(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と液状の油とを、油の量に対する被処理物の量が60重量%以下である量比で用意し、それらを、常圧下、20乃至45℃の温度において混合することを特徴とする被処理物の水分含有率を低下させる方法。
冷却塔を用い、冷却塔の下部に配置された貯留槽内に被処理物と油とを供給し、被処理物と油とを貯留槽から冷却塔の上部に輸送し且つ冷却塔の上部から貯留槽に向かって落下させることによって被処理物と油との混合を行う、請求項1に記載の方法。
貯留槽内に水中ポンプを設置し、貯留槽内に被処理物と油とを貯留させ、水中ポンプで被処理物と油とを噴水状に吹き上げることによって被処理物と油との混合を行う、請求項1に記載の方法。
被処理物と油との混合を、被処理物と油との混合物に気体をバブリングさせる及び/又は被処理物と油との混合物を撹拌することによって、あるいは前記混合物が入っている容器を振とうもしくは振動させて行う、請求項1に記載の方法。
送風される気体は、循環使用され、ここで、被処理物と油との混合物と接触して水分を担持した気体は、乾燥され、その後再び送風に使用される、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
被処理物が、酒類製造の廃液、活性汚泥、パーム油製造時の廃液、畜産糞尿混合物、家庭からの生ごみ、食品製造残渣、海水及びこれらの濃縮物からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
(1)請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法にて被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物と油との混合物を成形する工程を含む、燃料の製造方法。
(1)請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法にて被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程を含む、被処理物の濃縮物又は被処理物に由来する乾燥物の製造方法。
工程(1)を、被処理物中の水分が実質的に無くなるまで実施し、工程(2)の後に、(3)工程(2)で得られた実質的に水分を含まない被処理物を、油を溶解除去できる溶媒で洗浄する工程、及び(4)洗浄に使用した溶媒を除去し、実質的に水分を含まない被処理物を得る工程を含む、請求項18に記載の被処理物に由来する乾燥物の製造方法。
工程(2)の後に、(3)水分含有率の低下した被処理物を圧搾して当該被処理物の油含有量を減少させる工程を含む、請求項18に記載の被処理物に由来する乾燥物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1乃至4に記載されているような、従来の油脂を使用する乾燥方法では、加熱乾燥や発酵乾燥等の手段によって含水物質を乾燥していた。しかし、加熱乾燥においては、水1Lあたりの気化潜熱が約700kcalであり、化石燃料の燃焼熱エネルギーに頼らざるを得ない。また、化石燃料の燃焼は炭酸ガスを発生させるので、地球温暖化現象の一因ともなる。さらに、加熱温度が高い場合には、有毒物質が生成されたり、含水物質中のある種の成分が重合して系の粘度が上昇し、撹拌や水分の蒸発が困難となることがあった。一方、加熱温度が低い場合(例えば常温域での乾燥の場合)には、含水率が充分に低くならないとか、乾燥に長時間を要することといった欠点があった。
【0010】
発酵乾燥は、微生物の発酵熱によって含水物質混合物を暖め、これに送風して気化潜熱を奪うというものである。この方法は、加温には化石燃料を使用しないが、処理される含水物質の種類に応じて発酵条件をコントロールしなければならないこと、乾燥に長時間を要することといった欠点があった。また、特許文献5に記載の方法は、油脂を使用しないものであり、有機物の表面しか乾燥されないため、撹拌を行っているが、それでも乾燥効率は低い。
【0011】
本発明は、含水物質の乾燥における従来の問題点を解決すること、即ち、水の沸点を超えるような高温環境を必要とせずに、水を含有する被処理物の水分含有率を効率的に低下させる方法の提供を目的とする。また、本発明は、前記の水分含有率を効率的に低下させる方法と同様の処理工程を含む、水及び油溶性物質を含む被処理物から油溶性物質を効率的に抽出する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と液状の油とを、油の量に対する被処理物の量が60重量%以下である量比で用意し、それらを、常圧下、20乃至45℃の温度において混合することを特徴とする、被処理物の水分含有率を低下させる方法に関する。
【0013】
上記方法における被処理物と油との混合は、具体的には、以下の方法によって実施することができる。
(1)冷却塔を用い、冷却塔の下部に配置された貯留槽内に被処理物と油とを供給し、被処理物と油とを貯留槽から冷却塔の上部に輸送し且つ冷却塔の上部から貯留槽に向かって落下させる、好ましくは冷却塔の上部に輸送された被処理物と油との少なくとも一部を、充填材を経て貯留槽に向かって落下させることによって、被処理物と油との混合を行う、
(2)貯留槽内に水中ポンプを設置し、貯留槽内に被処理物と油とを貯留させ、水中ポンプで被処理物と油とを噴水状に吹き上げることによって被処理物と油との混合を行う、
(3)被処理物と油との混合を、被処理物と油との混合物に気体をバブリングさせる、及び/又は、被処理物と油との混合物を撹拌することによって行う、及び
(4)被処理物と油との混合を、被処理物と油とが入った容器を振とうもしくは振動させることによって行う。
【0014】
被処理物と油との混合は、被処理物の水分含有率が所定の値以下となるまで行えばよい。ここで、「所定の値」は、本発明の方法を実施して得られる被処理物の濃縮物又は乾燥物の用途によって特定される。本発明方法の実施により、水分含有率=実質的に0%の達成も可能である。
【0015】
被処理物と油との混合物と接触するように、例えば被処理物と油との混合物の上方に、気体を送風させてもよい。
【0016】
バブリングさせる気体や送風される気体は、例えば、空気、二酸化炭素、窒素等である。これらの気体は、水分含有率の低い乾燥気体であること好ましい。
【0017】
被処理物と油との混合物の上方に気体を送風させる場合、気体は、被処理物と油との混合物の上方を1回のみ通るように構成してもよいし、あるいは、被処理物と油との混合物の上方を通って水分を担持した気体は、乾燥され、例えば凝縮器において水分が除去され、その後再び、被処理物と油との混合物の上方を通るというように循環使用されてもよい。
【0018】
被処理物及び油に加え、カチオン性又はアニオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0019】
本発明方法は、例えば処理に使用した油の利用が目的である場合には、麹菌類、クモノスカビ及びケカビからなる群から選択される少なくとも一種の微生物の存在下において又は抗酸化性物質の存在下において実施してもよい。微生物を使用する場合には、その微生物の耐熱温度以下の温度で実施することが好ましい。
【0020】
また、本発明は、(1)水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と液状の油とを、油の量に対する被処理物の量が60重量%以下である量比で用意し、それらを、常圧下、20乃至45℃の温度において混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物と油との混合物を成形する工程を含む、燃料の製造方法に関する。成形は、例えば、前記混合物をエクストルーダにて押し出すことによって行う。
【0021】
また、本発明は、水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と液状の油とを、油の量に対する被処理物の量が60重量%以下である量比で用意し、それらを、常圧下、20乃至45℃の温度において混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程(工程(1))を含む、飼料、餌料又は肥料の製造方法に関する。工程(1)終了後の水分含有率は、工程(1)を実施することによって得られる生成物に求められている特性に応じて所望のものとすればよい。例えば、工程(1)の後にさらに処理が行われる場合には、そのような処理の具体的な方法や最終生成物に求められる特性に応じて、工程(1)終了後に所望の水分含有率となるように、工程(1)を実施すればよい。工程(1)の後に、水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程(工程(2))を実施してもよい。
【0022】
本発明の飼料、餌料又は肥料の製造方法においては、工程(1)終了後の水分含有率が低下した被処理物と処理に供した油との混合物をそのまま使用して、飼料、餌料又は肥料を製造してもよいし、水分含有率の低下した被処理物を、処理に使用した油から取り出す等の方法によって工程(2)を実施した後に、分離された被処理物を使用して、飼料、餌料又は肥料を製造してもよい。工程(2)を実施した場合、必要に応じ、分離された被処理物に混入している油の一部又は全てを除去してもよい。
【0023】
さらに、本発明は、(1)水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と液状の油とを、油の量に対する被処理物の量が60重量%以下である量比で用意し、それらを、常圧下、20乃至45℃の温度において混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程を含む、被処理物の濃縮物又は被処理物に由来する乾燥物の製造方法に関する。
【0024】
上記の被処理物の濃縮物又は被処理物に由来する乾燥物の製造方法において、油からの他の成分の分離は、例えば次のようにして行う。濃縮された被処理物が未だ液状である場合には、工程(1)で得られた混合物を放置することにより又は遠心分離に供して油相と水相とに分離させ、分離後、下層である水相を、油相が混入しないように抜き出すことによって行うことができる。
【0025】
工程(1)を、被処理物中の水分が実質的に無くなるまで実施した場合には、水分を実質的に含まなくなった被処理物を取り出し(工程(2))、その後、(3)被処理物を、油を溶解除去できる溶媒で洗浄する工程、及び(4)洗浄に使用した溶媒を除去する工程を実施することにより、実質的に水分を含まない被処理物を得ることができる。この場合、工程(2)の一部(前半)として、遠心分離を行ってもよい。また、工程(3)及び(4)に代わり、取り出した被処理物を圧搾することにより、その油含有量を減少させてもよい。
【0026】
また、工程(1)を、被処理物がある程度(即ち、次工程の処理に適する量)の水分を含有する状態で終了させた場合にも、水分含有率の低下した被処理物を取り出し(工程(2))、その後に、(3)水分含有率の低下した被処理物を圧搾することにより、その油含有量を減少させてもよい。この場合、工程(2)の一部(前半)として遠心分離を行ってもよい。なお、(I)水の沸点未満で且つ油が液状である温度にて、水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と油とを混合して、被処理物の水分含有率を低下させる工程、(II)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程、及び(III)水分含有率の低下した被処理物を圧搾して当該被処理物の油含有量を減少させる工程をこの順に含み、さらに、工程(II)又は(III)の後に、(IV)水分含有率の低下した被処理物に微生物を加えて発酵させ、発酵飼料、発酵餌料又は発酵肥料を得る工程を含む、被処理物に由来する乾燥物の製造方法も、本発明の方法である。
【0027】
また、本発明は、(i)水の沸点未満で且つ油が液状である温度にて、海水又は海水濃縮物と油とを混合すること、(ii)前記混合時に、海水又は海水濃縮物と油との混合物と接触するように気体を送風し、その気体に海水又は海水濃縮物に由来する水分を担持させること、及び(iii)水分を担持した気体から水分を分離することを含む、海水から真水を得る方法にも関する。この方法では、工程(iii)で水分が分離された気体を工程(ii)に送ることにより、気体を循環使用することができる。
【0028】
さらに本発明は、(1)水の沸点未満で且つ油が液状である温度にて、水又は水及び油溶性物質を含有する被処理物と油とを混合することにより、被処理物中の油溶性物質を油中に抽出する工程、及び(2)油溶性物質が抽出された後の被処理物から油から分離する工程を含む、被処理物中の油溶性物質を油中に抽出する方法にも関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、高温環境を必要とせずに、効率的に、水を含有する被処理物の水分含有率を低下させる、好ましくは水分含有率を0%とするか又は0%に限りなく近づけることが可能となる。水を含有する被処理物が水溶液の場合には、水分含有率を低下させることは、溶質濃度を上昇させることになる。
【0030】
本発明の方法は、有機廃棄物の容積減少に適用することができる。これにより、廃棄物(ゴミ)の減量が達成される。
【0031】
本発明の方法により、水分含有量の少ない、高カロリーの有機廃棄物燃料を得ることができる。また、本発明の方法により、水分含有量が少ないためにカビが発生し難い家畜用や魚用の飼料や餌料、及び肥料が得られる。飼料や餌料の製造をより低温で実施すれば、熱変性による品質の低下が生じない。また、飼料や餌料中に水分含有率の低下のための処理に使用した油の一部又は全てを混在させれば、高カロリーの飼料や餌料となる。
【0032】
本発明の方法は、海水の濃縮や海水からの塩の製造にも適用することができる。これは、海水の濃縮や海水からの塩の製造に際し、実施すべき方法の選択肢を豊富化するものである。また、海水の濃縮や海水からの塩の製造の際に、海水に由来する水蒸気が得られ、これを凝縮すると、真水が得られる。従って、本発明により、海水から真水を製造する際の、実施すべき方法の選択肢をも豊富化される。
【0033】
本発明の方法は、被処理物中の油溶性物質の油中への抽出にも適用することができる。これにより、油溶性有用物質の効率的な抽出が達成され得る。また、麹菌類、クモノスカビ及びケカビからなる群から選択される少なくとも一種の微生物や抗酸化性物質を併用すれば、油の酸化が抑制されるので、油溶性有用物質を含む高品質の油を入手することが可能となる。
【0034】
さらに、畜産糞尿、死魚、魚のあら等の被処理物を、本発明の方法であって上記微生物を併用する方法で処理すると、被処理物の臭いが大幅に低減されるので、臭いによる公害が解決される。
【0035】
本発明の方法を、加熱をしないで実施すれば、エネルギー・コストが大幅に削減される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明において、「被処理物」は、水を必須成分として含有する有機物や無機物をいう。水は、通常は被処理物に元々含有されているものであるが、添加されたものであってもよい。「被処理物」は、さらに、油溶性物質を含有するものであってもよい。「油溶性物質」とは、本発明の方法を実施した場合に、混合に使用した油に溶解して抽出されてくるものをいう。有機物や無機物は、一種のみでも、二種以上の混合物であってもよい。被処理物の形態は、固体と液体とが混在するもの(例えば、吸水した固体や、吸水した固体と液体との混合物、固体と水系液体と油系液体との混合物)であってもよいし、有機物や無機物の水溶液であってもよい。
【0038】
被処理物の中、固体と液体とが混在するものの例としては、生ごみ、食品製造残渣(具体的には、野菜、果実、死魚、魚肉、畜肉等の残渣やおから、米糠、茶滓)、血液、バガス、焼酎廃液や焼酎粕、酒粕、ワイン廃液、ビール廃液やビール粕、ウィスキー廃液、コーヒー抽出粕、パーム油廃液、家畜糞尿、死魚、魚のあら、下水汚泥等の含水廃棄物や、含水茶葉、パームの実の破砕物、椿の実の破砕物等が挙げられる。また、水溶液形態の被処理物の例としては、海水や海水濃縮物等が挙げられる。
【0039】
本発明で使用する油は、本発明方法の実施温度で液状のものである。通常は、常温にて液状の油を使用する。また、油は、含水しているものであってもよい。油の具体例としては、各種植物油、天ぷら油等の食用油の廃油、工場からの燃料油の廃油、廃エンジンオイル、廃タービン潤滑油、廃グリセリン等が挙げられる。被処理物の用途により、使用する油の種類が限定される場合がある。例えば、被処理物を本発明の方法に供して得られるものを飼料や餌料の原料として利用したり、得られた濃縮物(水相)又は乾燥物が塩水や塩等の食品である場合には、各種植物油等の食用油、あるいはその廃油等を使用する。被処理物を本発明の方法に供した後に燃料として利用する場合には、工場からの燃料油の廃油、廃エンジンオイル、廃タービン潤滑油、廃グリセリン等が好ましい。被処理物を本発明の方法に供した後に、得られた油相を利用する場合には、その油相の用途に応じた油を選択する。
【0040】
被処理物と油との混合割合は、特に限定されないが、通常は被処理物≦油であり、好ましくは、被処理物の量は、油の量の60重量%以下である。
【0041】
被処理物と油との混合は、水の沸点未満の温度で行う。「水の沸点未満の温度」と規定したのは、本発明方法は、常圧下は勿論のこと、減圧又は加圧下でも実施可能であるからである。なお、「水の沸点未満の温度」は、常圧下では100℃未満をいう。常圧下では、被処理物と油との混合を、使用する油の融点以上、80℃以下で行うことが好ましいが、使用する油の融点+5℃以上、70℃以下で行うことができ、20乃至60℃で行うことができ、25乃至50℃で行うことができ、30乃至45℃で行うことも可能である。より低い温度で混合を実施すると、被処理物中のある種の成分が、有毒物質に変化したり、重合するリスクが非常に小さくなる。被処理物に含まれている成分が重合すると、水分含有率の低下効率が下がるのみならず、水分含有率を実質的に0重量%とすることが困難となる場合もある。
【0042】
後でより詳細に説明するが、本発明の方法は、油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下において実施する場合もある。そのような場合には、被処理物と油との混合時の温度は、使用する微生物の耐熱温度以下であることが好ましい。
【0043】
被処理物と油との混合は、被処理物中の水分を気体と接触させ、水分を気体に担持させるために行う。具体的には、被処理物と油との混合物に気体をバブリングさせる、撹拌を行う、被処理物と油との混合物が入った容器を振とうもしくは振動させる等の手段により、被処理物と油とを混合させる。バブリングは、気体の供給量が多いほど、被処理物の水分含有率の低下効率が高まるので、1分間あたり、被処理物と油との総量の100乃至2000容積%の気体を泡状で提供することが好ましい。また、個々の泡の体積は、小さいほど好ましい。撹拌速度は、被処理物と油との混合物の粘度によるが、例えば100乃至10,000rpmの速度で行うことが好ましい。
【0044】
気体は、無毒なものであれば特に限定されないので、コストの点からは空気が好ましいが、油を酸化させないという観点からは、窒素や二酸化炭素が好ましい。気体には被処理物中の水分を担持させるのであるから、乾燥気体であることが好ましい。
【0045】
被処理物と油との混合中は、乳化状態となっている、即ち、通常は油(外相)に被処理物に由来する水分(内相)が分散しているものと思われる。しかし、この乳化状態は、一時的な不安定なものである。水と油のみでは、撹拌やバブリング等の混合操作を止めれば、乳化状態ではなくなる。また、被処理物中の水分がなくなれば、乳化状態ではなくなる。したがって、混合中は、「不安定な乳化状態」にあったのである。
【0046】
なお、混合中、処理物と油との混合物全体が乳化状態となっているとは限らない。一部のみが乳化状態となっている場合もある。
【0047】
使用した油や被処理物に、界面活性を示す成分が混入していたり、後記するように、本発明方法の実施に当たって界面活性剤を添加する場合には、混合操作を止めた直後には水相と油相とに分かれない場合もある。そのような場合であっても、ある程度の時間、静置しておくことで水相と油相との分かれる場合には、混合時には「不安定な乳化状態」であったと判定する。これは、例えば、使用する油と、被処理物の代わりに水を用意し、それらに使用する予定の界面活性剤を使用する予定の量で添加し、24時間混合を行い、混合を止めた24時間後にその分離状態を観察して、混合中に「不安定な乳化状態」であったか否かを判定することによって行う。この際、被処理物の代わりに使用する水の量(油に対する量比)は、使用する予定の被処理物に由来する水分量(本発明の方法を実施する際の油と被処理物との量比を決めておき、その量比の際の被処理物に由来する水分量を算出する)に相当する量とする。判断は、混合を止めた24時間後に、分離した下層(水相)をとり、着色による影響を受けない波長(例えば、波長660nm)で透過率を測定することによって判定する。この際の透過率が20%以上であれば、混合中は不安定な乳化状態であったといえる。この際の透過率が50%以上であるような条件で本発明の方法を実施することが好ましく、70%以上であるような条件で本発明の方法を実施することがより好ましく、90%以上であるような条件で本発明の方法を実施することが特に好ましい。なお、混合の停止後、時間をおくことなく、油相と水相とが上下二層に分離するような態様では、上記の方法で透過率を測定するまでもなく、「不安定な乳化状態」であったといえる。
【0048】
被処理物と油との混合物の表面は、曝気されている。例えば、混合のためにバブリングが行われた場合には、前記混合物中に形成された泡は、当該混合物の表面から出てくるが、当該混合物の表面は、当該混合物の周囲に元々存在した気体(通常は空気)と、この泡に由来する気体とに曝されている。また、撹拌のみが行われた場合には、当該混合物の表面は、当該混合物の周囲に元々存在した気体(通常は空気)に曝されている。被処理物に由来する水分をより効率的に除去するために、被処理物と油との混合物の上方に気体を送風させてもよい。送風される気体は、被処理物と油との混合物の上方を1回のみ通るものであってもよいし、循環使用されてもよい。但し、気体は、被処理物と油との混合物の上方を通過する度に水分を吸収するので、循環使用する場合には、被処理物と油との混合物の上方を通ってきた気体を凝結器に通し、そこで水分を除去する、即ち気体の乾燥が行われるように構成することが好ましい。
【0049】
被処理物と油とを混合する際に、カチオン性又はアニオン性の界面活性剤を共存させてもよい。使用するカチオン性又はアニオン性の界面活性剤の種類及び量は、前記した「不安定な乳化状態」が実現されるような種類及び量である。ノニオン性及び両性界面活性剤は、「安定な乳化状態」を形成してしまう場合が多いため、好ましくない。
【0050】
カチオン性界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、及びヤシ油アミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩等が挙げられる。
【0051】
アニオン性界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、高級アルコール硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のドデシルベンゼンスルホン酸塩、ステアリン酸ナトリウム石鹸、オレイン酸カリウム石鹸等の脂肪酸塩、N−アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−アシル−L−グルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
界面活性剤は、本発明の方法の実施後に得られるものの用途により、使用できるものが限定される場合がある。例えば、本発明の方法の実施後に得られるものが、飼料や餌料の原料として利用されたり、塩や食用油等の食品である場合には、食品用に使用が許されているものを使用する。
【0053】
被処理物と油との混合は、被処理物中の水分が実質的になくなるまで行ってもよい。この場合、本発明の方法の実施後には固体と油とが残るので、固体を取り出し、必要であれば付着している油を除去する処理を行う。例えば、ヘキサン等で油を溶解させる。油を利用する場合には、固体を除去するのみでよい。被処理物と油との混合は、特に被処理物が水溶液である場合には、所望の程度まで濃縮されたら、混合を終了してもよい。この場合には、本発明の方法の実施後に得られたものを放置して、油相と水相との上下二層に分離させ、必要な相(油相又は水相)を、固体や他の相の混入がないように取り出す。また、用途によっては、本発明の方法の実施後に得られるもの(水分が実質的にないものであっても、ある程度の水分が残っているものであってもよい)全体をそのまま、利用してもよい。
【0054】
本発明の方法の実施後に得られる油を利用する場合には、被処理物と油との混合は、油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下において実施してもよい。
【0055】
油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の例として、麹菌が挙げられる。麹菌とは、その学名でいうと、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びモナスカス(Monascus)等である。アスペルギルス・ニガーに属する麹菌の例としては、黒麹菌(Aspergillus awamori)及び白麹菌(Aspergillus usamiiやAspergillus kawachii)が挙げられる。アスペルギルス・オリザエに属する麹菌の例としては、黄麹菌、醤油麹菌(Aspergillus soya又はAspergillus sojae)及びたまり麹菌(Aspergillus tamari)が挙げられる。モナスカス属の麹菌の例としては、紅麹菌が挙げられる。
【0056】
麹菌の添加には、例えば、種麹を使用する。種麹は、米などを原料として麹菌を5日間程度培養し、胞子を充分に着生させたものを、乾燥したものである。原料に胞子が着生したままのもの(例えば、麹菌胞子が多量に着生した米を乾燥させたもの)を「粒状種麹」といい、例えば篩を用いて胞子のみを回収したものを、「粉状種麹」という。このような種麹を、被処理物に添加する。
【0057】
種麹の使用に代わって、好ましくは培養開始後6時間以上が経過した固形発酵麹や液体発酵麹を添加することもできる。
【0058】
麹菌を使用する場合には、被処理物と油との混合時の温度は、通常は20乃至45℃程度であり、30乃至40℃が好ましい。なお、例えば発酵熱によって温度が上昇しすぎる場合には、適宜冷却を行う。
【0059】
油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の他の例として、クモノスカビ(Phizopus)及びケカビ(Mucor)がある。これらは、ごく普通に存在するカビである。なお、クモノスカビには、紹興酒の醸造に使用されているものや、テンペの製造に使用されているもの等、食品工業において使用されているものもある。
【0060】
クモノスカビやケカビも胞子を形成するので、胞子状態のものを被処理物に添加すればよい。また、これらのカビを使用する場合の、被処理物と油との混合時の温度は、通常は20乃至45℃程度であり、30乃至40℃が好ましい。
【0061】
被処理物と油との混合は、抗酸化性物質の存在下において実施してもよい。本発明の方法の実施後に得られる油を利用する場合には、油の酸化を防ぐという効果が得られるからである。
【0062】
抗酸化性物質には、水溶性のものと油溶性のものとがあるが、いずれでもよい。抗酸化性物質の例として、アスコルビン酸、グルタチオン、リポ酸、尿酸、エトキシキン、α−トコフェロール、レチノール、ユビキノール、ポリフェノール類、カロテノイド類、没食子酸プロピル、t−ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン等がある。これらの物質は、物質毎に、適正量として規定されている量で使用する。
【0063】
本発明の方法は、冷却塔(クーリング・タワー)を使用して実施することもできる。使用する冷却塔は、市販品でよい。
図1に基づいて、冷却塔を使用する場合の一例について説明する。
図1は、冷却塔の一例を、その垂直断面について示す模式的線図である。但し、
図1は、説明に必要な個所のみを描写したものであり、実際の冷却塔は、図示されていない構成要素であって必要なものを備えている。冷却塔100は、その上部にはファン30が、その外周部には充填材10が、下部には貯留槽50が設けられている。貯留槽50の下部と充填材10の上部との間にはパイプ20が存在し、パイプ20の途中にはポンプPが存在し、パイプ20の末端には、図示しないが、多数の噴射ノズルが存在する。
【0064】
本発明の方法は、次のようにして行う。冷却塔100の下部に配置された貯留槽50内に、被処理物と油とを供給する。供給された被処理物と油との混合物を、ポンプPの吸引力によって、貯留槽50からパイプ20を通って冷却塔100の上部(より具体的には充填材10の上部)に輸送し、パイプ20の先端のノズルから充填材10に向かって噴射する。そうすると、被処理物と油との混合物は、充填材10を経て、貯留槽50に落下する。被処理物と油との混合物が充填材10を通過している間に、被処理物の水分含有率は低下し、また、被処理物中の油溶性物質は、油中に移行する。なお、パイプは、冷却塔内部に設置されていてもよい。
【0065】
冷却塔100を作動させる際には、ファン30を回転させ、
図1中に「気体」と添え書きした矢印で示したような方向で、気体を通過させてもよい。これにより、被処理物の水分含有率の低下が促進される。なお、
図1に示した例では、気体は充填材10を水平方向に横断し、被処理物と油との混合物は、充填材10の上部から下部に向かって落下するので、直流型であるが、向流型(被処理物と油との混合物の通過方向と気体の通過方向とが平行)であってもよい。
【0066】
冷却塔100を使用すると、貯留槽50中の被処理物と油は、繰り返しパイプ20及び充填材10を通過し、この間に、被処理物の水分含有率が徐々に低下していく。冷却塔を使用するに際しては、被処理物中にある程度の水分が残存している状態で、運転(本発明方法の実施)を停止することが好ましい。
【0067】
冷却塔を使用する他の方法は、貯留槽内に供給された被処理物と油との混合物を、ポンプの吸引力によって、貯留槽からパイプを通って冷却塔の上部に輸送した後、冷却塔の上部においてノズルから噴射し、貯留槽に向かって落下させるというものである。即ち、充填材を利用しない方法である。なお、冷却塔の上部に輸送された混合物の一部を充填材に向かって噴射し、残部をそのまま下方に向かって噴射してもよい。
【0068】
本発明の方法は、貯留槽を有する容器内で、水中ポンプを使用して実施することもできる。
図2に基づいて、水中ポンプを使用する場合について説明する。
図2は、本発明の方法を、貯留槽を有する容器内で、水中ポンプを使用して実施する場合の構成を示す模式的線図である。
図2も、説明に必要な個所のみを描写したものであり、実際の装置は、図示されていない構成要素であって必要なものを備えている。容器200は、その下部に貯留槽50を有する。貯留槽50内には、水中ポンプ70が設けられている。水中ポンプ70には、図示しないが、噴射ノズルが接続されている。
【0069】
本発明の方法は、次のようにして行う。容器200の下部に配置された貯留槽50内に、被処理物と油とを貯留させる。貯留槽50内の被処理物と油との混合物を、水中ポンプ70が吸い込み、水中ポンプ70に接続されている噴射ノズルから噴出させる。即ち、噴水状に吹き上げる。そうすると、被処理物と油との混合物は上昇し、そしてその後貯留槽50内に落下する。被処理物と油との混合物が上昇及び落下している間に、被処理物の水分含有率は低下し、また、被処理物中の油溶性物質は、油中に移行する。
【0070】
図2には、密閉容器を使用した場合について記載したが、容器は開放形であってもよい。噴出された被処理物と油との混合物は、容器に天井がなくても、重力によって落下するからである。また、容器に、気体が通過する通路を設けてもよい。
【0071】
次に、本発明方法で得られる処理物の用途毎に、本発明の方法を更に詳細に説明する。
【0072】
(A)有機廃棄物と油に由来する燃料の製造
燃料は、(1)被処理物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物と油との混合物を成形する工程を経て製造される。工程(1)終了時点における水分含有率は、燃料として支障のない範囲であればよい。なお、工程(1)終了時点における水分含有率が実質的に0重量%である場合には、それは粉末等の状態の固形物と油との混合物となる。また、成形は、例えばエクストルーダを用いて行う。成形のために、適切な添加剤を加えてもよい。また、工程(1)を実施して得られる水分含有率の低下した被処理物と油との混合物を、成形せずにそのまま燃料として使用することも可能である。
【0073】
(B)有機廃棄物に由来する飼料や餌料、或いは肥料の製造
飼料や餌料、或いは肥料は、(1)被処理物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程(工程(1))を経て製造される。工程(1)の後に、水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程(工程(2))を実施してもよい。
【0074】
工程(1)終了後の被処理物の水分含有率は、特に限定されない。工程(1)終了後の被処理物の用途や、その後の処理方法に応じて、所望の程度とされる。工程(1)は、被処理物の水分含有率が実質的に0重量%となるまで行ってもよい。例えば、工程(1)を、被処理物が固形(「固形」の概念には、塊や粉末を含む;この場合、通常は水分含有率は低い)となるまで行い、工程(2)では、工程(1)を経た被処理物を油から分離し、その後、追加の工程、即ち、その被処理物を油を溶解除去できる溶媒で洗浄する工程(工程(3))と、洗浄に使用した溶媒を除去する工程(工程(4))を行ってもよい。飼料や餌料を製造する場合であって且つ油を溶解除去する工程を実施する場合、そのために使用する溶媒は、動物が摂取しても問題がないものを選択する。そのような溶媒の例としては、エタノール、ヘキサン、エーテル等が挙げられる。
【0075】
処理に使用した油は、製造される目的物に応じ、水分含有率が低下した被処理物から除去されてもされなくてもよい。例えば、工程(1)終了後に、水分含有率が低下した被処理物と処理に使用した油のすべてを使用して、飼料、餌料又は肥料を製造してもよい。あるいは、工程(2)を実施、すなわち、工程(1)を経た被処理物を油から取り出すことによって油から分離するが、分離された被処理物に混入している油については、その一部又は全てを除去してもよいし、まったく除去しなくてもよい。工程(1)又は(2)の後に、分離された被処理物に混入している油の一部を除去する方法の例としては、スクリュー・プレス等の圧搾機を使用した圧搾方法や、フスマ等の濾過助剤を用いた濾過方法が挙げられる。
【0076】
飼料、餌料又は肥料の原料となる有機廃棄物としては、生ごみ、食品製造残渣、焼酎廃液、酒粕、ワイン廃液、ビール廃液、ウィスキー廃液等が挙げられる。
【0077】
工程(1)を経た被処理物の水分含有率がどの程度であるかにかかわらず、工程(2)で工程(1)を経た被処理物を油から分離し、その後、得られた被処理物を発酵工程に供してもよい。本発明の方法を、油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下で実施した場合には、発酵は、本発明の方法の実施に際して使用した微生物による発酵であってもよい。また、工程(2)の後に新たに添加した発酵に寄与する微生物による発酵であってもよい。なお、工程(2)は、例えば、遠心分離を行い、油から被処理物を取り出すか又は油を除去し、そして、被処理物を圧搾して混入している油の含有率を低下させることによって実施することもできる。
【0078】
上記の方法で製造した、乾燥した飼料、餌料、肥料は、それのみで使用することもできるし、ビタミン類や抗生物質等を添加してから使用してもよい。また、粉末、顆粒、特定形状の成形体等に加工されてもよい。
【0079】
(C)有機又は無機廃棄物に由来する肥料製造原料の製造又は固形ゴミとしての廃棄
肥料製造原料等は、(1)被処理物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程を経て製造される。工程(1)は、目的物が肥料製造原料である場合には、好ましくは、工程(1)終了時点における被処理物の水分含有率が50重量%以下となるまで行う。また、固形ゴミとして廃棄する場合には、好ましくは、工程(1)終了時点における被処理物の水分含有率が実質的に0重量%となるまで行う。工程(2)では、工程(1)を経た被処理物を油から分離し、その後、(3)その被処理物を、油を溶解除去できる溶媒で洗浄し、(4)洗浄に使用した溶媒を除去する。
【0080】
工程(1)を経た被処理物の水分含有率がどの程度であるかにかかわらず、工程(2)で工程(1)を経た被処理物を油から分離し、その後、得られた被処理物を発酵工程に供してもよい。本発明の方法を抗酸化性を示す微生物の存在下で実施した場合には、発酵は、本発明の方法の実施に際して使用した微生物による発酵であってもよい。また、工程(2)の後に新たに添加した発酵に寄与する微生物による発酵であってもよい。なお、工程(2)は、例えば、遠心分離を行い、油から被処理物を取り出すか又は油を除去し、そして、被処理物を圧搾して混入している油の含有率を低下させることによって実施することもできる。
【0081】
(D)家畜糞尿、魚や動物の骨等に由来する肥料製造原料の製造又は固形ゴミとしての廃棄
家畜糞尿、魚や動物の骨等の処理には、好ましくは油の酸化を防ぐという効果を示す微生物である麹の存在下において、本発明の方法を実施する。即ち、(1)被処理物を、麹の存在下において、麹の耐熱温度以下にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程を経て製造される。好ましくは、工程(1)終了時点における被処理物の水分含有率が実質的に0重量%となるまで、工程(1)を行う。工程(2)では、工程(1)を経た被処理物を油から分離し、その後、(3)その被処理物を、油を溶解除去できる溶媒で洗浄し、(4)洗浄に使用した溶媒を除去する。この方法では、家畜糞尿や、魚や動物の骨等に由来する悪臭が、殆どゼロとなる。
【0082】
(E)塩の製造及び海水の真水化
塩の製造は、(1)海水又はその濃縮物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、水分を蒸発させ、塩を析出させる工程、及び(2)析出した塩を油から分離する工程を経て製造される。工程(2)では、析出した塩の油に接触している部分は使用しなくてもよい。
【0083】
工程(1)を実施する際に、海水又はその濃縮物と油との混合物の上方に気体を流し、海水又はその濃縮物と油との混合物の上方を通ってきた気体を、例えば凝縮器に導くことにより、気体が担持してきた水蒸気を真水として回収する。この場合、海水又はその濃縮物と油との混合物の上方に流す気体は、循環使用することができる。
【0084】
なお、上記方法を応用して、工程(1)を、原料として海水を使用し、塩が析出しない程度で実施して海水濃縮液を生成させ、それを工程(2)に供して油から分離すれば、海水濃縮液を製造することができる。
【0085】
(F)含水茶葉からの油溶性物質の抽出
茶葉には、有用な油溶性物質も含まれている。例えば緑茶飲料を製造した後の含水茶葉から、有用な油溶性物質を油中に抽出するために、本発明方法を適用することができる。即ち、(1)含水茶葉を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下、より好ましくは40℃以下)にて油と混合することにより、茶葉中の油溶性物質を油中に抽出し、次いで、(2)茶葉から油を分離する。この方法を実施することによって得られる、茶葉中の油溶性物質が溶け込んだ油は、美しい緑色をしており、例えば食品として使用することができる。食品として使用する場合には、本発明方法の実施に際しても、食用油を使用することになる。
【0086】
茶葉には抗酸化性物質が含まれているが、本発明方法の実施に際して、油の酸化を更に防止したい場合には、本発明方法を、より低温側で実施する、及び/又は、麹菌等の油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下において、その微生物の耐熱温度以下の温度で実施することが好ましい。
【0087】
(G)パームの実や椿の実の破砕物からの油溶性物質の抽出
パームの実や椿の実は、有用な油供給源である。これらの実には、油の他に、水系液体も含まれている。したがって、これらの実から油を採るに際しても、本発明方法を適用することができる。以下においては、パームの実から油を採る場合の方法を記載するが、椿の実の場合も同様である。
【0088】
(1)パームの実の破砕物(殻等の固体、油及び水系液体の混合物)を、水の沸点未満で且つパーム油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下、より好ましくは30乃至40℃)にてパーム油と混合することにより、パームの実の破砕物中のパーム油を、混合に使用したパーム油中に抽出し、次いで、(2)パーム油が抽出された後の殻等の固体と水系液体の混合物、又は殻等の固体(水分含有率が実質的に0重量%となるまで、工程(1)を実施した場合)から油を分離する。
【0089】
この方法を実施することによって、パームの実の破砕物から確実にパーム油のみを抽出でき、また、工程(1)を水分含有率が実質的に0重量%となるまで実施すれば、残存するのは殻等の固体のみであるから、パーム油搾油後のパーム油廃液処理の問題が解決される。また、従来の搾油よりも、高効率でパーム油を採ることができる。
【0090】
なお、使用する油は、採油する油と同じものが好ましいが、得られるものが油混合物でよい場合や、むしろ油混合物を得たい場合には、採油する油とは異なる種類の油を使用してもよい。
【0091】
この方法の実施に際し、パーム油の酸化を防止又は低減させるためには、本発明方法を、より低温側で実施する、麹菌等の油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下において、その微生物の耐熱温度以下の温度で実施する、又は抗酸化物質の存在下において実施することが好ましい。これらの対策の中でも、本発明方法を、麹菌等の油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下において、その微生物の耐熱温度以下の温度で実施することが特に好ましい。麹菌等の使用により、パーム油の融点が下がるという効果も得られる。
【0092】
(H)コンポストの製造(その1)
コンポストは、(1)生ごみや食品製造残渣等の被処理物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物と油との混合物を、微生物によって発酵させる工程を経て製造される。工程(1)終了時点における水分含有率は、コンポスト製造のための発酵に支障のない範囲であればよい。同様に、油も、コンポスト製造のための微生物発酵に支障のない範囲であればよい。また、使用する微生物も、通常コンポストの製造に使用されているものを使用すればよい。
【0093】
(I)コンポストの製造(その2)
コンポストは、(1)生ごみや食品製造残渣等の被処理物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる工程、(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程、及び(3)工程(2)で得られた水分含有率の低下した被処理物を、微生物によって発酵させる工程を経て製造される。工程(1)終了時点における水分含有率は、コンポスト製造のための発酵に支障のない範囲であればよい。工程(2)は、例えば、遠心分離を行い、油から被処理物を取り出し、そして、被処理物を圧搾して混入している油の含有率を低下させることによって実施することができる。被処理物中に残存する油の量は、コンポスト製造のための微生物発酵に支障のない範囲であればよい。また、使用する微生物も、通常コンポストの製造に使用されているものを使用すればよい。
【0094】
(J)液状飼料の製造
液状飼料は、(1)生ごみや食品製造残渣等の被処理物を、水の沸点未満で且つ油が液状である温度(好ましくは常圧下において80℃以下)にて油と混合することにより、被処理物の水分含有率を低下させる(好ましくは75乃至95重量%、さらに好ましくは90乃至95重量%とする)工程、及び(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程を経て製造される。なお、工程(2)において、水相と油相とを完全に分離することは、必ずしも必要ではない。その水相が液状飼料として許容できる範囲内であれば、ある程度の量で油が混入していてもよい。また、工程(2)の一部として、遠心分離や圧搾を行ってもよい。
【0095】
例えば被処理物が野菜である場合、その水分含有率は98重量%程度であり、栄養価も低く、繊維質が多いために液状とはならず、リサイクルも困難である。しかし、そのような野菜を本発明の方法に供すれば、容易に、適切な水分含有率の液状飼料が得られる。
【0096】
液状飼料の製造に際しては、油の酸化を防ぐという効果を示す微生物、好ましくは麹菌の存在下において、本発明の方法を実施することが好ましい。このような微生物は、繊維質の分解作用も示すので、まさに液状の飼料が得られる。また、麹菌を使用した場合には、油から分離した後の水相(液状の飼料)は、比較的pHが低い(たとえはpH=4前後である)ので、腐敗が生じ難いという特徴も示す。また、本発明の方法を実施した後、即ち工程(2)の後に、発酵工程を設けてもよい。その場合、発酵は、本発明の方法の実施に際して使用した微生物による発酵であってもよいし、工程(2)の後に新たに添加した発酵に寄与する微生物による発酵であってもよい。
【0097】
(K)魚粉の製造
魚粉は、(1)死魚や魚のあらを、水の沸点未満で且つ油が液状である温度にて、油の酸化を防ぐという効果を示す微生物、好ましくは麹菌を含む油と混合することにより、死魚や魚のあらの水分含有率を低下させる工程を経て、必要であればさらに、(2)水分含有率の低下した被処理物を油から分離する工程を経て製造される。
【0098】
工程(1)を実施すると、悪臭が発生することなく、死魚や魚のあらが乾燥される。乾燥を十分に行えば、粉末状固体が生じる。工程(1)の後に工程(2)を実施し、さらに、分離後の粉末状固体に混入している油を油溶性溶剤で除去すれば、さらさらとした粉末(魚粉)が得られる。なお、用途によっては、工程(1)で使用した油の一部又は全部を含む魚粉を製造してもよい。また、工程(2)で「水分含有率の低下した被処理物を油から分離する」とは、被処理物を油から取り出せばよい。工程(2)を実施した後に、水分含有率の低下した被処理物に混入している油を完全に除去しなければならないわけではない。処理に使用した油の全部又は一部が混在したままで製造された魚粉も、本発明の方法によって製造された魚粉である。本発明の方法の実施により、魚粉の水分含有率を実質的に0重量%とすることも可能である。
【0099】
魚粉の製造に際しても、コンポストの製造(その2)に記載した方法を適用することができる。工程(3)は発酵工程であり、通常は発酵に寄与する微生物を添加するが、油の酸化を防ぐという効果を示す微生物の存在下で本発明の方法(魚粉の製造方法)を実施した場合であって、当該微生物が発酵に寄与するもの(例えば麹菌)である場合には、新たに微生物を添加することなく実施できる。
【0100】
(L)家畜の血液の乾燥
血液の乾燥は、(1)賭畜場で発生した血液を、血液中の蛋白質が変性を生じない温度(好ましくは40℃以下)で且つ油が液状である温度にて油と混合することにより、血液の水分含有率を低下させる工程、及び(2)水分含有率の低下した血液を油から分離する工程を経て実施される。
【0101】
血液の乾燥は、(J)魚粉の製造とほぼ同様に実施することができ、血液の粉末を得ることができる。したがって、この場合も、麹菌の存在下で本発明の方法を実施することが好ましい。
【0102】
血液の乾燥に際しても、コンポストの製造(その2)に記載した方法を適用することができる。なお、麹菌の存在下で本発明の方法(血液の乾燥方法)を実施した場合には、工程(3)の実施に際し、新たに微生物を添加する必要はなく、麹菌によって発酵させればよい。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0104】
(実施例1)水と油との混合下における水の蒸発
(1)500mL容の三角フラスコに、水道水(100mL又は200mL)、又は、水道水(100mL)及び天ぷら油の廃油(100mL)を入れ、30℃にて、200rpmで24時間撹拌した。蒸発した水の量を、表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
(2)1L容のメスシリンダーに、水道水(200mL又は400mL)、又は、水道水(200mL)及び天ぷら油の廃油(200mL)を入れ、30℃にて24時間、2.5L/分の速度で空気を通し、バブリングを行った。蒸発した水の量を、表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表1及び2から明らかなように、水のみの場合と比べて、撹拌やバブリングによって油に水を混合させ、一時的な、即ち不安定な乳化状態とした方が、水分が蒸発しやすいことが明らかである。
【0109】
(実施例2)水の蒸発に対する水と油の比率や絶対量の影響
(1)500mL容の三角フラスコに、水道水及び天ぷら油の廃油を入れ、30℃にて、200rpmで24時間撹拌した。蒸発した水の量を、表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
表3より、油/水=1以上(重量比)で、より効率よく水を蒸発させることが出来ることが明らかとなった。
【0112】
(2)1L容のメスシリンダーに、水道水及び天ぷら油の廃油を入れ、30℃にて24時間、2.5L/分の速度で空気を通し、バブリングを行った。蒸発した水の量を、表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
水と油の絶対量の相違による減水率(蒸発による減水量/当初の水の量)の相違は、水と油との比率は同じであること及び通気量が同じであることから、撹拌効率の相違によると考えられる。
【0115】
(実施例3)エンジンオイルの使用
1L容のメスシリンダーに、水道水(200mL)及びエンジンオイル(200mL)を入れ、30℃にて24時間、2.5L/分の速度で空気を通し、バブリングを行った。蒸発した水の量を測定し、減水量と同量の水道水を加え、更に24時間、同様にバブリングを行った。これを5日間継続した。1時間あたりの減水量を表5に示す。
【0116】
【表5】
【0117】
水分は油中に取り込まれるのではなく、蒸発除去されるので、経時により水分の蒸発効率が変化しない。
【0118】
(実施例4)界面活性剤の影響
200mL容の三角フラスコに、水道水(50g;但し、界面活性剤が100%品でない場合には、界面活性剤に由来する水を加えて50g)、天ぷら油の廃油(50g)及び界面活性剤(有効分で0.1重量%となる量)を入れ、30℃にて、200rpmで24時間振とうした。蒸発した水の量を測定した。使用した界面活性剤は、以下の通りである。また、対照として、界面活性剤無添加系についても同様に処理し、測定を行った。減水量と減水率(蒸発による減水量/当初の水の量)を表6に示す。
【0119】
アニオン系界面活性剤: 脂肪酸ナトリウム
カチオン系界面活性剤: 塩化ベンザルコニウム(10%溶液)
ノニオン系界面活性剤: ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート
両イオン系界面活性剤: 3−[3−クロルアミドプロピル]ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルフォネート
【0120】
【表6】
【0121】
また、振とうを止めてから24時間静置し、分離した下層(水相)を採取し、その透過率を、分光光度計にて660nmにおいて測定した。その結果を表7に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
表6及び表7から明らかなように、乳化力の強い界面活性剤を使用した場合、即ち、分離後の水相の透過率が低い場合には、水の球(乳化状態における内相)の周りに安定的に油の膜(乳化状態における外相)が形成され、界面活性剤を含まない場合と比べて水分の蒸発が促進されるとはいえない。水と油との混合時に不安定な乳化状態を形成するアニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤を使用すると、界面活性剤がない場合(対照)と比べて、撹拌時に水が小さい球(乳化状態における内相)となり、水の総表面積が大きくなるために、また、乳化状態が不安定であるため、水の球(乳化状態における内相)はできては壊れ、その周りに油の膜(乳化状態における外相)が存在しない瞬間ができるので、水分の蒸発がより促進されるものと考えられる。なお、対照(界面活性剤なし)の透過率が100%とならなかったのは、天ぷら油の廃油中に、界面活性物質が含有されていたためであると考えられる。
【0124】
(実施例5)焼酎廃液の乾燥
500mL容の三角フラスコに、焼酎廃液30gと天ぷら油の廃油150gを入れ、蓋をし、オートクレーブで121℃にて15分間、殺菌を行った。その後、室温に放置してさました。この焼酎廃液と廃油との混合物を、蓋を開けた状態で、室温にて、200rpmで95時間撹拌した。実験の開始前及び途中で、焼酎廃液と廃油とが入った三角フラスコの重量を測定し、重量の減少量(減少したのは焼酎廃液中の水であるから、これを「減水量」という)と、減水率(減水量/当初の焼酎廃液の重量)を算出した。結果を表8に示す。
【0125】
【表8】
【0126】
焼酎廃液の含水率は、約95重量%であるといわれている。表8から明らかなように、95時間後には、焼酎廃液中の水分はほぼ無くなった。実際、三角フラスコの中には、廃油と固体が残存していた。そして、この固体を取り出してエーテルで洗浄し、その後風乾したところ、さらさらとした固体となった。なお、撹拌開始から67.5時間後に、少量(1ml)の水相をとり、一般細菌及び麹菌の数を測定したが、いずれも0であった。したがって、菌類による焼酎廃液中の固形分の分解は生じていない。
【0127】
(実施例6)残飯の乾燥
1トン容のタンクに、残飯100kgと天ぷら油の廃油600Lとを入れ、ヒーター設定温度を40℃として、600rpmにて撹拌すると共に、タンク内で下方から上方に向かってブロワーで送風を行った。タンク内容物の高さを測定し、減容率を算出した。また、タンク内容物の温度も測定した。結果を表9に示す。
【0128】
【表9】
【0129】
被処理物が残飯である場合にも、確実に水分が蒸発し、その容積が減少した。
【0130】
(実施例7)焼酎廃液の乾燥
500mL容の三角フラスコに、焼酎廃液と天ぷら油の廃油を入れ、30℃にて、200rpmで撹拌した。これを7日間継続した。蒸発した水の量(減水量)及び減水率(減水量/当初の焼酎廃液の重量)を表10に示す
【0131】
【表10】
【0132】
表10から明らかなように、焼酎廃液に対する廃油の割合が大きくなるにつれ、減水効率が高まった。廃油/焼酎廃液(重量比)=70/130,100/100及び130/70の系では、実験終了時には、水分はほぼ無くなっており、廃油と固体のみが残存していた。これは、焼酎廃液の含水率が約95重量%であるという事実と合致する。
【0133】
(実施例8)パーム油廃液(POME)の乾燥
500mL容の三角フラスコに、パーム油製造時の廃液と天ぷら油の廃油を入れ、30℃にて、200rpmで撹拌した。これを1日継続した。蒸発した水の量(減水量)及び減水率(減水量/当初のパーム油廃液の重量)を表11に示す。
【0134】
【表11】
【0135】
(実施例9)エアレーション量が蒸発効率に与える影響の検討
直径112cmの円筒形の容器に、キャノーラ油250gと水250gを入れ、30℃にて、24時間、金魚用エアーストーンにてエアレーション(バブリング)を行った。エアレーション量は、表12に示す9種類とした。24時間における水分減少量(減水量)及び減少率(減水率)を、表12に示す。
【0136】
【表12】
【0137】
(実施例10)活性汚泥の乾燥
500mL容の三角フラスコに、下水活性汚泥と天ぷら油の廃油を入れ、湿度35%、温度30℃にて、200rpmにて撹拌した。24時間後に、重量の測定を行い、減水量を算出した。次いで、試験No.1−3については、そのままさらに24時間、同様の条件下に撹拌を継続し、逐次重量の測定を行い、減水量を算出した。試験No.4については、24時間で活性汚泥中の水分がほぼ無くなってしまった(10g(当初の活性汚泥の量)−9.9g(減水量)=0.1g)ので、活性汚泥を9.5g追加してから、さらに24時間、同様の条件下に撹拌を継続し、逐次重量の測定を行い、減水量を算出した。結果を表13に示す。
【0138】
【表13】
【0139】
(実施例11) 海水の乾燥
1L容のメスシリンダーに、海水200gとキャノーラ油200gを入れ、温度30℃にて、950rpmにて撹拌すると共に、2.5L/分の速度で空気を通し、バブリングを行った。これを7日間継続した。24時間毎に、蒸発した水の量(減水量)を測定、算出すると共に、状況を観察した。結果を表14に示す。
【0140】
【表14】
【0141】
また、実験終了後に固体(塩を含む)を回収し、ヘキサンで洗浄後、80℃にて1時間乾燥させたところ、その重量は6.66g(当初の海水の重量−蒸発した水の量=6.8gであり、ほぼこの数値に相当する)であった。一方、液体(キャノ−ラ油)の重量は、199.4gであり、当初の重量と殆ど変わりがなかった。
【0142】
(実施例12)冷却塔の利用
冷却熱量13.6kw、循環水量39L/分、送風機口径300mm、電動機使用ワット数50W、配管口径25Aの小型冷却塔を用意した。この冷却塔の貯留槽に、焼酎廃液(水分:95重量%)10kgと天ぷら油の廃油80kgを入れた。ポンプを作動させて、焼酎廃液と天ぷら油の廃油との混合物を冷却塔上部まで持ち上げ、充填材上部から落下させ、貯留槽に回収した。これを連続的に行った。
【0143】
24時間後にポンプを止め、減少量(水分蒸発量)を測定し、その後焼酎廃液10kgを追加して、再びポンプを作動させた。これを7日間行った。結果を表15に示す。
【0144】
【表15】
【0145】
表15に示すように、合計70kgの焼酎廃液を添加して、減少量の合計が68kgであり、したがって、減少率は、添加した焼酎廃液の97重量%であった。これは、焼酎廃液の水分含有量にほぼ匹敵する値である。なお、焼酎廃液のみを冷却塔に入れ、同様の実験を行おうとしたが、ポンプによる焼酎廃液の吸い上げができず、直ぐに稼働停止となった。
【0146】
(実施例13)被処理物の物性に与える処理温度の影響の検討
容器に、焼酎廃液(水分:95重量%)2リットルと天ぷら油の廃油18リットルを入れた。この容器を70℃に保温しつつ、4リットル/分の速度にて空気を送り、天ぷら油の廃油に焼酎廃液を懸濁させた。通気24時間後には、焼酎廃液中の水分はすべて蒸発し、天ぷら油の廃油と焼酎廃液に由来する固形分のみとなっていた。この固形分を取り出し、付着している油をn−ヘキサンにて除去し、固形分の重量及び水分含有量を測定した。次いで、この固形分を室温にて24時間放置し、再び重量と水分含有量を測定した。
【0147】
保温温度を80℃、85℃又は90℃としたこと以外は、上記と全く同様の方法を実施した。結果を表16に示す。
【0148】
【表16】
【0149】
表16から明らかなように、本発明の方法を85℃以上の温度で実施した場合には、一旦は乾燥した固形分が得られるが、その後吸湿してしまうことが明らかとなった。したがって、本発明の方法は、80℃以下の温度で実施することが好ましい。
【0150】
(実施例14)椿油の抽出
350mL容のフラスコに、粗く砕いた椿種子(油脂含有量:35重量%)35gと水15gとを入れ、約6時間放置した。これは、入手した椿種子が乾燥していた(水分含有率:6重量%)ため、無乾燥の生の椿種子と同様の状態とするためである。
【0151】
次いで、このフラスコに、菜種油100gを入れ、このフラスコを、30℃にて12時間振とうした。振とう終了後、遠心分離(4000rpm、15分間)を行った。遠心分離後の上層(油脂画分)は111gであり、下層(水分及び固形分)は22gであった。
【0152】
以上より、水分蒸発量は17g(=(35+15+100)―(111+22))であり、椿種子から抽出された油は11g(=111−100)であることがわかった。また、椿種子からの油脂調出率は89.8重量%(=11÷(35×0.35)×100)であった。圧搾法での椿油の抽出率は約50重量%であるので、本発明の方法は、抽出効率が著しく高い。
【0153】
遠心分離後の下層には、蛋白質、炭水化物、若干の油脂及び水が含まれているが、水分含有量は少なく、そのままで保存可能である。また、この下層は、飼料や肥料として使用可能である。
【0154】
さらに、本発明の方法は、種子の乾燥及び圧搾処理を必要としないので、労力及び製造コストを大幅に削減できるという利点もある。
【0155】
(実施例15)魚のあらの乾燥
3L容の三角フラスコに、魚のあら100gと水50gと天ぷら油の廃油900gを入れ、30℃にて、12時間振とうした。振とう終了後、得られた混合物を遠心分離(4000rpm、15分間)に供し、分離した油を除去した。
【0156】
遠心分離後の油(天ぷら油の廃油と魚のあらに由来する油溶性物質)の量は830gであり、その他は116gであった。したがって、この方法の実施により、104gの主として水分が、蒸発、除去された。また、遠心分離後の油以外の成分(固形分)は、主として蛋白質であり、水分は実質的に0重量%であった。したがって、この固形分は、良質な飼料原料となると考えられる。また、この固形分は、カビの発生や腐敗の可能性が極めて低く、そのままで貯蔵可能であると考えられる。
【0157】
(実施例16)鶏糞の乾燥
3L容の三角フラスコに、鶏糞50gと天ぷら油の廃油450gを入れ、30℃にて、24時間振とうした。振とう終了後、得られた混合物を遠心分離(4000rpm、15分間)に供し、分離した油を除去した。
【0158】
遠心分離後の油(天ぷら油の廃油と鶏糞に由来する油溶性物質)の量は420gであり、その他は15gであった。したがって、この方法の実施により、65gの主として水分が、蒸発、除去された。また、遠心分離後の油以外の成分(固形分)は、主として不消化の繊維質と蛋白質であり、水分は約3重量%であった。したがって、この固形分は、飼料原料としての利用が可能であると考えられる。
【0159】
(実施例17)本発明の飼料の成長促進効果(その1)
実施例15を実施して得られた乾燥物(処理に使用した天ぷら油の廃油から取り出したものであって、天ぷら油の廃油の一部が付着しているもの)の成分分析を行ったところ、粗蛋白質が38.1重量%、粗脂肪が26.9重量%であった。即ち、実施例15を実施して得られた乾燥物は、非常に高蛋白且つ高カロリーの飼料であることが分かった。これを飼料の一部としてハマチに与え、成長促進効果の有無を観察した。
【0160】
1.実験条件
対象魚: 養殖ハマチ
試験開始時の魚数: 各試験区2000匹
試験区の飼料: 市販の養殖用ペレット飼料(96重量%)に実施例15で得られた飼料(4重量%)を混ぜたもの
対照区の飼料: 市販の養殖用ペレット飼料のみ
試験期間: 平均体長は3ヶ月、平均体重は5ヶ月、残魚数は7ヶ月
【0161】
2.結果
結果を表17に示す。表17から明らかなように、試験区では、平均体長、平均体重及び残魚数のいずれもが、対照区よりも有意に大きかった。即ち、本発明の方法によって製造された飼料は、免疫提供力を高める効果並びに成長促進効果があることが確認された。
【0162】
【表17】
【0163】
(実施例18)本発明の飼料の成長促進効果(その2)
実施例15を実施して得られた乾燥物(処理に使用した天ぷら油の廃油から取り出したものであって、天ぷら油の廃油の一部が付着しているもの)を飼料の一部としてブロイラーに与え、成長促進効果の有無を観察した。
【0164】
1.実験条件
対象: こぶ種ブロイラー
ケージ内密度及び鶏の数: 3羽入りのゲージを、各試験区について6区画(18羽)
試験区の飼料: コーンと実施例15で得られた飼料とを混ぜたもの、粗蛋白質が21.1重量%、熱量が12.55MJ/kgであった。
対照区の飼料: コーン、大豆粕、フィッシュミール及びコーン油を混ぜたもの、粗蛋白質が21.2重量%、熱量が12.55MJ/kgであった。
試験期間: 15日齢から27日齢まで
【0165】
2.結果
結果を表18に示す。表18から明らかなように、試験区では、対照区よりも有意に大きい増体効果が得られた。即ち、本発明の方法によって製造された飼料は、従来の手法で製造されたフィッシュミールに比べて、増体効果が大きいことが確認された。
【0166】
【表18】