特許第5918820号(P5918820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918820
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/15 20150101AFI20160428BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20160428BHJP
   G01R 23/20 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H04B17/15
   G01R29/08 A
   G01R23/20 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-177148(P2014-177148)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-52037(P2016-52037A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 圭一
(72)【発明者】
【氏名】稲童丸 桃子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑樹
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−099279(JP,A)
【文献】 特開平02−214345(JP,A)
【文献】 特開2004−128867(JP,A)
【文献】 特開2010−068142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00−17/40
G01R 23/00−23/20
G01R 29/00−29/26
H03H 1/00− 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の信号成分を含む試験信号を被測定装置(1、2、3)に出力し、前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定装置(10、20、30)であって、
前記被測定装置は、前記所定周波数の信号成分、雑音成分及び歪み成分を含む前記出力信号を出力するものであり、
前記所定周波数の信号成分を発生する信号成分発生手段(12)と、
前記被測定装置が出力する出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去する信号成分除去手段(52)と、
前記信号成分発生手段が発生する信号成分の周波数と前記信号成分除去手段が除去する周波数とを同期する周波数同期手段(51)と、
前記信号成分除去手段が前記所定周波数の信号成分を除去する前の信号と前記信号成分除去手段が前記所定周波数の信号成分を除去した後の信号とに基づいて前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定手段(55、71)と、
を備え
前記信号成分除去手段は、前記出力信号に含まれる前記所定周波数の信号成分のレベルよりも前記歪み成分のレベルが大きい場合でも前記出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去するものであることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記被測定装置は、前記所定周波数の信号成分を所定の無線周波数の信号に変換して送信する無線送信機(1)であって、
前記無線送信機の出力信号を入力して前記無線周波数の信号を前記所定周波数の信号成分に変換して前記信号成分除去手段に出力する信号入力手段(40)をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記被測定装置は、所定の無線周波数の信号を入力して前記所定周波数の信号成分を出力する無線受信機(2)であって、
前記信号成分発生手段の出力信号を入力して前記所定周波数の信号成分を前記無線周波数の信号に変換して前記無線受信機に出力する信号出力手段(60)をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定手段(55)は、信号対雑音及び歪み比(SINAD)を算出するものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記被測定装置は、前記信号成分発生手段の出力信号を入力して所定の処理を行った信号を出力するオーディオ機器(3)であることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定手段(71)は、全高調波歪み(THD)と、全高調波歪み及び雑音(THD+N)との少なくともいずれか一方を算出するものであることを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
所定周波数の信号成分を含む試験信号を被測定装置(1、2、3)に出力し、前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定方法であって、
前記被測定装置は、前記所定周波数の信号成分、雑音成分及び歪み成分を含む前記出力信号を出力するものであり、
前記所定周波数の信号成分を発生する信号成分発生ステップ(S11)と、
前記被測定装置が出力する出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去する信号成分除去ステップ(S18)と、
前記信号成分発生ステップで発生する信号成分の周波数と前記信号成分除去ステップで除去する周波数とを同期する周波数同期ステップ(S15)と、
前記信号成分除去ステップで前記所定周波数の信号成分を除去する前の信号と前記信号成分除去ステップで前記所定周波数の信号成分を除去した後の信号とに基づいて前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定ステップ(S21、S43)と、
を含み、
前記信号成分除去ステップにおいて、前記出力信号に含まれる前記所定周波数の信号成分のレベルよりも前記歪み成分のレベルが大きい場合でも前記出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信機の歪み率を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の性能を評価する1つの指標として、SINAD(SIgnal to Noise ratio And Distortion:信号対雑音+歪み比)特性が挙げられる。従来、SINAD特性を評価するものとしては、特許文献1記載のSINAD計が知られている。
【0003】
特許文献1記載のSINAD計は、試験対象の受信機に接続され、受信機の出力信号から所定周波数の信号成分を除去する帯域除去フィルタと、帯域除去フィルタを通過させないときのレベルと帯域除去フィルタを通過させたときのレベルとの比からSINADを演算する演算回路と、演算結果を表示する指示計と、を備えている。
【0004】
この構成において、受信機の出力信号から所定周波数の信号成分を除去するため、従来は測定者が除去対象の周波数を手動で設定していたが、測定効率を向上させるため、近年では除去対象の周波数をピークサーチにより自動的に検出する手法が用いられている。
【0005】
具体的には、図7(a)に示すように、受信機の出力信号は、信号成分と、歪み成分と、雑音成分と、を含んでいる。ここで、受信機のSINADを例えば1kHzの信号成分を用いて測定する場合には、通常は1kHzの信号成分のレベルが最大となる。ピークサーチによりレベルが最大の周波数信号成分を帯域除去フィルタで除去することにより、図7(b)に示すように、除去対象の周波数の信号成分を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−214345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のピークサーチによる手法では、除去対象の信号成分を除去できない場合があり、歪み率を正確に求めることができないという課題があった。
【0008】
具体的には、例えば、試験対象の受信機の出力信号が比較的大きく歪んでいると、図8(a)に示すように、除去対象の信号成分よりも歪み成分(例えば第三次高調波成分)のレベルが大きくなる可能性がある。この場合は、図8(b)に示すように、ピークサーチでは除去対象の信号成分が除去されず、歪み成分が除去されてしまうこととなる。その結果、従来のものは、歪み率を正確に求めることができないという課題があった。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、歪み率を正確に求めることができる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る測定装置は、所定周波数の信号成分を含む試験信号を被測定装置(1、2、3)に出力し、前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定装置(10、20、30)であって、前記被測定装置は、前記所定周波数の信号成分、雑音成分及び歪み成分を含む前記出力信号を出力するものであり、前記所定周波数の信号成分を発生する信号成分発生手段(12)と、前記被測定装置が出力する出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去する信号成分除去手段(52)と、前記信号成分発生手段が発生する信号成分の周波数と前記信号成分除去手段が除去する周波数とを同期する周波数同期手段(51)と、前記信号成分除去手段が前記所定周波数の信号成分を除去する前の信号と前記信号成分除去手段が前記所定周波数の信号成分を除去した後の信号とに基づいて前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定手段(55、71)と、を備え、前記信号成分除去手段は、前記出力信号に含まれる前記所定周波数の信号成分のレベルよりも前記歪み成分のレベルが大きい場合でも前記出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去するものである構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項1に係る測定装置は、信号成分発生手段が発生する信号成分の周波数と信号成分除去手段が除去する周波数とを同期する周波数同期手段を備えるので、信号成分除去手段によって除去対象の信号成分を確実に除去することができる。したがって、本発明の請求項1に係る測定装置は、歪み率を正確に求めることができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る測定装置は、前記被測定装置は、前記所定周波数の信号成分を所定の無線周波数の信号に変換して送信する無線送信機(1)であって、前記無線送信機の出力信号を入力して前記無線周波数の信号を前記所定周波数の信号成分に変換して前記信号成分除去手段に出力する信号入力手段(40)をさらに備えた構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項2に係る測定装置は、無線送信機の歪み率を正確に求めることができる。
【0014】
本発明の請求項3に係る測定装置は、前記被測定装置は、所定の無線周波数の信号を入力して前記所定周波数の信号成分を出力する無線受信機(2)であって、前記信号成分発生手段の出力信号を入力して前記所定周波数の信号成分を前記無線周波数の信号に変換して前記無線受信機に出力する信号出力手段(60)をさらに備えた構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項3に係る測定装置は、無線受信機の歪み率を正確に求めることができる。
【0016】
本発明の請求項4に係る測定装置は、前記測定手段(55)は、信号対雑音及び歪み比(SINAD)を算出するものである構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項4に係る測定装置は、無線送信機又は無線受信機のSINADを正確に求めることができる。
【0018】
本発明の請求項5に係る測定装置は、前記被測定装置は、前記信号成分発生手段の出力信号を入力して所定の処理を行った信号を出力するオーディオ機器(3)である構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項5に係る測定装置は、オーディオ機器の歪み率を正確に求めることができる。
【0020】
本発明の請求項6に係る測定装置は、全高調波歪み(THD)と、全高調波歪及び雑音(THD+N)との少なくともいずれか一方を算出するものである構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明の請求項6に係る測定装置は、オーディオ機器のTHD、THD+Nを正確に求めることができる。
【0022】
本発明の請求項7に係る測定方法は、所定周波数の信号成分を含む試験信号を被測定装置(1、2、3)に出力し、前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定方法であって、前記被測定装置は、前記所定周波数の信号成分、雑音成分及び歪み成分を含む前記出力信号を出力するものであり、前記所定周波数の信号成分を発生する信号成分発生ステップ(S11)と、前記被測定装置が出力する出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去する信号成分除去ステップ(S18)と、前記信号成分発生ステップで発生する信号成分の周波数と前記信号成分除去ステップで除去する周波数とを同期する周波数同期ステップ(S15)と、前記信号成分除去ステップで前記所定周波数の信号成分を除去する前の信号と前記信号成分除去ステップで前記所定周波数の信号成分を除去した後の信号とに基づいて前記被測定装置が出力する出力信号の歪み特性を測定する測定ステップ(S21、S43)と、を含み、前記信号成分除去ステップにおいて、前記出力信号に含まれる前記所定周波数の信号成分のレベルよりも前記歪み成分のレベルが大きい場合でも前記出力信号から前記所定周波数の信号成分を除去する構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の請求項7に係る測定方法は、信号成分発生ステップで発生する信号成分の周波数と信号成分除去ステップで除去する周波数とを同期する周波数同期ステップを含むので、信号成分除去ステップにおいて除去対象の信号成分を確実に除去することができる。したがって、本発明の請求項7に係る測定方法は、歪み率を正確に求めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、歪み率を正確に求めることができるという効果を有する測定装置及び測定方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る測定装置の第1実施形態におけるブロック構成図である。
図2】本発明に係る測定装置の第1実施形態におけるフローチャートである。
図3】本発明に係る測定装置の第2実施形態におけるブロック構成図である。
図4】本発明に係る測定装置の第2実施形態におけるフローチャートである。
図5】本発明に係る測定装置の第3実施形態におけるブロック構成図である。
図6】本発明に係る測定装置の第3実施形態におけるフローチャートである。
図7】ピークサーチによって信号成分の除去が正しく行われたことを示す説明図である。
図8】ピークサーチによって信号成分の除去が誤って行われたことを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る測定装置の第1実施形態における構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態における測定装置10は、無線送信機1(被測定装置)のSINADを測定するものであって、操作部11、信号発生部12、増幅器13、信号入力装置40、測定処理装置50を備えている。無線送信機1は、図示を省略したが、変調部、周波数変換部、送信部等を備え、オーディオ周波数の信号(オーディオ信号)を入力して所定の無線周波数の信号(RF信号)を出力するようになっている。なお、図1において、「AF」はオーディオ信号を示し、「RF」はRF信号を示している。
【0029】
操作部11は、無線送信機1の測定における各測定条件を設定するため、測定者が操作するものであって、例えば、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成されている。
【0030】
操作部11に入力される測定条件としては、例えば、信号発生部12に発生させる信号の周波数や信号レベルがある。
【0031】
信号発生部12は、操作部11によって設定された周波数及びレベルを有するオーディオ信号を発生し、増幅器13に出力するようになっている。すなわち、信号発生部12は、可聴周波数(音声周波数)の信号、例えば1kHzの信号を発生するものである。この信号発生部12は、信号成分発生手段を構成する。
【0032】
増幅器13は、信号発生部12からのオーディオ信号を所定増幅率で増幅し、無線送信機1に出力するようになっている。
【0033】
無線送信機1は、所定の変調方式による変調、例えばFM変調又はAM変調等を行い、所定のRF信号に変換し、信号入力装置40に出力するようになっている。
【0034】
信号入力装置40は、受信部41、周波数変換部42、復調部43、ATT(アッテネータ)44を備えている。この信号入力装置40は、信号入力手段を構成する。
【0035】
受信部41は、無線送信機1から入力したRF信号をIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号にダウンコンバートし、周波数変換部42に出力するようになっている。
【0036】
周波数変換部42は、受信部41から入力したIF信号をBB(Base Band:ベースバンド)信号に変換し、復調部43に出力するようになっている。
【0037】
復調部43は、BB信号に変換された変調信号を復調し、ATT44に出力するようになっている。
【0038】
ATT44は、復調部43から入力した信号を所定のレベルに減衰し、測定処理装置50に出力するようになっている。
【0039】
測定処理装置50は、周波数同期部51、信号成分除去フィルタ52、スイッチ53、スイッチ駆動部54、測定部55、表示部56を備えている。
【0040】
周波数同期部51は、信号発生部12が発生する信号の周波数と信号成分除去フィルタ52が除去する周波数とを同期するようになっている。この周波数同期部51は、周波数同期手段を構成する。
【0041】
信号成分除去フィルタ52は、周波数同期部51が同期した周波数の信号成分、すなわち、信号発生部12が発生した信号の周波数と同一の周波数の信号成分を除去するようになっている。この信号成分除去フィルタ52は、信号成分除去手段を構成する。
【0042】
スイッチ53は、信号入力装置40のATT44の出力側に接続された接点53aと、信号成分除去フィルタ52の出力側に接続された接点53bと、を有している。そして、スイッチ53は、スイッチ駆動部54からの制御信号に基づいて、接点53a又は53bのいずれか一方を選択するようになっている。
【0043】
スイッチ駆動部54は、スイッチ53に制御信号を出力し、接点53a又は53bのいずれか一方をスイッチ53に選択させるようになっている。
【0044】
測定部55は、スイッチ53が接点53aを選択している場合は、信号入力装置40のATT44の出力信号のレベルを測定するようになっている。ここで、信号成分をS、雑音成分をN、歪み成分をDで表すと、測定部55は、(S+N+D)のレベルを測定するものである。一方、測定部55は、スイッチ53が接点53bを選択している場合は、信号成分除去フィルタ52の出力信号、すなわち、(N+D)のレベルを測定するようになっている。そして、測定部55は、[数1]により、SINADを求め、そのデータを表示部56に出力するようになっている。なお、測定部55は、測定手段を構成する。
【0045】
[数1]
SINAD=(S+N+D)/(N+D)
【0046】
表示部56は、測定部55から測定結果のデータを入力し、そのデータを画面に表示するようになっている。
【0047】
次に、本実施形態における測定装置10の動作について図1図2を用いて説明する。
【0048】
信号発生部12は、操作部11によって設定されたオーディオ周波数、例えば1kHzのオーディオ信号(試験信号)を発生し(ステップS11)、増幅器13に出力する。
【0049】
増幅器13は、入力したオーディオ信号を所定の増幅率で増幅して無線送信機1に出力する(ステップS12)。
【0050】
無線送信機1は、送信処理を行う(ステップS13)。具体的には、無線送信機1は、入力したオーディオ信号を所定の変調方式により変調した後に所定のIF信号に変換し、さらに所定のRF信号に変換して信号入力装置40に出力する。
【0051】
信号入力装置40は、無線送信機1からのRF信号に対して入力処理を行う(ステップS14)。具体的には、受信部41は、無線送信機1から入力したRF信号をIF信号にダウンコンバートし、周波数変換部42に出力する。周波数変換部42は、IF信号をBB信号に変換し、復調部43に出力する。復調部43は、BB信号に変換された変調信号を復調し、ATT44に出力する。ATT44は、入力した信号を所定のレベルに減衰し、測定処理装置50に出力する。
【0052】
周波数同期部51は、信号発生部12が発生した信号の周波数と信号成分除去フィルタ52が除去する周波数とを同期する(ステップS15)。
【0053】
スイッチ駆動部54は、スイッチ53に接点53aを選択させ、(S+N+D)を測定部55に入力させる(ステップS16)。
【0054】
測定部55は、(S+N+D)のレベルを測定する(ステップS17)。
【0055】
信号成分除去フィルタ52は、周波数同期部51が同期した周波数の信号成分(S)を除去する(ステップS18)。その結果、信号成分除去フィルタ52の出力信号は、(N+D)となる。
【0056】
スイッチ駆動部54は、スイッチ53に接点53bを選択させ、(N+D)を測定部55に入力させる(ステップS19)。
【0057】
測定部55は、(N+D)のレベルを測定する(ステップS20)。
【0058】
測定部55は、[数1]により、SINADを算出し(ステップS21)、算出したSINADのデータを表示部56に出力する。
【0059】
表示部56は、測定部55からSINADのデータを入力し、SINADを画面に表示する(ステップS22)。
【0060】
以上のように、本実施形態における測定装置10は、信号発生部12が発生する信号成分の周波数と信号成分除去フィルタ52が除去する周波数とを同期する周波数同期部51を備えるので、信号成分除去フィルタ52によって除去対象の信号成分を確実に除去することができる。
【0061】
したがって、本実施形態における測定装置10は、SINADで示される無線送信機1の歪み率を正確に求めることができる。また、この構成により、本実施形態における測定装置10は、信号成分の周波数を測定者に意識させることなく無線送信機1の歪み率を正確に求めることができる。
【0062】
(第2実施形態)
まず、本発明に係る測定装置20の第2実施形態における構成について説明する。
【0063】
図3に示すように、本実施形態における測定装置20は、無線受信機2(被測定装置)のSINADを測定するものであって、操作部11、信号出力装置60、ATT21、測定処理装置50を備えている。なお、第1実施形態の測定装置10(図1参照)と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
信号出力装置60は、信号発生部12、変調部61、周波数変換部62、送信部63を備えている。この信号出力装置60は、信号出力手段を構成する。
【0065】
変調部61は、所定の変調方式による変調、例えばFM変調又はAM変調等を行い、周波数変換部62に出力するようになっている。
【0066】
周波数変換部62は、変調部61が変調した信号を所定のIF周波数に変換し、送信部63に出力するようになっている。
【0067】
送信部63は、周波数変換部62からのIF周波数の信号を所定のRF信号にアップコンバートし、無線受信機2に出力するようになっている。
【0068】
無線受信機2は、信号出力装置60から入力したRF信号をIF信号にダウンコンバートし、さらにBB信号に変換した後、BB信号に変換された変調信号を復調してATT21に出力するようになっている。
【0069】
ATT21は、無線受信機2から入力した信号を所定のレベルに減衰し、測定処理装置50の信号成分除去フィルタ52及びスイッチ53の接点53aに出力するようになっている。
【0070】
次に、本実施形態における測定装置20の動作について図3図4を用いて説明する。なお、第1実施形態のフローチャート(図2)と同様なステップには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0071】
信号出力装置60は、RF信号を無線受信機2に出力する(ステップS31)。具体的には、信号発生部12は、操作部11によって設定されたオーディオ周波数、例えば1kHzのオーディオ信号(試験信号)を発生し、変調部61に出力する。変調部61は、入力信号に対して所定の変調方式による変調を行って周波数変換部62に出力する。周波数変換部62は、変調された信号をIF周波数に変換し、送信部63に出力する。送信部63は、IF周波数の入力信号を所定のRF周波数の信号にアップコンバートし、無線受信機2に出力する。
【0072】
無線受信機2は、入力したRF信号に対して受信処理を行い(ステップS32)、オーディオ信号をATT21に出力する。具体的には、無線受信機2は、信号出力装置60から入力したRF信号をIF信号にダウンコンバートし、IF信号をBB信号に変換し、BB信号に変換された変調信号を復調して得たオーディオ信号をATT21に出力する。
【0073】
ATT21は、オーディオ信号を所定のレベルに減衰し(ステップS33)、測定処理装置50に出力する。ATT21の出力信号は、信号成分除去フィルタ52及びスイッチ53の接点53aに出力される。
【0074】
その結果、第1実施形態と同様に、スイッチ駆動部54がスイッチ53を切り替えることによって、測定部55は、[数1]により、SINADを算出することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態における測定装置20は、信号発生部12が発生する信号成分の周波数と信号成分除去フィルタ52が除去する周波数とを同期する周波数同期部51を備えるので、除去対象の信号成分を確実に除去することができる。
【0076】
したがって、本実施形態における測定装置20は、SINADで示される無線受信機2の歪み率を正確に求めることができる。また、この構成により、本実施形態における測定装置20は、信号成分の周波数を測定者に意識させることなく無線受信機2の歪み率を正確に求めることができる。
【0077】
(第3実施形態)
まず、本発明に係る測定装置30の第3実施形態における構成について説明する。
【0078】
図5に示すように、本実施形態における測定装置30は、アナログ信号を入出力して所定の処理を行うオーディオ機器3(被測定装置)に接続されている。オーディオ機器3は、例えば、オーディオ信号を増幅するオーディオ増幅器である。
【0079】
測定装置30は、オーディオ機器3のTHD+N(Total Harmonic Distortion Plus Noise:全高調波歪+雑音)特性を測定するものであって、操作部11、信号発生部12、増幅器13、ATT21、測定処理装置70を備えている。なお、第1実施形態の測定装置10(図1参照)、第2実施形態20(図3)と同様な構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
測定処理装置70は、測定部71を備えている。測定部71は、スイッチ53が接点53aを選択しているときは(S+N+D)を入力するようになっている。また、測定部71は、スイッチ53が接点53bを選択しているときは(N+D)を入力するようになっている。そして、測定部71は、[数2]により、THD+Nを求め、そのデータを表示部56に出力するようになっている。なお、測定部71は、測定手段を構成する。
【0081】
[数2]
THD+N=(N+D)/(S+N+D)
【0082】
次に、本実施形態における測定装置30の動作について図5図6を用いて説明する。なお、以下の説明では、オーディオ機器3をオーディオ増幅器とする。
【0083】
信号発生部12は、操作部11によって設定されたオーディオ周波数、例えば1kHzのオーディオ信号(試験信号)を発生し(ステップS11)、増幅器13に出力する。
【0084】
増幅器13は、入力したオーディオ信号を所定の増幅率で増幅してオーディオ機器3に出力する(ステップS41)。
【0085】
オーディオ機器3は、入力したオーディオ信号を所定の増幅率で増幅し(ステップS42)、ATT21に出力する。
【0086】
ATT21は、オーディオ信号を所定のレベルに減衰し(ステップS33)、測定処理装置50に出力する。ATT21の出力信号は、信号成分除去フィルタ52及びスイッチ53の接点53aに出力される。
【0087】
周波数同期部51は、信号発生部12が発生した信号の周波数と信号成分除去フィルタ52が除去する周波数とを同期する(ステップS15)。
【0088】
スイッチ駆動部54は、スイッチ53に接点53aを選択させ、(S+N+D)を測定部71に入力させる(ステップS16)。
【0089】
測定部71は、(S+N+D)のレベルを測定する(ステップS17)。
【0090】
信号成分除去フィルタ52は、周波数同期部51が設定した周波数の信号成分(S)を除去する(ステップS18)。その結果、信号成分除去フィルタ52の出力信号は、(N+D)となる。
【0091】
スイッチ駆動部54は、スイッチ53に接点53bを選択させ、(N+D)を測定部71に入力させる(ステップS19)。
【0092】
測定部71は、(N+D)のレベルを測定する(ステップS20)。
【0093】
測定部71は、[数2]により、THD+Nを算出し(ステップS43)、算出したTHD+Nのデータを表示部56に出力する。
【0094】
表示部56は、測定部71からTHD+Nのデータを入力し、測定部71が算出したTHD+Nを画面に表示する(ステップS44)。
【0095】
以上のように、本実施形態における測定装置30は、信号発生部12が発生する信号成分の周波数と信号成分除去フィルタ52が除去する周波数とを同期する周波数同期部51を備えるので、信号成分除去フィルタ52によって除去対象の信号成分を確実に除去することができる。
【0096】
したがって、本実施形態における測定装置30は、THD+Nで示されるオーディオ機器3の歪み率を正確に求めることができる。また、この構成により、本実施形態における測定装置30は、信号成分の周波数を測定者に意識させることなくオーディオ機器3の歪み率を正確に求めることができる。
【0097】
(他の態様)
前述の第3実施例では、THD+Nを算出する例を挙げたが、これに加えてTHDを算出したり、THD+Nに代えてTHDのみを算出したりする構成とすることもできる。
【0098】
図5において、例えば、ATT21から接点53bに至る経路に直列に、信号成分除去フィルタ52に加えて雑音成分(N)を除去するフィルタを設け、スイッチ53が接点53bを選択したときに、測定部71が歪み(D)を測定する構成とする。この構成により、測定部71は、[数3]により、THD(全高調波歪)を算出することができる。
【0099】
[数3]
THD=D/(S+N+D)
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明に係る測定装置及び測定方法は、歪み率を正確に求めることができるという効果を有し、無線受信機の歪み率を測定する測定装置及び測定方法として有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 無線送信機(被測定装置)
2 無線受信機(被測定装置)
3 オーディオ機器(被測定装置)
10、20、30 測定装置
12 信号発生部(信号成分発生手段)
40 信号入力装置(信号入力手段)
50、70 測定処理装置
51 周波数同期部(周波数同期手段)
52 信号成分除去フィルタ(信号成分除去手段)
55、71 測定部(測定手段)
60 信号出力装置(信号出力手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8