特許第5918596号(P5918596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉川アールエフセミコンの特許一覧

<>
  • 特許5918596-電力調整回路 図000002
  • 特許5918596-電力調整回路 図000003
  • 特許5918596-電力調整回路 図000004
  • 特許5918596-電力調整回路 図000005
  • 特許5918596-電力調整回路 図000006
  • 特許5918596-電力調整回路 図000007
  • 特許5918596-電力調整回路 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918596
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】電力調整回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/455 20060101AFI20160428BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   H02M 5/293 20060101ALI20160428BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   G05F1/455 Z
   H02J3/00
   H02M5/293 Z
   H03K17/687 G
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-84874(P2012-84874)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-214240(P2013-214240A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】598005878
【氏名又は名称】株式会社吉川アールエフセミコン
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石井 英一
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−239253(JP,A)
【文献】 特開平6−222846(JP,A)
【文献】 特開平6−95749(JP,A)
【文献】 特開平9−219987(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/455
H02J 3/00
H02M 5/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のAC電源ラインと第2のAC電源ラインのから負荷に供給する電力を調整する電力調整回路において、
前記第1のAC電源ラインと前記負荷との間に、前記第1のAC電源ラインを基準電位として駆動信号がゲートに印加される第1の出力トランジスタを配設し、前記負荷の他端と前記第2のAC電源ラインとの間に、前記第2のAC電源ラインを基準電位として駆動信号がゲートに印加される第2の出力トランジスタを配設してなる第1の直列回路と、
前記第1のAC電源ラインにアノードを接続し、カソードを第1の抵抗に接続した第1のチェナーダイオードと、前記第1の抵抗の他端にカソードを接続し、アノードを前記第2のACラインに接続して構成され、前記第1の直列回路と並列に接続された第2の直列回路と、
前記第1の出力トランジスタのゲートは、前記第1のチェナーダイオードのカソードと前記第1の抵抗との接続点に接続され、前記第2の出力トランジスタのゲートは、前記第2のチェナーダイオードのカソードと前記第1の抵抗との接続点に接続され、前記第1の出力トランジスタのゲートと、前記第1のチェナーダイオードのカソードと、前記第1の抵抗の共通接続点と、前記第1のAC電源ラインとの間に接続される第3のトランジスタと、
前記第2の出力トランジスタのゲートと、前記第2のチェナーダイオードのカソードと、前記第1の抵抗の共通接続点と、前記第2のAC電源ラインとの間に接続される第4のトランジスタとを有し、
前記負荷に電流を流すかどうかを決定する前記第1のトランジスタ及び第2のトランジスタのオン/オフを前記第3のトランジスタ及び第4のトランジスタのゲートに供給する信号で制御するようにしたことを特徴とする電力調整回路。
【請求項2】
前記第1の出力トランジスタ及び第2の出力トランジスタはMOSトランジスタで構成され、それぞれのドレイン‐ソース間にボディダイオードを有し、
前記第1のAC電源ラインが第2のAC電源ラインに対し正電圧の場合は、第1の出力トランジスタがOFFしていても、第1の出力トランジスタのボディダイオードを介して電流が流れる状態にあり、前記負荷に電流を流すかどうかは前記第2の出力トランジスタのON/OFF状態による決まり、
前記第2のAC電源ラインが第1のAC電源ラインに対し正電圧の場合は、第2の出力トランジスタがOFFしていても、第2の出力トランジスタのボディダイオードを介して電流が流れる状態にあり、前記負荷に電流を流すかどうかは前記第1の出力トランジスタのON/OFF状態による決まることを特徴とする請求項1に記載の電力調整回路。
【請求項3】
前記第1の出力トランジスタ及び第2の出力トランジスタはバイポーラトランジスタあるいはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成され、それぞれのエミッタ‐コレクタ間に並列に接続されたダイオードを有し、
前記第1のAC電源ラインが第2のAC電源ラインに対し正電圧の場合は、第1の出力トランジスタがOFFしていても、第1の出力トランジスタに並列に接続されたダイオードを介して電流が流れる状態にあり、前記負荷に電流を流すかどうかは前記第2の出力トランジスタのON/OFF状態による決まり、
前記第2のAC電源ラインが第1のAC電源ラインに対し正電圧の場合は、第2の出力トランジスタがOFFしていても、第2の出力トランジスタに並列に接続されたダイオードを介して電流が流れる状態にあり、前記負荷に電流を流すかどうかは前記第1の出力トランジスタのON/OFF状態による決まることを特徴とする請求項1に記載の電力調整回路。
【請求項4】
前記第1の出力トランジスタ及び第2の出力トランジスタのオン/オフを制御する制御信号が入力される第1のインバータゲート、及び前記第1のインバータゲートの出力が入力される第2のインバータゲートと、
前記第1のAC電源ラインと前記第2のAC電源ラインから電力供給を受けて、前記第2のAC電源ラインを基準に直流電圧を直流電源端子から出力し、前記第1及び第2のインバータゲートに動作電圧を供給する直流電源と、
前記第2のインバータゲートの出力がベースに入力される第5のPNPトランジスタとを有し、
前記第5のPNPトランジスタのエミッタに接続された第2の抵抗を介して前記直流電源端子に接続され、第5のPNPトランジスタのコレクタは第3のダイオードのアノードに接続され、第3のダイオードのカソードは、前記第3のトランジスタのゲートと第3の抵抗と第4のダイオードのカソードに接続され、前記第3の抵抗の他端は前記第1のAC電源ラインに接続され、
前記第3のダイオードD3のカソードと、前記第3の抵抗R3の接続点より前記制御信号の第1のレベル変換出力を得、前記第1のインバータゲートG1の出力より、前記制御信号の第2のレベル変換出力を得るレベル変換回路を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電力調整回路。
【請求項5】
請求項4に記載の第5のPNPトランジスタをPchMOSトランジスタに置き換えたことを特徴とする電力調整回路。
【請求項6】
第1のAC電源ラインと第2のAC電源ラインのから負荷に供給する電力を調整する電力調整回路において、
電源回路は、前記第1のAC電源ラインと前記第2のAC電源ラインから電力供給を受けて、前記第2のAC電源ラインを基準に直流電圧を第1の直流電源端子から出力すると共に前記第1のAC電源ラインを基準に直流電圧を第2の直流電源端子から出力し、
第1〜第4のインバータゲートG1、G2、G3,G4を備えており、
制御信号が前記第1のインバータゲートG1の入力に接続され、前記第1のインバータゲートG1の出力は前記第2のインバータゲートG2の入力に接続され、前記電源回路の第1の直流電源端子から前記第1、第2、第4のインバータゲートG1,G2、G4に動作電圧を供給しており、
前記電源回路の第2の直流電源端子から前記第3のインバータゲートG3に動作電圧を供給しており、前記第2のインバータゲートG2の出力は、第5のPNPトランジスタのベースに接続され、前記第5のPNPトランジスタのエミッタは第2の抵抗R2を介して前記、電源回路の第1の直流電源端子に接続され、
前記第5のPNPトランジスタのコレクタは第3のダイオードD3のアノードに接続され、前記第3のダイオードD3のカソードは、第3の抵抗R3に接続され、
前記第3の抵抗R3の他端は、前記第1のAC電源ラインに接続され、
前記第3のダイオードD3のカソードと、前記第3の抵抗R3の接続点より、前記制御信号の第1のレベル変換出力を得、
前記第1のインバータゲートG1の出力より、前記制御信号の第2のレベル変換出力を得、
第1と第2の出力トランジスタを備えており、
前記第1の出力トランジスタのソースは前記第1のAC電源ラインに接続され、
前記第2の出力トランジスタのソースは前記第2のAC電源ラインに接続され、
前記第1と第2の出力トランジスタのドレイン間に負荷が接続され、
前記制御信号の第1のレベル変換出力が前記第3のインバータゲートG3の入力に印加され、
前記制御信号の第2のレベル変換出力が前記第4のインバータゲートG4の入力に印加され、
前記第3のインバータゲートG3の出力が前記第1の出力トランジスタのゲートを駆動しており、
前記第4のインバータゲートG4の出力が、前記第2のトランジスタのゲートを駆動していることを特徴とする電力調整回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力調整回路に関し、特に、AC電源から交流負荷に供給する電力制御を行うために用いて好適な回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トライアックを利用した電力調整回路があった。
従来の位相制御装置では、交流負荷への供給電力をオンオフするスイッチ手段として、トライアック等の半導体素子を用い、このスイッチ手段で負荷電流の導通角をスイッチング制御することによって位相制御を実現している。
【0003】
このような位相制御の場合、動作時において、スイッチ手段がオンしたときに急峻な電流が流れるため、スイッチング雑音が大きいという問題点があった。この点を改善したものとして、スイッチ手段にFET等の半導体スイッチ素子を用いて、電圧ゼロボルト(ゼロクロス)でスイッチ手段をオンし、電流がゼロから流れるようにした逆位相制御を行い、スイッチング雑音を軽減できるようにしたものが開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、電力をON−OFFするためのSW素子を2個逆極性にシリーズ接続して、交流電源のSW動作に対応している。そして、上記SW素子の共通電位点を制御回路の基準電位とし、Fig2に示される原理図に於いて、制御系の電源を、入力のAC電源から直流電圧を供給していた。しかし、特許文献1においては、制御系の電源に絶縁された電源を使っていないため、電力の調整範囲の電力を小さく制御する動作で、完全にOFFさせることが出来ない問題があった。
【0005】
この点が、負荷RLの内容により微小な駆動が残ることが問題になる場合は、入力のAC電源から絶縁された電源から動作電源を供給する必要があるので、絶縁型の電源が別に必要となる問題があった。例えば、調光の用途に使用した場合は、負荷が白熱電球であれば、多少の電力が印加されても発光せず問題はなかったが、LEDの様に微小電流でも点灯してしまう負荷では、完全に消灯しない問題があった。
【0006】
また、特許文献2においては、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能な位相制御装置が開示されている。特許文献2に記載の発明においても負荷RLに対し駆動電力を絞り切ったときに微小な駆動が残ることが問題になる場合は、制御回路にはAC電源から絶縁された電源(制御電源)から供給しないといけない問題があった。
【0007】
図6に、トライアックを用いた電力調整回路の原理図を示し、図7に動作説明をする波形図を示す。
図6に示すトライアック起動回路においては、電源プラグに接続された2本の電源ラインL、N間に、トライアックTと負荷RLが直列に接続されており、トライアックTのT2端子にタイミング抵抗(RT、RT2)の一端が接続されている。
【0008】
タイミング抵抗(RT、RT2)の他端は、タイミング容量CT、及び双方向性トリガダイオードSに接続されている。また、タイミング容量CTの他端は、トライアックTのT1端子に接続されている。さらに、双方向性トリガダイオードSの他端は、トライアックTのゲート端子に接続されている。
【0009】
図7に示される様に、負荷RLに交流電源の正負が反転してから各半サイクルの前の方から、部分的に負荷に電圧を印加しない様にし、かつ印加しない範囲を調整して、負荷RLに供給する電力を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭60−101620号公報
【特許文献2】特開2008−181790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図6に示した電力調整回路は、簡単な回路で電力を調整出来るので広く用いられている。しかしながら、交流電源の正負が反転してから遅れて負荷に電圧印加されるため、各半サイクル毎の電圧印加時点で突入電流が流れる問題点があった。
【0012】
例えば、図7(a)に示すように、負荷RLへの供給電力が大きくするため、タイミング抵抗RT2を小さくした場合でも、電源電圧の正負が反転した最初から双方向性トリガダイオードのトリガ電圧までは負荷への電圧印加が欠けてしまう問題点があった。
また、図7(b)に示すように、タイミング抵抗RT2が中くらいの場合には、電源電圧が高いところで負荷RLに電圧が印加されるため、突入電流が大きくなってしまう問題点があった。
また、図7(c)に示すように、タイミング抵抗RT2が大きい場合には、負荷RLへの印加電力が小さく制御出来ていた。
【0013】
特に、図7(b)の場合には容量性の負荷とか、供給された電圧をダイオードで整流して、コンデンサに印加して直流化する様な負荷の場合には、大きな起動電流が流れて供給電源の電圧変動や、放射ノイズ、部品からの音鳴が起きる問題があった。
【0014】
又、最大の電力を供給する場合も、図7(b)に示した様に電源電圧がトリガダイオードの閾値に達するまではトライアックが起動せず、負荷に電力を供給しないので、各半サイクル毎の最初に駆動が途切れたり起動電流が流れたりする問題があった。
本発明は前述の問題点に鑑み、制御系の電源をAC電源と絶縁型にしなくても、完全に負荷への電力を切ることが出来るようにすることを目的とする。
また、完全に負荷への電力を切ることが可能な電力調整回路を安価に達成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電力調整回路は、第1のAC電源ラインと第2のAC電源ラインから負荷に供給する電力を調整する電力調整回路において、前記第1のAC電源ラインと前記負荷との間に、前記第1のAC電源ラインを基準電位として駆動信号が印加される第1の出力トランジスタを配設し、前記負荷の他端と前記第2のAC電源ラインとの間に、前記第2のAC電源ラインを基準電位として駆動信号が印加される第2の出力トランジスタを配設してなる第1の直列回路とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各半サイクル毎の最初に駆動が途切れたり、起動電流が流れたりする問題点を解消することができる。また、ON時のロスをトライアックより小さくすることができる。さらに、絶縁型の電源を用いることなく電力調整回路を構成しても負荷への電力供給を完全にOFFすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による電力調整回路の例を示す図である。
図2図1に示した本発明による電力調整回路の例で電源Eの例を示した図である。
図3図1に示した本発明による電力調整回路の例で第5のPNPトランジスタQ5の耐圧が不足した場合に第6のPNPトランジスタQ6とカスケード接続して対応する例を示す図である。
図4】本発明による又別の電力調整回路の例を示す図である。
図5】本発明による又別の電力調整回路の例を示す図である。
図6】トライアックを使った電力調整回路の例を示す図である。
図7図6に示した電力調整回路の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1においては、第1のAC電源ラインLと、第2のAC電源ラインNの間からAC電源が供給されており、電源回路E1は、第1のAC電源ラインLと、第2のAC電源ラインNから電力供給を受けて、第2のAC電源ラインNを基準に直流電圧を直流電源端子VDC1から出力している。すなわち、電源回路E1はAC電源ラインと絶縁されていない。
【0020】
ゼロクロス検出回路ZXと、コントローラCONTと、第1のインバータゲートG1、第2のインバータゲートG2を備えており、ゼロクロス検出回路ZXinの入力には第1のAC電源ラインLが接続され、ゼロクロス検出回路ZXの出力outはコントローラCONTに接続されている。
【0021】
コントローラCONTは、ゼロクロス検出回路ZXからのゼロクロス検出信号を受けて所定のパルス巾のパルス信号を出力する。コントローラCONTは、出力するパルス信号のパルス巾を調整する手段を備えており、図1の例では可変タイミング抵抗RTが接続されている。
【0022】
コントローラCONTの出力は、第1のインバータゲートG1の入力に接続され、第1のインバータゲートG1の出力は第2のインバータゲートG2の入力に接続されている。
電源回路E1の直流電源端子VDC1から、ゼロクロス検出回路ZXと、コントローラCONTと、第1、第2のインバータゲートG1、G2に動作電圧を供給している。
【0023】
出力段OUTは、第1と第2の出力トランジスタQ1、Q2を備えており、第1の出力トランジスタQ1のソースは第1のAC電源ラインLに接続され、第2の出力トランジスタQ2のソースは第2のAC電源ラインNに接続され、第1と第2の出力トランジスタQ1、Q2のドレイン間に負荷RLが接続されている。
【0024】
第1の出力トランジスタQ1と負荷RLと第2の出力トランジスタQ2の直列回路と並列に、第1のチェナーダイオードD1、第2のチェナーダイオードD2、と第1の抵抗R1の直列回路が接続されている。
第1のチェナーダイオードD1のアノードは第1のAC電源ラインLに接続され、第2のチェナーダイオードD2のアノードは第2のAC電源ラインNに接続されている。また、第1のチェナーダイオードD1のカソードは第1の出力トランジスタQ1のゲートと第1の抵抗R1に接続され、第2のチェナーダイオードD2のカソードは第2の出力トランジスタQ2のゲートと第1の抵抗R1の他端に接続されている。
【0025】
第1のチェナーダイオードD1と並列に第3のトランジスタQ3が接続され、第2のチェナーダイオードD2と並列に第4のトランジスタQ4が接続されている。第3のトランジスタQ3のソースは第1のAC電源ラインLに接続され、第3のトランジスタQ3のドレインは第1の出力トランジスタQ1のゲートと第1のチェナーダイオードD1のカソードと第1の抵抗R1の接続点に接続されている。
【0026】
第4のトランジスタQ4のソースは第2のAC電源ラインNに接続され、第4のトランジスタQ4のドレインは第2の出力トランジスタQ2のゲートと第2のチェナーダイオードD2のカソードと第1の抵抗R1の接続点に接続されている。
第1のインバータゲートG1の出力は第4のトランジスタQ4のゲートに接続され、第2のインバータゲートG2の出力は第5のPNPトランジスタQ5のベースに接続されている。
【0027】
第5のPNPトランジスタQ5のエミッタは第2の抵抗R2を介して電源回路E1の直流電源端子VDC1に接続され、第5のPNPトランジスタQ5のコレクタは第3のダイオードD3のアノードに接続されている。
第3のダイオードD3のカソードは、第3のトランジスタQ3のゲートと第3の抵抗R3と第4のダイオードD4のカソードに接続され、第3の抵抗R3の他端と第4のダイオードD4のアノードは第1のAC電源ラインLに接続されている。
【0028】
図1の例では、第1、第2の出力トランジスタQ1、Q2はNchエンハンスメント型MOSトランジスタで構成されておりボディダイオードBDをそれぞれ内蔵している、第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合は、第1の出力トランジスタQ1がOFFしていても、第1の出力トランジスタQ1のボディダイオードBDを介して電流が流れる状態にあり、負荷RLに電流を流すかどうかは第2の出力トランジスタQ2のON/OFF状態により決まる。
【0029】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し負電圧の場合は、第2の出力トランジスタQ2がOFFしていても、第2の出力トランジスタQ2のボディダイオードBDを介して電流が流れる状態にあり、負荷RLに電流を流すかどうかは第1の出力トランジスタQ1のON/OFFにより決まる。
【0030】
第1のチェナーダイオードD1と、第1の抵抗R1と、第2のチェナーダイオードD2の直列回路は、第1のAC電源ラインLと第2のAC電源ラインNの間に接続されていて、AC電源が供給されている。したがって、第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合は、第1のチェナーダイオードD1には順方向に電流が流れるので電圧降下は小さく、この電圧がゲートに印加される第1の出力トランジスタQ1はOFFしている。第3のトランジスタQ3がONして、第1のチェナーダイオードD1に流れる電流を第3のトランジスタQ3を介して第1のAC電源ラインLに流しても同じである。但し、前記に説明した様に、第1の出力トランジスタQ1のボディダイオードBDのために、負荷RLに電流は流せる状態にある。
【0031】
第4のトランジスタQ4がOFFであれば、第2のチェナーダイオードD2には逆方向に電流が流れるので、第2のチェナーダイオードD2にはチェナー電圧が発生する。このチェナー電圧は、第2の出力トランジスタQ2をONさせるレベルになる様選定されている。第2のチェナーダイオードD2のチェナー電圧が第2の出力トランジスタQ2のゲートに印加されるので、第2の出力トランジスタQ2がONし、負荷RLに電流が流れる。
【0032】
一方、第4のトランジスタQ4がONであれば、第2の出力トランジスタQ2のゲートの電位は、第2のAC電源ラインNの電圧になるので、第2の出力トランジスタQ2はOFFして負荷RLには電流が流れない。
【0033】
第1のAC電源ラインLが、第2のAC電源ラインNに対し負電圧の場合の動作説明は、出力段OUTは上下対称の回路であるので、前述した説明と対称な動作になるので省略する。
【0034】
以上、説明した様に、第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合は、負荷RLに電流を流す/流さない制御をするためには、第4のトランジスタQ4のOFF/ONの制御をすればよい。
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し負電圧の場合は、負荷RLに電流を流す/流さない制御のためには、第3のトランジスタQ3のOFF/ONの制御をすればよい。
【0035】
コントローラCONTの出力により、第3、第4のトランジスタQ3、Q4のON/OFFを制御するために、第1、第2のインバータゲートG1、G2と、第5のPNPトランジスタQ5と、第2の抵抗R2、第3の抵抗R3と、第3、第4のダイオードD3、D4によるレベルシフト回路を備えている。
【0036】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合で、コントローラCONTの出力がHiの場合には、第1のインバータゲートG1の出力はLoになり、第4のトランジスタQ4がOFFするので、第2の出力トランジスタQ2がONし、負荷RLに電流が流れる。
【0037】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合で、コントローラCONTの出力がLoの場合には、第1のインバータゲートG1の出力はHiになり第4のトランジスタQ4がONするので、第2の出力トランジスタQ2がOFFし、負荷RLには電流が流れない。
【0038】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合は、第2のインバータゲートG2の出力がHiの場合でもLoでも第3のダイオードD3が逆方向にバイアスにされるため、第3のダイオードD3にはわずかなリーク電流しか流れない。このため、第3の抵抗R3での電圧降下は少なくなる。第3の抵抗R3の両端の電圧が第3のトランジスタQ3のゲートに印加されているので、第3のトランジスタQ3はOFFしている。
【0039】
第4のダイオードD4は、第3のダイオードD3のリーク電流による第3の抵抗R3での電圧降下が、ダイオードの順方向電圧以下に保つためのものであり、印加されるAC電源にサージノイズが重畳した時に、第3のトランジスタQ3のゲート・ソース間の電圧を保護する動作もしている。第5のPNPトランジスタQ5にとっては、第3のダイオードD3のリーク電流は、コレクタ・ベース接合に対し順方向なので保護ダイオードは不要である。
【0040】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し負電圧の場合で、コントローラCOTに出力がHiの場合は、第1のインバータゲートG1を介して駆動される第2のインバータゲートG2の出力もHiになり、第5のPNPトランジスタQ5はOFFとなる。これにより、第2の抵抗R2、第5のPNPトランジスタQ5、第3のダイオードD3、第3の抵抗R3、第4のダイオードD4には電流が流れない。このため、第3の抵抗R3の両端には電圧降下が発生しないので、第3のトランジスタQ3はOFFとなる。
よって、第1のチェナーダイオードD1に電流が流れてチェナー電圧が発生し、第1の出力トランジスタQ1はONし、負荷RLに電流が流れる。
【0041】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し負電圧の場合で、コントローラCOTに出力がLoの場合は、第1のインバータゲートG1を介して駆動される第2のインバータゲートG2の出力もLoになり、第5のPNPトランジスタQ5はONし、第2の抵抗R2を介して直流電源端子VDC1より電流が流れる。
【0042】
この場合、第3のダイオードD3は順方向にバイアスされるため電流が流れ、第3の抵抗R3に電流が流れる。第4のダイオードD4は、逆バイアスされるので電流が流れない。
第3の抵抗R3に発生する電圧降下のため、第3のトランジスタQ3はONするので、第1のチェナーダイオードD1に電流が流れなくなり、第1の出力トランジスタQ1はOFFし、負負荷RLには電流が流れない。
以上、説明した様に、コントローラCONの出力がHiで負荷RLに電流が流れ、コントローラCONの出力がLoで負荷RLに電流が全く流れない制御が出来ている。
【0043】
ゼロクロス検出回路ZXでAC電源の極性反転するタイミングを検出している。ゼロクロス検出回路ZXの出力を受けてコントローラCONTがパルス信号を出力している。パルス信号の時間巾はタイミング抵抗RTで制御されている。
AC電源のゼロクロスタイミングで、スイッチ手段をオンし負荷RLにAC電源の印加を開始するので電流がゼロから流れている。
【0044】
また、パルス信号の時間巾を電源の半周期以上とすると、パルス信号が終了する前に次のパルス信号が開始するので、結局、コントローラCONTの出力は連続してHiとなり、負荷RLにはAC電源が常に印加される。したがって、図6に示したトライアックを使った従来例の様に、負荷RLに対するACの印加が途切れる問題が無くなる利点がある。
【0045】
パルス信号の時間巾を半周期より短くすると、負荷RLにはAC電源の極性反転するタイミングからパルス信号の時間巾だけAC電源が印加され、その後、AC電源が印加されない動作となる。すなわち、パルス巾によって負荷RLに印加する電力を調整する動作をする。
【0046】
ゼロクロス検出回路ZXの出力を受けても、コントローラCONTがパルス信号を出さない様にすると、負荷RLにAC電源を全く印加しない状態になる。これは、従来例で挙げた特許文献1または特許文献2に記載の技術では実現できなかった問題点を解決できる利点である。
【0047】
図1の例では、第1、第2の出力トランジスタQ1、Q2はNchエンハンスメント型MOSトランジスタで構成していたが、NchMOSトランジスタは耐圧が高いものはON抵抗が高くなる問題がある。そこで、電源電圧が高い場合はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用する。但し、IGBTでボディダイオードを内蔵していないものを使う場合はダイオードを並列に接続する。
【0048】
図2は、図1における電源回路E1を実現する回路例を示したものである。
図2に示したように、電源回路E1は第1のAC電源ラインLと第2のAC電源ラインNとの間に、第4の抵抗R4、第1のコンデンサC1、第7のダイオードD7よりなる直列回路を接続している。第7のダイオードD7のカソード側が第1のコンデンサC1に接続され、第7のダイオードD7のアノード側が第2のAC電源ラインN接続されている。
【0049】
また、第1のコンデンサC1と第7のダイオードD7のカソードとの接続点と直流電源端子VDC1との間を第6のダイオードD6により接続している。
第6のダイオードD6のアノード側が、第1のコンデンサC1と第7のダイオードD7のカソードの接続点に接続され、第6のダイオードD6のカソード側が直流電源端子VDC1に接続されている。
さらに、第6のダイオードD6のカソード側と第2のAC電源ラインNとの間を、第2のコンデンサC2、第8のチェナーダイオードD8の並列回路を介して接続して、第2のAC電源ラインNを基準に直流電圧を直流電源端子VDC1から出力している。
【0050】
図3は、図1における第5のPNPトランジスタQ5の耐圧が不足する場合に、第6のPNPトランジスタQ6とカスケード接続して耐圧不足を対策する回路である。
AC電源が220Vの定格であっても変動が大きく見込まれる場合があり、第5のPNPトランジスタQ5には余裕をみて700V程度の耐圧が要求されるがある。このような場合に、2段に分圧して要求される耐圧を下げて部品の入手性を上げるための回路である。AC電源が100Vの場合は採用する必要性は少ない。
【0051】
図4は、又別の本発明による電力調整回路を示す。
図4では、電源回路E2は、第1のAC電源ラインLと第2のAC電源ラインNから電力供給を受けて、第1のAC電源ラインLを基準に直流電圧を第2の直流電源端子VDC2から出力し、第2のAC電源ラインNを基準に直流電圧を第1の直流電源端子VDC1から出力している。
【0052】
直流電源端子VDC1からは、第6の抵抗R6を介して第2の出力トランジスタQ2のゲートと、第4のトランジスタQ4のドレインに接続される。
直流電源端子VDC2からは第5の抵抗R5を介して第1の出力トランジスタQ1のゲートと、第3のトランジスタQ3のドレインに接続される。また、図1における、第1の抵抗R1と、第1、第2のチェナーダイオードD1,D2が無くなっている。これ以外は、図1と同じ構成となっている。
【0053】
図4に示した例は、第1、第2の出力トランジスタQ1、Q2のボディダイオードBDに電流を流すことで発生する電圧降下を問題にしたり、発熱が問題になったりする用途に対応する回路例である。
図1の例では、第1の出力トランジスタQ1のボディダイオードBDに電流が流れる条件の時に、第1の出力トランジスタQ1をONさせて、第1の出力トランジスタQ1での電圧降下を小さくすることで対応している。
【0054】
同様に、図1の例では、第2の出力トランジスタQ2のボディダイオードBDに電流が流れる条件の時に、第2の出力トランジスタQ2をONさせて第2の出力トランジスタQ2での電圧降下を小さくすることで対応している。
【0055】
さらに説明すると、図4において、第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合は、第3のダイオードD3は逆方向にバイアスされるため、微小なリーク電流しか流れない。このため、第3の抵抗R3での電圧降下は小さくなるので、第3のトランジスタQ3はOFFとなるため、第1の出力トランジスタQ1のゲートには第2の直流電源端子VDC2の電圧が印加されるので、第1の出力トランジスタQ1はONとなる。コントローラCONTの出力のHi/Loに応じて、第2の出力トランジスタQ2はON/OFFが切り替わるので、負荷RLへの電力供給が制御される。
【0056】
このような動作を行わせるために、図3で説明した第2のAC電源ラインN側に設けた第7のダイオードD7と対称的に対応させて第10のダイオードD10、第6のダイードD6と対称的に対応させて第9のダイオードD9、第2のコンデンサC2と対称的に対応させて第3のコンデンサC3、第8のチェナーダイオードD8と対称的に対応させて第11のチェナーダイオードD11を設けている。
【0057】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し負電圧の場合は、コントローラCONTの出力のHi/Loに応じて、第3のトランジスタQ3はOFF/ONが切り替わるので、第1の出力トランジスタQ1のON/OFFが切り替わる。
【0058】
第1のAC電源ラインLが第2のAC電源ラインNに対し正電圧の場合と同様に、コントローラCONTの出力のHi/Loに応じて、第1、第2の出力トランジスタQ1、Q2のON/OFFが切り替わるので、負荷RLへの電力供給が制御される。コントローラCONTの出力のHi/Loに応じて、負荷RLへの電力供給が制御される。
【0059】
以上説明した様に、負荷RLに電力を供給するときには、第1及び第2の出力トランジスタQ1、Q2が共にONしており、第2の出力トランジスタQ1、Q2のボディダイオードBDには電流を流さないので、第2の出力トランジスタQ1、Q2で電圧降下を小さくでき、消費電力を減らして発熱を減らせる効果がある。これは、負荷RLに供給する電流が大きい時に有効な効果である。
【0060】
図1の例で、5Armsの正弦波の電流を負荷に供給する場合、ボディダイオードでの電圧降下は0.7V発生し、第1及び第2の出力トランジスタQ1、Q2のON抵抗が10mΩと小さいものを選んでも、一方の出力トランジスタで約1.7Wのロスが発生してしまうのを、図4の例では一方の出力トランジスタで約0.3Wのロスに低減できる。
【0061】
図5に、発明による電力調整回路の別の例を示す。
図5に示すように、この電力調整回路は、図4における第3のトランジスタQ3と第5の抵抗R5を第3のインバータゲートG3に置き換え、第4のトランジスタQ4と第6の抵抗R6を第4のインバータゲートG4に置き換えた構成である。その他の構成は図4の構成と同じ構成である。
【0062】
第3のインバータゲートG3は、第2の直流電源端子VDC2から動作電圧が供給されている。
第4のインバータゲートG4は第1の直流電源端子VDC1から動作電圧が供給されている。
【0063】
第3のトランジスタQ3と第5の抵抗R5を第3のインバータゲートG3に置き換え、第4のトランジスタQ4と第6の抵抗R6を第4のインバータゲートG4に置き換えたことで、第5、第6の抵抗R5、R6での電力消費を減らすことができる。
【0064】
前述した実施形態は、第1及び第2の出力トランジスタQ1、Q2として、ボディダイオードBDを有するMOSトランジスタを用いた例を示した。しかし、ボディダイオードBDを相当の構造を備えないIGBTの場合には、ダイオードを別に設けるようにする。なお、構造上IGBTには寄生のダイオードは無いが、別に専用にダイオードを作り込んだ製品も実用化されている。
【0065】
図4、5の例ではまた、前述したボディダイオードBDに電流を流さないので、対応するダイオード設けなくてもバイポーラトランジスタを第1及び第2の出力トランジスタQ1、Q2として用いて電力調整回路を構成することができる。
【0066】
(他の実施形態)
前述した図1図5に示した第5のPNPトランジスタをPchMOSトランジスタに置き換えても前述と同様な電力調整回路を構成することができる。置き換えた場合の電力調整回路の動作については、前述した実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0067】
L、N・・・・・・・・・・・AC電源ライン
Q1〜Q6 ・・・・・・・トランジスタ
D1〜D11 ・・・・・・ダイオード
R1〜6、R11,R12・・・抵抗
RL・・・・・・・・・・・・負荷
G1〜G4・・・・・・・・・インバータゲート
C1〜C3、CT・・・・・・コンデンサ
E1,E2・・・・・・・・・電源回路
VDC1、VDC2・・・・・直流電源端子
ZX・・・・・・・・・・・・ゼロクロス検出回路
CONT・・・・・・・・・・コントローラ
RT・・・・・・・・・・・・パルス信号のパルス巾を調整するタイミング抵抗
OUT1、OUT2・・・・・出力端子
T・・・・・・・・・・・・・トライアック
S・・・・・・・・・・・・・双方向性トリガダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7