特許第5918583号(P5918583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5918583便器清掃用具、便器清掃方法及び便器清掃構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918583
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】便器清掃用具、便器清掃方法及び便器清掃構造
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/10 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A47K11/10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-67237(P2012-67237)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198549(P2013-198549A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】391007460
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100173989
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 友文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弥惣司
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−086051(JP,U)
【文献】 特開平10−266301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00−11/12
E03C 1/12− 1/33
E03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管を清掃する便器清掃用具において、
便器の内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状の排液管路に対し、便器の内底部側からそのテーパ管状の排液管路内へ挿入可能であって前記テーパ管状の排液管路の管路方向中間部における内周断面の形状に適合した外周断面を有する先端部と、その先端部から基端部まで連通して内周部に形成される注水路とを有した管状に形成され、前記テーパ管状の排液管路内に前記先端部が所定長さ挿入されかつ密嵌された状態で前記先端部から前記注水路を通じて供給される高圧水を前記テーパ管状の排液管路内へ噴出する注水パイプと、
その注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路内に挿入した状態で、その注水パイプをその挿入方向へ押圧するために把持される把持ハンドルとを備える便器清掃用具であって、
前記高圧水は、前記注水パイプの先端部から前記テーパ管状の排液管路を経てその挿入方向へ噴出され、この高圧水の噴出流によって、便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れの清掃及び詰り物の解消し、
前記注水パイプの先端部は前記テーパ管状の排液管路の管路方向中間部にて密嵌されるので、前記高圧水が前記テーパ管状の排液管路内から便器の内底部へ逆流することが抑制され、
前記高圧水を噴出後に前記便器清掃用具を持ち上げることで、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路から抜脱することができることを特徴とする便器清掃用具。
【請求項2】
前記把持ハンドルは、前記注水パイプの基端部に連結固定され、当該連結固定部分から横方向両側にそれぞれ延設され、その各延設部分の外周が把持可能となっているハンドル本体を備えていることを特徴とする請求項1記載の便器清掃用具。
【請求項3】
前記把持ハンドルは、管状体をした前記ハンドル本体と、そのハンドル本体の一端部を閉塞した閉塞端部と、そのハンドル本体の他端部に設けられ給水ホースが接続されるホース接続部と、そのホース接続部を介して前記注水路及び給水ホースを連通接続するために前記ハンドル本体の内周部に形成される給水路と、その給水路内に配設されその給水路を開閉する開閉弁と、その開閉弁の開閉を操作するため前記ハンドル本体に配設される弁操作部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の便器清掃用具。
【請求項4】
便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管を清掃する便器清掃方法において、
便器の内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状の排液管路に対し、そのテーパ管状の排液管路の管路方向中間部における内周断面の形状に適合した外周断面を有する管状をした便器清掃用具の注水パイプの先端部を、便器の内底部側から前記テーパ管状の排液管路内へ挿入し、前記注水パイプの先端部の外周縁を前記テーパ管状の排液管路の内周面に合致密嵌させ、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路内に挿入した状態でその挿入方向へ押圧した状態で、前記注水パイプ内を通じて前記注水パイプの先端部から高圧水を前記テーパ管状の排液管路へ噴出して、便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れの清掃及び詰り物の解消し、前記高圧水を噴出後に前記便器清掃用具を持ち上げることで、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路から抜脱することを特徴とする便器清掃方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の便器清掃用具を用いるものであることを特徴とする請求項4記載の便器清掃方法。
【請求項6】
便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管へ、清掃用の高圧水を供給するために用いられる便器清掃構造において、
便器の内底部に開口形成され当該内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状の排液管路を備え、
そのテーパ管状の排液経路は、前記排液管路の管路方向中間部における内周断面の形状に適合した外周断面を有する便器清掃用具の注水パイプの先端部が、便器の内底部側から前記テーパ管状の排液管路内へ挿脱可能に挿入されることで、前記テーパ管状の排液管路内に前記先端部が密嵌されることが可能となっており、前記先端部から基端部まで連通して内周部に形成される注水路を有し管状に形成される便器清掃用具の注水パイプを通して、前記注水パイプの先端部から高圧水が噴出され、便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れの清掃及び詰り物の解消し、前記高圧水を噴出後に前記便器清掃用具を持ち上げることで、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路から抜脱することが可能となっていることを特徴とする便器清掃構造。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の便器清掃用具を用いるものであることを特徴とする請求項6記載の便器清掃構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管を清掃する便器清掃用具、便器清掃方法及び便器清掃構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器の清掃用具や洗浄装置に関しては種々のものが提案されており、例えば、下記特許文献1に記載される高圧洗浄装置が提案されている。この洗浄装置は、洗浄ノズルを便器用の汚物タンク等の槽に設けられるノズル挿入口へ挿入し、この洗浄ノズルから噴射される高圧洗浄水によって当該槽内部を洗浄するものである。
【0003】
そして、この高圧洗浄装置には、洗浄ノズルが先端に設けられた洗浄水供給パイプ本体の周囲に閉塞部材が設けられており、この閉塞部材によって高圧洗浄の際、槽内部の汚物が槽外部へ跳ね返ることや、逆流噴出することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−249288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した高圧洗浄装置では、その閉塞部材によってノズル挿入口を閉塞しながらも、かかる閉塞部材に通気用の流路が確保されるようになっており、かかる通気用流路を介して、洗浄中でも槽内部の圧抜きが行えるようになっている。
【0006】
ここで、少量の洗浄水が洗浄ノズルから槽内部へ噴出される程度であれば、上記した通気用流路を介して圧抜きを行いながらでも、閉塞部材を介して高圧水の逆流を充分に防止できるであろうと考えられる。
【0007】
しかしながら、少量の洗浄水では、例えば、小便器のようにトラップ部や排水管内に発生する汚れやソフトスケール等の詰り物を除去することは到底なし得ず、特に、トラップ部や排水管の詰りの大きな原因となるソフトスケールを除去することができないという問題点があった。
【0008】
とは言え、洗浄水の流量を増加すると、大量の高圧水がトラップ部や排水管からソフトスケール等の詰り物や汚物とともに逆流し易くもなり、かかる場合、通気用流路の確保を前提とした閉塞部材では、これらの逆流を抑制しきれないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管を清掃するための便器清掃用具、便器清掃方法及び便器清掃構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために請求項1の便器清掃用具は、便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管を清掃する便器清掃用具において、便器の内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状の排液管路に対し、便器の内底部側からそのテーパ管状の排液管路内へ挿入可能であって前記テーパ管状の排液管路の管路方向中間部における内周断面の形状に適合した外周断面を有する先端部と、その先端部から基端部まで連通して内周部に形成される注水路とを有した管状に形成され、前記テーパ管状の排液管路内に前記先端部が所定長さ挿入されかつ密嵌された状態で前記先端部から前記注水路を通じて供給される高圧水を前記テーパ管状の排液管路内へ噴出する注水パイプと、その注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路内に挿入した状態で、その注水パイプをその挿入方向へ押圧するために把持される把持ハンドルとを備える便器清掃用具であって、前記高圧水は、前記注水パイプの先端部から前記テーパ管状の排液管路を経てその挿入方向へ噴出され、この高圧水の噴出流によって、便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れの清掃及び詰り物の解消し、前記注水パイプの先端部は前記テーパ管状の排液管路の管路方向中間部にて密嵌されるので、前記高圧水が前記テーパ管状の排液管路内から便器の内底部へ逆流することが抑制され、前記高圧水を噴出後に前記便器清掃用具を持ち上げることで、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路から抜脱することができる。
【0011】
請求項2の便器清掃用具は、請求項1の便器清掃用具において、前記把持ハンドルは、前記注水パイプの基端部に連結固定され、当該連結固定部分から横方向両側にそれぞれ延設され、その各延設部分の外周が把持可能となっているハンドル本体を備えている。
【0012】
請求項3の便器清掃用具は、請求項2の便器清掃用具において、前記把持ハンドルは、管状体をした前記ハンドル本体と、そのハンドル本体の一端部を閉塞した閉塞端部と、そのハンドル本体の他端部に設けられ給水ホースが接続されるホース接続部と、そのホース接続部を介して前記注水路及び給水ホースを連通接続するために前記ハンドル本体の内周部に形成される給水路と、その給水路内に配設されその給水路を開閉する開閉弁と、その開閉弁の開閉を操作するため前記ハンドル本体に配設される弁操作部とを備えている。
【0013】
請求項4の便器清掃方法によれば、便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管を清掃する便器清掃方法において、便器の内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状の排液管路に対し、そのテーパ管状の排液管路の管路方向中間部における内周断面の形状に適合した外周断面を有する管状をした便器清掃用具の注水パイプの先端部を、便器の内底部側から前記テーパ管状の排液管路内へ挿入し、前記注水パイプの先端部の外周縁を前記テーパ管状の排液管路の内周面に合致密嵌させ、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路内に挿入した状態でその挿入方向へ押圧した状態で、前記注水パイプ内を通じて前記注水パイプの先端部から高圧水を前記テーパ管状の排液管路へ噴出して、便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れの清掃及び詰り物の解消し、前記高圧水を噴出後に前記便器清掃用具を持ち上げることで、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路から抜脱する。
【0014】
請求項5の便器清掃方法は、請求項4の便器清掃方法において、請求項1から3のいずれかの便器清掃用具を用いるものである。
【0015】
請求項6の便器清掃構造は、便器の内底部に開口形成される排液管路を通じて、その排液管路の下流側にあるトラップ部又は排水管へ、清掃用の高圧水を供給するために用いられる便器清掃構造において、便器の内底部に開口形成され当該内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状の排液管路を備え、そのテーパ管状の排液経路は、前記排液管路の管路方向中間部における内周断面の形状に適合した外周断面を有する便器清掃用具の注水パイプの先端部が、便器の内底部側から前記テーパ管状の排液管路内へ挿脱可能に挿入されることで、前記テーパ管状の排液管路内に前記先端部が密嵌されることが可能となっており、前記先端部から基端部まで連通して内周部に形成される注水路を有し管状に形成される便器清掃用具の注水パイプを通して、前記注水パイプの先端部から高圧水が噴出され、便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れの清掃及び詰り物の解消し、前記高圧水を噴出後に前記便器清掃用具を持ち上げることで、前記注水パイプの先端部を前記テーパ管状の排液管路から抜脱することが可能となっている。
【0016】
請求項7の便器清掃構造は、請求項6の便器清掃構造において、請求項1から3のいずれかの便器清掃用具を用いるものである。
【0017】
本発明に係る請求項1から3のいずれかの便器清掃用具、請求項4若しくは5の便器清掃方法、又は、請求項6若しくは7の便器清掃構造によれば、注水パイプの先端部が、便器の内底部側から排液管路内へ挿入される。すると、注水パイプの先端部がテーパ管状の排液管路の管路方向中間部で引っ掛かる。このとき、注水パイプの先端部の外周断面と排液管路の内周断面との形状が適合しているため、注水パイプの先端部の外周縁が排液管路の内周面に合致して、注水パイプの先端部が排液管路内に密嵌される。
【0018】
この密嵌状態のままで、注水パイプ内の注水路を通じて高圧水が供給されると、高圧水は、注水パイプの先端部から排液管路を経てその挿入方向へ噴出される。この高圧水の噴出流によって、トラップ部又はその先の排水管内の汚れやソフトスケール等の詰り物が押し流されて解消される。このとき、注水パイプの先端部はテーパ管状の排液管路の管路方向中間部にて密嵌されるので、高圧水が排液管路内から便器の内底部へ逆流することが抑制される。しかも、注水パイプは、排液管路内に挿入されたまま状態でその挿入方向へ押圧される。
【0019】
すると、この押圧によって、注水パイプの先端部の外周縁が排液管路の内周面に圧接されるので、高圧水は、注水パイプと排液管路との間の隙間から便器の内底部側へ更に逆流し難くなる。このように、本発明の便器清掃用具、便器清掃方法又は便器清掃構造によれば、注水パイプの先端部を便器の内底部側から排液管路内へ挿入して、その注水パイプを挿入押圧(押入)するだけで、高圧水の逆流を抑制しながら、極めて簡易に便器のトラップ部又はその先の排水管内の汚れやソフトスケール等の詰り物の解消や清掃を行える。
【0020】
しかも、注水パイプの先端部が挿入密嵌される排液管路は、便器の内底部から管路方向へ内周断面が漸減するテーパ管状となっているので、注水パイプの先端部の挿入や抜脱を円滑かつ容易に行える。
【0021】
特に、請求項1の便器清掃用具によれば、把持ハンドルを介して、注水パイプが排液管路内に挿入されたまま状態でその挿入方向へ押圧することができ、注水パイプに効率的に押圧力を加えることができる。
【0022】
また、請求項2の便器清掃用具によれば、請求項1の便器清掃用具と同様に作用する上、把持ハンドルは、注水パイプの基端部に連結固定されるハンドル本体を備えるので、かかるハンドル本体を横方向両側にある延設部分の外周を両手で把持することができ、清掃者等が両手で注水パイプを排液管路内へ挿入押圧(押入)することができる。このため、先端部から噴出する高圧水の反動が大きくても、両手で安定した状態で注水パイプの挿入状態を維持できる。
【0023】
また、請求項3の便器清掃用具によれば、請求項1又は2の便器清掃用具と同様に作用する上、ハンドル本体の内周部に給水路が形成されているので、このハンドル本体にホース接続部を介して給水ホースが接続されることで、給水路を介して注水パイプの注水路へ高圧水を供給することができる。
【0024】
しかも、ハンドル本体に給水路を開閉する開閉弁を設け、その開閉弁に近接してそれを開閉するための弁操作部もハンドル本体に設けられる。このため、注水パイプを排液管路内に挿入した状態でハンドル本体を両手で把持した格好のままでも、弁操作部を手元で操作して開閉弁の開閉を行うことができ、その結果、他人の手を煩わすことなく清掃者等が一人で簡易に便器の清掃作業を行える。
【0025】
ときに、開閉弁及び弁操作部は、その開閉弁の開度を弁操作部の操作により調節可能なものであっても良い。さすれば、清掃者等は、ハンドル本体を把持した状態のまま、その手元で高圧水の水量を調整することもできることとなる。
【0026】
なお、請求項5の便器清掃方法は、請求項4の便器清掃方法と同様に作用するうえ請求項1から3のいずれかの便器清掃用具とも同様に作用するものであり、請求項7の便器清掃構造は、請求項6の便器清掃構造と同様に作用するうえ請求項1から3のいずれかの便器清掃用具とも同様に作用するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の便器清掃用具、便器清掃方法又は便器清掃構造によれば、注水パイプの先端部を便器の内底部側から排液管路内へ挿入押圧(押入)するだけで、排液管路内へ噴出される高圧水の逆流を簡単に抑制することができ、かかる逆流を抑制しつつ、注水パイプの先端部から噴出される高圧水によりトラップ部又はその先にある排水管の清掃や詰り物の解消が行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施例である清掃具の正面図である。
図2】小便器清掃構造を示した縦断面図である。
図3図2のIII−III線における横断面図である。
図4】第2実施例の清掃具を用いた小便器清掃構造を示した縦断面図である。
図5】第3実施例の清掃具を用いた小便器清掃構造を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である清掃具1の正面図である。
【0030】
本実施例の清掃具1は、小便器50の内底部となる便器内底51に開口形成される排液管路52を通じて、その排液管路52に連通するトラップ部53、又は、当該トラップ部53に連通される排水管54を清掃するものである。図1に示すように、清掃具1は、主に、注水パイプ2と、把持ハンドル3とを備えている。
【0031】
注水パイプ2は、正面視直線状の形状を有した円筒管状の樹脂製パイプで形成されており、その内周部が先端部4(図1下側)から基端部5(図1上側)まで連通した注水路6となっている。例えば、この注水パイプ2の素材としては、硬質塩化ビニル製の円形パイプが用いられる。そして、この注水パイプ2の基端部5には、把持ハンドル3が連結固定されている。
【0032】
把持ハンドル3は、清掃者等の使用者により把持されるハンドル本体部7と、そのハンドル本体部7の横方向(軸方向)中央部から垂設されて注水パイプ2の基端部5が接続固定されるハンドル接続部8とを備えている。この把持ハンドル3は、その本体部7及び接続部8が互いに連設されて正面視T字状に形成された管状体であり、これらの本体部7及び接続部8の内周部が互いに連通した空間となっている。
【0033】
この把持ハンドル3は、そのハンドル接続部8に対し、注水パイプ2の基端部5が同軸状に連結固定されており、この連結固定によって、ハンドル本体部7が注水パイプ2に対して正面視T字状に連結固定された形態となっている。このため、把持ハンドル3のハンドル本体部7は、注水パイプ2の基端部5との連結固定部分から横方向両側にそれぞれ延設され、この各延設部分7aの外周が手で把持可能となっている。
【0034】
また、この把持ハンドル3は、その一部が硬質塩化ビニル等の樹脂材料で形成されたT字継手9で形成されており、このT字継手9には、ハンドル本体部7の一部を成す横管部9aと、ハンドル接続部8を成す縦管部9bとが、正面視T字状に連結されている。そして、ハンドル本体部7は、このT字継手9の横管部9aと、ボールバルブ10と、ワンタッチ継手11とが順に横方向に連結接続されることで形成されている。
【0035】
ここで、把持ハンドル3のハンドル本体部7は、その軸方向一端部(図1右側)となるT字継手9の横管部9aの右端部が閉塞されることで閉塞端部12となっており、その軸方向他端部(図1左側)にワンタッチ継手11のソケット11aが接続固定されている。このワンタッチ継手11は、プラグ11bがソケット11aに対して着脱自在に内嵌されることにより係合接続される継手である。
【0036】
なお、当該ワンタッチ継手11のプラグ11bは、高圧水を水源から供給する給水ホース13の端部に接続固定されている。
【0037】
ボールバルブ10は、ワンタッチ継手11のソケット11aとT字継手9の横管部9aの左端部との間に介設されている。ここで、ボールバルブ10は、T字継手9の内周部とワンタッチ継手11の内周部とを連通接続させる内部流路(図示せず。)と、その内部流路を開閉するボール状の弁体(図示せず。)と、その弁体を回動させて内部流路の開度調節を行うために手動操作される操作レバー10aとを備えている。
【0038】
このボールバルブ10によれば、操作レバー10aがハンドル本体部7を把持した手で操作されることによって、内部流路内で弁体が回動されて、その内部流路の開度が調節され、内部流路の開閉及び高圧水の流量調節が行われる。
【0039】
ここで、ハンドル本体部7には、そのT字継手9の横管部9aの内周部と、ボールバルブ10の内部流路と、ワンタッチ継手11の内周部とが横方向に連通することで、注水パイプ2の注水路6へ高圧水を供給する給水路14が形成されており、この給水路14が把持ハンドル3のハンドル接続部8(T字継手9の縦管部9b)を介して注水パイプ2の注水路6と連通されている。
【0040】
次に、図2及び図3を参照して、注水パイプ2の先端部4と小便器50の排液管路52との接続構造(以下「小便器清掃構造」という。)100について説明する。図2は、小便器清掃構造100を示した縦断面図であり、図3は、図2のIII−III線における横断面図である。
【0041】
図2に示すように、小便器50は、その便器内底51に排液管路52が開口形成されており、この排液管路52は、便器内底51側からトラップ部53側へ向けて内周断面が漸減するテーパ管状に形成されたものである。そして、清掃具1は、その注水パイプ2の先端部4が便器内底51側から排液管路52内に挿入されている。
【0042】
注水パイプ2の先端部4は、排液管路52の管路方向において到達可能な最奥部まで挿入されており、排液管路52の管路方向に所定長さ挿入された格好で、注水パイプ2の先端部4の外周縁が排液管路52の内周面に密着した状態となって、排液管路52の内周部に密嵌されている。
【0043】
図3に示すように、小便器50の排液管路52は、上記したように内周断面が漸減するテーパ管状に形成されることから、その円形状の内周断面が、便器内底51側(図3中の円P(2点鎖線で図示した円)に相当する。)に比べて小便器50のトラップ部53側(図3中の円Q(点線で図示した円)に相当する。)の方が小さくなっている。
【0044】
これに対し、注水パイプ2の先端部4は、その先端部4の外周断面が軸方向(図2上下方向、図3の紙面に対する垂直方向)に一定したものとなっており、その円形状の外周断面(図3中の円r(円Rの内周全体に接するように実線で図示された円)に相当する。)が、排液管路52における便器内底51側の内周断面(図3中の円Pに相当する。)より小さく、かつ、排液管路52におけるトラップ部53側の内周断面(図3中の円Qに相当する。)より大きくなっている。
【0045】
そして、この注水パイプ2の先端部4の外周断面は、その全周が排液管路52における管路方向(図2の上下方向及び図3の紙面に対する垂直方向)中間部の内周断面(図中の円R(円rの外周全体に接するように実線で図示された円)に相当する。)に適合した形状となっている。
【0046】
このため、注水パイプ2の先端部4の外周縁と排液管路52の内周面とが全周的に密着した状態となり、注水パイプ2の先端部4が排液管路52に密嵌された状態となる。そのうえ、このような密嵌状態において、把持ハンドル3を把持した使用者の両手によって注水パイプ2がトラップ部53側(図2下側)へ向けて押圧されることで、その密嵌状態が更に緊密化される。
【0047】
次に、図1から図3を参照して、上記した小便器50清掃具1及び小便器清掃構造100を用いた小便器50の清掃方法について説明する。
【0048】
まず、小便器50の清掃を行うにあたり、清掃具1と高圧水供給源(図示せず。)との接続が行われる。かかる接続では、把持ハンドル3のハンドル本体部7に対し、ワンタッチ継手11を介して給水ホース13が接続され、この給水ホース13が上水道等の高圧水供給源の給水口に接続される。
【0049】
一方、注水パイプ2は、その先端部4が便器内底51側から排液管路52内へ挿入される。ここで、排液管路52は、便器内底51側からトラップ部53側へ向けて、つまり、注水パイプ2の挿入方向へ向けて内周断面が漸減するテーパ管状なので、排液管路52の内周面を介して注水パイプ2の先端部4の挿入をガイドすることができる。
【0050】
なお、本実施例では注水パイプ2の挿入方向又は抜脱方向は、排液管路52の管路方向に一致したものとなっている。
【0051】
そして、注水パイプ2の先端部4が排液管路52の中に所定長さ挿入されると、注水パイプ2の先端部4の外周縁と排液管路52の内周面とが合致して、注水パイプ2の先端部4が排液管路52内に密嵌される結果、テーパ管状の排液管路52の管路方向中間部で引っ掛かる。
【0052】
このとき、把持ハンドル3のハンドル本体部7は、その横方向両側にある延設部分7a,7aの外周が清掃者の両手で把持される。そして、この把持ハンドル3を介して注水パイプ2を排液管路52内に押入する押圧力が加えられることで、注水パイプ2の先端部4と排液管路52との密着度が高められる。
【0053】
このようにして注水パイプ2の先端部4が排液管路52内に押入密嵌されると、高圧水供給源から給水ホース13を介して高圧水の供給が開始される。かかる高圧水の供給にあたっては、ボールバルブ10が操作レバー10aの操作により弁体が開状態とされる。
【0054】
すると、高圧水が把持ハンドル3のハンドル本体部7内の給水路14を通じて、注水パイプ2の給水路14へと供給される。このとき、清掃者にとって、ボールバルブ10の操作レバー10aがハンドル本体部7を把持した手元にあるので、ハンドル本体部7を把持したまま状態で、ボールバルブ10の開閉操作が容易に行える。
【0055】
そして、注水パイプ2の注水路6へ供給された高圧水は、注水パイプ2の先端部4から排液管路52を経てトラップ部53側へ向けて噴出される。この高圧水の噴出流によって、トラップ部53又はその先の排水管54内の汚れやソフトスケール等の詰り物が押し流されて解消される。しかも、注水パイプ2の先端部4はテーパ管状の排液管路52の管路方向中間部にて密嵌されるので、高圧水が排液管路52内から便器内底51へ逆流することが抑制される。
【0056】
小便器50の清掃後は、注水パイプ2の先端部4が小便器50の排液管路52内から抜脱される。かかる抜脱にあたって、注水パイプ2の先端部4が挿入密嵌されている排液管路52は、便器内底51からトラップ部53へ向けて内周断面が漸減するテーパ管状となっているので、排液管路52内に挿入密嵌された注水パイプ2の先端部4を手軽に引き抜くことができる。
【0057】
このように注水パイプ2の先端部4自体が、小便器50の排液管路52から便器内底51への高圧水の逆流を防止する密栓となり、なおかつ、小便器50の排液管路52への挿脱が容易かつ迅速に行える結果、公共施設などの小便器50が多数設置される場所でも、多数の小便器50の清掃を簡易に行えるのである。
【0058】
次に、図4及び図5を参照して、上記実施例の変形例について説明する。図4は、第2実施例の清掃具30を用いた小便器清掃構造300を示した縦断面図であり、図5は、第3実施例の清掃具40を用いた小便器清掃構造400を示した縦断面図である。
【0059】
第2実施例の清掃具30及び小便器清掃構造300は、上記した第1実施例の清掃具1及び小便器清掃構造100に対し、注水パイプ2の先端部4を拡径する手段を示したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0060】
図4に示すように、拡径部材31は、排液管路52におけるトラップ部53側の内径が注水パイプ2の先端部4の外径に比べて大口径であって、注水パイプ2の先端部4が排液管路52の管路方向中間部で密嵌不能な場合に、注水パイプ2の先端部4に外嵌装着されて当該先端部4の外径を拡大するものである。
【0061】
この拡径部材31は、注水パイプ2の先端部4が挿入されて嵌合接続される拡径接続部32と、拡径後の注水パイプ2の新たな先端部4として機能する拡径先端部33とを備えている。例えば、拡径部材31は、硬質塩化ビニル等の樹脂製の筒状の継手で形成されており、その拡径先端部33の外径は、元々の注水パイプ2の先端部4の外径に比べても大きく形成されている。
【0062】
第3実施例の清掃具40及び小便器清掃構造400は、上記した第1実施例の清掃具1及び小便器清掃構造100に対し、注水パイプ2の先端部4を縮径する手段を示したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0063】
図5に示すように、縮径部材41は、排液管路52におけるトラップ部53側の内径が注水パイプ2の先端部4の外径に比べて小口径であって、注水パイプ2の先端部4が排液管路52の管路方向中間部で密嵌不能な場合に、注水パイプ2の先端部4に外嵌装着されて当該先端部4の外径を縮小するものである。
【0064】
この縮径部材41は、注水パイプ2の先端部4が挿入されて嵌合接続される縮径接続部42と、拡径後の注水パイプ2の新たな先端部4として機能する縮径先端部43とを備えている。例えば、縮径部材41は、硬質塩化ビニル等の樹脂製の筒状の継手で形成されており、その縮径先端部43の外径は、元々の注水パイプ2の先端部4の外径に比べても小さく形成されている。
【0065】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で部品、素材、数値、サイズ、形状などの種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0066】
例えば、本実施例では、注水パイプ2の先端部4(拡径部材31の拡径先端部33及び縮径部材41の縮径先端部43を含む。以下同じ。)を排液管路52内に押入密嵌させるように構成されるものであるところ、排液管路52の内周面と密接する注水パイプ2の先端部4自体、又は、その先端部4の外周縁を、弾性を有する樹脂材料で形成するようにしても良い。
【0067】
具体的には、本実施例のように注水パイプ2の先端部4が硬質塩化ビニル製であれば、それに内在する弾性特性によって排液管路52の内周面に適合するように変形可能とすることができる。また、その他にも、注水パイプ2の先端部4における排液管路52の内周面との接触部分を、より一層弾性の高い弾性ゴム等の弾性材料で形成するようにしても良い。
【0068】
また、本実施例では、清掃対象となる便器が小便器50である場合について説明したが、小便器50を除く他の便器についても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,30,40 清掃具(便器清掃用具)
2 注水パイプ
3 把持ハンドル
4 注水パイプの先端部
5 注水パイプの基端部
6 注水路
7 ハンドル本体部(ハンドル本体)
7a,7a ハンドル本体部の延設部分(ハンドル本体の延設部分)
10 ボールバルブ(開閉弁)
10a 操作レバー(弁操作部)
11 ワンタッチ継手(ホース接続部)
12 閉塞端部
13 給水ホース
14 給水路
50 小便器(便器)
51 便器内底(便器の内底部)
52 排液管路
53 トラップ部
54 排水管
100,300,400 小便器清掃構造(便器清掃構造)
図1
図2
図3
図4
図5