(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918558
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ニューマチックアンローダの先端ノズル
(51)【国際特許分類】
B65G 67/60 20060101AFI20160428BHJP
B65G 53/42 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
B65G67/60 B
B65G53/42
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-24297(P2012-24297)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-159468(P2013-159468A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 正吉
【審査官】
中島 慎一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−113029(JP,A)
【文献】
実開昭53−047291(JP,U)
【文献】
実開昭52−017482(JP,U)
【文献】
特開2002−338044(JP,A)
【文献】
特開2011−079611(JP,A)
【文献】
実開昭57−110186(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60 − 67/62
B65G 53/00 − 53/28; 53/32 − 53/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物質を少なくとも一本の搬送管を介して吸入搬送することで荷役するニューマチックアンローダの先端ノズルであって、
上端部が前記搬送管の先端に接続されると共に、下端部が粒状物質の吸入口を形成し、その中空部を粒状物質の吸入流路とする内筒と、
前記内筒の外周を取り囲むと共に、その内周面と前記内筒の外周面との間で空気流路を形成する外筒と、
前記外筒の外周に上下方向に延在すると共に、その下方端が前記外筒の下端部よりも下方から前記吸入口に向けて屈曲して形成され、その先端が前記吸入口に下方から臨んで開口する補助流路管と、
前記補助流路管の先端開口と前記外筒の下端部との距離を可変にすべく、前記補助流路管を前記外筒に対して上下方向に移動させるアクチェータとを備え、
前記空気流路を流れて前記吸入口に向かう空気流と、前記補助流路管を流れて前記吸入口に向かい上昇する空気流とにより、粒状物質の前記吸入口への流動が助勢され、
前記アクチェータは、粒状物質の安息角が小さいほど前記距離を大きくするように前記補助流路管を移動させることを特徴とするニューマチックアンローダの先端ノズル。
【請求項2】
前記補助流路管に空気流量を調整する流量調整バルブを設け、前記流量調整バルブは、粒状物質の質量が重いほどバルブ開度が大きくされる請求項1に記載のニューマチックアンローダの先端ノズル。
【請求項3】
前記補助流路管の先端開口が、前記内筒の吸入口の真下に位置される請求項1又は2に記載のニューマチックアンローダの先端ノズル。
【請求項4】
前記補助流路管は、前記外筒の外周に所定間隔で複数設けられている請求項1から3の何れかに記載のニューマチックアンローダの先端ノズル。
【請求項5】
前記複数の補助流路管の下方端を周方向に連結する環状流路管をさらに備える請求項4に記載のニューマチックアンローダの先端ノズル。
【請求項6】
前記環状流路管の周方向に、前記吸入口に下方から臨んで開口する複数の開口孔を設けた請求項5に記載のニューマチックアンローダの先端ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックアンローダの先端ノズルに関し、特に、粒状の荷役物を荷揚げするニューマチックアンローダに適用される先端ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁に停泊中の船舶から積載されている粒状の荷役物(小麦、メイズ等)を荷揚げするアンローダとして、荷役物の中に先端ノズルを差し入れて吸入することにより荷揚げするニューマチックアンローダが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ニューマチックアンローダは、岸壁側に配設された分離器に接続されて横方向に延在する横搬送管と、この横搬送管に接続されて下方に向かい屈曲するベンド管と、このベンド管の先端に接続されて略垂直に下方に延在する垂直搬送管と、この垂直搬送管の先端に接続されて荷役物の中に差し入れられる先端ノズルとを備えており、真空ブロアの吸引力により先端ノズルから荷役物を吸い込むことで荷揚げを行うように構成されている。
【0004】
また、従来の先端ノズル構造は外筒と内筒とを備えており、これら外筒と内筒との間に生じる二次空気流の流量を調整することで荷役能力の向上を図っている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247322号公報
【特許文献2】特開昭60−118530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の先端ノズル構造では、
図6に示すように、小麦やメイズ等の荷役物(以下、単に粒状物質という)は内筒100と外筒110との間を流れる二次空気流により加速されて、この二次空気流に沿って上昇することで吸入される。そのため、この二次空気流から離間する深部の粒状物質ほど、静止状態から上昇させるのに必要となるエネルギは大きくなり、結果として真空ブロアを駆動させる電動機の消費電力が大きくなる可能性がある。また、電動機による消費電力を抑えようとすれば、真空ブロアの吸引力が低下して荷役効率の悪化を招く虞がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的は、荷役物としての粒状物質に二次空気流よりも直接的に作用する上昇空気流を作り出すことで、荷役効率を効果的に向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のニューマチックアンローダの先端ノズルは、粒状物質を少なくとも一本の搬送管を介して吸入搬送することで荷役するニューマチックアンローダの先端ノズルであって、上端部が前記搬送管の先端に接続されると共に、下端部が粒状物質の吸入口を形成し、その中空部を粒状物質の吸入流路とする内筒と、前記内筒の外周を取り囲むと共に、その内周面と前記内筒の外周面との間で空気流路を形成する外筒と、前記外筒の外周に上下方向に延在すると共に、その下方端が前記外筒の下端部よりも下方から前記吸入口に向けて屈曲して形成され、その先端が前記吸入口に下方から臨んで開口する補助流路管とを備え、前記空気流路を流れて前記吸入口に向かう空気流と、前記補助流路管を流れて前記吸入口に向かい上昇する空気流とにより、粒状物質の前記吸入口への流動が助勢されることを特徴とする。
【0009】
また、前記補助流路管に空気流量を調整する流量調整バルブを設けてもよい。
【0010】
また、前記補助流路管の先端開口と前記外筒の下端部との距離を可変にすべく、前記補助流路管を前記外筒に対して上下方向に移動させるアクチェータを設けてもよい。
【0011】
また、前記補助流路管は、前記外筒の外周に所定間隔で複数設けられるものであってもよい。
【0012】
また、前記複数の補助流路管の下方端を周方向に連結する環状流路管をさらに備えてもよく、前記環状流路管の周方向に、前記吸入口に下方から臨んで開口する複数の開口孔を設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のニューマチックアンローダの先端ノズルによれば、荷役物としての粒状物質に二次空気流よりも直接的に作用する上昇空気流を作り出すことで、荷役効率を効果的に向上することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る先端ノズルが適用されたニューマチックアンローダの全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る先端ノズルの構造を示す模式的な斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る先端ノズルの構造を示す模式的な断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る先端ノズルによる空気流及び、荷役物の流動を示す説明図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る先端ノズルの構造を示す模式的な斜視図である。
【
図6】従来の先端ノズルによる空気流及び、荷役物の流動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜4に基づいて、本発明の一実施形態に係るニューマチックアンローダの先端ノズルを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
まず、本実施形態の先端ノズル30が適用されるニューマチックアンローダ1の全体構成から説明する。
【0017】
図1に示すように、ニューマチックアンローダ1は、岸壁2側に配設された分離機3と、分離機3に空気管15を介して接続された真空ブロア16と、分離機3に揺動可能に接続されて横方向に延在する横搬送管4と、横搬送管4を揺動させる揺動機構13と、横搬送管4の先端に接続されて下方に向かい屈曲するベンド管5と、ベンド管5の先端に接続されて略垂直に下方に延出する垂直搬送管6と、垂直搬送管6の先端に接続されると共に、船舶7に積載された荷役物(以下、粒状物質ともいう)の中に差し入れられる先端ノズル30とを備える。さらに、ベンド管5と垂直搬送管6との間には、フレキシブルホース9が介設されており、垂直搬送管6と先端ノズル30との間にはフレキシブルホース10及び短管11が介設されている。
【0018】
横搬送管4は、分離機3に接続された大径管部4aと、この大径管部4aに摺動可能に挿入された小径管部4bとを含み、伸縮機構12によって大径管部4aと小径管部4bとを相対移動させることで伸縮可能に構成されている。垂直搬送管6は、大径管部6aと、この大径管部6aに摺動可能に挿入された小径管部6bとを含み、伸縮機構17によって大径管部6aと小径管部6bとを相対移動させることで伸縮可能に構成されている。
【0019】
本実施形態において、荷役物としての粒状物質は空気と共に先端ノズル30に吸い込まれた後、短管11、フレキシブルホース10、垂直搬送管6、フレキシブルホース9、ベンド管5、横搬送管4を介して分離機3へと導入される。そして、分離機3により空気から分離された粒状物質は岸壁コンベヤ14又は他の船舶(不図示)に供給される一方、粒状物質から分離された空気は空気管15から真空ブロア16に吸入されるように構成されている。
【0020】
次に、本実施形態に係る先端ノズル30の詳細構造について説明する。
【0021】
図2に示すように、先端ノズル30は、その筒内を粒状物質の吸入流路とする内筒31と、内筒31の外周に間隔を隔てて装着された外筒32と、この外筒32の外周に等間隔で設けられた複数本(本実施形態では5本)の補助流路管40とを備える。なお、補助流路管40の本数は4本以下であってもよく、6本以上であってもよい。
【0022】
図3に示すように、内筒31は、その上端部を短管11の先端に接続されており、下端部が粒状物質を吸入する吸入口31aを形成する。外筒32は複数の外筒ストローク調整用ターンバックル37(
図2参照)によって内筒31に吊り下げされており、外筒32の上端部には二次空気吸込口33が設けられている。外筒ストローク調整用ターンバックル37により内筒31と外筒32との軸方向相対位置を調整して内筒31の下端部と外筒32の下端部との間のギャップ34を変化させることにより二次空気流の流量を調整するように構成されている。なお、二次空気流の流量は、二次空気吸込口33の開口面積を変化させることで調整されてもよい。
【0023】
補助流路管40は、外筒32の外周に上下方向に延在する垂直流路管41と、垂直流路管41の下端部に接続されたL字状の第1エルボ継手42と、第1エルボ継手42に接続されて横方向に延在する横流路管43と、横流路管43の先端部に接続されたL字状の第2エルボ継手44と、第2エルボ継手44に接続されて上下方向に延在する先端流路管45とを備える。
【0024】
垂直流路管41は、上端部に上昇空気吸込口50が設けられた大径管部41aと、この大径管部41aに下方から摺動可能に挿入された小径管部41bとを含み、アクチュエータ46により大径管部41aと小径管部41bとを相対移動させることで伸縮可能に構成されている。大径管部41aは、外筒32の外周に周方向に設けられたノズル保護用の保護枠38に図示しないブラケットを介して固定されている。また、大径管部41aには、空気流量を調整する電磁バルブ47が設けられている。なお、アクチュエータ46及び電磁バルブ47はコントローラ60と電気的に接続されており、コントローラ60から出力される指示信号に応じて駆動を制御される。
【0025】
横流路管43は、その一端部を第1エルボ継手42に接続されており、小径管部41bの下端から先端ノズル30の軸心Xに向かって横方向に延在する。この横流路管43の長さは、軸心X側に臨む端部が吸入口31aの真下に位置されるように形成されている。先端流路管45の下端部は第2エルボ継手44に接続されており、先端流路管45の上端部には吸入口31aに向けて空気を送出する上昇空気送出口51が設けられている。
【0026】
すなわち、本実施形態の先端ノズル30では、内筒31と外筒32との間を通ってギャップ34から吸入口31aに向かう二次空気流の他、補助流路管40内を流れた後、上昇空気送出口51から吸入口31aに向かう上昇空気流が作り出される。これにより、二次空気流から離れた深部の粒状物質に対しても上昇空気流により均一な吸引力が付与されて、粒状物質の吸入口31aへの流動が助勢されるように構成されている。
【0027】
コントローラ60は、操作者の操作に応じてアクチュエータ46及び電磁バルブ47の駆動を制御する。より詳しくは、このコントローラ60には、予め作成した粒状物質の種類と先端流路管45の上端部から外筒32の下端部までの最適な距離(以下、クリアランスという)との関係を示すクリアランス設定マップ(不図示)及び、粒状物質の種類と電磁バルブ47の最適なバルブ開度との関係を示すバルブ開度設定マップ(不図示)が記憶されている。本実施形態において、最適なクリアランスは、粒状物質の安息角に応じて、この安息角が小さいものほどクリアランスは大きくなるように設定されている。また、最適なバルブ開度は、粒状物質の質量に応じて、質量が重いものほどバルブ開度は大きくなるように設定されている。
【0028】
コントローラ60は、操作者により粒状物質の種類が選択されると、これらのマップから選択された種類に対応する最適なクリアランスと最適なバルブ開度とをそれぞれ読み取ると共に、アクチェータ46及び電磁バルブ47に指示信号として出力する。これにより、クリアランスが粒状物質の安息角に応じた最適なクリアランスに調整されると共に、上昇空気流が粒状物質の種類に応じた最適な流量に調整されるように構成されている。
【0029】
次に、本実施形態に係るニューマチックアンローダの先端ノズル30による作用効果について説明する。
【0030】
先端ノズル30が荷役物である粒状物質の中に差し入れられて真空ブロア16が駆動すると、
図4に示すように、内筒31と外筒32との間を通ってギャップ34から吸入口31aに向かう二次空気流の他、補助流路管40内を流れた後、上昇空気送出口51から吸入口31aに向けて上昇する上昇空気流が作り出される。その結果、ギャップ34の近傍にある粒状物質は二次空気流に沿って吸入口31aに流動すると共に、この二次空気流から離れた深部の粒状物質は上昇空気流により上昇されて吸入口31aへと流動する。すなわち、二次空気流のみならず、この二次空気流よりも粒状物質に直接的に作用する上昇空気流により、吸引される範囲の粒状物質には均一な吸引力が付与されるようになっている。
【0031】
したがって、本実施形態の先端ノズル30によれば、上昇空気流により二次空気流から離れた深部の粒状物質に対しても均一に吸引力を付与することが可能となり、荷役効率を確実に向上することができる。
【0032】
また、二次空気流のみを用いる従来の先端ノズル構造と同程度の荷役効率で荷揚げを行う場合は、真空ブロア16の稼働を抑えることが可能となり、この真空ブロア16を駆動させる電動機の消費電力を効果的に抑制することができる。
【0033】
また、上昇空気流の流量は、粒状物質の質量に応じて電磁バルブ47を制御することで適宜調整されると共に、先端流路管45の上端部と外筒32の下端部との間のクリアランスは、粒状物質の安息角に応じてアクチュエータ46の駆動を制御することで適宜調整される。
【0034】
したがって、本実施形態の先端ノズル30によれば、安息角に沿って自重落下する粒状物質を上昇空気送出口51と吸入口31aとの間に効率よく流し入れ、かつ、粒状物質の質量に応じた上昇空気流を送出することが可能となり、荷役効率を粒状物質の種類に応じて効果的に向上することができる。
【0035】
また、補助流路管40の垂直流路管41は外筒32の外周に上下方向に延在し、補助流路管40の横流路管43は吸入口31aの下方に横方向に延在する。
【0036】
したがって、本実施形態の先端ノズル30によれば、補助流路管40を先端ノズル30の外周面及び先端部の保護枠としても機能させることができる。
【0037】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0038】
例えば、
図5に示すように、補助流路管40の一部を構成する横流路管43の先端部を環状に形成された環状流路管49で周方向に連結し、この環状流路管49に先端流路管45を周方向に等間隔で接続してもよい。この場合は、互いに隣り合う横流路管43が確実に固定され、特にノズル先端部の保護枠としての機能を効果的に向上することができる。
【0039】
また、補助流路管40を固定する場所は保護枠38に限定されず、例えば外筒32の外周面にブラケット等で直接固定してもよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ニューマチックアンローダ
30 先端ノズル
31 内筒
31a 吸入口
32 外筒
40 補助流路管
41 垂直流路管
42 第1エルボ継手
43 横流路管
44 第2エルボ継手
45 先端流路管
46 アクチェータ
47 電磁バルブ(流量調整バルブ)
60 コントローラ