特許第5918535号(P5918535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918535
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】化粧料用油組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/33 20060101AFI20160428BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20160428BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   A61K8/33
   A61K8/31
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61K8/89
   A61K8/92
   A61Q1/14
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-534194(P2011-534194)
(86)(22)【出願日】2010年9月16日
(86)【国際出願番号】JP2010066058
(87)【国際公開番号】WO2011040254
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年3月13日
【審判番号】不服2015-2057(P2015-2057/J1)
【審判請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2009-229176(P2009-229176)
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】坂西 裕一
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 松浦 新司
【審判官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
DB:CAplus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリンモノオクチルエーテル及びジグリセリンモノデシルエーテルから選択される少なくとも1種の中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜20重量%、ジグリセリンモノオレイルエーテル及びジグリセリンモノミリスチルエーテルから選択される少なくとも1種の長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜20重量%、シリコーン油、エステル油、液状油脂、炭化水素、オレイン酸、トール油、及びイソステアリン酸から選ばれる少なくとも1種類の油性成分を60〜98重量%含有することを特徴とする化粧料用油組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧料用油組成物を含有するクレンジング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料のクレンジング化粧料として有用な化粧料用油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品分野において、化粧落としのためのクレンジング化粧料には、多量の油剤を配合したクリーム状、乳液状、オイル状、油性ジェル状等のタイプから、油剤を全く配合しないか、又は微量配合したローション状、水性ジェル状等のタイプまで様々なものがある。
【0003】
多量の油剤を配合したタイプのクレンジング化粧料は、洗浄力は優れるが、水洗しても油性成分が残るためベタベタし、再度洗顔料などで洗浄する必要がある他、皮膚が濡れている状態では洗浄力や使用感が悪く、特に浴室での使用には不向きである点が問題であった。また、油剤を全く配合しないか微量配合したタイプのクレンジング化粧料は、水洗後のベタベタ感(油性感)は少ないが洗浄力が弱いという点が問題であった。
【0004】
これらの問題点を解決する為、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを配合した水系ジェル状洗浄剤が報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、充分な洗浄力が得られないだけでなく、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは安全性の面で問題があった。また、分子内に脂肪酸を有するため保存安定性が悪い点も問題であった。
【0005】
安全性を解決する方法として、ポリグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリンモノアルキルエーテルを配合したクレンジング化粧料が検討されている(例えば、特許文献3、4参照)。しかしながら、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、水配合系において加水分解され易いため経時安定性が悪い点が問題であった。また、ポリグリセリンモノアルキルエーテルを配合したクレンジング化粧料としては、水配合系のクレンジング化粧料が知られているが、ラメラ液晶相や両連続マイクロエマルションを形成するものではなく、洗浄力が不十分である点が問題であった。
【0006】
近年、オイル状のクレンジング化粧料の弱点である、皮膚が濡れた状態では洗浄力や使用感が悪いという問題を克服する方法として、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することにより、油相と水相の両方が連続した状態である両連続マイクロエマルションを形成する方法が開発された(特許文献5)。しかしながら、該ポリグリセリン脂肪酸エステルは疎水基を有さないポリグリセリン誘導体や意図しない多置換体を含有する複雑な混合物であるため界面活性能が弱く、両連続マイクロエマルションを形成し且つ十分な洗浄力を発揮するためには多量に添加する必要があった。そのため皮膚に対する刺激が強くなり炎症を引き起こす原因となる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−5213号公報
【特許文献2】特開平8−143420号公報
【特許文献3】特開2007−23025号公報
【特許文献4】特開2006−347900号公報
【特許文献5】特開2005−162691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、皮膚が濡れた状態でも、また濡れていない状態でも、メイク汚れに対し容易になじみ、水洗により油性感を残さずさっぱりと洗い流すことができ、安全性および経時安定性に優れる化粧料用油組成物、及び該化粧料用油組成物を含有するクレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のポリグリセリンモノアルキルエーテルを特定の割合で含有する化粧料用油組成物は、安全性及び経時安定性に優れ、水と混合すると両連続マイクロエマルションを形成することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、ジグリセリンモノオクチルエーテル及びジグリセリンモノデシルエーテルから選択される少なくとも1種の中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜20重量%、ジグリセリンモノオレイルエーテル及びジグリセリンモノミリスチルエーテルから選択される少なくとも1種の長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜20重量%、シリコーン油、エステル油、液状油脂、炭化水素、オレイン酸、トール油、及びイソステアリン酸から選ばれる少なくとも1種類の油性成分を60〜98重量%含有することを特徴とする化粧料用油組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記化粧料用油組成物を含有するクレンジング化粧料を提供する。
尚、本明細書には上記発明の他に、下記式(1)
1O−(C362)n1−H (1)
(式中、R1は炭素数6〜11の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数6〜14の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4である)
で表される中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜30重量%、下記式(2)
2O−(C362)n2−H (2)
(式中、R2は炭素数12〜18の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数16〜22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n2はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4である)
で表される長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜30重量%、シリコーン油、エステル油、液状油脂、炭化水素、オレイン酸、トール油、及びイソステアリン酸から選ばれる少なくとも1種類の油性成分を40〜98重量%含有することを特徴とする化粧料用油組成物、前記化粧料用油組成物を含有するクレンジング化粧料についても記載する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る化粧料用油組成物は、特定のポリグリセリンモノアルキルエーテルを界面活性剤として含有するため、水と混合すると両連続マイクロエマルションを形成することができる。そして、皮膚が濡れた状態で使用してもメイク汚れに対して速やかに馴染んで汚れを浮き上がらせることができ、水洗することにより油性感を残さず洗い流すことができる。本発明に係るクレンジング化粧料は、前記化粧料用油組成物を含有するため、浴室でも使用することができ、洗浄力及び使用感に優れるため、油性化粧料の洗浄剤として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る化粧料用油組成物は、下記式(1)
1O−(C362)n1−H (1)
(式中、R1は炭素数6〜11の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数6〜14の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4である)
で表される中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜30重量%、下記式(2)
2O−(C362)n2−H (2)
(式中、R2は炭素数12〜18の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数16〜22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n2はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4である)
で表される長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルを1〜30重量%、シリコーン油、エステル油、トリグリセロールから選ばれる少なくとも1種類の油性成分を40〜98重量%含有することを特徴とする。
【0014】
[中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテル]
本発明の中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルは下記式(1)で表され、式中、R1は炭素数6〜11の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数6〜14の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n1はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4である。
1O−(C362)n1−H (1)
【0015】
式(1)の括弧内のC362は、下記式(3)及び(4)で示される両方の構造を有する。
−CH2−CHOH−CH2O− (3)
−CH(CH2OH)CH2O− (4)
【0016】
1は炭素数6〜11の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数6〜14の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。炭素数6〜11の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル基等のC6-11直鎖アルキル基;n−ヘキセニル、n−デセニル、n−ウンデセニル等のC6-11直鎖アルケニル基を挙げることができる。炭素数6〜14の分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチルペンチル、エチルペンチル、メチルヘキシル、エチルヘキシル、メチルヘプチル、エチルヘプチル、プロピルヘプチル、ブチルオクチル、イソノニル、s−ノニル、t−ノニル、イソデシル、s−デシル、t−デシル、イソラウリル、s−ラウリル、t−ラウリル、イソミリスチル、s−ミリスチル、t−ミリスチル、イソセチル、s−セチル、t−セチル等のC6-14分岐アルキル基;イソオクテニル、s−オクテニル、t−オクテニル、イソデセニル、s−デセニル、t−デセニル、イソウンデセニル、s−ウンデセニル、t−ウンデセニル、イソドデセニル、s−ドデセニル、t−ドデセニル、イソトリデセニル、s−トリデセニル、t−トリデセニル、イソテトラデセニル、s−テトラデセニル、t−テトラデセニル等のC6-14分岐アルケニル基などを挙げることができる。
【0017】
本発明におけるR1としては、なかでも、コスト、及び適度な液晶形成阻害能を有する点で、炭素数8〜10の直鎖状アルキル基、若しくは炭素数8〜12の分岐鎖状アルキル基が好ましく、特に、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、オクチルブチル基が好ましい。
【0018】
1はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4(好ましくは、1.5〜2.5)である。n1が上記範囲を下回ると、水溶性が低下する傾向がある。一方、nが上記範囲を上回ると、水溶性が高くなり過ぎ、油溶性が低下する傾向がある。
【0019】
本発明における中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルとしては、例えば、ジグリセリンモノオクチルエーテル、ジグリセリンモノノニルエーテル、ジグリセリンモノイソノニルエーテル、ジグリセリンモノデシルエーテル、ジグリセリンモノオクチルブチルエーテル、テトラグリセリンモノオクチルブチルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
[長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテル]
本発明の長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルは、下記式(2)で表され、式中、式中、R2は炭素数12〜18の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数16〜22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。n2はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4である。括弧内のC362は、上記式(3)及び(4)で示される両方の構造を有する。
2O−(C362)n2−H (2)
【0021】
2は炭素数12〜18の直鎖状脂肪族炭化水素基、若しくは炭素数16〜22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。炭素数12〜18の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基等のC12-18直鎖アルキル基;n−ドデセニル、n−トリデセニル、n−テトラデセニル、n−ペンタデセニル、n−ヘキサデセニル、n−ヘプタデセニル、n−オクタデセニル基等のC12-18直鎖アルケニル基を挙げることができる。炭素数16〜22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えば、イソヘキサデシル、s−ヘキサデシル、t−ヘキサデシル、イソヘプタデシル、s−ヘプタデシル、t−ヘプタデシル、イソオクタデシル、s−オクタデシル、t−オクタデシル、イソノナデシル、s−ノナデシル、t−ノナデシル、イソイコシル、s−イコシル、t−イコシル、イソエイコシル、s−エイコシル、t−エイコシル、イソヘンイコシル、s−ヘンイコシル、t−ヘンイコシル、イソドコシル、s−ドコシル、t−ドコシル等のC16-22分岐アルキル基;イソヘキサデセニル、s−ヘキサデセニル、t−ヘキサデセニル、イソヘプタデセニル、s−ヘプタデセニル、t−ヘプタデセニル、イソオクタデセニル、s−オクタデセニル、t−オクタデセニル、イソノナデセニル、s−ノナデセニル、t−ノナデセニル、イソイコセニル、s−イコセニル、t−イコセニル、イソエイコセニル、s−エイコセニル、t−エイコセニル、イソヘンイコセニル、s−ヘンイコセニル、t−ヘンイコセニル、イソドコセニル、s−ドコセニル、t−ドコセニル等のC16-22分岐アルケニル基などを挙げることができる。
【0022】
本発明における長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルとしては、なかでも、高い液晶形成能を有する点で、炭素数14〜18の直鎖状アルキル基、若しくは炭素数16〜22の分岐鎖状アルキル基が好ましく、特に、ミリスチル、パルミチル、パルミトイル、ステアリル、オレイル基が好ましい。
【0023】
2はグリセリンの平均重合度を示し、1.5〜4(好ましくは、1.5〜2.5)である。n2が上記範囲を下回ると、水溶性が低下する傾向がある。一方、nが上記範囲を上回ると、水溶性が高くなり過ぎ、油溶性が低下する傾向がある。
【0024】
本発明における長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルとしては、例えば、ジグリセリンモノミリスチルエーテル、ジグリセリンモノパルミチルエーテル、ジグリセリンモノパルミトイルエーテル、ジグリセリンモノステアリルエーテル、ジグリセリンモノオレイルエーテル、トリグリセリンモノミリスチルエーテル、トリグリセリンモノパルミチルエーテル、トリグリセリンモノパルミトイルエーテル、トリグリセリンモノステアリルエーテル、トリグリセリンモノオレイルエーテル、テトラグリセリンモノミリスチルエーテル、テトラグリセリンモノパルミチルエーテル、テトラグリセリンモノパルミトイルエーテル、テトラグリセリンモノステアリルエーテル、テトラグリセリンモノオレイルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記中鎖又は長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの製造方法としては、特に限定されることがなく、例えば、(1)塩基性触媒の存在下、脂肪族アルコールに、該脂肪族アルコール/グリシドール(モル比)が特定の値となるような割合でグリシドールを添加して反応させる方法、(2)ポリグリセリンにα−オレフィンエポキシドを反応させる方法、(3)酸触媒若しくはアルカリ触媒の存在下、アルキルグリシジルエーテルをポリグリセリンを使用して開環させる方法等が挙げられる。本発明においては、なかでも、不純物の生成有無の観点から、上記(1)が好ましい。
【0026】
本発明において、中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテル中のアルコキシ基(R1O−)は液晶形成を阻害する作用を有し、長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルのアルコキシ基(R2O−)は液晶形成を促進する作用を有する。そして、中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルと長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合を調整することにより、安定した両連続マイクロエマルションを形成することができる。
【0027】
化粧料用油組成物中における中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合量としては、1〜30重量%であり、なかでも1〜20重量%がコスト及び両連続マイクロエマルションの形成性に優れる点で好ましい。中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合量が上記範囲を外れると、両連続マイクロエマルションの形成が困難となり化粧料用油組成物の水に対する可溶化力が低下する傾向があり、その上、配合量が上記範囲を下回る場合はゲルが硬くなりすぎる傾向もある。
【0028】
化粧料用油組成物中における長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合量としては、1〜30重量%であり、なかでも1〜20重量%がコスト及び両連続マイクロエマルションの形成性に優れる点で好ましい。長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合量が上記範囲を外れると、両連続マイクロエマルションの形成が困難となり化粧料用油組成物の水に対する可溶化力が低下する傾向があり、その上、配合量が上記範囲を上回る場合はゲルが硬くなりすぎる傾向もある。
【0029】
また、化粧料用油組成物中における中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルと長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合比率としては、例えば、5/95〜95/5程度であり、なかでも10/90〜90/10が好ましく、特に20/80〜80/20が好ましい。中鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルと長鎖ポリグリセリンモノアルキルエーテルの配合比率が上記範囲を外れると、両連続マイクロエマルションの形成が困難となり化粧料用油組成物の水に対する可溶化力が低下する傾向がある。
【0030】
[油性成分]
本発明の化粧料用油組成物は、シリコーン油、エステル油、トリグリセロールから選ばれる少なくとも1種類の油性成分を含有する。
【0031】
シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
エステル油としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
トリグリセロールとしては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカダミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、菜種油、卵黄油、ごま油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、米ぬか油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリンなどの液状油脂;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、プリスタンなどの炭化水素;オレイン酸、トール油、イソステアリン酸などの高級アルコール等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
油性成分の配合量は、組成物全量の40〜98重量%であり、好ましくは60〜98重量%程度である。油性成分の配合量が上記範囲を下回ると、相対的に界面活性剤の配合量が増加するため、皮膚等に対する刺激性が強まる傾向があり、一方、油性成分の配合量が上記範囲を上回ると、相対的に界面活性剤の配合量が低下するため、油性成分の耐水性が低下し、水の混入時に水中油型(O/W型)エマルションとなり、洗浄力が大幅に低下する傾向がある。
【0035】
本発明に係る化粧料用油組成物は、油汚れ等の洗浄剤、油性化粧料等のクレンジング化粧料、日焼けオイル、ベビーオイル、ヘアーオイル、泡状マッサージオイルなどとして使用することができ、特に、油性化粧料等のクレンジング化粧料として好適に使用することができる。
【0036】
[クレンジング化粧料]
本発明に係るクレンジング化粧料は上記化粧料用油組成物を含有することを特徴とする。クレンジング化粧料としては、ローション状、溶液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、オイル状等のいずれのタイプのものにも特に限定されなが、使用性に優れる点でクリーム状、ジェル状、オイル状のタイプが好ましい。
【0037】
また、クレンジング化粧料には、多価アルコールを保湿剤として含有していても良い。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、マルチトール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、ソルビタン、トレハロース、プロピレングリコールなどを挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでも、グリセリン、マルチトール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトールから選択された少なくとも1種を含有することが好ましい。クレンジング化粧料中の多価アルコールの含有量としては、例えば5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%である。
【0038】
さらに、本発明に係るクレンジング化粧料には、発明の目的を達成できる範囲内で、必要に応じて、他の成分を適宜配合することができる。他の成分としては、例えば、上記ポリグリセリンモノアルキルエーテル以外の非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール類、粉体、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線吸収剤、上記多価アルコール以外の保湿剤、消炎剤、防腐剤、pH調整剤、動物・植物・魚貝類・微生物由来の抽出物、香料などを挙げることができる。
【0039】
ポリグリセリンモノアルキルエーテル以外の非イオン界面活性剤としては特に限定されることがなく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールと1価又は多価アルコールとのエステル、ポリオキシアルキレン糖エーテル、脂肪酸アミドとポリオキシアルキレングリコールとの縮合物、脂肪酸アミンとポリオキシアルキレングリコールとの縮合物、アルキル又はアルケニルポリグリコシドなどの界面活性剤が挙げられる。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されることがなく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、グルタミン酸をはじめとするアミノ酸系界面活性剤、N−アシルメチルタルリン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。
【0041】
両性界面活性剤としては、特に限定されることがなく、例えば、カルボキシベタイン型、イミダゾリミウム型、スルホベタイン型、アラニン型両性界面活性剤などを挙げることができる。
【0042】
低級アルコールとしては、特に限定されることがなく、例えば、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
【0043】
粉末成分としては、特に限定されることがなく、例えば、無機粉末または有機粉末等を挙げることができる。無機粉末としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーキュムライト、炭酸マグネシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸カルシウム、珪酸亜鉛、珪酸マグネシウム、珪酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、燐酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、活性炭、薬用炭、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等が挙げられる。有機粉末としては、例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、セルロース粉末等が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤としては、特に限定されることがなく、例えば、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
【0045】
酸化防止助剤としては、特に限定されることがなく、例えば、アスコルビン酸、フィチン酸、ケファリン、マレイン酸等が挙げられる。
【0046】
紫外線吸収剤としては、特に限定されることがなく、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル等のパラアミノ安息香酸誘導体;パラメトキシ桂皮酸エチル、パラメトキシ桂皮酸イソプロピル、パラメトキシ桂皮酸オクチル等のメトキシ桂皮酸誘導体;サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸誘導体;ウロカニン酸、ウロカニン酸誘導体、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−(ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、アントラニル酸メチル等が挙げられる。
【0047】
上記多価アルコール以外の保湿剤としては、例えば、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸誘導体等が挙げられる。
【0048】
消炎剤としては、特に限定されることがなく、例えば、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体、アラントイン、酢酸ヒドロコーチゾン、アズレン等が挙げられる。
【0049】
防腐剤としては、特に限定されることがなく、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0050】
pH調整剤としては、特に限定されることがなく、例えば、クエン酸、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0051】
動物・植物・魚貝類・微生物由来の抽出物としては、特に限定されることがなく、例えば、例えば、茶エキス、アロエエキス、イチョウエキス、センブリエキス、ヨモギエキス、ニンニクエキス、オウゴンエキス、ローズマリーエキス、ヘチマエキス、胎盤抽出物、乳酸菌培養抽出物、海藻エキス等の抽出物などが挙げられる。
【0052】
香料としては、通常化粧料に使用するものであれば、特に限定されない。
【0053】
本発明に係るクレンジング化粧料は、上記化粧料用油組成物を含有するため、皮膚が濡れた状態でも、また濡れていない状態でも、メイク汚れに対し容易になじみ、水洗により油性感を残さずさっぱりと洗い流すことができるため、浴室においても好適に使用することができる。その上、安全性及び経時安定性にも優れる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0055】
実施例1〜7、比較例1〜9(実施例5、7は参考例とする)
下記表1に示す配合組成により、化粧料用油組成物を常法に従って調製し、下記基準に基づき評価をした。
【0056】
(評価法及び評価基準)
(1)洗浄力(濡れていない状態)
口紅(商品名「ソフィーナ AUBE couture デザイニングステイルージュ RD532」、花王(株)製)を前腕に塗布し、実施例1〜7および比較例1〜9で得られた化粧料用油組成物を約0.5g手に取り20回マッサージングし、口紅汚れの落ち具合を目視にて観察し、下記基準により評価した。
<評価基準>
◎:完全に落ちた
○:ほぼ落ちた
△:少し残っている
×:ほとんど落ちない
【0057】
(2)洗浄力(濡れた状態)
口紅(商品名「ソフィーナ AUBE couture デザイニングステイルージュ RD532」、花王(株)製)を前腕に塗布後、腕を水で濡らし、実施例1〜7および比較例1〜9で得られた化粧料用油組成物を約0.5gを手に取り20回マッサージングし、口紅汚れの落ち具合を目視にて観察し、上記評価基準により評価した。
【0058】
(3)可溶化力
実施例1〜7および比較例1〜9で得られた化粧料用油組成物0.5gに水2gを加えよく混合した後、当該混合物が透明であるか否かを目視にて観察し、下記基準により評価した。
<評価基準>
○:透明
×:不透明
【0059】
【表1】
【0060】
上記表1より明らかなように、本発明に係る化粧料用油組成物は、皮膚が濡れた状態でも、また、濡れていない状態でも、メイク汚れに対して速やかに馴染み、優れたクレンジング力を発揮することができる。その上、水に対する優れた可溶性を有するので、水洗することにより速やかに、且つ油性感を残すことなく洗い流すことができ、使用感に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る化粧料用油組成物は、特定のポリグリセリンモノアルキルエーテルを界面活性剤として含有するため、水と混合すると両連続マイクロエマルションを形成することができる。そして、皮膚が濡れた状態で使用してもメイク汚れに対して速やかに馴染んで汚れを浮き上がらせることができ、水洗することにより油性感を残さず洗い流すことができる。本発明に係るクレンジング化粧料は、前記化粧料用油組成物を含有するため、浴室でも使用することができ、洗浄力及び使用感に優れるため、油性化粧料の洗浄剤として特に有用である。