(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カテーテル穿刺部を覆う本体を有し、該本体の一側縁から中心部に向かって延びカテーテルのチューブ類が挿入できる切り欠き部を設け、上記本体の他の側縁には切断線を介して分断された補助片を設け、上記本体及び補助片の一面に粘着剤層を形成し、上記補助片の粘着剤層及び上記切断線を越えてこれに隣接する本体の粘着剤層の一部を補助剥離紙で覆って上記本体が上記補助剥離紙により一体的に支持されており、残余の本体の粘着剤層を本体剥離紙で覆ったカテーテル固定用貼付材。
上記本体の中央部には、カテーテル穿刺部を透視できるような窓孔部があり、この窓孔部の窓孔は透明性の柔軟なフイルムによって覆われている請求項1に記載のカテーテル固定用貼付材。
上記補助片は、上記本体に隣接しまたは間隔をあけて、1枚または複数枚形成され、それぞれにカテーテルのチューブ類に対応できる凹部を形成している請求項1〜4のいずれかに記載のカテーテル固定用貼付材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本体1は、カテーテル穿刺部を覆うことができる大きさを有しているもので、通常、柔軟で、丈夫な、肌触りのよい不織布、プラスチックフィルム、それらの適宜の複合体などによって形成する。例えば、各種の不織布の他、プラスチックフィルムとして、ポリエチレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系プラスチック、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体,スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等のスチレン系のエラストマー、エチレン−プロピレンゴム等のオレフィン系エラストマーなどを好適に用いることができる。これらのものは単独で使用してもよいし、適宜に複数のものをラミネートするなどで組み合わせて使用することもできる。
【0010】
この本体1には、後記するように、使用時にカテーテルに対する固定力を向上させるために補助片を貼り付けることもあるから、粘着剤層10とは反対側の表面に、シリコーン剥離処理などを行なっていないものが好ましい。
本体1に用いられる好適な態様の一つは、基材を不織布としたものであり、不織布は一般的にプラスチックフィルムと比較して高透湿性であるため、穿刺部の周辺の皮膚が過度の湿潤状態とならないようにすることが可能である。
【0011】
この本体1には一側周縁から中心部に向かって延びる切り欠き部2を設けており、この切り欠き部2には、後記するように皮膚表面31の穿刺部32から延びるカテーテルのチューブ33を挿入することができる。
図1に示すものでは、切り欠き部2の終端部に円孔部3を形成しており、チューブ33の挿通を良好にしている。切り欠き部2は、通常、長いほどカテーテルのチューブを固定する能力を向上させることができる。ただし、後記するように穿刺部32が見えるように本体1に窓孔部6を設ける場合、切り欠き部2の長さは貼付材全体の1/3〜1/2程度が好ましい。
【0012】
上記円孔部3の周辺部には、カテーテルのコネクター部が配置される場合がある。そこで、本体1の表面の切り欠き部2および円孔部3の周縁に、粘着性があり、厚手のハイドロコロイドやウレタンフォームなどの発泡体、ハイドロゲル等の層を設けることがある。これによって、コネクター部が皮膚に圧迫や摩擦等のストレスを与えて潰瘍を発生させることなどを抑制することができて好ましい。特に、配置されるものがハイドロコロイドである場合は、穿刺部位より漏れ出た血液等を吸収する能力もあって一層好ましい。
上記ハイドロコロイドの組成は特に限定されないが、例えば、スチレン・イソプレン共重合体などの熱可塑性エラストマーにCMCなどの吸水性物質を分散させたものが使用できる。こうしたハイドロコロイド層の厚さは20〜3000μm程度であり、好ましくは約200μm前後である。
【0013】
上記切り欠き部2の他側縁には、切断線4を介して補助片5を設けている。この補助片5は、上記した本体1と一体に形成すると良く、切断線4によって本体1と分離することができる。図示の補助片5には、後記するようにカテーテルのチューブ33に対応できるような凹部17を形成している。通常、上記補助片5の基材は本体1と同じ基材を用いることが多いが、異なった基材を使用することもできるし、色違いにすることもできる。
切断線4の形態として
は、穿刺部位の皮膚に本体1を貼付し、カテーテルを固定後、速やかに本体1から補助片を分離するためには、本体1と補助片5は完全に分断された状態であることが好ましい。また、上記切断線4は幅を広くし、本体1と補助片5が少し離れた状態になっていてもよい。
【0014】
図1に示すものでは、上記本体1の中央部に窓孔部6を形成しており、この窓孔部6は本体1を打ち抜いて形成した窓孔7を軟らかく、伸縮性に富んでおり、透明性のあるプラスチックフィルム8で覆ったものである。この窓孔部6の部分にカテーテルの穿刺部32を位置させるようにすると、外部からカテーテルを固定した穿刺部32の状態を透視することができる。この窓孔部6は、穿刺部位がはっきりと見える程度に任意の大きさとすることができる。
【0015】
上記窓孔7を覆うプラスチックフィルム8としては、通常、上記のような性質を有し、好ましくは防水性があり水蒸気も透過できるようなフィルム、例えば、ウレタンフィルムなど適宜のものが使用できる。図においてこのプラスチックフィルム8は本体1の上面側に形成しており、このプラスチックフィルムの皮膚側には、粘着剤層9を形成している。
上記プラスチックフィルム8を本体1の下面の皮膚側に形成することもできる。本体1の下面側に形成した場合に、本体1を不織布で形成すると使用中に窓孔7の周辺から本体の不織布がめくりあがるなどの不都合が生じることがある。このため、好ましくは上記の如くプラスチックフィルム8を本体1の上面側に形成するとよい。
【0016】
上記粘着剤層9を有するプラスチックフィルム8は、少なくとも本体1に形成された窓孔部6より大きく形成されて本体1に接着されている。このプラスチックフィルム8は、本体1にヒートシールすることによって、窓孔7の周辺部分に強力に接着するようにすることが好ましい。また、他の態様として、上記窓孔部6を形成しないで、本体1や必要により補助片5を透明性のプラスチック材料で作ることもできる。
【0017】
上記本体1及び補助片5の一面には、粘着剤層10及び11が形成されている。上記粘着剤層9,10,11は、患部などの皮膚表面31に貼付されるものであるから、皮膚に対して刺激の少ない粘着剤を使用することが好ましい。こうした粘着剤であれば、特にその組成が限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系(スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレンなど)、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等の粘着剤が挙げられる。 また、粘着剤層9、10、11はそれぞれ同じ粘着剤を用いても良いし、異なったものを組合わせて用いても良く、また発泡状態の粘着剤層とすることもできる。
【0018】
上記本体1に形成される粘着剤層10は、カテーテルの穿刺部32を覆って皮膚に固定する役目を持つため、比較的強い粘着力を有するゴム系やアクリル系粘着剤であることが好ましい。補助片5は本体1などに接着し、カテーテルを固定するために強い粘着力を有するものとすることが好ましく、例えば、ゴム系やアクリル系粘着剤を用いるとよい。
一方、本体の窓孔部6に用いられるプラスチックフィルム8の皮膚側に形成される粘着剤層9には、抜針等で穿刺部から血液が滲んだりした場合でも貼付材の外部に血液が漏れ出ることを阻止し、穿刺部が見やすく、皮膚の白化を防ぐために高透湿性の粘着剤を用いることが好ましい。例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
【0019】
上記アクリル系粘着剤としては、好ましくは、例えば、2−エチルヘキシルアクリレートやブチルアクリレート、エチルアクリレートなどを主成分とするアクリル系粘着剤を用いる。粘着剤層の厚さは、粘着剤層9、10、11で同じ厚さであってもよいし、異なった厚さであっても良い。
通常、上記本体1及び補助片5の粘着剤層10、11の厚さは10〜40μm程度であり、好ましくは18〜26μm程度である。プラスチックフイルム8の粘着剤層9の厚さは5〜40μm程度であり、好ましくは10〜20μm程度にするとよい。
【0020】
上記補助片5の粘着剤層11の表面は補助剥離紙13によって覆われていると共に、この補助剥離紙13は上記切断線4を越えて隣接する本体1の粘着剤層10の一部を覆うようになっている。この補助剥離紙13は本体1の粘着剤層10側で折り返されており、その間に手を差し入れて補助片5の部分を持つことができる。
上記本体1の粘着剤層10において、上記補助剥離紙13によって覆われていない残余の部分は、窓孔部6の粘着剤層9を含めて本体剥離紙12によって覆われている。図においては更に、補助剥離紙13を覆ってカテーテル固定用貼付材15の全体を覆うように拡がっている。
上記切り欠き部2側の本体の粘着剤層10は、折り返された剥離紙14,14を差し込んでおり、この部分が使用時の持ち手となるようになっている。
【0021】
本貼付材の製造法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、基材の不織布に粘着剤を塗布して剥離紙で覆って剥離紙つき粘着ロールを作製する。この粘着ロールにレシプロ機などによって窓孔7を持つ本体1及び補助片5が一体となった貼付材を切り抜く。窓孔7をこれよりも大きな粘着剤層9を有するプラスチックフィルム8で覆って本体1の表面にヒートシールする。次に、最終的な形態の剥離紙を付与してから切断線4を形成して本体1と補助片5を分離可能にし、切り欠き部2及び円孔部3を含む外形を剥離紙と共に全抜きして作製することができる。
【0022】
この貼付材15を皮膚表面31から出ているカテーテルの穿刺部32に使用する場合(
図4(A))、本体剥離紙12を剥がすと、窓孔部6を含む本体1の粘着剤層9,10が露出される。そして、補助剥離紙13側及び折り返し剥離紙14側を手で掴むことができるので、本体1を展張状態に保つことができ、窓孔部6をカテーテルの穿刺部32の位置に来る様にして患部の皮膚表面31に貼り付けることができる。そして、折り返し剥離紙14を持ってカテーテルのチューブ33を本体1の切り欠き部2に挿入し、円孔部3に位置させる(
図4(B)・(C))。
【0023】
次に、上記折り返し剥離紙14,14を剥がして本体1を皮膚表面31に貼り付け、切り欠き部2によってチューブ33を保持するようにする(
図4(D))。この場合、
図1に示すように本体1の切り欠き部2の両側に剥離紙14を2枚設けることによって、1枚づつ剥がしてカテーテルチューブを固定することができる。従って、1枚の剥離紙を一度で剥がしてしまう他の態様よりも貼り直すことも少なく、確実に貼付けることができて好ましい。
【0024】
上記補助剥離紙13は、補助片5に接着していると共に、切断線4に隣接する本体1の一部分にも接着しているので、本体1との接着を剥がすと、補助片5が切断線4によって本体1から分離される(
図4(E))。
本体1から分離された補助片5は、その補助剥離紙13を剥がしてから(
図4(F))、この補助片5を上記円孔部3から延びているチューブ33に、その凹部17を宛がうようにして本体1の上に貼付する。これによって、穿刺部32近辺のチューブ33はしっかりと接着され固定され(
図4(G))、穿刺部32近傍のチューブ33に対する固定力が向上して穿刺部32から針が抜けたりする事故を充分に防ぐことができる。場合によっては、この補助片5を本体1から離れている部分のチューブ33に接着して、固定するようにすることもできる。
【0025】
上記補助剥離紙13に貼付されている補助片5にはその粘着剤層11に適宜幅のテープを貼ったり、粘着剤層を設けないことにより非粘着部18を形成することができる。
図1に示すものでは、切断線4に隣接した部分にテープを貼った非粘着部18を設けている。この非粘着部18は補助剥離紙13から補助片5を剥がすときの手掛かりとなるので、手術用の手袋を嵌めている場合でも、上記補助片5を剥がして皮膚表面に貼付することを容易に行うことができる。特に、非粘着部18を5〜8mm程度の幅で形成した場合には、カテーテルの穿刺部位を固定してから補助片5を用いてカテーテルチューブを固定するまでの一連の操作中、粘着剤が手袋に付くことを極力避けることができる。また、カテーテルを固定している補助片を剥がす際にも、非粘着部を容易に指でつまむことができるため有用である。
【0026】
こうして皮膚表面31に貼られた貼付材15の本体1及び補助片5によって、カテーテルの穿刺部32及びここから延びるチューブ33は固定状態を確実に維持することができ、また、窓孔部6より穿刺部32の状態を観察することができる。更に、カテーテルチューブを固定するために、別途サージカルテープ等を用意する必要がないため、従来の貼付材と比較して使用時の操作性を向上させることができる。
【0027】
上記補助片5を、本体1に隣接し、または間隔をあけて複数枚として補助剥離紙13の上に貼付しておくこともできる。また、補助片5が複数ある場合は、それぞれにカテーテルのチューブ類に対応できる凹部を形成しても良い。例えば、補助片5を複数枚のテープ状として、補助剥離紙13の上に並べて貼付しておくことができる。
こうしたものを使用する場合、例えば、カテーテルを穿刺後、複数の補助片5の1枚を剥がして、先ずカテーテルの穿刺部32近くのチューブ33を固定し、続いて貼付材の本体1の窓孔部6から穿刺部32が見えるようにして皮膚に貼付ける。その後、折返し剥離紙14を剥がしてチューブを固定後、更に補助片5の残りのものを補助剥離紙13から剥ぎ取り、チューブの適宜箇所を皮膚に固定するように使用することができる。
【0028】
上記補助片の複数枚とは、通常、1〜4枚程度である。また、補助片5の形状は、通常は矩形状とするが、矩形状の角を丸く切り取ったり、その他適宜の形状とすることができる。カテーテルは穿刺部から複数のチューブに分岐する場合もあるので、複数枚の補助片を設けることで、それぞれのチューブを固定することが可能である。
また、補助片の1枚又は複数枚について、名前や日付等の情報を書き込むことで、貼付材の交換時期を知ることができる。このため、補助片の基材に適宜の情報を予め印刷しておくか、または油性インキ等で文字を書けるように処理しておくと好ましい。上記の如く、本体1と補助片5は剥離紙上の同一表面側に配置されているから、補助片に対する視認性が良好で、これを貼り忘れるという問題も少ない。
なお、補助片5の複数枚を保持している補助剥離紙13は、適宜複数に分割しておけば、補助片の粘着剤層に指をふれることなく、補助片を皮膚及びカテーテルチューブに接着することができる。
【0029】
図5〜
図7に示すものは、本発明の他の態様の1つであり、本体1の一側から端部を円孔部3とした切り欠き部2を設けると共に、この本体1には2つの補助片5,5を対向するように設けたものであり、この2つの補助片5,5は、いずれも上記
図1〜3に示す補助片5と同様にして形成されている。
【0030】
これを使用する場合、補助片5を手にもって本体剥離紙12を除き、両側に位置する補助片5,5によって本体1を展張状態に維持し、窓孔部6を穿刺部32に対応させるようにし、チューブ33を切り欠き部2から円孔部3に挿入して皮膚表面31に貼付することができる。上記補助片5,5は2つ備わっているので、これによってチューブ33を2箇所で固定することができる。
【0031】
図8、9に示すものは、本発明の他の態様の1つであり、
図5〜7に示す本体1の両側に対向する補助片5,5を設けたものを、これよりも大きな1枚の剥離紙21で覆ったものである。この1枚の剥離紙21は、本体1の大部分を覆う本体剥離紙22と、2つの補助片5には各々これの全体と切断線4を越えて隣接する本体1の一部を覆う2枚の補助剥離紙23,23によって形成されている。また、この補助剥離紙23,23は、内側剥離紙24,24と外側剥離紙25,25によって構成されている。
【0032】
上記剥離紙21を構成する本体剥離紙22と、内側剥離紙24,24と外側剥離紙25,25を備える補助剥離紙23,23は、各々分離線26によって区分されている。この分離線26
は、切線によって形成することができる。
また、剥離紙21は上記の如く本体1及びその両側に対向する補助片5,5よりも大きく形成されているので、
図1〜3に示すものと異なって、補助片5に非粘着部18を形成しなくても補助剥離紙23から補助片5を容易に剥がすことができる。
【0033】
この貼付材を使用する場合、本体剥離紙22を摘まんで剥ぎ取り、補助剥離紙23、23が貼られている状態の補助片5,5を持って本体1を展張状態に保った状態で皮膚表面31に貼り付けることができる。そして、その後で補助片5を本体1から分離し、補助剥離紙23の外側剥離紙25を剥がし、凹部17をチューブ33に宛がって貼付け、更に内側剥離紙24を剥がしてチューブを固定することができる。
【0034】
図10、11に示すものは、補助剥離紙23,23を、分離線26によって上部剥離紙27,27と下部剥離紙28,28に分けるように構成されている点で相違する他は、
図8、9に示すものと同様に構成されている。
本体から剥がして分離した補助剥離紙23の上部剥離紙27や下部剥離紙28を剥がすことによって、補助片5を使用することができるもので、その他の点は、上記
図8、9に示すものと同様にして、使用することができる。
また、上記した各種のものにおいて、場合によっては本体に切り欠き部2及び円孔部3を形成していない貼付材とすることもできる。