特許第5918811号(P5918811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5918811高圧放電ランプの製造方法、および高圧放電ランプの封止構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918811
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】高圧放電ランプの製造方法、および高圧放電ランプの封止構造
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/32 20060101AFI20160428BHJP
   H01J 61/36 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H01J9/32 B
   H01J61/36 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-143755(P2014-143755)
(22)【出願日】2014年7月12日
(65)【公開番号】特開2016-21291(P2016-21291A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】中川 敦二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 敬重
【審査官】 桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−023570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/32
H01J 61/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の一端に電極を溶接するとともに、前記金属箔の他端に外部リード棒を溶接して、前記金属箔、前記電極、および前記外部リード棒を備えるマウントを形成し、
外径が封体容器の端部の内径より小さなガラス管の内部に前記マウントを挿入し、
前記金属箔から前記電極の先端側に離間した第1の位置で前記ガラス管を縮径し、
前記第1の位置から少なくとも前記金属箔の他端までに対応する前記ガラス管を前記マウントに封着し、
前記第1の位置から先で前記電極を前記ガラス管から突出させてガラス管封着済マウントを形成し、
前記封体容器の端部に前記ガラス管封着済マウントを前記電極の先端から挿入し、
前記端部を縮径して前記ガラス管封着済マウントの前記ガラス管に封着する
高圧放電ランプの製造方法。
【請求項2】
前記ガラス管を縮径することにより、前記ガラス管封着済マウントに封着された前記ガラス管の電極側端部を滑らかなテーパ面にすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス管を縮径する際、前記第1の位置で前記ガラス管を加熱するとともに前記第1の位置を境にして前記ガラス管を引っ張ることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記封体容器は、一対の前記端部と、前記端部同士の間において前記端部よりも外形が太く形成された中間部とを有しており、前記端部と前記中間部との間における境界部の外形が前記端部よりも細くくびれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記境界部の肉厚は他の部分の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記境界部を加熱するとともに前記境界部を境にして前記封体容器を引っ張ることにより、前記封体容器における前記境界部の肉厚を他の部分の肉厚よりも薄くすることを特徴とする請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記封体容器の前記端部を縮径して前記ガラス管封着済マウントにおける前記ガラス管に封着する際、前記境界部を越えて前記中間部まで縮径することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
発光管部と封止部とを有する高圧放電ランプの前記封止部内に、内部に金属箔を含むガラス管が埋設されており、
前記金属箔の一端に取り付けられた電極の先端が前記発光管部内に導入されており、
前記金属箔の他端に取り付けられた外部リード棒が前記封止部外に導出されている高圧放電ランプの封止部構造において、
前記電極は軸部を有しており、
前記軸部の表面から、前記ガラス管における前記電極側端の周端までの距離が0.1mm以下であることを特徴とする
高圧放電ランプの封止部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間の耐圧性能を向上させることのできる高圧放電ランプの製造方法および高圧放電ランプの封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプは、1個のランプから得られる光量が非常に多いといった特性を有しており、プロジェクター等に広く用いられている。高圧放電ランプは、一般に、石英ガラス製の封体容器と、一対のマウントとで構成されている。当該マウントは、電極と金属箔と外部リード棒とで構成されている。金属箔の一端に電極が溶接され、当該金属箔の他端に外部リード棒が溶接されることによってマウントが形成されている。
【0003】
電極同士が向かい合うようにして、一対のマウントを封体容器内に挿入した後、当該封体容器の両端部をそれぞれマウントに封着させる。これにより、封体容器の両端部に形成された一対の封止部と、これら封止部の間において一対の電極が対向配置された内部空間を有する発光管部とが形成される。
【0004】
当該内部空間には、水銀が封入されており、一対のマウント間に高電圧を印加してアーク放電を生じさせることにより、蒸発した水銀が励起された光を発するようになっている。
【0005】
高圧放電ランプは、点灯時における内部空間の圧力を高くすることで、発光効率(高圧放電ランプに供給する電力当たりの発光量)が向上する。したがって、高圧放電ランプの封体容器における封止部の耐圧性能を向上させることは重要な課題であり、従前より、封止部の耐圧性能を向上させる技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
特許文献1に開示された技術では、封止部の耐圧性能を向上させることを目的として、金属箔が予めガラス管で覆われたマウントを使用する。このようなマウントを使用することにより、封体容器によるマウントの封止は、ガラス同士である封体容器の端部とガラス管との間で行われる。このため、異種材質であるガラスと金属との間で封止が行われる場合に比べて気密性の高い融着を実現することができる。これにより、封止部の耐圧性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−23570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、高圧放電ランプの発光効率のさらなる向上が求められており、点灯時における発光管部の内部空間のさらなる高圧化が必要になってきている。このように、さらなる高圧化を実現しようとすると、特許文献1に開示された技術(以下、単に「従来技術」という。)にも高圧化を阻む問題点が存在することがわかってきた。
【0009】
すなわち、従来技術では、ガラス管付きマウント4を製造する際、図12に示すように、マウント1をガラス管2内に挿入した後、ガラス管2の金属箔3に一致する箇所を外部から加熱して封着させる。然る後、耐圧性能テストを行い、ガラス管2の不要部分を切り取っていた。
【0010】
このようにして形成したガラス管付きのマウント4を、図13に示すように、封体容器5の端部に挿入し、当該封体容器5をガラス管付きマウント4のガラス管2に封着させる(図14を参照)。このとき、図15に示すように、ガラス管2の電極側端の径D1と電極Pの軸径D2との差が大きいことから、ガラス管2の先端面と封体容器5の内表面との間でエッジ6(入り隅部)が形成される。発光管部7の内部空間8が高圧になると、このエッジ6が構造的な起点となって、封止部9の気密が破れるおそれがあった。つまり、エッジ6は、高圧放電ランプにおける耐圧欠陥部となるおそれがあった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、ガラス管付きのマウントを用いて高圧放電ランプを形成したときにエッジ(入り隅部)が形成されにくくして、内部空間の耐圧性能をより向上させることのできる高圧放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面によれば、
金属箔の一端に電極を溶接するとともに、金属箔の他端に外部リード棒を溶接して、金属箔、電極、および外部リード棒を備えるマウントを形成し、
外径が封体容器の端部の内径より小さなガラス管の内部にマウントを挿入し、
金属箔から電極の先端側に離間した第1の位置でガラス管を縮径し、
第1の位置から少なくとも金属箔の他端までに対応するガラス管をマウントに封着し、
第1の位置から先で電極をガラス管から突出させてガラス管封着済マウントを形成し、
封体容器の端部にガラス管封着済マウントを電極の先端から挿入し、
当該端部を縮径してガラス管封着済マウントのガラス管に封着する
高圧放電ランプの製造方法が提供される。
【0013】
ガラス管を縮径することにより、ガラス管封着済マウントに封着されたガラス管の電極側端部を滑らかなテーパ面にするのが好適である。
【0014】
ガラス管を縮径する際、第1の位置で前記ガラス管を加熱するとともに第1の位置を境にしてガラス管を引っ張るのが好適である。
【0015】
封体容器は、一対の端部と、端部同士の間において端部よりも外形が太く形成された中間部とを有しており、封体容器の端部と中間部との間における境界部の外形を端部よりも細くくびれさせた封体容器を使用するのが好適である。
【0016】
また、境界部の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成された封体容器を使用するのが好適である。
【0017】
また、境界部を加熱するとともに当該境界部を境にして封体容器を引っ張ることにより、封体容器における境界部の肉厚を他の部分の肉厚よりも薄くするのが好適である。
【0018】
また、封体容器の端部を縮径してガラス管封着済マウントにおけるガラス管に封着する際、境界部を越えて中間部まで縮径するのが好適である。
【0019】
本発明の他の局面では、
発光管部と封止部とを有する高圧放電ランプの封止部内に、内部に金属箔を含むガラス管が埋設されており、
金属箔の一端に取り付けられた電極の先端が発光管部内に導入されており、
金属箔の他端に取り付けられた外部リード棒が封止部外に導出されている高圧放電ランプの封止部構造において、
電極は軸部を有しており、
軸部の表面から、ガラス管における電極側端の周端までの距離が0.1mm以下であることを特徴とする
高圧放電ランプの封止部構造。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス管封着済マウントを形成する際、予めガラス管を縮径させてから当該ガラス管をマウントに封着させるようになっている。これにより、ガラス管封着済マウントにおけるガラス管の電極側端の径は、電極の軸径により近くなり、露出している電極の表面とガラス管の電極側端との段差が小さくなる。すると、ガラス管封着済マウントを封体容器に挿入し、封体容器をガラス管封着済マウントに封着させたとき、ガラス管の電極側端の端面と封体容器の内面との間でエッジ(入り隅部)ができにくくなる。したがって、耐圧欠陥部となるおそれのあるエッジが生じる可能性を低減して、より高圧で点灯できる高圧放電ランプを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明が適用された高圧放電ランプの一例を示す断面図である。
図2】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する図である。
図3】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する図である。
図4】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する図である。
図5】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する図である。
図6】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する図である。
図7】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する断面図である。
図8】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する断面図である。
図9】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する断面図である。
図10】本発明が適用された高圧放電ランプの製造方法の一例を説明する断面図である。
図11】本発明が適用された高圧放電ランプの一例を示す部分拡大断面図である。
図12】従来技術による高圧放電ランプの製造方法を説明する図である。
図13】従来技術による高圧放電ランプの製造方法を説明する断面図である。
図14】従来技術による高圧放電ランプの製造方法を説明する断面図である。
図15】従来技術による高圧放電ランプの一例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(高圧放電ランプ10の構造)
以下、本発明に係る方法で製造された高圧放電ランプ10の実施形態について説明する。高圧放電ランプ10は、図1に示すように、封体容器12と、一対のガラス管封着済マウント14とを備えている。
【0023】
封体容器12は、発光管部16と、当該発光管部16から外方へ延出する一対の封止部18とを有している。これら発光管部16および封止部18は、石英ガラスで一体的に形成されている。発光管部16内には、封止部18にて密閉された内部空間20が形成されている。また、封止部18内には、ガラス管封着済マウント14が埋設されている。さらに、内部空間20には、所定の量の水銀50、および、ハロゲン52(例えば、臭素)が封入されている。
【0024】
各ガラス管封着済マウント14は、それぞれ、マウント22と、ガラス管24とを備えている。マウント22は、電極26と、金属箔28と、外部リード棒30とを備えている。ガラス管24は、マウント22の金属箔28全体と、電極26の一部および外部リード棒30の一部を覆うようにしてマウント22に封着されている。
【0025】
電極26は、タングステンで形成された細棒状部材であり、その一端が金属箔28の一端に溶接等の手段で物理的/電気的に接続されており、他端が封体容器12の発光管部16における内部空間20に突出している。また、一対の電極26の他端同士は、内部空間20内で互いに対向するように配置されている。なお、本実施形態の電極26は、その先端部にタングステンワイヤが巻き付けられて太径に形成されている。本明細書では、この太径部を電極部26aといい、それ以外の部分を軸部26bという。
【0026】
金属箔28は、モリブデンで形成された短冊状の薄板部材であり、上述のように、その一端に電極26の一端が接続されており、他端に外部リード棒30の一端が物理的/電気的に接続されている。
【0027】
外部リード棒30は、導電性材料で形成された細棒状部材であり、その一端が上述のように金属箔28に接続されており、他端が外部に向けて突出している。
【0028】
高圧放電ランプ10に設けられた一対の外部リード棒30間に所定の高電圧を印加すると、発光管部16の内部空間20に配置された一対の電極26間(より正確には、電極部26a間)で開始したグロー放電が次にアーク放電に移行し、このアークによって蒸発/励起された水銀50から光が放射される。
【0029】
(高圧放電ランプ10の製造方法)
次に、本実施形態に係る高圧放電ランプ10の製造方法について説明する。最初に、図2に示すように、金属箔28の一端に電極26の一端を溶接するとともに、当該金属箔28の他端に外部リード棒30の一端を溶接する。これにより、マウント22が形成される。
【0030】
然る後、図3に示すように、外径が封体容器12の端部の内径よりも小径のガラス管24にマウント22を挿入する。なお、ガラス管24の肉厚は、封体容器12の端部(封止部18となる部分)の肉厚よりも薄く形成されている。
【0031】
ガラス管24にマウント22を挿入し、ガラス管24内を負圧にした後、図4に示すように、金属箔28から電極26の先端(電極部26a)側に離間した第1の位置Fでガラス管24を縮径する。具体的には、ガラス管24における第1の位置Fをバーナーやヒーター等で加熱して当該位置のガラス管24を軟化させる。ガラス管24を軟化させた後、第1の位置Fを境にしてガラス管24を(図中上下方向に)引っ張ることにより、第1の位置Fでガラス管24が縮径する。なお、ガラス管24の縮径は、この方法に限らず、ガラス管24における第1の位置Fを加熱した後、第1の位置Fを外部から加えた力で挟んで(ピンチして)行ってもよい。また、ガラス管24を加熱した後、縮径後の形状に形成した型枠で挟んで縮径すること、第1の位置Fにローラーを押し当てて縮径すること、加熱によってシュリンクさせてガラス管24を縮径すること、あるいは、ガラス管24を切削して縮径することが考えられる。
【0032】
ガラス管24を縮径させた後、図5に示すように、第1の位置Fから、外部リード棒30まで(より正確には、金属箔28から外部リード棒30の先端(他端)側に離間した第2の位置Sまで)のガラス管24をマウント22に封着させる。封着の具体例としては、封着させる部分を加熱することによってガラス管24を収縮させる「シュリンクシール」や、封着させる部分を加熱しつつピンチして、当該部分を偏平にする「ピンチシール」等の封着手段が考えられる。なお、封着時におけるガラス管24と金属箔28との接着性を向上させるために、金属箔28の表面に予め酸化皮膜を形成しておいてもよい。
【0033】
マウント22にガラス管24を封着させた後、図6に示すように、第1の位置Fでガラス管24を切断することにより、第1の位置Fから先で電極26をガラス管24から突出させる。また、外部リード棒30がガラス管24から突出するように、第2の位置Sよりも外部リード棒30の先端(他端)側の適当な位置でガラス管24をダイヤモンドカッター等で切断する。以上により、ガラス管封着済マウント14が完成する。なお、本実施形態の製造方法によれば、ガラス管24を縮径させた後に当該縮径部分を切断しているので、切断すべき面積が従来に比べて小さいことから、切断部分にクラックやガラス欠けが発生しにくくなっている。また、切断面積が従来に比べて小さいことから、カット時の振動、衝撃が小さくなり、従来であれば10〜20%の率で発生していた電極が折れる不具合をほぼ解消できる。さらに言えば、カッターのような接触式の切断方法ではなく、非接触式のレーザーカット等を用いることが出来るようになる。従来のように縮径していない状態のガラス管をレーザーカットしようとすると、当該ガラス管の径が大きいことから、非常に大きなエネルギーを要するとともに、テーパーカット形状を形成しにくいという問題があった。しかし、予め縮径されたガラス管であれば、少ないエネルギーで容易に切断できる。また、切断時の衝撃も無くなるので、さらにクラックが入りにくくなる。
【0034】
次に、完成したガラス管封着済マウント14を挿入する封体容器12を用意する。図7に示すように、封体容器12は、高圧放電ランプ10が完成したときに発光管部16および封止部18となる、中間部32と、当該中間部32よりも細径の円筒形状である一対の端部34とを有している。一対の端部34は中間部32から突出するようにして、互いに一体的に形成されている。また、中間部32は、両端部34の間において、その外形が端部34よりも太く形成された部分をいう。なお、中間部32の外形は、本実施形態のような略球状を含むあらゆる形状が使用可能である。
【0035】
封体容器12には、一方の端部34の外端から、中間部32の内部を通って他方の端部34の外端に至る連通孔36が形成されている。また、中間部32における連通孔36の径は、中間部32の中心に対応する位置において最も大きくなるように形成されている(最大部Max)。さらに、中間部32における連通孔36の径は、中間部32の中心から離間するにしたがって滑らかに小さくなっていくように形成されている。このため、中間部32と端部34とが互いに接合する部分(以下、当該部分を「境界部38」という。)において、連通孔36の径は最も細く形成されている(最細部Min)。換言すれば、封体容器12の肉厚は、この境界部38において最も厚く形成されている。
【0036】
基本的に、各端部34における連通孔36の径は、ガラス管封着済マウント14を挿入することができるように、当該ガラス管封着済マウント14の外径よりも大きく形成されているが、上述のように、封体容器12の境界部38における連通孔36の最細部Minはこの限りでなく、最細部Minの径は電極26(特に電極部26a)を通すことのできる大きさであればよい。また、この最細部Minから端部34の外端に向けて、連通孔36の径が滑らかに大きくなるテーパ部Tが形成されている。
【0037】
次に、図8に示すように、境界部38で封体容器12を縮径させる。例えば、このような封体容器12の境界部38をバーナーやヒーター等を用いて加熱して、境界部38の石英ガラスを軟化させる。境界部38を軟化させた後、当該境界部38を境にして封体容器12を引っ張ることにより、境界部38で封体容器12を縮径させる。
【0038】
これにより、封体容器12は、中間部32と端部34との間における境界部38の外形が端部34よりも細く形成された「くびれた形状」となる。このように、封体容器12をその境界部38でくびれさせることにより、当該境界部38における封体容器12の厚さが縮径前と比べて薄くなる。
【0039】
なお、図8に示す封体容器12に代えて、境界部38における肉厚を中間部32や端部34の肉厚よりも薄く形成した封体容器を使用することが好適である。この方法に限らず、封体容器12における境界部38を加熱した後、境界部38を外部から加えた力で挟んで(ピンチして)縮径してもよい。また、境界部38を加熱した後、縮径後の形状に形成した型枠で挟んで縮径すること、境界部38の外側にローラーを押し当てて縮径すること、加熱によってシュリンクさせて境界部38を縮径すること、あるいは、境界部38の外側を切削して縮径することが考えられる。
【0040】
このようにして形成した封体容器12に、図9に示すように、電極26を先にしてガラス管封着済マウント14を封体容器12の連通孔36に挿入する。電極26の先端が所定の位置にくるように、封体容器12とガラス管封着済マウント14との位置を調節した後、ガラス管封着済マウント14を挿入した方の端部34をガラス管封着済マウント14に封着する。封着手段としては、上述の「シュリンクシール」や「ピンチシール」等が考えられる。
【0041】
また、図10に示すように、封着のための加熱は、ガラス管封着済マウント14のガラス管24に対応する位置だけでなく、境界部38を越えて、中間部32における、より電極26の先端に近い位置まで実施するのが好ましい。これにより、ガラス管24から突出した電極26の先端により近い位置まで封体容器12を締めていくことが可能となり、高圧放電ランプ10の発光管部16における内部空間20の容積を小さくすることができる。
【0042】
一方のガラス管封着済マウント14を一方の端部34に封着した後、他方の連通孔36を介して内部空間20に所定量の水銀50、ハロゲン52、その他の物質を充填し、然る後、他方のガラス管封着済マウント14を他方の端部34に封着する。以上により、本実施形態の高圧放電ランプ10が完成する。
【0043】
本実施形態に係る高圧放電ランプ10の製造方法によれば、ガラス管封着済マウント14を形成する際、予めガラス管24を縮径させてから当該ガラス管24をマウント22に封着させるようになっている。このため、図11に示すように、ガラス管24の電極26側端の径D5は、電極26の軸部26bの径D6により近くなり、露出している電極26(軸部26b)の表面と、ガラス管24の電極26側端との段差がより小さくなる。なお、従来の技術であれば、電極Pの軸表面から、ガラス管2の電極側端の周端までの距離K1(図15参照)は、0.4mm程度まで小さくするのが限界であったが、本実施形態の製造方法によれば、電極26の軸部26bの表面から、ガラス管24の電極26側端の周端までの距離K2(図11参照)を0.1mm以下にすることができる。
【0044】
これにより、ガラス管封着済マウント14を封体容器12に挿入し、封体容器12の端部34から中間部32の一部までをガラス管封着済マウント14に封着させたとき、ガラス管24の電極26側端の端面と連通孔36の表面との間でエッジE(入り隅部)ができにくくなる。仮に、エッジEが生じた場合、当該エッジEが構造的な起点となって、封止部18のシールが破れるおそれがある。つまり、エッジEは、高圧放電ランプ10の発光管部16における内部空間20の耐圧欠陥部となるおそれがある。
【0045】
加えて、本実施形態のように、ガラス管24を加熱した後、第1の位置Fを境にして当該ガラス管24を引っ張ることによってガラス管24を縮径した場合、ガラス管24の電極26側端部は、従来のものに比べて、テーパ部分が長く、表面が滑らかで、かつ、より尖った形状になる。
【0046】
これにより、封着時に、封体容器12における同じく滑らかな連通孔36の表面と、ガラス管24の電極26側端部の表面との馴染みが良くなり、両表面の密着性がさらに向上する。
【0047】
したがって、本実施形態に係る高圧放電ランプ10の製造方法によれば、耐圧欠陥部となるおそれのあるエッジEが生じる可能性が低減するとともに、封体容器12の連通孔36の表面とガラス管24の電極26側端部の表面との密着性が向上する。このため、発光管部16の内部空間20の気密性を高めて、より高圧で点灯できる高圧放電ランプ10を製造することができる。
【0048】
また、本実施形態では、封体容器12の境界部38を予め縮径して、当該境界部38における封体容器12の厚さを薄くするようになっている。これにより、封体容器12の連通孔36にガラス管封着済マウント14を挿入し、封体容器12を当該ガラス管封着済マウント14に封着させる際に、封体容器12を加熱する時間(特に、ガラス管24の電極26側端付近に対応する封体容器12を加熱する時間)を短くすることができる。加えて、縮径後における境界部38の肉厚を中間部32や端部34の肉厚よりも薄く形成することにより、さらに加熱する時間を短くすることができる。
【0049】
このように、封着に際して封体容器12の加熱時間を短くすることにより、封着部分に熱の影響によるクラックが入る可能性をより低くすることができる。さらに、従来と同じ加熱時間にすれば、より電極26の先端に近い位置まで封体容器12の封着を行うことができるようになり、内部空間20の容積を小さくすることができる。これにより、内部空間20で点灯中の温度が最も低くなる、一対の電極間(アークポイント)から最も遠い「電極の付け根」部分の容積が小さくなるので、点灯中における内部空間20の平均温度を上げることができるとともに、内部空間20における最冷点の温度をより高くすることができる。これにより、内部空間20でより多くの水銀50を蒸発させて、より多くの発光量を得ることができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
10…高圧放電ランプ、12…封体容器、14…ガラス管封着済マウント、16…発光管部、18…封止部、20…内部空間、22…マウント、24…ガラス管、26…電極、28…金属箔、30…外部リード棒、32…中間部、34…端部、36…連通孔、38…境界部、50…水銀、52…ハロゲン、F…第1の位置、S…第2の位置、T…テーパ部、E…エッジ、P…電極
図1
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