【文献】
堀哲 他,OFDM無線パケット通信システム用ダイバーシチ受信回路,電子情報通信学会総合大会講演論文集 2000年.通信(1),日本,一般社団法人電子情報通信学会,2000年 3月 7日,p.392
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合成部は、前記伝送路応答推定部により推定された各ブランチの前記伝送路応答を、前記補正係数算出部により算出された該ブランチの前記補正係数を乗算することにより補正し、補正後の各ブランチの前記伝送路応答を用いて、各ブランチの前記サブキャリア信号を最大比合成する際の重付係数を算出する、
請求項1に記載の受信装置。
複数の閾値により規定された複数の強度範囲毎に設定された、前記強度の差分と前記補正係数との対応関係を示す複数のLUT(Look Up Table)をさらに備え、
夫々の前記LUTにおいて、前記強度の差分が大きいほど前記補正係数が小さくなり、
前記複数のLUT間で、同一の前記強度の差分に対して、大きい強度に対応する前記強度範囲に対して設定された前記LUTほど、該LUTにおける前記補正係数が大きくなり、
前記補正係数算出部は、前記他の各ブランチについて、前記最強ブランチの前記強度が含まれる前記強度範囲に対して設定された前記LUTを選択し、選択した前記LUTで前記補正係数を求める、
請求項1に記載の受信装置。
前記合成部は、前記伝送路応答推定部により推定された各ブランチの前記伝送路応答を、前記補正係数算出部により算出された該ブランチの前記補正係数を乗算することにより補正し、補正後の各ブランチの前記伝送路応答を用いて、各ブランチの前記サブキャリア信号を最大比合成する際の重付係数を算出する、
請求項10に記載の受信装置。
前記補正係数算出部は、前記フロントエンド部において前記AGC処理時に得られる前記受信信号のフレームにおけるショート・プリアンブルの強度を前記同期信号の強度として用いる、
請求項13に記載の受信装置。
複数の閾値により規定された複数の強度範囲毎に設定された、前記強度の差分と前記補正係数との対応関係を示す複数のLUT(Look Up Table)をさらに備え、
夫々の前記LUTにおいて、前記強度の差分が大きいほど前記補正係数が小さくなり、
前記複数のLUT間で、同一の前記強度の差分に対して、大きい強度に対応する前記強度範囲に対して設定された前記LUTほど、該LUTにおける前記補正係数が大きくなり、
前記補正係数算出部は、前記他の各ブランチについて、前記最強ブランチの前記強度が含まれる前記強度範囲に対して設定された前記LUTを選択し、選択した前記LUTで前記補正係数を求める、
請求項10に記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0026】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0027】
また、以下の実施の形態のいずれも、OFDM方式の伝送信号をダイバシティ受信する技術に関し、例として、ブランチの総数が2である。勿論、これらの実施の形態にかかる技術は、ブランチの総数が2以上の任意の数である場合にも適用することができる。
【0028】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態にかかる受信装置100を示す。受信装置100は、OFDM方式の伝送信号をダイバシティ受信するものであり、第1のブランチについては、アンテナ110、フロントエンド部112、FFT演算部114、伝送路応答推定部116を備え、第2のブランチについては、アンテナ120、フロントエンド部122、FFT演算部124、伝送路応答推定部126を備える。受信装置100は、さらに、補正係数算出部130、合成部140を備える。なお、この種の受信装置に通常備えられる他の機能ブロック、例えば、合成部140が出力した合成信号Dに対してビタビ復号を行う復号器などは、
図1において省略している。
【0029】
まず、受信装置100に対して、第1のブランチについて説明する。
アンテナ110により受信した信号(第1のブランチの受信信号R1)は、フロントエンド部112に入力される。フロントエンド部112は、受信信号R1に対して、A/D変換、AGC処理、フィルタ処理、CFO推定(CFO:CARRIER FREQUENCY OFFSET)、同期処理などを行う。フロントエンド部112により得られたデジタル信号は、FFT演算部114に入力される。
【0030】
フーリエ変換部としてのFFT演算部114は、フロントエンド部112からのデジタル信号に対してFFT演算を行って、第1のブランチの時間領域のOFDMシンボル信号を周波数領域のOFDMシンボル信号に変換する。FFT演算部114により得られた1つのOFDMシンボル信号は、複数(例えば52個)のサブキャリアに夫々対応する複数の信号(サブキャリア信号)を含む。以下、第1のブランチの各サブキャリア信号を「S1」で表記する。
【0031】
FFT演算部114により得られた各サブキャリア信号S1は、合成部140に入力されると共に、伝送路応答推定部116にも入力される。
【0032】
伝送路応答推定部116は、各サブキャリア信号S1について、伝送路応答を夫々推定して合成部140に出力する。伝送路応答推定部116により得られた伝送路応答を、「H1」で表記する。
【0033】
第2のブランチについても同様に、まず、アンテナ120により受信した信号(第2のブランチの受信信号R2)は、フロントエンド部122に入力される。フロントエンド部122は、フロントエンド部112と同様に、受信信号R2に対して、A/D変換、AGC処理、フィルタ処理、CFO推定、同期処理などを行う。フロントエンド部122により得られたデジタル信号は、FFT演算部124に入力される。
【0034】
フーリエ変換部としてのFFT演算部124は、フロントエンド部122からのデジタル信号に対してFFT演算を行って、第2のブランチの時間領域のOFDMシンボル信号を周波数領域のOFDMシンボル信号に変換する。FFT演算部124により得られた1つのOFDMシンボル信号も、複数のサブキャリアに夫々対応する複数のサブキャリア信号を含む。以下、第2のブランチの各サブキャリア信号を「S2」で表記する。
【0035】
FFT演算部124により得られた各サブキャリア信号S2は、合成部140に入力されると共に、伝送路応答推定部126にも入力される。
【0036】
伝送路応答推定部126は、各サブキャリア信号S2について、伝送路応答を夫々推定して合成部140に出力する。伝送路応答推定部126により得られた伝送路応答を、「H2」で表記する。
【0037】
合成部140は、FFT演算部114が出力するサブキャリア信号S1と、FFT演算部124が出力するサブキャリア信号S2とに対して、サブキャリア毎に、合成を行って合成信号Dを得る。
【0038】
従来のこの種の受信装置では、合成部140に対応する機能ブロックは、最大比合成(以下「MRC合成」という)により、伝送路応答H1と伝送路応答H2からブランチ毎に重付係数を求めてサブキャリア信号S1とサブキャリア信号S2を重付加算する。最大比合成による重付加算の演算式を、以下「最大比合成演算式」という。この最大比合成演算式は、式(3)である。なお、式(3)は、前述した式(2)を2ブランチの場合に適用したものであり、式(3)における「i」と「k」は、シンボルの番号とサブキャリアの番号を夫々示し、「m」と「j」は、ブランチの番号を示す。これに関して、以降の各式においても同様である。
【0040】
式(3)から分かるように、従来のこの種の受信装置において、MRC合成時の重付係数は、各ブランチの伝送路応答に基づいて算出されている。
【0041】
対して、本実施の形態の受信装置100は、補正係数算出部130をさらに備え、合成部140が、補正係数算出部130により夫々のブランチに対して得た補正係数(α1(i)、α2(i))で式(3)に示す重付係数を補正した上で重付加算を行う。合成部140による具体的な演算の前に、まず、補正係数算出部130を説明する。
【0042】
補正係数算出部130は、各ブランチの受信信号(受信信号R1、受信信号R2)の強度の大小関係に応じて、受信信号の強度が小さいブランチほど小さくなる補正係数を求める。補正係数算出部130により求められた第1のブランチと第2のブランチの補正係数は、夫々、第1の補正係数α1と第2の補正係数α2である。
【0043】
補正係数の算出に際して、補正係数算出部130は、例えば、受信信号の強度が最も大きいブランチ(以下「最強ブランチ」という)については、最大の補正係数を付与し、他の各ブランチについては、最強ブランチとの強度の差分に応じて、最大の補正係数以下の補正係数を求める。ここで、最大の補正係数が「1」であるとした場合を例にして説明する。
【0044】
まず、A/D変換前の受信信号R1と受信信号R2から受信信号強度を測定する場合を説明する。A/D変換前のアナログ信号では、何番目のシンボルであるかが分からないため、測定した受信信号強度から算出した補正係数を以降の全てのシンボルに適用することが考えられる。
【0045】
この場合、補正係数算出部130は、例えば、下記の式(4A)に従って、第1の補正係数α1と第2の補正係数α2を算出する。
【0047】
式(4A)において、「Q1」と「Q2」は、夫々、受信信号R1と受信信号R2の受信信号強度であり、「diffA」は、受信信号強度Q1と受信信号強度Q2の差分の絶対値を示す。
【0048】
式(4A)から分かるように、受信信号強度が大きいブランチ(最強ブランチ)が第1のブランチである場合(Q1>=Q2)、補正係数算出部130は、第1のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第1の補正係数α1が「1」になる。また、補正係数算出部130は、第2のブランチについては、「diffA」から第2の補正係数α2を算出する。
【0049】
一方、最強ブランチが第2のブランチである場合に(「else」すなわち「Q1<Q2」、補正係数算出部130は、第2のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第2の補正係数α2(i)が「1」になる。また、補正係数算出部130は、第1のブランチについては、「diffA」から第1の補正係数α1を算出する。
【0050】
例えば、A/D変換前の受信信号R1と受信信号R2に対して受信信号強度の測定を連続的に測定し、強度の変化が無い間には、測定した受信信号強度から求められた補正係数を全てのシンボルに適用する。一方、受信信号強度が変化した場合には、それ以降のシンボルについては、変化後の受信信号強度から求められた補正係数を適用すればよい。
【0051】
または、A/D変換前の受信信号R1と受信信号R2に対して受信信号強度の測定を所定の間隔を置いて定期的に測定し、測定の度に、補正係数を更新するようにしてもよい。
【0052】
より良い補正効果を得るためには、シンボル毎に、各ブランチの受信信号の受信信号強度を測定し、シンボル毎に補正係数を求めることが好ましい。この場合、受信信号の強度の測定がA/D変換乃至同期処理後に行われる。
【0053】
具体的には、例えば、フロントエンド部112とフロントエンド部122がAGC処理をする際に得られる受信信号強度を基に各ブランチの夫々のシンボルの受信信号強度を取得することができる。AGC処理をする際に得られる受信信号強度は、各フレームの先頭の同期信号に含まれるショート・プリアンブルの受信信号強度に該当するため、各フレームについて、ショート・プリアンブルからの時間経過と共に受信電力の変動量を測定して該フレームの受信信号強度に加算することにより、該フレームの各シンボルの受信信号強度を求めることができる。AGC処理時に得られる受信信号強度については、後に第2の実施の形態において詳細に説明する。
【0054】
この場合、補正係数算出部130は、例えば、下記の式(4B)に従って、第1の補正係数α1と第2の補正係数α2を算出する。
【0056】
式(4B)において、「Q1(i)」と「Q2(i)」は、夫々、A/D変換後の受信信号R1と受信信号R2におけるi番目のシンボルの強度であり、「diffA(i)」は、強度Q1(i)と強度Q2(i)の差分の絶対値を示す。
【0057】
式(4B)から分かるように、最強ブランチが第1のブランチである場合(Q1(i)>=Q2(i))、補正係数算出部130は、第1のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第1の補正係数α1(i)が「1」になる。また、補正係数算出部130は、第2のブランチについては、「diffA(i)」から第2の補正係数α2(i)を算出する。
【0058】
一方、最強ブランチが第2のブランチである場合に(「else」すなわち「Q1(i)<Q2(i)」、補正係数算出部130は、第2のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第2の補正係数α2(i)が「1」になる。また、補正係数算出部130は、第1のブランチについては、「diffA(i)」から第1の補正係数α1(i)を算出する。
【0059】
なお、受信信号R1と受信信号R2におけるi番目のシンボルの強度であるQ1(i)とQ2(i)は、例えば、当該シンボルの時間軸における平均強度や、当該シンボルの任意の位置例えば先頭や中間点の強度などとすることができる。
【0060】
合成部140は、サブキャリア信号S1とS2を重付加算することにより合成する際に、補正係数算出部130により求められた補正係数が小さいブランチほど、該ブランチのサブキャリア信号の伝送路応答の影響を弱めるようにして重付係数を求めて合成を行う。ここで、合成部140による合成手法の具体例をいくつか説明する。なお、合成部140による演算を示す式を、以下「合成演算式」という。
【0061】
例えば、合成部140は、最大比合成演算式(式(3))の分子と分母の各項を、補正係数算出部130により該項に対応するブランチに対して算出した補正係数で補正する。
【0062】
具体的には、例えば、合成演算式である式(5)に示すように、最大比合成演算式の分子と分母の各項に、該項に対応するブランチの補正係数を乗算する。
【0064】
または、合成部140は、式(6)に示す合成演算式のように、各ブランチの伝送路応答を、該ブランチの補正係数を乗算することにより補正し、補正後の各ブランチの伝送路応答を用いて、各ブランチのサブキャリア信号を最大比合成するようにしてもよい。
【0066】
図2は、合成部140の構成例を示す。
図2に示す合成部140は、式(5)に示す演算によりサブキャリア信号S1とサブキャリア信号S2を重付加算するものであり、乗算部151、電力算出部152、乗算器153、乗算器154、乗算器161、電力算出部162、乗算器163、乗算器164、加算器171、加算器172、除算器173を有する。
【0067】
乗算部151は、サブキャリア信号S1と、伝送路応答H1の複素共役とを乗算して乗算器153に出力する。電力算出部152は、伝送路応答H1の振幅の2乗(|H1|
2)を算出して乗算器154に出力する。乗算器153は、補正係数算出部130からの第1の補正係数α1と、乗算部151の出力とを乗算して加算器171に出力する。乗算器153の出力は、式(5)の分子部分の2つの項のうちの1項である。また、乗算器154は、第1の補正係数α1と、電力算出部152の出力とを乗算して加算器172に出力する。乗算器154の出力は、式(5)の分母部分の2つの項のうちの1項である。
【0068】
乗算器161は、サブキャリア信号S2と、伝送路応答H2の複素共役とを乗算して乗算器163に出力する。電力算出部162は、伝送路応答H2の振幅の2乗(|H2|
2)を算出して乗算器164に出力する。乗算器163は、補正係数算出部130からの第2の補正係数α2と、乗算部161の出力とを乗算して加算器171に出力する。乗算器163の出力は、式(5)の分子部分の2つの項のうちの別の1項である。また、乗算器164は、第2の補正係数α2と、電力算出部162の出力とを乗算して加算器172に出力する。乗算器164の出力は、式(5)の分母部分の2つの項のうちの別の1項である。
【0069】
加算器171は、乗算器153と乗算器163の出力を加算して、式(5)の分子部分を得、加算器172は、乗算器154と乗算器164の出力を加算して、式(5)の分母部分を得る。そして、除算器173は、加算器171の出力を加算器172の出力で除算して、合成信号Dを得る。
【0070】
以上の説明から分かるように、合成部140は、各ブランチのFFT演算前の受信信号の強度の大小関係に応じて、受信信号の強度が小さいブランチほど該ブランチのサブキャリア信号に対して推定した伝送路応答の影響を弱めるようにして最大比合成の重付係数を補正する。
【0071】
通常、受信信号の強度が小さいほど、SNR(Signal to Noise Ratio)が小さいと考えられる。本実施の形態にかかる受信装置100は、サブキャリア毎に各ブランチのサブキャリア信号を最大比合成する際に、ブランチ間における受信信号の強度の大小関係に応じて、受信信号の強度が小さいブランチほど、すなわちSNRが小さいブランチほど、該ブランチに対して推定した伝送路応答が重付係数に与える影響を弱めるようにすることによって、合成信号Dの品質向上を図ることができる。
【0072】
また、受信装置100は、フーリエ演算前の受信信号の強度に応じて補正係数を取得し、同一のシンボルに含まれる全てのサブキャリア信号に同一の補正係数を適用している。そのため、特許文献2〜3に開示された技術のようにシンボル毎にC/N比を求める必要もなければ、特許文献4に開示されたようにサブキャリア毎にMERを求める必要もなく、演算量乃至回路規模の増大を抑制することができる。
【0073】
また、特許文献4に開示された技術は、サブキャリア毎にMERを算出する必要がある。MERを得るためには、理想のコンスタレーション位置と、各サブキャリアのIQ位置(IQ座標系における位置)とを比較してそれらの差を求める必要がある。変調方式がBPSK(Binary Phase Shift Keying:二位相偏移変調)/QPSK(Quaternary Phase Shift Keying:四位相偏移変調)である場合には、SNRが低くてもある程度の精度を保ちながらMERを判定することが可能である。しかし、例えば、変調方式がQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)である場合には、コンスタレーション点の間隔は狭いため、SNRが低いときには、理想ではないコンスタレーション位置との比較がなされる可能性が高いため、MERの算出精度が悪くなる。すなわち、該技術の効果は、変調方式に依存し、変調方式によっては、合成信号の品質を低下させてしまう恐れがある。
【0074】
対して、本実施の形態の受信装置100は、フーリエ変換前の受信信号の強度に応じて各ブランチの補正係数を求めるため、変調方式に依存せずに、合成信号の品質を高めることができる。
【0075】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の前に、まず、OFDM方式の伝送信号のフレームフォーマットを説明する。
【0076】
図3は、OFDM方式の伝送信号のフレームフォーマットを示す。分かりやすいように、該図において、各領域間に設けられたGI(GI:GUARD INTERVAL)を省略している。
【0077】
図3に示すように、OFDM方式の伝送信号の1フレームは、時系列に配列された同期信号部、ヘッダ(HEADER)、サービスデータ部を備える。同期信号部は、ショート・プリアンブル(SHORT PREAMBLE)、ロング・プリアンブル(LONG PREAMBLE)を有する。ヘッダは、データレートやデータ長さなどの情報が含まれる。また、サービスデータ部は、先頭のDATA1から末尾のDATA LASTまでの複数のデータ(分割データという)が含まれている。ヘッダは、1シンボルに該当し、1つの分割データの部分も、1シンボルに該当する。
【0078】
前述した第1の実施の形態の受信装置100は、フーリエ変換前の各ブランチの受信信号の強度の大小関係に応じて夫々のブランチの補正係数を求めて、フーリエ変換後に合成信号を得る際に用いる。
【0079】
例えば、A/D変換前の受信信号から受信強度を測定する場合に、受信装置100は、各ブランチの受信信号の強度を測定し、測定した強度に応じて求められた補正係数を、それ以降の各シンボルの合成に用いる。
【0080】
あるいは、例えば、各ブランチのシンボル毎に補正係数を求める場合に、受信装置100は、あるシンボル(「DATA1」とする)について、各ブランチのシンボル「DATA1」の強度の大小関係に応じてブランチ毎に補正係数を求め、そして、フーリエ演算後に、該シンボル「DATA1」に対して、サブキャリア毎に各ブランチのサブキャリア信号を重付加算する際に、各ブランチの重付係数を夫々のブランチに対して求められた上記補正係数で補正する。
【0081】
また、別のシンボル(「DATA2」とする)についても、各ブランチの受信信号における該シンボルの強度の大小関係に応じてブランチ毎に補正係数を求め、そして、フーリエ演算後に、該シンボル「DATA2」に対して、サブキャリア毎に各ブランチのサブキャリア信号を重付加算する際に、各ブランチの重付係数を夫々のブランチに対して求められた上記補正係数で補正する。
【0082】
すなわち、この場合、受信装置100は、シンボル毎に各ブランチの補正係数を求め、求められた各補正係数を、該シンボルに対応するサブキャリア信号の合成に用いている。
【0083】
上記補正係数は、シンボル毎ではなく、フレーム毎に求めてもよい。例えば、フーリエ変換前、同期処理後の各ブランチの相対応する各フレームの強度の大小関係に応じて、フレームの強度が小さいブランチほど小さい補正係数を求める。そして、サブキャリア信号の合成に際して、上記にて求められた各補正係数を、該フレームの全シンボルに適用する。
【0084】
「フレームの強度」は、例えば、フレームにおける所定の部位(例えば同期信号部)の強度とすることができる。
【0085】
こうすることにより、1フレームについて1つの補正係数を算出すればよいので、シンボル毎に補正係数を求める場合より演算量を減らすことができる。
【0086】
さらに望ましくは、ショート・プリアンブルの強度をフレームの強度として、各ブランチのショート・プリアンブルの強度から補正係数を求め、当該フレームの全シンボルに適用する。こうした場合、補正係数を求めるための演算量も回路規模をより抑制することができる。これについての理由を説明する。
【0087】
OFDM方式の伝送信号を受信する受信装置では、受信信号は、A/D変換によりデジタル信号に変換されてからフーリエ変換に供される。通常、復調しやすい最適な振幅のサブキャリア信号を得るために、A/D変換に際して、AGC(Auto Gain Control)と呼ばれる処理によりゲインの調整が行われる。
【0088】
上記AGCは、ショート・プリアンブルの部分の信号に基づいて行われる。すなわち、ショート・プリアンブルの強度に応じて、該フレームのA/D変換時のゲインが決まる。
【0089】
すなわち、上記AGCに際して、ショート・プリアンブルの受信信号強度が得られている。そのため、AGCの時に得られるショート・プリアンブルの受信信号強度を用いて補正係数を求めると、受信信号の強度を得るための手段を別途設ける必要が無くなり、演算量と回路規模を小さくすることができる。
【0090】
以上を踏まえて、第2の実施の形態を説明する。
図4は、第2の実施の形態にかかる受信装置200を示す。受信装置200も、OFDM方式の伝送信号をダイバシティ受信するものであり、補正係数算出部130と合成部140の代わりに補正係数算出部230と合成部240が設けられたことを除き、受信装置100と同様である。そのため、受信装置200について、補正係数算出部230と合成部240に関連がある点についてのみ説明する。
【0091】
受信装置200において、補正係数算出部230は、フロントエンド部112とフロントエンド部122がAGC処理を行う際に得られる受信信号強度に基づいて、フレーム毎に、各ブランチの補正係数を求めて合成部240に出力する。
【0092】
以下、フロントエンド部112とフロントエンド部122がAGC処理を行う際に得られる受信信号強度を夫々RSSI1(n)とRSSI2(n)で表記し、補正係数算出部230が第1のブランチと第2のブランチに対して算出した補正係数を夫々α1(n)とα2(n)で表記する。nは、フレームの番号を示す。
【0093】
フロントエンド部112とフロントエンド部122は、この種の受信装置に通常備えられているものと同様であり、それらの構成について、フロントエンド部112を代表にして説明する。
【0094】
図5は、フロントエンド部112を示す。フロントエンド部112は、A/D変換部211、AGC部212、フィルタ213、LP位置推定部214、AFC部215、位相補正部216を備える。
【0095】
A/D変換部211は、図中ADCであり、第1のブランチの受信信号R1をデジタル信号に変換する。
【0096】
AGC部212は、A/D変換部211が出力したデジタル信号におけるショート・プリアンブルの部分の振幅に基づいてAGCを行い、A/D変換部211に供される受信信号R1のゲインを調整する。また、AGCに際して、AGC部212は、RSSI1(n)を得る。本実施の形態において、このRSSI1(n)は、補正係数算出部230に出力される。
【0097】
フィルタ213は、ローパスフィルタであり、A/D変換部211からのデジタル信号をフィルタリングしてLP位置推定部214(LP:Long Preamble)とAFC部215に出力する。
【0098】
LP位置推定部(図中TD:TIMING DETECTION)214は、フィルタ213が出力した信号からショート・プリアンブルの末尾位置を検出してロング・プリアンブルのスタート位置を推定してFFT演算部114に通知する。
【0099】
AFC部(図中AFC:Automatic Frequency Control)215は、フィルタ213が出力した信号におけるショート・プリアンブルとロング・プリアンブルを用いて、CFOを推定する。
【0100】
位相補正部(図中PS:PHASE SHIFT)216は、AFC部215により推定されたCFOに基づいて、フィルタ213が出力した信号に対して位相補正を行う。
【0101】
LP位置推定部214により推定されたロング・プリアンブルのスタート位置を示す情報と、位相補正部216により位相補正された信号は、FFT演算部114に入力される。FFT演算部114は、LP位置推定部214により推定されたロング・プリアンブルのスタート位置に基づいて、フィルタ213が出力した信号に対してFFT演算を行って、該フレームの各シンボルのサブキャリア信号S1を得る。
【0102】
フロントエンド部122は、第2のブランチの受信信号R2に対して、フロントエンド部112と同様の処理を行う。その結果、フロントエンド部122からRSSI2(n)が得られる。このRSSI2(n)も、補正係数算出部230に出力される。
【0103】
図4に戻って説明する。
補正係数算出部230は、フレーム毎に、RSSI1(n)とRSSI2(n)の大小関係に応じて、受信信号強度が小さいブランチほど小さくなる補正係数を求める。
【0104】
例えば、補正係数算出部230は、受信信号強度が最も大きいブランチ(最強ブランチ)については、最大の補正係数を付与し、他の各ブランチについては、最強ブランチとの強度の差分に応じて、最大の補正係数以下の補正係数を求める。ここで、最大の補正係数が「1」であるとした場合を例にして説明する。
【0105】
この場合、補正係数算出部230は、例えば、下記の式(7)に従って、第1の補正係数α1(n)と第2の補正係数α2(n)を算出する。
【0107】
式(7)から分かるように、n番目のフレームについて、最強ブランチが第1のブランチである場合(RSSI1(n)>=RSSI2(n))、補正係数算出部230は、第1のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第1の補正係数α1(n)が「1」になる。また、補正係数算出部230は、第2のブランチについては、RSSI1(n)とRSSI2(n)の差分の絶対値「diffA(n)」から補正係数(α2(n))を算出する。
【0108】
一方、最強ブランチが第2のブランチである場合に(「else」すなわち「RSSI1(n)<RSSI2(n)」、補正係数算出部230は、第2のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第2の補正係数α2(n)が「1」になる。また、補正係数算出部230は、第1のブランチについては、「diffA(n)」から補正係数(α1(n))を算出する。
【0109】
合成部240は、サブキャリア信号S1とS2を重付加算することにより合成する際に、補正係数算出部230により求められた補正係数が小さいブランチほど、該ブランチのサブキャリア信号の伝送路応答の影響を弱めるようにして重付係数を求めて合成を行う。
【0110】
受信装置100において、合成部140は、補正係数算出部130によりシンボル毎に算出された補正係数を当該シンボルの各サブキャリアに適用する。対して、合成部240は、補正係数算出部230によりフレーム毎に算出された補正係数を、当該フレームの全てのシンボルの各サブキャリアに適用する。この点を除き、合成部240による具体的な合成手法は、合成部140と同様である。
【0111】
式(8)〜(9)は、合成部240が合成時に用いる合成演算式の例である。これらの式は、合成部140による合成演算式(式(5)、(6))に夫々対応する。
【0114】
式(8)〜(9)から分かるように、合成部240では、補正係数算出部230によりフレーム毎に求められた補正係数(α1(n)、α2(n))は、当該フレームの全てのシンボルの全てのサブキャリアに適用されている。
【0115】
このように、受信装置200は、受信装置100の各効果を得ることができると共に、受信装置100より、さらに、演算量を減らすことができる。
【0116】
<第3の実施の形態>
受信電力(受信信号の強度)が全般的に低い環境において、いずれのブランチの受信信号のSNRも比較的に低いため、最大比合成により得られた合成信号の品質は、これらのブランチのうちのSNRが低い方のブランチの影響により劣化してしまう。上述した受信装置100と受信装置200は、各ブランチの受信信号の強度の大小関係に応じた補正係数で最大比合成演算式の各項を補正することにより、この問題を解決している。
【0117】
一方、受信電力が全般的に高い環境には、いずれのブランチのSNRも比較的に高くなる。そのため、あるブランチについて、受信電力が高い環境と受信電力が低い環境で比較すると、該ブランチの受信電力と最強ブランチの受信電力との差分が同じであっても、該ブランチが合成信号を劣化させる程度は、受信電力の高い環境の場合において低くなる。
【0118】
また、携帯端末や車載受信装置など、フェージングが発生する環境では、ブランチ間において、受信信号の同期信号部の強度の大小関係と、サービスデータ部の受信信号の強度の大小関係とは、必ずしも一致するとは限らない。そのため、各ブランチの相対応するフレームの受信信号の同期信号部の強度の大小関係に応じて求められた補正係数を該フレームの全シンボルに適用すると、反って合成信号の品質を劣化させてしまう可能性がある。この問題は、受信電力の高い環境ほど顕著になる。
【0119】
第3の実施の形態にかかる受信装置300は、この問題を解決するために受信装置200に対して改良を加えたものである。
図6に示すように、受信装置300は、補正係数算出部230の代わりに補正係数算出部330が設けられた点を除き、受信装置200と同様である。そのため、受信装置300について、補正係数算出部330のみを説明する。
【0120】
補正係数算出部330の具体的な構成の前に、まず、補正係数算出部330による補正係数の算出手法を説明する。
【0121】
補正係数算出部330は、受信装置200における補正係数算出部230と同様に、フレーム毎に、各ブランチの受信信号の強度に基づいて夫々のブランチの補正係数を求める。また、受信信号の強度が最も大きいブランチ(最強ブランチ)については、最大の補正係数「1」を付与し、他の各ブランチについては、最強ブランチとの受信信号の強度の差分に応じて、1以下となる補正係数を求める点においても、補正係数算出部230と同様である。
【0122】
補正係数算出部230の場合、最強ブランチとの受信信号の強度の差分が同一であれば、同一の補正係数が求められる。対して、補正係数算出部330の場合には、最強ブランチとの受信信号の強度の差分が同一であっても、最強ブランチの受信信号の強度そのものが異なるときには、異なる補正係数が求められる。
【0123】
具体的には、補正係数算出部330は、最強ブランチ以外の各ブランチ間において、最強ブランチとの受信信号の強度の差分が大きいほど補正係数が小さくなる条件下で、最強ブランチの受信信号の強度が大きいほど大きくなるように補正係数を求める。式(10)は、補正係数算出部330による計算方法の一例を示す。
【0125】
式(10)から分かるように、n番目のフレームについて、最強ブランチが第1のブランチである場合(RSSI1(n)>=RSSI2(n))、補正係数算出部330は、第1のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第1の補正係数α1(n)が「1」になる。また、補正係数算出部330は、第2のブランチについては、RSSI1(n)とRSSI2(n)の絶対値「diffA(n)」に対してオフセット値(式中offset)を減算して得たdiffB(n)(以下「差分B」という)から補正係数(α2(n))を算出する。なお、補正係数算出部330は、算出した補正係数α2(n)が1より大きいときには、該補正係数α2(n)を「1」にする。
【0126】
一方、最強ブランチが第2のブランチである場合に(「else」すなわち「RSSI1(n)<RSSI2(n)」、補正係数算出部330は、第2のブランチに最大の補正係数「1」を付与するため、第2の補正係数α2(n)が「1」になる。また、補正係数算出部330は、第1のブランチについては、「diffA(n)」に対してオフセット値を減算して得た差分B(diffB(n))から補正係数(α1(n))を算出する。なお、補正係数算出部330は、算出した補正係数α1(n)が1より大きいときには、該補正係数α1(n)を「1」にする。
【0127】
式(10)におけるオフセット値は、最強ブランチの受信信号の強度に応じて設定された0以上の値である。具体的には、最強ブランチの受信信号の強度が大きいほど、大きいオフセット値が設定される。
【0128】
従って、最強ブランチの受信信号の強度が大きいほど、補正係数を求める際に用いられる差分Bは、本来の差分diffA(n)より小さくなる。そのため、該補正係数は、diffA(n)により求められた補正係数より大きくなる。
【0129】
すなわち、補正係数算出部330は、最強ブランチの受信信号の強度を、受信環境全体の受信電力の強度を示す指標値として用い、最強ブランチの受信信号の強度が大きいほど、他の各ブランチの受信信号の強度から求められた補正係数による補正の強度を弱める。
【0130】
こうすることにより、合成信号を得る際に、受信環境全体の受信電力の強弱に応じて重付係数を補正することができ、ひいては、合成信号の品質をより高めることができると共に、フェージング環境においても、合成信号の品質の劣化を抑制することができる。
【0131】
以上を踏まえて、補正係数算出部330の具体的な構成を説明する。
図6に示すように、補正係数算出部330は、LUT記憶部340とLUT選択部350を備える。
【0132】
LUT記憶部340は、複数のルック・アップ・テーブル(LUT:Look Up Table)を格納している。夫々のLUTは、最強ブランチ以外の各ブランチの補正係数を算出するための、補正係数と、diffAとを対応付けたものである。
【0133】
図7は、LUT記憶部340に格納された4つのLUT(LUT1〜LUT4)の例を示す。LUT1は、オフセットを0dBとしたときに、式(10)に従ってdiffA(最強ブランチとの受信信号の強度の差分の絶対値)毎に算出された補正係数である。LUT2は、オフセットを5dBとしたときに、式(10)に従ってdiffA毎に算出された補正係数である。LUT3は、オフセットを10dBとしたときに、式(10)に従ってdiffA毎に算出された補正係数である。LUT4は、オフセットを15dBとしたときに、式(10)に従ってdiffA毎に算出された補正係数である。LUTの数は、4に限られることが無いが、それ以上増やしても、シングル受信の特性に近付き過ぎるため、4つ程度が妥当である。
【0134】
補正係数算出部330におけるLUT選択部350は、最強ブランチの受信信号の強度(RSSI(max))に応じて、LUT1〜LUT4のうちの1つを選択する。例えば、RSSI(max)が閾値T1以下である場合には、LUT選択部350は、最小のオフセット(0dB)に対応するLUT(LUT1)を選択する。
【0135】
また、RSSI(max)が閾値T1より大きく、閾値T2以下である場合には、LUT選択部350は、2番目に小さいオフセット(5dB)に対応するLUT(LUT2)を選択する。同様に、LUT選択部350は、RSSI(max)が閾値T2より大きく、閾値T3以下である場合には、LUT3を選択し、RSSI(max)が閾値T3より大きい場合には、最大のオフセット(15dB)に対応するLUT4を選択する。
【0136】
補正係数算出部330は、最強ブランチについては補正係数「1」を付与し、他のブランチについては、LUT選択部350により選択されたLUTを用いて、diffA(n)に対応する補正係数を求める。
【0137】
図8は、受信装置300における補正係数算出部330によりn番目のフレームに対して補正係数を算出する処理のフローチャートである。n番目のフレームを受信すると(S100)、補正係数算出部330は、フロントエンド部112とフロントエンド部122から該フレームのRSSI1(n)とRSSI2(n)を取得し、RSSI1(n)とRSSI2(n)の差分の絶対値diffAを算出する(S102、S104)。
【0138】
RSSI1(n)とRSSI2(n)間に差が無ければ(S110:Yes)、補正係数算出部330は、第1の補正係数α1(n)と第2の補正係数α2(n)のいずれにも「1」を付与する(S112)。その結果、合成部240は、該フレームの各シンボルについてサブキャリア毎に合成信号Dを得る際に、最大比合成演算式で合成を行う。
【0139】
一方、RSSI1(n)とRSSI2(n)間に差がある場合に(S110:No)、補正係数算出部330は、最強ブランチが第1のブランチであるときには(S120:Yes)、RSSI1(n)をRSSI(max)として、RSSI1(n)に基づいて、LUT1〜LUT4から1つのLUTを選択する(S122)。そして、第1の補正係数α1(n)に「1」を付与すると共に、ステップS122で選択したLUTから、ステップS104で算出したdiffAに対応する補正係数を第2の補正係数α2(n)として選択する(S124)。その結果、合成部240は、該フレームの各シンボルについてサブキャリア毎に合成信号Dを得る際に、最大比合成演算式の分子と分母における、第2のブランチに対応する各項を第2の補正係数α2(n)で補正して得た合成演算式で合成を行う。
【0140】
最強ブランチが第2のブランチであるときには(S120:No)、補正係数算出部330は、RSSI2(n)をRSSI(max)として、RSSI2(n)に基づいて、LUT1〜LUT4から1つのLUTを選択する(S132)。そして、第2の補正係数α2(n)に「1」を付与すると共に、ステップS132で選択したLUTから、ステップS104で算出したdiffAに対応する補正係数を第1の補正係数α1(n)として選択する(S134)。その結果、合成部240は、該フレームの各シンボルについてサブキャリア毎に合成信号Dを得る際に、最大比合成演算式の分子と分母における、第1のブランチに対応する各項を第1の補正係数α1(n)で補正して得た合成演算式で合成を行う。
【0141】
<第4の実施の形態>
前述したように、第3の実施の形態の受信装置300における補正係数算出部330は、閾値T1〜T3に基づいて、最強ブランチの受信信号の強度(RSSI(max))が属する強度範囲を特定して補正係数を算出するためのLUTを選択する。ここでは、上記閾値T1〜T3の設定に関する構成を備えた実施の形態を説明する。
【0142】
図9は、第4の実施の形態にかかる受信装置400を示す。受信装置400も、OFDM方式の伝送信号をダイバシティ受信するものであり、ここでは、受信装置300と異なる点についてのみ説明する。また、受信装置400の動作についても、閾値調整時についてのみ説明する。
【0143】
受信装置400では、補正係数算出部330の代わりに補正係数算出部430が設けられている。また、受信装置400では、補正係数算出部430が、閾値T1〜T3を調整する際に合成信号Dの復号結果を使用するため、
図9において、合成信号Dの復号などの処理を行うバックエンド部490を示している。バックエンド部490は、ビタビ復号器など、通常のこの種の受信装置に備えられる復号器を有する。また、受信装置400は、補正係数算出部430に後述する各種情報を入力するための制御部470と、バックエンド部490が出力した復号結果に対してCRC(Cyclic Redundancy Check)処理を行い、その結果(OKかNGか)を出力するMAC部480(MAC:Media Access Comtrol)を備える。なお、MAC部480によるCRC処理の結果は、制御部470にも入力される。
【0144】
さらに、アンテナ110とアンテナ120は、有線により外部と接続されており、閾値設定時には、有線接続により外部から受信信号R1と受信信号R2を夫々供され、それらをフロントエンド部112とフロントエンド部122に出力する。
【0145】
制御部470には、外部から、モード信号とLUT番号(ここでは1〜4の4つ)が入力され、MAC部480からCRC処理の結果が入力される。
【0146】
補正係数算出部430には、RSSI1(n)とRSSI2(n)以外に、さらに、制御部470からも種々の入力がなされる。
制御部470から補正係数算出部430に入力される情報については、補正係数算出部430の詳細構成と共に説明する。
【0147】
図10は、補正係数算出部430の構成例を示す。補正係数算出部430は、最強ブランチ判別部431、差分算出部432、LUT記憶部434、LUT選択部435、補正係数出力部436、セレクタ442、閾値調整部450を有する。閾値調整部450は、保存部451と閾値決定部452を備える。
【0148】
モード信号は、補正係数算出部430の動作モードを指示する信号であり、「1」であるときには「閾値調整モード」を示し、「0」であるときには「通常動作モード」を示す。このモード信号は、外部から制御部470に入力され、制御部470により補正係数算出部430に送信される。
【0149】
通常動作モードのときには、補正係数算出部430は、受信装置300における補正係数算出部330と同様の動作をする。
【0150】
閾値調整モードのときには、補正係数算出部430は、LUT1〜LUT4を選択するための、RSSI(max)の強度範囲を特定する閾値T1〜閾値T3を調整する。
【0151】
補正係数算出部430の各機能ブロックを具体的に説明する。
最強ブランチ判別部431は、RSSI1(n)とRSSI2(n)が入力され、RSSI1(n)とRSSI2(n)のうちの大きい方(RSSI(max))を選択してLUT選択部435に出力すると共に、当該ブランチの番号(最強ブランチ番号)を補正係数出力部436に出力する。
【0152】
差分算出部432は、RSSI1(n)とRSSI2(n)が入力され、それらの差分の絶対値diffA(n)を算出してLUT記憶部434に出力する。
【0153】
LUT記憶部434には、受信装置300における補正係数算出部330のLUT記憶部340に格納されたLUT1〜LUT4と同様の4つのLUTが格納されている。LUT記憶部434は、セレクタ442からのLUT番号が示すLUTから、差分算出部432からのdiffAに対応する補正係数(α0)を選択して補正係数出力部436に出力する。
【0154】
補正係数出力部436は、第1のブランチと第2のブランチのうちの、最強ブランチ判別部431からの最強ブランチ番号が示すブランチ(最強ブランチ)の補正係数として「1」を出力し、最強ブランチとは別のブランチの補正係数としてLUT記憶部434からの補正係数α0を出力する。
【0155】
最強ブランチ判別部431が出力したRSSI(max)は、LUT選択部435にも入力される。LUT選択部435は、閾値T1〜閾値T3を保持しており、これらの閾値に基づいて、RSSI(max)が属する範囲を特定することにより、LUT1〜LUT4から1つのLUTを選択する。LUT選択部435は、選択したLUTの番号をセレクタ442に出力する。また、LUT選択部435は、閾値調整部450から閾値T1〜閾値T3を受信したときに、受信したこれらの閾値で、保持中の各閾値を夫々更新する。
【0156】
閾値の設定時に、外部から制御部470に、LUT1〜LUT4を夫々示す番号1〜4が順次入力される。制御部470は、外部から入力された番号を補正係数算出部430のセレクタ442に転送する。
【0157】
セレクタ442は、モード信号に応じて、制御部470からのLUT番号と、LUT選択部435の出力のうちの一方を選択して出力する。具体的には、モード信号が「1」であるときには制御部470からのLUT番号を出力し、モード信号が「0」であるときにはLUT選択部435からの番号を出力する。セレクタ442が出力したLUT番号は、LUT記憶部434と閾値調整部450に入力される。
【0158】
閾値調整部450は、モード信号が「1」であるときにのみ動作し、LUT選択部435に閾値T1〜閾値T3を出力する。
【0159】
閾値調整部450の保存部451は、制御部470からCRC積算結果が入力され、それを保存する。このCRC積算結果は、制御部470が、MAC部480からのCRC処理の結果のうちの、「OK」であるチェック結果を積算して得たものである。以下において、「OK」であるCRC処理の結果を積算して得たものを単に「CRC積算結果」と表記する。
【0160】
保存部451は、セレクタ442からのLUT番号と、最強ブランチ判別部431からのRSSI(max)とに対応付けて保存する。
【0161】
閾値決定部452は、保存部451に保存されたデータに基づいて閾値T1〜閾値T3を決定してLUT選択部435に出力する。
図11を参照して閾値決定部452が閾値T1〜閾値T3を決定する際の具体的な手法を説明する。
【0162】
図11は、保存部451が取得して保存したデータの例を示す。図中左端の欄は、最強ブランチの受信信号の強度(RSSI(max)を示し、最小値と最大値が夫々P0とPMである。また、A1、A2、A3、A4は、CRC積算結果であり、Aに続く数字は、該CRC積算結果が得られたときに使用したLUTの番号である。また、A1、A2などに続く括弧内の英数字は、該CRC積算結果が得られたときのRSSI(max)である。例えば、A1(P0)は、RSSI(max)がP0であり、LUT1が用いられたときのCRC積算結果を示す。
【0163】
閾値決定部452は、
図11に示すデータから閾値T1〜閾値T3を決定する。具体的には、まず、LUT1とLUT2間でCRC積算結果を比較し、CRC積算結果の大小関係が逆転する境界のRSSI(max)を閾値T1に決定する。
図11に示す例では、RSSI(max)がP0以上(P0+n1)以下であるときに、A1がA2以上であり、RSSI(max)が(P0+n1+1)以上になったときに、A1がA2より小さくなる。そのため、閾値決定部452は、(P0+n1)を閾値T1に決定する。
【0164】
次に、閾値決定部452は、LUT2とLUT3間でCRC積算結果を比較し、CRC積算結果の大小関係が逆転する境界のRSSI(max)を閾値T2に決定する。
図11に示す例では、RSSI(max)がP0以上(P0+n2)以下であるときに、A2がA3以上であり、RSSI(max)が(P0+n2+1)以上になったときに、A2がA3より小さくなる。そのため、閾値決定部452は、(P0+n2)を閾値T2に決定する。
【0165】
最後に、閾値決定部452は、LUT3とLUT4間でCRC積算結果を比較し、CRC積算結果の大小関係が逆転する境界のRSSI(max)を閾値T3に決定する。
図11に示す例では、RSSI(max)がP0以上(P0+n3)以下であるときに、A3がA4以上であり、RSSI(max)が(P0+n3+1)以上になったときに、A3がA4より小さくなる。そのため、閾値決定部452は、(P0+n3)を閾値T3に決定する。
【0166】
このようにして閾値T1〜閾値T3を設定すると、RSSI(max)がP0以上(P0+n1)以下であるときにLUT1を用いればCRC積算結果が最も高く、RSSI(max)が(P0+n1)より大きく、(P0+n2)以下であるときにLUT2を用いればCRC積算結果が最も高い。同様に、RSSI(max)が(P0+n2)より大きく、(P0+n3)以下であるときにLUT3を用いればCRC積算結果が最も高く、RSSI(max)が(P0+n3)より大きいときにLUT4を用いればCRC積算結果が最も高い。
【0167】
図12は、補正係数算出部430が閾値T1〜閾値T3を決定する処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、モード信号が「1」であるときに行われる。なお、モード信号が「0」であるときには、補正係数算出部430が、受信装置300における補正係数算出部330と同様の動作をするため、この場合について説明を省略する。
【0168】
図12の示すフローチャートは、受信装置400に閾値T1〜閾値T3の調整を行わせる際に、RSSI(max)が最小値P0から最大値PMまでの各値の夫々になるように受信装置400にフレームを順次送信することをLUTの個数分(ここでは4)回繰り返す場合の例である。図示のように、まず、RSSI(max)が最小値P0となるようにフレームが受信装置400に送信される(S202、S204)。例えば、
図12に示すように、ブランチ1を最強ブランチとし、ブランチ1については、受信信号の強度が(P0+m2)(ここでは、m2が0となる)になり、ブランチ2については、受信信号の強度が(P0−Pd+m2)になるように受信信号R1と受信信号R2を受信装置400に送信する。なお、Pdは、ブランチ1とブランチ2の受信信号の強度の差分である。
【0169】
このとき、制御部470を介して補正係数算出部430のセレクタ442にLUT番号「1」が入力され、セレクタ442は、それをLUT記憶部434に出力する(S206)。また、差分算出部432は、diffAを算出する(S208)。
【0170】
次いで、第1のブランチと第2のブランチの補正係数α1と補正係数α2が得られる(S210)。具体的には、最強ブランチの補正係数として「1」が付与され、別のブランチの補正係数として、ステップS206でセレクタ442が出力したLUT番号に対応するLUT(LUTm1、ここではLUT1)から、ステップS208で算出したdiffAに対応する補正係数が得られる。
【0171】
そして、MAC部480により、補正係数α1と補正係数α2を用いて得られた合成信号の復号結果に対するCRC処理がなされ、制御部470によりCRC積算結果が算出され、保存部451に入力される。保存部451は、制御部470からのCRC積算結果を、LUT1とP0に対応付けて保存する(S212)。
【0172】
そして、次の受信フレームに対して、ステップS206〜ステップS212の処理が繰り返され、保存部451により、LUT1と(P0+1)とに対応付けてCRC積算結果が保存される(S214:No、S216、S204〜S212)。
【0173】
その後、RSSI(max)が最大値PMになるまで、ステップS206〜ステップS212の処理が繰り返される。
【0174】
その結果、
図11における、LUT1についての、RSSI(max)の異なる値毎のCRC積算結果(A1)が得られる。
【0175】
続いて、外部からのLUT番号が1つインクリメントされ(S220:No、S224)、ステップS202〜S212の処理は、LUT2について繰り返される。
【0176】
その結果、
図11における、LUT2についての、RSSI(max)の異なる値毎のCRC積算結果(A2)が得られる。
【0177】
その後、ステップS202〜S212の処理は、LUT3とLUT4についても繰り返され、
図11における各A3と各A4が得られる。
【0178】
<第5の実施の形態>
図13は、第5の実施の形態にかかる通信システム500を示す。通信システム500は、通信装置510と、複数の通信装置520を備える。通信システム500は、移動体向けの通信システムであり、例えば、通信装置510は道路の横に固設された通信装置であり、通行する車に積載された通信装置と送受信し、通信装置520は車積の通信装置であり、通信装置510及び他の車に積載された通信装置520と送受信を行う。
【0179】
通信装置510と通信装置520は、同様の構成とすることができ、ここで通信装置520を代表にして説明する。
図14は、通信装置520を示す。通信装置520は、2つのアンテナ(アンテナ110、120)、RF(Radio Frequency)部530、ベースバンド部550、MAC(Media Access Control)部800を備える。通信装置520は、受信時において、2ブランチのダイバシティ受信を行う。
【0180】
RF部530は、第1のブランチ用のRF部532と、第2のブランチ用のRF部542を備える。RF部532は、アンテナ110が受信した信号(第1のブランチの信号)に対して周波数帯域の変換などを行ってベースバンド部550の受信部600に出力し、RF部542は、アンテナ120が受信した信号(第2のブランチの信号)に対して周波数帯域の変換などを行って受信部600に出力する。
【0181】
ベースバンド部550は、受信部600と送信部700を備える。
受信部600は、例えば
図6に示す受信装置300である。受信部600におけるフロントエンド部612、FFT演算部614、伝送路応答推定部616は、受信装置300におけるフロントエンド部112、FFT演算部114、伝送路応答推定部116と夫々同様である。
【0182】
また、受信部600におけるフロントエンド部622、伝送路応答推定部626も、受信装置300におけるフロントエンド部122、伝送路応答推定部126と夫々同様である。
【0183】
FFT/IFFT演算部624は、受信装置300におけるFFT演算部124と同様の機能以外に、逆高速フーリエ変換(IFFT)機能を備える。このIFFT機能は、通信装置520による送信時に使用される。つまり、FFT/IFFT演算部624のFFT演算機能部分は、受信部600に含まれ、そのIFFT演算機能部分は、送信部700に含まれる。
【0184】
また、受信部600における補正係数算出部630と合成部640も、受信装置300における補正係数算出部330と合成部240と夫々同様である。
【0185】
バックエンド部650は、合成部640が得た合成信号Dに対してビタビ復号などの処理を行い、復号結果をMAC部800に出力する。
【0186】
送信部700は、フロントエンド部710、FFT/IFFT演算部624のIFFT演算機能部分、バックエンド部720を備える。
【0187】
フロントエンド部710は、MAC部800から送信情報を受け取り、符号化などの処理を行ってサブキャリア信号を得てFFT/IFFT演算部624に出力する。
【0188】
FFT/IFFT演算部624は、フロントエンド部710の出力に対してIFFT演算を行って、時間領域のシンボル信号を得てバックエンド部720に出力する。
【0189】
バックエンド部720は、FFT/IFFT演算部624の出力をOFDM方式の信号に変換してRF部542に出力する。
【0190】
RF部542は、バックエンド部720の信号に対して受信時とは逆の周波数帯域の変換処理を行って、処理後の信号を、アンテナ120を介して送出する。
【0191】
MAC部800は、MAC層の処理を行うものであり、この種の通信装置に備えられたものと同様であり、ここで詳細な説明を省略する。
【0192】
なお、通信システム500において、例として、受信部600として受信装置300を用いたが、前述したいずれの実施の形態にかかる受信装置も、受信部600として用いてもよい。勿論、用いられる受信装置の全ての効果も得ることができる。
【0193】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。