(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースは、前記第1延出部及び/又は第2延出部との干渉を回避するために、前記枠から退避された退避部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーカー。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池パックやモーター等の保護装置としてブレーカーが使用されている(
図9及び
図10参照)。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置の安全回路として用いられるブレーカーは、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作することと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。
【0003】
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
【0004】
ブレーカーには、温度変化に応じて動作し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片(ベースターミナル)、可動片(可動アーム)、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、樹脂ケースに収容されてなり、固定片及び可動片の端子が電気機器の電気回路に接続されて使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示されたブレーカーにおいて薄型化を追求する場合、開回路時(
図3参照)の固定接点と可動接点の距離(ギャップ)が短くなる傾向にある。ところが、開回路時における固定接点と可動接点との距離が短くなりすぎると、電流の遮断が十分に行えなくなる虞が生じ、安全性を確保することが容易ではなくなる。特に、薄型化のために熱応動素子の厚みを薄く設定すると、熱応動素子の逆反り変形時に可動片の先端部を押し上げる力が弱くなるため、開回路時の固定接点と可動接点との距離を維持することが困難になり、電流の遮断を確実に行えなくなる虞がある。また、薄型化のために湾曲係数の小さい熱応動素子を用いた場合も、可動片の先端部の押し上げ量が減少し、同様の課題が生ずる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、開回路時に電流を確実に遮断して電気機器の安全性を確保しつつ、小型化を実現できるブレーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のブレーカーは、固定接点を有する固定片と、弾性変形する弾性部と該弾性部の先端部に可動接点とを有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容するケースとを備えたブレーカーにおいて、前記熱応動素子は、変形時に前記ケースに形成されている枠によって案内される被案内部と、前記被案内部から延出されて、変形時に前記可動片の基端部と当接される第1延出部を有することを特徴とする。
【0009】
この発明において、前記熱応動素子は、前記被案内部から延出されて、変形時に前記可動片の先端部と当接される第2延出部を有することが好ましい。
【0010】
この発明において、前記ケースは、前記第1延出部及び/又は第2延出部との干渉を回避するために、前記枠から退避された退避部を有することが好ましい。
【0011】
この発明において、前記可動片には、前記第1延出部及び/又は第2延出部と当接する位置に、前記熱応動素子の側に突出する突起が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の電気機器用の安全回路は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の2次電池パックは、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレーカーによれば、ケースの枠に案内される被案内部から可動片の基端部の側に延出された第1延出部によって熱応動素子の全長が伸ばされる。これにより、熱応動素子の逆反り変形時における可動片の先端部の押し上げ量が増加し、開回路時の固定接点と可動接点との距離を大きくすることができる。従って、開回路時に電流を確実に遮断して電気機器の安全性を確保しつつ、ブレーカーの小型化を実現できるようになる。
【0015】
また、被案内部から可動片の先端部の側に延出された第2延出部によって熱応動素子の全長がさらに伸ばされる構成によれば、熱応動素子の逆反り変形時における可動片の先端部の押し上げ量がさらに増加する。その結果、開回路時の固定接点と可動接点との距離をより一層大きくすることができる。
【0016】
また、熱応動素子を案内する枠から退避された退避部がケースに形成されている構成によれば、第1延出部の延出量(被案内部からの突き出し量)を大きく設定しても、ケースと第1延出部との干渉を回避することができる。これにより、第1延出部の延出量を容易に大きく設定することが可能となり、熱応動素子の逆反り変形時における可動片の先端部の押し上げ量をさらに増加させて、開回路時の固定接点と可動接点との距離をより一層大きくすることができる。 退避部によってケースと第2延出部との干渉を回避して、開回路時の固定接点と可動接点との距離をより一層大きくできる効果についても同様である。
【0017】
また、可動片において第1延出部と当接する位置に、熱応動素子の側に突出する突起が形成される構成によれば、熱応動素子の変形時において、可動片が熱応動素子の第1延出部と当接するタイミングを早めつつ、熱応動素子の逆反り変形時における可動片の先端部の押し上げ量をさらに増加させることが可能となり、電機機器の安全性をより一層高めることができる。また、可動片において第2延出部と当接する位置に、熱応動素子の側に突出する突起が形成される構成に関して、可動片が熱応動素子の第2延出部と当接するタイミングを早めつつ、可動片の先端部の押し上げ量をさらに増加させる作用・効果についても同様である。
【0018】
また、本発明のブレーカーを備えた安全回路又は2次電池パックによれば、開回路時に電流を確実に遮断して電気機器の安全性を確保しつつ、安全回路又は2次電池パックの小型化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。
図1乃至
図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容する樹脂ケース7等によって構成されている。樹脂ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)72等によって構成されている。
【0021】
固定片2は、リン青銅を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部と電気的に接続される端子22が形成され、他端部の近傍にはPTCサーミスター6が載置されている。PTCサーミスター6は、固定片2の他端部の近傍に3箇所形成された凸状のダボ(小突起)の上に載置される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口73の一部から露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に突出されている。
【0022】
可動片4は、固定片2と同等の金属板をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の長手方向の一端には外部と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に突出される。本実施形態においては、固定片2の端子22と可動片4の端子41の高さを揃えるために、可動片4は、樹脂ケース7の外部の段曲げ部46においてクランク状に屈曲されている。可動片4の他端部(アーム状の可動片4の先端部に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、固定部42(アーム状の可動片4の基端部に相当)、弾性部43を有している。固定部42は弾性部43の根元に相当し、固定部42において樹脂ベース71とカバー部材72によって挟み込まれて可動片4が片持ち固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端部に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0023】
また、可動片4には、クランク状に形成された段曲げ部46が形成されている。段曲げ部46は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側に設けられている。段曲げ部46によって、可動片4の端子41の高さが、固定片2の端子22の高さに合わせられる。
【0024】
また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して一対の突起44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とが二個所で接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の逆反り変形が弾性部43に伝達される(
図2及び
図3参照)。本実施形態にあっては、
図2に示すブレーカー1の閉回路状態において突起44a,44bと熱応動素子5とが接触せず、
図3に示すブレーカー1の開回路状態において突起44a,44bと熱応動素子5とが接触する構成を有しているが、突起44a及び/又は44bと熱応動素子5とが常時接触する構成であってもよい。可動片4の材料としては、リン青銅を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。なお、可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収容できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。
【0025】
熱応動素子5は、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなり、平面視で矩形の本体部50と、本体部50の端縁から可動片4の固定部42の側(すなわち基端部の側)に延出された第1延出部51とを有する。本体部50は、側面視で円弧状に湾曲した初期形状をなし、過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反り変形し、冷却により復帰温度を下回ると形状が復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から本体部50は平面視で矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレスなど各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。第1延出部51は、本体部50の端縁の中間部分に形成されている。第1延出部51の幅寸法(ブレーカー1の短手方向の寸法)は、本体部50の幅寸法よりも小さく設定されている。これにより、樹脂ベース71の上面の面積、すなわち樹脂ベース71とカバー部材72との接合面積を広くすることができ、両者を強固に接合し、ブレーカー1の堅牢性を高めることができる。
【0026】
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。
【0027】
樹脂ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材72は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂により成形されている。樹脂ベース71には、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための開口73などが形成されている。開口73の内部には、枠74及び枠75が形成されている。樹脂ベース71に組み込まれたPTCサーミスター6の端縁は、枠74と当接されている。また、熱応動素子5の本体部50の端縁は、枠75と当接されて、熱応動素子5の変形時に案内される。すなわち、枠75は、熱応動素子5の変形時に熱応動素子5を案内する案内部として機能し、熱応動素子5の本体部50の端縁は、枠75によって案内される被案内部として機能する。
【0028】
樹脂ベース71の枠75は、熱応動素子5を円滑に案内できるように、平面視で本体部50と相似形でかつ本体部50よりも僅かに大きく形成されている。また、第1延出部51に対応する位置には、第1延出部51との干渉を回避するように、枠75から可動片の固定部42の側に凹状に退避された退避部76が形成されている。退避部76は、第1延出部51に対して若干大きく退避されている。すなわち、熱応動素子5の第1延出部51と退避部76の側壁とのクリアランスは、熱応動素子5の本体部50と樹脂ベース71の枠75との間のクリアランスよりも大きく設定されている。従って、枠75の内部で熱応動素子5が移動しても、第1延出部51の端縁と退避部76の側壁は当接しない。これにより、熱応動素子5の変形時に第1延出部51が樹脂ベース71の一部と干渉することはない。また、カバー部材72には、固定部42の上面と当接し、固定部42を押える押え部78が設けられる。押え部78は、平面視で固定部42と重複する領域から可動接点3の側に、突起44aと熱応動素子5との当接部位よりも突出するように形成されている。このように可動接点3の側に押え部78を延出して設けることにより、弾性部43を下方に付勢して固定接点21と可動接点3との接触圧力を高め、両者間の接触抵抗を低減できる。
【0029】
なお、可動片4の固定部42の近傍には、固定接点22及び可動接点3等の構成部品が存在しない。従って、熱応動素子5に第1延出部50を、樹脂ベース71に退避部76をそれぞれ設ける形態は、可動接点3の側に延出部及び退避部を設ける形態と比較すると、ブレーカー1の小型化が阻害される傾向が小さい。
【0030】
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容した樹脂ベース71の開口73を塞ぐように、カバー部材72が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
【0031】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の閉回路動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0032】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の開回路動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0033】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、
図2に示す導通状態に復帰する。
【0034】
図4は、樹脂ベース71に熱応動素子5及び可動片4が組み込まれる様子を示す。熱応動素子5は、樹脂ベース71の枠75に案内されて、樹脂ベース71に組み込まれる。枠75は、平面視で可動片4の本体部50よりも僅かに大きく形成されているので、熱応動素子5は、枠75の内側で僅かながら移動可能とされる。枠75の内側で熱応動素子5がどのように移動しても、第1退避部51が樹脂ベース71の内側壁に接触しないように退避部76が形成されている。従って、
図2乃至
図3に示す熱応動素子5の変形時に第1延出部51が樹脂ベース71の内側壁と干渉しないため、熱応動素子5の変形動作が阻害されることがない。
【0035】
図4に示すように熱応動素子5及び可動片4が樹脂ベース71に組み込まれた後、樹脂ベース71にカバー部材72が装着される。
【0036】
樹脂ベース71にカバー部材72が完全に装着されると、樹脂ベース71又はカバー部材72のいずれか一方又は両方に超音波振動が付与され、樹脂ベース71とカバー部材72が溶着される。
【0037】
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、樹脂ベース71の枠75に案内される被案内部(すなわち熱応動素子5の本体部50の端縁)から可動片4の固定部42の側に延出された第1延出部51によって熱応動素子5の全長が伸ばされる。これにより、熱応動素子5の逆反り変形時における可動片4の先端部の押し上げ量が増加し、開回路時の固定接点21と可動接点3との距離を大きくすることができる。従って、開回路時に電流を確実に遮断して電気機器の安全性を確保しつつ、ブレーカー1の小型化を実現できるようになる。
【0038】
また、熱応動素子5を案内する枠75から可動片4の固定部42の側に退避された退避部76が樹脂ベース71に形成されているので、第1延出部51の延出量(本体部50の端縁からの突き出し量)を大きく設定しても、樹脂ベース71と第1延出部51との干渉を回避することができる。これにより、第1延出部51の延出量を容易に大きく設定することが可能となり、熱応動素子5の逆反り変形時における可動片4の先端部の押し上げ量をさらに増加させて、開回路時の固定接点21と可動接点3との距離をより一層大きくすることができる。
【0039】
また、可動片4の弾性部43において第1延出部51と当接する位置に、熱応動素子5の側に突出する突起44aが形成されているので、熱応動素子5の本体部50の曲率(湾曲係数)を維持しつつ、可動片4と第1延出部51との間隔(ギャップ)を小さくできる。これにより、熱応動素子5の変形時において、可動片4が熱応動素子5の第1延出部51と当接するタイミングを早めつつ、熱応動素子5の逆反り変形時における可動片4の先端部の押し上げ量をさらに増加させることが可能となる。従って、電機機器の安全性をより一層高めることができる。
【0040】
(変形例)
図5は、樹脂ベース71と、それに組み込まれる熱応動素子5の変形例を示す。この変形例においては、熱応動素子5に第2延出部52が、樹脂ベース71に退避部77がそれぞれ形成されている点で、上記実施形態と相違する。第2延出部52は、本体部50の端縁から可動接点3の側、すなわち可動片4の先端部の側に延出される。これに伴い、突起44bも可動片4の先端部の側に移動され、開回路時に第2延出部52と当接される。また、第2延出部52に対応する位置には、第2延出部52との干渉を回避するように、枠75から可動接点3の側に凹状に退避された退避部77が形成されている。
【0041】
本変形例によれば、樹脂ベース71の枠75に案内される熱応動素子5の本体部50の端縁から可動片4の先端部の側に延出された第2延出部52によって熱応動素子5の全長がさらに伸ばされ、熱応動素子5の逆反り変形時における可動片4の先端部の押し上げ量がさらに増加する。その結果、開回路時の固定接点21と可動接点3との距離をより一層大きくすることができる。
【0042】
また、退避部76と同様に、退避部77によって樹脂ベース71と第2延出部52との干渉を回避して、開回路時の固定接点21と可動接点3との距離をより一層大きくできる。また、突起44aと同様に、可動片4の弾性部43において第2延出部52と当接する位置に、熱応動素子5の側に突出する突起44bが形成されているので、熱応動素子5の本体部50の曲率(湾曲係数)を維持しつつ、可動片4と第2延出部52との間隔(ギャップ)を小さくできる。これにより、熱応動素子5の変形時において、可動片4が熱応動素子5の第2延出部52と当接するタイミングを早めつつ、熱応動素子5の逆反り変形時における可動片4の先端部の押し上げ量をさらに増加させることが可能となる。従って、電機機器の安全性をより一層高めることができる。なお、第2延出部52の幅寸法が、本体部50の幅寸法よりも小さく設定され、樹脂ベース71とカバー部材72との接合面積を広くしてブレーカー1の堅牢性を高める点に関しては、
図1乃至
図4に示した形態と同様である。
【0043】
(変形例)
図6は、熱応動素子5の別の変形例及び可動片44の基端部周辺を拡大して示す。この変形例においては、熱応動素子5の第1延出部55が、本体部50との境界において屈曲され、平面状に形成されている点で、上記実施形態と相違する。この変形例によれば、熱応動素子5の変形時において、可動片4が熱応動素子5の第1延出部55と当接するタイミングを早めつつ、熱応動素子5の逆反り変形時における可動片4の先端部の押し上げ量をさらに増加させることが可能となる。従って、電機機器の安全性をより一層高めることができる。
図5に示した第2延出部52を同様に形成しても同等の作用・効果が得られる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも熱応動素子5が、変形時に樹脂ケース7に形成されている枠75によって案内される被案内部と、被案内部から延出されて、変形時に可動片4の基端部と当接される第1延出部51を有していればよい。例えば、熱応動素子5を構成する枠75、退避部76,77及び樹脂ベース71を構成する第1延出部51、第2延出部52等の形状は、
図1乃至
図6に示したものに限られない。
【0045】
図7は、樹脂ベース71の枠75、退避部76,77及び熱応動素子5の本体部50、第1延出部51、第2延出部52の変形例を示す。(a)は第1延出部51を三角状に延出した変形例、(b)は第1延出部51を半円状に延出した変形例、(c)は本体部50を円形に形成し、第1延出部51を矩形状に延出した変形例、(d)は本体部50を小判型に形成し、第1延出部51を矩形状に延出した変形例である。(d)に類似する変形例として、本体部50を楕円状に形成してもよい。また、(e)乃至(h)は、上記第1延出部51と対称に第2延出部52を延出した変形例である。いずれの変形例においても、枠75は、平面視で本体部50と相似形でかつ本体部50よりも僅かに大きく形成されている。また、退避部76は、枠75内で熱応動素子5が移動した場合であっても第1延出部51と干渉しないように、固定部42の側に退避されている。同様に、退避部77も、枠75内で熱応動素子5が移動した場合であっても第2延出部52と干渉しないように、可動接点3の側に退避されている。なお、第1延出部51及び第2延出部52の幅寸法が、本体部50の幅寸法よりも小さく設定され、樹脂ベース71とカバー部材72との接合面積を広くしてブレーカー1の堅牢性を高める点に関しては、
図1乃至
図4に示した形態と同様である。
【0046】
また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、導通抵抗を抑制しつつ、ブレーカー1の小型化を図ることができる。また、樹脂ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材72によって構成される形態に限られることなく、固定片2、可動片4及び熱応動素子5等を収容する形態であれば他の形態であってもよい。また、枠75及び退避部76,77は、樹脂ベース71に設けられる形態に限られることなく、樹脂ケース7のいずれかに形成されていればよい。
【0047】
また、特開2005−203277号公報に示されるような、固定部42又はその近傍において、可動片4が端子41の側と可動接点3の側に構造的に分離している形態に、本発明を適用してもよい。
【0048】
図8は、参考例として、従来から上記特許文献1に記載のブレーカー等に適用されている熱応動素子500の一例を示す。特開2002−83523号公報に示されるように、ブレーカーの製造工程において熱応動素子500はキャリア501によって搬送され、キャリア501の根元近傍が切断されて、熱応動素子500が樹脂ベース71の開口73に組み込まれる。切断端縁550aが本体部550の端縁550bから外側に突出すると、樹脂ベース71の一部と干渉し、熱応動素子500の変形が阻害される。ところが、切断端縁550aの突出量は、キャリア501の切断精度に依存するため、管理に限界がある。
【0049】
そこで、上記特許文献1に記載のブレーカーにおいては、切断端縁550aが本体部550の端縁550bから外側に突出しないように、端縁550bから内側に一対の切り欠き550cを設け、端縁550bの内側でキャリア501を切断している。すなわち、キャリア501の切断精度に応じて切り欠き50cの深さ等を設定することにより、切断端縁550aが常に端縁550bから内側に位置されるように設計されていた。ところが、このような熱応動素子500にあっては、熱応動素子500の変形時に切り欠き550cの周辺に応力が集中しやすく、繰り返しの変形においては、疲労によってクラックが生ずる虞があった。
【0050】
一方、本発明のブレーカー1においては、キャリア501の一部を第1延出部51又は第2延出部52として用いることができる。この場合、樹脂ベース71に退避部76,77が形成されているので、キャリア501の切断精度にバラツキが生じても切断端縁(第1延出部51又は第2延出部52の先端縁)と樹脂ベース71との干渉が回避される。これにより、熱応動素子5に切り欠き550cを設ける必要がなくなる。熱応動素子5の形状によっては、第1延出部51又は第2延出部52の根元に応力が集中しがちな隅部が存在することもあるが、この隅部は、
図8に示した本体部550の内側に存在する切り欠き50cよりも、外側に位置される。従って、熱応動素子5の変形の際に、隅部に生ずる応力は切り欠き50cに生ずる応力よりも小さくなり、クラックが生じ、スナップアクションにより凹凸を転ずる本体部50の曲面に悪影響が及ぶ虞が低減される。