特許第5918543号(P5918543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918543
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】かつらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A41G3/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-3126(P2012-3126)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-142209(P2013-142209A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】磯辺館 嘉彦
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−234903(JP,A)
【文献】 特開平06−313203(JP,A)
【文献】 特開昭47−046165(JP,A)
【文献】 特開平09−268412(JP,A)
【文献】 特開昭55−005664(JP,A)
【文献】 特開2007−217802(JP,A)
【文献】 米国特許第03910291(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 1/00−11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の毛髪を線状部材で折り返して配置し、
前記折り返された複数本の毛髪に対し、前記線状部材で折り返した状態のまま形状保持処理を施すことによって、ネット状のかつらベースに対する結着部分が植設後に開きにくく前記毛髪の直立性を維持するように前記複数本の毛髪の折り返し部分に小ループを形成し、
前記複数本の毛髪のそれぞれを前記折り返し部分において前記かつらベースに結着する、
ことを特徴とするかつらの製造方法。
【請求項2】
前記線状部材で折り返された前記複数本の毛髪を、前記線状部材とともに巻き付け芯の外周面に巻き付け、
前記複数本の毛髪に対し、前記巻き付け芯に巻き付けた状態のまま形状保持処理を施すことによって、前記複数本の毛髪にカールを形成すると共に、ネット状のかつらベースに対する結着部分が植設後に開きにくく前記毛髪の直立性を維持するように前記複数本の毛髪の折り返し部分に前記小ループを形成し、
前記複数本の毛髪のそれぞれを前記折り返し部分において前記かつらベースに結着する、
ことを特徴とする請求項1記載のかつらの製造方法。
【請求項3】
前記複数本の毛髪を前記巻き付け芯に巻き付けるときには、前記複数本の毛髪を先端側から前記巻き付け芯に巻き付け、前記複数本の毛髪の前記折り返し部分と、前記複数本の毛髪のうち前記折り返し部分よりも先に巻き付けた部分との間に、前記折り返し部分から前記先に巻き付けた部分への形状の転写を抑制する転写抑制シートを挿入することを特徴とする請求項2記載のかつらの製造方法。
【請求項4】
前記巻き付け芯は、第1の巻き付け芯と、第2の巻き付け芯とを含み、
前記複数本の毛髪を前記巻き付け芯に巻き付けるときには、前記複数本の毛髪を先端側から該毛髪の長さ方向の途中部分まで前記第1の巻き付け芯に巻き付け、残りの部分を前記第2の巻き付け芯に1周未満巻き付けることを特徴とする請求項2記載のかつらの製造方法。
【請求項5】
前記第2の巻き付け芯は、外周面の1周の長さが前記第1の巻き付け芯よりも短いことを特徴とする請求項4記載のかつらの製造方法。
【請求項6】
前記形状保持処理は、加熱処理であり、
前記線状部材の材料は、スチール又は銅である、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項記載のかつらの製造方法。
【請求項7】
前記線状部材で折り返された前記複数本の毛髪を、前記線状部材とともに前記巻き付け芯の前記外周面に巻き付けた後、前記線状部材の両端を前記巻き付け芯の内側に曲げ込むことにより、前記線状部材の位置を位置決めすることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項記載のかつらの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらのかつらベースに植設されるかつら用毛髪の製造方法と、かつらの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラメントにより編成されるかつらベースに対して、かぎ針等を用いて毛髪を括り付けて縛る簡単な結着による方法が知られている。
また、フィラメントにより編成されるかつらベースに対する毛髪の結着方法として、複数種類の方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、フィラメントにより編成されるかつらベースに対して、かぎ針等を用いて毛髪を括り付けて縛ることで結着した後、毛髪の結び目部分または根元部分に接着剤等を塗布して固定する方法が知られている。
【0004】
ところで、実際の人の毛髪は直毛に限られないため、かつらの毛髪にもカールを形成することがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−132072号公報
【特許文献2】特開平7−229009号公報
【特許文献3】特許第4756694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
毛髪を括りつけて縛る上記の簡単な結着による方法は、時間の経過とともに結び目が開いて解けてくる場合がある。また、植毛した毛髪の結び目は回転可能なため、毛髪が固定されず、毛流れも維持できない。これらの理由から、毛髪の直立性が悪い(毛髪が倒れ易い)。
【0007】
また、上記のように複数種類の結着方法が知られているが、いずれの方法によっても、毛髪を直立させるためには結び方が複雑となる。これにより、作業に手間がかかる上に、結び目が大きくなるため外観が悪くなる。
【0008】
また、毛髪の結び目部分または根元部分に接着剤等を塗布して固定する上記の方法は、毛髪を直立させる効果が一時的なものであり、使用とともに効果は失われる。また、作業に手間がかかる上に、手触り感が悪い(根元が硬い感触)、毛髪及びかつらベースの耐久性が悪くなる(接着剤等で固めることで、毛髪・かつらベースが切れやすくなる)などの問題がある。
【0009】
本発明の目的は、簡単な結着で毛髪の直立性を確保することができる、かつら用毛髪の製造方法及びかつらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のかつら用毛髪の製造方法は、複数本の毛髪を線状部材で折り返して配置し、上記折り返された複数本の毛髪に対し、上記線状部材で折り返した状態のまま形状保持処理を施すことによって、上記複数本の毛髪の折り返し部分に小ループを形成する。
【0011】
また、上記かつら用毛髪の製造方法において、上記線状部材で折り返された上記複数本の毛髪を、上記線状部材とともに巻き付け芯の外周面に巻き付け、上記複数本の毛髪に対し、上記巻き付け芯に巻き付けた状態のまま形状保持処理を施すことによって、上記複数本の毛髪にカールを形成すると共に上記複数本の毛髪の折り返し部分に上記小ループを形成するようにしてもよい。
【0012】
また、上記かつら用毛髪の製造方法において、上記複数本の毛髪を上記巻き付け芯に巻き付けるときには、上記複数本の毛髪を先端側から上記巻き付け芯に巻き付け、上記複数本の毛髪の上記折り返し部分と、上記複数本の毛髪のうち上記折り返し部分よりも先に巻き付けた部分との間に、上記折り返し部分から上記先に巻き付けた部分への形状の転写を抑制する転写抑制シートを挿入するようにしてもよい。
【0013】
また、上記かつら用毛髪の製造方法において、上記巻き付け芯は、第1の巻き付け芯と、第2の巻き付け芯とを含み、上記複数本の毛髪を上記巻き付け芯に巻き付けるときには、上記複数本の毛髪を先端側からこの毛髪の長さ方向の途中部分まで上記第1の巻き付け芯に巻き付け、残りの部分を上記第2の巻き付け芯に1周未満巻き付けるようにしてもよい。
【0014】
また、上記かつら用毛髪の製造方法において、上記第2の巻き付け芯は、外周面の1周の長さが上記第1の巻き付け芯よりも短いようにしてもよい。
また、上記かつら用毛髪の製造方法において、上記複数本の毛髪を上記巻き付け芯に巻き付けるときには、上記複数本の毛髪を先端側からこの毛髪の長さ方向の途中部分まで上記巻き付け芯に巻き付け、残りの部分を上記巻き付け芯よりも小径で円筒形状又は円柱形状の小径芯の外周面に1周未満巻き付けるようにしてもよい。
【0015】
また、上記かつら用毛髪の製造方法において、上記形状保持処理は、加熱処理であるようにしてもよい。
本発明のかつらの製造方法は、上記かつら用毛髪の製造方法により製造された毛髪を、上記折り返し部分においてネット状のかつらベースに結着する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な結着で毛髪の直立性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図である。
図2A】本発明の第1の実施の形態に係るかつらの製造方法を説明するためのかつらの一部を一方側から見た斜視図である。
図2B】本発明の第1の実施の形態に係るかつらの製造方法を説明するためのかつらの一部を他方側から見た斜視図である。
図3A】比較例に係るかつらの一部を一方側から見た斜視図である。
図3B】比較例に係るかつらの一部を他方側から見た斜視図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その1)である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その2)である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その3)である。
図7】転写抑制シートを省略した変形例を示す断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その4)である。
図9】本発明の第3の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その1)である。
図10】本発明の第3の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その2)である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法及びかつらの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図である。
【0019】
まず、図1に示すように、複数本の毛髪2が、線状部材の一例であるスチール線11で折り返されて配置される。
スチール線11は、例えば、直径1mmの断面円形状を呈する。なお、スチール線11は、毛髪2に後述する小ループ(図2A及び図2Bの折り返し部分2a参照)を形成するために用いられるものであり、例えば、径(断面楕円形状の場合には長辺,断面多角形状の場合には最大となる部分の幅)が0.1mm〜1cmの範囲であることが望ましい。なお、かつらベース3に対して多数の毛髪2を一度に結着する場合には、毛髪2を結着するのに必要とする小ループの径が1本の毛髪2を結着する場合よりも大きくなることがある。その場合には、太いスチール線11を使用するとよい。
【0020】
線状部材は、スチール製(スチール線11)でなくとも、銅など他の材料であってもよいが、後述する形状保持処理を加熱処理により行う場合には、伝熱性の良好な材料からなることが望ましい。
【0021】
毛髪2の折り返し部分2aは、例えば、毛髪2の長さ方向の中央であり、複数本の毛髪2の先端2bである両端は、一列に揃っている。詳しくは後述するが、毛髪2は、折り返し部分2aにおいてネット状のかつらベース3(図2A及び図2B参照)に結着により植設され、1本の毛髪2の折り返し部分2aを挟んだ両側がかつらベース3から延び出ることになる。そのため、折り返し部分2aを挟んだ両側の長さを不均等にする場合には、毛髪2の折り返し部分2aは、長さ方向の中央ではなく両端の一方側にずれた位置となる。
【0022】
次に、毛髪2は、スチール線11で折り返された状態のまま、少なくとも折り返し部分2aに形状保持処理を施されることによって、毛髪2の折り返し部分2aに図2A及び図2Bに示すスチール線11による小ループが形成される。
【0023】
形状保持処理としては、例えば、加熱処理、パーマ液や保護剤などの薬剤による処理が挙げられる。加熱処理を行う場合には、例えば、カールペーパー、布などによって、毛髪2の少なくとも折り返し部分とスチール線11とを覆うとよい。
【0024】
加熱処理の温度は、毛髪2が人毛であるときには80℃〜120℃程度の温度でスチーム処理を併用することが望ましい。また、加熱処理の温度は、毛髪2が人工毛髪(合成繊維)であるときには、塩化ビニル系繊維なら80℃〜100℃程度、アクリル系繊維なら90℃〜100℃程度、ポリエステル系繊維なら100℃〜160℃程度とすることが望ましい。
【0025】
図2A及び図2Bは、本実施の形態に係るかつらの製造方法を説明するためのかつら1の一部を一方側及び他方側から見た斜視図である。
図2A及び図2Bに示すように、上述のように製造された毛髪2は、折り返し部分2aにおいてネット状のかつらベース3に植設される。これにより、かつら1が製造される。
【0026】
ここで、毛髪2は、上述のとおり、折り返し部分2aに小ループが形成されているため、毛髪2の結着部分(折り返し部分2a)が植設後に開きにくく、毛髪2の直立性(根元部分の毛の立つ力)を維持することができる。
【0027】
一方、図3A及び図3Bに示す比較例に係るかつら101のように、小ループが形成されていない毛髪102がかつらベース103に植設される場合、図3Bに示すように結着部分102aが植設後に開く。これにより、毛髪102を縛る(固定する)力が弱まり、毛髪102の直立性が失われる。
【0028】
以上説明した第1の実施の形態のかつら用毛髪の製造方法は、複数本の毛髪2をスチール線(線状部材)11で折り返して配置し、折り返された複数本の毛髪2に対し、スチール線11で折り返した状態のまま形状保持処理を施すことによって、複数本の毛髪2の折り返し部分2aに小ループを形成する。そのため、折り返し部分2aの小ループによって、毛髪2の結着部分(折り返し部分2a)が結着後に開きにくく、毛髪2の直立性(根元部分の毛の立つ力)を維持することができる。よって、本実施の形態によれば、簡単な結着で毛髪2の直立性を確保することができる。
【0029】
また、本実施の形態のかつら用毛髪の製造方法では、形状保持処理は、加熱処理である。そのため、パーマ液などの薬剤を用いるよりも簡単な作業で毛髪の直立性を確保することができる。
【0030】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、形状保持処理は、毛髪2をスチール線11で折り返して配置した後、毛髪2を巻き付け芯12に巻き付けた状態で施される。以下、毛髪2が第1の実施の形態で説明したようにスチール線11で折り返して配置されたところから説明する。
【0031】
図4に示すように、スチール線11で折り返された複数本の毛髪2が、スチール線11とともに巻き付け芯12の外周面12aに巻き付けられる。
巻き付け芯12は、円筒形状を呈するが、例えば、円柱形状などの他の形状であってもよい。巻き付け芯12の直径は、カールの大きさを決定することになるため、かつらのヘアスタイルに合わせて設定すればよいが、本実施の形態では、毛髪2を例えば1周以上巻き付けられる大きさであることが望ましい。巻き付け芯12の材質は、例えば、アルミであるが、特に限定されない。
【0032】
毛髪2を巻き付け芯12に巻き付けるときには、毛髪2が緩まないように毛髪2が張った状態で行うとよい。また、毛髪2を巻き付け芯12に巻き付けるときには、毛髪2は、ドライ状態でもよいが、ウェット状態(例えば、若干湿り気を含ませた状態)の方が確実に巻き付けることが可能となる。
【0033】
本実施の形態では、毛髪2は、全長に亘って巻き付け芯12に巻き付けられる。また、毛髪2を巻き付け芯12に巻き付けるときには、折り返し部分2a側、すなわちスチール線11側から巻き付けることも可能ではあるが、先端2bから巻き付けることが望ましい。
【0034】
図5及び図6に示すように、複数本の毛髪2の折り返し部分2aと、折り返し部分よりも先に巻き付けた部分との間には、転写抑制シート13が挿入されることが望ましい。この転写抑制シート13は、折り返し部分2aから先に巻き付けた部分への形状の転写を抑制する。
【0035】
転写抑制シート13は、例えば、スポンジ、不織布、紙などからなるが、折り返し部分2aから先に巻き付けた部分への形状の転写を少なからず抑制することができるものであれば、材料及び厚さは特に限定されない。
【0036】
図7(転写抑制シートを省略した変形例を示す断面図)に示すように、転写抑制シート13を省略してもよい。例えば、先に巻き付けた部分への形状の転写が生じにくいような場合、転写抑制シート13を省略するとよい。
【0037】
毛髪2を巻き付け芯12に巻き付けた後には、図8に示すように、スチール線11の両端11aを巻き付け芯12の内側に曲げ込むことにより、スチール線11の位置、ひいては毛髪2の位置を位置決めするとよい。毛髪2の位置決めを行うのは、後述する形状保持処理を行うときのためである。
【0038】
次に、毛髪2は、巻き付け芯12に巻き付けられた状態のまま上述の形状保持処理を施されることによって、毛髪2に巻き付け芯12によるカールが形成されると共に毛髪2の折り返し部分2aに図2A及び図2Bに示すスチール線11による小ループが形成される。なお、毛髪2を上記のドライ状態としている場合には、加熱処理で毛髪2とスチール線11と巻き付け芯12との全体を覆うカールペーパーや布に水分を含ませてもよい。
【0039】
毛髪2のかつらベース3に対する結着については上述の第1の実施の形態と同様であるが、毛髪2をかつらベース3に結着する際には、形成されたカールの方向が所望の髪型を構成するように、毛髪2の向きが決定されるとよい。
【0040】
以上説明した第2の実施の形態のかつら用毛髪の製造方法によっても、上述の第1の実施の形態と同様の点については同様の効果、すなわち、簡単な結着で毛髪2の直立性を確保することができるなどの効果を得ることができる。
【0041】
また、本実施の形態のかつら用毛髪の製造方法は、複数本の毛髪2をスチール線(線状部材)11で折り返して配置し、折り返された複数本の毛髪2を、スチール線11とともに巻き付け芯12の外周面12aに巻き付け、複数本の毛髪2に対し、巻き付け芯12に巻き付けた状態のまま形状保持処理を施すことによって、複数本の毛髪2にカールを形成すると共に複数本の毛髪2の折り返し部分2aに小ループを形成する。そのため、折り返し部分2aの小ループによって、毛髪2の結着部分(折り返し部分2a)が植設後に開きにくく、毛髪2の直立性(根元部分の毛の立つ力)を維持することができる。また、毛髪2にカールを形成する際に、合わせて小ループを形成することができる。よって、本実施の形態によれば、簡単な結着で毛髪2の直立性を確保することができると共に、簡単な作業で毛髪2に小ループを形成することができる。
【0042】
また、本実施の形態のかつら用毛髪の製造方法は、複数本の毛髪2を巻き付け芯12に巻き付けるときには、複数本の毛髪2を先端2b側から巻き付け芯2aに巻き付け、複数本の毛髪2の折り返し部分2aと、複数本の毛髪2のうち折り返し部分2aよりも先に巻き付けた部分との間に、折り返し部分2aから先に巻き付けた部分への形状の転写を抑制する転写抑制シート13を挿入する。
【0043】
<第3の実施の形態>
図9図11は、本発明の第3の実施の形態に係るかつら用毛髪の製造方法を説明するための説明図である。
【0044】
本実施の形態では、毛髪2を第1の巻き付け芯22及び第2の巻き付け芯23の2本に巻き付ける点において上述の第2の実施の形態と主に相違し、その他の点は同様である。そのため、重複する説明は省略する。
【0045】
図9に示すように、スチール線21で折り返された複数本の毛髪2は、図示しない先端側から長さ方向の途中部分まで第1の巻き付け芯22に巻き付けられる。
そして、図10及び図11に示すように、毛髪2の残りの部分が第2の巻き付け芯23の外周面に1周未満巻き付けられる。なお、毛髪2は、第1の巻き付け芯22に対しては例えば1周以上巻き付けられる。
【0046】
第2の巻き付け芯23の外周面23aの1周の長さは,第1の巻き付け芯22の外周面22aの1周の長さよりも短い。第1の巻き付け芯22及び第2の巻き付け芯23は、第2の実施の形態で述べた巻き付け芯12と同様に円筒形状を呈する。
【0047】
毛髪2は、第2の巻き付け芯23に対して、巻き付け開始位置2cから巻き付け終了位置である折り返し部分2aまで、例えば180°である角度θ1に亘って巻き付けられる。この角度θ1は、毛髪2の折り返し部分2a(後の結着部分)近傍に、指向性を付与するカールを形成するものであり、この点では、角度θ1は、90°〜270°であることがより望ましい。
【0048】
また、毛髪2は、第1の巻き付け芯22及び第2の巻き付け芯23に対して、互いに同一の方向に巻き付けられる(図11では時計回り)。これにより、毛髪2に内巻きのカールを形成することができる。なお、毛髪2を、第1の巻き付け芯22及び第2の巻き付け芯23に対して、互いに反対方向に巻き付けると、毛髪2に外巻きのカールを形成することができる。
【0049】
なお、毛髪2の第1の巻き付け芯22の巻き付け終了位置2dと、第2の巻き付け芯23の巻き付け開始位置2cと、第2の巻き付け芯23の巻き付け終了位置(折り返し部分2a)とがなす角度θ2は、90°となっている。
【0050】
毛髪2を第1の巻き付け芯22及び第2の巻き付け芯23に巻き付けた後には、例えば、スチール線21の両端を上述の第2の実施の形態と同様に第2の巻き付け芯23の内側に曲げ込むことにより、毛髪2の位置を位置決めしてもよい。
【0051】
その後、毛髪2は、第1の巻き付け芯22及び第2の巻き付け芯23に巻き付けられた状態のまま形状保持処理を施されることによって、毛髪2に大小のカール(第1の巻き付け芯22による大カール及び第2の巻き付け芯23による小カール)が形成されると共に毛髪2の折り返し部分2aにスチール線11により小ループが形成される。
【0052】
そして、上述の第1の実施の形態と同様に、図2A及び図2Bに示すように、製造された毛髪2が、折り返し部分2aにおいてネット状のかつらベース3に植設される。これにより、かつら1が製造される。
【0053】
以上説明した第3の実施の形態のかつら用毛髪の製造方法によっても、上述の第1及び第2の実施の形態と同様の点については同様の効果、すなわち、簡単な結着で毛髪2の直立性を確保することができるなどの効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施の形態のかつら用毛髪の製造方法は、複数本の毛髪2を先端側から毛髪2の長さ方向の途中部分まで第1の巻き付け芯22に巻き付け、残りの部分を第2の巻き付け芯22に1周未満巻き付ける。また、本実施の形態では、第2の巻き付け芯23は、外周面23aの1周の長さが第1の巻き付け芯22の外周面22aの1周の長さよりも短い。
そのため、小ループに加えて、例えば小カールである指向性を付与するカールを含む2つのカールを形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 かつら
2 毛髪
2a 折り返し部分
2b 先端
2c 第2の巻き付け芯23の巻き付け開始位置
2d 第1の巻き付け芯22の巻き付け終了位置
3 かつらベース
11 スチール線
11a 両端
12 巻き付け芯
12a 外周面
13 転写抑制シート
21 スチール線
22 第1の巻き付け芯
22a 外周面
23 第2の巻き付け芯
23a 外周面
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11