【文献】
Kui-qing, WANG Xin, LEE Shuit-tong,Gas sensing properties of single crystalline porous silicon nanowires,Phys Lett,米国,2009年12月14日,Vol.95 No.24 ,Page.243112
【文献】
X.Li and P.W.Bohn,Metal-assisted chemical etching in HF/H2O2 produces porous sillicon,Applied Physics Letters,米国,2000年,Vol.77 Number16,2572-2574
【文献】
A.P.Li et al.,Hexagonal pore arrays with a 50-420 nm interpore distance formed by self-organization in anodic alumina ,Journal of Applied Physics,米国,1998年,Vol.84 Number11,6023-6026
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の発明を実施するための形態及び付属の図面を参照することにより、より完全な発明の理解は容易に得られるだろう。
【0013】
以下の記述では、制限ではなく説明を目的として、具体的詳細が、本発明の開示についての完全な理解を提供するために説明される。しかしながら、本願発明の主題が、これらの具体的詳細とは異なる他の実施の形態でも実践されることは、当業者にも明らかだろう。他の例では、周知の方法やデバイスの詳細な記述は、不要な詳細によって本発明の開示を不明瞭にしないように省略された。
【0014】
球体、ワイヤ、棒、チューブ及びリボンのようなナノ構造体系微細加工センサ(Microfabricated sensors)は、化学兵器剤及び爆発物の検出のための現地で展開可能な気相または液相のセンサを達成するための努力が精力的な研究に焦点があてられてきた。このようなセンサは、選択的で、高感度で、小型で、低電力で、迅速で、経済的で、使いやすく、戦場または空港のような複雑な環境で広範囲の分析物を検出できるものであるべきである。ナノ構造体の固有の電気的及び力学的性質は大きな潜在力が得られるだけでなく化学的電界効果トランジスタ(ChemFETs)のような気相検出のプラットフォーム(platform)における課題も生じる。例えば、試作品のナノスケールデバイスは、マイクロスケールのバルクデバイス(bulk device)より被検体の吸着に敏感である。なぜなら、それらは表面積対体積率が高いためである。しかしながら、それらはまた、ショットノイズ(shot noise)及び1/fノイズによるS/N比(signal-to-noise ratio)が相対的に小さいため、ナノスケールではより重要となる。シングルナノワイヤは被検体に対する反応を速めることができるが、ナノワイヤアレイを通る拡散が制限された物質移行が全てのナノワイヤの同時応答を妨げ、それによって、応答時間が長くなる。優れたナノ構造系のガスセンサは、検出素子の表面積を最大化し、ノイズ源と関連する電荷担体を減少もしくは除去し、拡散が妨げられた応答時間を最小にする。
【0015】
シリコンナノワイヤは、このような理想的なナノ構造体センサの必要条件を満たすだろう。これらは、コストを低減し、従来のCMOSデバイスの集積性を保証する既存のシリコン製造技術で製造するのは容易である。垂直アレイは、ナノスケールの主要なノイズ源(major noise sources)を最小にするとともに、センサ表面領域を最大化することによって顕著な利点を提供する。ノイズのあるワイヤとワイヤの接合は除去され、ワイヤ表面は支持基板によってブロックされない。加えて、垂直に整列したシリコンナノワイヤアレイを通した蒸気拡散は、重要である。なぜなら、拡散が妨げられると反応速度が増加するためである。
【0016】
ここには垂直ナノワイヤのアレイ、特に秩序配列された上部固体電極若しくは孔の配列、特に周期的かつ明確に定義された孔の配列を有する上部電極を有するアレイを作る方法が開示されている。上部コンタクト電極層内の孔は、ガスもしくは液体などの様々な要素が、急速にそこを通って流れ、検出ナノワイヤ領域下部接触するのを可能にする。孔または穿孔は、電極層の全体の気孔率が最大としながら、アレイ中のナノワイヤの先端と電気的接合が確立されるような大きさや位置とするのがよい。秩序配列された場合、周期的な配置は、アレイを含むワイヤ側からのガスまたは液体の流入を最大にする。いくつかの配置では、アレイを通る間ずっと、クリアなチャネル(channels)となり得る。同じように、秩序配列されたナノワイヤは、通常、相似または同一の大きさおよび間隔を有する。従って、最小のワイヤ間のばらつきは最小になるとともに、最高の反応を得られる大きさを選択することができる。秩序だっていないナノワイヤアレイは、多孔質な上部電極の利益をさらに享受するだろう。これは、アレイを含むナノワイヤの全てに標的分子を迅速に進入させるための他の手段を提供する。
【0017】
支持体とナノワイヤは、実行される電気計測に適合する任意の材料を用いることができる。これらは、半導体、導体、金属または絶縁体の材料を含むがこれらには限定されない。ナノワイヤと支持体との間に電気的接続があってもよい。支持材料の一列にはシリコンウェハのようなシリコン(silicon)がある。支持体は回路基板または他の電極としてもよい。他の電極には、ここに記載された穿孔された電極が含まれる。支持体には、ナノワイヤと対向する表面の電気的に接触するものがあってもよい。
【0018】
ナノワイヤは、支持体と同じ材料もしくは異なる材料で作ることができる。ナノワイヤは、例えば、シリコン(silicon)、単層カーボンナノチューブ(single-wall carbon nano tube)、多層カーボンナノチューブ(multi-wall carbon nanotube)、窒化ガリウム(gallium nitride)を用いても良い。ナノワイヤ材料の特性は制御可能であってもよいし、制御できないものであってもよい。制御可能な材料である場合には、これは、例えば、組成、不純物添加、電気的伝導性、結晶化度、化学的機能化および追加の表面層を含む。
【0019】
支持体と
およそ垂直に設けられ、当該支持体と接合する第二の端部のみを有する複数のナノワイヤがある。しかしながら、さらに支持体に
およそ垂直でない付加的なナノワイヤであってもよい。ここで用いられるように、「
およそ垂直」は、支持体に対して、垂直な1°、5°、10°、20°、40°または60°の範囲内で定義される。ナノワイヤの大きさ、例えば、長さ、直径及び結晶面については、制御されていなくても制御されていてもよい。長さの全てがそれらの平均長の1%、5%、10%または20%の範囲内にある点において、それらは、均一な長さであってもよい。
【0020】
支持体上にナノワイヤを形成する方法は当該技術分野では知られている。この方法は、(Huang et al, Adv. Mater. 23 (2011) 285-308)、(Kayes et al, Appl. Phys. Lett., 91 (2007) 103110)、(Lee et al, Nano Lett. 10 (2010) 1016-1021)、(Weisse et al, Nano Lett. 11 (2011) 1300-1305)、及び(Offermans et al, Nano Lett. 10 (2010) 2412-2415)によって開示された方法が含むが、これには限定されない。ナノワイヤおよび支持体は、両方、同じ前駆体基板(precursor substrate)で作っても良い。これは、ナノワイヤと支持体を置いたまま、前駆体基板(precursor substrate)をエッチングすることによりなされても良い。他の方法には、支持体上にナノワイヤを成長させること及び予め形成されたナノワイヤを取り付けることが含まれるが、これには限定されない。成長させる方法には、化学気相蒸着(触媒又は非触媒)、物理気相成長、分子線エピタキシャル成長及びこれに関連する成長法、及び液体中での成長が含まれるが、これには限定されない。
【0021】
いくつかの実施の形態の中で、垂直ナノワイヤの秩序だった配列は、エッチングされ(Peng et al, Adv. Mater. 14 (2002) 1164)、もしくは、様々な材料の基板から成長(Westwater et al, J. Vac. Sci. Technol. B 15 (1997) 554)させることができる。直径と同様にナノワイヤ間の間隔が、フォトリソグラフィ法、電子ビームリソグラフィ法、干渉リソグラフィ法およびナノスフェアリソグラフィ法を含むが、これには限定されない方法の範囲により制御され得る。ナノスフェアリソグラフィとシリコンの触媒エッチングの組み合わせ(Peng et al, Appl. Phys. Lett. 90 (2007) 163123)は、十分に制御された大きさと、全てのナノワイヤはおおよそ同じ直径を有する材料特性とを有する、周期的な垂直シリコンナノワイヤアレイを急速に生成することを可能にする。
【0022】
ナノワイヤは、支持体上に、不規則もしくは周期的に配置されるようにしてもよい。例えば、ナノワイヤを六角形配置にするようにしてもよい。周期的なナノスフェアを形成する一つの方法は、前駆体基板(precursor substrate)上にナノスフェアの密集六角形配列(hexagonal array)を堆積させて、ナノスフェアをエッチングして小さくするとともに、ナノスフェア間の基板の部分を露出させて、ナノスフェア及び露出した前駆体基板上にエッチング触媒を堆積させ、ナノスフェアを除去するとともに、基板をエッチングする。これは、長さがおおよそ等しく、ナノスフェアの密集アレイと同じ間隔で、小さくなったナノスフェアとおおよそ同じ直径のナノワイヤの六角形のアレイを生成する。他のナノ粒子もまた、ナノワイヤの他の配置を形成するために用いられてもよい。例えば、直径が50nmから1μmまでのサイズに及ぶナノ粒子またはナノスフェアが、より大きなサイズおよびより小さなサイズと同様に用いることができる。電極は、実行される電気測定に適合する材料から形成される。任意の金属もしくは、透明導電酸化物(transparent conducting oxide)、フィルム状のナノチューブ(film of nanotube)または他のナノ構造体等の他の導電性材料が用いられるようにしてもよい。電極は任意の厚さを有し、孔は、任意の直径及び間隔を有する。ナノワイヤと電極との間に電気的接続があってもよい。例えば、電極は蒸着または、他の方法により堆積し、連続物質(continuous material)に形成される。連続物質は、ナノ粒子あるいは絡まったフィラメントのようなより小さな物体の塊状集積としてではなく、層状の部品を含む単一物品として形成してもよい。例えば、電極材料には、チタン(titanium)及び金(gold)の組み合わせ、銀(silver)、アルミニウム(aluminum,)、グラフェン(graphene)、クロム(chrome)と金(gold)の組み合わせとを含むが、これには限定されない。
【0023】
電極は穿孔を含む。穿孔は、支持体に対して垂直な直線経路が形成されており、完全に電極を貫く空間である。穿孔は、電極の厚さよりも大きな直径を有していてもよい。穿孔は、ランダムに配置されても、周期的に配置されてもよい。上述したナノワイヤは、穿孔の直下には露出した先端を有しないが、別途そのようなナノワイヤがあってもよい。
【0024】
穿孔を形成する方法の一例として、ナノワイヤの第一の端部を露出しておく、充填材料でナノワイヤを覆うために充填材料を堆積させる方法がある。手始めにまずこれが行われる。あるいはナノワイヤを完全に覆った後に、余剰の充填材料を除去するようにしてもよい。充填材料は、フォトレジスト(photoresist)、酸化物(oxide)、アルミナ(alumina)またはシリカ(silica)を含むが、これには限定されず、ナノワイヤおよび電極を除去することなく、後から除去できる任意の材料を用いることができる。その後、ナノ粒子は、充填材料の上に、穿孔となる位置に堆積される。ナノ粒子は、ナノスフェアの間の空間に、ナノワイヤの先端を有する密集した六角アレイにおけるナノスフェアでよい。任意に、ナノ粒子のサイズは、穿孔をより小さくするために小さくすることができる。その後、電極材料は、ナノ粒子を含む構造体全体の上面上、ナノワイヤの先端、及び任意の露出した充填材料に堆積される。ナノ粒子及び充填材料は、付着した不要な電極材料とともに、基板、ナノワイヤ及び開孔電極を残して、除去される。
【0025】
周期的な穿孔は、密集したナノスフェアを用いるときに形成される。それは、試料上で回転するポリスチレン(もしくは類似の)ナノスフェアを含む溶液から形成される。スピンオン・パラメータ(Spin-on parameters)は、ナノワイヤの上面に密集したナノスフェアの単分子層を産出するために制御され得る。ナノスフェアの直径が、ナノワイヤ間の距離と等しければ、各ナノスフェアは幾何学的にナノワイヤ間のギャップに満たすことを余儀なくされるだろう。ナノスフェアはナノワイヤの先端に残ることが妨げられ、そのことが、粒子がワイヤ間の空間を満たすために付加的なナノスフェアの自動整列を提供する。ナノスフェアが十分大きければ、ナノワイヤ間の空隙を2個以上のナノスフェアが占有できない。しかしながら、より小さいナノスフェアもしくはナノ粒子は、隣接したナノワイヤ間で複数のより小さな穿孔を形成するために用いられる。
【0026】
ナノワイヤが周期的でない場合、ナノ粒子が密集していない場合、他のタイプのナノ粒子が用いられる場合には、非周期的な穿孔を生産するために、その方法を用いてもよい。ナノワイヤの上面にナノ粒子を堆積することを省略すると、孔が開いていない電極を、ナノワイヤの秩序だったアレイの上面にも、または無秩序なアレイの上面にも形成することができる。
【0027】
この構造体は、吸着分子を電気信号に変換する変換メカニズムを用いたセンサの一部として用いてもよい。電気信号は、電圧、電流、抵抗、周波数または容量の変化とすることができる。センサは、通常は、電圧または電流を源にする(供給する)とともに、電流または電圧を順繰りに測定する。その測定値は、その出力と共に抵抗へ変換するために用いられる。構造体は試料にさらされ、それから、構造体の電気的特性の変化が測定される。例えば、支持体(または、それに含まれる電機接点)と電極との間の抵抗は、一以上の被検体に反応して変化する。そのようなセンサの適用例は、ガスまたは水質由来の爆発物および化学的又は生物学的剤または有毒工業化学物質(TICs)の検出を含む。
【0028】
以下のステップが構造体を形成するために行われる。
ナノワイヤの形成
1.約1−10Ωcmの抵抗を有するP型シリコンウェハから始める。
2.下記の洗浄ステップを室温で行う(
図1(a))。
硫酸(H
2SO
4)と30%の過酸化水素(H
20
2)の3:1溶液中で30分間。
酸素(H
20)、水酸化アンモニウム(NH
4OH)および過酸化水素(H
20
2)の5:1:1溶液中で30分間。
3.試料上にポリスチレンナノスフェア溶液(10%固体)を490nm堆積させるとともに、密集単分子層(基板1cm
2につき約1個のナノスフェア溶液)を得るために回転塗布する(
図1(b))。
4.試料を一夜乾燥させる。
5.酸素プラズマエッチングを用いてナノスフェアの直径を目標値に減少させる(
図1(c))。
6.eビーム蒸発器を用いて試料の頂部に25nmの金(gold)を堆積させる(
図1(d))。
7.ナノスフェア及び不要な金属をクロロホルム(CHCl
3)中に5分以下(〜5分)の時間浸して除去する(
図1(e))。簡素な高周波処理は場合により必要になる。
8.ナノワイヤを約4〜8μmの長さにするために、4.6Mのフッ化水素と、0.44Mの過酸化水素の溶液の中で、20〜30分間、試料をエッチングする(
図1(f))。
9.残存している金(gold)を、トリフルオロ酢酸金(TFA gold)エッチング液を用いて除去する(
図1(g))。
10.臨界点乾燥機(critical point dryer)を用いて、丁寧に試料を洗い流すとともに乾燥させる。
電極の形成
11.ナノワイヤアレイ全体を覆う厚いフォトレジスト層を堆積させる。
12.ナノワイヤの先端を露出させるために、水素プラズマエッチング(oxygen plasma etch)を用いて、フォトレジスト層の最上層を除去する(
図1(h))。
13.上記ステップ3と同じプロセスを用いてポリスチレンナノスフィアを490nm堆積させる(
図1(i))。
14.酸素プラズマエッチングを用いてナノスフェアの直径を目標値に減少させる(
図1(j))。
15.eビーム蒸発器を用いて、20nmのチタン(titanium)と100nmの金(gold)からなる電極層を堆積させる(
図1(k))。
16.試料をアセトン(acetone)中に一夜浸してフォトレジストとナノスフェア層を除去する(
図1(l))。ナノスフェアを完全に除去するために、簡素な高周波処理および/またはクロロホルム(CHCl
3)に浸すことが場合により必要になる。
17.臨界点乾燥機を用いて、試料を乾燥させる。
【0029】
他の実施態様では、ナノワイヤは充填材料内に固定され、その後、一体としての支持体から除去され、ナノワイヤの第二の端部が露出される。充填材料は、ポリマー(polymer)や上記の充填材料のような、ナノワイヤを所定の位置で保持するとともに、その後除去することができる任意の材料で良い。ここに記載された支持体、基板、ナノワイヤ、ナノ粒子、電極およびプロセスのいずれも、本実施の形態に用いることができる。
【0030】
孔のあいた電極が、構造体の第一の露出した側面上に形成される前後に、支持体がナノワイヤ及び充填材料から除去される。変形例の一つでは、支持体が除去されるとともに、孔のあいた電極は、第一の側面に形成され、続いて、第二の側面上に第二の電極を形成する。第二の電極は第二の側面全体を覆ってもよいし、第一の電極と同じ方法で孔があけられてもよい。第二の電極は、第一の電極の前に形成されてもよい。その代わりに、第一の電極が形成され、その後支持体が除去され、その後第二の電極が形成される。電極が別々に形成されるときは、充填材料は両方の形成物にそのまま残ってもよいし、もしくは、一つの電極が形成された後に除去されてもよいし、第二の電極を形成するために同じまたは異なる充填材料と置き換えられるようにしてもよい。その代わりに、支持体は除去され、その後両方の電極は同時に形成され得る。
【0031】
他の実施の形態では、第一の電極は、開孔されてもよいし、開孔されなくてもよい。また、支持体は、第二の電極であるか、または、電気的コンタクトを備えるようにしてもよい。両方の電極は、ナノワイヤのアレイ全体に接触し得る。これにより、ナノワイヤのすべてに渡って電気的性質の測定が可能になる。
【0032】
方法の潜在的な利点は、ナノワイヤ間にある周期的な穿孔の形成を、ナノスフェアの密集アレイの自己集合に起因する自動プロセス(automatic process)によって可能にすることである。登録または配列プロセスは穿孔に設置することを要求されない。従って、その方法は、ウェハのサイズに起因する複雑さを除いてウェハ全体を含む大きな領域に拡大される。
【0033】
構造体の潜在的な利点は、平行に接続された多数の垂直ナノワイヤだけでなく、電極及びナノワイヤアレイを通る幾何学的に可能なガスの流れが、高速反応速度及び高感度でのガスセンシングをもたらすところの、ガスセンサタイプへの応用において明白である。構造体のあらゆる所のガスの流れを最大とするために、穿孔があいた上部電極層は、空気の流れが、センサを介して送り出されるのが受動的であろうと能動的であろうと高い効果を得ることが出来る。
【0034】
ナノスフィアが可能にする孔があいた電極の他の特徴は、間隔や直径のような、上部の電極における孔の特性が、ナノワイヤの上部に堆積されるナノスフェアのサイズを単純に変えること、および酸素プラズマ中でエッチングダウンされる時間を変えることによって簡単に制御することができることである。
【0035】
以下の例は特定の適用を説明するために用いられる。これら特定の例は、本出願の開示の範囲を限定する意図はない。
【0036】
ある研究では、ナノスフェアリソグラフィ(nanosphere lithography)と金属補助化学エッチング(metal-assisted chemical etching)との組み合わせは、シリコンナノワイヤ(silicon nanowire;SiNWs)の秩序だった配列の合成に用いられていた(Peng et al, Appl. Phys. Lett., 95 (2009) 243112)。シリコンは、増加した感度および選択性のための様々な機能化および表面改質技術の広い有効性と同様に、組立ておよび集積化のその容易さのために選ばれていた。ドーパント型と集積の正確な制御は、商業的に取得可能なウェハで利用できる。プロセスが始まると、抵抗が10Ω‐cm以下の、直径100mmのボロンドープ(B-doped)のP型シリコン(100)ウエハは、1cm
2片に切り分けられ、引き続き、硫酸(H
2S0
4):30%の過酸化水素(H
2O
2)が3:1の溶液、30%の過酸化水素(H
2O
2):水酸化アンモニウム(NH
4OH):水(H
2O)が1:1:5の溶液および脱イオン水(deionized water)中で洗浄される。結果として得られる親水性基板は、その後、490nmのポリスチレンナノスフェア(Bangs Laboratories, 10% w/v)の密集単分子層とともにスピンコート(spin-coated)(Cheung et al, Nanotechnology 17 (2006) 1339-43)(
図2(a))される。その後、酸素プラズマエッチング(oxygen plasma etch)を経てナノスフィアの直径を小さくする(
図2(b))。シリコンの触媒の異方性エッチングを行うのための孔があいた金の鋳型は、ナノスフェアアレイの頂部上の、25nmの厚さの金の層を蒸発させ、そしてその後、ナノスフェアをクロロホルム(CHCl
3)中に浸すことにより除去することで生成される(
図2(c))。シリコンナノワイヤ(SiNWs)は、それから、10%のフッ化水素(HF)と0.6%>の過酸化水素(H
20
2)の溶液中にそのデバイスを浸すことによって形成され、垂直に直立したナノワイヤの秩序だったアレイを残しながら、金(gold)がシリコン基板に選択的に異方性エッチングされる(
図2(d))。フォトレジスト層は、コンタクトパッド領域のような、ある位置のシリコンのエッチングを防止するために鋳型の一部に渡ってパターン化できる(
図3)。フッ化水素(HF)−過酸化水素(H
20
2)溶液中のシリコンエッチング速度は、溶液濃度、温度、鋳型の寸法などを含む多くの因子に依存するが、しかし、この場合では約200nm/分になると見られている。試料は一般的に、ナノワイヤ間の距離が490nmで、4−6μmの長さと200nm未満の直径を有し、最大4×10
8/cm
2の垂直なシリコンナノワイヤ(SiNWs)を作るために、およそ30分エッチングされる。ポリスチレンナノスフェアの初期直径は、この初期直径と、その後の、酸素プラズマ中のナノスフェアのエッチングによりに定義された結果的に得られるナノワイヤの直径との組み合わせの間で、シリコンナノワイヤ(SiNWs)のアレイの期間を定義する。次に、500nmの厚さを有する二酸化ケイ素(Si0
2)層が、デバイス全体から蒸発し、コンタクトパッド領域を基板の大部分から電気的に絶縁させる。それから、酸化層が選択的にエッチング除去され、ナノワイヤ表面上の余剰の酸化物を除去する間に、シリコンナノワイヤ(SiNWs)のアレイが現れる。このステップではさらに、接触抵抗が下げられるとともに、ナノワイヤの先端と後で堆積された電極層との間の抵抗接点が確立される。シリコンナノワイヤ(SiNWs)アレイ全体は、その後、厚いフォトレジストにより覆われ、その後、酸素プラズマ中でエッチバック(etched back)され、シリコンナノワイヤ(SiNWs)の先端がちょうど露出される(
図2(e))。
【0037】
シリコンナノワイヤ(SiNWs)の先端が露出した後、先にエッチング鋳型の形成に用いられたのと同一の、ナノスフェアの第二層が堆積される。第二のナノスフェア層の期間が、シリコンナノワイヤ(SiNWs)の期間と等しければ、新たなナノスフェアはアレイの空隙を完全に満たすとともに、露出したシリコンナノワイヤ(SiNWs)の先端の上部に密集したアレイを形成するように物理的に制約される。第二のナノスフェアアレイが酸素プラズマ(oxygen plasma)中でエッチング除去されたすぐ後、20nm厚のチタン(titanium)と、100nm厚の金(gold)とからなる金属電極層を蒸発させ、フォトレジストおよびナノスフェアは最後にアセトン(acetone)によって除去され、PTE層(PTE layer)を有するシリコンナノワイヤ(SiNWs)アレイ(5mm×5mm)が、
図2(g)に示すように形成される。いくつかのポリスチレンナノスフェアはまだ見えており、フォトレジスト及び金の膜厚が局所的に変化している結果である。孔のサイズと分布は、ナノスフェアの処理条件の変更によって制御され、ナノワイヤと上部電極との間の接触抵抗は低温アニールを行うことによって、さらに小さくできる。完成されたデバイスは、底部で電気的接続するように形成された導電性エポキシ樹脂(conductive epoxy)を用いて、ピン・グリッド・アレイ(pin grid array:PGA)パッケージに取り付けられる。上部の電気的接続は、コンタクトパッドとワイヤボンディング(wirebonding)することによって作られている(
図3)。
【0038】
PTEシリコンナノワイヤ(SiNWs)アレイセンサの化学的/生物学的感知能力(chem/biosensing capabilities)を評価するために、完成したデバイスは特注の検査用のチャンバ(chamber)内で様々なレベル二酸化窒素(N0
2)またはアンモニア(NH
3)に晒される(Field et al, Anal. Chem. 83 (2011) 4724-4728)。二重のマニホールド(manifold)(被検体路(analyte line)と清浄な空気路(clean air line))は、吸着作用の障害を最小限にするために、コーティングされたステンレス(stainless)綱(SilcoNert Coated Stainless Steel Tubing, Restek)から構築される。アンモニア(ammonia)と二酸化窒素(nitrogen dioxide)の圧縮ガスボンベは、マニフィールドの被検体路(analyte line)に接続されている。ゼロ空気(zero air)生成機(Environics)と湿度制御装置(Miller-Nelson)は、マニフィールドの被検体路(analyte line)と清浄な空気路(clean air line)の両方のために、(−40%の相対湿度の)湿度を有する空気を生成するために用いられた。被検体の既知濃度はTコネクタ(T-connector)及びマスフロー制御装置(mass flow controller)を経由したキャリア空気(carrier air)によって、校正されたガス基準(100ppmのアンモニア(ammonia)及び50ppmの二酸化窒素(nitrogen dioxide)、空気ガス)に希釈することにより得られた。三方弁及びアクチュエータは、マニフィールドの被検体路(analyte line)と清浄な空気路(clean air line)との切替に用いられた。マニフィールド全体は温度制御炉内に配置された。円錐形状であるステンレス製の試料チャンバは、PGA搭載センサの検査のために作られた。試料ポンプは、100mL/分の空気を試料チャンバに流すために用いられた。
【0039】
試料チャンバ内の電気的接続は、ゼロ挿入力(ZIF:zero-insertion force)ソケットと、センサの簡単なローディング及びアンローディングのための単純なプリント基板とによって作られた。マルチプレクサ(Keithley, 2001)及びソースメータ(source-meter:Keithley, 2602)は、試料チャンバの回路基板に接続される。マルチプレクサは、PGAの特定のピン及び機能と、センサの選択をそれぞれ可能とする。抵抗は、100μAの電流を流し、10Hzのサンプルレートで電圧を記録することで観察された。センサ電子装置は、Lab VIEWプログラムによってモニタされ制御された。清浄な空気に晒す間記録された抵抗は、初期抵抗R
0を得るために平均された。センサ応答(AR/R
0)は、比較及びさらなる評価のために初期抵抗(R
0)によって標準化された抵抗の差(R-R
0,AR)として算出された。データのモデリングとプロッティングは全て、OriginPro 8.1ソフトウェアパッケージを用いて行われた。
【0040】
さらなるシリコンの処置又は改善を行うことなく、二酸化窒素(N0
2)(アンモニア(NH
3))のような電子求引性(電子供与性)種の表面吸着は、P型シリコンデバイス全体の抵抗を下げる(上げる)。蒸気供給装置の重要な特徴は、実在のテスト環境をシミュレーションするために、乾燥した窒素(N
2)とは対照的に校正された量の加湿空気に被検体を混ぜることが出来ることである。加湿空気中のセンサテストは、実在の実装のための重要なステップである。なぜなら、シリコンナノワイヤ(SiNWs)は水蒸気に対して高感度であるからである。
【0041】
試作品のセンサは、温度40℃および相対湿度−30%に制御された状態で、二酸化窒素(N0
2)やアンモニア(NH
3)の濃度の変化に対する反応についてテストされる。抵抗の変化は、電圧計によって電圧を記録している間、10μAの定電流の保持によって決定される。センサ応答は、生データ、リアルタイムデータの任意のフィルタリングまたはスムージングなしに、基準抵抗(AR/Ro)によって割られた抵抗の変化としてプロットされた。
図4(a)に、それぞれ、加湿空気中の二酸化窒素(N0
2)とアンモニア(NH
3)が1ppm及び500ppbのときの試作品のセンサの応答を示す。予想通りに、デバイス抵抗の合計は、アンモニア(NH
3)に晒したときに上昇し、二酸化窒素(N0
2)に晒すと減少した。大規模平行ナノワイヤ構造がとても小さいノイズのプロフィールをもたらすが、応答は、恐らくPTEに起因して2〜3分のうちに飽和に達する。加湿空気は、金属酸化物(Starke et al, Sensors and Actuators B, 2002, 239-45)及びカーボンナノチューブ(Zhang et al, Nanotechnology 20 (2009) 255501)センサ中の二酸化窒素(N0
2)/アンモニア(NH
3)の検出能力に悪影響を及ぼす。しかしながら、水は、被検体の濃度がとても低いときに、センサ応答を向上させるように見える。低濃度のときに検出するために、テストチャンバ内の湿度水準は10%RHより小さい値に減少させる。250、50および10ppbの二酸化窒素(N0
2)に30分晒した後のセンサ応答が
図4(b)に示されている。10ppbのレベルの最低濃度については、センサは抵抗が18%低下したことを示した。二酸化窒素(N0
2)に対する10ppbの感度は、シリコンナノワイヤ(SiNWs)系センサのための今まで報告された最低の値の間であり、二酸化窒素暴露下の例年の国内外の様々な要求基準をはるかに下回る(Belanger et al, Am. J. Resp. Crit. Care Med. 173 (2006) 297-303))。
【0042】
検出性能に対するPTEの効果は、固体の孔のない電極を備えるセンサを生産する製造プロセスにおける第二のナノスフェア堆積ステップを省略して調査された。電極層内の孔を備えるデバイス及び電極層内の孔を備えないデバイスは、他の全ての面で同一だった。500ppbのアンモニア(NH
3)のための両方のタイプの装置のセンサ応答が
図5に示される。両方のセンサは時間とともに同様の飽和水準に達し、上の線で示されるPTEセンサは約6分の後にこのレベルに達した。他方、孔のない種類では、飽和に達するために約1時間を要した。二酸化窒素(NO
2)に対する応答は、アンモニア(NH
3)についてと同じくらいには明白ではないけれども、PTEセンサについて速い。この違いは、並列なナノワイヤの電気的構成、と相互分子作用によって誘発される異なる抵抗変化とによって、明らかにされた。アンモニア(NH
3)は抵抗の増加を誘発し、ナノワイヤの多くは、アレイによる全体応答が大きいため、変化しなければならない。対照的に、二酸化窒素(N0
2)は個々のナノワイヤ抵抗を低下させ、従って、アレイ全体の抵抗の中で、小数のナノワイヤだけでも多くの変化を引き起こすことができる。全ての検出スキームのために、具体的にはナノワイヤ抵抗が上昇する結果となるスキームのために、アレイ中の全てのナノワイヤと相互に急速に作用する電極層から検体を直接流させることによって、上部電極層の孔の検出反応が大幅に改善される。検体の電気陰性度の相対感度は、Nドープシリコン(n-doped Si)からナノワイヤを製造することによって反転される。
【0043】
他の実験結果では、単一バッチからの合計6個のセンサがテストされる。センサははじめに清浄な空気に2分間露出され、続いて、アンモニア(ammonia)または二酸化窒素(nitrogen dioxide)のいずれかに8分間暴露される。吸着系センサは、ラングミュア(Langmuir)吸着モデルに従っており、大量移行は制限されており、したがって、抵抗は漸近的に変化する(Washburn et al, Anal. Chem. 81 (2009) 9499-9506; Washburn et al, Anal. Chem. 82 (2011) 69-72; Eddowes et al, Biosensors 3 (1987) 1-15; Bunimovich et al, J. Am. Chem. Soc. 128 (2006) 16323-16331)。8分の暴露時間は、アンモニア(ammonia)と二酸化窒素(nitrogen dioxide)の両方のセンサ応答の十分な立ち上がり時間を決定するために費やされた。
【0044】
異なる濃度での40℃でのアンモニア(ammonia)または二酸化窒素(nitrogen dioxide)の応答が
図6に示されている。示されたデータは、1つの代表的なセンサから出たものであるが、付加的なセンサからの結果と概ね一致する。わずかな温度上昇は、温度によって誘発されたセンサ応答の変動を除外した。アンモニア(ammonia)および二酸化窒素(nitrogen dioxide)の濃度は、250ppbから10ppmの範囲である。
図6から、上述のように、そして、期待どおり、抵抗はアンモニア(ammonia)について上昇し、二酸化窒素(nitrogen dioxide)について低下した。約10分の実行時間(8分の露出時間)で両被検体とも、濃度に関わらず応答は飽和した(水平になった)。しかしながら、センサは、ナノワイヤ表面から部分的に被検体を脱着し、40℃で安定した水平な基準線(不図示)に戻すために少なくとも1時間の清浄な空気の暴露が必要であった。ナノワイヤ上の被検体の不可逆的吸着のため、基準線は決して原型までは回復されず、暴露前の抵抗は新しい均衡した抵抗に達するが、時間とともにセンサは感度を失う。ナノワイヤ表面からの被検体の不完全な脱着は、露出している間の露出の数を制限しアンモニア(ammonia)または二酸化窒素(nitrogen dioxide)のそれぞれの濃度の反復測定を妨げた。吸着/脱着が温度依存であるが、感度とのトレードオフであり、付加的な最適化を要求するので、回復と寿命は、おそらく、より高い作動温度で改善することができる。被検体の熱脱離が、ワイヤに電流を流すことにより、センサを再生することを容易に達成し、その結果、ジュール加熱とこれらの温度が上昇する。
【0045】
図6は、10ppmのアンモニア(ammonia)に暴露したときの抵抗の変化を示し、これは初期暴露中で最大となる。この初期での最大化は、比較的高いアンモニア(ammonia)濃度だけで観測され、10ppmで最も目立っている。初期での最大化は、どのような濃度の二酸化窒素(nitrogen dioxide)でも観察されない。そのことは、被検体に特有であることを示している。例えば、アンモニア(ammonia)と加湿空気は反応して、水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide)を形成する。あるいは、超高真空の室温で観察されるように、シリコン(silicon)表面上でアミノ基(NH
2)と水素(H)に分離する(Bozso et al, Phys. Rev. Lett. 57 (1986) 1185; Dillon, J. Vac. Sci. Technol, A 9 (1991) 2222)。分離は化学的性質を変えるか、またはシリコンナノワイヤ表面を再構築し、残った表面を反応しにくくし得る。初期の最大化の要因は断定的に確認されないが、その存在は、シリコンナノワイヤ系センサの全体の応答と性能の付加的な分析を妨げない。
【0046】
図6は、清浄な空気に2分間暴露され、続いてアンモニア(ammonia)に暴露された後の抵抗の激増のような急激な応答を示す。シリコンナノワイヤ系センサの数秒から数分の飽和反応が顕著である。なぜなら、センサは、室温付近の温度下にあり、乾燥した空気(dry air)または不活性ガス(inert gas)とは対照的な加湿空気が、キャリア(carrier)として用いられるためである。孔のあるセンサと上部中実電極との間の直接比較により、孔があることで迅速な反応が可能になることが裏付けられた。円錐の試料チャンバのモデルリング及びシミュレーション(データ不図示)は、均一な蒸気フロントがセンサ表面全体に渡って、PTEを通して運ばれることを示しており、その結果、被検体分子がワイヤアレイを横断するための拡散時間が減少する。
【0047】
シリコンナノワイヤ系センサのS/N比(The signal-to-noise ratio)は、比較可能なナノチューブやナノワイヤ系センサに対して著しく改善されている(Peng et al, Appl. Phys. Lett. 95 (2009) 243112; Lee et al, J. Phys. Chem. B 110 (2006) 11055-11061; Snow et al, Chem. Soc. Rev. 35 (2006) 790-798; Snow et al, Nano Lett. 5 (2005) 2414-2417; Robinson et al, Nano Lett. 8 (2008) 3137-3140)。S/N比(The signal-to-noise ratio)は、加湿、室温付近の温度の大気中で試験された被検体の両方で、約1000:1であった(
図6)。この結果は、10Hzのサンプルレートで得られ、取得後の平滑化、フィルタリングまたはバックグラウンド除去などは不要であった。優れた被検体の反応及び最小バックグラウンド湿度の反応はPTEに帰因し、アレイ中の全てのナノワイヤは、上部及び下部電極の両方と電気的に接触するという事実に帰因する。他の垂直に配列されたナノワイヤ系センサは、配列されていないナノワイヤのほんの一部とだけ接触し、それで、小数のナノワイヤだけがセンサ要素として働く比較的小さい電極を有する(Peng et al, Appl. Phys. Lett. 95 (2009) 243112)。本センサ内のPTEは、全てのナノワイヤは、電荷キャリアの数に敏感なノイズ源(例えば1/fノイズ)を最小化する、大規模平行アレイ内の検出要素であることを保証する。ナノワイヤとPTEとの間の界面の雑音は、ナノワイヤの先端から自然酸化物層を除去することにより、さらに最小化される。
【0048】
初期傾斜法は、定量的な情報を得る手段のような吸着系センサとして効果的に用いられるが、とりわけ、液相における非ナノワイヤ系センサに用いられる(Washburn et al, Anal. Chem. 81 (2009) 9499-9506; Washburn et al, Anal. Chem. 82 (2010) 69-72; Eddowes, Biosensors 3 (1987) 1-15)。初期傾斜法は飽和に達することを必要とせず、サンプリング時間を短縮することができ、より大きいダイナミックレンジ(dynamic range)に渡って直線的な校正曲線を生成することができる。
図6における、アンモニア(ammonia)と二酸化窒素(nitrogen dioxide)の各々の濃度でのセンサ応答は、単一指数関数(y = Ae
-t/r + y
0)に適している。バルブが被検体路(analyte line)に切り替えられるときの時間であるt=0の傾斜は、単純にA/rになる。
図7A、
図7Bは、アンモニア(ammonia)や二酸化窒素(nitrogen dioxide)の校正曲線をそれぞれ示し、初期傾斜(A/r)はln−lnスケールでの濃度に対してプロットした。
【0049】
|ΔR/R
0|
saturationは、10分の実行時間で規格化された応答であるが、|ΔR/R
0|
saturationを用いる定期ポイント法は、比較の校正曲線を確立するために用いられる(
図7C,
図7D)。Rの2乗は、初期傾斜法では0.996と0.912になり、定期ポイント法では0.711と0.807になる。相対予測誤差(The relative prediction error:RPE)は、校正曲線中の各々計算された濃度に伴う誤差の平均であり、アンモニア(ammonia)と二酸化窒素(nitrogen dioxide)について、初期傾斜法では5.1%と24.9%になり、定期ポイント法では49.0%と40.3%になる。大量移行が制限された条件下では、初期傾斜は、飽和の定期ポイントよりも濃度により良く相関するべき法依存性(power law dependence)を示す。アンモニア校正曲線(The ammonia calibration curve)は、曲線のフィッティングが、高い濃度で観察される初期最大化の明らかにモデルのならないことを考慮すれば合理的であるが、しかし、二酸化窒素校正曲線(the nitrogen dioxide calibration curve)は、もしかすると、単一指数に適合するモデルにより、まだ改善される場合がある。
【0050】
センサ飽和を除去するので、初期傾斜法は定期ポイント法よりも濃度に対して高い相互関係を提供する。これが、サンプリング時間を縮小し、センサを実在の環境により適用可能にするだけでなく、定量化に必要な材料の量と、センサの再生のために除去されるべき量を制限することによってセンサ回復とライフタイムを改善する。
【0051】
言うまでもなく、多くの変更及び変化は、上述した技術を参照して可能である。従って、特許請求の範囲の主題は、特に記載したもの以外にも実行されることは理解される。"a," "an," "the," or "said"のような言葉を用いて、単数として扱われているクレーム要素は、いずれも単数の要素に限定するものとして解釈されない。