(54)【発明の名称】(1,1−ジオキソ−4−チオモルホリニル)−[6−[[3−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−4−イソオキサゾリル]メトキシ]−3−ピリジニル]−メタノンの固体形態
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、及び注意障害の治療又は予防のための、卒中からの回復治療のための、あるいは認識増強剤として使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶。
急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、及び注意障害の治療又は予防のために、あるいは認識増強のために有用な医薬品の調製のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】
で示される化合物、更にはその溶媒和物、他の適切な化合物との包接複合体、その包接複合体と他の適切な化合物との溶媒和物の新規な固体形態、その製造方法、その固体形態を含有する医薬組成物、及び医薬品としてのその使用に関する。
【0002】
背景技術
多形性とは、2種以上の異なる結晶種として結晶化する化合物の能力である。異なる多形形態(又は多形)は、結晶格子における分子の異なる配列又は配座を有する。ある固体が識別できる結晶格子を持たず、かつ分子の分子配列が無秩序であれば、これは無定形と考えられる。無定形状態は、構造的には液体状態と類似している[W. McCrone, Phys. Chem. Org. Solid State (1965) 2:725767]。
【0003】
薬剤物質の多形形態は、異なる化学的、物理的及び物理技術的特性を有することができる。相違は、例えば、結晶構造中の分子の充填(密度、屈折率、導電率、吸湿性)、熱力学的特性(融点、熱容量、蒸気圧、溶解度)、速度論的特性(溶解速度、安定性)、表面特性(表面自由エネルギー、界面張力、形状、形態)、及び機械的特性(圧縮性、引張強度)に起因しうる。これらの特性は、医薬品有効成分(API)及び薬剤製品を加工及び製造する能力に直接影響を及ぼしうる。多形性は更に、固体状態特性の変化及び特定製剤に対する適合性に起因する薬理学的意義を有する。即ち、APIの多形性は、薬剤製品の品質、安全性、効力及び開発可能性に影響を及ぼしうるため、基本的に重要である[D. Giron et al., J. Therm. Anal. Cal. (2004) 77:709]。
【0004】
多形変異に加えて、APIは、適切な対イオンとの異なる塩の形態で結晶化できる。多形性と同様に、塩の形態は、溶解度の程度や上記の他の多くの物理的及び化学的要因が互いに異なっている。APIの遊離酸又は遊離塩基と比較すると、適切な塩の形態は、水溶性、溶解速度、吸湿性、化学的安定性、融点、又は機械的特性の向上を提供するかもしれない。
【0005】
疑似多形としても知られている溶媒和物は、結晶格子に組み込まれた化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を有する結晶の形態である。組み込まれた溶媒が水であれば、この溶媒和物は水和物として一般に知られている。
【0006】
塩及び包接複合体は両方とも多成分系である。塩は、酸と塩基との間の完全なプロトン移動を伴うイオン結合相互作用により形成されるが、一方包接複合体では、分子は結晶状態で中性であり、そして主として水素結合又はファンデルワールス相互作用により結合している[S.L. Morissette et al., Adv. Drug Del. Rev. (2004) 56:275-300]。
【0007】
シクロデキストリン類は、それぞれ6個、7個、又は8個のグルコース単位からなり、親水性の空孔外部及び疎水性の空孔内部を有する[V.J. Stella et al., Adv. Drug Del. Rev. (2007) 59:677-694]。これらの特性は、その水溶性及びその空孔に疎水性分子部分を取り込む能力に関与している。シクロデキストリン類は、APIがシクロデキストリン分子の空孔に捕捉されている、APIとの包接複合体のための包接複合体形成物質として利用できる。文献には、シクロデキストリン包接複合体の結晶構造は、典型的にはホスト分子の空間配列により支配されることが報告されている。したがってシクロデキストリンは、結晶状態と類似の確定した充填配列を形成するかもしれないが、一方APIは、明確に確定した格子位置を占めない[T. Uyar et al., Cryst. Growth Des. (2006) 6:1113-1119, T. Toropainen et al., Pharm. Res. (2007) 24:1058-1066]。
【0008】
市販のシクロデキストリン類の中で、γ−シクロデキストリン(γ−CD)は、安定であることが報告され、経口投与に安全であることが見い出された[I.C. Munro et al., Regulatory Toxicology and Pharmacology (2004) 39:S3-S13]。しかし、γ−シクロデキストリン類は、今までのところ上市された製剤には使用されていない。最近になって(12/2008)ヨーロッパ薬局方にモノグラフが収録されているのみである。シクロデキストリン類との包接複合体の形成は、予測可能でなく、包括的な実験的調査を必要とする。γ−シクロデキストリンとの包接複合体が形成される場合には、多くの医薬品有効成分は、2:1複合体(包接複合体形成物質とAPIとの間の比)を形成する。シクロデキストリン包接複合体の形成及びそのゲスト対ホストの化学量論は、ゲスト分子の分子構造及び幾何学的サイズに大きく依存している[T. Uyar et al., Cryst. Growth Des. (2006) 6:1113-1119]。
【0009】
式(I)の化合物、その製造法、GABA A α5受容体の逆アゴニストとしてのその薬理学的活性、並びに種々の中枢神経系(CNS)症状の処置、予防及び/又は進行の遅延のためのその使用は、WO 2009/071476に記載されている。その物理化学的特性に基づいて、WO 2009/071476に記載される式(I)の化合物は、生物薬剤学的分類システムによる、低い水溶性及び高い浸透性を示すBCS 2化合物である[G.L. Amidon, H. Lennernas, V.P. Shah, J.R. Crison, Pharm. Res. (1995) 12:413-420]。よって経口生物学的利用能の限定されていることが、経口製剤開発の主要問題である。
【0010】
WO 2009/071476に記載される式(I)の化合物の無水固体形態が臨床開発に選択されるならば、薬剤製品の製剤過程及び/又は保存中の水和物形成の観点から物理的不安定さが見込まれる。WO 2009/071476及び本明細書に記載される式(I)の化合物の無水固体形態Aは、更に準安定であるに過ぎないことが見い出され、よって異なる固体形態に変換しうる。よって物理化学的特性が向上し、生物学的利用能が改善していることを特徴とする、新しい固体形態を見い出すニーズが存在する。
【0011】
更に、APIの新しい固体形態(多形、溶媒和物、塩、包接複合体)の発見は、製剤科学者が、目標とする放出プロフィール又は他の所望の特徴を持つ薬剤の医薬品投与剤形を設計するのに役立つ材料のレパートリーを広げる。したがって、式(I)の化合物のもっと多くの固体形態を見い出すニーズが存在する。
【0012】
今や驚くべきことに、ある条件下で、本明細書に後述される、有利な実用性及び特性を持つ、式(I)の化合物の新しい固体形態、特に結晶又は無定形形態、最も具体的には結晶形態が得られることが見い出された。これらは、API及び薬剤製品開発に関連のある種々の態様において、例えば、APIの溶解、API及び薬剤製品の安定性及び保存期間、並びに/あるいは製造又は精製の達成を容易にする経路のために有用な、実質的に様々で優れた物理的及び物理化学的特性を示す。本発明は、APIの溶解度、溶解速度、経口生物学的利用能の改善した、更には安定性の増大した、式(I)の化合物の新規な固体形態を提供する。
【0013】
更に、本発明は、シクロデキストリン類との式(I)の化合物の新規な包接複合体を提供する。このような包接複合体は更に、溶解速度及び生物学的利用能の改善を特徴とする。
【0014】
本明細書に記載される新しい固体形態は、X線粉末回折法、結晶構造解析、振動分光法、磁気共鳴及び質量分析、熱量測定法、熱重量分析、動的水蒸気吸着測定法により、更には顕微鏡法により識別できる。
【0015】
特に断りない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の通常の技術者が共通に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は均等であるこれらは、本発明の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料は、後述されている。
【0016】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が引用例として取り込まれる。
【0017】
本出願に使用される命名法は、特に断りない限り、IUPACの系統的命名法に基づく。
【0018】
本明細書中の構造において炭素、酸素、硫黄又は窒素原子上に出現する空いている結合価は、特に断りない限り、水素の存在を示す。
【0019】
「オプションの」又は「場合により」という用語は、続いて記載される事象又は状況が必ずしも存在する必要がないこと、そしてこの記述がその事象又は状況が存在する場合と存在しない場合を包含することを意味する。
【0020】
「置換基」という用語は、親分子上の水素原子を置換する原子又は原子の基を意味する。
【0021】
「置換の」という用語は、特定の基が1個以上の置換基を持つことを意味する。任意の基が、複数の置換基を持つことができ、種々の見込まれる置換基が提供される場合、置換基は、独立に選択され、同一である必要はない。「未置換の」という用語は、特定の基が置換基を持たないことを意味する。「場合により置換の」という用語は、特定の基が、未置換であるか、又は見込まれる置換基の群から独立に選択される1個以上の置換基により置換されていることを意味する。置換基の数を示すとき、「1個以上」という用語は、1個の置換基から最も大きな見込まれる数の置換、即ち、置換基による1個の水素の置換から全ての水素の置換までを意味する。
【0022】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。特定のハロゲンはフルオロである。
【0023】
「アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子の一価の直鎖又は分岐の飽和炭化水素基を意味する。特定の実施態様では、アルキルは、1〜7個の炭素原子を、そして更に特定の実施態様では1〜4個の炭素原子を有する。アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、又はtert−ブチルを包含する。特定のアルキルはメチルである。
【0024】
「アルコキシ」という用語は、式:−O−R’(式中、R’はアルキル基である)の基を意味する。アルコキシ部分の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、及びtert−ブトキシを包含する。
【0025】
「ハロアルキル」という用語は、アルキル基であって、このアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、同一であるか又は異なるハロゲン原子、特にフルオロ原子により置換されている基を意味する。ハロアルキルの例は、モノフルオロ−、ジフルオロ−又はトリフルオロ−メチル、−エチル又は−プロピル、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、フルオロメチル、又はトリフルオロメチルを包含する。「ペルハロアルキル」という用語は、アルキル基であって、このアルキル基の全ての水素原子が、同一であるか又は異なるハロゲン原子により置換されている基を意味する。
【0026】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基であって、このアルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ヒドロキシ基により置換されている基を意味する。ヒドロキシアルキルの例は、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル又は2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルを包含する。
【0027】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、N、O及びSから選択される、1、2、又は3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である、3〜9個の環原子の一価の飽和又は部分不飽和の単環式又は二環式環系を意味する。特定の実施態様において、ヘテロシクロアルキルは、N、O及びSから選択される、1、2、又は3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である、4〜7個の環原子の一価の飽和単環式環系である。単環式飽和ヘテロシクロアルキルの例は、アジリジニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−チオモルホリン−4−イル、アゼパニル、ジアゼパニル、ホモピペラジニル、又はオキサゼパニルである。二環式飽和ヘテロシクロアルキルの例は、8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクチル、キヌクリジニル、8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクチル、9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノニル、3−オキサ−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノニル、又は3−チア−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノニルである。部分不飽和ヘテロシクロアルキルの例は、ジヒドロフリル、イミダゾリニル、ジヒドロ−オキサゾリル、テトラヒドロ−ピリジニル、又はジヒドロピラニルである。特定のヘテロシクロアルキルは、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)である。
【0028】
「芳香族」という用語は、文献、特にIUPAC - Compendium of Chemical Terminology, 2nd, A. D. McNaught & A. Wilkinson (Eds). Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997)に定義されるような芳香族性の従来の考えを意味する。
【0029】
「アリール」という用語は、6〜10個の炭素環原子を含む、一価の芳香族炭素環の単環式又は二環式環系を意味する。アリール部分の例は、フェニル及びナフチルを包含する。特定のアリールはフェニルである。
【0030】
「ヘテロアリール」という用語は、N、O及びSから選択される、1、2、3又は4個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である、5〜12個の環原子一価の芳香族複素環の単環式又は二環式環系を意味する。ヘテロアリール部分の例は、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、イソオキサゾリル、ベンゾフラニル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、イソベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、又はキノキサリニルを包含する。
【0031】
「医薬品有効成分」(又は「API」)という用語は、特定の生物学的活性を有する、医薬組成物中の化合物を意味する。
【0032】
「薬学的に許容しうる」という用語は、一般に安全で非毒性、かつ生物学的にも他の意味でも不適切でなく、そして獣医学的使用だけでなくヒトの医薬としての使用にも許容しうる、医薬組成物を調製するのに有用な材料の特質を意味する。
【0033】
「薬学的に許容しうる賦形剤」及び「治療上不活性な賦形剤」という用語は、互換的に使用でき、そして治療活性がなく、投与される対象に対して非毒性である、医薬組成物中の任意の薬学的に許容しうる成分、例えば、医薬品を処方するのに使用される、崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、酸化防止剤、界面活性剤、担体、希釈剤又は滑沢剤などを意味する。
【0034】
「医薬組成物」という用語は、それを必要とする哺乳動物、例えば、ヒトに投与すべき、治療有効量の医薬品有効成分を薬学的に許容しうる賦形剤と共に含む混合物又は溶液を意味する。
【0035】
「固体形態」又は「形態」という用語は、固体材料の結晶形態及び/又は無定形形態を示すための一般用語である。
【0036】
「結晶形態」及び「結晶性形態」という用語は、結晶性固体の多形及び疑似多形を示すために互換的に使用できる。
【0037】
「多形」及び「変異」という用語は、ある化合物が結晶化できるある特定の結晶構造を示すために同義語として使用できる。異なる多形は、結晶格子中の分子の異なる配列又は配座を有するが、全て同じ元素組成を共有する。
【0038】
「多形性」という用語は、2種以上の多形を形成する化合物の能力を意味する。
【0039】
「互変」という用語は、同じ物質の2種以上の多形の間の関係であって、その多形の熱力学的安定性の順位が規定温度で可逆的に変化する関係を意味する。
【0040】
「単変」という用語は、同じ物質の2種以上の多形の間の関係であって、その多形の熱力学的安定性の順位が、融点未満の全ての温度で保持される関係を意味する。「準安定」形態は、熱力学的安定性の最高順位でない結晶形態である。
【0041】
「溶媒和物」及び「疑似多形」という用語は、結晶格子に組み込まれた化学量論量又は非化学量論量の溶媒のいずれかを有する結晶を示すために、同義語として使用できる。組み込まれた溶媒が水ならば、形成される溶媒和物は「水和物」である。組み込まれた溶媒がアルコールであるとき、形成される溶媒和物は「アルコラート」である。
【0042】
「塩」という用語は、明確に定義された化学量論比の2種の塩形成物質と共に、2種の成分、酸及び塩基からなる材料を意味する。塩の結晶は、酸と塩基との間の、水素イオンの完全な転移を伴うイオン結合相互作用により形成される。
【0043】
「結晶形」という用語は、単結晶が構築される基本体要素(多面体)を意味する。結晶形は、多面体の格子面のMiller指数により記述される。
【0044】
「晶癖」という用語は、結晶形態であり、したがって固体形態の物理的外観を意味する。晶癖の変動は、格子面の異なる成長速度に起因する。以下の晶癖が識別されている[USP, General Chapter <776> (Optical Microscopy)]:
【表1】
【0045】
非球体対象、例えば、不規則形状粒子の「球等価直径」(又はESD)という用語は、同体積の球体の直径である。
【0046】
「d50値」及び「質量中央径」(又はMMD)という用語は、互換的に使用でき、そして質量による平均粒径、即ち、集団の粒子の50%(w)がもっと大きい球等価直径を持ち、そして残りの50%(w)がもっと小さい球等価直径を持つ直径として定義される、粒子の平均等価直径を意味する。
【0047】
「無定形形態」という用語は、識別できる結晶格子を持たない固体材料を意味し、そして分子の分子配列は長距離秩序を欠いている。特に、無定形とは、鋭いBraggの回折ピークを示さない材料を意味する。Braggの法則は、式:「2d・sinθ=n・λ」[式中、「d」は、結晶内の隣接面の対の間の垂直距離(単位Å)(「d間隔」)であり、「θ」は、Bragg角を意味し、「λ」は、波長を意味し、そして「n」は、整数である]によって結晶性材料の回折を記述する。Braggの法則が満たされるとき、反射ビームは位相が一致し、強め合うように干渉するため、Braggの回折ピークがX線回折パターンに観測される。Bragg角以外の入射角では、反射ビームは位相が不一致であり、弱めあうように干渉するか又は打ち消される。無定形材料は、Braggの法則を満足させず、そしてX線回折パターンに鋭いBragg回折ピークは観測されない。無定形材料のXRPDパターンは、1種以上の無定形ハローを更に特徴とする。
【0048】
「包接複合体」という用語は、化学量論的多成分複合体を意味する。塩とは対照的に、包接複合体ではプロトン移動はないか、又は部分的にだけあると予期される。包接複合体は、無定形形態であっても又は結晶性形態であってもよい。特に、包接複合体は結晶性形態である。包接複合体形成物質は、室温で固体である。特定の包接複合体形成物質は、シクロデキストリン、最も具体的にはγ−シクロデキストリン(γ−CD)である。特に包接複合体形成物質は、包接複合体中で結晶性状態である。特に、包接複合体は、化学量論的1:1又は2:1の包接複合体(包接複合体形成物質とAPIとの間の比)である。最も具体的には、包接複合体は、化学量論的1:1包接複合体(包接複合体形成物質とAPIとの間の比)である。包接複合体は、溶媒和物、水和物を形成することができ、そして様々な多形形態として存在できる。
【0049】
「フォームA」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの結晶性無水多形形態Aを意味する。
【0050】
「フォームB」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン一水和物の結晶性多形形態Bを意味する。
【0051】
「フォームC」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの結晶性無水多形形態Cを意味する。
【0052】
「フォームD」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン・トリフルオロエタノール一溶媒和物の結晶性多形形態Dを意味する。
【0053】
「フォームE」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの無水結晶性多形形態Eを意味する。
【0054】
「無定形形態(アモルファスフォーム)」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの無定形形態を意味する。
【0055】
「γ−CD包接複合体」という用語は、本明細書に使用されるとき、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンとγ−シクロデキストリンとの結晶性1:1包接複合体を意味する。
【0056】
「XRPD」という用語は、X線粉末回折の分析法を意味する。XRPDパターンは、STOE STADI P回折計(CuKα線源、一次モノクロメータ、位置敏感型検出器、角度範囲3°〜42°2θ、総測定時間およそ60分)により周囲条件で透過幾何学として記録された。角度値の再現性は、2θ±0.2°の範囲内である。角度値と組合せて与えられる「およそ」という用語は、2θ±0.2°の範囲内である再現性を意味する。試料は、調製して、更にこの物質を加工(例えば、粉砕又は篩分け)することなく分析した。相対的XRPDピーク強度は、構造因子、温度因子、結晶化度、偏光因子、多重度、及びLorentz因子のような、多数の因子に依存する。相対強度は、好ましい配向効果に起因して測定ごとにかなり変化するかもしれない。
【0057】
反射幾何学ではSiemens D5000回折計(Cu線源、NiKβフィルター、シンチレーション検出器、2θ角範囲3°〜42°、湿度レベルあたり総測定時間およそ180分)により湿度制御XRPD解析を実施した。回折計にはMRI(Materials Research Instruments)湿度チャンバーを取り付ける。チャンバー内の湿度は、ANSYCO湿度制御器(SYCOS H-HOT)により調整する。
【0058】
単結晶構造解析には、単結晶試料をゴニオメータ上のナイロンループにマウントして、周囲条件で測定した。あるいは、結晶を測定の間、窒素流で冷却した。データは、Oxford Diffraction製のGEMINI R Ultra回折計で収集した。データ収集には1.54Å波長のCu線を使用した。データは、Oxford DiffractionのCRYSALISソフトウェアにより処理した。結晶構造を解析して、標準的な結晶学のソフトウェアにより精緻化した。このケースでは、Bruker AXS(Karlsruhe)製のプログラムShelXTLを使用した。
【0059】
「FWHM」という略語は、そのピーク高の半値でのピーク(例えば、スペクトルにおいて、特にXRPDパターンにおいて出現する)の幅である、半値全幅を意味する。
【0060】
X線回折パターンに関連して「鋭いBragg回折ピーク」という用語は、回折のBraggの法則が満たされる場合に観測されるピークを意味する。一般に、鋭いBragg回折ピークのFWHMは、2θ 0.5°未満である。
【0061】
X線回折パターンに関連して「無定形ハロー」という用語は、無定形材料のX線粉末回折パターンにおける、およそベル型の回折極大値を意味する。無定形ハローのFWHMは、原則として結晶性材料のピークのFWHMよりも大きい。
【0062】
「FTIR」及び「IR」という用語は、赤外線分光学の分析法を意味する。試料のIRスペクトルは、FTIR分光計により透過率で2枚の塩化ナトリウムプレート(横断面13mm)の間のおよそ5mgの試料及びおよそ5mgのNujol(鉱油)よりなるNujol懸濁液のフィルムとして記録する。スペクトルは、DTGS検出器を取り付けたMagna 860(Thermo/Nicolet)で4000cm
−1と600cm
−1との間のスペクトル範囲、分解能2cm
−1及び300回の同時追加走査で記録した。
【0063】
「ラマン」という用語は、ラマン分光学の分析法を意味する。ラマンスペクトルを記録するために、試料をガラススライドに拡げた。ラマンスペクトルは、150〜3800cm
−1の範囲で、633nmの励起のPeltier冷却CCD検出器、1200l/mm回折格子、×50対物レンズを取り付けた、3s(又は弱いラマン散乱には7s)の3回の曝露でのARAMIS(Horiba Jobin Yvon)ラマン顕微鏡により記録した。
【0064】
「DSC」という用語は、示差走査熱量測定の分析法を意味する。DSCサーモグラムは、FRS05センサー付きのMettler-Toledo(商標)示差走査熱量計DSC820、DSC821又はDSC1を用いて記録した。インジウムを対照物質としてシステム適合性試験を実施して、インジウム、安息香酸、ビフェニル及び亜鉛を対照物質として使用して較正を行った。測定には、およそ2〜6mgの試料をアルミニウムパンに入れて、正確に秤量して、穿孔蓋で密封した。測定前に、蓋を自動で突き刺すことにより、およそ1.5mmのピンホールが生じた。次に試料を約100mL/分の窒素流下で通常10K/分の加熱速度を用いて加熱した。無定形形態の測定には、およそ2〜6mgの試料をアルミニウムパンに入れ、正確に秤量して、密封した。次に試料を約100mL/分の窒素流下で10K/分の加熱速度を用いて加熱した。
【0065】
「開始点」という用語は、転移前の基線と湾曲部間の接線との交点を意味する。
【0066】
「ガラス転移温度」(Tg)という用語は、これを上回るとガラス状無定形固体がゴム状になる温度を意味する。
【0067】
「TGA」という用語は、熱重量分析の分析法を意味する。TGA分析は、Mettler-Toledo(商標)熱重量分析器(TGA850又はTGA851)で実施した。システム適合性試験はHydranalを対照物質として実施し、そしてアルミニウム及びインジウムを対照物質として使用して較正を実施した。熱重量分析には、およそ5〜10mgの試料をアルミニウムパンに入れ、正確に秤量して、穿孔蓋で密封した。測定前に、蓋を自動で突き刺すことにより、およそ1.5mmピンホールが生じた。次に試料を約50mL/分の窒素流下で5K/分の加熱速度を用いて加熱した。
【0068】
「微粉化」という用語は、製粉、たたき又は粉砕のような適切な方法を用いて、固体材料の粒径を10μm未満のd50値まで減少させるプロセスを意味する。
【0069】
「研磨濾過」という用語は、微粒子を除去するために0.2μmフィルター、特にPall N66 Posidyne(登録商標)0.2μmフィルターカートリッジを用いて、溶液が濾過される濾過プロセスを意味する。
【0070】
「蒸留溶媒交換」という用語は、通常は一定の反応器液体レベル下で、1種の液体(溶媒又は貧溶媒)がもう1種の液体(溶媒又は貧溶媒)により置換される減圧下又は常圧下の熱蒸留を意味する。
【0071】
「溶媒」という用語は、生成物が少なくとも部分的に可溶性である(生成物の溶解度>1g/l)、任意の種類の液体を意味する。
【0072】
「貧溶媒」という用語は、生成物が不溶性であるか、又は最大でも難溶性である(生成物の溶解度<0.01mol/l)、任意の種類の液体を意味する。
【0073】
「貧溶媒晶析」という用語は、生成物溶液への貧溶媒の添加により、過飽和とその結果としての晶析が達成されるプロセスを意味する。
【0074】
「周囲条件」という用語は、標準的実験室において経験される条件、例えば、大気圧、空気、18℃と28℃の間の周囲温度、30%rHと80%rHの間の湿度を意味する。
【0075】
「吸湿性」という用語は、水分を吸着する固体材料の能力を記述する。所定のAPIの吸湿性は、相対湿度が0%rHから90%rHに上昇するときの質量の増加により特性決定される[European Pharmacopoeia - 6th Edition (2008), Chapter 5.11]:
○ 非吸湿性:重量増加Δm<0.2%;
○ わずかに吸湿性:重量増加0.2%≦Δm<2.0%;
○ 吸湿性:重量増加2.0%≦Δm<15.0%;
○ 非常に吸湿性:重量増加Δm≧15.0%;
○ 潮解性:液体を形成するために充分な水が吸着される。
【0076】
IUPACλ慣習法(W.H. Powell, Pure & Appl. Chem. (1984) 56(6): 769-778)は、分子中のヘテロ原子の非標準的原子価状態を示すための一般法を提供する。ヘテロ原子の結合数「n」は、隣接原子への原子価結合の総数と、もしあれば結合した水素原子の数との合計である。ヘテロ原子の結合数は、以下の表に与えられる値を有するとき標準的である:
n=4: C、Si、Ge、Sn、Pb;
n=3: B、N、P、As、Sb、Bi;
n=2: O、S、Se、Te、Po;
n=1: F、Cl、Br、I、At。
(中性)ヘテロ原子の非標準的結合数は、記号「λ
n」(ここで、「n」は、結合数である)により示される。非標準的結合数のヘテロ原子について、分子内の位置を示す数であるロカントが使用されるならば、λ
n記号はこのロカントの直後に引用される。
【0077】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−、及び(1,1−ジオキソ−チオモルホリン−4−イル)−という用語は、以下のとおりこの構造の硫黄環原子が2個のオキソ基で置換されている、チオモルホリニルラジカルを示すために、本明細書において互換的に使用される:
【0078】
【化2】
【0079】
発明の詳細な説明
詳細には、本発明は、式(I):
【化3】
で示される化合物、又はこれらの溶媒和物;又は1種以上の包接複合体形成物質とのこれらの包接複合体;又は1種以上の包接複合体形成物質とのこれらの包接複合体の溶媒和物の、新規な固体形態、特に結晶性形態又は無定形形態、最も具体的には結晶性形態に関する。
【0080】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン[CAS番号1159600-41-5]とは、式(I)の化合物のことをいい、逆の場合も同じである。
【0081】
特定の実施態様において、本発明は、10.3°〜13.3°の2θ回折角範囲に少なくとも1個のXRPDピークを含むXRPDパターンを特徴とする、上記の式(I)の化合物の固体形態に関する。
【0082】
特定の実施態様において、本発明は、10.3°〜13.3°の2θ回折角範囲に少なくとも1個のXRPDピークを含むXRPDパターンを特徴とする、上記の式(I)の化合物の固体形態;又はこれらの溶媒和物;又は1種以上の包接複合体形成物質とのこれらの包接複合体;又は1種以上の包接複合体形成物質とのこれらの包接複合体の溶媒和物に関する。
【0083】
本発明の特定の実施態様において、上記の式(I)の化合物の固体形態は、結晶性形態である。
【0084】
本発明の特定の実施態様において、上記の式(I)の化合物の固体形態は、少なくとも90%(w/w)、特に少なくとも95%(w/w)、最も具体的には少なくとも99%(w/w)の純度で特定の固体形態中に存在する。
【0085】
無水多形形態A(フォームA)における(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンは、WO 2009/071476に記載されている。
【0086】
フォームAは、融点がおよそ145℃の準安定性多形であることが見い出された(外挿ピークDSC)。その準安定性に起因して、フォームAは、医薬品開発に最適ではない。
【0087】
フォームAは、3.3°、10.1°、14.2°、14.4°、15.7°、16.1°、17.2°、17.3°、19.5°、19.8°、20.2°、20.8°、22.5°、24.8°、25.0°、25.9°、27.7°の2θ回折角でのXRPDピークを特徴とする;特に14.4°、20.2°、22.5°、25.9°の2θ回折角で観測されるXRPDピークを特徴とする。
【0088】
フォームAは、
図1のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0089】
フォームAは、表2に表示されるピーク位置でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0090】
フォームAは、
図8のFTIRスペクトルを特徴とする。
【0091】
フォームAは、
図14のラマンスペクトルを特徴とする。
【0092】
フォームAは、約141℃〜145℃の範囲に開始温度(DSC)を持つ融点を特徴とする。
【0093】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンは、調製の方法に応じて、他の様々な結晶性及び無定形の変異として単離できることが見い出され、そしてこれらは、X線粉末回折パターン、振動スペクトル及びその融解挙動により識別可能であり、そして前述のフォームAと比較して、API及び医薬品の開発及び投与に有用な、驚くべきであるが関連ある利点を示す。
【0094】
前述の(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンのフォームAの他に、2種の更に別の無水多形形態(フォームC及びフォームE)、1種の一水和物相(フォームB)、トリフルオロエタノール相(フォームD)、更には無定形形態を発見して特性決定を行った。
【0095】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンのフォームBは、>100℃までの加熱によりフォームAに変換する、吸湿性の一水和物である。フォームBの安定性は、湿度の存在下で、例えば、周囲条件で、フォームAと比較して実質的に増大している。
【0096】
フォームBの温度制御XRPD解析により、高温でのフォームAへの相転移が明らかである。温度範囲105〜135℃では、フォームAのみが存在する。65〜95℃の温度範囲では、ピーク位置の著しい変化を特徴とする中間状態が観測される。
【0097】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される多形形態B(フォームB)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン一水和物に関する。
【0098】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、およそ13.3°、20.6°、22.5°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0099】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、およそ10.9°、13.0°、13.3°、14.1°、14.8°、16.5°、17.0°、18.9°、20.6°、21.0°、22.5°、23.4°、24.8°、26.9°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0100】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、
図2のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0101】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、表3に表示されるピーク位置でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0102】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、
図9のFTIRスペクトルを特徴とする。
【0103】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、
図15のラマンスペクトルを特徴とする。
【0104】
本発明の特定の実施態様において、フォームBは、減量を伴う約90℃〜110℃の広い吸熱シグナルを特徴とする(TGAにより測定)。
【0105】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンのフォームCは、フォームAよりも安定であることが見い出された。実際に、フォームCは、全体で最も安定な多形であることが見い出された。フォームCは更に、フォームAよりも吸湿性が小さく、およそ151℃の融点を有する(外挿ピークDSC)。フォームCの人工胃液(SGF)への溶解度は、フォームBと比較して大幅に向上している。水の存在下では、フォームCは懸濁状態でフォームBに変換するが、一方100%rHで周囲温度で長期、例えば、30日間の保存では、この相変化は誘導されない。
【0106】
多形のフォームAとフォームCの温度制御XRPD解析により、高温での固体形態の変化は明らかでない。
【0107】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される無水多形形態C(フォームC)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンに関する。
【0108】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、およそ17.4°、23.4°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0109】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、およそ11.7°、17.4°、23.4°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0110】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、およそ10.5°、11.7°、14.2°、16.3°、16.7°、17.4°、17.9°、19.3°、23.4°、24.7°、25.1°、25.9°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0111】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、
図3のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0112】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、表4に表示されるピーク位置でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0113】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、
図10のFTIRスペクトルを特徴とする。
【0114】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、
図16のラマンスペクトルを特徴とする。
【0115】
本発明の特定の実施態様において、フォームCは、約146℃〜150℃の範囲に開始点(DSC)を持つ融点を特徴とする。
【0116】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンのフォームDは、トリフルオロエタノール/メタノール混合物からの結晶化により生成させることができるトリフルオロエタノール一溶媒和物である。フォームDには、トリフルオロエタノールが製造プロセスに使用される場合には容易に入手できるという、フォームAに勝る有用性がある。
【0117】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される多形形態D(フォームD)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン・トリフルオロエタノール一溶媒和物に関する。フォームDは、およそ97.9℃の融点を有する(外挿ピークDSC)。
【0118】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、およそ6.1°、16.8°、22.6°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0119】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、およそ6.1°、11.0°、16.8°、22.6°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0120】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、およそ6.1°、8.1°、11.0°、13.5°、15.4°、16.8°、18.4°、19.2°、19.5°、21.1°、21.4°、22.6°、24.7°、28.1°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0121】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、
図4のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0122】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、表5に表示されるピーク位置でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0123】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、
図11のFTIRスペクトルを特徴とする。
【0124】
本発明の特定の実施態様において、フォームDは、約96℃〜100℃の範囲に開始点(DSC)を持つ融点を特徴とする。
【0125】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンのフォームEは、周囲条件で限定的な安定性のみを示す無水物である。フォームEは、<5%rHでの保存を介してフォームBの脱水により得られる。フォームEからフォームBへの急速再変換は、>5%rHへの曝露により観測される。
【0126】
同様に、湿度制御XRPD解析を用いた一水和物形態Bの乾燥によっても、フォームEが0%rHで観測される。
【0127】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される無水多形形態E(フォームE)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンに関する。
【0128】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、およそ16.5°、20.8°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0129】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、およそ13.1°、16.5°、20.8°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0130】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、およそ5.5°、13.1°、13.3°、14.2°、16.5°、19.1°、20.8°、22.3°、23.9°、25.1°、25.5°、26.4°、29.0°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0131】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、表6に表示されるピーク位置でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0132】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、
図5のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0133】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、
図17のラマンスペクトルを特徴とする。
【0134】
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの無定形形態のガラス転移温度は、およそ66℃である(2回目昇温の中点)。無定形材料は、わずかに吸湿性であるが、100%rHで周囲温度での保存では相転移は観測されなかった。
【0135】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される無定形(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン(アモルファスフォーム)に関する。
【0136】
本発明の特定の実施態様において、アモルファスフォームは、XRPD回折パターンにおける少なくとも1個の無定形ハローと鋭いBragg回折ピークの欠如とを特徴とする。
【0137】
本発明の特定の実施態様において、アモルファスフォームは、
図6のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0138】
本発明の特定の実施態様において、アモルファスフォームは、
図12のFTIRスペクトルを特徴とする。
【0139】
本発明の特定の実施態様において、アモルファスフォームは、
図18のラマンスペクトルを特徴とする。
【0140】
本発明の特定の実施態様において、アモルファスフォームは、60℃〜70℃、特に65℃〜67℃、最も具体的には66℃のガラス転移温度Tgを特徴とする。
【0141】
更に、有用な特性を持つ(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンとγ−シクロデキストリンとの1:1包接複合体(γ−CD包接複合体)が本発明において見い出された。このγ−CD包接複合体は、高度に結晶性である(XRPDにより確認)。乾燥γ−CD包接複合体は、およそ7.3%の残留含水量を含むことが見い出された(TGAにより確認)。乾燥γ−CD包接複合体及び湿潤粉末試料は、異なるXRPDパターンを示すことが見い出された。γ−CD複合体の結晶構造は、試料の含水量に依存すると考えられる。水は、前記包接複合体の結晶構造を安定化すると考えられ、そして水の実質的な消失は、結晶構造の変化につながる恐れがある。残留水を含むγ−CD包接複合体は、乾燥γ−CD包接複合体と比較して水への溶解度が向上していることが見い出された[T. Toropainen et al., Pharm. Res. (2007) 24:1058-1066]。γ−CD包接複合体中のAPIとγ−CDとの間のモル比は、1:1であることが見い出された(UPLCにより確認)。本明細書に記載される式(I)の化合物とγ−CDとの包接複合体については510.4M
−1の複合体結合定数が算出された。この結合定数及びインビトロ溶解プロフィールは、他の固体形態と比較して、溶解速度の上昇、ひいては生物学的利用能の向上を示している(
図21及び22)。
【0142】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンとγ−シクロデキストリンとの1:1包接複合体(γ−CD包接複合体)に関する。
【0143】
本発明の1つの特定の実施態様は、本明細書に記載される(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンとγ−シクロデキストリンとの1:1包接複合体(γ−CD包接複合体)であって、1%〜20%(w/w)、特に5%〜15%(w/w)、最も具体的には8%〜12%(w/w)の残留含水量を含む複合体に関する。
【0144】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、7.4°、14.9°、16.7°、21.8°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0145】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、7.4°、12.1°、14.9°、16.7°、21.8°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0146】
本発明の特定の実施態様において、フォームEは、3.8°、5.2°、7.4°、9.2°、10.6°、11.5°、11.8°、12.1°、14.2°、14.9°、15.8°、16.7°、19.2°、20.3°、21.2°、21.8°、22.5°、23.7°、26.8°の2θ回折角でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0147】
本発明の特定の実施態様において、γ−CD包接複合体は、
図7のXRPD回折パターンを特徴とする。
【0148】
本発明の特定の実施態様において、γ−CD包接複合体は、表7に表示されるピーク位置でのXRPDピークを含むXRPD回折パターンを特徴とする。
【0149】
本発明の特定の実施態様において、γ−CD包接複合体は、
図13のFTIRスペクトルを特徴とする。
【0150】
本発明の特定の実施態様において、γ−CD包接複合体は、
図19のラマンスペクトルを特徴とする。
【0151】
表1には、(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンのフォームA、フォームB、フォームC及びフォームDの関連する結晶構造データをリストする。フォームA、フォームB、フォームC及びフォームDの結晶構造は精緻化した。フォームEは、乾燥条件でのみ結晶化して>5%の相対湿度で再水和するため、単結晶試料は利用できない。
【0152】
格子定数、単位格子体積及び算出密度は、周囲温度データに基づく。この目的で、単結晶構造解析から得られる格子定数は、ソフトウェアTOPAS 4.0、Bruker AXSを用いる実験的周囲条件のXRPD対照パターンにより精緻化した。
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
本発明は更に、上記の式(I)の化合物の固体形態の調製のための蒸留溶媒交換プロセスであって、
a) 溶媒への遊離体固体形態の溶解;
b) 貧溶媒による蒸留液の置換により反応器の液体レベルを保持しながらの溶媒の蒸留;
c) 懸濁液からの所望の固体形態の物理分離
を含むプロセスに関する。
【0157】
特定の実施態様において、工程c)におけるこのような蒸留溶媒交換により得られる所望の固体形態は、上記と同義の無水多形形態C(フォームC)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンである。
【0158】
特定の実施態様において、工程a)の遊離体固体形態は、フォームA又はフォームBから、最も具体的にはフォームBから選択される。
【0159】
特定の実施態様において、工程a)に使用される溶媒は、THF、DMF若しくはアセトン又はこれらの混合物から選択され、特にTHFから選択される。
【0160】
特定の実施態様において、工程b)に使用される貧溶媒は、エタノール、イソプロパノール、若しくはn−ヘプタン又はこれらの混合物から選択され、特にエタノールから選択される。
【0161】
特定の実施態様において、工程b)は、高温で、特に50〜80℃で実施される。
【0162】
特定の実施態様において、工程b)は、減圧で、特に100〜300mbarで実施される。
【0163】
特定の実施態様において、場合により工程b)に先だって又は同時に、粉末又は懸濁液としての所望の固体形態を種晶として加え、最も具体的には粉末又は懸濁液としての1〜10%(w/w)(最終収量に対して)の所望の固体形態を種晶として加える。
【0164】
特定の実施態様において、工程c)の物理分離は、濾過により実施される。
【0165】
本発明は更に、上記と同義の式(I)の化合物の固体形態の調製のための高剪断プロセスであって、
d) 貧溶媒を含む高剪断ミキサーへの溶媒中の遊離体固体形態の溶液の注入;
e) 高剪断ミキサーのローター・ステーターシステムの撹拌;
f) 懸濁液からの所望の固体形態の物理分離
を含むプロセスに関する。
【0166】
特定の実施態様において、工程f)においてこの高剪断プロセスにより得られる所望の固体形態は、上記と同義の無水多形形態C(フォームC)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンである。
【0167】
特定の実施態様において、工程d)の遊離体固体形態は、フォームA又はフォームBから選択され、特にフォームBから選択される。
【0168】
特定の実施態様において、工程d)の遊離体固体形態の溶液は、1.6g/分の一定流量で注入される。
【0169】
特定の実施態様において、工程d)に使用される溶媒は、THF、DMF若しくはアセトン又はこれらの混合物から選択され、特にTHFから選択される。
【0170】
特定の実施態様において、工程d)に使用される貧溶媒は、エタノール、イソ−プロパノール、若しくはn−ヘプタン又はこれらの混合物から選択され、特にn−ヘプタンから選択される。
【0171】
特定の実施態様において、貧溶媒は、一定速度で、特に20l/時の一定速度で工程d)及びe)において高剪断ミキサー中を循環させる。
【0172】
特定の実施態様において、工程d)の貧溶媒は、場合により所望の固体形態の種晶を、特に1〜10%(w/w)(最終収量に対して)の所望の固体形態の種晶を、最も具体的には5〜10%(w/w)(最終収量に対して)の所望の固体形態の種晶を含む。
【0173】
特定の実施態様において、工程e)のローター・ステーターシステムは、15000RPM〜24000RPMの回転速度で回転する。
【0174】
特定の実施態様において、工程d)及びe)は、低温で、特に−20℃〜0℃で、最も具体的には−5℃で実施される。
【0175】
特定の実施態様において、工程f)の物理分離は、濾過により実施される。
【0176】
別の実施態様は、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物又は医薬品、更には、このような組成物及び医薬品を調製するための本発明の化合物の使用方法を提供する。
【0177】
組成物は、医療業務基準と一致するやり方で製剤化され、用量に分けられ、そして投与される。これに関連して考慮される因子は、処置される特定の疾患、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、及び医師には既知の他の因子を包含する。
【0178】
本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態は、経口、局所(バッカル及び舌下を包含する)、直腸内、膣内、経皮、非経口、皮下、腹腔内、肺内、皮内、髄腔内及び硬膜外、並びに鼻内投与、更に局所処置が必要ならば病巣内投与を包含する任意の適切な手段により投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を包含する。
【0179】
本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態は、任意の便利な投与剤形、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐剤、ゲル剤、乳剤、パッチ剤などにして投与することができる。このような組成物は、製剤において従来からの成分、例えば、希釈剤、担体、pH調節剤、保存料、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味料、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、マスキング剤、酸化防止剤、及び更に別の活性物質を含むことができる。これらはまた、更に他の治療上有用な物質を含むこともできる。
【0180】
典型的な製剤は、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態及び薬学的に許容しうる賦形剤を混合することにより調製する。適切な賦形剤は、当業者には周知であり、例えば、Ansel H.C. et al., Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (2004) Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia; Gennaro A.R. et al., Remington: The Science and Practice of Pharmacy (2000) Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia; and Rowe R.C, Handbook of Pharmaceutical Excipients (2005) Pharmaceutical Press, Chicagoに詳細に記載されている。この製剤はまた、1種以上の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、酸化防止剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色料、甘味料、着香剤、香味料、希釈剤、及び薬剤(即ち、本発明の化合物又はその医薬組成物)の美しい体裁を与えるための又は医薬製品(即ち、医薬品)の製造において助けになる他の既知の添加剤を包含してもよい。
【0181】
本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態を投与できる用量は、広い範囲で変化させることができ、当然ながら各特定の症例における個々の要求に合わせられる。一般に、経口投与の場合には、約0.1〜1000mg/人の本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態の1日用量が適切であろうが、必要なときは上記の上限を超えても良い。本発明の特定の実施態様は、0.1〜1000mg(経口)の、特に10〜500mg(経口)の、最も具体的には75〜350mg(経口)の1日用量に関する。
【0182】
適切な経口投与剤形の一例は、約100mg〜500mgの本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態を、約90〜30mg無水乳糖、約5〜40mgクロスカルメロースナトリウム、約5〜30mgポリビニルピロリドン(PVP)K30、及び約1〜10mgステアリン酸マグネシウムと組合せて含む錠剤である。粉末の成分を最初に一緒に混合して、次にPVPの溶液と混合する。生じる組成物を乾燥し、造粒し、ステアリン酸マグネシウムと混合して、従来の装置を用いて圧縮して錠剤の剤形にすることができる。
【0183】
エアゾール製剤の一例は、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態、例えば、10〜100mgを適切な緩衝液、例えば、リン酸緩衝液に溶解し、必要ならば、等張化剤、例えば、塩化ナトリウムのような塩を加えることにより調製できる。この溶液は、例えば、0.2μmフィルターを用いて濾過することにより、不純物及び混入物質を除去できる。
【0184】
本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態は、有用な薬理学的特性を持ち、そしてGABA A α5受容体のリガンドであることが見い出された。よって本発明の式(I)の化合物の固体形態は、単独で又は他の薬剤との組合せで、α5サブユニットを含有するGABA A受容体のリガンドにより調節される疾患の治療又は予防用に使用することができる。これらの疾患は、特に限定されないが、急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、注意障害、卒中後発症CNS症状、及び認識増強の必要性を包含する。
【0185】
よって本発明はまた、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0186】
本発明は同様に、治療活性物質として使用するための、本発明に記載される式(I)の化合物の固体形態を包含する。
【0187】
本発明は同様に、GABA A α5受容体に関連する疾患の治療又は予防のための治療活性物質として使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態を包含する。
【0188】
本発明は同様に、急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、及び注意障害の治療又は予防のための治療活性物質として使用するための、卒中からの回復治療のための、あるいは認識増強剤として使用するための、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態を包含する。
【0189】
別の実施態様において、本発明は、GABA A α受容体に関連する疾患の治療又は予防方法であって、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態をヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0190】
別の実施態様において、本発明は、急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、及び注意障害の治療又は予防のための、卒中からの回復治療のための、あるいは認識増強のための方法であって、式(I)の化合物、特に本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態をヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0191】
本発明はまた、GABA A α受容体に関連する疾患の治療又は予防のための、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態の使用を包含する。
【0192】
本発明はまた、急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、及び注意障害の治療又は予防のための、あるいは認識増強のための、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態の使用を包含する。
【0193】
本発明はまた、GABA A α5受容体に関連する疾患の治療又は予防用の、特に急性及び/又は慢性神経障害、認識障害、アルツハイマー病、記憶障害、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、双極性障害、自閉症、ダウン症候群、神経線維腫症I型、睡眠障害、概日リズム障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する認知症、精神病、物質誘発精神病、不安障害、全般性不安障害、パニック障害、妄想性障害、強迫性障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、運動障害、パーキンソン病、むずむず脚症候群、認識欠損障害、多発梗塞性認知症、気分障害、鬱病、神経精神症状、精神病、注意欠陥多動障害、神経因性疼痛、卒中、多発性硬化症(MS)、急性髄膜炎、胎児性アルコール症候群、及び注意障害の治療又は予防用の医薬品の調製のための、卒中からの回復治療のための、又は認識増強剤の調製のための、本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態の使用に関する。このような医薬品は、上記の化合物を含む。
【0194】
更に具体的には、本発明は、皮質及び海馬における過剰なGABA作動性阻害をもたらす神経発達障害に起因するCNS症状の処置、予防及び/又は進行の遅延のための本明細書に記載される式(I)の化合物の固体形態の使用に関し、そしてここで、CNS症状は、ダウン症候群における、自閉症における、神経線維腫症I型における、又は卒中後の認識欠損から選択される。
【0195】
認識障害、アルツハイマー病、統合失調症、統合失調症に伴う陽性、陰性及び/又は認知症状、ダウン症候群、及び神経線維腫症I型の治療又は予防は、本発明の特定の実施態様である。
【0196】
本発明の特定の実施態様は、アルツハイマー病の治療又は予防を包含する。
【0197】
本発明の特定の実施態様は、ダウン症候群の治療又は予防を包含する。
【0198】
本発明の特定の実施態様は、神経線維腫症I型の治療又は予防を包含する。
【0199】
本発明の特定の実施態様は、卒中後の回復を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【
図5】0%rHで又は70℃で乾燥後に分析された、フォームEのXRPDパターン。
【
図12】アモルファスフォームのFT−IRスペクトル。
【
図13】γ−CD包接複合体のFT−IRスペクトル。
【
図18】アモルファスフォームのラマンスペクトル。
【
図20】(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン及びγ−CDの相溶解度図。API溶解度は[μg/mL]で示す。飽和溶液と平衡状態にある固相は選択点(矢印)でラマン及びXRPD測定により検証して、最初に使用した多形Aから多形B(一水和物)の形成、又はγ−CD包接複合体への遊離APIの変換のような、固体状態変換可能性を同定及び確認した。
【
図21】SGF中の平均インビトロ溶解プロフィール。SGF中室温でのフォームA(○)、フォームB(▼)、フォームC(■)及びγ−CD包接複合体(△)の微粉の平均インビトロ溶解プロフィール。測定は三重測定(n=3)で実施した。
【
図22】FeSSIF中の平均インビトロ溶解プロフィール。FeSSIF中室温でのフォームA(○)、フォームB(▼)、フォームC(■)及びγ−CD包接複合体(△)の微粉の平均インビトロ溶解プロフィール。測定は三重測定(n=3)で実施した。
【0201】
実施例
以下の実施例1〜28は、本発明の説明のために提供される。これらは、本発明の範囲を限定するものでなく、単にそれを代表するものと考えなければならない。
【0202】
実施例1
無水多形形態A(フォームA)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの調製
フォームAは、WO 2009/071476に記載されるとおり調製することができる。
工程a: (E)−及び/又は(Z)−4−フルオロ−ベンズアルデヒドオキシム
エタノール(4.3mL)及び水(13mL)中の4−フルオロベンズアルデヒド(24.8g、200mmol)(6.75g、54mmol)及び塩酸ヒドロキシルアミン(4.16g、60mmol)の懸濁液に、氷(25g)を加えた。次に水(6.5mL)中の水酸化ナトリウム(5.5g、138mmol)の溶液を10分以内に滴下により加える(温度は−8℃から+7℃に上昇)と、固体の大部分は溶解した。室温で30分撹拌後、白色の固体が沈殿したが、次に得られた混合物を水で希釈して、HCl(4N)で酸性にした。次にこの白色の沈殿物を濾別し、水で洗浄して、高真空下で乾燥することにより、標題化合物(23.3g、84%)を白色の固体として得た。MS:m/e=139.1[M]
+。
【0203】
工程b: (E)−及び/又は(Z)−N−ヒドロキシ−4−フルオロ−ベンゼンカルボキシイミドイル・クロリド
DMF(50mL)中の(E)−及び/又は(Z)−4−フルオロ−ベンズアルデヒドオキシム(23.3g、167mmol)(6.9g、50mmol)の溶液に、N−クロロスクシンイミド(6.6g、50mmol)を、温度を35℃未満に保持しながら1時間で何回かに分けて加えた。この反応混合物を室温で1時間撹拌した。次にこの混合物を氷水に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出した。次に合わせた有機層を水及び食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を留去することにより、標題化合物(25.9g、89%)をオフホワイト色の固体として得た。MS:m/e=173.0[M]
+。
【0204】
工程c: 3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−カルボン酸エチルエステル
ジエチルエーテル(151mL)中の(E)−及び/又は(Z)−N−ヒドロキシ−4−フルオロ−ベンゼンカルボキシイミドイル・クロリド(15.4g、89mmol)(11.1g、64mmol)の溶液に、2−ブチン酸エチル(7.2g、7.5mL、64mmol)を0℃で加え、続いてトリエチルアミン(7.8g、10.7mL、77mmol)を滴下により加えて、得られた混合物が室温まで温まるのを一晩待った。次にこの混合物を氷水に注ぎ入れ、ジエチルエーテルで抽出した。次に合わせた有機層を水及び食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を留去した。クロマトグラフィー(SiO
2、ヘプタン:酢酸エチル=100:0〜1:1)により精製して、標題化合物(9.8g、44%)をオフホワイト色の固体として得た。MS:m/e=250.1[M+H]
+。
【0205】
工程d: [3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノール
THF(320mL)中の3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−カルボン酸エチルエステル(3.0g、12mmol)(6.18g、25mmol)の溶液に、水素化アルミニウムリチウム(528mg、14mmol)を0℃で何回かに分けて加えて、この反応混合物を室温で3時間撹拌した。次にこの混合物を0℃に冷却して、水(518μL)を加え、続いて水酸化ナトリウム(15%溶液、518μL)を加え、次に再び水(1.5mL)を加えて、次にこの混合物を室温で一晩撹拌した。次に沈殿物を濾別して、THFで洗浄した。次に合わせた洗浄液及び濾液から溶媒を留去した。クロマトグラフィー(SiO
2、ヘプタン:酢酸エチル=100:0〜1:1)により精製して、標題化合物(1.8g、71%)を白色の固体として得た。MS:m/e=208.1[M+H]
+。
【0206】
工程e: 6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸メチルエステル
THF(27mL)中の水素化ナトリウム(鉱油中55%分散液、852mg、20mmol)の懸濁液に、THF(54mL)中の[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノール(103mg、0.55mmol)(3.68g、18mmol)の溶液を0℃で加え、この反応混合物を室温まで30分で温めた。次にTHF(1.5mL)中の6−クロロニコチン酸メチル(3.35g、20mmol)の溶液を0℃で滴下により加え、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。次にこの反応混合物を塩化ナトリウム水溶液(飽和)に注ぎ入れ、この混合物を酢酸エチルで抽出した。次に合わせた有機層を水及び食塩水で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して溶媒を留去した。クロマトグラフィー(SiO
2、ヘプタン:酢酸エチル=7:3)により精製して、標題化合物(81mg、47%)を明黄色の固体として得た。MS:m/e=343.3[M+H]
+。
【0207】
工程f: 6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸
THF(5mL)中の6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸メチルエステル(1.4g、4.2mmol)(538mg、1.1mmol)の溶液に、水(5mL)中の水酸化リチウム一水和物(94mg、2.2mmol)の溶液を加え、メタノール(1mL)を加えて、生じた混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物をHCl(25%、3滴)でpH4まで酸性にして、メタノール(2滴)を加えた。ゴム状物が生じ始めたので、この混合物を0℃で1.5時間冷却し、次に水層をデカントして移した。ジエチルエーテル及びヘキサンで粉砕することにより、標題化合物(1.1g、78%)を白色の固体として得た。MS:m/e=327.3[M−H]
−。
【0208】
工程g: 無水多形形態A(フォームA)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン
DMF(300μL)中の6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸(99mg、0.33mmol)(69mg、0.2mmol)の溶液に、テトラフルオロホウ酸2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(71mg、0.22mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(171μL、1.0mmol)及びチオモルホリン−S,S−ジオキシド(17.3μL、0.22mmol)を加えた。生じた反応混合物を室温で1時間撹拌した。濃縮及びクロマトグラフィー(SiO
2、ヘプタン:酢酸エチル=100:0〜1:1)による精製後に、標題化合物(73mg、55%)を白色の固体として得た。MS:m/e=446.1[M+H]
+。
【0209】
実施例2
フォームAの調製
2−ペンタノール又はTHF 0.7mL中の(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン0.1gの溶液を液体窒素で急冷し、遠心分離により25℃で単離して、20℃及び<5mbarの減圧で2日間乾燥した。
【0210】
実施例3
フォームAの調製
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン152.4mgを2−ペンタノール2.14mLに60℃で溶解することにより、無色の溶液を得た。溶媒をゆっくり蒸発乾固(穴あきカバーホイル、周囲条件で5日間)することにより、葉片状の結晶を得た。
【0211】
実施例4
フォームAの調製
6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸(実施例1、工程f)700.0g、THF 10L及び1,1−カルボジイミダゾール469.0gを周囲温度で1時間撹拌した。チオモルホリン−S,S−ジオキシド407.0g、4−ジメチルアミノピリジン12.0g及びトリエチルアミンp.a.340mLを連続して加え、撹拌下で2晩還流した。チオモルホリン−S,S−ジオキシド更に82.0g及びトリエチルアミンp.a.68.0mLを加えて、撹拌下で一晩(o.n.)更に還流した。この実験はおよそ30℃まで冷却した。脱塩水10L及びエタノール16Lを連続して加えた。新たに出現した溶液を20℃に冷却し、フォームA 12gを種晶として加え、周囲温度で30分間撹拌した。この懸濁液を最高35℃で16Lまで減少させた。THFを置換するために、エタノール20Lを加えた。この懸濁液を周囲温度で一晩撹拌して、次に濾過した。濾滓を1:1脱塩水/エタノール混合物7.4Lで濯いで、50℃で一晩乾燥することにより、フォームA 820g(86%)を得た。
【0212】
実施例5
フォームAの調製
フォームB 16.32gをTHF 257gに50℃で溶解した。この溶液から水を除去するために、THF 172gを減圧下80℃で留去した。次にこの水を含まない生成物の溶液を室温に冷却した。
【0213】
ジャケット温度を−5℃で一定に保持しながら、ヘプタン238gは、蠕動ポンプを用いて高剪断ミキサー装置中を20l/時の速度で循環させた。5分後、高剪断ミキサーを15000RPM〜24000RPMの回転速度で始動し、上からの生成物溶液を1.6g/分の流量で注入器を介して直接ローター・ステーターシステムにポンプで注入した。添加が終了後、生じた結晶を濾過して、40℃で30mbarで15時間乾燥することにより、フォームAを得た。
【0214】
実施例6
フォームAの調製
フォームB 100gをTHF 1200gに50℃で溶解した。THF約50%を減圧(800mbar)下70℃で留去することにより、THF中のフォームBの20%(w/w)溶液を得た。蒸留溶媒交換では、THF/水(水和の)を無水THFに対して800mbar及び70℃で溶媒レベルを一定に保持しながら交換して、含水量を0.1%(w/w)未満にした。ヘプタン888gを5℃で貧溶媒として、フォームA 1%(w/w)を種晶として加えた。続いて生成物溶液を50℃に冷却して、表面下の温かいホースを用いて30分間で5℃で存在するヘプタンに加えた。生じた結晶を濾過して、一定重量になるまで減圧下で乾燥することにより、フォームA(92%)を得た。
【0215】
実施例7
フォームAの調製
フォームB 41gをTHF 170gに50℃で溶解した。エタノール30gを加え、この溶液を30℃に冷却した。蒸留溶媒交換では、溶媒(THF/エタノール)を貧溶媒エタノールに、蒸留液をエタノール全部で340gで連続置換することにより容量を一定に保持しながら、30℃の温度及び減圧(300mbar)下で交換した。蒸留開始から20分後、フォームAの結晶2%(w/w)を種晶として加えることにより、結晶化を開始させた。続いて圧力を230mbarに下げた。蒸留開始から50分後、圧力を130mbarに下げた。蒸留開始から67分後、溶媒交換を終了した。生じた懸濁液を周囲温度で1.5時間撹拌し、続いて濾過した。得られた結晶を真空乾燥機中で40℃で一晩乾燥することにより、フォームA 36.4g(92.4%)を得た。
【0216】
実施例8
多形形態B(フォームB)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン一水和物の調製
工程a) (E)及び/又は(Z)−4−フルオロ−ベンズアルデヒドオキシム
水(50mL)中の4−フルオロ−ベンズアルデヒド(30.4g、0.24mol)の懸濁液に、0〜5℃で5分以内に水(30mL)中の塩酸ヒドロキシルアミン(17.7g、0.25mol)の溶液を加え、生じた混合物を0〜5℃で15分間撹拌した。次にこの混合物を15〜25℃で15分以内に32% NaOH(24.44mL、0.26mol)で処理して、生じた懸濁液を更に1時間撹拌し、次に酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(2×100mL)で洗浄し、続いて乾燥するまで濃縮することにより、標題のオキシム31.9g(95%)を白色の固体として得た。
【0217】
工程b) 3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−カルボン酸エチルエステル
DMF(10mL)中の4−フルオロ−ベンズアルデヒドオキシム(1.39g、10.0mmol)の懸濁液に、5分以内に15〜20℃でN−クロロスクシンイミド(1.36g、10.0mmol)を何回かに分けて加え、生じた混合物を室温で90分間撹拌した。次にこの黄色の溶液(N−ヒドロキシ−4−フルオロ−ベンゼンカルボキシイミドイル・クロリドを含有する)を2分以内に室温でDMF 5mL中の3−(1−ピロリジノ)クロトン酸エチル(1.89g、10.0mmol)の溶液で処理して、生じた溶液を室温で28時間撹拌した。この混合物を水(25mL)で希釈して、続いて酢酸エチル(4×25mL)で抽出した。合わせた有機層を1M HCl(2×25mL)及び水(2×25mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、続いて乾燥するまで濃縮(45℃/25mbar)することにより、標題エステル2.37g(95%)を純度100%(GCによる)及び97%(HPLCによる)の帯褐色の固体として得た。
【0218】
工程c) 3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−カルボン酸
エタノール95% 880g中の3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−カルボン酸エチルエステル179.5g(0.72mol)の混合物を20〜30℃で40分間撹拌し、次に固体水酸化ナトリウム78.5gで処理した。生じた混合物を20〜30℃で5時間撹拌した。エタノールを真空で45〜50℃で除去して、続いて残渣を20〜30℃で水500gで処理することにより、清澄な溶液を得た。この溶液を40分間撹拌して濾過した。この濾液に、メチルtert−ブチルエーテル235g及び水600gを加えて、生じた混合物を20分間撹拌し、次に20分間静置した。層を分離して、水層を塩酸でpH<1まで酸性にした。結晶を濾過して、水で洗浄することにより、湿った粗生成物147gを得た。この湿った粗生成物をトルエン680gに懸濁して、この混合物を75〜85℃で7時間加熱した。この混合物を20〜30℃に冷却して、この温度で1時間撹拌した。結晶を濾別して、真空で50〜55℃で一晩乾燥することにより、標題の酸137g(収率86%)を純度99.9%(HPLC)の白色〜わずかに黄色の固体として得た。
【0219】
工程d) [3−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノール
テトラヒドロフラン448gと塩化亜鉛95g(0.70mol)との懸濁液を20〜30℃で1時間撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム23.6g(0.62mol)を20〜38℃で何回かに分けて加え、続いてこの混合物を60〜65℃で3時間撹拌した。THF 220g中の3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−カルボン酸69g(0.31mol)の溶液を滴下により加えて、生じた混合物を60〜65℃で16時間撹拌した。次にこの反応は、水202g中のHCl 93gの混合物を5〜10℃で滴下により加えることによってクエンチした。この混合物をこの温度で2時間撹拌することにより、固体を完全に溶解した。35〜40℃のジャケット温度で減圧下で溶媒を除去した。この残渣に水510gを加えた。生じた懸濁液を20〜30℃に冷却して、結晶を濾別して、水で洗浄した。湿った粗生成物を水150g、HCl 31g及びMTBE 419gの混合物中で1時間撹拌した。下の水相を除去して、有機相を無水硫酸ナトリウム25kgで乾燥し、0.5時間撹拌して窒素下で濾過した。濾液を減圧下40〜45℃でほぼ完全に濃縮した。残渣を20〜25℃でMTBE 100gで処理した。この混合物を55〜60℃で2時間撹拌し、0℃に冷却し、続いてこの温度で更に2時間撹拌した。結晶を濾別して、真空で45〜50℃で一晩乾燥することにより、標題のアルコール42g(収率66%)を純度99.9%(HPLC)のオフホワイト色の固体として得た。
【0220】
工程e) 6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチノニトリル
THF(65mL)中の水素化ナトリウム(鉱油中60%、7.9g、181mmol、1.5当量)の懸濁液に、30分以内に室温でTHF(120mL)中の[3−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノール(25.0g、121mmol)及び6−クロロニコチノニトリル(16.7g、121mmol)の溶液を加え、生じた混合物を1時間撹拌した。水(185mL)中のクエン酸(18.5g、96.5mmol)の溶液を30分以内にこの反応混合物に加えた。生じたTHF/水混合物から、THFを減圧下で60℃のジャケット温度で留去して、エタノールで置換した。エタノール全部で284gを加えた。生じた懸濁液を室温で1時間撹拌した。結晶を濾別して、エタノール(60mL)と水(60mL)との混合物で洗浄し、続いて50℃/<25mbarで乾燥することにより、標題ニトリル36.5g(補正収率91%)を含有量93%(w/w)のオフホワイト色の固体として得た。
【0221】
工程f) 6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸
6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチノニトリル(58.8g、190mmol)を水(440mL)及びエタノール(600mL)に懸濁して、32%水酸化ナトリウム溶液(178mL、1.92mol)で処理した。この混合物を50〜55℃に加熱し、続いてこの温度で15時間撹拌した。このわずかに混濁した混合物を研磨濾過することにより、エーテル副産物の6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシメチル−3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾールを除去した。最初の容器及び移動ラインを水(50mL)とエタノール(50mL)との混合物で濯いだ。濾液を20〜25℃で1時間以内に25%塩酸(およそ280mL)で、pHが<2.0になるまで処理した。生じた懸濁液を室温で1時間撹拌した。結晶を濾別し、エタノール(200mL)と水(200mL)との混合物で洗浄し、続いて50℃/<25mbarで一定重量になるまで乾燥することにより、標題の酸52.0g(83%)を純度99.5%のオフホワイト色の固体として得た。
【0222】
工程g) チオモルホリン−1,1−ジオキシドHClの精製
THF 600mL、水105mL及びDMF 30mL中のチオモルホリン−1,1−ジオキシドHCl 60gの混合物を63〜66℃(わずかに還流)に加熱して、生じた清澄〜わずかに混濁した溶液をこの温度で5〜10時間撹拌した。次にこの混合物を63〜66℃で30分以内にTHF 300mLで処理した。次にこの混合物を0〜5℃に3時間以内に冷却して、生じた懸濁液をこの温度で更に1時間撹拌した。結晶を濾別して、THF(2×25mL)で洗浄して、50℃及び減圧(<20mbar)下で乾燥することにより、チオモルホリン−1,1−ジオキシドHCl 56.6g(94%)を純度100%(面積)及びTHF含量0.14%で得た。
【0223】
工程h) 多形形態B(フォームB)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン一水和物
6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ニコチン酸(23.0g、70.1mmol)及び1,1−カルボニルジイミダゾール(15.3g、94.6mol、1.35当量)をTHF(120mL)に溶解して、生じた溶液を室温で1時間撹拌した。次にこの溶液をTHF(120mL)中のチオモルホリン−1,1−ジオキシドHCl(16.9g、98.5mmol)、DMAP(400mg、3.27mmol)及びトリエチルアミン(9.78g、96.7mmol)の懸濁液に加えた。生じた混合物を還流温度まで加熱して、続いてこの温度で50時間撹拌した。この混合物を室温まで冷却して、次に1時間以内に水(300mL)で処理した。生じた懸濁液から、THFを減圧下でジャケット温度60℃で留去して、容量一定でエタノール(426g)により連続置換した。この懸濁液を室温に冷却して、2時間撹拌した。結晶を濾別し、エタノール(100mL)と水(100mL)との混合物で洗浄して、続いて55℃/<25mbarで一定重量になるまで乾燥することにより、フォームB 28.9g(92%)をHPLCにより測定された純度99.7%(面積)の無色の固体として得た。
【0224】
実施例9
フォームBの調製
フォームAを水性懸濁液中で8日間熟成した。濾過により単離して、結晶性葉片を得て、これを水で濯いで、次に周囲条件で乾燥した。
【0225】
実施例10
フォームBの調製
フォームA 155.9mgをアセトン中15%水2.2mLに60℃で溶解することにより、無色の溶液を得た。乾燥するまで溶媒をゆっくり蒸発させる(穴あきカバーホイル、周囲条件で5日間)ことにより、等軸晶を得た。
【0226】
実施例11
フォームBの調製
フォームA 509mgを15%(容量)水/アセトン7.1mLに60℃で溶解することにより、無色の溶液を得た。次に溶媒をゆっくり8日間蒸発させた(穴あきカバーホイル、周囲条件)。残渣を20℃/<5mbarで一晩乾燥(真空トレイ乾燥機)することにより、等軸晶440mg(86%)を得た。
【0227】
実施例12
フォームBの調製
フォームC 10.0gをTHF 50mL及びDMF 17mLに周囲温度で撹拌下溶解した。30分間、この溶液を徐々に50〜55℃に加熱して、この温度で15分間撹拌した。水75mLを50〜55℃で撹拌下2〜3時間で滴下により加えた。生じた懸濁液を50〜55℃で更に15分間撹拌し、後で2〜4時間で15〜20℃に徐々に冷却した。この懸濁液を15〜20℃で5時間撹拌し、濾過して水少量で洗浄した。得られた結晶を40℃で減圧(20mbar)で12時間乾燥することにより、フォームB(95%)を得た。
【0228】
実施例13
無水多形形態C(フォームC)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの調製
フォームA 4.5kgを周囲温度でTHF 40Lに溶解した。研磨濾過後、フィルターをTHF 5Lで濯いだ。合わせた溶液から、溶媒を減圧で70℃未満の温度で留去しながら、蒸留液をエタノール全部で90Lで連続置換することにより、容量を一定に保持した。この懸濁液を12時間で周囲温度まで冷却させた。エタノール25Lを加え、この懸濁液を周囲圧力で78℃に加熱し、12時間で周囲温度まで冷却させて、更に1時間撹拌した。周囲圧力での結晶化が78℃〜70℃で起こった。エタノール25Lを減圧で35〜40℃で留去して、この懸濁液を12時間で周囲温度まで冷却させた。生成物を濾過により単離して、エタノール20Lで濯いだ。結晶を真空トレイ乾燥機で乾燥(50℃/5mbarで3日間)することにより、無色の板状晶4.1kg(91%)を得た。この実験は10gスケールで再現できた。
【0229】
実施例14
フォームCの調製
フォームA 200mgを酢酸エチル0.8mL中で周囲温度で14日間撹拌した(懸濁液)。濾過及び真空トレイ乾燥機での乾燥(50℃/<5mbarで12時間)による固体の単離後、フォームCを得た。あるいは、酢酸エチルの代わりにエタノール又はトルエンを使用してもよい。
【0230】
実施例15
フォームCの調製
フォームB 41gをTHF 170gに50℃で溶解した。エタノール30gを加えて、この溶液を30℃に冷却した。蒸留溶媒交換では、溶媒(THF/エタノール)を貧溶媒のエタノールに30℃の温度及び減圧(300mbar)で交換しながら、蒸留液をエタノール全部で340gで連続置換することにより容量を一定に保持した。蒸留の開始から20分後、圧力を230mbarに下げた。蒸留の開始から30分後、先の清澄な黄色の溶液が不透明になった。2分後に不透明溶液は、濃厚懸濁液になった。蒸留の開始から50分後、圧力を130mbarに下げた。蒸留の開始から68分後、溶媒交換を完了した。生じた懸濁液は、周囲温度で2時間撹拌し、次に濾過した。得られた結晶を真空乾燥機で40℃で一晩乾燥することにより、フォームC 35.8gを得た。
【0231】
実施例16
フォームCの調製
フォームB 10g(22.4mmol)をTHF 350mLに周囲温度での撹拌下溶解し、濾過して、このフィルターをTHF 40mLで濯いだ。蒸留溶媒交換では、濾液の溶媒をエタノールに60℃の温度及び減圧(100〜300mbar)で交換しながら、蒸留液をエタノール全部で200mLで連続置換することにより容量を一定に保持した。フォームCの結晶を種晶として加えることにより、エタノール最初の20mlを添加後、結晶化が開始した。生じた懸濁液を周囲温度で1時間撹拌し、続いて濾過してエタノール50mLで濯いだ。得られた結晶を真空乾燥機で50℃で一晩乾燥することにより、フォームC 8.8g(88%)を得た。
【0232】
実施例17
フォームCの調製
フォームB 82g(177mmol)をTHF 340gに50℃で溶解した。エタノール60gを加えることにより、THF/エタノール混合物(85:15(w/w))中のフォームBの17%(w/w)溶液を調製した。この清澄な溶液を撹拌下で35℃まで冷却させた。50:50(w/w)THF/エタノール混合物7.2gに懸濁したフォームC 0.8gの10%(w/w)種晶懸濁液(最終理論収量に対して10%(w/w)フォームC)を加え、そしてこの反応混合物を周囲温度で30分間撹拌した。圧力を300mbarに下げながら、温度を50℃に上げた。蒸留溶媒交換では、蒸留液をエタノール全部で680gで連続置換することにより容量を一定に保持し、これを全部で120分間で直線的(5.6g/分)に加えた。反応圧力を、エタノール添加の20分後には230mbarに、そして全エタノール添加の50分後には130mbarに下げた。エタノール添加の115分後、温度を5℃まで1℃/分の冷却速度で徐々に下げた(冷却時間30分)。この懸濁液を5℃で30分間撹拌し、濾過して、エタノール68gで濯いだ。得られた結晶を40℃で30mbarで16時間乾燥することにより、フォームC 98.5%を得た。
【0233】
あるいは、この調製は、THFの代わりに溶媒としてアセトンで実施することができる。
あるいは、この調製は、エタノールの代わりに貧溶媒としてイソプロパノール及び/又はn−ヘプタンで実施することができる。
【0234】
実施例18
フォームCの調製
フォームB 16.32gをTHF 257gに50℃で溶解した。この溶液から水を除去するために、THF 172gを減圧下で80℃で留去した。次にこの水を含まない生成物溶液を室温に冷却した。
【0235】
ヘプタン238gに−5℃の温度で、フォームC 1.6g(最終理論収量に対して10%(w/w))を種晶として撹拌下で加えた。ジャケット温度を−5℃で一定に保持しながら、生じた懸濁液を、蠕動ポンプを用いて高剪断ミキサー装置中を20l/時の速度で循環させた。5分後、高剪断ミキサーを15000RPM〜24000RPMの回転速度で始動し、上からの生成物溶液を1.6g/分の流量で注入器を介して直接ローター・ステーターシステムにポンプで注入した。添加が終了後、生じた結晶を濾過して、40℃で30mbarで15時間乾燥することにより、d50<10μmの平均粒径のフォームC 91%を得た。
【0236】
種晶なしに実施例18を実施すると、フォームAが得られた(実施例5を参照のこと)。2%(w/w)フォームC種晶を使用すると、フォームA(支配的)及びCからの混合物が得られた。5%(w/w)フォームC種晶を用いると、フォームC(支配的)及びAからの混合物が得られた。
【0237】
実施例19
フォームCの調製
フォームB 14.12gをTHF 240gに50℃で溶解した。この溶液から水を除去するために、THF 160gを減圧下で80℃で留去した。この水を含まない溶液を15分で25℃まで冷却して、フォームC種晶0.07g(最終理論収量に対して0.5%(w/w))を加えた。30分の撹拌後、温度を135分で15℃まで下げて、ヘプタン9.0gを同時に加えた。生じた懸濁液を30分間撹拌し、次に温度を15分で35℃まで上げた。30分後に165分で温度を再び15℃まで冷却して、ヘプタン更に11gを同時に加えた。30分の撹拌後、温度を再び35℃に上げて、この懸濁液を再び30分間撹拌した。次に温度を495分間で再び15℃まで下げて、ヘプタン33gを同時に加えた。生じた最終懸濁液を更に120分間撹拌し、次に濾過し、40℃及び30mbarで16時間乾燥することにより、平均粒径d50>50μmのフォームC 94%を得た。
【0238】
実施例20
多形形態D(フォームD)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン・トリフルオロエタノール一溶媒和物の調製
フォームA 40mgを2mL HPLCガラスクリンプバイアル中でマグネティック撹拌棒でのヘッドオーバーヘッド回転により、3:1トリフルオロエタノール/メタノール(TFE/MeOH)混合物400μl中で室温で7日間平衡化した。平衡化後、固相を遠心分離により液相から分離した。溶媒をピペットにより及び濾紙のストリップにより除去した。残留物を40℃で真空トレイ乾燥機で20mbarで10時間乾燥した。
【0239】
実施例21
フォームDの調製
フォームA 2gを3:1トリフルオロエタノール/メタノール混合物20mLに溶解した。フォームDの種晶を加えて、この混合物を周囲温度で3日間閉じて保存した。残渣の柱状晶を濾過(ガラスフィルター)により単離して、真空トレイ乾燥機で乾燥した(周囲温度/20mbarで24時間)。
【0240】
実施例22
無水多形形態E(フォームE)における結晶性(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンの調製
フォームB 50mgを脱水/水和サイクルに付した。<5%rHで、湿度制御XRPDを用いてフォームEへの可逆的変換を観測した。
【0241】
実施例23
フォームEの調製
フォームB 50mgをデシケーターに入れ、ここで試料を濃硫酸の上で周囲温度で36時間乾燥した。
【0242】
実施例24
無定形(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノン(アモルファスフォーム)の調製
フォームC 0.554gを丸底フラスコ中でジクロロメタン4.0mLに溶解した。この清澄な溶液をロータリーエバポレーターを用いて急速に濃縮した(外部温度40℃、真空を段階的に14mbarまで下げた)。残渣を真空トレイ乾燥機で乾燥(50℃/<5mbarで2日間)することにより、無色の粉末0.498g(90%)を得た。
【0243】
実施例25
アモルファスフォームの調製
フォームA 150mgをガラスバイアル中でヒートガンを用いて160℃で溶融して、周囲温度まで冷却することにより、無定形材料を得た。
【0244】
実施例26
(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンとγ−シクロデキストリンとの1:1包接複合体(γ−CD包接複合体)の調製
フォームA 300mgを秤量して20mLスクリューキャップのガラスバイアルに入れた。脱イオン水6mLとγ−CDを1:2のモル比で加えた。この懸濁液を、Heidolph Reax 2ミキサー(VWR International AG, Dietikon, Switzerland)を用いてヘッドオーバーヘッド回転により室温で32日間平衡化した。固液分離は、Amicon Ultrafree-MC(登録商標)遠心分離フィルター装置(0.45μm Durapore PVDF membrane, Millipore, Bedford, MA)により実施してγ−CD包接複合体の結晶を得た。
【0245】
実施例27
相溶解度分析
相溶解度図は、2種の化合物の間の複合体形成を特性決定するために使用され、そしてシクロデキストリン濃度の関数としてAPIの溶解度を表す。(1,1−ジオキソ−1λ
6−チオモルホリン−4−イル)−{6−[3−(4−フルオロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イルメトキシ]−ピリジン−3−イル}−メタノンとγ−シクロデキストリンとの相溶解度図は、Higuchi[T. Higuchi et al., Adv. Anal. Chem. Instrum. (1965) 4:117-212]及びBrewster[M. E. Brewster et al. Adv. Drug Delivery Rev. (2007) 59:645-666]の分類によるBs型挙動を示した(
図20)。API濃度は最初は、APIとシクロデキストリン分子との複合体形成に起因して、上昇するシクロデキストリン濃度と共に上昇した。薬物溶解度の初期上昇後に、複合体の最大溶解度に達して、複合体は沈殿し始めたが、このことは溶解度の小さな包接複合体(γ−CD包接複合体)の形成を示した。プラトーの最後には、固体API全体が消費され、更にAPIを添加すると、複合体形成及び同時に起こる不溶性複合体の沈殿により、溶液中のAPIの枯渇が起こる。150mMは、水溶液中のγ−シクロデキストリンの溶解度限界を表す。
【0246】
γ−CD包接複合体の結合定数(K)は、相溶解度図の最初の直線部分から線形回帰により、以下の等式によって算出した[T. Higuchi et al., Adv. Anal. Chem. Instrum. (1965) 4:117-212]:
【0247】
【数1】
【0248】
等式(1)により算出したγ−CD包接複合体の結合定数は510.4M
−1であった。この結合定数(K)は、CDの比較的無極性の空孔に入り込むAPIの親和性の尺度である。望まれる状況とは、総溶解薬物の濃度を高めるのに充分であるが、続いてAPIが吸収される複合体の解離がなお可能であるような親和性を有することである。このγ−CD包接複合体の場合の510.4M
−1という結合定数は、良好な範囲にあり、溶解速度が上昇した経口固体投与剤形は、実現可能であろうことを示唆している。
【0249】
実施例28
インビトロ溶解結果
本研究で実行したインビトロ溶解試験は、実験あたり溶解媒体100mLの小型化システムで実施した。従来のUSP装置の1000mL容器と比較すると、ここで使用した実験の設定は縮小及び簡略化されている(パドルの代わりにマグネティック撹拌、37℃の代わりに室温)。溶解実験は、非シンク条件下で実行した(薬物濃度>溶解度値の10%)。人工胃液(SGF)は、0.1N HCl中の2g/L NaCl及び1g/L Triton(登録商標)X-100で調製した。得られたSGFの測定pHは1.2であった。人工食後状態腸液(FeSSIF)はGalia E.ら(Pharm. Res. (1996) 13:S-262)に既報のとおり調製したが、15mMタウロコール酸ナトリウム、3.75mMレシチンを含有し、pHは5.0であった。
【0250】
固体投与剤形からの薬物化合物の経口吸収は、溶解速度及び溶解度に依存している。本研究では、γ−CD包接複合体のインビトロ溶解を多形のフォームA、フォームB及びフォームCの微粉と比較した。
図21は、人工胃液(SGF)中で測定した溶解プロフィールを提示し、そして
図22は、人工食後状態腸液(FeSSIF)中の溶解プロフィールを示す。両方の溶解媒体中で、γ−CD包接複合体は、多形のフォームA、フォームB及びフォームCの微粉と比較して、全く異なる挙動を示す。γ−CD包接複合体は、SGF及びFeSSIF中でずっと高い初期濃度を達成したが、これは、最初の60分で多形Cの値と同等なレベルまで急速に下がった。多形の微粉の場合には、特定の多形の飽和溶解度は、比較的迅速に達成(≦30分)され、溶解薬物含量は実験の最後(180分)まで不変のままであった。様々な時点で取られた溶解試験の試料において、pH値の変化は観測されなかった。溶解速度及び達成される最大薬物濃度に関して様々な固体形態のランキングは、両方の媒体中で同じであった。SGF及びFeSSIF中の溶解プロフィールの相違は、この2種の媒体の異なる組成により説明することができるが、それは、溶解が一般に、pH、界面活性剤、緩衝性能、イオン強度などのような種々の要因に依存するからである。過飽和溶液を形成するγ−CD包接複合体の能力は、フォームA、フォームB及びフォームCの純粋な結晶相と比較して、インビボ吸収及び経口生物学的利用能を向上させる有望な機会を提供する。
【0251】
γ−CD包接複合体により促進される過飽和を維持するために、最終投与剤形へのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などのような特定の沈殿阻害剤の添加は有用であろう。過飽和状態の延長は、インビボ吸収及び生物学的利用能に劇的に影響を及ぼし、そしてこれらを改善することができる。