前記注入材料M1は、マイクロバブルMBの逸散を防ぐことができるものを用いる。具体的には、水ガラスなどの薬液、セメントやベントナイトなどの微細粒子、高分子ポリマーなどの粘性の高い液体等を用いることができる。
【0039】
第一実施例においては、注入材料M1を地盤に供給して逸散防止層BLを形成する例を示したが、本発明はこのような形態に限られない。
具体的には、改良対象領域Zの上方にある土を掘り返し、できた穴にセメント等の粘性の高い液体を流し込んで硬化させた後、そのセメント等の上に掘り返した土を戻すという作業によって逸散防止層BLを形成するようにしても良い。
また、改良対象領域Zの上方にある土を掘り返し、できた穴に逸散防止材料としての遮水シート等を敷いた後、その遮水シート等の上に掘り返した土を戻すという作業によって逸散防止層BLを形成するようにしても良い。
【0040】
本明細書において「逸散防止材料」とは、前記のように逸散防止層を形成するために地盤に注入する注入材料、地盤に流しこむセメント等の材料、地盤に敷く遮水シート等の材料などの総称をいう。
また、本明細書において、逸散防止材料の「供給」とは、逸散防止材料を注入すること、または、逸散防止材料を流し込むこと、または、遮水シートを敷設することをいう。
【0041】
逸散防止層BLが空気を遮断する遮断性能は、10
-6cm/sec程度あるのが好ましい。また、逸散防止層BLの深さ方向の厚さは施工方法によって異なるため、前記10
-6cm/sec程度の遮断性能が確保できるのであれば厚さは特に問わない。
【0042】
図6は、地盤中に逸散防止層BLを形成した後に、マイクロバブル水(MB水)を供給した時の断面図である。
第一実施例においては、予め、逸散防止層BLを地盤中に形成した後、逸散防止層BLの下方にある改良対象領域Zにマイクロバブル水(MB水)を供給する。
より具体的には、改良対象領域Zに挿入されている供給ロッド10から注入材料M1供給用の内管20Aを取り出し、前記供給ロッド10にマイクロバブル水(MB水)供給用の内管20Bを入れる。そして、前記内管20Bを袋体21によって供給ロッド10に固定する。その後、高濃度の空気溶存水Jを内管
20Bの中に供給する。供給された高濃度の空気溶存水Jは、気泡発生ノズル7を通ってマイクロバブル水(MB水)になり、内管20Bに設けられた吐出口22、供給ロッド10に設けられたゴムスリーブ式逆支弁35のスリット36を通じて、地盤へと供給する。
このマイクロバブル水(MB水)の供給量は、可能な限り多くすることが好ましい。通常は、飽和度が90%以下となることを目標とし、その目標の飽和度になったか否かは、例えば地盤の比抵抗測定により判定することができる。
また、改良対象領域Zの深さ方向の厚さは、対象となる地盤層の厚さや目的とする地盤強度によって決定する。改良対象領域Zの深さ方向の厚さを厚くすると、地盤強度の増加を図ることができるとともに、長い間不飽和状態を維持することができる。
前記マイクロバブル水(MB水)供給時、前記逸散防止層BLにより、マイクロバブルが改良対象領域Zの外に逸散することを防ぐことができる。
【0043】
図7は、地盤中にマイクロバブル水(MB水)を供給した後の断面図である。
地盤へ供給されたマイクロバブル水(MB水)は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散し、改良対象領域Z全体に広がり、不飽和領域Cを形成する。このマイクロバブル水(MB水)によって、地盤の飽和度を低下させることができるため、液状化発生を防止することができる。
不飽和領域Cとは、マイクロバブル水(MB水)が改良対象領域Zに供給されるによって、地盤の飽和度が低下した領域をいう。
マイクロバブル水供給後、地盤中に供給されたマイクロバブルMBは結合して径が大きくなり、浮上しやすくなる。しかし、マイクロバブルMBが不飽和領域Cから上方へ逸散することを逸散防止層BLによって防ぎ、不飽和領域C内にマイクロバブルMBを滞留させる。そのため、地盤の飽和度が低下した状態を維持することができる。
また、逸散防止層BLにより、不飽和状態が保たれるとともに逸散防止層BLにより地盤全体の耐震性が向上することから、地震で長時間揺れが続いた場合の液状化発生や、地盤の振動によるせん断破壊や即時沈下を防止することができる。
前記のとおり、マイクロバブル水(MB水)を供給した地盤は、マイクロバブルMBが逸散防止層BLによって地盤内に滞留するため、長期間飽和度が低下した状態を維持することができる。
但し、天災地変等の予期しない事態が発生し、不飽和領域C内のマイクロバブルMB量が低下する場合に備え、数年程度の時間間隔で飽和度の測定を行い、必要によりマイクロバブル水(MB水)の再注入を行うことも可能である。なお,再注入には、地盤に挿入した供給ロッド10を利用する。そのため、マイクロバブル水(MB水)を改良対象領域Zに供給して、不飽和層Cを形成した後も、供給ロッド10はそのまま地盤内に挿入したままにしておくのが好ましい。
【0044】
<地盤の改良方法の第二実施例>
以下、
図8〜
図10を用いて、地盤の改良方法の第二実施例を説明する。
図8は、改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した断面図である。
なお、本明細書には対応する平面図を描いていないが、改良対象領域Zを取り囲むように逸散防止壁BWを設けるのが好ましい。改良対象領域Zを取り囲むように逸散防止壁BWを設けることで、改良対象領域Zに供給したマイクロバブルMBが外方へ抜け出ることを防ぐことができるともに、改良対象領域Zの外方から改良対象領域Z内へ地下水W等が浸入することを防ぐことができる。
また、逸散防止壁BWは,改良対象領域Zの外方の一部にのみ設けるようにしてもよい。一部に設けても、一定の前記効果が見込まれる。
なお、本明細書において逸散防止壁BWとは、改良対象領域Zの外方に縦方向に設ける
逸散防止領域のことをいう。この逸散防止壁BWは、シートパイル等の硬い素材からなるもののほか、遮水シートのような柔らかい素材からなるものも含む。
【0045】
改良対象領域Zの外方に設ける逸散防止壁BWとしては、シートパイル、ソイルセメント壁、薬液注入壁のような地盤改良壁、遮水シートなどを用いることができる。
前記シートパイル、ソイルセメント壁、薬液注入壁などは気泡の逸散を防止するだけでなく、地盤強度を効果的に高めることができる。その結果、耐震性
を向上することができる。
なお、薬液注入壁とは、逸散防止壁BWを形成する箇所に水ガラス等の薬液を注入して硬化させることで形成する壁のことをいう。
【0046】
図8では、逸散防止壁BWにシートパイルを用いた例を示している。改良対象領域Zの外方に設ける逸散防止壁BWに地下水W等が接触する可能性があるため、逸散防止壁BWにシートパイルなどの環境に影響が少ない材料を用いることで、地下水Wが汚染されることを防ぐことができる。
また、薬液注入壁を用いる場合であっても、水ガラスなどであれば、環境に影響を与える可能性が少なく、地下水Wの汚染を前記と同様に防ぐことができる。
【0047】
また、逸散防止壁BWの深さは、後に供給するマイクロバブル水(MB水)のマイクロバブルMBが改良対象領域Zから抜け出ないように、マイクロバブル水(MB水)を供給する深さよりも深い位置にするのが望ましい。
【0048】
さらに、逸散防止壁BWは、縦方向、言い換えるならば、深さ方向に設ける。
このとき、地表と垂直もしくはそれと近い角度に設けるのが望ましいが、所定の角度をつけて斜めに設けても良い。
【0049】
図9は、改良対象領域Zの外方に逸散防止壁BWを形成した後に、マイクロバブル水(MB水)を供給した時の断面図である。
第二実施例においては、改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した後、逸散防止壁BWの内側にある改良対象領域Zにマイクロバブル水(MB水)を供給する。
具体的には、改良対象領域Zに挿入されている供給ロッド10にマイクロバブル水(MB水)供給用の内管20Bを入れる。そして、前記内管20Bを袋体21によって供給ロッド10に固定する。その後、高濃度の空気溶存水Jを内管
20Bの中に供給する。供給された高濃度の空気溶存水Jは、気泡発生ノズル7を通ってマイクロバブル水(MB水)になり、内管20Bに設けられた吐出口22、供給ロッド10に設けられたゴムスリーブ式逆支弁35のスリット36を通じて、地盤へと供給する。
地盤へ供給されたマイクロバブル水(MB水)は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散し、改良対象領域Z全体に広がる。
前記のように、マイクロバブル水を供給する前に逸散防止壁BWを形成しておくことで、マイクロバブル水(MB水)供給時に、改良対象領域Zに供給されたマイクロバブルMBが外方へ逸散することを防ぐことができる。
【0050】
図10は、地盤中にマイクロバブル水(MB水)を供給した後の断面図である。
マイクロバブル水(MB水)によって、地盤の飽和度を低下させることができるため、液状化発生を防止することができる。
また、マイクロバブル水(MB水)供給後において、不飽和層Cに地下水Wが通っている場合、逸散防止壁BWによって地下水Wが不飽和層C内に浸入することを防ぐことができるため、地盤の間隙内に供給したマイクロバルブMBが地下水流によって除々に運ばれていき、不飽和層Cの飽和度が次第に上昇してしまう事態を防ぐことができる。
【0051】
<地盤の改良方法の第三実施例>
以下、
図11〜
図13を用いて、地盤の改良方法の第三実施例を説明する。
図11は、地盤中へ注入材料M1を供給した時の断面図である。
第三実施例においては、改良対象領域Zを地盤の深さ方向に複数設け、各改良対象領域Zの上方にそれぞれ逸散防止層BLを形成する。
図11では、この逸散防止層BLを形成すべく、地盤中に注入材料M1を供給している。地盤中に供給された注入材料M1は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散する。拡散した注入材料M1は所定の時間をかけて硬化し、逸散防止層BLを形成する。
なお、逸散防止層BLを形成する過程については、第一実施例と同じであるため、説明を割愛する。
【0052】
図12は、地盤中に逸散防止層BLを形成した後に、マイクロバブル水(MB水)を供給した時の断面図である。
第三実施例においては、地盤の深さ方向に逸散防止層BLを複数設けた後、各逸散防止層BLの下方にある改良対象領域Zにマイクロバブル水(MB水)を供給する。
このマイクロバブル水(MB水)を供給する過程についても、第一実施例と同じであるため、説明を割愛する。
このように、マイクロバブル水(MB水)を供給する前に、逸散防止層BLを形成しておくことにより、マイクロバブルが改良対象領域Zの外に逸散することを防ぐことができる。
【0053】
図13は、地盤の深さ方向に複数の逸散防止層BLを形成し、その下方にマイクロバブル水(MB水)を供給して不飽和層Cを形成した後の断面図である。
上方から逸散防止層BL、不飽和層C、逸散防止層BL、不飽和層Cという順に層が形成されている。
なお、逸散防止層BL及び不飽和層Cの数や、深さ方向の厚さは、地盤層の厚さや目的とする地盤強度を考慮して決定する。
【0054】
マイクロバブル水(MB水)を供給した後において、時間の経過とともに、マイクロバブルMBが結合し、径が大きくなり浮上することも考えられ、改良対象領域Zの上下で飽和度に差が生じる可能性がある。
【0055】
改良対象領域Zを一つだけ設けた場合は、改良対象領域Zの厚さが厚くなるため、改良対象領域Zの上下の飽和度の差が大きくなるが、本実施例のように改良対象領域Zを地盤の深さ方向に複数設けることにより、改良対象領域Zの厚さを薄くすることができ、改良対象領域Zの上下の飽和度の差を小さくすることができる。
【0056】
さらに、逸散防止層BLを一つだけ設けた場合は、その一部分だけ地盤強度が高くなるに過ぎないが、逸散防止層BLを深さ方向に複数設けることにより、より地盤の強度を高めることができる。
【0057】
<地盤の改良方法の第四実施例>
以下、
図8、
図14、
図15を用いて、地盤の改良方法の第四実施例を説明する。
図8は、改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した断面図である。
図8において、第二実施例と重複する部分については、説明を割愛する。
第四実施例においては、第二実施例よりも逸散防止壁BWを地中深くまで形成する点に特徴がある。後に供給するマイクロバブル水(MB水)のマイクロバブルMBが改良対象領域Zから抜け出ないようにするため、マイクロバブル水(MB水)を供給する深さよりも深い位置に逸散防止壁BWを形成する必要があるからである。
【0058】
図14は、改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した後、マイクロバブル水(MB水)を供給した時の断面図である。
第二実施例とは異なり、供給ロッド10を地中深くまで挿入する。そして、供給ロッド10の外壁であって、地盤の深さ方向に複数設けられたゴムスリーブ逆支弁35のスリット36から、マイクロバブル水(MB水)を地盤内へ供給する。
【0059】
図15は、地盤中にマイクロバブル水(MB水)を供給した後の断面図である。
地盤へ供給されたマイクロバブル水(MB水)は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散し、改良対象領域Z全体に広がり、不飽和層Cを形成する。
第二実施例の場合よりも、地中深くまでマイクロバブル水(MB水)を行き渡らせることができるため、第二実施例よりも地盤の飽和度を低下させることができ、液状化発生をより防止することができる。
また、地中の奥深くにも逸散防止壁BWが形成されているため、地中の深い場所にある地盤に供給されたマイクロバブルMBが、地下水流によって除々に運ばれていき、不飽和層Cの飽和度が次第に上昇してしまう事態を防ぐことができる。
【0060】
<地盤の改良方法の第五実施例>
以下、
図8、
図16、
図17を用いて、地盤の改良方法の第五実施例を説明する。
図8は、改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した断面図である。この点は第四実施例と同じであるため、説明を割愛する。
【0061】
図16は、改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した後、注入材料M1およびマイクロバブル水(MB水)を供給した時の断面図である。
改良対象領域Zの外方の縦方向に逸散防止壁BWを形成した後、マイクロバブル水(MB水)を供給して地盤を改良しようとする改良対象領域Zの上方に、マイクロバブルMBが逸散することを防止する逸散防止層BLを地盤中に形成する。
【0062】
図16においては、改良対象領域Zを地盤の深さ方向に二つ設け、この各改良対象領域Zの上方にそれぞれ逸散防止層BLを形成すべく、地盤中に注入材料M1を供給している。
具体的には、改良対象領域Zに供給ロッド10を挿入した後、供給ロッド10内に注入材料M1を供給するための内管20Aを入れ、前記内管20Aを袋体21によって供給ロッド10に固定する。その後、前記内管20A内に注入材料M1を入れ、その注入材料M1を前記内管20Aに設けられた吐出口22、供給ロッド10に設けられたゴムスリーブ式逆支弁35のスリット36を通じて、改良対象領域Zの上方に位置する地盤へと供給する。
前記ゴムスリーブ逆支弁35のスリット36は、深さ方向に離間して複数設けられており、最も上にあるスリット36と、上から三番目の位置にあるスリット36から、注入材料M1が吐出される。
地盤へ供給された注入材料M1は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散する。拡散した注入材料M1は所定の時間をかけて硬化し、逸散防止層BLを形成する。
【0063】
そして、改良対象領域Zに挿入されている供給ロッド10から注入材料M1供給用の内管20Aを取り出し、前記供給ロッド10にマイクロバブル水(MB水)供給用の内管20Bを入れる。その後、前記内管20Bを袋体21によって供給ロッド10に固定し、高濃度の空気溶存水Jを内管
20Bの中に供給する。供給された高濃度の空気溶存水Jは、気泡発生ノズル7を通ってマイクロバブル水(MB水)になり、内管20Bに設けられた吐出口22、供給ロッド10に設けられたゴムスリーブ式逆支弁35のスリット36を通じて、地盤へと供給する。
当該マイクロバブル水(MB水)は、供給ロッド10に設けられた複数のゴムスリーブ逆支弁35のスリット36のうち、上から二番目の位置にあるスリット36と、四番目の位置にあるスリット36から吐出される。
地盤へ供給されたマイクロバブル水(MB水)は、土粒子間の間隙等を通過して八方に拡散し、改良対象領域Z全体に広がり、不飽和層Cを形成する。このマイクロバブル水(MB水)によって、地盤の飽和度を低下させることができるため、液状化発生を防止することができる。
【0064】
図17は、地盤の深さ方向に複数の逸散防止層BLを形成し、その下方にマイクロバブル水(MB水)を供給して不飽和層Cを形成した後の断面図である。
上方から逸散防止層BL、不飽和層C、逸散防止層BL、不飽和層Cという順に層が形成されている。
このように、不飽和層Cを地盤の深さ方向に複数設け、各不飽和層Cの上方にそれぞれ逸散防止層BLを形成することで、各不飽和層C内のマイクロバブルMBを滞留させることができる。
【0065】
また、マイクロバブル水(MB水)を供給した後において、時間の経過とともに、マイクロバブルMBが結合し、径が大きくなり浮上することも考えられ、改良対象領域Zの上下で飽和度に差が生じる可能性がある。
【0066】
改良対象領域Zを一つだけ設けた場合は、改良対象領域Zの厚さが厚くなるため、改良対象領域Zの上下の飽和度の差が大きくなるが、本実施例のように改良対象領域Zを地盤の深さ方向に複数設けることにより、改良対象領域Zの厚さを薄くすることができ、改良対象領域Zの上下の飽和度の差を小さくすることができる。
【0067】
さらに、逸散防止層BLを一つだけ設けた場合は、その一部分だけ地盤強度が高くなるに過ぎないが、逸散防止層BLを深さ方向に複数設けることにより、より地盤の強度を高めることができる。
【0068】
また、マイクロバブル水(MB水)供給後において、不飽和層Cに地下水Wが通っている場合、逸散防止壁BWによって地下水Wが不飽和層C内に浸入することを防ぐことができるため、地盤の間隙内に供給したマイクロバルブMBが地下水流によって除々に運ばれていき、不飽和層Cの飽和度が次第に上昇してしまう事態を防ぐことができる。