(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
他の可変容量型ポンプの吐出圧力を導入する吐出圧力導入室を軸方向に離れて更に備え、前記調圧部側に自己圧力を導入する自己圧力導入室を有し、前記自己圧力導入室の反調圧部側に相手圧力を導入する相手圧力導入室を有している請求項2に記載の可変容量型ポンプ用レギュレータ。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等の動力機械類(この明細書及び特許請求の範囲の書類では、これらの動力機械類(重機)を総称して「作業機械」という)が土木・建設工事などに使用されている。例えば、油圧ショベルを例に説明すると、油圧ショベルでは、上部旋回体の旋回駆動、バケットが先端に設けられたアーム、及びアームに連結されたブームなどアクチュエータの駆動などに油圧が利用されている。
【0003】
そして、このようなアクチュエータには、例えば、上部旋回体の場合には旋回速度、アームやブームの場合にはバケットで掬い上げる重量などに応じて必要動力を得るために、油圧ポンプから必要な流量の作動油が導入されている。また、アクチュエータの数や必要な動力などに応じて、複数台の油圧ポンプを備えたタンデム型油圧ポンプなどが用いられている。
【0004】
このような油圧ポンプには可変容量型ポンプが用いられており、その機能の一つとして、ポンプの消費動力を一定に保ちながらアクチュエータの駆動に必要な流量の作動油が得られるように制御する全馬力制御があり、その制御のため可変容量型ポンプにはレギュレータが設けられている。一般的なレギュレータでは、ポンプの自己圧力(吐出圧力)などの信号圧力によってスプールあるいはスリーブの位置が制御され、それらの位置に応じた圧力を有する圧油が調圧部に導かれ、その調圧部から制御圧力を有する圧油が出力されて油圧ポンプの容量調整が行われている。容量調整機構の一部品としてサーボピストンを用いた油圧ポンプでは、このサーボピストンの位置によって、必要動力を得るのに見合った吐出流量となるように可変容量型ポンプの容量が調整される。斜板形可変容量ポンプでの容量調整は斜板の傾転角によって行われる。
【0005】
例えば、この種の先行技術として、原動機で駆動される可変容量型ポンプと、この可変容量型ポンプの圧油で駆動する複数のアクチュエータと、複数のアクチュエータに操作を指令する操作指令手段の指令信号を検出する第1検出手段と、複数のアクチュエータの負荷を検出する第2検出手段と、原動機の基準目標回転数を指令する入力手段とを備え、基準目標回転数が低くなるに従って小さくなる回転数補正の基準幅を計算し、補正値補正手段で基準目標回転数の補正値を補正するようにしたオートアクセル装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このオートアクセル装置では、原動機で2台の可変容量型ポンプを駆動し、この可変容量型ポンプの容量をレギュレータで制御している。このレギュレータには、可変容量型ポンプの自己圧力と他の可変容量型ポンプの圧力とを導き、それらの圧力で動作する操作用ピストンによってスプールの位置が制御されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したような可変容量型ポンプのレギュレータでは、スプールに作用するポンプの吐出圧力(自己圧力)などの信号圧力に応じて調圧部より制御圧力を出力させることにより、サーボピストンを移動させてポンプ容量を変化させている。そして、ポンプが必要な傾転角に達するとサーボピストンに係合したフィードバックレバーでレギュレータのスリーブの位置を制御して、ポンプの傾転角が狙い値となるように制御されるようになっている。このような自己圧力によるスプールの位置制御と、フィードバックレバーを介して行うスリーブの位置制御とは常時行われており、これらによってレギュレータの調圧部からの制御圧力がサーボピストンに導かれ、油圧ポンプからの吐出流量が作業機械のアクチュエータの駆動に必要な流量に制御されている。
【0009】
しかしながら、上記したフィードバックレバーとスリーブとの係合部には係合ピンが設けられており、この係合ピンの接触部分が経年使用によって摩耗することがある。
【0010】
上記オートアクセル装置のレギュレータの場合、スプールの位置を制御する操作用ピストンがスプールとは別体であるため、上記スリーブには軸方向の付勢力が作用せず係合ピンと接する係合部にはスプールの動作方向に関係なく摩擦力などが作用し、その力によって方向性無く係合部は摩耗する。そして、この摩耗によって、係合ピンとその接触部分との間に隙間が生じ、この隙間がポンプの流量を増減させるレギュレータの制御圧力に対して所定幅の不感帯を生じさせ、その不感帯によって馬力制御に方向性のないヒステリシスを生じさせる。このヒステリシスは、経年使用による係合部の摩耗の進展によって増加する。
【0011】
図8は、油圧ポンプのレギュレータによる馬力制御特性を吐出圧力と流量との関係で示す線図であり、設計線である等馬力線100に近似するように制御線101が設定されている。この制御線101は、2本の制御バネを用いた場合の例を示しており、この馬力制御において途中で制御に用いている制御バネの本数を1本から2本に変化させることで制御線の傾きを変化させて、等馬力線100に制御線101が近似するようにしている。
【0012】
そのため、上記したようにスリーブとピンとの係合部が方向性無く摩耗した場合、図示するように、目標とする制御線101の流量に対して、実際の制御線102には、ヒステリシスが生じ、制御線を流量減少側あるいは流量増加側のいずれにも振れる場合がある。
【0013】
そして、吐出圧力に対する流量が等馬力線100の流量を越えるような場合、例えば、油圧ショベルの場合には、土砂の掘削積込み作業等のように、大きな馬力を要する作業を行う際、油圧ポンプの吐出流量が制御線どおりに減少せず、要求以上の吐出流量を吐出する結果、原動機の馬力に対し油圧ポンプの吸収馬力が超えることになり、原動機がストールあるいは作動が不安定となる可能性がある。
【0014】
このように、スリーブとフィードバックレバーとの係合部における摩耗によってポンプの吐出圧力に対する流量のヒステリシスが増えると、レギュレータの馬力制御が機能したときに、つまり、ポンプの吸収馬力を下げようと制御線101のようにポンプの吐出流量を減少させようとしてもヒステリシス分吐出流量が増加することになり、原動機のストールを生じる可能性が高くなる。
【0015】
そこで、本発明は、経年使用により油圧ポンプの馬力制御特性にて流量のヒステリシスが生じたとしても、安定した馬力制御ができる可変容量型ポンプ用レギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る可変容量型ポンプ用レギュレータは、原動機によって駆動される可変容量型ポンプの吐出流量を変化させるサーボピストンと、前記サーボピストンの位置を検知するフィードバックレバーと、制御バネによって一端方向へ付勢されたコンペンスプールと、前記コンペンスプールの周囲に位置し、該コンペンスプールの軸方向に移動するコンペンスリーブと、を備える可変容量型ポンプ用レギュレータであって、前記コンペンスリーブは、前記サーボピストンと前記フィードバックレバーとの作用によって、前記フィードバックレバーと前記コンペンスリーブとの係合部を介して前記コンペンスプールの軸方向に移動し、前記ポンプの吐出圧力を導入する吐出圧力導入室と、前記吐出圧力導入室から前記サーボピストンの大径受圧部に制御圧力を導く調圧部とが、前記コンペンスプールと前記コンペンスリーブによって形成され、前記コンペンスリーブは、前記吐出圧力導入室に導入した吐出圧力によって前記一端方向に圧力が作用する段部、を備えている。
【0017】
この構成により、コンペンスプールの周囲で軸方向に移動するコンペンスリーブに設けられた段部によって、吐出圧力導入室に導入した吐出圧力によりコンペンスリーブを反制御バネ方向(一端方向)に付勢するので、このコンペンスリーブに係合しているフィードバックレバーの係合部は常に反制御バネ方向に力が作用し、係合部の摩耗部位が限定される。これにより、経年使用によってフィードバックレバーとコンペンスリーブとの係合部の制御バネ側が摩耗したとしても、ポンプの馬力制御特性はポンプの吐出流量を低下させることになる。従って、フィードバックレバーの係合部が摩耗したとしても、原動機の馬力に対し、ポンプの馬力は超えることなく、安定した馬力制御を行って原動機のストールを生じないようにできる。
【0018】
また、前記段部は、前記コンペンスリーブの内径を小径にすることで、前記吐出圧力導入室の反調圧部側に形成されてもよい。
【0019】
このように構成すれば、吐出圧力導入室の反調圧部側を小径に形成することで段差を形成し、吐出圧力導入室に導入される吐出圧力によってコンペンスリーブが反制御バネ方向(一端方向)に付勢されるように、コンペンスリーブの調圧部側と反調圧部側とに受圧面積差を設けることができる。
【0020】
また、他の可変容量型ポンプの吐出圧力を導入する吐出圧力導入室を軸方向に離れて更に備え、前記調圧部側に自己圧力を導入する自己圧力導入室を有し、前記自己圧力導入室の反調圧部側に相手圧力を導入する相手圧力導入室を有していてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「自己圧力」は、複数のポンプを備えた構成における自己の可変容量型ポンプの吐出圧力をいい、「相手圧力」は、他の可変容量型ポンプの吐出圧力をいう。
【0021】
このように構成すれば、複数の可変容量型ポンプを備えた構成において、それぞれの吐出圧力に応じて原動機の馬力を超えないようにレギュレータでポンプ容量を変更することができる。
【0022】
また、前記相手圧力導入室は、前記自己圧力導入室よりも小径に形成され、前記コンペンスリーブは、前記相手圧力導入室に導入した相手圧力によって前記一端方向に圧力が作用する段部を更に備えていてもよい。
【0023】
このように構成すれば、複数の可変容量型ポンプを備えた構成において、自己圧力と相手圧力とに応じてポンプ容量を制御する構成においても、コンペンスリーブに常に反制御バネ方向(一端方向)に付勢する反力を作用させることができ、フィードバックレバーの係合部に常にポンプ容量が減少する側に向けて付勢する力を相手圧力導入室に導入した相手圧力によっても作用させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、経年使用してもポンプの容量が減少する側にしか摩耗等が起こらないので、経年使用によっても安定した馬力制御ができる可変容量型ポンプ用レギュレータを構成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、タンデム型ポンプなどの斜板形ダブルポンプの1台のポンプのみを図示し、図示するポンプの吐出圧力を「自己圧力Pd」、他のポンプの吐出圧力を「相手圧力P2」という。また、可変容量型ポンプの馬力制御に関する部分のみを図示して説明する。さらに、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における上下左右方向の概念は、
図2に示すレギュレータの断面図における上下左右方向の概念と一致するものとする。
【0027】
図1に示すように、原動機1により駆動される可変容量型ポンプ2(以下、単に「ポンプ2」という)は、斜板の傾転角がレギュレータ10によって制御されて吐出流量が調整されている。このレギュレータ10は、サーボピストン21と、サーボピストン21に係合されたフィードバックレバー24と、制御バネ31で一端側方向(反制御バネ方向)へ付勢されたコンペンスプール30と、このコンペンスプール30の外周に設けられたコンペンスリーブ32とを有している。コンペンスプール30とコンペンスリーブ32が軸方向に移動することによって、サーボピストン21の大径受圧部22に導かれる制御圧力が調整されるようになっている。
【0028】
そして、この実施形態の上記コンペンスプール30とコンペンスリーブ32との間には、サーボピストン21の位置を制御する調圧部51と馬力制御の荷重演算部が一体的に設けられている。この調圧部51の詳細は、後述する。
【0029】
また、コンペンスプール30には、この実施形態では、ダブルポンプ2(図では1台のみを示す)が用いられているため、複数の吐出圧力導入室34,35が設けられている。この実施形態では、複数の吐出圧力導入室34,35として、自己圧力Pdを導入する自己圧力導入室34と、この自己圧力導入室34から反制御バネ方向の軸方向に離れた位置に相手圧力P2を導入する相手圧力導入室35とが設けられている。これら複数の吐出圧力導入室34,35には、後述するように、段部42,43がそれぞれ設けられている。相手圧力導入室35には、自己圧力導入室34よりも小径に形成された段部43が設けられている。
【0030】
なお、この実施形態では、コンペンスプール30の反制御バネ側に馬力設定圧力Pfが導入されるようになっている。この馬力設定圧力Pfを変更することで、レギュレータ10の設定馬力を変更することができる。
【0031】
図2,3に基づいて、上記可変容量型ポンプ用レギュレータ10の構成をより詳しく説明する。この実施形態のレギュレータ10のレギュレータケーシング11はポンプケーシング12にボルト13,14で固定されている(
図3)。ポンプケーシング12には、サーボピストン21が設けられている。レギュレータケーシング11には、コンペンスプール30と、その周囲で軸方向に移動するコンペンスリーブ32とが設けられている。
【0032】
図2に示すように、コンペンスプール30の右端には、このコンペンスプール30を一端方向(反制御バネ方向)に付勢する上記制御バネ31が設けられている。この制御バネ31は、コンペンスプール30の自己圧力導入室34と相手圧力導入室35とに導入される吐出圧力によってコンペンスプール30が右方向に移動することで変位させられる。この実施形態の制御バネ31は、同軸上に設けられた2本のバネが用いられている。コンペンスプール30は、制御バネ31のバネ力と対向して位置が決まる。制御バネ31を2本とすることにより、後述する
図7に示すように、流量の変化によって途中で傾きが変化する制御線を等馬力線に近似させている。なお、上記制御バネ31には、非線形の変位−荷重特性をもったバネを用いてもよい。
【0033】
上記コンペンスリーブ32は、レギュレータケーシング11に設けられた案内筒部15に沿って軸方向に移動可能となっている。このコンペンスリーブ32には、上記サーボピストン21と一端が制御ピン27で係合したフィードバックレバー24の他端が係合している。このフィードバックレバー24には、他端に係合ピン25が設けられている。コンペンスリーブ32には、制御バネ側部分の側面に係合溝37が設けられており、この係合溝37に上記フィードバックレバー24の係合ピン25が係合している。フィードバックレバー24は、中間部分に設けられた支持ピン26によってレギュレータケーシング11に支持されており、サーボピストン21の移動によって揺動させられる。このフィードバックレバー24の揺動により、コンペンスリーブ32が軸方向に移動させられる。つまり、コンペンスリーブ32の位置は、サーボピストン21によって位置が変化する係合ピン25によって決められる。
【0034】
上記したように、コンペンスプール30とコンペンスリーブ32によって、複数の吐出圧力導入室34,35が形成されるようになっている。コンペンスプール30は、ガイド部となる大径部38と、この大径部38と同径の調圧ランド部33と、この調圧ランド部33よりも小径の中径部39と、この中径部39よりも小径の小径部40とが設けられ、これらの間が軸部41で一体的に連結されている。このコンペンスプール30の反制御バネ方向(左方向)の端面には馬力設定操作用ピストン44が設けられており、この操作用ピストン44はカバー17に設けられた筒状ガイド16によって軸方向に案内されている。
【0035】
上記コンペンスリーブ32は、筒状に形成された内面の制御バネ側に、上記大径部38を軸方向に案内するガイド筒部48が設けられ、そのガイド筒部48の所定位置にガイド部48から所定寸法で大径になった制御圧力出力室36が設けられている。この制御圧力出力室36は、上記コンペンスプール30に設けられた調圧ランド部33の位置に設けられている。制御圧力出力室36と調圧ランド部33によって、吐出圧力導入室34からサーボピストン21の大径受圧部22に制御圧力を導く調圧部51が形成される。この制御圧力出力室36の反制御バネ方向には、上記ガイド筒部48と同径の上記自己圧力導入室34が形成され、その自己圧力導入室34の反制御バネ方向には、上記中径部39を軸方向に案内する内径で上記相手圧力導入室35が形成される。この相手圧力導入室35の反制御バネ方向は、上記小径部40を軸方向に案内する内径に形成されている。
【0036】
そして、このようにコンペンスリーブ32の内面を異なる内径に形成することにより、上記コンペンスプール30の調圧ランド部33と中径部39との間に形成される自己圧力導入室34の中径部39側に段部42が設けられ、中径部39と小径部40との間に形成される相手圧力導入室35の小径部40側に段部43が設けられている。上記段部42は、調圧ランド部33と中径部39との直径差分の面積差で自己圧力導入室34の中径部側に形成され、上記段部43は、中径部39と小径部40との直径差分の面積差で相手圧力導入室35の小径部側に形成されている。このように、コンペンスリーブ32の内面には、自己圧力導入室34の直径に比べて相手圧力導入室35の直径が小さく、この相手圧力導入室35の直径に比べて小径部40を軸方向に案内する部分の直径が小さい3段階の面積差が持たされている。
【0037】
また、上記自己圧力導入室34には、ポンプ2から導入流路45を介してサーボピストン21の小径受圧部23に導入された自己圧力Pdが導入されている。相手圧力導入室35には、図示していない相手ポンプから導入流路46を介して相手圧力P2が導入されている。
【0038】
そして、これらの吐出圧力によって、コンペンスプール30が制御バネ31のバネ力に抗して制御バネ方向(右方向)に移動させられるようになっている。この構成が、レギュレータ10の馬力制御部における演算部50である。
【0039】
また、コンペンスプール30が制御バネ方向に移動させられることによって調圧ランド部33が軸方向に移動し、これによって自己圧力導入室34と制御圧力出力室36とが連通し、自己圧力Pdが制御流路47を介してサーボピストン21の大径受圧部22に制御圧力Pclとして導入される。つまり、調圧ランド部33の移動によって自己圧力導入室34と制御圧力出力室36との間の開口面積が変化し、制御圧力Pclが調整される。この構成が、レギュレータ10の馬力制御部における調圧部51であり、この調圧部51は上記演算部50に組込まれている。
【0040】
このように、馬力制御部の演算部50に調圧ランド部33を組込んで一体的な構成とすることにより、演算部50でコンペンスプール30を自己ポンプ及び相手ポンプの吐出圧力に応じた所定の位置に移動させ、調圧ランド部33でサーボピストン21を移動させる制御圧力Pclを導いてポンプ2の吐出流量を調整する機構を、コンパクトに構成している。
【0041】
次に、
図4,5に基づいて、コンペンスプール30とコンペンスリーブ32の動作について説明する。
図4に示すように、可変容量型ポンプ用レギュレータ10の自己圧力導入室34に吐出圧力Pdが導入され、その吐出圧力Pdが制御バネ31のバネ荷重よりも大きい場合にはコンペンスプール30を制御バネ31の方向に移動させる。これにより、コンペンスプール30の調圧ランド部33が自己圧力導入室34と制御圧力出力室36とを連通させ、この連通によって自己圧力導入室34からサーボピストン21の大径受圧部22に制御圧力Pclが導入される。これにより、サーボピストン21が可変容量型ポンプ2の吐出流量を減少させるように傾転角を制御する。
【0042】
この実施形態ではダブルポンプの例であるため、上記自己圧力導入室34に導入される自己圧力Pdに加え、相手圧力導入室35に導入される相手圧力P2によってもコンペンスプール30が移動させられ、それらの圧力によって自己圧力が調圧ランド部33から制御圧力出力室36に流れ、制御流路47を介してサーボピストン21の大径受圧部22に制御圧力Pclが導入される。これにより、ダブルポンプのいずれかの必要馬力に応じて吐出流量が減少させられる。
【0043】
そして、
図5に示すように、サーボピストン21の大径受圧部22に導入された制御圧力Pclによってサーボピストン21が移動するとフィードバックレバー24が支持ピン26を中心に揺動してコンペンスリーブ32を移動させる。このサーボピストン21によるポンプの傾転角が必要な吐出流量の傾転角になると、フィードバックレバー24によってコンペンスリーブ32が移動し制御圧力出力室36と自己圧力導入室34との隙間を塞いで、自己圧力導入室34から大径受圧部22に制御圧力Pclが導入されるのを止める。
【0044】
このようにしてポンプ2の傾転角が制御され、そのポンプ2では狙いの吐出流量となった状態になると、コンペンスプール30とコンペンスリーブ32及びサーボピストン21の位置が保たれる。このように可変容量型ポンプ2の吐出流量制御は、作業機械の作業等によって変化する各ポンプの吐出圧力に応じて常に行われる。
【0045】
図6は上記コンペンスリーブ32に作用する吐出圧力Pd及び相手圧力P2とフィードバックレバー24の係合ピン25に作用する力との関係を示す模式図である。コンペンスリーブ32には、上記段部42,43による面積差によって、上記自己圧力導入室34に導入した自己圧力Pdの反力F1、及び上記相手圧力導入室35に導入した相手圧力P2の反力F2が上記段部42,43の部分に作用している。そのため、これらの反力によってフィードバックレバー24の係合ピン25とコンペンスリーブ32の係合溝37との間には、吐出圧力Pd,P2が作用している時には常に反制御バネ方向の荷重が作用している。
【0046】
つまり、上記自己圧力導入室34及び相手圧力導入室35に導入された自己圧力Pd及び相手圧力P2により、コンペンスリーブ32は常に反制御バネ方向に向けて付勢された状態となり、これらの接合部分には常に反力F1及びF2の合力に相当する荷重が作用している。
【0047】
そのため、フィードバックレバー24の係合ピン25とその係合部である係合溝37との接触部分が摩耗する場合には、係合ピン25と係合溝37とが接触する制御バネ側部分28が摩耗する。また、経年使用による摩耗は係合ピン25と係合溝37との制御バネ側のみにしか進展せず、この摩耗によって生じるコンペンスプール30とコンペンスリーブ32との位置関係のズレによってフィードバックレバー24の角度が変化するとしても、サーボピストン21はポンプ容量が減少側する方向にしか移動しない。従って、この摩耗によってコンペンスプール30やコンペンスリーブ32等の釣り合う位置が変化したとしても、ポンプ2の馬力制御において吐出流量が減少、つまりポンプの吸収馬力を下げる方向にしか馬力制御特性は変化しない。
【0048】
図7は、可変容量型ポンプ用レギュレータ10の馬力特性を吐出圧力と流量との関係で示す線図である。上記可変容量型ポンプ用レギュレータ10によれば、設計線である等馬力線100に近似するように設定された制御線101に対し、フィードバックレバー24の係合ピン(係合部)25において摩耗を生じて制御特性に変化が生じたとしても、制御線102のように吐出流量が減少する方向にしか、その特性は変化しない。
【0049】
つまり、等馬力線100に近似するように初期設定された制御線101は、経年変化後に制御線102のように流量減少側へ変化することになるため、経年使用しても安定した運転ができる可変容量型ポンプ用レギュレータ10を構成することができる。
【0050】
以上のように、上記可変容量型ポンプ用レギュレータ10によれば、演算部50と調圧部51とを一体的な構成とし、自己圧力導入室34及び相手圧力導入室35に段部42,43を設けて、吐出圧力Pd,P2によって反制御バネ方向の反力F1及びF2が作用する面積差をコンペンスリーブ32に持たせているので、自己圧力導入室34及び相手圧力導入室35に吐出圧力が作用している状態では常にコンペンスリーブ32には反制御バネ方向に反力F1及びF2が作用している。
【0051】
そのため、コンペンスリーブ32の位置を制御するフィードバックレバー24の係合ピン(係合部)25は、常に制御バネ側部28で接触し、経年使用による摩耗はこれら係合ピン25と係合溝37とが接触する制御バネ側部28のみとなる。
【0052】
すなわち、サーボピストン21の移動によってフィードバックレバー24で位置制御されるコンペンスリーブ32は、経年使用によってフィードバックレバー24との係合部である係合ピン25の部分に摩耗を生じたとしても、その摩耗には方向性があり、必ずサーボピストン21がポンプ2の吐出流量を小さくする方向にフィードバックレバー24が傾くように摩耗することになる。
【0053】
従って、経年使用によって係合ピン25と係合溝37との接触部分が摩耗したとしても、フィードバックレバー24は常にポンプ傾転が小容量側となる方向へのみ傾くため、経年使用しても安定した馬力制御ができる可変容量型ポンプ用レギュレータ10を構成することが可能となる。
【0054】
また、この実施形態では、ダブルポンプの自己圧力Pdと相手圧力P2とを演算部50に導入しているので、自己圧力Pd及び相手圧力P2に応じてサーボピストン21を駆動して狙いの動力を超えないようにポンプ2の吐出流量を制御することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、ダブルポンプの可変容量型ポンプ用レギュレータ10を例に説明したが、ポンプはシングルポンプその他の構成であってもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0056】
また、上記実施形態では、2つの吐出圧力導入室34,35に面積差を持たせる段部42,43を形成しているが、吐出圧力導入室は2つ以上あってもよく、更に流量制御に必要な圧力を作用させるようにしてもよい。
【0057】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。