(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基材フィルムと、この透明基材フィルムの少なくとも一方の面に形成されたコート層とを含む透明フィルムであって、JIS K7136に準拠した全光線透過率が85%以上であり、かつ前記コート層が、JIS B0610に準拠した転がり円最大高さうねり(WEM)が15μm以上である表面形状を有する透明フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[透明フィルム]
本発明の透明フィルムは、ディスプレイの最表面に配設するためのコート層を含む透明フィルムであり、通常、透明基材フィルムの少なくとも一方の面にコート層が形成された積層フィルムである。前記コート層は、ディスプレイの最表面に配設され、ペン入力の書き始め及び途中で(ペン入力の間)、動作距離に対する摩擦係数のプロファイルを略一定に調整できるため、ペン入力型タッチパネルのディスプレイに利用すると、紙に対する鉛筆のような書き味で入力できる。
【0016】
(透明基材フィルム)
透明基材フィルムは、透明材料で形成されていればよく、用途に応じて選択でき、ガラスなどの無機材料であってもよいが、強度や成形性などの点から、有機材料が汎用される。有機材料としては、例えば、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などの高分子が挙げられる。これらのうち、セルロースエステル、ポリエステル樹脂などが汎用される。
【0017】
セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC
3−4アシレートなどが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレートなどが挙げられる。
【0018】
これらのうち、PETやPENなどのポリC
2−4アルキレンアリレートが好ましく、耐熱性の点から、PENなどのポリC
2−4アルキレンナフタレート樹脂が特に好ましい。さらに、有機材料で形成された基材フィルムは、二軸延伸したフィルムであってもよい。
【0019】
透明基材フィルムは、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
透明基材フィルムの厚みは、用途に応じて、10μm〜1mm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜200μm程度である。
【0021】
(コート層)
コート層は、適度な凹凸構造が形成されており、表面において、JIS B0610に準拠した転がり円最大高さうねり(W
EM)が15μm以上(例えば、15〜100μm程度)であり、例えば、15〜50μm、好ましくは16〜45μm、さらに好ましくは17〜40μm(特に17.5〜38μm)程度である。本発明では、W
EMがこのような範囲に調整されているため、ペン入力型タッチパネルのディスプレイにおいて、プラスチックペン(例えば、ポリオキシメチレンで形成されたペン)で入力すると、ペン先が凸部に適度に引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整できる。W
EMが小さすぎると、ペン入力型タッチパネルのディスプレイにおいて、滑らずに引っ掛かりすぎて、抵抗感が発生する。
【0022】
本明細書では、転がり円最大高さうねり(W
EM)は、JIS B0610に準拠して測定でき、詳細には、後述の実施例に記載された方法で測定できる。
【0023】
コート層(特に熱可塑性エラストマーを含むコート層)の表面において、高さ1.0μm以上の凸部の個数が30〜200個/mm
2であり、例えば、40〜180個/mm
2、好ましくは45〜150個/mm
2、さらに好ましくは50〜130個/mm
2(特に70〜120個/mm
2)程度である。本発明では、前記凸部の個数がこのような範囲に調整されているため、ペン入力型タッチパネルのディスプレイにおいて、プラスチックペン(例えば、ポリオキシメチレンで形成されたペン)で入力すると、ペン先が各凸部毎に適度な間隔で引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整できる。一方、高さ1.0μm以上の凸部の個数が少なすぎると、ペン入力型タッチパネルのディスプレイにおいて、滑らずに引っ掛かりすぎて、抵抗感が発生する。一方、多すぎると、ペン入力の書き始めの摩擦抵抗に対して途中の摩擦抵抗が小さくなり、滑りすぎて、微妙な入力が困難となり、高度な機能を有するタッチパネルに対応できない。
【0024】
コート層(特に熱可塑性エラストマーを含むコート層)は、表面において、高さ1.0μm以上の凸部の平均高さが3.5μm以上であり、例えば、3.5〜10μm、好ましくは3.6〜8μm(例えば、3.8〜6μm)、さらに好ましくは3.9〜5.5μm(特に4〜5μm)程度である。本発明では、前記凸部の個数がこのような範囲に調整されているため、ペン入力型タッチパネルのディスプレイにおいて、プラスチックペンのペン先が各凸部毎に確実にかつ適度に引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整できる。すなわち、前述の凸部個数との組み合わせにより、ペン先が各凸部毎に適度な間隔で確実にかつ適度に引っ掛かるためか、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整でき、紙に対する鉛筆のような書き味を実現できる。一方、高さ1.0μm以上の凸部の平均高さが低すぎると、滑りすぎる傾向があり、高すぎると、引っ掛かりが大きすぎる。
【0025】
コート層(特に熱可塑性エラストマーを含むコート層)の表面において、高さ2.0μm以上の凸部の個数は、例えば、10〜150個/mm
2、好ましくは20〜120個/mm
2、さらに好ましくは30〜100個/mm
2(特に50〜80個/mm
2)程度である。高さ2.0μm以上の凸部の個数が少なすぎると、ペン入力型タッチパネルのディスプレイにおいて、引っ掛かりが大きすぎる。一方、多すぎると、ペン入力の書き始めの摩擦抵抗に対して途中の摩擦抵抗が小さくなり、滑りすぎる。
【0026】
コート層(特に熱可塑性エラストマーを含むコート層)の表面において、高さ2.0μm以上の凸部の平均高さは、例えば、4〜15μm、好ましくは4.5〜10μm、さらに好ましくは4.8〜8μm(特に5〜6μm)程度である。高さ2.0μm以上の凸部の平均高さが低すぎると、滑りすぎる傾向があり、高すぎると、引っ掛かりすぎる。
【0027】
本明細書では、前記凸部の個数及び平均高さは、非接触表面形状計測装置を用いて閾値1μm又は2μmで粒子解析することにより測定でき、詳細には、後述の実施例に記載された方法で測定できる。
【0028】
コート層の厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは1.5〜50μm、さらに好ましくは2〜20μm(特に3〜15μm)程度である。
【0029】
このような表面形状を有するコート層の製造方法は、特に限定されず、成形型を利用する方法などであってもよいが、簡便性の点から、微粒子を利用する方法が好ましい。微粒子を利用する方法で得られたコート層は、微粒子及びバインダー成分を含んでいてもよい。
【0030】
(A)微粒子
微粒子の形状としては、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形状などが挙げられる。これらの形状のうち、ペン先に適度に引っ掛かり、鉛筆のような書き味(触感)で入力できる点から、鋭角部を有さない形状、例えば、球状又は楕円体状が好ましく、真球状又は略真球状が特に好ましい。
【0031】
微粒子の粒径は、コート層の表面に前記凹凸構造を形成するために、コート層塗布液の粘度などに応じて適宜選択でき、前記凹凸構造を容易に形成できる点から、コート層の厚みと略同一の粒径か、又はコート層の厚みよりも大きい粒径が好ましい。具体的には、微粒子の平均粒径は、コート層の厚みに対して0.5〜10倍程度の範囲から選択でき、例えば、0.8〜5倍(例えば、1〜5倍)、好ましくは0.9〜4倍、さらに好ましくは1〜3倍(特に1.1〜2.5倍)程度であってもよい。
【0032】
微粒子の平均粒径は、例えば、平均粒径10μm以上(例えば、10〜100μm)、好ましくは11〜50μm、さらに好ましくは12〜40μm(特に13〜30μm)程度である。平均粒径が大きすぎると、表面粗さが大きくなり、摩擦力が増加するためか、引っ掛かりが大きくなるとともに、強度などの機械的特性も低下する。一方、小さすぎると、滑りすぎる。平均粒径は、レーザー回折を用いた方法で測定できる。
【0033】
微粒子の粒径分布は、少量で目的の凹凸形状を得ることができ、透明性及び機械的強度を向上できる点から、狭い方が好ましい。微粒子の粒径分布は、CV値(相関係数:平均粒径に対する標準偏差の割合)で表され、CV値が20%以下であってもよく、例えば、1〜18%、好ましくは2〜17%、さらに好ましくは3〜15%(特に4〜10%)程度である。
【0034】
微粒子は、前記平均粒径を有し、コート層の表面で適度な凹凸形状を形成できればよく、材質は特に限定されず、無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。
【0035】
無機粒子としては、例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属リン酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、ケイ素化合物、フッ素化合物、天然鉱物などが挙げられる。無機粒子は、カップリング剤(チタンカップリング剤、シランカップリング剤)により表面処理されていてもよい。これらの無機粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機粒子のうち、透明性などの点から、酸化チタンなどの金属酸化物粒子、酸化ケイ素などのケイ素化合物粒子、フッ化マグネシウムなどのフッ素化合物粒子などが好ましく、低反射化や低ヘイズ化を実現できる点から、シリカ粒子が特に好ましい。
【0036】
有機粒子としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂、架橋ポリオレフィン樹脂、架橋(メタ)アクリル系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ポリウレタン系樹脂などの架橋熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で形成された粒子が挙げられる。これらの有機粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機粒子のうち、ポリアミド系粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル系粒子、架橋ポリスチレン系粒子、架橋ポリウレタン系粒子などの架橋高分子粒子などが汎用される。
【0037】
これらのうち、引っ掛かり感と滑り性とのバランスに優れる点から、有機粒子が好ましく、ヘイズを抑制でき、光学特性と機械的強度とのバランスに優れる点から、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル系粒子が特に好ましい。
【0038】
架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル系粒子を構成するポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C
1−6アルキル(特にC
2−6アルキル)を主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、慣用の架橋剤を利用でき、例えば、2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)C
2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの2官能ビニル化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能ビニル化合物など)などが利用できる。架橋剤の割合は、全単量体のうち0.1〜10モル%(特に1〜5モル%)程度であってもよい。架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル系粒子は、摺動性を向上させるために、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子などの架橋ポリメタクリル酸エステル粒子であってもよい。また、架橋ポリアクリル酸エステル粒子を用いて、柔軟性を向上してもよい。
【0039】
微粒子の屈折率は、透明性を向上できる点から、例えば、1.4〜1.6、好ましくは1.41〜1.58、さらに好ましくは1.42〜1.55(特に1.45〜1.53)程度であってもよい。
【0040】
微粒子の割合は、バインダー成分(例えば、ビニル系化合物及び熱可塑性エラストマーの総量)100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは1.5〜30重量部(、さらに好ましくは2〜15重量部(特に3〜10重量部)程度である。微粒子の割合が少なすぎると、滑りすぎる傾向があり、多すぎると、機械的特性が低下し、ヘイズも上昇する。
【0041】
(B)バインダー成分
バインダー成分としては、前記微粒子をコート層に固定できればよく、無機バインダー成分、有機バインダー成分のいずれであってもよいが、微粒子を強固に固定できる点などから、有機バインダー成分が好ましい。さらに、有機バインダー成分の中でも、成膜性に優れ、微粒子を強固に固定でき、耐擦傷性などの膜強度にも優れる点から、ビニル系化合物を少なくとも含む有機バインダー成分が特に好ましい。
【0042】
(B1)ビニル系化合物
ビニル系化合物としては、分子内に2以上(例えば、2〜8程度)の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが汎用され、例えば、2〜8官能(メタ)アクリレート、2官能以上のオリゴマー又は樹脂などが含まれる。
【0043】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノール類のC
2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0044】
3官能以上(3〜8官能程度)の(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレートにおいて、多価アルコールは、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドなどのC
2−4アルキレンオキシド)の付加体であってもよい。これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
2官能以上のオリゴマー又は樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、コート層の機械的特性を容易に制御できる点から、ウレタン(メタ)アクリレートが汎用される。
【0046】
これらのビニル系化合物のうち、微粒子を強固に固定でき、コート層表面における平坦部での滑り性を向上できる点から、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0047】
ビニル系化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、触感を向上させる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、500以上であってもよく、例えば、500〜10000、好ましくは600〜9000、さらに好ましくは700〜8000(特に1000〜5000)程度であってもよい。分子量が小さすぎると、触感が低下し、分子量が大きすぎると、成膜性や取り扱い性が低下する。
【0048】
(B2)熱可塑性エラストマー
バインダー成分は、前記ビニル系化合物に加えて、膜の柔軟性や成膜性などを改良するために、さらに熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
【0049】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどであってもよいが、接着性や可撓性などの点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート類と、ポリオール類と、必要に応じて鎖伸長剤(又は鎖延長剤)との反応により得ることができる。
【0050】
ポリイソシアネート類としては、慣用のポリイソシアネート類などを使用でき、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)などの脂環族ジイソシアネートなどの無黄変性ジイソシアネート又はその誘導体、特に、脂肪族ジイソシアネートのトリマー(三量体、イソシアヌレート環を有するトリマーなど)などを好ましく使用できる。
【0051】
ポリオール類としても、慣用のポリマーポリオール類などを使用でき、通常、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが汎用される。
【0052】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、オキシラン化合物の開環重合体又は共重合体[例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリ(C
2−4アルキレングリコール)]、ビスフェノールA又は水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体などを好ましく利用できる。
【0053】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸(又はその無水物)とポリオールとの反応生成物、ラクトン類を開環付加重合させた反応生成物であってもよい。
【0054】
ポリカルボン酸としては、慣用のポリカルボン酸などを使用でき、例えば、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC
6−20アルカンジカルボン酸など)などを好ましく利用できる。
【0055】
ポリオールとしても、慣用のポリオールなどを使用でき、脂肪族ジオール[アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのC
2−22アルカンジオール)など]、脂環族ジオール(1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類、又はこれらのC
2−4アルキレンオキサイド付加体など)などを好ましく利用できる。
【0056】
ラクトン類としても、慣用のラクトン類などを使用でき、バレロラクトンやカプロラクトンなどのC
4−8ラクトンなどを好ましく使用できる。
【0057】
鎖伸長剤としては、慣用の鎖伸長剤を使用でき、例えば、ジオール類(エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルカンジオールなど)、ジアミン類(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などを好ましく利用できる。
【0058】
ポリウレタンエラストマーは、短鎖ジオール類とジイソシアネート類とのポリウレタンを含むハードセグメント(ハードブロック)と、ポリマージオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールなど)とジイソシアネート類とのポリウレタンを含むソフトセグメント(ソフトブロック)とで構成されたエラストマーであってもよい。このポリウレタンエラストマーは、通常、ソフトセグメントを構成するポリマージオールの種類に応じて、ポリエステル型ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル型ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート型ポリウレタンエラストマーなどに分類される。
【0059】
これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマーのうち、柔軟性や安定性などの点から、ポリエステル型ポリウレタンエラストマーやポリエーテル型ポリウレタン系エラストマー(特に、無黄変性ジイソシアネートを用いたポリエステル型ポリウレタン系エラストマー)が好ましい。
【0060】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーはシリコーン成分で変性されていてもよい。シリコーン成分は、エラストマー中に含有されていてもよく、共重合体として組み込まれていてもよい。シリコーン成分は、通常、オルガノシロキサン単位[−Si(−R)
2−O−](基Rは置換基を示す)で形成されており、基Rで表される置換基としては、アルキル基(メチル基など)、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基などが挙げられる。シリコーン成分の割合は、シリコーン変性ポリウレタンエラストマー全体に対して60重量%以下程度であり、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2〜30重量%(特に3〜20重量%)程度である。
【0061】
熱可塑性エラストマー(特に熱可塑性ポリウレタンエラストマー)の数平均分子量は、GPCにおいて、ポリスチレン換算で、例えば、10,000〜500,000、好ましくは20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜100,000程度であってもよい。
【0062】
ビニル系化合物と熱可塑性エラストマーとの割合(重量比)は、前者/後者=1/99〜70/30程度であり、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜45/55(特に30/70〜40/60)程度である。熱可塑性エラストマーの割合が少なすぎると、膜の柔軟性や成膜性を向上する効果が小さく、多すぎると、引っ掛かり大きく、タック性が発現する。
【0063】
(B3)他の添加剤
バインダー成分がビニル系化合物を含む場合、バインダー成分は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光重合開始剤には、慣用の光増感剤や光重合促進剤(例えば、第三級アミン類など)が含まれていてもよい。光重合開始剤の割合は、ビニル系化合物100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であってもよい。
【0064】
バインダー成分は、必要に応じて、さらに慣用の添加剤、例えば、他の粒子、他の熱可塑性ポリマー、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、抗菌剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0065】
バインダー成分は、塗工性などの点から、さらに溶媒を含んでいるのが好ましい。溶媒は、バインダー成分(前記ビニル系化合物や熱可塑性エラストマーなど)の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、エステル類、水、アルコール類、セロソルブ類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、混合溶媒であってもよい。これらの溶媒のうち、イソプロパノールなどのアルコール類、トルエンなどの芳香族炭化水素類などが汎用される。
【0066】
ビニル系化合物を含むバインダー成分は、熱硬化性組成物であってもよいが、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物、EB硬化性化合物であってもよい。特に、実用的に有利な組成物は、紫外線硬化性樹脂である。
【0067】
(透明フィルムの特性)
本発明の透明フィルムは、適度な硬度を有しており、ハードコート機能を有するともに、ペン入力型タッチパネルにおいて、紙に対する鉛筆のような書き味で入力できる。透明フィルムにおけるコート層の鉛筆硬度(荷重750gf)は、例えば、B以上であり、好ましくはHB以上、さらに好ましくはF〜4H(特にH〜3H)程度である。コート層の硬度が高すぎると、滑りすぎる傾向があり、低すぎると、引っ掛かりすぎる。
【0068】
本発明の透明フィルムは、このような表面硬度を備えることに加えて、ディスプレイに必要な透明性も保持している。すなわち、本発明の透明フィルムは、JIS K7136に準拠した全光線透過率が85%以上であってもよく、例えば、85〜99.9%、好ましくは86〜99.5%、さらに好ましくは88〜99%(特に、90〜95%)程度である。さらに、本発明の透明フィルム(特に熱可塑性エラストマーを含む防眩層を有する透明フィルム)は、表面に適度な凹凸構造を有し、かつ高い全光線透過率を有しており、全光線透過率が91〜99%(例えば、91.5〜98%)、好ましくは92〜97%、さらに好ましくは92.5〜96%(特に93〜95%)程度であってもよい。
【0069】
さらに、本発明の透明フィルムは、防眩性やアンチニュートンリング性なども付与可能な適度なヘイズを有しており、例えば、JIS K7136に準拠したヘイズが1〜99%程度の範囲から選択でき、例えば、2〜95%程度であってもよい。さらに、コート層の成分比を調整することにより、ヘイズを調整でき、透明性が重視される用途では、例えば、微粒子の割合を低下させることなどにより、50%以下に調整してもよく、例えば、40%以下(例えば、1〜40%)、好ましくは5〜35%、さらに好ましくは10〜30%程度である。透明性が重視されない用途では、ヘイズは、80%以下(例えば、20〜80%)、好ましくは70%以下(例えば、30〜70%)、さらに好ましくは60%以下(例えば、40〜60%)であってもよい。
【0070】
本発明の透明フィルムは、さらに他の機能層、例えば、透明導電層、アンチニュートンリング層、防眩層、光散乱層、反射防止層、偏光層、位相差層などの層と組み合わせてもよい。
【0071】
本発明の透明フィルムは、タッチパネル(特に、ペン入力型タッチパネル)のディスプレイに利用でき、ペン入力の書き味(触感)に優れたコート層が、ディスプレイの最表面に位置するように配設される。前記コート層は、ペン入力の書き始め及び途中で書き味を略一定に調整でき、紙に対する鉛筆のような書き味で入力できるため、各種のペン入力型タッチパネル(特にITOグリッド方式を採用する投影型静電容量方式タッチパネル)のディスプレイの操作に適している。
【0072】
ペン入力型タッチパネルで用いられるペン(接触子)は、プラスチックや金属などの硬質材料で形成されていればよく、通常、プラスチックで形成されている。プラスチックとしては、例えば、強度や耐久性などの点から、例えば、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、軽量で強度が高く、耐摩耗性などの耐久性や摺動性にも優れる点から、ポリオキシメチレンなどのポリアセタール樹脂が好ましい。ペン先の形状は、特に限定されないが、通常、曲面形状(R状)である。ペン先の平均径は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10mm程度の範囲から選択でき、好ましくは0.3〜8mm、更に好ましくは0.3〜5mm程度であるが、通常、0.5〜3mm(特に0.6〜2mm)程度である。
【0073】
[透明フィルムの製造方法]
本発明の透明フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に重合性組成物を塗布した後、硬化することにより得ることができる。
【0074】
重合性組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、重合性組成物は複数回に亘り塗布してもよい。
【0075】
重合性組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、40〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃程度の温度で行ってもよい。
【0076】
コート層に適度な凹凸構造を形成するためには、前記重合性組成物(塗布膜)の厚みと微粒子の粒子径とを調整する方法や、塗布液の粘度を調整する方法などの方法を利用できる。塗布膜の厚みと微粒子の粒子径とを調整する方法としては、塗布膜の厚みよりも大きい粒子径を有する微粒子を用いる方法であってもよい。塗布液の粘度を調整する方法としては、例えば、熱可塑性エラストマーなどの高粘性成分を添加して、粒子が塗布液の中で沈降し難くすることにより、コート層表面に適度な凹凸構造を形成してもよい。すなわち、粘度を調整することにより、例えば、塗布膜の厚みを微粒子の粒径と略同程度の厚みであっても、適度な凹凸構造を形成でき、特に、粘度を高めに設定することにより、比較的高い凸部を有する凹凸構造も形成できる。また、前記方法を組み合わせて、微粒子の粒径と塗布液の粘度とを調整することにより、うねりの大きさや凸部の高さを調整してもよい。
【0077】
硬化工程において、重合性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線としては、例えば、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などが利用でき、通常、紫外線、電子線である場合が多い。
【0078】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm
2、好ましくは70〜7000mJ/cm
2、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm
2程度であってもよい。
【0079】
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
【0080】
なお、活性エネルギー線の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0081】
基材フィルムに対するコート層の密着性を向上させるために、コート層を表面処理に供してもよい。表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが挙げられる。基材フィルムは、表面が易接着処理されていてもよい。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた透明フィルムを以下の項目で評価した。
【0083】
[微粒子の平均粒径]
微粒子(乾燥状態)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を2次元処理してイメージ化し、平均粒径を算出した。詳しくは、得られたSEM写真を用いて、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように、任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径に基づいて平均粒子径を算出した。
【0084】
[転がり円最大高さうねり(W
EM)]
JIS B0610に準拠し、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製「サーフコム570A」)を用いて、以下の条件で転がり円最大高さうねり(W
EM)を測定した。
【0085】
測定子:うねり測定子(0102505)
測定子の仕様:800μmR、ルビー
駆動速度:3mm/s
λf低減カットオフ値:8mm
測定長さ:15mm。
【0086】
[凸部の個数及び平均高さ]
非接触表面形状計測装置[(株)菱化システム製「VertScan2.0」]を用いて、サンプルの表面形状を測定した。さらに、観察画像より、高さ1.0m以上(閾値1μm)及び2.0μm以上(閾値2μm)の粒子解析を行い、凸部(凸粒子)の個数、平均面積を求め、1mm
2当たりの個数を算出し、凸部の最高度の平均値(平均高さ)を求めた。なお、対物レンズは、5倍のレンズを用いて、視野2507μm×1881μmの観察を行った。
【0087】
[光学特性]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して、ヘイズ、全光線透過率(TPP)を測定した。
【0088】
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準拠し、荷重750gfで鉛筆硬度を測定した。
【0089】
[SW耐久性]
スチールウール耐久性試験機を用いて、400g荷重、直径φ2.5cmのスチールウール♯0000で10往復し、サンプルの傷の度合いを以下の基準で評価した。
【0090】
○:傷が見えない
△:1〜2本傷が見える
×:3本以上傷が見える。
【0091】
[ペン摺動耐久性]
タッチパネル摺動試験機を用いて、500g荷重、NitendoDS(登録商標)用タッチペンで10000往復し、サンプルの傷の度合いを以下の基準で評価した。
【0092】
○:傷が見えない
△:1〜2本傷が見える
×:3本以上傷が見える。
【0093】
[摩擦係数]
静動摩擦測定機((株)トリニティーラボ製「ハンディートライボマスターTL201Ts」)を用いて、測定条件(荷重50g重、速度50mm/秒)で摩擦力を測定した。接触子としては、ポリオキシメチレン製ペン(ペン先径0.8mmφ)を使用し、フィルムに対して45°の角度で摺動させた。なお、参考例として、紙((株)カウネット製「コピーペーパー スタンダードタイプ」)に対して鉛筆(三菱鉛筆(株)製「ユニ6B」及び「ユニHB」)を摺動させた。
【0094】
[コート層の配合成分]
6官能アクリレート:6官能アクリル系UV硬化モノマー、ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」
ウレタンアクリレート:3官能ウレタンアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製「KRM8264」
ウレタンエラストマー:ポリウレタンエラストマー、大日精化工業(株)製「ダイアロマーSP−2165」
アクリル粒子(5μm):東洋紡績(株)製「FH−S005」、平均粒径5μm
アクリル粒子(10μm):東洋紡績(株)製「FH−S010」、平均粒径10μm
アクリル粒子(15μm):東洋紡績(株)製「FH−S015」、平均粒径15μm
アクリル粒子(27μm):積水化成品工業(株)製「テクポリマーSSX−127」、平均粒径27μm
単分散アクリル粒子(15μm):綜研化学(株)製「ケミスノーMX−1500H」、平均粒径13.5〜16.5μm、CV値5.0%
単分散アクリル粒子A(20μm):積水化成品工業(株)製「テクポリマーSSX120」、平均粒径20μm、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子
単分散アクリル粒子B(20μm):綜研化学(株)製(株)製「ケミスノーMX−2000」、平均粒径18〜22μm、CV値17.1%
ポリウレタン粒子:大日精化工業(株)製「ダイミックビーズ5070D」、平均粒径7μm
開始剤1:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)184」
開始剤2:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア(Irgacure)907」。
【0095】
比較例1
市販のハードコートフィルム((株)きもと製「KBフィルムN10」)の凸粒子個数及び平均高さ、光学特性、鉛筆硬度、SW耐久性、ペン摺動耐久性を測定した結果を表1に示す。
【0096】
比較例2〜8及び実施例1〜7
表1に示す樹脂成分、樹脂粒子及び開始剤を、トルエン及びイソプロパノールの混合溶媒(トルエン/イソプロパノール=6/4(容積比))に、表1に示す割合で溶解した。なお、開始剤は、それぞれ重合性モノマー(6官能アクリレート及び/又はウレタンアクリレート)100重量部に対して2.5重量部の割合で配合し、固形分濃度は25重量%に調製した。
【0097】
この溶液を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製「A4300」、厚み125μm)上にワイヤーバー#38を用いて流延したのち、60℃のオーブン内で1分間放置後、コートフィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm
2)に通して、紫外線硬化処理を行い、塗工膜を硬化させてコート層(乾燥厚み10μm又は13μm)を形成した。
【0098】
得られた透明フィルムのW
EM、凸粒子個数及び平均高さ、光学特性、鉛筆硬度、SW耐久性、ペン摺動耐久性を測定した結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1の結果から明らかなように、実施例の透明フィルムは、比較例の透明フィルムに比べて、適度な表面凹凸構造を有し、光学特性及び機械的特性のバランスに優れている。
【0101】
さらに、紙に鉛筆を摺動させたときの動作距離に対する摩擦係数のグラフを
図1及び2に示し、比較例1〜8及び実施例1〜7の透明フィルムにペンを摺動させたときの動作距離に対する摩擦係数のグラフを
図3〜17に示す。
図1〜17の結果から明らかなように、実施例の透明フィルムは、ペン入力の書き始め及び途中で動作距離に対する摩擦係数のプロファイルが一定であり、紙に鉛筆を摺動させたときのプロファイルに類似するのに対して、比較例の透明フィルムは、初期の摩擦抵抗が大きかったり、摩擦係数の振幅が小さいなど、紙に鉛筆を摺動させたときのプロファイルとは大きく異なる。