(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作動流体が収容される一方室及び他方室と、これら一方室と他方室とを区画するバルブディスクと、上記一方室と上記他方室とを連通する流路と、この流路を通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段とを備え、伸縮時に作動流体が上記一方室と上記他方室との間を移動することにより、減衰力を発生する緩衝器において、
上記減衰力発生手段を迂回して上記一方室と上記他方室とを連通するバイパス路を備え、
このバイパス路には、このバイパス路を連通したり遮断したりする開閉弁と、上記一方室から上記他方室への作動流体の移動を許容するチェック弁とが設けられており、伸長行程で上記開閉弁が上記バイパス路を開くのに要する時間は、直前の圧縮行程のストロークが大きいほど長くなることを特徴とする緩衝器。
中空に形成されて内周面に上記開閉弁が摺接するハウジングと、このハウジング内に形成されて上記開閉弁で区画されるバイパス室及び背圧室と、この背圧室と上記他方室とを連通する背圧流路とを備えるとともに、
上記バイパス路は、上記バイパス室と、このバイパス室と上記一方室とを連通する第一通路と、上記バイパス室と上記他方室とを連通する第二通路とを備えて構成され、
上記開閉弁は、上記バイパス室の第二通路側開口となる上記ハウジングの連通孔を開閉し、この連通孔を閉じて上記バイパス路を遮断した状態で上記ハウジング内を一方室側に移動できることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
上記チェック弁が上記第二通路に設けられ、この第二通路を開閉する弁頭と、この弁頭を閉方向に附勢する附勢ばねとを備えていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の緩衝器。
上記開閉弁が中立位置よりも他方室側に上記ハウジング内を移動したとき、上記開閉弁を中立位置に戻すよう附勢するばねを備えていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか一項に記載の緩衝器。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施の形態に係る緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
【0016】
本実施の形態において、本発明は緩衝器のピストン部分に具現化されている。そして、上記緩衝器は、
図1に示すように、作動流体が収容される一方室A及び他方室Bと、これら一方室Aと他方室Bとを区画するピストン(バルブディスク)1と、上記一方室Aと上記他方室Bとを連通する流路Lと、この流路Lを通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段V1とを備え、伸縮時に作動流体が上記一方室Aと上記他方室Bとの間を移動することにより、減衰力を発生するものである。さらに、上記緩衝器は、減衰力発生手段V1を迂回して上記一方室Aと上記他方室Bとを連通するバイパス路Mを備えている。
【0017】
また、このバイパス路Mには、このバイパス路Mを連通したり遮断したりする開閉弁2と、上記一方室Aから上記他方室Bへの作動流体の移動を許容するチェック弁3とが設けられており、緩衝器が圧縮
行程から伸長
行程に移行すると、上記開閉弁2は、直前の上記圧縮
行程のストロークの大きさに依存した時間、上記バイパス路Mを遮断する。
【0018】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態において、緩衝器は、中空に形成されて内周面に上記開閉弁2が摺接するハウジングHと、このハウジングH内に形成されて上記開閉弁2で区画されるバイパス室m1及び背圧室n1と、この背圧室n1と上記他方室Bとを連通する背圧流路n2とを備えている。
【0019】
そして、上記バイパス路Mは、上記バイパス室m1と、このバイパス室m1と一方室Aとを連通する第一通路m2及び第一通路迂回路m4と、上記バイパス室m1と他方室Bとを連通する第二通路m3とを備えて構成されている。
【0020】
また、上記開閉弁2は、ハウジングH内を一方室側(
図1中左側)及び他方室側(
図1中右側)に移動して、バイパス室m1の第二通路側開口となるハウジングHの連通孔60を開閉することにより、バイパス路Mを連通したり遮断したりする。また、上記開閉弁2は、連通孔2を閉じながらハウジングH内を一方室側に移動することができるように設定されている。
【0021】
つづいて、バイパス室m1と一方室Aとを連通する上記第一通路m2には、この第一通路m2を通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段V2が設けられている。このため、バイパス路Mが連通されているときには、上記減衰力発生手段V2でバイパス路Mを通過する作動流体に抵抗を与えることができる。また、この減衰力発生手段V2の抵抗により、開閉弁2がハウジングH内を移動する速度を制限することができる。
【0022】
また、第一通路m2と同じくバイパス室m1と一方室Aとを連通する上記第一通路迂回路m4には、この第一通路迂回路m4を通過する作動流体に抵抗を与えるとともに、第一通路迂回路m4を通過する作動流体の流量を変更する可変絞りV4が設けられている。このため、上記可変絞りV4で、第一通路m2や第一通路迂回路m4を通過して一方室Aとバイパス室m1との間を移動する作動流体の流量を変更し、開閉弁2の挙動や、バイパス路Mが連通されているときの緩衝器の減衰力を調整することができる。
【0023】
つづいて、上記背圧室n1と他方室Bとを連通する背圧流路n2には、この背圧流路n2を通過する作動流体の流量を規制する流量規制手段が設けられている。尚、流量規制手段として、リーフバルブや絞りなど種々の構成を選択することが可能であるが、本実施の形態において、流量規制手段は絞りV3からなる。そして、流量規制手段(絞りV3)を備えているため、第一通路m2に設けられる減衰力発生手段V2とともに、この絞りV3の抵抗により、開閉弁2がハウジングH内を移動する速度を制限することができる。
【0024】
また、上記背圧室n1には、ばね20が設けられており、このばね20は、開閉弁2が中立位置よりも他方室側(
図1中右側)に移動したとき、開閉弁2を中立位置に戻すように附勢する。尚、上記開閉弁2の中立位置は、連通孔60近傍であることが好ましく、任意に設定することが可能であるが、本実施の形態においては、
図1に示すように、連通孔60が閉じた状態になるように設定されている。
【0025】
つづいて、一方室Aから他方室Bへの作動流体の移動を許容するチェック弁3は、本実施の形態において、上記第二通路m3に設けられており、閉弁しているときに他方室Bの内圧が高まったとしても開弁しないが、バイパス室m1の内圧が高まると開弁して第二通路m3を連通する。
【0026】
つまり、上記構成を備えることにより、他方室Bの内圧が高まると、他方室Bの作動流体が背圧流路n2を通過して背圧室n1に移動する。そして、開閉弁2がバイパス室m1の作動流体を一方室Aに押し出しながら一方室側(
図1中左側)に移動し、連通孔60を閉じる。
【0027】
次いで、一方室Aの内圧が高まると、一方室Aの作動流体が第一通路m2及び第一通路迂回路m4(可変絞りV4が開いている場合)を通過してバイパス室m1に移動する。そして、開閉弁2が背圧室n1の作動流体を他方室Bに押し出しながら他方室側(
図1中右側)に移動し、連通
孔60を開く。そして、バイパス室m1の作動流体がチェック弁3を開くことから、一方室Aの作動流体がバイパス路Mを通過して他方室Bに移動する。
【0028】
尚、第一通路迂回路m4に設けられる可変絞りV4、バイパス路Mを連通したり遮断したりする開閉弁2、第二通路m3に設けられるチェック弁3も、第一通路m2に設けられる減衰力発生手段V2と同じく、バイパス路Mを通過する作動流体に抵抗を与えることができ、減衰力発生手段に相当する構成である。
【0029】
次に、上記緩衝器の具体的な構成について
図2を参照して説明する。上記緩衝器は、車両の車体と車輪との間に介装された車両用の緩衝器であり、車輪側に連結されるシリンダSと、車体側に連結されて上記シリンダS内に軸方向に移動可能に挿入されるピストンロッドRとを備えて、正立型に設定されている。
【0030】
そして、上記一方室A及び上記他方室Bは、上記シリンダS内に軸方向に並んで形成されるとともに、作動流体で満たされており、上記一方室Aが車体側(
図2中上側)に配置され、上記他方室Bが車輪側(
図2中下側)に配置されている。また、本実施の形態において、上記作動流体は、水、油等の液体からなるがこの限りではなく、上記作動流体として、他の液体や気体等種々の構成を採用することが可能である。
【0031】
つづいて、上記一方室Aと他方室Bとを区画するピストン1は、環状に形成されて、上記ピストンロッドRの先端側に形成される取り付け部r1外周に保持されており、上記シリンダSの内周面に摺接し、ピストンロッドRとともにシリンダS内を軸方向に移動する。
【0032】
また、本実施の形態において、ピストンロッドRは、先端がピストン1から他方室Bに突出し、他端側が上記ピストン1の一方室Aを貫通してシリンダS外に延びており、緩衝器は片ロッド型に設定されている。そして、上記緩衝器は、シリンダS内に出没するピストンロッド体積分のシリンダ内容積変化を補償するため、図示しないが、気体を収容する気室を備えている。
【0033】
もどって、上記ピストン1には、一方室Aと他方室Bとを連通する流路Lが形成されるとともに、この流路Lを通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段V1として、一方室側に環板状のリーフバルブ10が複数枚積層されている。そして、これらリーフバルブ10は、その内周側がピストンロッドRに固定され、外周側がピストン1に形成される座面1aに離着座可能となっている。さらに、上記リーフバルブ10のうち、最もピストン側に位置するリーフバルブ10には、切欠き10aが形成されており、リーフバルブ10が閉じているときこの切欠き10aがオリフィスとなる。
【0034】
さらに、本実施の形態において、緩衝器は、上記ピストン1の一方室側に配置されるサブピストン4と、このサブピストン4を覆うサブピストンケース5と、上記ピストン1の他方室側に配置される内筒6と、この内筒6の外周に配置される外筒7とを備えており、これらは、上記ピストン1とともにピストンロッドRの取り付け部r1外周に保持されている。
【0035】
また、上記ピストンロッドRの取り付け部r1は、筒状に形成されており、内部にバイパス室m1が形成されている。さらに、上記ピストンロッドRには、上記バイパス室m1の一方室側に軸方向に連なるピストンロッド縦孔r2と、このピストンロッド縦孔r2と一方室Aとを連通するピストンロッド第一横孔r3とが形成されており、これらで上記第一通路迂回路m4(
図1)を構成し、一方室Aとバイパス室m1とを連通している。
【0036】
そして、上記第一通路迂回路m4に設けられる可変絞りV4は、上記ピストンロッド縦孔r2の内周に嵌合するブッシュ8と、反ピストン側からブッシュ8内に尖端部が出没可能に挿入されるニードル80と、このニードル80の背面側に連設されるコントロールロッド81と、このコントロールロッド81を介してニードル80を駆動するモータやアジャスタ等の図示しない駆動手段とを備えて構成されている。このため、上記駆動手段で上記ニードル80を駆動して、ニードル80の尖端部とブッシュ8との隙間量(絞り量)を変化させ、第一通路迂回路m4(
図1)を通過する作動流体の流量を調整することができる。
【0037】
もどって、サブピストン4を覆う上記サブピストンケース5は、有底筒状に形成されており、内部に形成されるケース室50が上記サブピストン4で上記一方室Aと区画されている。そして、上記ケース室50は、ピストンロッドRに形成されるピストンロッド第二横孔r4を介して上記バイパス室m1と連通している。
【0038】
また、上記サブピストン4には、上記ケース室50と一方室Aとを連通するサブピストン通孔4aが形成されており、このサブピストン通孔4a、上記ケース室50及び上記ピストンロッド第二横孔r4で上記第一通路m2(
図1)を構成し、一方室Aとバイパス室m1とを連通している。
【0039】
そして、上記第一通路m2に設けられる減衰力調整手段V2は、上記サブピストン4のケース室側に積層される複数枚の環板状のリーフバルブ40からなり、これらリーフバルブ40は、内周側がピストンロッドRに固定され、外周側がサブピストン4に形成される座面4bに離着座可能となっている。さらに、上記リーフバルブ40のうち、最もサブピストン側に位置するリーフバルブ40には、切欠き40aが形成されており、リーフバルブ40が閉じているときこの切欠き40aがオリフィスとなる。
【0040】
つづいて、上記ピストン1の他方室側に配置される上記内筒6は、筒状に形成されており、内部が上記バイパス室m1に連なり、ピストンロッドRの取り付け部r1とともにハウジングH(
図1)を構成している。さらに、内筒6は、上記ピストンロッドRの取り付け部r1における先端部外周に螺合する結合部6aと、この結合部6aの反ピストンロッド側に連設されて内径が上記結合部6aの内径よりもやや大きく形成される第一胴部6bと、この第一胴部6bの反ピストンロッド側に連設されて内径が上記第一胴部6bよりもやや大きく形成される第二胴部6cと、この第二胴部6cの反ピストンロッド側に連設されて内周に先端部材9が螺合する保持部6dとを備えており、内筒6の他方室側開口が上記先端部材9で塞がれている。
【0041】
また、上記内筒6において、上記第二胴部6cの保持部側から保持部6dにかけて外周が張り出しており、環状のフランジ部6eが形成されている。さらに、上記第二胴部6cの第一胴部側端部には、バイパス室m1の第二通路側開口となる連通孔60が形成されている。また、上記第二胴部6cの連通孔60よりも保持部側内周には、内径が上記第一胴部6bと等しく形成される筒状の軸受け61が嵌合しており、この軸受け61に開閉弁2が移動可能に支えされ、内筒6内を軸方向に移動することができる。
【0042】
上記開閉弁2は、円柱状に形成される頭部2aと、この頭部2aの先端部材側外周部に連設される筒状の脚部2bとを備えている。また、上記開閉弁2の外径は、上記第一胴部6b及び軸受け61の内径と符合しており、開閉弁2は、バイパス室m1と、開閉弁2の先端部材側に形成される背圧室n1とを区画する。
【0043】
そして、上記開閉弁2が一方室側(
図2中上側)に移動して、頭部2aが第一胴部6b内に挿入されたとき、上記連通孔60を閉じるため、バイパス路M(
図1)が遮断される。また、開閉弁2がピストンロッドRに当接する最大限まで移動した場合(
図3)にも、脚部側を軸受け61で支えられているため、連通孔60が背圧室n1と連通されることがなく、バイパス路M(
図1)を遮断し続けることができる。他方、開閉弁2が他方室側(
図2中下側)に移動して、頭部2aが第一胴部6bから抜け出たとき、上記連通孔60を開くため、バイパス路M(
図1)が連通される。
【0044】
また、上記開閉弁2と先端部材9との間に形成される背圧室n1には、コイルスプリングからなるばね20が収容されており、このばね20の先端部が上記開閉弁2の脚部2b内に移動可能に挿入されている。また、このばね20の自然長は、中立位置にある開閉弁2の頭部2aの先端部材側端面から先端部材9の開閉弁側端面までの距離と略等しく設定されている。このため、ばね20は、開閉弁2が中立位置よりも他方室側(
図2中下側)に移動したとき、開閉弁2を中立位置に戻すように附勢することができる。また、開閉弁2は、中立位置よりも一方室側(
図2中上側)に移動するとき、ばね20の附勢力を受けずに移動し、一方室側に最大限移動したとしても脚部2bからばね20の先端部が完全に抜け出ないように設定されている(
図3)。
【0045】
また、背圧室n1と他方室Bとを連通する背圧流路n2は、上記先端部材9の軸心部に形成されている。さらに、この背圧流路n2を通過する作動流体の流量を規制する絞りV3も先端部材9に設けられている。
【0046】
つづいて、上記内筒6の外周に配置される外筒7は、有天筒状に形成されており、環状に形成されて上記ピストン1と上記内筒6の結合部6aとの間に挟持される蓋部7aと、この蓋部7aの反ピストン側外周部に連設される筒状の本体部7bとを備えている。そして、この本体部7bと上記内筒6との間に筒状の筒状通路70が形成されている。
【0047】
また、上記外筒7において、上記蓋部7aの外周は、外側に張り出しており、反ピストン側に水平環状の座面7cが形成されている。他方、上記本体部7bの反ピストン側端部は、内筒6のフランジ部6eの
図2中上側に配置される。さらに、本体部7bの反ピストン側端部内周は、内側に突出し、内周に係合するシール(符示せず)を介して内筒6における連通孔60よりも
図2中下側の第二胴部6c外周に密接している。また、上記本体部7bのピストン側端部には、外筒横孔71が形成されており、この外筒横孔71と筒状通路70とで上記第二通路m3(
図1)を構成し、バイパス室m1と他方室Bを連通している。
【0048】
そして、上記第二通路m3に設けられるチェック弁3は、筒状に形成されて、上記外筒7の本体部7b外周に摺動可能に取り付けられた弁頭30と、内筒6のフランジ部6e上に起立して上記弁頭30をピストン側(閉方向)に附勢する附勢ばね31とを備えている。
【0049】
また、上記弁頭30の反附勢ばね側には、水平環状の先端面30aが形成されるとともに、上記弁頭30の内周面には、先端面30aにかけて徐々に拡径されるテーパ面30bが形成されている。このため、上記チェック弁3は、上記先端面30aを外筒7の座面7cに離着座させることで、上記第二通路3m(
図1)を開閉する。また、弁頭30が上記形状を備えているため、チェック弁3は、閉弁しているときに他方室Bの内圧が高まったとしても開弁しないが、バイパス室m1の内圧が高まったときに開弁し、一方室側から他方室側への作動流体の移動を許容するようになっている。
【0050】
上記構成を備えることにより、チェック弁30が閉じてバイパス路Mが遮断されているとき、ピストンロッドRがシリンダS内に進入する緩衝器の圧縮
行程では、ピストン1で加圧された他方室Bの作動流体が、ピストン1の流路Lのみを通過して一方室Aに移動する。このとき、上記流路Lを通過する作動流体は、ピストン1に積層されるリーフバルブ10の外周部を撓ませて、一方室Aに移動できる。このため、
図6に示すように、バイパ
ス路Mが遮断されていても圧縮
行程での減衰力が過大となることはない。
【0051】
また、緩衝器の圧縮
行程では、加圧された他方室Bの作動流体が背圧流路n2を通過して背圧室n1に流入することから、開閉弁2が押し上げられて連通孔60を閉じ、バイパス室m1が加圧される。このとき、サブピストン4に積層されるリーフバルブ40が開弁しないため、バイパス室m1の作動流体が上記リーフバルブ40の切欠き40a(オリフィス)や、ブッシュ8とニードル80の尖端部との隙間(可変絞りV4が開いている場合のみ)を通過して一方室Aに流出する。
【0052】
そして、上記開閉弁2の移動量は、上記背圧室n1に流入する作動流体の流量に依存し、背圧室n1に流入する作動流体の流量が増えるほど開閉弁2が一方室側(
図2中上側)に移動する。また、背圧室n1に流入する作動流体の流量は、圧縮
行程での緩衝器のストローク(以下、圧側ストロークという。)の大きさに依存し、この圧側ストロークが大きくなるほど背圧室n1に流入する作動流体の流量が増える。
【0053】
このため、緩衝器に大きな圧縮入力があり、圧側ストロークが大きくなる場合には、
図3に示すように、開閉弁2が連通孔60閉じながらこの連通孔60を大きく超えて一方室側に移動するが、圧側ストロークが小さくなると、これに伴い開閉弁2の移動量も小さくなる(
図4)。
【0054】
次に、緩衝器が上記圧縮
行程から、ピストンロッドRがシリンダSから退出する伸長
行程に移行すると、ピストン1で加圧された一方室Aの作動流体が、サブピストン通孔4aや、ブッシュ8とニードル80の先端部との隙間(可変絞りV4が開いている場合のみ)を通過してバイパス室m1に流入する。このため、バイパス室m1に流入した作動流体で開閉弁2が押し下げられて背圧室n1が加圧され、背圧室n1の作動流体が背圧流路n2を通過して他方室Bに流出する。
【0055】
また、開閉弁2が押し下げられて連通孔60を開くまでの間、加圧された一方室Aの作動流体は、ピストン1の流路Lのみを通過して他方室Bに移動するが、このとき、ピストン1のリーフバルブ10が開弁しない。したがって、一方室Aの作動流体は、リーフバルブ10の切欠き10a(オリフィス)のみを通過して他方室Bに移動する。このため、
図6中f1で示すように、圧縮
行程から伸長
行程に移行した直後の減衰力が急速に大きくなる。
【0056】
また、開閉弁2の
図2中上端が内筒6の第二胴部6cに達して開閉弁2が連通孔60を開くと、バイパス室m1の作動流体は、筒状通路70に流出し、附勢ばね31の附勢力に抗して弁頭30を押し下げてチェック弁3を開き、他方室Bに移動する。
【0057】
つまり、開閉弁2が連通孔60を開くことにより、チェック弁3が開いてバイパス路M(
図1)が連通することから、加圧された一方室Aの作動流体が流路L及びバイパス路Mを通過して他方室Bに移動することができるようになる。このとき、上記バイパス路Mを通過する作動流体は、サブピストン4に積層されるリーフバルブ40の外周部を撓ませてバイパス室m1内に移動できる。このため、
図6中f2で示すように、圧縮
行程から伸長
行程に移行した直後で急速に大きくなった減衰力(f1)が急速に小さくなる。
【0058】
そして、以下、f1とf2からなる曲線の頂点を、開閉弁特性のピークP1とすると、この開閉弁特性のピークP1の値は、上記開閉弁2が連通孔60を開くまでの時間が長くなるほど大きくなる。また、
図3,4に示すように、直前の圧縮
行程での開閉弁2の移動量が大きい、即ち、直前の圧側ストロークが大きいほど、開閉弁2が連通孔60を開くまでに進まなければならない距離Xが長くなることから、開閉弁2が連通孔60を開くまでの時間が長くなる。
【0059】
つまり、開閉弁特性のピークP1の値は、直前の圧側ストロークの大きさに依存し、
図7中二点鎖線p1で示すように、直前の圧側ストロークが大きくなるほどピークP1の値が大きくなる。また、この伸長
行程におけるチェック弁3が開弁した後の減衰力のピークP2(
図6)の値は、
図7中二点鎖線p2で示すように、直前の圧側ストロークの大きさによらず一定であり、小さく抑えられている。
【0060】
もどって、開閉弁2が連通孔60を開くとともに、チェック弁3が開弁している上記伸長
行程から、さらに緩衝器が圧縮
行程に移行した場合、ピストン1で他方室Bが加圧されるが、チェック弁3が附勢ばね31の附勢力で閉弁するまでの間、バイパス室m1の内圧が他方室Bの内圧と等しくなる。このため、開閉弁2が連通孔60を開いた状態に維持されて、圧縮
行程においても一時的にバイパス路M(
図1)が連通された状態となる。これにより、
図6中f3で示すように、圧縮
行程の初期の減衰力が一時的に低くなる。
【0061】
また、緩衝器のストロークが小さく、緩衝器が短い周期で伸長
行程と圧縮
行程を繰り返すような場合には、
図5に示すように、中立位置近傍で開閉弁2が上下動し、開閉弁2が連通
孔60を閉じる時間が短くなる。さらに、チェック弁3が閉じ遅れて略開いた状態に維持されるため、伸長
行程、圧縮
行程を問わずバイパス路Mが略連通された状態に維持される。したがって、
図7に示すように、伸長
行程のみならず圧縮
行程の減衰力も高周波側では小さくなる。
【0062】
尚、上記開閉弁特性のピークP1を出すための圧縮入力の大きさや、緩衝器の圧側ストロークの大きさ、開閉弁2を中立位置近傍で上下動させたり、チェック弁3を略開いた状態に維持したりするためのストロークの大きさや、伸長
行程と圧縮
行程を繰り返す周期や、周波数等は、絶対値としての制限があるわけではなく、緩衝器の仕様に応じて任意に設定することが可能である。
【0063】
もどって、本実施の形態に係る緩衝器は、
図2に示すように、上記先端部材9の外周に保持されるオイルロックピース90と、上記シリンダSの車輪側端部内側に起立する図示しないオイルロックケースとを備えており、緩衝器の最圧縮時にオイルロックピース90がオイルロックケース内に嵌入してオイルロックすることができる。これにより、緩衝器の最圧縮時の衝撃を吸収することができる。
【0064】
また、オイルロックピース90がオイルロックケース内に嵌入したとき、背圧流路n
2がオイルロックケース内と連通し、このオイルロックケース内は他方室Bよりも高圧となるため、背圧室n1内に作動流体をより多く流入させることが可能となり、直後の伸長
行程で大きな減衰力を発生させることができる。
【0065】
さらに、本実施の形態に係る緩衝器は、上記サブピストン4の反ピストン側に、ピストンロッドR外周に保持されて外周側に張り出すリバウンドサポートr5を備えている。また、図示しないが、上記シリンダSの車体側端部開口に取り付けられて上記ピストンロッドRを移動可能に軸支する環状のロッドガイドにはリバウンドクッションが取り付けられている。このため、緩衝器の最伸張時にリバウンドクッションがリバウンドサポートr5に当接して弾性変形し、緩衝器の最伸張時の衝撃を吸収することができる。
【0066】
次に、本実施の形態の緩衝器における作用効果について説明する。上本実施の形態の緩衝器は、作動流体が収容される一方室A及び他方室Bと、一方室Aと他方室Bとを区画するピストン(バルブディスク)1と、一方室Aと他方室Bとを連通する流路Lと、この流路Lを通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段V1と、この減衰力発生手段V1を迂回して一方室Aと他方室Bとを連通するバイパス路Mとを備えている。
【0067】
そして、このバイパス路Mには、このバイパス路Mを連通したり遮断したりする開閉弁2と、一方室Aから他方室Bへの作動流体の移動を許容するチェック弁3とが設けられており、緩衝器が圧縮
行程から伸長
行程に移行すると、開閉弁2は、直前の上記圧縮
行程のストローク(圧側ストローク)の大きさに依存した時間、上記バイパス路Mを遮断する。
【0068】
そして、本実施の形態の緩衝器が搭載される車両が連続悪路を走行し、隆起を乗り上げて着地するなど、緩衝器に大きな圧縮入力があった場合には、緩衝器の圧側ストロークが大きくなる。このため、直後の伸長
行程で、開閉弁2がバイパス路Mを遮断している時間が長くなる。
【0069】
そして、開閉弁2がバイパス路Mを閉じている間は、作動流体が流路Lのみを通過して一方室Aから他方室Bに移動するため、緩衝器が一時的に大きな減衰力を発生する。このため、この大きな減衰力で、大きな圧縮入力があった後に発生する大きな伸びエネルギーを受け止め、車両が跳ね上げられることを抑制することができる。
【0070】
また、開閉弁2がバイパス路Mを開くと、作動流体が流路L及びバイパス路Mの両方を通過して一方室Aから他方室Mに移動できるため、伸長
行程において、大きな減衰力を発生し
た後の減衰力を速やかに小さくして車輪の接地性を向上させることが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態において、緩衝器は、中空に形成されて内周面に上記開閉弁2が摺接するハウジングHと、このハウジングH内に形成されて上記開閉弁2で区画されるバイパス室m1及び背圧室n1と、この背圧室n1と他方室Bとを連通する背圧流路n2とを備えている。
【0072】
そして、バイパス路Mは、上記バイパス室m1と、このバイパス室m1と一方室Aとを連通する第一通路m2と、上記バイパス室m1と他方室Bとを連通する第二通路m3とを備えて構成されている。
【0073】
さらに、上記開閉弁2は、上記バイパス室m1の第二通路側開口となるハウジングHの連通孔60を開閉し、この連通孔60を閉じながらハウジングH内を一方室側に移動することができる。
【0074】
このため、緩衝器の圧縮
行程において、背圧
流路n2を通過して他方室Bから背圧室n1に流入する作動流体の流量に応じて開閉弁2を一方室側に移動させることが可能となる。そして、背圧室n1に流入する作動流体の流量は直前の圧側ストロークの大きさに依存するとともに、開閉弁2の移動量が大きいほど連通孔60を開くまでの時間が長くなる。したがって、緩衝器が伸長
行程に移行したとき、開閉弁2がバイパス路Mを遮断している時間を、直前の圧縮
行程のストローク(圧側ストローク)の大きさに依存させることが容易に可能となる。
【0075】
また、本実施の形態において、背圧流路n
2には、この背圧流路n
2を通過する作動流体の流量を規制する流量規制手段たる絞りV3が設けられている。このため、流量規制手段の設定により、開閉弁2の他方室側への移動速度を調整することが可能となり、開閉弁2がバイパス路Mを遮断している時間を任意に設定することが可能となる。
【0076】
また、本実施の形態において、チェック弁3が第二通路m3に設けられ、この第二通路m3を開閉する弁頭30と、この弁頭30を閉方向に附勢する附勢ばね31とを備えている。
【0077】
このため、緩衝器が搭載される車両が舗装された道路を走行するなど、高周波振動が入力されて、緩衝器のストロークが小さく、緩衝器が圧縮
行程と伸長
行程を短い周期で繰り返す場合、チェック弁3の慣性力による閉じ遅れを利用して、バイパス路Mを略連通した状態に維持することが可能となる。したがって、圧縮
行程及び伸長
行程での緩衝器の減衰力を小さく抑え、車両の乗り心地を良好にすることができる。
【0078】
また、本実施の形態において、開閉弁2が中立位置よりも他方室側にハウジングH内を移動したとき、開閉弁2を中立位置に戻すよう附勢するばね20を備えている。このため、伸長
行程で開閉弁2が他方室側に移動し過ぎることを抑制し、連通孔60が開いている緩衝器の伸長
行程から圧縮
行程に移行したとき、開閉弁2を速やかに中立位置に戻すことが可能となる。また、開閉弁2の中立位置を変更したい場合には、ばね20を変更すれば良く、開閉弁2の中立位置の設定や変更が容易である。
【0079】
また、本実施の形態において、第一通路m2には、この第一通路m2を通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段V2が設けられるとともに、上記バイパス路Mは、この減衰力発生手段V2を迂回して一方室Aとバイパス室m1とを連通する第一通路迂回路m4を備えている。そして、この第一通路迂回路m4には、この第一通路迂回路m4を通過する作動流体の流量を変更する可変絞りV4が設けられている。
【0080】
このため、上記可変絞りV4で第一通路迂回路m4を通過する作動流体の流量を変化させることで、ハウジングH内を移動する開閉弁2の挙動を任意に変化させることができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0082】
例えば、上記実施の形態において、緩衝器は、正立型に設定されているが倒立型に設定されていてもよい。尚、この場合には、弁頭30が自重でピストン側に移動し、座面7cに着座できるため、チェック弁3が附勢ばね31を備えていなくてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態において、本発明が緩衝器のピストン部に具現化されているが、緩衝器がシリンダS内に出没するピストンロッド体積分のシリンダ内容積変化を補償するリザーバと、このリザーバに貯留される作動流体からなる液溜室と、この液溜室と上記他方室Bとを区画するベース部材を備える場合、本発明が上記ベース部材部分に具現化されていてもよい。尚、この場合、請求項におけるバルブディスクが上記ベース部材、請求項における一方室が上記液溜室、請求項における他方室が上記他方室Bとなる。
【0084】
また、開閉弁2が直前の圧縮
行程のストローク(圧側ストローク)の大きさに依存した時間、バイパス路Mを遮断するための構成は、上記の限りではなく、他の構成を採用するとしてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態において、チェック弁3が第二通路m3に設けられ、開閉弁2よりも他方室側に配置されているが、開閉弁2よりも一方室側に配置されていてもよい。また、チェック弁3の構成も上記の限りではなく、環板状のリーフバルブからなる等、適宜構成を採用することが可能である。
【0086】
また、上記実施の形態において、開閉弁2が中立位置よりも他方室側に移動したとき、開閉弁2を中立位置に戻すよう附勢するばね20を備えているが、ばね20以外の構成で、開閉弁2の他方室側への移動を規制するとしてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態において、第一通路迂回路m4に設けられる可変絞りV4で、バイパス室m1と一方室Aとの間を移動する作動流体の流量を変更し、開閉弁2の挙動を変化させることができるが、緩衝器が第一通路迂回路m4や、可変絞りV4を備えていなくてもよい。
【0088】
また、上記可変絞りV4を構成するコントロールロッド81を開閉弁2の一方室側への移動を規制するために利用し、開閉弁2の一方室側への移動量を可変にするとしてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態において、背圧流路n2に設けられる絞りV3を可変絞りとしてもよい。また、緩衝器が上記背圧流路n2に替えて、背圧室n1から他方室Bにのみ作動流体が移動可能な流路と、他方室Bから背圧室n1にのみ作動流体が移動可能な流路とを備え、各流路に可変絞りを設けて、各流路を通過する作動流体の流量を独立して調整するとしてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態において、開閉弁2を中立位置に戻すばね20を背圧室n2にのみ設けているが、開閉弁2の
図2中上側及び下側にばね20を設けてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態において、チェック弁3は、附勢ばね31を備え、この附勢ばね31で閉方向に附勢されているが、開方向に附勢する附勢ばねを備えていてもよい。
【0092】
また、上記開閉弁2にバイパス室m1と背圧室n1とを連通する流路を形成し、この流路で開閉弁2の挙動を調整するとしてもよい。