特許第5918577号(P5918577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918577
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】体腔内観察視野確保装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A61B1/00 300P
   A61B1/00 300B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-52029(P2012-52029)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-183933(P2013-183933A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−528239(JP,A)
【文献】 特開2009−219743(JP,A)
【文献】 実開昭57−193802(JP,U)
【文献】 特開平07−227394(JP,A)
【文献】 特開2011−024829(JP,A)
【文献】 特表2013−538102(JP,A)
【文献】 特開2013−183895(JP,A)
【文献】 特開2012−040108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のカバーチューブ内に挿入される長尺状の医療用器具の先端に突出して取り付けられ、該医療用器具外周方向に向かって拡張して医療用器具からの観察視野を拡げて確保することができる体腔内観察視野確保装置であって、
前記医療用器具の先端外周に一端が嵌合する円筒取付部と、該円筒取付部の他端に一端が取り付けられる円環状のリング状部材と、該リング状部材の他端縁から前記医療用器具外周方向に向かう弾性復元力が付勢されて湾曲しながら立設する複数のループばねとを備えたことを特徴とする体腔内観察視野確保装置。
【請求項2】
前記複数のループばねを、径方向において交差するように前記リング状部材に立設することを特徴とする請求項記載の体腔内観察視野確保装置。
【請求項3】
前記複数のループばねを、隣接するループの横湾曲部が重なるように前記リング状部材に立設することを特徴とする請求項又は記載の体腔内観察視野確保装置。
【請求項4】
前記複数のループばねを、任意のループばねの左横湾曲部が左側ループばねの右横湾曲部の内周側、該任意のループばねの右横湾曲部が右側ループばねの左横湾曲部の外周側になるように前記リング状部材に立設することを特徴とする請求項から何れかに記載の体腔内観察視野確保装置。
【請求項5】
前記複数のループばねを、隣接する一方のループが内周側、他方のループが外周側になるように前記リング状部材に立設することを特徴とする請求項から何れかに記載の体腔内観察視野確保装置。
【請求項6】
前記複数のループばねを、ループの重なり量が小さくなるように隣接するループばねの立設位置の間隔を最小に立設したことを特徴とする請求項から何れか記載の体腔内観察視野確保装置。
【請求項7】
前記複数のループばねを、ループの重なり量が大きくなるように隣接するループばねの立設位置の間隔を最大に立設したことを特徴とする請求項から何れか記載の体腔内観察視野確保装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡等の先端に取り付けられて体腔内部の処置位置を拡張して内視鏡の観察視野を確保することができる体腔内観察視野確保装置に係り、特に、内視鏡径より広い観察視野を安定的に確保し、粘膜等が付着した場合であっても観察視野を確保することができる体腔内観察視野確保装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内視鏡は、照明用ライト、CCDカメラレンズ、送気・送水ノズル、鉗子や切開具等の処置具を先端部に向けて貫通させるための複数のチャネルが配置され、体腔内に挿入された状態で、照明用ライトにより照明が当てられた体腔内の部位の画像をCCDカメラレンズによって観察し、処置具による施術を行うように構成されている。
【0003】
この内視鏡は、例えば、胃粘膜層の患部周囲を切開し、該粘膜層の下層に位置する繊維状筋を切除する施術の場合、前記粘膜層の切開に続いて粘膜層と筋層との間の繊維状筋に切開具を挿入し、CCDカメラレンズによる患部画像を確認しながら切開具の操作を行うものであるが、切開した粘膜層と繊維状筋との間に挿入した部分の視野が狭いため、患部画像の視野を確保するため又は拡げるために粘膜層と繊維状筋との間を拡張する体腔内観察視野確保装置が使用されるのが一般的である。
【0004】
この従来技術による体腔内観察視野確保装置が記載された文献としては、下記の特許文献が挙げられる。特許文献1には内視鏡の先端に内視鏡外周方向に湾曲する一対のレトラクタ部材を設け、該レトラクタ部材が粘膜層を持ち上げる技術が記載され、特許文献2には内視鏡の先端に先端方向に延びる透過性のフードを設けることによって内視鏡視野を確保する技術が記載され、特許文献3には内視鏡の先端に把持鉗子を設け、該把持鉗子によって粘膜層を引上げることにより、粘膜膜と繊維状筋間の視野を確保する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−219743号公報
【特許文献2】特開2003−204919号公報
【特許文献3】特開2008−194302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1及び3に記載された技術は、一対のレトラクタ部材又は把持鉗子によって粘膜層を持ち上げることができるものの、これらレトラクタ部材又は把持鉗子を駆動するための駆動力を操作部から供給することが困難であると共に前記レトラクタ部材及び把持鉗子が観察視野を阻害してしまう可能性があるという課題があり、特許文献2に記載された技術は、透明なフードに粘液が付着して観察視野を阻害してしまう可能性がある為、フードの開口範囲しか良い視界が得られないという課題があった。
【0007】
このような課題に鑑みて、本発明は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、内視鏡等の長尺状の医療用器具の観察視野を阻害することなく体腔内部の処置部を拡げて観察視野を確保することができる体腔内観察視野確保装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、円筒状のカバーチューブ内に挿入される長尺状の医療用器具の先端に突出して取り付けられ、該医療用器具外周方向に向かって拡張して医療用器具からの観察視野を拡げて確保することができる体腔内観察視野確保装置であって、前記医療用器具の先端外周に一端が嵌合する円筒取付部と、該円筒取付部の他端に一端が取り付けられる円環状のリング状部材と、該リング状部材の他端縁から前記医療用器具外周方向に向かう弾性復元力が付勢された複数のばね部材を備えたことを第1の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、円筒状のカバーチューブ内に挿入される長尺状の医療用器具の先端に突出して取り付けられ、該医療用器具外周方向に向かって拡張して医療用器具からの観察視野を拡げて確保することができる体腔内観察視野確保装置であって、前記医療用器具の先端外周に一端が嵌合する円筒取付部と、該円筒取付部の他端に一端が取り付けられる円環状のリング状部材と、該リング状部材の他端縁から前記医療用器具外周方向に向かう弾性復元力が付勢されて湾曲しながら立設する複数のループばねとを備えたことを第2の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、該第2の特徴の体腔内観察視野確保装置において、前記複数のループばねを、径方向において交差するように前記リング状部材に立設することを第3の特徴とし、前記第2又は第3の特徴の体腔内観察視野確保装置において、前記複数のループばねを、隣接するループの横湾曲部が重なるように前記リング状部材に立設することを第4の特徴とし、前記第2から第4何れかの特徴の体腔内観察視野確保装置において、前記複数のループばねを、任意のループばねの左横湾曲部が左側ループばねの右横湾曲部の内周側、該任意のループばねの右横湾曲部が右側ループばねの左横湾曲部の外周側になるように前記リング状部材に立設することを第5の特徴とし、前記第2から第4何れかの特徴の体腔内観察視野確保装置において、前記複数のループばねを、隣接する一方のループが内周側、他方のループが外周側になるように前記リング状部材に立設することを第6の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記第4から6いずれかの特徴の体腔内観察視野確保装置において、前記複数のループばねを、ループの重なり量が小さくなるように隣接するループばねの立設位置の間隔を最小に立設したことを第7の特徴とし、前記第4から6いずれかの特徴の体腔内観察視野確保装置において、前記複数のループばねを、ループの重なり量が大きくなるように隣接するループばねの立設位置の間隔を最大に立設したことを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による体腔内観察視野確保装置は、リング状部材の他端縁から前記医療用器具外周方向に向かう弾性復元力が付勢された複数のばね部材を備えたこと、又は該ばね部材をリング状部材の他端縁から前記医療用器具外周方向に向かう弾性復元力が付勢されて湾曲しながら立設する複数のループばねによって構成することによって、内視鏡等の医療用器具からの観察視野を阻害することなく対象部位を拡げて観察視野を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態による体腔内観察視野確保装置を装着した内視鏡を示す図。
図2】第1実施形態による体腔内観察視野確保装置の操作方法を説明するための図。
図3】第1実施形態による体腔内観察視野確保装置を装着した内視鏡操作を説明するための図。
図4】本第1実施形態による体腔内観察視野確保装置を説明するための図。
図5】本発明の第2実施形態による体腔内観察視野確保装置を説明するための図。
図6】本発明の第3実施形態による体腔内観察視野確保装置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による体腔内観察視野確保装置の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
[前提説明]
まず、本発明による体腔内観察視野確保装置70を装着した内視鏡100の使用形態を図1乃至図3を参照して説明する。
本発明による体腔内観察視野確保装置70は、図1に示すように、円筒状のカバーチューブ101内に縮径した状態で挿入され、操作部110により湾曲等の操作がなされる長尺状の内視鏡100の先端に取り付けられ、図2(a)に示したカバーチューブ101内に収納した状態で人体の体腔内に挿入され、カバーチューブ101の先端が患部に達する位置において内視鏡100の体腔内挿入位置を保持した状態でカバーチューブ101を操作部110側(矢印A方向)に移動させることによってカバーチューブ101から露出させると共に、後述する線状の複数のループばね72の弾性復元力により先端側を拡径して体腔内の任意の部位を拡げることによって、湾曲部109により湾曲された内視鏡100のCCDカメラレンズによる画像視野を確保することができる。この体腔内観察視野確保装置70は、カバーチューブ101との相対移動により複数のループばね72を縮径及び拡径することができる。
【0015】
これを具体的に説明すると、例えば、胃壁等に発生した患部8を切除する場合、図3に示すように、本発明による体腔内観察視野確保装置70は、カバーチューブ101の先端内部に収納された状態で内視鏡100と共に胃内に挿入され、該内視鏡100から切開具9を突出させて患部8の下位置の粘膜層2及び、粘膜層2と筋層3間の繊維状筋4を切開するときに、複数のループばね72が粘膜層2と筋層3の間を押し拡げることによって観察視野を確保することができる。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による体腔内観察視野確保装置70は、先端側から見た図4(a)及び側面側から見た図4(b)に示すように、内視鏡100の先端外周部に嵌合する弾性力を有するプラスチック製等の円筒状の円筒取付部73と、該円筒取付部73の先端側に取り付けられる金属製等の円環状のリング状部材71と、金属線を巻いた撚線をループ状にして成り、前記リング状部材71の先端側円環縁に開口された孔に立設された弾性復元力のある複数のループばね72と、該複数のループばね72を閉じた状態で円筒内部に収納する円筒形状のカバーチューブ101(図1図3参照)とから成り、該カバーチューブ101に挿入されていないフリー状態では、複数のループばね72が、弾性復元力によって図4(b)に示すように内視鏡100の外周方向に向かって湾曲するように構成され、前記複数のループばね72は、図4(a)に示すように、隣接するループばねが径方向において交差し、且つ、任意のループばね(例えば、中央上部のループばね)の左横湾曲部が左側のループばねの右横湾曲部の内周側、該任意のループばねの右横湾曲部が右側のループばねの左横湾曲部の外周側になるように(即ち、ループばねの横湾曲部が交互に重なるように)リング状部材71にロー付け又は溶接によって立設位置の間隔が最小になるように立設されている。
【0017】
前記ループばね72は、図4(c)に示すように、ループ端部が前記リング状部材71の先端側円環縁に開孔された孔に挿入されて符号Zの位置でロー付け又は溶接され、単線又は撚線から成る弾性線材をループ状に形成したものであり、例えば内視鏡の外径が9〜12mmのとき、7本の撚線で0.5mm〜0.8mm径、出っ張り量は10mm〜30mm程度が好適である。
【0018】
前記カバーチューブ101は、内視鏡を挿入したときに可撓性が低下したり、硬くて体内挿入時に患者の負担がかからないような可撓性の材質であって、例えば薄肉状のシリコンや弾性ウレタンチューブ、テフロン(登録商標)チューブが好ましく、本実施形態による体腔内観察視野確保装置70のループばね72が窄められれば良い。なお、本実施形態によるループばね72の本数は図4(a)に描いた様に8本であるが、図4(b)においては側面から見たループばねが煩雑になるのを防ぐために手前側のループばね3本を省略して図示しており、後述する他の実施形態においても同様である。
【0019】
このように構成された体腔内観察視野確保装置70は、前述したようにカバーチューブ101の先端内部に収納された状態で内視鏡100と共に胃内に挿入され、患部下の粘膜層と筋層間の繊維状筋をCCDカメラレンズによる患部画像を確認しながら切開具を用いて切開する際、カバーチューブ101を操作部側に引き寄せることによって、前記複数のループばね72が弾性復元力によって外周方向に拡径して粘膜層と筋層の間を押し拡げることができる。特に本実施形態においては、リング状部材71の先端側円環縁にループ左右が交互に重なるように溶接された弾性力のある複数のループばね72を配置したことによって、隣り合うループが互いに干渉してループの弾性復元力を隣接するループに与え、弾性復元力を強くすることができ、粘膜層と筋層の間を強い力で押し拡げ、視野を確保することができる。
【0020】
即ち、本実施形態による体腔内観察視野確保装置70は、リング状部材71の先端側円環縁に隣接して立設した複数のループばね72を、隣接したループの根元近傍が交差し、隣接ループ湾曲部の一部が順に重なる様に配置したことによって、隣り合うループが互いに干渉してループの弾性復元力を隣接するループに与え、繊維状筋等を強い力で押し拡げ、視野を確保することができる。
【0021】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による体腔内観察視野確保装置70は、先端側から見た図5(a)及び側面側から見た図5(b)に示すように、内視鏡100の外周部に嵌合する弾性力を有するプラスチック製等の円筒状の円筒取付部73と、該円筒取付部73の先端側に取り付けられる金属製等の円環状のリング状部材71と、金属線を巻いた撚線をループ状にして成り、前記リング状部材71の先端側円環縁に開口された孔に立設された弾性復元力のある複数のループばね72a及び72bと、該複数のループばね72a及び72bを閉じた状態で円筒内部に収納する円筒形状のカバーチューブ101(図1図3参照)とから成り、該カバーチューブ101に挿入されていないフリー状態では、複数のループばね72a及び72bが、図5(b)に示すように弾性復元力によって内視鏡100の外周方向に向かって湾曲するように構成され、前記複数のループばね72a及び72bは、ループが図5(a)のように径方向において交差し、且つ、リング状部材71の周方向に対して隣接する一方のループばね72aが内周側、他方のループばね72bが外周側になるようにロー付け又は溶接によって立設位置の間隔が最小になるように立設されている。
【0022】
前記ループばね72a及び72bは、図5(c)に示すように、ループ端部が前記リング状部材71の先端側円環縁に開孔された孔に挿入されて符号Zの位置でロー付け又は溶接されている。なお、材質・形状等の特性は前記した第1実施形態と同様であり、前記カバーチューブ101の材質・形状等も同様である。
【0023】
このように構成された体腔内観察視野確保装置70は、前述したように患部画像を確認しながら切開具を用いて切開する際、前記複数のループばね72a及び72bが弾性復元力によって外周方向に拡がって繊維状筋を押し拡げることができる。特に本実施形態においては、ループ状であってリング状部材71の先端側円環縁にループが交互に重なるように溶接された弾性力のある複数のループばね72a及び72bを使用することによって、隣り合うループが互いに干渉してループの弾性復元力を隣接するループに与え、弾性復元力を強くすることができ、前記した粘膜層と筋層の間を強い力で押し拡げることができる。
【0024】
即ち、本実施形態による体腔内観察視野確保装置70は、リング状部材71の先端側円環縁に隣接して立設した複数のループばね72a及び72bを、隣接したループの根元近傍が交差し、ループが径方向に交互に重なる様に配置したことによって、内視鏡内周側のループばね72aが外側のループばね72bを押し拡げる様に干渉し、粘膜層と筋層の間を強い力で押し拡げ、視野を確保することができる。
【0025】
[第3実施形態]
前述の実施形態においては、体腔内観察視野確保装置70の隣接するループばね湾曲部の一部が重なる例を説明したが、本実施形態による体腔内観察視野確保装置70は、ループ湾曲部の重なり量を更に大きくしても良く、例えば図6に示すように、本発明の第3実施形態による体腔内観察視野確保装置70は、先端側から見た図6(a)及び側面側から見た図6(b)に示すように、内視鏡100の外周部に嵌合する弾性力を有するプラスチック製等の円筒状の円筒取付部73と、該円筒取付部73の先端側に取り付けられる金属製等の円環状のリング状部材71と、金属線を巻いたループ状を成して前記リング状部材71の先端側円環縁に開口された孔に立設された弾性復元力のある複数のループばね72a及び72bと、該複数のループばね72a及び72bを閉じた状態で収納する円筒形状のカバーチューブ101(図1図3参照)とから成り、該カバーチューブ101に挿入されていないフリー状態では、複数のループばね72a及び72bが、図6(b)に示すように弾性復元力によって内視鏡100の外周方向に向かって湾曲するように構成され、前記複数のループばね72a及び72bは、ループが図6(a)のように径方向において交差し、且つ、リング状部材71の周方向に対して隣接する一方のループばね72aが内周側、他方のループばね72bが外周側になり、ループの重なり量が大きくなるように隣接するループばねの立設間隔を最大に空けてロー付け又は溶接により立設されている。前記ループばね72a及び72b並びに前記カバーチューブ101の材質・形状等は、前記実施形態と同様である。
【0026】
このように構成された体腔内観察視野確保装置70は、患部画像を確認しながら切開具を用いて切開する際、前記複数のループばね72a及び72bが弾性復元力によって外周方向に拡がって粘膜層と筋層の間を押し拡げることができる。特に本実施形態においては、隣接するループばねの立設間隔を最大に空け、複数のループばね72a及び72bが互いに重なり合う重なり量を他の実施形態に比べて大きくしたことによって、内周側のループばね72aが外周側のループばね72bに与える押し拡げ力を強くすることができ、比較的短いループばねの弾性復元力を大きくし、粘膜層と筋層の間を強い力で押し拡げることができる。
【0027】
なお、前述の各実施形態においては、各実施形態における全てのループばねの形状が同様の例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、サイズの小さいループばねと比較的サイズの大きいループばねとを交互に重なり合うように配置し、前記小サイズのループばねが大サイズのループばねの弾性復元力をサポートする様に構成しても良く、前述の各実施形態においては、ループばねの弾性復元力を用いて内視鏡の先端側を押し拡げる体腔内観察視野確保装置の例を説明したが、本発明による前記押し拡げを行う部材はループばねに限られるものではなく、例えば、複数の舌板状等の他形状のばね部材であっても良く、この場合、ばね部材が根元側から先端側に向かって拡がるため視野を確保することができる。さらに、前記実施形態においては主に内視鏡の先端部に体腔内観察視野確保装置の円筒取付部を装着する例を説明したが、本発明による体腔内観察視野確保装置を装着する対象は内視鏡に限られるものではなく、先端側の視野を確保する必要がある長尺状の医療用器具に使用することができる。
また、前述の実施形態おける円筒取付部73やおよびリング状部材71は、弾性復元力のあるナイロンやPEEK(Polyether ether ketone)等の硬質のエンジニアリングプラスチック(強度500kgf/cm未満・曲げ弾性率24000kg/cm未満のプラスチック群)で一体成型してもよい。
【符号の説明】
【0028】
2 粘膜層
3 筋層
4 繊維状筋
8 患部
9 切開具
70 体腔内観察視野確保装置
71 リング状部材
72、72a、72b ループばね
73 円筒取付部
100 内視鏡
101 カバーチューブ
110 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6