特許第5918586号(P5918586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918586
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】巻芯
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/10 20060101AFI20160428BHJP
   B65H 75/24 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   B65H75/10
   B65H75/24 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-68725(P2012-68725)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199344(P2013-199344A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591015692
【氏名又は名称】長岡産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】上拾石 成夫
(72)【発明者】
【氏名】長岡 利典
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05816525(US,A)
【文献】 特開2012−046589(JP,A)
【文献】 特開平06−156878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 − 75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の表面に緩衝層が設けられ、前記緩衝層が、硬度(SRIS規格によるC型ゴム硬度計によるゴム硬度)が50〜65、連続気泡率が100%、空隙率39%〜50%、のポリウレタン発泡体からなる、巻芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は情報技術分野で用いられる機能性フィルムなどの高機能性フィルムの巻き取りに使用される巻芯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術分野の発展により、液晶用フィルム、エックス線用フィルム、プリント基板用フィルム及びその銅箔ラミネートフィルム、更には高性能印画紙などが情報機器用フィルムとして多用されるようになってきた。通常、これらのフィルムはその生産や加工の工程において円筒状のコアと呼ばれる紙管に巻き取られる。
【0003】
巻き取られたこれらフィルムは、詳細にみると、最内層においてフィルム厚さに影響を受け、「乗り上げ段差」による歪みを生ずる。即ち、最内層の1層目を巻き回し、2層目にかかると、フィルムの長手方向終端に2層目が乗り上げることになり、2層目の乗り上げた部分のフィルムの本来の平面性が損なわれ、結果としてフィルムに内部歪みや凹凸を端面段差痕として生じ、表面の平面性や精緻さを要求されるその後の工程において使用できないという問題を引き起こしている。この内部歪みや凹凸は巻き取り後のフィルムが一時的ストックや流通などのため長時間留置されると特に発生しやすい。
【0004】
この歪み欠点は、巻き回しを重ねることにより更に外層へと波及し、同様の欠点を伝播して生じせしめる。又、この歪み欠点は巻き取り後のフィルムが一時的ストックや流通などのため長時間留置されると特に発生しやすい。
【0005】
これらの部分欠点は、使用される段階で切除されて捨てられることとなり、高価な原材料を無駄にし、コストアップの原因となっていた。
【0006】
このような状況に対して、ロール状記録紙用紙管の分野では、0.2mm以上などの非常に厚い画像印刷用の記録紙の巻芯部に発生する端部段差を解消するために、紙管の外周に緩衝層として発泡スチレンシートを巻き付けたり、巻芯にスリットを設けたりしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかし、特に、液晶用フィルム、エックス線用フィルム、高性能印画紙などの光学的な均一性が要求される情報機器分野の光学的用途のフィルムにおいては、プリント基板用フィルム及びその銅箔ラミネートフィルムに比べて更に均一性が要求され、この歪み欠点は致命的である。
【0008】
このような均一性が要求される用途のフィルムにおいて、この「乗り上げ段差」による歪み欠点(乗り上げ段差痕)を解消する手段として、芯材本体の外周面に緩衝材を巻き付け、この緩衝材に巻芯の長さ方向(軸線方向)にフィルム端部を落とし込むための凹状の溝が設けられており、その該凹状の溝にフィルムを固定するための粘着シートが固定されている巻芯が開示されている。また、この緩衝材は、ゴム硬度Hが60〜90であることが好ましいとされている(特許文献2参照)。
このような巻芯は凹状の溝や粘着シートなどを必要とするため構造が複雑であり、また、フィルムの巻芯への仕掛かり操作に手間がかかる。
【0009】
あるいは、このような均一性が要求される用途のフィルムにおいて、この「乗り上げ段差」による歪み欠点(乗り上げ段差痕)を解消する手段として、樹脂又は金属製の円筒体の表面に緩衝層が設けられた巻芯が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この緩衝層として開示されているシートは見かけ密度が、0.03〜0.2gr/cmで、歪み25%における圧縮応力が30〜250kPaのポリエチレンやポリプロピレンからなる独立気泡シートである。
【0010】
このような巻芯の使用は「乗り上げ段差」を解消するうえで効果的であるが、巻き付けるフィルムが薄い場合、あるいは、フィルムの弾性率が比較的小さい場合、巻き付けられたフィルム層により巻芯を締め付ける力が大きいので、この緩衝層が締め付ける圧力により圧縮変形したいわゆる巻締りが生じてフィルムの巻姿が崩れるという問題が生ずる。また、フィルムを解舒したあとの緩衝層に圧縮痕が残留するという問題も生ずることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−318930号公報
【特許文献2】特開2011−184152号公報
【特許文献3】特許第3964892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、巻き付けるフィルムが厚み100μm以下と薄い場合、あるいは、フィルムの初期弾性率が2GPa以下と比較的小さい場合にも乗り上げ段差痕の発生が少なく、かつ、巻締りや圧縮痕が生じない巻芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要旨とするところは、円筒体の表面に緩衝層が設けられ、前記緩衝層が、硬度(SRIS規格によるC型ゴム硬度計によるゴム硬度)が30〜70、連続気泡率が70%以上、空隙率20〜50%、の弾性樹脂発泡体からなる、巻芯であることにある。
【0014】
前記弾性樹脂発泡体はポリウレタン発泡体であり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、巻き付けるフィルムが厚み100μm以下と薄い場合、あるいは、フィルムの初期弾性率が2GPa以下と比較的小さい場合にも乗り上げ段差痕の発生が少なく、かつ、巻締りや圧縮痕が生じない巻芯が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の巻芯の態様を示す断面模式図。
図2】発泡体の圧縮力−歪曲線のグラフ。
図3】発泡体の圧縮力−歪曲線のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の巻芯2は円筒体4の表面に緩衝層6が設けられて成る。緩衝層6は、発泡樹脂シートを円筒体4の表面に螺旋状にあるいは継ぎ目が円筒体4の軸方向と平行になるように巻き付けて接着あるいは粘着により固定することにより形成される。さらには、筒状の発泡樹脂シートに円筒体4が挿入された態様であってもよい。円筒体4は寸法安定性のうえから硬質の樹脂あるいは金属からなることが好ましい。
【0018】
巻芯にフィルムが巻き付けられたときに巻き付けられたフィルム層により巻芯を締め付ける力が発生して巻締りが生ずるが、発泡樹脂シートからなる緩衝層6の硬度が低くなると、緩衝層6に巻締りによる変形が生じ、緩衝層6の硬度が高くなるとフィルムに乗り上げ段差痕(以下段差痕と称する)が生ずる。
【0019】
本願発明者はこの二律背反的な事象を解消しようとして検討した結果、緩衝層6として連続気泡を有する弾性樹脂発泡体(以下発泡体と称する)を用いることにより巻締りが生ぜずかつ段差痕も生じない巻芯が得られることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明の巻芯2においては、緩衝層6を構成する発泡樹脂シートが連続気泡を有する発泡体からなり、その硬度(SRIS規格によるC型ゴム硬度計によるゴム硬度)は30〜70である。この発泡体の空隙率は20〜50%であることが好ましい。また、発泡体の気泡の平均径は1〜100μmであることが好ましい。また、連続気泡率が70%以上であることが好ましい。
【0021】
かかる構成の本発明の巻芯2は、厚さ100μm以下の薄いフィルムを巻いても巻締りが生ぜずまた使用上問題となるような段差痕の発生も極めて少ない。
【0022】
また、本発明の巻芯2は、プリント基盤用フィルム及びその銅箔ラミネートフィルムに発生した場合は欠点として顕在化せず情報機器分野の光学的用途用のフィルムに発生した場合は欠点として顕在化する度合いの段差痕であってもその発生を防ぐことができる。例えば、液晶パネル用偏光フィルムの巻き取りにも好適に用いられる。
【0023】
発泡体が連続気泡を有することにより、発泡体は、段差痕が生ずる部分のように局所的に大きな力がかかると、局所的に変形されやすく発泡体に沈み込むので、段差痕の原因となるフィルム端の段差が吸収されやすくなると思われる。これに対して、発泡体が独立気泡を有する場合は、発泡体は、段差痕が生ずる部分のように局所的に大きな力がかかるとその力を発泡体の表面全体で支えようとするので局所的には変形されにくく、発泡体に沈み込みにくいので段差痕の原因となるフィルム端の段差が吸収されにくいものと思われる。
【0024】
また緩衝層6は巻かれたフィルムの圧力により圧縮変形するが、発泡体が連続気泡を有する場合は、気泡中の空気が緩衝層6の圧縮変形にともない抜けてゆく。これにより、図2に示すように、発泡体が圧縮されてゆくときの応力が、圧縮量が5%までの圧縮の初期(ステージ1)においては圧縮量の増加につれて増加するが、圧縮量が5%を超える付近から圧縮量が50%ほどの間(ステージ2)においては圧縮量−圧縮応力のカーブの勾配がステージ1における圧縮量−圧縮応力のカーブの勾配の2分の1よりも小さくなり、圧縮量が50%を超えたあたりからその勾配が急激に大きくなる。このような緩衝層6の特性により、フィルム端の段差がステージ2において緩衝層6の変形で吸収され段差痕が発生しにくくなる。また、フィルムが巻かれるときに緩衝層6は均一な圧縮がなされ、かつ、フィルムが巻かれた直後の圧縮状態が維持されるのでフィルムにしわが発生するおそれが少ない。
【0025】
これに対して、発泡体の孔が独立孔である場合は、気泡中の空気が緩衝層6の圧縮変形にともない抜けにくく、図3に示すように、発泡体が圧縮されてゆくときの応力が、圧縮量が約10%までの圧縮の初期(ステージ1a)において圧縮量の増加につれて増加し、圧縮量が10%を超える付近から圧縮量が40%ほどの間(ステージ2a)においては圧縮量−圧縮応力のカーブの勾配がステージ1aにおける圧縮量−圧縮応力のカーブの勾配の2分の1ほどとなり、圧縮量が40%を超えたあたりからその勾配が徐々に大きくなる。ステージ2aにおいて圧縮量−圧縮応力のカーブの勾配が連続気泡の場合に比べて大きいことから緩衝層6に巻かれたフィルムの圧力による段差痕が発生しやすくなる。また、気泡壁に弾性変形の限度を超える異常な力がかかりやすいので気泡壁が非可逆的にクリープ変形し、結果として緩衝層6全体が非可逆的に変形しフィルムを解舒したあとに圧縮痕が残留するという傾向が強い。加えて、この気泡壁の変形による緩衝層6のクリープ変形により、フィルムが巻かれた直後からその後も緩衝層6の圧縮変形が発生し、巻かれた直後との圧縮変位量の時間差により、緩衝層6と巻かれたフィルム層との間や巻かれたフィルム層間に隙間が生じてこの隙間を吸収してフィルムにしわが入るというトラブルが生じやすい。
【0026】
なお、図2はポリウレタン発泡体(日本発条株式会社製 品番 EXG、アスカC硬度55)の圧縮力−歪カーブ、図3はポリエチレン発泡体(東レ株式会社製 品番 10020−AA00、発泡率10倍)の圧縮力−歪カーブである。
【0027】
本発明の巻芯2においては、発泡体のSRIS 0101規格のアスカーC硬度が30〜70であることが好ましい。発泡体の硬度が30未満であると、緩衝層6に巻締りによる変形が生じやすく、発泡体の硬度が70を上回ると、フィルムに段差痕が生ずる。
【0028】
発泡体の硬度は発泡体に用いられる弾性樹脂の弾性率や発泡体の空隙率や気泡の径を調整することにより所望の値にすることができる。
【0029】
また、発泡体の気泡の平均径が100μmを上回ると、巻かれたフィルムに巻締りの反力として不均一な力がかかるので不均一な段差痕が生じやすい。発泡体の気泡の平均径が1μmを下回るとフィルム端の段差が吸収されにくくなる。
【0030】
緩衝層6の厚みは0.5〜2mmであることが好ましい。厚みが2mmを上回ると、巻き付け時に緩衝層に巻き付け方向と逆方向に剪断力が加わり、厚みが厚いため、結果として緩衝層の絶対変形量大きくなり緩衝層表面にシワが入りこのシワによる圧痕がフィルムに発生する場合がある。厚みが0.5mmを下回ると、段差痕が生ずる場合がある。
【0031】
連続気泡率はASTM−2856−94−C法に準拠して測定した。測定器として空気比較式比重計930型(ベックマン株式会社製)を用い、連続気泡率を下記式により算出した。
連続気泡率(%)=((V−V1)/V)×100
V:サンプル寸法から算出した見かけ容積(cm
V1:空気比較式比重計を用いて測定したサンプルの容積(cm
【0032】
平均気泡径については、発泡体の切片をSEM(走査型電顕)を用いて100倍で観察し各気泡の長径と短径の平均値を気泡径とし、任意範囲の気泡の気泡径を測定し、平均気泡径を算出した。
【0033】
空隙率εは発泡体の見かけ体積に対する気泡が占める空間の体積の比率(%)であり、発泡体の見かけ比重ρとこの発泡体を構成する樹脂の比重ρからε=(1−(ρ/ρ))×100(%)として算出される。
【0034】
緩衝層6を構成する発泡体に用いられる弾性樹脂(エラストマー)としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーなどが挙げられる。エラストマーは2種以上がブレンドして用いられてもよい。あるいは、これらのエラストマーの成分が共重合されたものであってもよい。
【0035】
弾性樹脂の弾性率(JIS K7113:1995に規定される引張弾性率)は5〜200MPaであることが好ましい。
【0036】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。スチレン系エラストマーを構成する部分であるスチレンのほかに、スチレン誘導体を用いることができる。
【0037】
オレフィン系エラストマーは、炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体などが挙げられる。具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム、ブテン・α−オレフィン共重合体ゴムなどが挙げられる。
【0038】
ポリエステル系エラストマーは、例えばジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られる。例えば、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。
【0039】
ポリアミド系エラストマーは、ハード相にポリアミドを、ソフト相にポリエーテルやポリエステルを用いたポリエーテルブロックアミド型やポリエーテルエステルブロックアミド型が挙げられる。
【0040】
アクリル系エラストマーは、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステルを主成分とし、架橋点モノマーとして、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが用いられる。例えば、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0041】
エラストマーとしてはさらにイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0042】
これらエラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いにより弾性率を調整できる。
【0043】
緩衝層6を構成する成分としては、硬度や耐久性を調節するための軟化剤や、クレー、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機系添加剤が配合されてもよい。また、難燃性添加剤を添加して高度の難燃性を付与することもできる。
【0044】
緩衝層6を構成する発泡体に用いられる弾性樹脂としては、ウレタン系エラストマーが耐摩耗性などのうえで好ましい。また連続気泡率、セルサイズを容易に調整できるので好ましい。ウレタン系エラストマーとしては、ポリオールとジイソシアネートとがウレタン結合により重合した重合体であれば特に限定されない。また、ポリオールとジイソシアネートとの混合物に鎖延長剤を配合して反応させたものも使用できる。この混合物に発泡剤を配合し、ポリオールとジイソシアネートと鎖延長剤とを反応させつつ発泡させることにより、ポリウレタン発泡体が得られる。混合物には必要に応じて発泡性をコントロールする発泡助剤、整包剤、触媒などの助剤を配合してポリウレタン発泡体を製造してもよい。
【0045】
また、連続気泡を有する発泡体は、公知の特開1999−322875号公報、特開2002−226829号公報、特開2002−339844号公報に例示される方法などにより得ることができる。発泡体の硬度、気泡の平均径、空隙率、連続気泡率は樹脂や発泡剤の選定や配合比率、成形温度、圧力などの成形条件の設定により所定の範囲内におさめることができる。
【0046】
また、連続気泡を有する発泡体は、弾性樹脂の種類によってはエラストマーを押出発泡成形することにより得ることができる。発泡体の硬度、気泡の平均径、空隙率、連続気泡率は樹脂や発泡剤の選定や配合比率、成形温度、圧力などの成形条件の設定により所定の範囲内におさめることができる。押出発泡成形は、エラストマー樹脂組成物に界面活性剤や気泡調整剤などの助剤を混合し、発泡剤を圧入して押出成形することにより行う。発泡剤としては、例えば、水、炭化水素、各種フロン、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、不活性気体などを使用することができる。
【実施例】
【0047】
実施例1
図1に示す構成の巻芯2を用いてフィルムを巻き取った。円筒体4は材質がABS(アクリル−ブタジエン−スチレン)樹脂であり、内径は152mm、肉厚は6mm、長さは300mmである。緩衝層6はポリウレタン(PU)発泡体シート(日本発条社製:品番EM30)からなり、厚み2mmである。
【0048】
緩衝層6(ポリウレタン発泡体シート)の連続気泡率は100%、平均気泡径は80μm、空隙率は50%である。硬度は65である。
【0049】
円筒体と発泡樹脂シートの接着は両面粘着テープを用いて予め粘着テープを円筒体に螺旋状に貼り付けて行なった。両面粘着テープとしては、日東電工社製の幅50mmのものを用いた。
【0050】
巻芯2をフィルム用の巻き取り装置に装着し、巻き取り用のフィルムとして厚さ30μmのポリエステルフィルムを用い、断面積当たりの巻き取り張力が70N/cm、10m/minで60m巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃60%RHで24時間保管した後、巻き出して巻き始め部の端面段差痕が目視で残留している個所を、特定し、残留している個所のフィルムの長さを計り、フィルム全長に対する比率を端面段差痕残留率(%)として求めた。端面段差痕残留率は4%と低かった。
【0051】
実施例2
実施例1に用いたと同様の円筒体を用い巻芯を製作した。緩衝層6(ポリウレタン発泡体シートは日本発条社製 品番 EXG)の厚みは1.25mm、連続気泡率は100%、平均気泡径は50μm、空隙率は39%、硬度は55である。
【0052】
実施例1に用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃60%RHで24時間保管した後の端面段差痕残留率は3%と低かった。
【0053】
実施例3
実施例1に用いたと同様の巻芯を用い、巻き取り用のフィルムとして厚さ15μmのポリエステルフィルム(初期弾性率5GPa)を用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間保管した後の端面段差痕残留率は1%と低かった。
【0054】
実施例4
実施例1に用いたと同様の巻芯を用い、巻き取り用のフィルムとして厚さ15μmのポリエチレンフィルム(初期弾性率1200MPa)を用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃60%RHで24時間保管した後に端面段差痕残留はほとんど認められなかった。
【0055】
実施例5
緩衝層6として(ポリウレタン発泡体シートは日本発条社製 品番 EXT(連続気泡率100%、平均気泡径30μm、空隙率40%、硬度65)を用いたほかは実施例1と同様にして巻芯を製作した。実施例1に用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間で保管した後の端面段差痕残留率は3%と低かった。
【0056】
実施例6
緩衝層6としてエチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)を用いた発泡体シ−ト(連続気泡率70%、平均気泡径50μm、空隙率30%、硬度50)を用いたほかは実施例1と同様にして巻芯を製作した。実施例1に用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間保管した後の端面段差痕残留率は3%と低かった。
【0057】
実施例7
実施例1に用いたと同様の巻芯を用い、巻き取り用のフィルムとして日東電工社製液晶用偏光フィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃60%RHで24時間保管した後に端面段差痕残留はほとんど認められなかった。
【0058】
比較例1
緩衝層6を構成するシートとして厚み1mm、連続気泡率は90%、平均気泡径は0.7μm、空隙率は15%、硬度75のポリウレタン発泡体シートを用いたほかは実施例1と同様にして巻芯を製作した。実施例1に用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りは認められなかった。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間保管した後の端面段差痕残留率は20%と高かった。
【0059】
比較例2
緩衝層6を構成するシートとして厚み2mm、連続気泡率は100%、平均気泡径は120μm、空隙率は70%、硬度25のポリウレタン発泡体シートを用いたほかは実施例1と同様にして巻芯を製作した。実施例1に用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りが認められた。巻き取ったロールを20℃60%RHで24時間保管した後の端面段差痕残留率は3%と低かった。
【0060】
比較例3
緩衝層6を構成するシートとして厚み1mmのポリエチレン(PE)樹脂発泡樹脂シート(東レ製:商品名ペフ)を用いた。このポリエチレン樹脂発泡樹脂シートの見かけ密度は0.1gr/cmであり、硬度は40である。気泡は独立気泡である。実施例1に用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用い、実施例1と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りが認められた。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間保管した後の端面段差痕残留率は3%と低かった。巻き取ったフィルムを解舒したあとの緩衝層6に巻き締りによる窪み変形が回復しないで残った。
【0061】
比較例4
実施例3で用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用いたほかは、比較例3と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに巻き締りが認められた。巻き取ったロールを20℃60%RHで24時間保管した後に端面段差痕はほとんど認められなかった。巻き取ったフィルムを解舒したあとの緩衝層6に巻き締りによる窪み変形が回復しないで残った。
【0062】
比較例5
実施例4で用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用いたほかは、比較例3と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに極端な巻き締りが認められた。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間で保管した後に端面段差痕はほとんど認められなかった。巻き取ったフィルムを解舒したあとの緩衝層6に巻き締りによる窪み変形が回復しないで残った。
【0063】
比較例6
実施例7で用いたと同様の巻き取り用のフィルムを用いたほかは、比較例3と同様にして巻き取った。巻き取ったロールに極端な巻き締りが認められた。巻き取ったロールを20℃、60%RHで24時間保管した後に端面段差痕は3%と低かった。巻き取ったフィルムを解舒したあとの緩衝層6に巻き締りによる窪み変形が回復しないで残った。
【0064】
表1に実施例、比較例における巻き締りと端面段差痕の発生状況をまとめて示す。
【0065】
【表1】
【0066】
以上本発明の巻芯の態様を説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、これらの態様はいずれも本発明の範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の巻芯は、情報機器分野の光学的用途のフィルムの巻き取りに限らず、緩衝層を備えることが必要な巻芯に広く適用出来る。
【符号の説明】
【0068】
2:巻芯
4:円筒体
6:緩衝層
図1
図2
図3