(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記極細繊維混在層のスパンボンド不織布層との当接面における熱融着性繊維量が、前記当接面に対向する面における熱融着性繊維量よりも多いことを特徴とする、請求項1記載のプリーツ型エアフィルタ用濾材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のプリーツ型エアフィルタ用濾材(以下、単に「エアフィルタ用濾材」と表記することがある)はスパンボンド層と極細繊維混在層とからなり、両方の層で塵埃を捕集することができるように、スパンボンド層は通気度が300cm
3/cm
2/sec以上であり、極細繊維混在層は平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維と平均繊維径10〜100μmの熱融着性繊維とが混在している。
【0015】
この極細繊維混在層を構成する極細繊維は平均繊維径0.1〜10μmである。この極細繊維の平均繊維径が0.1μm未満であると、圧力損失が高くなる傾向があるため、長期間使用できるエアフィルタ用濾材であることが困難になる傾向があり、他方、平均繊維径が10μmを越えると、微細な塵埃を捕集することが困難になる傾向があるためで、平均繊維径0.25〜5μmの極細繊維であるのが好ましい。
【0016】
なお、本発明における「平均繊維径」とは、繊維(例えば、極細繊維)200点における繊維径の算術平均値をいう。この繊維径は、例えば、エアフィルタ用濾材の電子顕微鏡写真をもとに計測することができる。
【0017】
この極細繊維を構成する樹脂成分は特に限定するものではないが、例えば、ポリプロピレン系やポリエチレン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂など1種類以上からなることができる。これらの中でも、極細繊維を製造しやすく、しかもエレクトレット化しやすいポリオレフィン系樹脂を極細繊維表面に含んでいるのが好ましく、ポリプロピレン系樹脂を極細繊維表面に含んでいるのがより好ましい。
【0018】
このような極細繊維の極細繊維混在層に占める比率は2mass%以上、40質量mass%以下であるのが好ましい。極細繊維が2mass%未満であると、極細繊維の量が少な過ぎて微細な塵埃を捕集することができない恐れがあり、他方、40mass%を超えると、粗大な塵埃によってすぐに目詰まりしてしまう恐れがあるためで、3〜35mass%であるのがより好ましく、4〜30mass%であるのが更に好ましい。
【0019】
このような極細繊維はどのような方法で製造しても良いが、例えば、メルトブロー法、静電紡糸法、特開2009−287138号公報に開示されているような、紡糸液を吐出できる液吐出部と、この液吐出部よりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガス吐出部とを有する紡糸装置によって製造することができる。これらの中でも、メルトブロー法によると、エレクトレット化しやすいオレフィン系樹脂からなる極細繊維を形成しやすく、また、生産性が高いため好適である。
【0020】
なお、極細繊維の製造条件は、平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維を紡糸できる条件であれば良く、実験により適宜調整することができる。例えば、好適であるメルトブロー法により極細繊維を製造する場合には、例えば、オリフィス径0.1〜0.5mmで、ピッチ0.2〜1.2mmで配置されたノズルピースを、温度220〜370℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.0035〜1.5g/分の割合で樹脂を吐出し、この吐出した樹脂に対して、温度220〜400℃、かつ質量比で樹脂吐出量の5〜5,000倍量の空気を作用させて、極細繊維を製造することができる。
【0021】
本発明の極細繊維混在層は上述のような極細繊維以外に、平均繊維径10〜100μmの熱融着性繊維が混在しており、この熱融着性繊維が融着している。そのため比較的粗い空間が形成されており、粗大な塵埃を捕集できるとともに、圧力損失を低くすることができるため、長期間使用することが可能である。
【0022】
この熱融着性繊維の平均繊維径は10〜100μmである必要があり、平均繊維径が10μm未満であると、比較的粗い空間が形成されておらず、圧力損失が高くなり、長期間使用できない傾向があり、他方、平均繊維径が100μmを越えると、熱融着性繊維によって形成される空間が大き過ぎて、極細繊維が混在していたとしても微細な塵埃を捕集することができない傾向があるためで、15〜70μmであるのがより好ましく、15〜55μmであるのが更に好ましい。
【0023】
この熱融着性繊維は、例えば、ポリプロピレン系やポリエチレン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂など1種類からなる全溶融型、又はこれら樹脂を2種類以上含む複合型であることができる。これらの中でも、後者の複合型であると、融着しない樹脂成分によって繊維形状を維持することができ、熱融着性繊維が混在していることによって形成された空間の保持性に優れているため、好適である。
【0024】
この好適である複合型熱融着性繊維としては、例えば、(1)高融点の樹脂成分を芯成分とし、この高融点の樹脂成分よりも低融点の樹脂成分を鞘成分(融着成分)とする芯鞘型又は偏芯型のもの、(2)高融点の樹脂成分とこの高融点の樹脂成分よりも低融点の樹脂成分(融着成分)とを貼り合わせたサイドバイサイド型のもの、(3)低融点の樹脂成分(海成分であり融着成分)中に、この低融点の樹脂成分よりも高融点の樹脂成分が多数点在する海島型のもの、などを使用できる。これらの中でも、熱融着する際の熱によって空間が小さくなりにくく、形態安定性に優れている芯鞘型、偏芯型、或いは海島型の熱融着性繊維を好適に使用できる。
【0025】
なお、複合型熱融着性繊維の高融点成分と低融点成分(融着成分)との融点差は、融着させる際に、いずれの樹脂成分も溶融させないように、10℃以上あるのが好ましく、20℃以上あるのがより好ましい。また、熱融着性繊維を融着させる際に極細繊維も融着させてしまうと、微細な塵埃の捕集ができなくなるため、熱融着性繊維の低融点成分(融着成分)は極細繊維の融点(極細繊維が複数の樹脂成分からなる場合には、最も低い融点を有する樹脂成分を基準)よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。例えば、極細繊維が好適であるポリプロピレン樹脂からなる場合、熱融着性繊維の融着成分の融点は150℃以下であるのが好ましく、140℃以下であるのがより好ましい。この場合、熱融着性繊維の融着成分はポリエチレン樹脂からなるのが好ましい。
【0026】
この熱融着性繊維は長繊維であっても短繊維であっても良いが、極細繊維と混合しやすいように、短繊維であるのが好ましい。短繊維である場合、繊維長は5〜160mmであるのが好ましく、極細繊維と絡みやすいように、25〜110mmであるのがより好ましい。
【0027】
また、この熱融着性繊維は延伸されたものであると、極細繊維混在層は強度的及び剛性的に優れており、熱融着性繊維によって形成された比較的粗い空間を維持できるため好適である。この「延伸された」とは、繊維を紡糸した後に、機械的に延伸処理が施されたことをいう。
【0028】
本発明の極細繊維混在層は、このような熱融着性繊維と前述のような極細繊維と混在した状態にあり、しかも熱融着性繊維が融着した状態にあるため、エアを濾過する際に、繊維間の空間が変形しにくい。そのため、塵埃を捕集できるとともに、圧力損失を低くすることができるため、長期間使用することが可能である。
【0029】
なお、熱融着性繊維と極細繊維とは均一に混在していても、不均一に混在していても良いが、極細繊維混在層における一方のA面における熱融着性繊維量が、前記のA面に対向するB面における熱融着性繊維量よりも多いと、熱融着性繊維は極細繊維よりも太いため、前記A面が比較的粗く、B面が比較的緻密な構造であることから、A面を濾過エアの上流側に位置させ、つまりA面をスパンボンド不織布層と当接させ、B面を濾過エアの下流側に位置させることによって、大きい粒子から順次濾過することができ、粉塵供給量の多いエアフィルタ用濾材であることができるため好適である。このように、大きい粒子から順次濾過できるように、前記A面からB面にかけて、熱融着性繊維量が漸次減少しているのが好ましい。なお、A面を後述のスパンボンド不織布層側とした場合には、熱融着性繊維量が多いため、スパンボンド不織布層と極細繊維混在層との融着力が強く、プリーツ加工したとしても、これらの層間で剥離しにくいという特長もある。
【0030】
このような熱融着性繊維は比較的粗い空間を形成できるように、極細繊維混在層の60mass%以上を占めているのが好ましく、98mass%以下を占めていることが好ましい。より好ましくは極細繊維混在層の65〜97mass%を占め、更に好ましくは70〜96mass%を占めている。
【0031】
なお、熱融着性繊維は1種類からなる必要はなく、繊維径、組成、或いは繊維長などの点で相違する2種類以上の熱融着性繊維が混在していても良い。また、繊維径の異なる熱融着性繊維を2種類以上混合することにより、より適切な空間を形成することができるため、平均繊維径の点において、10〜50μm程度の差がある熱融着性繊維を2種類以上混合するのが好適である。
【0032】
本発明の極細繊維混在層は極細繊維と熱融着性繊維とが混在しているが、これら繊維以外の繊維を含んでいても良く、例えば、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維や、様々な機能を付与するために、機能性繊維が混在していても良い。この機能性繊維としては、例えば、難燃性を付与するためのビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、或いは変性アクリル繊維、抗菌性を付与するための銀や銅などを含む繊維、を挙げることができる。この他にも、帯電防止性、脱臭性、消臭性、吸湿性などの機能を有する機能性繊維が混在していても良い。なお、これらの機能を有する機能性物質が極細繊維中及び/又は熱融着性繊維中に混在していても良い。なお、ポリオレフィン系繊維とアクリル繊維及び/又は変性アクリル繊維とが混在していると、摩擦により帯電させることができる。
【0033】
この極細繊維混在層における極細繊維と熱融着性繊維以外の繊維(以下、「他の繊維」という)は、極細繊維による微細な塵埃の捕集、及び熱融着性繊維による比較的粗い空間の形成を妨げないように、極細繊維混在層の38mass%以下であることが好ましい。なお、この他の繊維は長繊維であっても短繊維であっても良いが、極細繊維や熱融着性繊維と混在しやすいように、短繊維であるのが好ましい。短繊維である場合、繊維長が5〜160mmであるのが好ましく、20〜110mmであるのがより好ましい。
【0034】
更に、この他の繊維は熱融着性繊維を融着させる際の熱によって溶融しないように、熱融着性繊維の融着成分の融点よりも10℃以上高い融点を有するのが好ましく、20℃以上高い融点を有するのがより好ましい。
【0035】
前記極細繊維混在層は上述のような繊維が混在しており、熱融着性繊維が融着している。なお、極細繊維混在層は上述のような有機繊維のみから構成することができるため、エアフィルタ用濾材の使用寿命がきた時点で焼却処理することができるため廃棄上、好適である。
【0036】
本発明の極細繊維混在層の厚さは0.1〜10mmであるのが好ましい。極細繊維混在層の厚さが0.1mm未満であると、熱融着性繊維によって比較的粗い空間を形成しにくいため圧力損失が高く、長期間使用できない傾向があり、厚さが10mmを越えると、濾過に関与しない部分が多くなる傾向があるためで、厚さは0.2〜5mmであるのがより好ましく、0.5〜4mmであるのが更に好ましい。なお、本発明における「厚さ」は、単位面積1cm
2あたり20g荷重時の値をいう。
【0037】
また、極細繊維混在層の目付は30〜300g/m
2であるのが好ましい。目付が30g/m
2未満であると、密度が低くなり過ぎて微細な塵埃を捕集することが困難になる傾向があり、他方、300g/m
2を超えると、密度が高くなり過ぎて、粗大な塵埃によりすぐに目詰まりを生じ、長期間使用できなくなる傾向があるためで、40〜250g/m
2であるのがより好ましく、50〜200g/m
2であるのが更に好ましい。
【0038】
更に、前記極細繊維混在層の見掛密度は0.003〜3g/cm
3であるのが好ましい。見掛密度が0.003g/cm
3未満であると、微細な塵埃を捕集することが困難になる傾向があり、他方、3g/cm
3を越えると、粗大な塵埃によってすぐに目詰まりを生じ、長期間使用できなくなる傾向があるためで、0.008〜1.25g/cm
3であるのがより好ましい。
【0039】
本発明のエアフィルタ用濾材は、以上説明した極細繊維混在層に加えて、スパンボンド不織布層を備えており、剛性のあるスパンボンド不織布層によって補強された状態にあるため、プリーツ加工を施したとしても、隣接する濾材同士が密着せず、構造圧損が上昇しにくいものである。特に、山高さが50mm以上(特には、100mm以上)であるような、高い山高さにプリーツ加工を施した場合であっても、濾材が変形しにくいため、隣接する濾材同士の密着による圧損損失の上昇を抑えることができる。
【0040】
なお、スパンボンド不織布は有機質のみから構成することができるため、エアフィルタ用濾材を産業廃棄物として処理する必要がなく、焼却処分することができるため、熱源としてリサイクルできる。
【0041】
また、スパンボンド不織布層を濾過エアの上流側に配置するとともに、スパンボンド不織布として通気度が300cm
3/cm
2/sec以上のものを使用することによって、スパンボンド不織布層により濾過できるばかりでなく、濾過エアの下流側の極細繊維混在層が濾過性能を十分に発揮することができるため、粉塵供給量の多いエアフィルタ用濾材である。つまり、スパンボンド不織布として通気度が300cm
3/cm
2/sec未満のものを使用すると、スパンボンド不織布による表面濾過が支配的となり、スパンボンド不織布よりも下流側の極細繊維混在層の濾過性能を十分に発揮できない。スパンボンド不織布の好ましい通気度は400cm
3/cm
2/sec以上であり、より好ましくは500cm
3/cm
2/sec以上である。スパンボンド不織布の通気度の上限は特に限定するものではないが、十分な濾過性能を発揮できるように、800cm
3/cm
2/sec以下であるのが好ましく、700cm
3/cm
2/sec以下であるのがより好ましい。なお、本発明の「通気度」は、JIS L 1913−2010[6.8.1(フラジール形法)]の値をいう。
【0042】
本発明のスパンボンド不織布は上述のような通気度を有する限り、どのような樹脂から構成されていても良いが、例えば、ポリプロピレン系やポリエチレン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂1種類、又はこれら樹脂を2種類以上含む複合型であることができる。複合型である場合には、繊維表面を構成する1種類以上の樹脂がスパンボンド不織布構成繊維同士を融着できるとともに、融着に関与しない樹脂によって繊維形状を維持することができるため、形態安定性に優れるエアフィルタ用濾材であることができる。なお、複合型の場合、繊維断面において、樹脂はどのように配置していても良いが、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型であることができる。複合型であり、繊維が高融点成分と低融点成分(融着成分)とからなる場合には、融着させる際に、両方の樹脂成分を溶融させることがないように、10℃以上の融点差があるのが好ましく、20℃以上の融点差があるのがより好ましい。また、複合型の繊維からなるスパンボンド不織布を極細繊維混在層との融着にも関与させる場合には、スパンボンド不織布構成繊維を融着させる際に、極細繊維混在層の極細繊維も融着させてしまうと、微細な塵埃の捕集ができなくなる傾向があるため、スパンボンド不織布構成繊維の低融点成分(融着成分)は極細繊維の融点(極細繊維が複数の樹脂成分からなる場合には、最も低い融点を有する樹脂成分を基準)よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。例えば、極細繊維が好適であるポリプロピレン樹脂からなる場合、スパンボンド不織布構成繊維の低融点成分(融着成分)は融点が150℃以下であるのが好ましく、140℃以下であるのがより好ましい。このような樹脂成分として、ポリエチレン樹脂を例示できる。
【0043】
スパンボンド不織布の平均繊維径は特に限定するものではないが、10〜100μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのがより好ましい。平均繊維径が10μm未満であると、エアフィルタ用濾材の圧力損失が高くなり、長期間使用できない傾向があり、他方、平均繊維径が100μmを超えると、剛性が高くなり過ぎて、プリーツ加工性に劣る傾向があるためである。また、スパンボンド不織布構成繊維は1種類からなる必要はなく、繊維径、組成、或いは繊維長などの点で相違する2種類以上の繊維から構成されていても良い。
【0044】
このスパンボンド不織布層の厚さは0.1〜2mmであるのが好ましい。0.1mm未満であると、スパンボンド不織布層による補強効果が弱くなり、プリーツ型エアフィルタとした場合に、圧力損失が高くなる傾向があり、厚さが2mmを越えると、剛性が高くなり過ぎて、プリーツ加工が困難になる傾向があるためで、厚さは0.2〜1.5mmであるのがより好ましく、0.3〜1mmであるのが更に好ましい。
【0045】
また、スパンボンド不織布層の目付は5〜100g/m
2であるのが好ましい。目付が5g/m
2未満であると、スパンボンド不織布層による補強効果が弱くなり、プリーツ型エアフィルタとした場合に、圧力損失が高くなる傾向があり、他方、100g/m
2を超えると、剛性が高くなり過ぎて、プリーツ加工が困難になる傾向があるためで、7.5〜80g/m
2であるのがより好ましく、10〜60g/m
2であるのが更に好ましい。
【0046】
このようなスパンボンド不織布は極細繊維混在層よりも濾過エアの上流側に存在するように位置しているが、スパンボンド不織布層と極細繊維混在層とは結合していても良いし、結合していなくても良い。結合している場合、スパンボンド不織布構成繊維及び/又は極細繊維混在層の熱融着性繊維の融着性により結合していても良いし、ホットメルト樹脂により結合していても良いし、液状バインダによって結合していても良いし、ニードルパンチにより結合していても良い。
【0047】
また、本発明のエアフィルタ用濾材の厚さは0.2〜12mmであるのが好ましい。厚さが0.2mm未満であると、塵埃を保持する空間が十分に確保されないため、長期間使用できない傾向があり、厚さが12mmを越えると、濾過に関与しない部分が多くなる傾向があり、また、プリーツ加工が困難になる傾向があるためで、厚さ0.4〜6.5mmであるのがより好ましく、0.7〜5mmであるのが更に好ましい。
【0048】
また、エアフィルタ用濾材の目付は35〜400g/m
2であるのが好ましい。目付が35g/m
2未満であると、繊維量が少なく、塵埃を保持する空間が十分に確保されないため、長期間使用できない傾向があり、他方、400g/m
2を超えると、繊維量が多くなり過ぎて、粗大な塵埃によりすぐに目詰まりを生じ、長期間使用できなくなる傾向があるためで、50〜330g/m
2であるのがより好ましく、60〜260g/m
2であるのが更に好ましい。
【0049】
また、本発明のエアフィルタ用濾材の濾過性能は中高性能用のフィルタとして機能することが好ましく、具体的には、粒子捕集効率は5〜95%であることが好ましく、6〜90%であることがより好ましく、7〜85%であることが更に好ましい。粒子捕集効率が5%未満である場合は粒子捕集が不十分であり、粒子捕集効率が95%を超える場合は、直ぐにエアフィルタ用濾材の圧力損失が限界に達して寿命が短くなる傾向があるためである。
【0050】
なお、この捕集効率は次の操作により得られる値である。つまり、平面状の濾材を有効間口面積0.04m
2のホルダーにセットした後、粒径0.3〜0.5μmの大気塵(大気塵数:U)を濾材の上流側に供給し、面風速0.1m/秒で空気を通過させた場合における、下流側における大気塵数(D)をパーティクルカウンタ(RION社製:形式KC−01C)で測定し、次式より算出した値を捕集効率とする。
捕集効率(%)=[1−(D/U)]×100
【0051】
また、本発明のエアフィルタ用濾材の初期の圧力損失は、100Pa以下が好ましく、75Pa以下がより好ましく、50Pa以下が更に好ましく、40Pa以下が更に好ましい。この「初期の圧力損失」は、上記捕集効率測定時における初期の圧力損失をいう。
【0052】
更に、本発明のエアフィルタ用濾材の粉塵供給量は寿命が長いように、30g/m
2以上であるのが好ましく、40g/m
2以上であるのがより好ましく、50g/m
2以上であるのが更に好ましい。この粉塵供給量は、平面状の濾材を有効間口面積0.05m
2のホルダーにセットし、濾材の上流側にJIS15種ダストを供給し、面風速0.1m/秒で空気を通過させ、初期から圧力損失300Paとなった時点までのダスト供給量をいう。
【0053】
本発明の極細繊維がメルトブロー繊維からなるエアフィルタ用濾材は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、
図1に示すように、前述のような条件でメルトブロー装置1から吐出される極細繊維2の流れに対して、開繊機3により開繊した熱融着性繊維4(場合により他の繊維も含む)を供給し、両者を混合した後、この混合した繊維をコンベアなどの捕集体5で捕集して極細繊維混在ウエブ6を形成する。次いで、通気度が300cm
3/cm
2/sec以上のスパンボンド不織布7を積層する。次いで、この積層物を熱処理装置10で熱処理することにより、熱融着性繊維4の融着により極細繊維混在層を形成すると共に、熱融着性繊維4の融着により極細繊維混在層とスパンボンド不織布7とを融着して、エアフィルタ用濾材8を製造することができる。なお、場合によっては、スパンボンド不織布構成繊維による融着性も利用して、極細繊維混在層とスパンボンド不織布7とを融着して、エアフィルタ用濾材8を製造することができる。
【0054】
この熱融着性繊維4を供給する開繊機3としては、カード機やガーネット機などを例示できるが、
図2に示すような複数の開繊シリンダ31をハウジング32内に収納した開繊機3は、極細繊維2の流れに対して勢い良く熱融着性繊維4を衝突させることができ、極細繊維混在ウエブ6の全体において、極細繊維2と熱融着性繊維4が混在するように混合することができる。特に、極細繊維2の流れに対して、できるだけ直角方向から熱融着性繊維4を供給すると、極細繊維混在ウエブ6の全体において、極細繊維2と熱融着性繊維4が混在するように混合することができる。なお、
図2の開繊機3においては、重力方向に飛翔する極細繊維2の流れに対して、直角方向から熱融着性繊維4を勢い良く供給できるように、エアを供給することのできるエアノズル33を備えている。
【0055】
なお、極細繊維2に対して熱融着性繊維4を供給する角度を調節することによって、極細繊維混在ウエブ6の厚さ方向における熱融着性繊維4の存在比率を変化させることができる。つまり、極細繊維2に対して熱融着性繊維4を供給する角度を鋭角とすることによって、熱融着性繊維4の極細繊維2の流れへの進入力が弱くなるため、熱融着性繊維4の供給側においては、熱融着性繊維4の量が多く、熱融着性繊維4の供給側とは反対側へ向かうにしたがって、漸次、極細繊維2の量が多い状態の、厚さ方向に粗密構造を有する極細繊維混在ウエブ6とすることができる。
【0056】
この極細繊維2と熱融着性繊維4とが混合した極細繊維混在ウエブ6を捕集する捕集体5はロール状のものであっても、ネット状のものであっても良いが、これら繊維を搬送する気流との衝突によって極細繊維混在ウエブ6が乱れたり、飛散しないように、捕集体5は通気性であるのが好ましく、しかも捕集面とは反対側に気流の吸引装置を備えているのが好ましい。
【0057】
スパンボンド不織布7は繊維同士が熱融着していても良いし、熱融着していなくても良いが、剛性に優れているように、また、工程上、取り扱いやすいように、熱融着しているのが好ましい。
【0058】
図1のように、極細繊維混在ウエブ6の熱融着性繊維4を融着させる場合、熱処理は、熱融着性繊維4の融着成分の融点以上、かつ極細繊維2(場合によっては他の繊維も含む)の融点より低い温度で、実質的に加圧しない状態で加熱処理するのが好ましい。このようにすることにより、極細繊維2がフィルム化せず、本来の捕集性能を発揮することができ、しかも熱融着性繊維により形成される比較的粗な空間が損なわれず、圧力損失が高くならないので、長期間使用できるエアフィルタ用濾材8を製造することができる。また、融着がエアフィルタ用濾材8の表面近傍に偏ったりせず、エアフィルタ用濾材8の内部においてもしっかりと融着した嵩高なエアフィルタ用濾材8を製造することができる。
【0059】
また、同時に、この熱融着性繊維4の融着によって、スパンボンド不織布7と結合することができる。なお、スパンボンド不織布7を構成する繊維も融着させ、スパンボンド不織布7と極細繊維混在ウエブ6との融着一体化に関与させることができる。
【0060】
このような加熱処理を行うことのできる熱処理装置10としては、例えば、熱風循環型ドライヤー、サクション型エアスルードライヤーなどがある。例えば、極細繊維がポリプロピレン樹脂からなり、熱融着性繊維の融着成分がポリエチレン樹脂からなる場合、熱処理装置10の雰囲気温度を135〜150℃に設定して融着するのが好ましい。
【0061】
なお、この熱処理後にエアフィルタ用濾材の厚さを調整するために、エアフィルタ用濾材8を構成するいずれの繊維の融点よりも低い温度下にてロール間を通したり、平板プレス間を通しても良い。また、捕集効率をより高めるために、融着処理の後にエレクトレット化処理を実施することも可能である。なお、エレクトレット化処理する場合には、その効率をより高めるために、水洗や湯洗などにより熱融着性繊維の繊維油剤をできるだけ少なくした後に、エレクトレット化処理するのが好ましい。
【0062】
以上はメルトブロー法により極細繊維を形成した場合についてであるが、静電紡糸法、特開2009−287138号公報に開示されているような、紡糸液を吐出できる液吐出部と、この液吐出部よりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガス吐出部とを有する紡糸装置により極細繊維を形成した場合も全く同様にエアフィルタ用濾材を製造することができる。
【0063】
また、熱融着性繊維の融着により極細繊維混在ウエブ6を形成すると同時に、スパンボンド不織布7と結合する必要はなく、熱融着性繊維の融着により極細繊維混在ウエブ6を形成した後に、スパンボンド不織布7と結合しても良い。また、熱融着性繊維の融着によりスパンボンド不織布7と結合する必要はなく、スパンボンド不織布構成繊維の融着力により結合しても良いし、ホットメルト樹脂により結合しても良いし、液状バインダによって結合しても良いし、ニードルパンチにより結合しても良い。
【0064】
次に、本発明のプリーツ型エアフィルタユニット(以下、単に「エアフィルタユニット」と表記することがある)は、プリーツ加工を施した、上述のようなエアフィルタ用濾材が枠で固定されたものである。そのため、構造圧損が上昇せず、また、粉塵供給量の多いプリーツ型エアフィルタユニットである。
【0065】
本発明のエアフィルタユニットは上述のようなエアフィルタ用濾材を使用し、スパンボンド不織布層が濾過エアの上流側に位置するように配置していること以外は、従来のプリーツ型エアフィルタユニットと全く同様であることができる。
【0066】
例えば、プリーツ加工は、ジグザグ形状に折ることができる限り限定されず、例えば、レシプロ式やロータリー式などのプリーツ加工機、ジグザグ形状に成形された押型でプレスする方法により実施することができる。なお、本発明のエアフィルタ用濾材は山高さが50mm以上であるような、高い山高さにプリーツ加工を施した場合であっても、濾材の変形がなく、隣接する濾材同士が密着せず、構造圧損が上昇しにくいものであるため、山高さが50mm以上(特には、100mm以上)であるようにプリーツ加工を実施することができる。
【0067】
また、枠による固定は、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのホットメルト樹脂を枠とエアフィルタ用濾材との間に介在させることにより行うことができる。なお、枠としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、或いは各種樹脂からなるものを使用することができる。
【0068】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
なお、極細繊維混在ウエブにおける熱融着性繊維又は極細繊維の質量比率は、次の手順により算出した。
(1)極細繊維混在ウエブのコンベア側表面(B面)及びコンベア側表面(B面)に対向する面(A面)の電子顕微鏡写真をそれぞれ撮影する。
(2)各表面電子顕微鏡写真をもとに、各表面における、熱融着繊維、極細繊維のそれぞれが占める総面積を求める。
(3)前記総面積を各繊維の平均繊維径で除することにより、各繊維の総繊維長をそれぞれ算出する。
(4)前記総繊維長に、各繊維の平均繊維径から求めた繊維断面積と各繊維の密度をそれぞれ乗じることによって、各繊維の質量を算出する。
(5)前記各繊維の質量から質量比率を算出する。
【実施例】
【0070】
(極細繊維混在ウエブの作製)
オリフィス径0.2mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルピースを温度320℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.04g/分の割合で、ポリプロピレン繊維を吐出した。この吐出したポリプロピレン繊維に対して、温度340℃、質量比83倍量の空気を作用させて、重力の働く方向と同じ方向に繊維径1〜2μm(平均繊維径1.5μm)の極細繊維2(融点:160℃)の流れを形成した。
【0071】
次いで、この極細繊維2の流れに対して、この流れと65°の角度(
図1におけるθ)をなすように、
図2に示すような2本の開繊シリンダ31をハウジング32内に収納し、エアノズル33を備えた開繊機3から、芯成分がポリプロピレン樹脂(融点160℃)からなり、鞘成分がポリエチレン樹脂(融点135℃)からなる、繊維径17μm、繊維長38mmの延伸された芯鞘型熱融着性繊維100mass%を供給し、ポリプロピレン極細繊維2と混合した。この混合した繊維をメッシュ状コンベア5により捕集して極細繊維混在ウエブ6を作製した。なお、コンベア5の捕集面の反対側から空気を吸引除去し、極細繊維混在ウエブ6の乱れを防いだ。また、極細繊維混在ウエブ6は7mass%の極細繊維と93mass%の芯鞘型熱融着性繊維とから構成されており、また、コンベア5の捕集面側表面(B面)において、極細繊維が約50mass%(芯鞘型熱融着性繊維:約50mass%)存在し、捕集面側表面に対向する面(A面)に向かうにしたがって、極細繊維量が漸次減少し、A面において、極細繊維が約3mass%存在(芯鞘型熱融着性繊維:約97mass%)していた。
【0072】
(実施例1〜3、比較例1〜9)
表1に示すようなスパンボンド不織布7を用意した。
【0073】
【表1】
#:PP・・ポリプロピレン(融点:160℃)、PET・・ポリエステル(融点:264℃)、PE・・ポリエチレン(融点:135℃)、PET/PE・・ポリエステル(芯、融点:264℃)/ポリエチレン(鞘、融点:135℃)、PP/PE・・ポリプロピレン(芯、融点:160℃)/ポリエチレン(鞘融点:135℃)
【0074】
次いで、スパンボンド不織布7を前記極細繊維混在ウエブ6のA面に積層した。その後、この積層物を温度137℃雰囲気のドライヤー中に1分間通すことにより、芯鞘型熱融着性繊維の鞘成分(ポリエチレン成分)を融着させて、極細繊維混在層を形成するとともに、極細繊維混在層とスパンボンド層とを融着して、表2に示すようなエアフィルタ用濾材を製造した。なお、実施例3、比較例1〜4及び比較例8おいては、スパンボンド構成繊維も極細繊維混在層との融着に関与した。また、極細繊維混在層の目付は105g/m
2で、厚さは1.10mmで、見掛密度は0.095g/cm
3であった。このエアフィルタ用濾材の目付、厚さ、捕集効率、初期圧力損失及び粉塵供給量を、前述の方法により、スパンボンド不織布層を濾過エアの上流側として測定した。この結果は表2に示す通りであった。
【0075】
【表2】
【0076】
表1、2から、スパンボンド不織布層の通気度が300cm
3/cm
2/sec以上であることによって、スパンボンド不織布層で濾過できるばかりでなく、下流側の極細繊維混在層の濾過性能を損なわないため、粉塵供給量の多いプリーツ型エアフィルタ用濾材であることがわかった。