(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918687
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】垂直コンベヤおよびディスクプーリ
(51)【国際特許分類】
B65G 15/40 20060101AFI20160428BHJP
B65G 23/04 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
B65G15/40
B65G23/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-264016(P2012-264016)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-108863(P2014-108863A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 邦博
(72)【発明者】
【氏名】松浦 浩希
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−030610(JP,U)
【文献】
実開昭51−126581(JP,U)
【文献】
特開平03−162306(JP,A)
【文献】
実開平04−019511(JP,U)
【文献】
特開昭53−008973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 13/00−13/12
B65G 15/30−15/58
B65G 23/00−23/44
B65G 39/00−39/20
F16H 55/32−55/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部の表面に一対の波桟が設けられかつ前記波桟の間に複数の横桟が配列された搬送ベルトと、
前記一対の波桟の外側で前記ベース部の表面を支持する一対のディスクを含むディスクプーリと、を備え、
前記一対のディスクのそれぞれには、当該ディスクの外周面を覆うライニング材が着脱可能に取り付けられており、
前記ライニング材は、金属からなり、周方向に並ぶ複数の円弧片に分割されている、垂直コンベヤ。
【請求項2】
前記一対のディスクのそれぞれは、当該ディスクの外周面を構成する外板を有し、
前記複数の円弧片のそれぞれの内側面には、前記外板を貫通するボルトが立設されており、このボルトに螺合するナットにより前記円弧片が前記ディスクに固定されている、請求項1に記載の垂直コンベヤ。
【請求項3】
ベース部の表面に一対の波桟が設けられた搬送ベルトと、
前記一対の波桟の外側で前記ベース部の表面を支持する一対のディスクを含むディスクプーリと、を備え、
前記一対のディスクのそれぞれには、当該ディスクの外周面を覆うライニング材が着脱可能に取り付けられており、前記ライニング材は、周方向に並ぶ複数の円弧片に分割されており、
前記一対のディスクのそれぞれの外周面には、前記一対の波桟と反対側の端部に突起が設けられており、この突起によって前記複数の円弧片が位置決めされている、垂直コンベヤ。
【請求項4】
一対のディスクと、
前記一対のディスクを貫通するシャフトと、
前記一対のディスクのそれぞれに着脱可能に取り付けられた、当該ディスクの外周面を覆うライニング材と、を備え、
前記ライニング材は、金属からなり、周方向に並ぶ複数の円弧片に分割されている、ディスクプーリ。
【請求項5】
前記一対のディスクのそれぞれは、当該ディスクの外周面を構成する外板を有し、
前記複数の円弧片のそれぞれの内側面には、前記外板を貫通するボルトが立設されており、このボルトに螺合するナットにより前記円弧片が前記ディスクに固定されている、請求項4に記載のディスクプーリ。
【請求項6】
一対のディスクと、
前記一対のディスクを貫通するシャフトと、
前記一対のディスクのそれぞれに着脱可能に取り付けられた、当該ディスクの外周面を
覆うライニング材と、を備え、
前記ライニング材は、周方向に並ぶ複数の円弧片に分割されており、
前記一対のディスクのそれぞれの外周面には、前記一対の波桟と反対側の端部に突起が設けられており、この突起によって前記ライニング材が位置決めされている、ディスクプーリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭や土砂などの搬送物を狭いスペースで高所に搬送する垂直コンベヤ(例えば、横桟付ベルトコンベヤ)、およびその垂直コンベヤに好適に用いられるディスクプーリに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直コンベヤでは、シート状のベース部の表面に一対の波桟が設けられた搬送ベルトが用いられる。波桟の間に配列される横桟は、通常は搬送ベルトに取り付けられるが(例えば、特許文献1参照)、垂直搬送部において搬送ベルトに対向して配置された押えベルトに取り付けられることもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
搬送ベルトの表側にプーリを配置する場合、一対の波桟の外側でベース部の表面を支持する必要があるため、一対のディスクを含むディスクプーリと呼ばれる特別なタイプのプーリが使用される。例えば、ディスクプーリは、ヘッドプーリの直ぐ下流側に配置され、ベルトの進行方向を横向きから下向きに変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−68970号公報
【特許文献2】特開2003−226413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
垂直コンベヤが長期間稼動すると、ディスクプーリのディスクの外周面が摩耗する。例えば、ディスクの外周面が筒状の外板で構成されている場合には、外周面の摩耗により外板の肉厚が減少して、ベルトを支持するための強度が低下する。そのため、ディスクの外周面の摩耗量がある程度大きくなったときには、摩耗したディスクプーリを新たなディスクプーリと交換する必要がある。しかしながら、ディスクプーリを交換するには予備のディスクプーリを準備する必要があり、交換作業に要する労力も大きく、メンテナンスに多くの費用と時間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、ディスクプーリ自体の交換を行わずにメンテナンス費用を削減することができる垂直コンベヤ、およびこの垂直コンベヤに好適に用いられるディスクプーリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の垂直コンベヤは、ベース部の表面に一対の波桟が設けられた搬送ベルトと、前記一対の波桟の外側で前記ベース部の表面を支持する一対のディスクを含むディスクプーリと、を備え、前記一対のディスクのそれぞれには、当該ディスクの外周面を覆うライニング材が着脱可能に取り付けられている。
【0008】
上記の構成によれば、垂直コンベヤの長期間の稼動によりライニング材が摩耗した場合には、ディスクプーリ自体は交換せずに、ライニング材のみを交換することができる。従って、従来の垂直コンベヤのように予備のディスクプーリを準備する必要がない。また、ディスクプーリを交換するにはそれを回転可能に支持する軸受をディスクプーリから取り外し、その軸受を新たなディスクプーリに取り付ける必要があるが、ライニング材の交換ではディスクプーリからの軸受の取り外しは必要ないため、交換作業自体も簡易なものとなる。従って、メンテナンス費用を大幅に削減することができる。
【0009】
前記ライニング材は、周方向に並ぶ複数の円弧片に分割されていてもよい。この構成によれば、ディスクプーリに搬送ベルトが巻き付いたままでもライニング材を交換することができる。従って、交換作業をより簡易にすることができ、メンテナンス費用をさらに削減することができる。
【0010】
前記一対のディスクのそれぞれは、当該ディスクの外周面を構成する外板を有し、前記複数の円弧片のそれぞれの内側面には、前記外板を貫通するボルトが立設されており、このボルトに螺合するナットにより前記円弧片が前記ディスクに固定されていてもよい。この構成によれば、ナットの操作だけでライニング材を交換することができる。
【0011】
前記一対のディスクのそれぞれの外周面には、前記一対の波桟と反対側の端部に突起が設けられており、この突起によって前記複数の円弧片が位置決めされていてもよい。この構成によれば、ライニング材の交換の際にディスクの外周面の突起をガイドとして使用することができるため、円弧片を正規の位置に容易に配置することができる。
【0012】
前記ライニング材は、ステンレス鋼からなっていてもよい。この構成によれば、ライニング材が一般的な鋼材(SS材)からなる場合に比べて、耐摩耗性および耐腐食性を向上させることができ、ライニング材の交換頻度を低減することができる。
【0013】
また、本発明のディスクプーリは、一対のディスクと、前記一対のディスクを貫通するシャフトと、前記一対のディスクのそれぞれに着脱可能に取り付けられた、当該ディスクの外周面を覆うライニング材と、を備え、前記ライニング材は、周方向に並ぶ複数の円弧片に分割されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディスクプーリ自体の交換を行わずに垂直コンベヤのメンテナンス費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る垂直コンベヤの構成図
【
図2】
図1に示す垂直コンベヤに用いられるベルトの、ディスクプーリが配置された位置での断面図
【
図4】(a)は
図3のIVA−IVA線に沿った断面図、(b)は(a)に示す部分を径方向内側から見た図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る垂直コンベヤ1を示す。この垂直コンベヤ1は、搬送物を受ける第1水平搬送部1Aと、第1水平搬送部1Aから上向きに延びる垂直搬送部1Bと、垂直搬送部1Bの上部から横向きに折れ曲がる第2水平搬送部1Cとを備えている。なお、垂直搬送部1Bは、必ずしも鉛直方向と平行である必要はなく、水平方向に対して急傾斜となっていてもよい。
【0018】
第1水平搬送部1Aの末端にはテールプーリ12が配置され、第2水平搬送部1Cの末端にはヘッドプーリ11が配置されている。そして、これらのプーリ11,12に、エンドレスの搬送ベルト2が架け渡されている。テールプーリ12は、搬送ベルト2を張ったり緩めたりできるように水平方向に移動可能である。
【0019】
搬送コンベヤ1のキャリア側では、第1水平搬送部1Aと垂直搬送部1Bの間のコーナー部および垂直搬送部1Bと第2水平搬送部1Cの間のコーナー部にディスクプーリ3およびベントローラ15がそれぞれ配置され、第1水平搬送部1Aおよび第2水平搬送部1Cにキャリアローラ14が配置されている。一方、搬送コンベヤ1のリターン側では、第2水平搬送部1Cと垂直搬送部1Bの間のコーナー部および垂直搬送部1Bと第1水平搬送部1Aの間のコーナー部にディスクプーリ3およびベントプーリ13がそれぞれ配置され、第1水平搬送部1Aにリターンローラ16が配置されている。
【0020】
ただし、プーリおよびローラの配置は
図1に示すものに限られない。例えば、搬送コンベヤ1のキャリア側では、第1水平搬送部1Aと垂直搬送部1Bの間のコーナー部に、ディスクプーリ3の代わりに複数のベントローラが配置されていてもよい。
【0021】
搬送ベルト2は、
図2に示すように、表面および裏面を有するシート状のベース部21と、ベース部21の表面に設けられた一対の波桟22および横桟23とを含む。一対の波桟22は、搬送ベルト2の幅方向に互いに離間している。各波桟22は、搬送ベルト2の屈曲部において伸縮可能なように搬送ベルト2の長手方向に蛇行している。一方、横桟23は、波桟22の間で搬送ベルト2の長手方向に所定のピッチで配列されている。なお、横桟23は、特許文献2に記載されているように、垂直搬送部1Bにおいて搬送ベルト2に対向して配置された押えベルトに取り付けられていてもよい。
【0022】
搬送ベルト2の進行方向を横向きから下向きまたは上向きに変更するディスクプーリ3は、搬送ベルト2の幅方向に互いに離間する一対の円形のディスク32と、これらのディスク32を貫通するシャフト31とを含む。各ディスク32は、波桟22の外側で搬送ベルト2のベース部21の表面を支持する。シャフト31の両端部は、図略の軸受により回転可能に支持される。
【0023】
より詳しくは、各ディスク32は、
図2および
図3に示すように、シャフト31と嵌合する厚肉筒状の中心部33と、当該ディスク32の外周面を構成する、中心部33と同心の薄肉筒状の外板35とを有している。中心部33と外板35の間には環状の連結板34が配置されており、この連結板34により中心部33および外板35の軸方向の中央部同士が連結されている。連結板34における搬送ベルト2の波桟22と反対側の主面には、中心部33から外板35まで放射状に延びる複数のリブ36が接合されており、連結板34には、適所に貫通穴34aが設けられている。
【0024】
各ディスク32には、当該ディスク32の外周面を覆うライニング材4が着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、ライニング材4が周方向に並ぶ複数(図例では8つ)の円弧片41に分割されている。
【0025】
図3および
図4(a)に示すように、各円弧片41の内側面には、周方向の両端部に、連結板34を挟んで離間するように一対のボルト42がそれぞれ立設されている。一方、外板35には、ボルト42と対応する位置に穴38が設けられている。穴38は、
図4(b)に示すように、周方向に延びる長穴である。そして、ボルト42は穴38に挿通されることにより外板35を貫通している。
【0026】
また、ボルト42にはナット6が螺合しており、このナット6が座金5を介して外板35を押圧することにより、円弧片41がディスク32に固定されている。
【0027】
本実施形態では、
図4(a)に示すように、ライニング材4の幅が外板35の幅よりも僅かに小さく設定されている。すなわち、各ディスク32の外周面における搬送ベルト2の波桟22と反対側の端部にはリング状の突起37が設けられている。そして、この突起37により、全ての円弧片41が位置決めされている。
【0028】
各円弧片41を構成する材料は特に限定されるものではなく、種々のものが採用可能である。例えば、ゴムなどの軟質材料を用いることも可能であるが、この場合にはライニング材4が早期に摩耗することが予想される。従って、各円弧片41を構成する材料としては、一般的な鋼材(SS材)やセラミックスなどの硬質材料を用いることが望ましい。硬質材料の中でも特にステンレス鋼を用いれば、一般的な鋼材を用いた場合に比べて耐摩耗性および耐腐食性を向上させることができ、ライニング材4の交換頻度を低減することができる。しかも、ステンレス鋼は、セラミックスに比べて加工性が良好である。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の垂直コンベヤ1では、垂直コンベヤ1の長期間の稼動によりライニング材4が摩耗した場合には、ディスクプーリ3自体は交換せずに、ライニング材4のみを交換することができる。従って、従来の垂直コンベヤのように予備のディスクプーリを準備する必要がない。また、ディスクプーリ3を交換するにはそれを回転可能に支持する軸受をディスクプーリ3から取り外し、その軸受を新たなディスクプーリに取り付ける必要があるが、ライニング材4の交換ではディスクプーリ3からの軸受の取り外しは必要ないため、交換作業自体も簡易なものとなる。従って、ディスクプーリ自体の交換を行わずにメンテナンス費用を大幅に削減することができる。
【0030】
ところで、ライニング材4は筒状の一体品であってもよいが、この場合には、搬送ベルト2がディスクプーリ3に作用する力を除去しなければライニング材4を交換することができない。しかしながら、ヘッドプーリ11の直ぐ下流側に配置されたディスクプーリ3には、テールプーリ12を移動させて搬送ベルト2を緩めたとしても、垂直搬送部1Bにおける搬送ベルト2の自重が作用したままである。従って、一体品のライニング材4を交換する際には、例えば垂直搬送部1Bの上部で搬送ベルト2を引っ張り上げて保持するなどの作業が必要になる。これに対し、ライニング材4が複数の円弧片41に分割されていれば、ディスクプーリ3に搬送ベルト2が巻き付いたままでライニング材4の交換作業ができる。従って、交換作業をより簡易にすることができ、メンテナンス費用をさらに削減することができる。
【0031】
また、本実施形態のように各円弧片41の内側面に外板35を貫通するボルト42が立設されていれば、ボルト42に螺合するナット6の操作だけでライニング材4を交換することができる。
【0032】
さらに、本実施形態のようにディスク32の外周面の端部に突起37が設けられていれば、ライニング材4の交換の際に突起37をガイドとして使用することができるため、円弧片41を正規の位置に容易に配置することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 垂直コンベヤ
2 搬送ベルト
21 ベース部
22 波桟
23 横桟
3 ディスクプーリ
31 シャフト
32 ディスク
35 外板
37 突起
4 ライニング材
41 円弧片
42 ボルト
6 ナット