(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態の概要
痛覚神経を刺激する刺激電極10、及び刺激電極10と対になる接触電極20(
図1)を共に皮膚接触部位からリード線のコネクタ部位まで一体構造とし、インサート成形や熱かしめによって樹脂ボディーに固定する。
刺激電極10と接触電極20は、板金加工(抜き加工、曲げ加工、絞り加工など)によって金属板から一体加工することにより安価に大量生産することができる。
また、刺激電極10と接触電極20を所定の位置関係となるように樹脂で固定することにより、刺激電極部12と接触電極部22で構成される電極対30で高い寸法精度を実現することができる。
更に、刺激電極10は金属板から構成されるため刺激電極部12は稜線を有し、これによって、先端が点の場合よりも表皮に接する接触面積が増えて痛覚神経を刺激する際の確実性が高まる。
加えて、刺激電極10、接触電極20を一体構造とするため、導電部品の接合部分が減って信頼性が向上する。
【0011】
(2)実施形態の詳細
(第1の実施形態)
まず、
図1の各図を用いて第1の実施形態に係る電極について説明する。
図1(a)は、電極の外形を示した図である。
刺激電極10は、痛覚神経刺激用電極であり、例えば、金属板から電極部材11を抜き加工し、これを曲げ加工して形成されている。このように刺激電極10は、金属板から抜いた電極部材11を一体加工して形成されている。
電極部材11は、厚さが0.1〜0.2mm程度であり、人体に無害なSUS304やSUS316などが用いられている。
また、人体に無害な他の金属を用いたり、あるいは、表面を金など人体に無害な金属でメッキしてもよい。
【0012】
刺激電極10は、全長が10mm程度、幅が1mm程度の略長方形をしており、先端領域が屈曲部14において電極部材11の幅方向にL字型に屈曲し、更にその先端が屈曲部13で電極部材11の厚さ方向に屈曲している。
そして、電極部材11の屈曲した先端には、押圧されて生体の表皮(皮膚)に刺さるように鋭角に構成された刺激電極部12が形成されている。刺激電極部12の形状は、抜き加工の際に金型によって形成される。
屈曲部13から刺激電極部12までの長さは3mm程度であり、刺激電極部12の角度は、50°程度である。この角度は一例であって更に鋭角、あるいは鈍角であってもよい。
【0013】
接触電極20は、刺激電極10と同様の金属板から電極部材21を抜き加工し、これを曲げ加工などして形成されている。このように接触電極20は、金属板から抜いた電極部材21を一体加工して形成されている。
接触電極20は、全長が10mm程度、幅が1mm程度の略長方形をしており、先端領域が屈曲部25において電極部材21の厚さ方向に屈曲し、更にその先端が屈曲部24で屈曲部25とは逆の方向に屈曲している。そのため、先端に形成された円環部26(フランジ)は電極部材21の他端側の板面と平行となっている。
【0014】
円環部26は、外径が3mm程度、内径が1.5〜2mm程度であり、内径側には、屈曲部25の屈曲方向に高さ5mm程度の円筒部23(シリンダ)が形成されている。円筒部23は、絞り加工などにより形成される。
円筒部23の端部は、押圧されて生体の表皮に接するように平坦に構成された接触電極部22が形成されている。接触電極部22は、刺激電極部12の差し込み量を規制する機能を持たせるため、線又は面で構成されていればよい。
【0015】
また、屈曲部25は、電極部材21の他端側の中心線と円筒部23の中心線が所定の距離以上離れるように所定の角度をもって形成されている。
これは、接触電極20に対して刺激電極10が矢線方向に組み合わされた場合に、電極部材11と電極部材21が干渉しないようにするためである。
以上のように、刺激電極10と接触電極20は、金属板から板金加工(抜き加工、曲げ加工、絞り加工などのプレス加工)によって形成することができるため、容易に高い寸法精度で量産することができる。
【0016】
図1(b)は、刺激電極10と接触電極20を組み合わせたところを示した図である。
図示しないが、刺激電極10と接触電極20は、インサート成形するための金型に設置されて位置決めされる。
また、治工具を用いて刺激電極10と接触電極20の位置決めをしてインサート成形用の金型に設置してもよい。
このように刺激電極10と接触電極20を位置決めした状態でインサート成形、即ち、金型に樹脂を注入して固化させると、刺激電極10と接触電極20が所定の位置関係に固定され、刺激電極部12と接触電極部22によって表皮に接する電極対30が形成される。
【0017】
電極部材11と電極部材21の他端側(刺激電極部12、接触電極部22と対向する側)は、電源コードに接続するリード部として機能する。
そして、電極部材21の中心線と、円筒部23の中心線が所定の距離だけ離れているため、電極部材11と電極部材21の他端側が干渉せず、同一平面上に形成することができる。
電極部材11と電極部材21の他端側が同一平面に形成されると、容易に電極部材11と電極部材21をコネクタに接続したり、あるいは、端子を圧着したりすることができる。
【0018】
図1(c)は、刺激電極部12と接触電極部22の位置関係を説明するための図である。
刺激電極部12の中心線は円筒部23の中心線と一致し、刺激電極部12は、接触電極部22から0〜0.5mm程度突出している。
このように配置された刺激電極部12と接触電極部22により電極対30が形成され、電極対30が表皮に押圧されると、刺激電極部12が表皮に刺さると共に接触電極部22が表皮に当接して表皮との電気的なコンタクトをとると共に刺激電極部12の表皮への挿入量を規制する。
【0019】
本実施形態では、一例として、刺激電極部12が陰極、接触電極部22を陽極としてパルス電圧を印可するが、刺激電極部12を陽極、接触電極部22を陰極としてもよく、あるいは、刺激電極部12と接触電極部22に交流電圧を印可したり直流電圧を印可するように構成してもよい。
また、本実施形態では、刺激電極部12が表皮に刺さることとするが、電極対30の使用目的によっては、表皮にめり込むだけでもよく、必ずしも刺さる必要はない。
【0020】
次に、
図2の各図を用いて生体刺激電極部1について説明する。
図2(a)は、生体刺激電極部1を裏面から見た平面図である。
刺激電極10と接触電極20を
図1(c)で示した所定の位置関係でインサート成形すると、刺激電極10と接触電極20が樹脂部35で固定された生体刺激電極部1が得られる。
以下では、電極対30が形成されている面を表面と呼び、これに対向する面を裏面と呼ぶことにする。
【0021】
樹脂部35は、円柱形状を有する樹脂で構成されており、例えば、直径は10mm程度、厚さは4mm程度である。なお、樹脂は、生体に無害であって、絶縁性を有するものであればよく、例えば、ポリカーボネートが用いられる。
生体刺激電極部1は、刺激電極10と接触電極20を金型に固定したまま樹脂を注入してインサート成形して形成されるため、刺激電極10と接触電極20が樹脂部35の内部に埋め込まれた形となっている。
本実施形態における樹脂部35は、絶縁部材(固定部)として機能する。但し、樹脂部35に代えてセラミック基板等を使用するようにしてもよい。この場合、後述する第4実施形態と同様にセラミック基板に貫通孔を設けると共に、刺激電極10と接触電極20に設けた足部を貫通孔に圧入するようにする。
【0022】
図2(b)は、生体刺激電極部1を表面方向から見た斜視図である。
樹脂部35の表面は平坦に形成されており、その中央部に電極対30が突出している。円筒部23の突出量は、例えば、1mm程度である。
円筒部23の内部には樹脂が注入されていないが、円筒部23の内部に樹脂が充填されるように構成してもよい。
【0023】
図示しないが電極部材11、21にはコネクタが接続され、これにより生体刺激電極部1が電源コードに接続される。
この電源コードの他端には第2のコネクタが形成されており、第2のコネクタを着脱することにより、生体刺激電極部1を電源装置から着脱するようになっている。
このように生体刺激電極部1は着脱できるため、使用ごとに使い捨てにすることができ、感染症を防ぐことができる。
【0024】
このように構成された生体刺激電極部1の表面を人体の表皮に押し当てると、接触電極部22が表皮に接し、刺激電極部12が表皮の内側に刺し込まれて痛覚神経に達する。
そして、電極部材11、刺激電極部12に電圧を印可すると刺激電極部12により痛覚を良好に刺激することができる。
また、刺激電極10、接触電極20は、板状の部材で、しかも屈曲しており、当該屈曲した部分が樹脂部35にモールドされているため、電極対30の剛性が高く、電極対30に応力が作用しても電極対30の配置を維持することができる。
【0025】
図2(c)は、本実施形態の変形例を説明するための図である。
この例では、電極部材11、電極部材21が、先の実施形態よりも短く形成されており、それぞれ、端部領域で接続部42、44によってリード端子41、43が接続されている。
接続部42、44は、例えば、圧着やハンダ付け、あるいは導電性接着剤などにより電極部材11、電極部材21とリード端子41、43を電気的、及び物理的に接続している。
そして、リード端子41、43を接続した状態で刺激電極10、接触電極20を金型にセットし、樹脂を注入して固化させると生体刺激電極部1が形成される。
【0026】
図2(d)は、本変形例に係るインサート成形後の生体刺激電極部1を示した図である。
樹脂部35の端部には切り欠き部分が形成されており、ここからリード端子41、43が樹脂部35の外側に突出している。この切り欠き部は金型の形状により形成されたものである。
リード端子41、43には、コネクタ49を接続することができる。
【0027】
次に、
図3を用いて、第1の実施形態の更なる変形例について説明する。
先の実施形態は、生体刺激電極部1に単数の電極対30が形成されていたが、本変形例では3個の電極対30が形成されている。
【0028】
図3(a)は、電極の配置を示した図である。
刺激電極10は、略T字型に構成されており、T字の両端に電極対30a、30cを構成するための刺激電極部(紙面裏に位置するため図示せず)が形成され、T字に至る途中の部分にも電極対30bを構成するための刺激電極部が形成されている。刺激電極10は、1枚の金属板から一体加工されている。
そして、各刺激電極部に対応して個別の接触電極20a、20b、20cが配置されて電極対30a、30b、30cが構成される。
【0029】
図3(b)は、本変形例に係る生体刺激電極部1を裏面から見た平面図である。
生体刺激電極部1は、刺激電極10と接触電極20a〜20cを金型に設置してインサート成形することにより形成される。
電極対30a、30b、30cは、破線36で示したように樹脂部35の底面と同心となる円周上に形成されている。
このため、生体刺激電極部1を表皮に押圧した場合、電極対30a、30b、30cにバランスよく力が分散する。
【0030】
図3(c)は、本変形例に係る生体刺激電極部1を表面の方向から見た斜視図である。
生体刺激電極部1の表面には電極対30a、30b、30cが突出している。電極対30a〜30cの構成は、第1の実施形態の電極対30と同じである。
このように、電極対30が複数存在するため、そのうちの1個の刺激電極部12が神経繊維の密度の低い箇所に刺さったとしても、他の電極対30が神経繊維の密度の高いところに刺さることを期待することができる。そのため、より確実に痛覚を刺激することができ、信頼性を高めることができる。
【0031】
また、接触電極20a、20b、20cは、互いに独立して絶縁されているため、電極対30a、30b、30cに異なる波形の電圧を個別に印可することも可能である。
または、更なる変形として、接触電極20a、20b、20cが刺激電極10aと干渉しないように樹脂部35内部で立体交差させると、これら接触電極20a、20b、20cを単一の金属板から構成することができ、また、コネクタで接続する端子の数を2個にすることができる。
また、本変形例では、電極対30の数を3個としたが、2個や4個など、他の個数でもよい。
【0032】
図3(d)は、更なる変形例で、接触電極20aにリード端子43aを接続部44aで接続した例である。他の電極も同様にリード端子を取り付け、コネクタ49を取り付ける。
【0033】
図4の各図は、刺激電極部12の形状を説明するための図である。
図4(a)は、電極部材11の幅方向の端部にある両端面から電極部材11の中心線に向かって左右対称に斜面部15を形成した例である。この形状は、抜き加工により形成することができる。そして、斜面部15の頂点に形成された稜線により刺激電極部12が構成される。
【0034】
このように、刺激電極部12が稜線により構成されるため、刺激電極部12が表皮に侵入した場合に、刺激電極部12が点で構成された場合よりも刺激電極部12の接触領域が大きくなり、神経繊維の密度が高い箇所に刺さる可能性が高まる。
また、斜面部15や刺激電極部12は、等電位面を構成するため、刺激電極部12が点で構成された場合と表皮内での電界の分布が異なり、神経繊維の密度の高い箇所と電界が強い箇所が重なる可能性も高まる。
【0035】
図4(b)は、生体刺激電極部1に
図4(a)と同様の刺激電極部12を電極部材11の幅方向に2個形成した例である。この形状は、抜き加工により形成することができる。
このように、複数個の刺激電極部12を形成することにより、神経密度の高いところに刺激電極部12が刺さる可能性を高めることができる。
【0036】
図4(c)は、電極部材11の中央から電極部材11の幅方向の端面の角部に向かって斜面部15を形成した例である。この形状も抜き加工により形成することができる。
この場合、より鋭角な(鋭利な)刺激電極部12を2個得ることができる。
刺激電極部12がより鋭角になることにより更に表皮に刺さり易くなり、また、刺激電極部12が2個あることにより神経密度の高い箇所に刺激電極部12が刺さる可能性が高くなる。
【0037】
図4(d)は、電極部材11の先端に刺激電極部12を3個形成した例である。この形状も抜き加工により形成することができる。
刺激電極部12が3個あるため、神経密度が高い箇所に刺激電極部12が刺さる可能性をより高めることができる。
【0038】
図4(e)は、電極部材11の幅を広くし、幅方向の両端に
図4(c)と同様の刺激電極部12を設けた例である。
この場合、刺激電極部12の間隔が広くなると共に、刺激電極部12がより鋭利となるため、刺激電極部12が表皮に刺さり易く、かつ、神経密度の高い箇所に刺さる可能性を高めることができる。
【0039】
図4(f)は、電極部材11の幅方向の斜面部15(幅方向から見た面)に加えて厚さ方向の斜面部16(厚さ方向から見た面)を形成した例である。
斜面部15は、抜き加工により形成され、その後、先端を研削、あるいは叩くなどして斜面部16が形成される。
この場合、刺激電極部12が点となるため、刺激電極部12がより鋭利となり、表皮に刺さり易くなる。
【0040】
図4(g)は、電極部材11の幅方向には斜面部を設けず、片面に厚さ方向の斜面部16を設けた例である。この形状は、先端を研削、あるいは叩くなどして形成される。
この場合、刺激電極部12の稜線の長さを電極部材11の幅方向斜面部を設けた場合よりも長くすることができる。ただし、電極部材11の幅は厚さよりも大きいとする。斜面部16は、例えば、研削したり、あるいは叩いたりして形成される。
【0041】
図4(h)は、電極部材11の両面から厚さ方向に斜面部16を設けた例である。
この場合、斜面部16が電極部材11の両端面に対称に形成されており、刺激電極部12を表皮に刺した場合、電極部材11にバランスよく力が作用する。
【0042】
図4(i)は、電極部材11の斜面部15を曲面によって形成した例である。この形状は、抜き加工により形成することができる。
斜面部15は、電極部材11の側面をえぐるように凹状に形成されており、刺激電極部12は、
図4(a)の場合よりも鋭利な稜線を有する。このため、より表皮に刺さり易くなる。
【0043】
以上、刺激電極部12の各種の形態について説明したが、更に各種の形態が可能である。
本実施形態では、刺激電極部12の形状を金属板から抜き加工などによって形成するため、金型によって各種の形状を容易に形成することができ、目的や用途に応じた形状を設定することができる。
【0044】
以上に説明した第1の実施形態では、次のような効果を得ることができる。
(1)刺激電極10、接触電極20を金属板から一体形成するため、安価に大量生産できる。
(2)刺激電極10、接触電極20が一体構造を有しているため、導電部分の接合がなく、信頼性が高まる。
(3)刺激電極10と接触電極20を位置決めしてインサート成形するため、電極対30の寸法精度を容易に確保することができる。
(4)刺激電極10、接触電極20をインサート成形して固定するため、基板の電気回路に対して、電極をリベット接合、リード線をハンダ接合と部品を様々な接合により積み上げる構造を採用する場合よりも工程が少なく製造コストを低減することができる。
(5)刺激電極10、接触電極20が屈曲して樹脂部35に固定されているため、電極対30に外力が加わった場合の剛性を高めることができる。
(6)電極部材11が板状で刺激電極部12が稜線となるため、表皮に接する部分が円錐の先端で形成されることで表皮に点接触する場合に比べて、確実に接触させることができる。但し、稜線の長さを短くして、点接触に近い状態とすることで、電流密度を高くすることがこのましい。これにより、確実に皮膚に接触しつつ高い電流密度を維持することが可能になり、信頼性が高まる。
(7)生体刺激電極部1を安価に大量生産できるため、使い捨てでき、再利用による感染症を予防することができる。
(8)生体刺激電極部1を再利用する場合、部品間の空間がないため蒸気滅菌でき、ガス滅菌する場合はガスの置換に要する時間が短縮して置換効率が上がり、液体洗浄の場合は、乾燥時間を短縮することができる。
(9)単純な構造なので、品質管理が容易で生産性が向上する。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、
図5を用いて第2の実施形態について説明する。
本実施形態では、刺激電極10、接触電極20の他端側を樹脂部35の表面に露出させ、これに基板47を接続する。
【0046】
図5(a)は、電極が設置された樹脂部35を裏面から見た平面図である。
樹脂部35の裏面には、長方形状を有する電極部材11aと電極部材21a、電極部材11bと電極部材21b、及び電極部材11cと電極部材21cが樹脂部35と同心となる円を3等分する位置に露出している。
これら電極部材の露出した面の裏側の面、及び側面は、樹脂部35に埋め込まれている。
【0047】
図5(b)は、樹脂部35の断面を
図5(a)の矢線A−A方向に見た断面図である。
電極部材11cは、樹脂部35を貫通しており、刺激電極部12が樹脂部35の表面に突出すると共に、他端部分は樹脂部35の表面で電極部材21cから遠ざかる方向に屈曲して1の側面が樹脂部35の裏面に露出している。
電極部材21cも、樹脂部35を貫通しており、円筒部23が樹脂部35の表面に突出すると共に、他端部分は樹脂部35の表面で電極部材11cから遠ざかる方向に屈曲して1の側面が樹脂部35の裏面に露出している。
【0048】
刺激電極部12は、円筒部23の中心線上に位置し、刺激電極部12と接触電極部22により電極対30cが形成されている。電極対30cの構成は、第1の実施形態の電極対30と同じである。
図示しないが電極部材11aと電極部材21a、及び電極部材11bと電極部材21bの構成も同様であり、樹脂部35の表面に電極対30a、電極対30bが形成されている。
以上の構成は、電極部材11aと電極部材21a、電極部材11bと電極部材21b、及び電極部材11cと電極部材21cを金型に固定してインサート成形することにより得られる。
【0049】
図5(c)は、生体刺激電極部1を裏面から見た平面図である。
生体刺激電極部1は、
図5(a)で示した樹脂部35の裏面にフレキシブルな基板47を取り付けることにより形成される。
基板47には、電極部材11aに対応する接続端子45a、電極部材21aに対応する接続端子46a、電極部材11bに対応する接続端子45b、電極部材21bに対応する接続端子46b、電極部材11cに対応する接続端子45c、電極部材21cに対応する接続端子46cが形成されており、これら接続端子は、対応する電極部材に、例えば、導電性接着剤やハンダなどによって接続している。
基板47は、各接続端子からコネクタに通じる配線48を有しており、配線48を介して電極対30a〜30cに電圧が印可される。
【0050】
図5(d)は、樹脂部35に基板47を配置するところを表した斜視図である。
樹脂部35の表面には電極対30a〜30cが樹脂部35と同心に形成されており、樹脂部35の裏面から基板47を矢線に示した方向に取り付ける。
基板47の樹脂部35と接する面には、例えば、接着面が形成されており、基板47は、樹脂部35に接着される。
図5(e)は、生体刺激電極部1の完成品を表した斜視図である。
【0051】
このように、第2の実施形態では、樹脂部35の表面に露出した電極部材11a、電極部材21a、電極部材11b、電極部材21b、電極部材11c、電極部材21cに基板47を配置することにより生体刺激電極部1を構成する。
電極部材11a、電極部材21a、電極部材11b、電極部材21b、電極部材11c、電極部材21cの大きさが第1の実施形態の場合よりも小さいため、1枚の金属板からより多数の電極部材を形成することができる。そのため、製造コストを低減することができる。
また、リード部分の金属部材が樹脂部35から突出しないため、基板47を取り付ける前の樹脂部35を中間性製品として補完する場合に補完スペースを節約することができる。
なお、本実施形態では、樹脂部35に電極対30a〜30cを設けたが、単数の電極対30、あるいは、任意の個数の電極対30を設けることもできる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、
図6を用いて第3の実施形態について説明する。
図6(a)は、接触電極20の外観を示した図である。
電極部材21は、先端部分が屈曲部58、59でコの字型に屈曲し、電極部材21の板面から所定距離の位置に、当該板面と平行な接触電極部55が形成されている。
接触電極部55は、略正方形となっており、表皮に接した際に表皮を傷つけないように四隅が丸くR形状となっている。
接触電極部55の四隅をR形状とするため、接触電極部55の一辺は電極部材21の幅よりも広くなっている。
【0053】
接触電極部55の中央には、電極部材11の刺激電極部12が配置される円形の刺激電極部用穴56が形成されている。
電極部材21の接触電極部55の両側部分には、電極部材21を位置決め、及び固定するための基準穴51、52が設けてある。
更に、電極部材21の他端部分には、電極部材21を固定するための長穴53が設けてある。長穴53は、接触電極20の長さ方向が長径となっている。
電極部材21は、金属板から抜き加工や曲げ加工により形成される。
なお、刺激電極部用穴56や基準穴51、52、及び長穴53は、抜き加工で形成してもよいし、あるいは、ドリルなどで切削して形成してもよい。
【0054】
以上のように、本実施形態の接触電極20は、抜き加工と曲げ加工で形成することができ、第1の実施形態の円筒部23を形成する場合に比べて加工が容易である。
また、第1の実施形態の接触電極部22に比べて接触電極部55の方が表皮に接する面積が大きいため、表皮での電流密度が小さくなり、これによって接触電極20が表皮に与える電気刺激が低減するため、より刺激電極部12による電気刺激を被験者に対してより際立たせることができる。
【0055】
図6(b)は、刺激電極10の外観を示した図である。
電極部材11は、第1の実施形態と同様の形状を有しており、屈曲部13の近傍には、電極部材11を位置決め、及び固定するための基準穴61、62が設けてある。
更に、電極部材21の他端部分には、電極部材21を固定するための長穴63が設けてある。長穴63は、遊びを持たせるために刺激電極10の長さ方向が長径となっている。
電極部材21は、金属板から抜き加工や曲げ加工により形成される。
なお、基準穴61、62、及び長穴63は、抜き加工で形成してもよいし、あるいは、ドリルなどで切削して形成してもよい。
【0056】
図6(c)は、刺激電極10、接触電極20を裏面側樹脂部36に配置するところを示した図である。
裏面側樹脂部36は、略円板形状を有する樹脂で構成されており、例えば、金型に射出成形して形成される。
裏面側樹脂部36の端面は平面となっており、刺激電極10を収納する刺激電極用溝部71と接触電極20を収納する接触電極用溝部72が表面に形成されている。
刺激電極用溝部71と接触電極用溝部72の深さは、電極部材11、電極部材21の厚さよりも大きく設定されている。
【0057】
刺激電極用溝部71には、刺激電極10の基準穴61、62、長穴63(図の煩雑化を避けるため図では符号を図示せず)に嵌合する円柱状の突起部37a、37b、37cが形成されている。
接触電極用溝部72には、接触電極20の基準穴51、52、長穴53(図の煩雑化を避けるため図では符号を図示せず)に嵌合する突起部38a、38b、38cが形成されている。
これら、突起部37a〜37c、38a〜38cの高さは、電極部材11、電極部材21の厚さよりも大きく設定されており、後ほどこれら突起部を熱でかしめて刺激電極10と接触電極20を固定するのに必要なだけの高さが確保されている。
【0058】
また、突起部38a、38bの間の屈曲部13が位置する箇所には、円形の凹部73が形成されている。凹部73の中心は、屈曲部13の中心と一致し、凹部73の直径は、屈曲部13の幅よりも大きく設定されている。
裏面側樹脂部36に凹部73を形成したことにより、屈曲部13が裏面側樹脂部36から浮いて片持ちされた状態となり、刺激電極部12が表皮に接した場合に屈曲部13付近の部分がバネ性(弾性)を発揮することができる。
また、屈曲部13が裏面側樹脂部36に接しないことにより、屈曲部13の背面に異物が挟まることもなく、接触電極部55からの刺激電極部12の突出量の精度を保つことができる。
【0059】
図6(d)は、裏面側樹脂部36に刺激電極10、接触電極20を配置したところを示した図である。
図に示したように、刺激電極10は、裏面側樹脂部36に対して突起部37a、37bによって位置決めされ、接触電極20は、裏面側樹脂部36に対して突起部38a、38bによって位置決めされる。
【0060】
これにより、刺激電極10と接触電極20は、接触電極部55の中央から刺激電極部12が所定量だけ突出する位置に配置され、電極対30が形成される。
図示しないが、このように刺激電極10と接触電極20の位置決めをした後、突起部37a〜37c、38a〜38cを熱でかしめて刺激電極10と接触電極20を裏面側樹脂部36に固定する。
【0061】
電極対30を定寸接触とする場合、高い寸法精度を要するが、本実施形態の刺激電極部12はバネ性を有するため、低圧接触となり、寸法管理を必ずしも厳密に行う必要がなく、そのため製造コストを抑制することができる。
【0062】
次に、
図7を用いて本実施形態の生体刺激電極部1について説明する。
図7(a)は、生体刺激電極部1の側面図を示した図であり、
図7(b)は、生体刺激電極部1の正面図を示した図である。
図6(d)で説明したように裏面側樹脂部36に刺激電極10と接触電極20を固定した後、裏面側樹脂部36の表面に表面側樹脂部39を取り付けると生体刺激電極部1が完成する。
【0063】
表面側樹脂部39は、裏面側樹脂部36と同じ外径の略円板形状を有する樹脂で構成されており、中央には、電極対30を表面側に通す穴部が形成されている。
表面側樹脂部39は、例えば、接着剤、超音波、熱などを用いて裏面側樹脂部36の表面に固着され、中央の穴からは、電極対30が所定量だけ表面側に突出している。
また、表面側樹脂部39と裏面側樹脂部36には、刺激電極10、電極部材11の他端側に延設されたコネクタ部86が一体形成されている。
【0064】
第3の実施形態では、刺激電極10、接触電極20をインサート成形でなく、組立によって生体刺激電極部1に取り付けたが、これらの電極を金型に固定してインサート成形によって形成してもよい。
【0065】
次に、
図8を用いて、第3の実施形態における接触電極20と刺激電極10の変形例について説明する。
図8(a)は、接触電極部55の両端の電極部材21に外側に向けた凸状の屈曲部81を設けた場合である。屈曲部81は、接触電極部55を表皮に押し当てた際にバネ性を発揮する。
図8(b)は、接触電極部55の両端の電極部材21に段差形状を有する屈曲部82を設けた場合である。屈曲部82も、接触電極部55を表皮に押し当てた際にバネ性を発揮する。
【0066】
図8(c)は、電極部材11の刺激電極部12の近傍に屈曲部83が形成された場合の正面図及び側面図であり、刺激電極部12が表皮に押圧された場合にバネ性を発揮する。
図8(d)は、屈曲部84の形成された部分の電極部材11の幅を広くしてバネ定数を大きくした場合の正面図及び側面図である。このように、屈曲部84の形成された箇所の電極部材11の幅やあるいは厚さを変化させることにより弾性のバネ定数を調節することができる。
【0067】
図8(e)は、電極部材21に形成された2枚の矩形部分56a、56bを刺激電極部12の方にコの字型に折り曲げ、先端の辺を接触電極部とした場合である。接触電極部は2本の線によって表皮に接することとなる。
この場合、電極部材11と電極部材21が干渉しないように裏面側樹脂部36で立体交差させる。
図8(f)は、電極部材21に形成された1枚の矩形部分57を刺激電極部12の方に折り曲げ、先端の辺を接触電極部とした場合である。
このように、刺激電極部12の片側に接触電極部を形成することもできる。
【0068】
(第4の実施形態)
次に、
図9〜
図14を用いて第4の実施形態について説明する。
(1)第4の実施形態の概要
第1の実施形態では、刺激電極10、及び接触電極20を共に皮膚接触部位からリード線のコネクタ部位まで一体構造とし、インサート成形や熱かしめによって樹脂ボディーに固定する場合について説明した。
第4の実施形態では、刺激電極10、及び接触電極20を板金加工によって金属板から一体加工することにより安価に大量生産する点で第1の実施形態と共通しているが、刺激電極10、及び接触電極20を共に皮膚接触部位単独で形成する。
また、刺激電極10、接触電極20のそれぞれに足部を設け、この足部を樹脂部35に形成された貫通孔に圧入することで固定すると共に、貫通孔の内周面及び樹脂部35の裏面に形成された配線に電気的に接続する。
【0069】
第4の実施形態によれば、刺激電極10及び接触電極20に足部17、28を設け、樹脂部35に形成した貫通孔91、93に圧入することで生体刺激電極部1を形成するので、精度良く、容易に組み立てることができる。
【0070】
(2)第4の実施形態の詳細
図9は、本実施形態の生体刺激電極部1における、刺激電極10、接触電極20を樹脂部35を表した図で、(a)は配置前を、(b)は配置後を表した図である。
なお、刺激電極10、接触電極20、樹脂部35における厚さ、径等の各サイズは実施形態1〜3で説明したのと同様である。
【0071】
図9に示すように、本実施形態の接触電極20は、円筒部27と、足部28、及び先細部29を備えている。
接触電極20の円筒部27は、長方形の金属板を曲げ加工により円筒形に丸めることで形成される。長方形の両端は円筒形に丸めることで互いに当接した状態になっており、溶接により接続してもよいが本実施形態では溶接はしていない。また、両端は近接して対向する状態であればよく、接触していなくてもよい。
なお、本実施形態及び上記実施形態では接触電極20が肌と接触する部分の形状を円筒としたが、必ずしも円筒である必要はなく、断面四角形状や三角形状、コ字形状等の各種形状であってもよい。
【0072】
円筒部27の一方の端部には、円筒部27から延設された二本の足部28が形成されている。この足部28、28は、円筒部27を樹脂部35に固定すると共に、樹脂部35に形成された配線に電気的に接続する機能を有している。
本実施形態における二本の足部28、28は、円筒部27の中心線を通る仮想線上に配置されている。なお、足部の本数については、1本でも良く、また三本以上であっても良い。
【0073】
両足部28の先端には、角部分が切断されることで先端が先細となった先細部29が形成されている。この先細部29は、樹脂部35に形成した2つの貫通孔93(第2の貫通孔)に足部28を容易に挿入させる機能を有している。
【0074】
一方、刺激電極10は、金属板の一端に形成された刺激電極部12と、足部17、先細部18、係止部19を備えている。
刺激電極部12は、極小面積を有する尖頭部を備え、尖頭部における鈍化部の幅が50μm以下に形成されている。本実施形態の尖頭部は二本以上の稜線と面の組合せから構成されている。
そして、刺激電極部12における尖頭部の表面粗さをRa10μm以下に形成することで、上記鈍化部の幅50μm以下が実現されている。
【0075】
この刺激電極部12は、電極部材11の幅方向の斜面部15(幅方向から見た面)2箇所と、厚さ方向の斜面部16(厚さ方向から見た面)と、斜面部16の反対側の平面部とから形成されている。
本実施形態における、刺激電極部12は、金属板の打ち抜き加工(抜き加工)により斜面部15に対応する鋭角部が形成され、この打ち抜き加工の後に先端部を鍛造、研磨、エッチング、切断等により、斜面部15、16による尖頭部を形成する。なお、鍛造により尖頭部を形成する場合には、打ち抜き加工と同時に鍛造を行うようにしてもよい。
【0076】
刺激電極10の、刺激電極部12と長手方向の反対側には1本の足部17が設けられている。この足部17は、接触電極20の足部28と同様に、刺激電極10を樹脂部35に固定すると共に、樹脂部35に形成された配線に電気的に接続する機能を有している。
足部17の先端には、角部分が切断されることで先端が先細となった先細部18が形成されている。この先細部18は、樹脂部35に形成した貫通孔91(第1の貫通孔)に足部17を容易に挿入させる機能を有している。
【0077】
刺激電極10の長手方向のほぼ中央には、幅方向に突出した係止部19が形成されている。
係止部19は、刺激電極10の足部17を樹脂部35の貫通孔91に圧入する際の差し込み量を規定するストッパとしての機能を有している。このため、係止部19の先細部18側の端面から、刺激電極部12までの距離が既定値となるように形成される。
なお、本実施形態において、係止部19は幅方向の両側に形成されているが、何れか一方だけ形成するようにしてもよい。
本実施形態のように係止部19を両側に形成する場合には、係止部19の先細部18側の端面の位置が、同じ(刺激電極部12からの距離が規定値)になるように形成する。
【0078】
樹脂部35には、刺激電極10と接触電極20からなる電極対を固定するための貫通孔組90が設けられている。
本実施形態の樹脂部35は、中央に1箇所と、中央を重心とする正三角形の各頂点位置の3箇所の合計4つの貫通孔組90が設けられている。
本実施形態の樹脂部35は、中央に電極対を配置することで1極の生体刺激電極部1が形成され、正三角形の各頂点の3箇所に電極対を配置することで3極の生体刺激電極部1が形成され、更に、4箇所全部に電極対を配置することで4極の生体刺激電極部1が形成される。このように樹脂部35は、1極、3極、4極用の樹脂部を兼用するようになっている。
【0079】
各貫通孔組90は、3つの貫通孔93、91、93が一列に形成され、刺激電極10の足部17が中央の貫通孔91に、接触電極20の足部28、28が両側の貫通孔93、93に圧入されるようになっている。
各貫通孔91、93の内周面には金属材料を含むインキがスクリーン印刷(導体印刷)されている。そして、樹脂部35の裏面(電極対が配置される側の反対側)には、詳細は後述するが、各貫通孔91からリード線98までの配線がスクリーン印刷され、各貫通孔93、93からリード線97までの配線がスクリーン印刷されている。
【0080】
3つの刺激電極10の足部17をそれぞれの貫通孔91に圧入し、その後、3つの接触電極20の足部28、28をそれぞれの貫通孔93、93に圧入することで、
図9(b)に示す生体刺激電極部1が形成される。
【0081】
図10は、樹脂部35の貫通孔91、93に1対の刺激電極10と接触電極20を圧入した状態を表したものである。
図10(a)は刺激電極部12側(上側)から表した図である。この
図10(a)に示すように、一列に並んだ貫通孔93、91、93にはそれぞれ配線94、92、94が内周面及び端面にスクリーン印刷されている。
この配線の状態を樹脂部35の裏面から表したのが
図10(d)で、貫通孔93の配線94、94は配線96によりリード線97に接続されている。
また貫通孔91の内周面に印刷された配線92は配線95によりリード線98に接続されている。
刺激電極10は、貫通孔93、91、93の配列方向と、刺激電極10の幅方向とが直行する向きに足部17が圧入される。
【0082】
図10(b)、(c)はそれぞれ
図10(a)におけるA−A断面図、B−B断面図である。
この
図10(b)、(c)では、配線92、94、96については、その存在を明確にするために実際よりも厚く表示しているが実際にはより薄くスクリーン印刷されている。
また、
図10(c)における刺激電極10と接触電極20も同様に、配線92、94(配線94は前後に存在するため図示していない)の厚み分だけ、樹脂部35から離れているが、実際には、足部17、28の圧入の際の力によって、樹脂部35に接している。
【0083】
なお、
図9、10に示した生体刺激電極部1は、樹脂部35の裏側に刺激電極10と接触電極20の足部17、28、28が突き出た状態となっているので、裏側に樹脂等によるカバーが配設される。
【0084】
図11は、第4の実施形態に係る刺激電極と接触電極の製造方法を表したものである。
刺激電極10については、
図11(a)に示すように、金属板から、打ち抜き加工により、連続基部110に複数の刺激電極10が接続した刺激電極群100を形成する。
刺激電極群100を形成する金属板は、第1の実施形態で説明したのと同様に、厚さが0.1〜0.2mm程度の、SUS304やSUS316などが用いられる。また、人体に無害な他の金属を用いたり、あるいは、表面を金など人体に無害な金属でメッキしてもよい。
【0085】
各刺激電極10は、その先細部18の先端で連続基部110に接続している。
そして、打ち抜きにより形成した刺激電極群100における、各刺激電極の先端を鍛造、研磨、エッチング、切断等により、斜面部15、16による刺激電極部12とその尖頭部を形成する。
このように連続基部110に複数の刺激電極10が接続した刺激電極群100を形成することで、複数の刺激電極10に対して効率的に刺激電極部12とその尖頭部の加工を行うことができる。
なお、
図11(a)に示した刺激電極群100は、連続基部110の一方の側にだけ複数の刺激電極10を形成する場合について示したが、連続基部110の両側に複数の刺激電極10を形成するようにしてもよい。
【0086】
複数の刺激電極10は、刺激電極部12とその尖頭部を加工した後、連続基部110から切り離されて各個別の刺激電極10となる。
この刺激電極10は、刺激電極部12以外の部分(本体部分)が円柱状ではなく、平板状態であることに加え、本体部から幅方向の両側に突出する係止部19が形成されているため運搬時における転がり等が防止される。
【0087】
一方、接触電極20については、刺激電極10と同材料からなる金属板を打ち抜き、
図11(b)に示すように、円筒部27になる長方形状部200と2本の足部28とを形成する。この打ち抜きの際に足部28の先端に先細部29も形成する。
この長方形状部200を幅方向が軸方向となるように丸めることで、
図11(c)に示すように円筒部27を形成する。
なお、
図11(c)では、長方形状部200の長手方向の両端部が、円筒形状27において離れた状態になっているが、状態を解り易くするために離して表示したもので、実際の両端部は互いに当接した状態に形成する。但し、両端部は
図11(c)のように互いに対向した状態で僅かに離れていてもよい。また、両端部を溶接等により完全に接続するようにしてもよい。
【0088】
図11(b)、(c)では接触電極20については、個別に打ち抜く場合について説明したが、
図11(a)で説明した刺激電極群100と同様に、連続基部の一方の側又は両側に複数の接触電極20を形成するようにしてもよい。この場合、先細部29、29の両方又は一方が連続基部に接続した状態に形成する。先細部29の一方が接続する場合には、両足部28の長さが異なることになるが、組み立て上は特に問題になることはない。
【0089】
図12は、第4の実施形態において使用する刺激電極10の形状、及び変形例の形状を表したもので、
図12(a)〜(h)の各々は、上から順番に平面図、正面図、斜視図を表している。
この
図12では、刺激電極部12側の一部だけ表示し、係止部19等については省略している。
なお、
図12(a)〜(h)に示す刺激電極部12側の形状については、第1の実施形態〜第3の実施形態においても採用することが可能である。
【0090】
図12(a)、(f)は、金属板を打ち抜き加工した第1基本形状と第2基本形状を表したもので、この基本形状に対して上述した鍛造、研磨、エッチング、切断等により
図12(b)〜(e)、(g)、(h)に示した刺激電極部12及び尖頭部を形成する。
なお、
図12において第1、第2基本形状を除く各図では、尖頭部の位置を明確にするため、該当箇所に黒丸を付してある。また、平面図、正面図、斜視図間で対応する斜面部を明確にするため、斜線を付してある。
【0091】
図12(a)は第1基本形状を表したものである。
この第1基本形状は、長手方向の中央線から左右に打ち抜いて斜面部15、15を形成することで、先端部分を三角形状にしたものである。そして、三角形状の中央先端には稜線12aが形成されている。この基本形状は、第1の実施形態において説明した形状である。
【0092】
図12(b)は、この第1基本形状から、先端に形成された三角形状部分の上側の面を尖頭部に向けて斜めに削ることで斜面部16を形成したものである。
図12(c)は、
図12(b)の形状から更に、斜面部16を形成する三角形において、尖頭部を通る二等分線が稜線となるように、二等分線(稜線となる線)及び後方(尖頭部の反対側)から左右方向斜め下に削ったものである。これにより、斜面部15は削り取られて無くなり、菱形形状の斜面部16c1、16c2が形成される。
【0093】
図12(d)、(e)は、第1基本形状において、稜線12aの一端が尖頭部となるように、先端部分を円錐形状に削ることで、円錐面16d、16eを形成したものである。
図12(d)の変形例は、円錐形状に削った先端部分以外は、断面形状が長方形のままである。
これに対して
図12(e)の変形例は、円錐形状に削った先端部分以外については、断面が半円形若しくは曲面となるように削ったものである。
なお、
図12(d)、(e)に示した変形例では、1つの曲面(円錐面16d、16e)の場合について説明したが、
図12(c)に示したように中央に稜線を有し、その両側に2つの曲面を形成するようにしてもよい。
【0094】
図12(f)は、第2の基本形状を表したものである。
この第2基本形状は、幅方向の一方側から他方側に向けて斜めに打ち抜くことで、先端部分を直角三角形状に形成したものである。この例では、直角三角形状の斜辺部分に、斜面部15fが1つだけ形成されている。
【0095】
図12(g)は、この第2基本形状から、先端に形成された直角三角形状部分の上側の面を尖頭部に向けて斜めに削ることで斜面部16gを形成したものである。これにより、斜面部15fは斜め半分が削られて15gとなる。
図12(h)は、
図12(g)の形状から更に、斜面部16gを形成する直角三角形において、斜辺部方向に斜め下方向に削ることで、斜面部16gを削ったものである。
なお、
図12(f)、(g)、(h)は、それぞれ、
図12(a)、(b)、(c)において、二倍の幅にした上で、中央から二等分した形状である。
【0096】
以上説明した変形例では、説明の都合上、第1、第2基本形状を削ることで他の各形状にする場合について説明したが、鍛造等他の方法も当然に可能である。
【0097】
図13は、第4の実施形態における刺激電極10の形状に関する変形例を表したものである。
この変形例では、
図13(b)に示すように、第4の実施形態で説明した刺激電極10(
図13(a)参照)における2つの係止部19、19をそれぞれ反時計回りの方向に所定角度曲げたものである。
図13(b)に示した変形例では所定角度として90度曲げているが他の角度でもよい。
また、係止部19の両方を反時計回りの方向に曲げているが、一方を時計回り方向、他方を反時計回り方向に曲げてもよく、更に、何れか一方だけを曲げるようにしてもよい。
【0098】
この変形例によれば、刺激電極10を平面に置いた場合に、曲げられた係止部19によって本体部分(係止部19以外の部分)を平面から浮き上げることができる。
これにより、樹脂部35に圧入する際に、刺激電極10を把持する作業が容易になり、特に製産ライン上のロボットによる刺激電極10の掴み取りが容易になる。
【0099】
図14は、第4の実施形態における刺激電極10の配設方向に関する変形例を表したものである。
この変形例では、3つの刺激電極10の幅方向の面が樹脂部35の中心方向を向くように配置したものである。
この変形例によれば、3つの刺激電極10の幅方向の面及び係止部19が径方向になるため、検査で使用する際に、生体刺激電極部1を当接させた状態で動かした場合でも、各刺激電極10のぐらつきを防止することができる。
なお、
図14では、刺激電極10の方向変更に伴い、3極の場合に使用する外側3つの貫通孔組90の向きも、貫通孔93、91、93の中心を結ぶ線が半径と直交する方向に変更したが、
図9に示した第4の実施形態の向きのままでもよい。この場合刺激電極10だけ中心方向を向くように圧入することになる。
【0100】
次に、生体刺激電極部1を皮膚に取り付ける取付部材と保護カバーについて、
図15を参照して説明する。
図15では、生体刺激電極1については側面を、取付部301、302と保護カバー303については断面を表している
【0101】
生体刺激電極1は、説明した第1〜第4の実施形態及びその変形例(後述する変形を含む)の何れでもよい。
図15では、
図9で説明した生体刺激電極部1を使用している。
但し、リード線97、98は、
図4と同様にフレキシブルな配線基板47を介して接続されている。
すなわち、樹脂部35の一方の面に配線基板47が取り付けられている。配線基板47には、樹脂部35の各貫通孔91、93と連通するように3つ(又はn個)の貫通孔、及び、配線95、96(配置関係については
図10と同様に配設される)が形成されている。
そして、連通する樹脂部35と配線基板47の両貫通孔の内側には、配線92及び94(配置関係については
図10と同様に配設される)が形成されている。この配線92、94は、円筒形状の金属を連通する貫通孔内に挿通し、両端をかしめることで形成されている。配線92、94は、その両端がかしめられることにより、樹脂部35と配線基板47の両平面と平行に、かしめ部が形成される。このかしめ部は、樹脂部35側では、刺激電極10の係止部96、及び接触電極20における円筒部27の足部28側端面が当接する。一方、かしめ部の配線基板47側では、かしめによって配線92、94と配線95、96とが接続される。
【0102】
刺激電極10の足部17と接触電極20の足部28は、
図9で説明したと同様に、樹脂部35と配線基板47の両貫通孔内に形成された配線92、94内に圧入されることで固定され、両先端は配線基板47から突き出ている。
但し、
図15では、突き出た部分について省略している。
【0103】
取付部301、302は、ポリウレタン等の弾性部材が使用され、生体刺激電極部1の外径よりも大きい外径を有する円形形状に形成されている。
取付部301には、接触電極20と同数で、接触電極20の外径よりも大きな内径の貫通孔が、各接触電極20の配置にあわせた位置に形成されている。取付部301の両面には、粘着材による粘着層が形成されている。
取付部301の厚さは、円筒部27の長さよりも短く形成されている。
そして、生体刺激電極部1の接触電極20を取付部301の貫通孔に挿通させ、樹脂部35を取付部301に貼り付ける。
【0104】
一方、取付部302は一方の面に粘着剤からなる粘着層が形成されていて、粘着層が形成されている側を配線基板47及び取付部301の周面に貼り付ける。
このように、取付部301と取付部302の両者を、生体刺激電極部1をその両側から挟み込むようにして貼り付けることで、内部に生体刺激電極部1を収容するとともにリード線97、98を固定している。
また、取付部301の開放面(取付部302と貼り付いていない側の面)に形成された粘着層によって、生体刺激電極部1を皮膚等に取り付けることができる。
【0105】
保護カバー303は、生体刺激電極部1と取付部301の粘着層(皮膚への取付側)を保護するためのカバーである。
保護カバー303は、透明の薄い樹脂により、取付部301の外径よりも大きな外径の円形形状に形成されている。
保護カバー303には、円形の第1凹部304と、第1凹部内に同心で同方向に形成された円形の第2凹部305が形成されている。
第1凹部は、内径が取付部301よりも大きく、取付部301の厚さと略同一の深さに形成されている。
一方、第2凹部305は、全ての接触電極20を収容可能な内径で、刺激電極10の先端から所定の間隔が確保される深さに形成されている。
【0106】
この保護カバー30の第1凹部の底面を取付部301の粘着層に貼り付けることで、粘着層を保護すると共に、第2凹部により刺激電極部10と接触電極部20が保護される。
【0107】
以上に説明した実施形態、及び変形例の生体刺激電極部1は、人体の表皮を電気刺激することを想定していたが、これは対象を人体に限定するものではなく、家畜、実験動物、その他の動物、あるいは植物に対して電気刺激を与えてもよい。
また、この場合、目的に応じて刺激電極部12の突出量など、電極対30の大きさや配置を適宜変更することができる。
【0108】
また以上説明した各実施形態及び変形例では、刺激電極10、接触電極20を形成するために金属板を打ち抜き加工(抜き加工)する場合について説明したが、打ち抜き加工に変えてレーザー切断を含む各種切断加工により形成するようにしてもよい。
更に、説明した各実施形態及び変形例では、刺激電極10、接触電極20を金属板から形成する場合について説明したが、導電性の樹脂により形成するようにしてもよい。
【0109】
また、以上に説明した各実施形態、及び変形例によって次の構成が得られる。
刺激電極10において、刺激電極部12は、鋭角に形成された刺激部として機能しており、屈曲部13、14が形成されているため、生体の表皮を刺激する先端が鋭角に形成された刺激部を有し、前記先端の刺激部と他端の間に屈曲部が形成された第1の電極として機能している。
また、接触電極20は、接触電極部22が表皮に接触し、屈曲部24、25を有しているため、生体の表皮に線又は面で接触する接触部を先端に有し、前記先端の接触部と他端の間に屈曲部が形成された第2の電極として機能している。
更に、樹脂部35は、刺激電極部12と接触電極部22が所定の位置関係となり電極対30を構成するように固定するため、生体の表皮に対する前記刺激部と前記接触部が所定の位置関係となるように前記第1の電極と前記第2の電極を固定する樹脂部として機能している。
また、第1の電極、第2の電極の屈曲部は、弾性を発揮させるための屈曲部であってもよい。
【0110】
また、第1の実施形態は、刺激電極10の屈曲部13、14よりも他端側の部分、接触電極20の屈曲部24、25よりも他端側の部分は、樹脂部35で固定されているため、前記第1の電極と前記第2の電極は、少なくとも前記屈曲部より前記他端側で前記樹脂部に固定されている。
第2及び第3の実施形態も、少なくとも屈曲した部分よりも他端側が固定されている。
屈曲した部分よりも他端側が樹脂部35で固定されているため、刺激電極部12、接触電極部22に応力が作用した場合に高い剛性を発揮することができる。
【0111】
刺激電極10、刺激電極部12は、金属板から板金加工により一体形成されるため、前記第1の電極と前記第2の電極のうち、少なくとも一方は、金属板から一体加工されている。
【0112】
第1の実施形態、及び第2の実施形態は、刺激電極10、接触電極20がインサート成形により固定されているため、前記第1の電極と前記第2の電極は、インサート成形により前記樹脂部に固定されている。
【0113】
第3の実施形態では、刺激電極10に基準穴61、62が、接触電極20に基準穴51が設けてあり、これらが、それぞれ、裏面側樹脂部36に設けた突起部37a、37b、36a、36bに嵌合して、突起部37a、37b、36a、36bを熱でかしめて刺激電極10、接触電極20を裏面側樹脂部36に固定するため、前記第1の電極と前記第2の電極には基準穴が形成されており、前記樹脂部は前記基準穴に嵌合する突起部が設けられており、前記第1の電極と前記第2の電極は、前記基準穴が前記突起部に固定されることにより前記樹脂部に固定されている。
【0114】
また、第3の実施形態では、刺激電極10の屈曲部13が凹部73に位置しており、空間に浮いた形となっているため、屈曲部13の他端側が裏面側樹脂部36の外周部側に片持ちされているため、前記第1の電極は、前記樹脂部の外周部側に屈曲して前記樹脂部により片持ちされており、前記樹脂部において前記屈曲した部分の周囲には空間が設けられている。
【0115】
また、第1の実施形態では、刺激電極10、接触電極20の他端側が樹脂部35の外周部まで延設されてコネクタに接続するため、前記第1の電極と前記第2の電極の他端側は、前記樹脂部の外周部まで延設されている。
【0116】
また、第2の実施形態では、電極部材11a〜11c、21a〜21cが樹脂部35の裏面側に露出しており、樹脂部35の外周部に至る配線48が形成されているため、前記第1の電極と前記第2の電極の他端側は、前記樹脂部の前記第1の電極と前記第2の電極が形成された側と対向する側に露出しており、前記露出した他端に接続して前記樹脂部の外周部に至る配線部材を具備している。
【0117】
また、第1の実施形態では、生体刺激電極部1は、電極対30を3個有しているため、前記第1の電極と前記第2の電極の組からなる電極対を複数有している。
【0118】
更に、接触電極20a〜20cは、互いに絶縁されているため、前記複数存在する前記電極対の第1の電極又は第2の電極のうち、少なくとも一方の電極は、互いに絶縁されている。
これにより、電極対30a〜30cに異なるパターンの電圧を印可することができる。
【0119】
加えて、生体刺激電極部1は、コネクタを介して電源装置に接続され、電極対30は、電源装置の回路から送信される電気信号により駆動されるため、生体刺激電極と、前記生体刺激電極に電気信号を送信して駆動する生体刺激電極駆動回路と、を具備した生体刺激装置を提供することができる。
【0120】
また、刺激電極10は、金属板を板金加工などして形成され、刺激電極部12の先端は稜線を有しているため、生体の表皮を刺激する先端が稜線を有する鋭角に形成された刺激部を有し、1枚の金属板から加工された第1の電極として機能している。
一方、接触電極20は、生体の表皮に線又は面で接触する接触部を先端に有し、前記先端の接触部と他端の間に屈曲部が形成された第2の電極として機能している。
そして、裏面側樹脂部36は、生体の表皮に対する前記刺激部と前記接触部が所定の位置関係となるように前記第1の電極と前記第2の電極を固定する固定部として機能している。
【0121】
図4(b)の例などは、刺激電極部12を複数有しているため、前記刺激部の稜線は複数形成されている。
【0122】
また、刺激電極10は、生体の表皮を刺激する先端が鋭角に形成された刺激部を有する第1の電極として機能している。
そして、接触電極20は、金属板から一体加工されるため、1枚の金属板から一体加工され、生体の表皮に線又は面で接触する接触部を先端に有する第2の電極として機能している。
更に、裏面側樹脂部36は、生体の表皮に対する前記刺激部と前記接触部が所定の位置関係となるように前記第1の電極と前記第2の電極を固定する固定部として機能している。
【0123】
第3の実施形態で、接触電極部55には、刺激電極部用穴56が設けられており、刺激電極部12は、刺激電極部用穴56を介して表皮に接するため、前記第2の電極には穴部が形成されており、前記刺激部は前記穴部を介して前記生体の表皮に接する。
【0124】
また、接触電極部55の両端に位置する電極部材21の部分は、接触電極部55の幅よりも狭く形成され、接触電極部55の四隅が丸くR形状に形成されているため、前記接触部は面であり、前記接触部を支持する支持部の幅は、前記接触部の幅よりも狭く形成され、前記接触部の角部は丸形状に形成されている。
【0125】
また、
図5、
図15で説明したフレキシブルな配線基板47については、樹脂部35の刺激電極10、接触電極20が配設される側と反対側に配設する場合について説明したが、刺激電極10等が配設される側に配線基板47を配設するようにしてもよい