(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンは、十分な風量を確保するために、高速で回転する必要がある。このため、この高速回転動作に起因して、ファンに異常振動が生じないようにする必要がある。そこで、通常、ファンの重量バランスが調整される。これにより、ファンの回転時の異常振動は、抑制される。これにより、ファンに作用する負荷を小さくでき、その結果、ファンの寿命を、より長くできる。
【0005】
ところで、熱処理炉においては、予め高温に加熱されたファンの近傍に常温の被処理品を配置し、この状態から、被処理品をヒータで加熱することがある。この場合、被処理品は、ヒータによって加熱されるまでの間、低温である。このため、ファンは、被処理品の周囲からの冷気を受ける。このため、ファンの表面の温度は、冷気によって急激に低下する。一方、ファンの内部の温度は、急激には低下しない。その結果、ファンにおける温度勾配、特に羽根の根元とボスとの間の温度勾配が大きくなってしまう。これにより、ファンの羽根には、大きな熱応力が生じる。被処理品の加熱処理が繰り返し行われると、ファンの羽根には、大きな熱応力が繰り返し作用することとなり、ファンにクラックなどの異常が生じてしまう。即ち、ファンが早期に寿命を迎えてしまう。
【0006】
特許文献1に記載の構成では、羽根固定部に、中空状の円筒部が形成されている。これにより、円筒部のうち羽根部の根元部に連続する部分の熱容量は、根元部の熱容量に近い値となる。これにより、たとえば、高温状態の撹拌ファンに、熱処理が施される被処理品からの冷気が接触した場合でも、円筒部の温度と、羽根部の根元部の温度との差を、より小さくできる。即ち、円筒部と羽根部の根元部との間の温度勾配を、より小さくできる。よって、羽根の根元部に生じる熱応力を、小さくでき、その結果、撹拌ファンの寿命をより長くできる。
【0007】
一方で、撹拌ファンの寿命をより長くすることが要請されている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、熱処理装置用の撹拌ファンにおいて、寿命をより長くできるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、鋭意研究の結果、撹拌ファンの回転駆動時における、撹拌ファンの周囲での気体の流れに注目するに至った。具体的には、特許文献1に記載の撹拌ファンの回転駆動時には、気体は、撹拌ファンの中心から撹拌ファンの径方向外方に向かって流れる。しかしながら、円筒部が行き止まり形状に形成されている結果、円筒部内での気体の流れが生じず、円筒部内の気体は当該円筒部内に留まる。よって、円筒部では、対流による熱交換が促進されない。
【0010】
一方、撹拌ファンの外表面部分には、撹拌ファンの回転駆動によって気流が当てられるため、対流による熱交換が積極的に促進される。このため、円筒部の周囲の部分と円筒部の内部との間に温度差が生じ、円筒部と羽根部の根元部との間の温度勾配が生じ易い。このため、羽根の根元部に熱応力が生じ易いこととなる。本願発明者は、上記の知見に基づいて本発明を想到するに至った。
【0011】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置用の撹拌ファンは、軸部と、前記軸部から放射状に延びる複数の羽根部と、を備え、前記軸部は、各前記羽根部を固定する羽根固定部を含み、前記羽根固定部は、前記軸部の軸方向に延びる円筒部を有し、前記円筒部の内側の孔部は、前記軸部の一端面に開放されて
いるとともに当該孔部の奥部が閉塞されており、前記円筒部内の気体を前記羽根固定部の外部へ排出するための排出部をさらに備え、前記排出部は、前記軸部の前記一端面から離隔した位置において前記羽根固定部の外部に開放されている。
【0012】
この構成によると、円筒部の一端面から円筒部の内部に向かう気流を、円筒部内に取り込むことができる。円筒部の一端面側から円筒部内に進入した気体は、排出部を通して羽根固定部の外部に排出される。このように、円筒部内において気流が生じることで、円筒部の内側で対流による熱交換が促進される。その結果、撹拌ファンの外表面側の部分との温度差を抑制できる。よって、円筒部と羽根部の根元部との間の温度勾配を、より小さくできる。すなわち、羽根の根元部に生じる熱応力をより小さくできる。その結果、撹拌ファンの負荷の低減を通して撹拌ファンの寿命をより長くできる。
【0013】
(2)好ましくは、前記排出部は、前記円筒部内の前記孔部に連続し且つ前記撹拌ファンの外表面に開放された排出孔部を含んでいる。
【0014】
この構成によると、円筒部内の空間と撹拌ファンの外部とを連続させる排出孔部を形成するという簡易な構成で、撹拌ファンの回転駆動時において円筒部内に気流を発生させることができる。また、排出孔部が形成されているぶん、撹拌ファンの質量をより小さくできるので、撹拌ファンをより軽量化できる。
【0015】
(3)より好ましくは、前記排出孔部は、前記羽根固定部の外表面に開放されている。
【0016】
この構成によると、円筒部の羽根固定部に貫通孔を形成する簡易な構成で、排出孔部を形成することができる。
【0017】
(4)好ましくは、前記排出孔部は、前記軸部の軸方向における前記羽根固定部の
前記円筒部の中心部に配置されている。
【0018】
この構成によると、円筒部内において気流を十分に確保しつつ、軸部のうち円筒部と円筒部以外の箇所との境界部において、中実の部分をより多く確保できる。よって、軸部の強度をより高くできる。
【0019】
(5)好ましくは、前記排出孔部の中心軸線方向に沿って見たときにおいて、前記排出孔部は、円弧状の隅部を有している。
【0020】
この構成によると、円筒部のうち、排出孔部における形状が滑らかな形状とされる。その結果、排出孔部の周囲に応力集中が生じることをより確実に抑制できる。
【0021】
(6)好ましくは、前記円筒部の内周面は、前記軸方向に沿って並ぶ複数の円筒面であって前記円筒部の奥側に配置された前記円筒面の内径が前記軸部の前記一端面側に配置された前記円筒面の内径よりも小さい複数の円筒面を有し、前記排出孔部は、少なくとも2つの前記円筒面に亘って形成されている。
【0022】
この構成によると、撹拌ファンにおいて円筒部を形成しつつ、円筒部のうち一端面が形成されている先端側とは反対側の基端側において、軸部に十分な厚みを持たせることができる。これにより、羽根部と羽根固定部との結合部分における互いの結合強度を十分に確保できる。また、円筒部の孔部内の空間の大きさを十分に確保できる。これにより、円筒部の内部から外部への気流の流量をより大きくできるので、排出孔部を用いた円筒部の冷却効果をより高くできる。
【0023】
(7)好ましくは、前記排出孔部は、前記軸部の周方向に隣接する2つの前記羽根部の間において1つ設けられており、且つ、前記周方向における2つの前記羽根部の間の中心部に配置されている。
【0024】
この構成によると、撹拌シャフトの駆動時において最も応力が高くなる傾向にある、羽根部の根元部から比較的離隔した位置において、排出孔部を形成することができる。
【0025】
(8)好ましくは、前記排出孔部は、前記軸部の周方向に隣接する2つの前記羽根部の間において複数設けられている。
【0026】
この構成によると、排出孔部の開口面積の合計値をより大きくできる。また、円筒部内において、より満遍なく気流を生じさせることができる。これにより、排出孔部を用いた円筒部の冷却効果をより高くできる。
【0027】
(9)より好ましくは、前記排出孔部は、2つの前記羽根部の間において、前記軸方向に沿って複数設けられている。
【0028】
この構成によると、円筒部内のより奥側まで確実に気流を発生させることができる。
【0029】
(10)より好ましくは、複数の前記排出孔部において、前記円筒部の前記一端面寄りの前記排出孔部の開口面積は、前記円筒部の基端部寄りの前記排出孔部の開口面積よりも小さく設定されている。
【0030】
この構成によると、円筒部の奥側の排出孔部を気体が通過するときの抵抗力を、より小さくできる。その結果、円筒部のうち気流が比較的生じ難い円筒部内の空間における奥側においても、より確実に気流を発生させることができる。これにより、円筒部内における気体の流れの分布をより均一にできる。よって、円筒部における温度分布の偏り(熱応力)をより小さくできる。
【0031】
(11)好ましくは、前記排出孔部は、2つの前記羽根部の間において、前記軸部の周方向に沿って等ピッチに設けられている。
【0032】
この構成によると、軸部の周方向に関して、円筒部内により万遍なく気流を発生させることができる。
【0033】
(12)好ましくは、前記排出孔部は、前記軸方向に細長く延びる長孔形状に形成されている。
【0034】
この構成によると、円筒部内の空間のうち、軸方向におけるより広い範囲に亘って、確実に気流を発生させることができる。
【0035】
(13)好ましくは、前記撹拌ファンは、耐熱鋼を用いて形成され、前記撹拌ファンの前記軸部および前記羽根部が1000℃の雰囲気下で回転駆動するときにおいて、前記軸部および前記羽根部の引張強さをaとし、前記軸部および前記羽根部のうち応力が最も高い箇所の応力をbとした場合に、b/a≦0.7となるように前記排出孔部の形状が設定されている。
【0036】
この構成によると、撹拌ファンのうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部と羽根部との接続部分(羽根固定部の周辺部分)にクラックなどの破損が生じることを、より確実に抑制できる。
【0037】
(14)好ましくは、前記軸部の前記軸方向の一端における前記内周面の開口面積をA1とし、前記排出孔部の軸方向と直交する断面における前記排出孔部の開口面積をB1とし、前記排出孔部の数をn1とした場合において、(B1×n1)/A1≧0.1に設定されている。
【0038】
この構成によると、撹拌ファンのうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部と羽根部との接続部分(羽根固定部の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0039】
(15)好ましくは、前記軸方向における前記羽根固定部の全長をA2とし、前記円筒部の前記一端面から前記排出孔部までの距離をB21とした場合において、B21/A2≧0.07に設定されている。
【0040】
この構成によると、撹拌ファンのうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部と羽根部との接続部分(羽根固定部の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。特に、円筒部の一端面側における上記接続部分の応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0041】
(16)好ましくは、前記軸方向における前記羽根固定部の全長をA2とし、前記羽根固定部のうち前記一端面とは反対側の他端から前記排出孔部までの距離をB22とした場合において、B22/A2≦0.5に設定されている。
【0042】
この構成によると、撹拌ファンのうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部と羽根部との接続部分(羽根固定部の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。特に、羽根固定部の他端側における上記接続部分の応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0043】
(17)好ましくは、前記軸方向における前記羽根固定部の全長をA2とし、前記円筒部の前記一端面から前記排出孔部までの距離をB21とした場合において、B21/A2≧0.07に設定され、且つ、前記羽根固定部のうち前記一端面とは反対側の他端から前記排出孔部までの距離をB22とした場合において、B22/A2≦0.5に設定されている。
【0044】
この構成によると、撹拌ファンのうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部と羽根部との接続部分(羽根固定部の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。特に、円筒部の一端面側における上記接続部分、および、羽根固定部の他端側における上記接続部分の双方の応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0045】
(18)より好ましくは、前記円筒部の周方向における当該円筒部の外周面の全長をA3とし、前記周方向における前記排出孔部の長さをB3とし、前記排出孔部の数をn3とした場合において、(B3×n3)/A3≧0.1に設定されている。
【0046】
この構成によると、撹拌ファンのうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部と羽根部との接続部分(羽根固定部の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0047】
(19)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、被処理品を熱処理するための処理室と、前記処理室に配置された、前記撹拌ファンと、を備えている。
【0048】
この構成によると、熱処理装置用の撹拌ファンの寿命をより長くできる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、熱処理装置用の撹拌ファンにおいて、寿命をより長くできる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、熱処理装置用の撹拌用ファン、および、熱処理装置として広く適用することができる。
【0052】
[熱処理装置の概略]
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1の模式的な側面図であり、一部を切断した状態を示している。
図1を参照して、熱処理装置1は、被処理品100を熱処理するために設けられている。この熱処理として、浸炭処理、焼入処理、焼戻処理、窒化処理、焼鈍処理、その他の熱処理を例示することができる。本実施形態では、熱処理装置1が、ガス浸炭処理炉である場合を例に説明する。また、本実施形態では、被処理品100は、金属部品である。熱処理装置1は、容器101に収容された複数の被処理品100を、浸炭処理するように構成されている。
【0053】
また、熱処理装置1は、バッチ式の熱処理装置として設けられている。具体的には、熱処理装置1は、一定量の被処理品100を一括して収容した状態で、当該被処理品100を熱処理する。当該熱処理後は、上記被処理品100は、熱処理装置1から、一括して排出される。
【0054】
熱処理装置1は、処理室2と、入口扉3と、出口扉4と、搬送装置5と、ヒータ6と、撹拌ファン7と、を備えている。
【0055】
処理室2は、箱状に形成されている。処理室2は、被処理品100を収容可能に構成されており、且つ、被処理品100を熱処理するためのガスを供給されるように構成されている。このガスとして、アセチレン、エチレンなどを例示することができる。処理室2は、入口8と、出口9と、を有している。
【0056】
処理室2の入口8は、入口扉3によって開閉可能である。被処理品100を収容した容器101は、入口8を通して、処理室2の外部から、処理室2の内部へ搬送される。処理室2の出口9は、出口扉4によって開閉可能である。処理室2内の容器101および被処理品100は、出口9を通して、処理室2の内部から、処理室2の外部へ搬送される。
【0057】
入口扉3および出口扉4は、処理室2内で被処理品100の熱処理が行われている際には、閉じられている。容器101および被処理品100は、搬送装置5によって、処理室2内を搬送される。
【0058】
搬送装置5は、搬送部材および受け部としてのローラ10を、複数有している。複数のローラ10は、処理室2内において、入口8と出口9との間に配置されている。複数のローラ10は、入口8から出口9に向かう方向としての搬送方向D1に沿って、間隔を隔てて配置されている。被処理品100を収容した容器101は、複数のローラ10上を、搬送方向D1に搬送される。被処理品100は、ローラ10によって、処理室2内で受けられる。この状態で、被処理品100は、ヒータ6によって、加熱される。
【0059】
ヒータ6は、たとえば、チューブバーナであり、処理室2内のガスを加熱するように構成されている。被処理品100の熱処理時、ヒータ6は、処理室2内のガスを、1000℃程度まで加熱する。この温度は、好ましくは約800℃であり、より好ましくは、約900℃である。
【0060】
本実施形態では、ヒータ6は、処理室2内に配置された部分を有している。この部分は、蛇行状に配置されており、処理室2内において、搬送方向D1に進んだ場合に、上下に蛇行している。搬送方向D1における、入口8と出口9の中間領域11において、ヒータ6は、処理室2内の上側部分に位置している。この中間領域11に隣接して、撹拌ファン7が配置されている。
【0061】
撹拌ファン7は、処理室2内のガスを撹拌するために設けられている。撹拌ファン7によって、処理室2内の被処理品100の迅速な昇温を行うことができる。また、撹拌ファン7によって、処理室2内のガスの温度分布を、より均等にすることができる。
【0062】
撹拌ファン7は、処理室2の上部に配置されている。被処理品100は、熱処理される際に、撹拌ファン7の下方に配置される。撹拌ファン7は、処理室2によって、回転可能に支持されている。また、撹拌ファン7は、図示しない電動モータなどの駆動装置によって、回転される。駆動装置の駆動によって、撹拌ファン7は、回転し、処理室2内のガスを撹拌する。
【0063】
上記の構成を有する熱処理装置1で被処理品100が熱処理される場合、まず、入口扉3が開かれる。次に、被処理品100を収容した容器101が、入口8から処理室2内へ投入される。この場合、容器101の温度および被処理品100の温度は、たとえば、常温であり、20℃程度である。容器101および被処理品100は、搬送装置5によって、搬送方向D1に搬送され、撹拌ファン7の下方に配置される。
【0064】
次に、入口扉3および出口扉4が閉じられた状態で、ヒータ6による加熱が開始される。これにより、処理室2内のガスが加熱される。また、撹拌ファン7が回転される。これにより、処理室2内のガスが撹拌される。これにより、処理室2内のガスの濃度分布が均され、且つ、処理室2内のガスの温度が、均される。
【0065】
処理室2内の温度は、前述した温度まで上昇される。これにより、被処理品100が、熱処理される。熱処理が完了した後、出口扉4が開かれる。更に、搬送装置5が動作する。これにより、容器101は、出口9を通して処理室2の外部へ排出される。
【0066】
[撹拌ファンの詳細な構成]
図2は、撹拌ファン7の主要部の斜視図である。
図3は、撹拌ファン7の円筒部周辺の拡大断面図である。
図4は、撹拌ファン7の底面図である。
【0067】
図2〜
図4を参照して、本実施形態では、撹拌ファン7は、遠心ファンであり、撹拌ファン7の径方向R1の外方に向かう風を発生するように構成されている。尚、以下では、撹拌ファン7の軸方向S1を、単に「軸方向S1」という。本実施形態では、軸方向S1と平行な方向も、軸方向S1という。また、撹拌ファン7の径方向R1を、単に「径方向R1」という。また、撹拌ファン7の周方向C1を、単に「周方向C1」という。本実施形態では、軸方向S1は、鉛直方向であり、径方向R1は、水平方向である。
【0068】
撹拌ファン7は、耐熱鋼などの金属材料によって形成されている。この耐熱鋼として、JIS(日本工業規格)のSCH13,SCH22,SCH24,SCH31,SCH46を例示することができる。撹拌ファン7の製法は、特に限定されない。たとえば、撹拌ファン7は、溶融した金属材料を、型に流し込むことにより、形成することができる。より具体的には、撹拌ファン7は、金型鋳造法、ロストワックス法などによって、形成することができる。本実施形態では、撹拌ファン7は、金型鋳造によって、形成されている。
【0069】
撹拌ファン7の回転速度は、たとえば、100rpm〜1600rpmに設定されている。撹拌ファン7の回転速度が上記の下限以上であれば、撹拌ファン7が発生する風量を、十分に大きくできる。尚、撹拌ファン7の回転速度の下限は、500rpmであることが、より好ましい。また、撹拌ファン7の回転速度が上記の上限以下であれば、撹拌ファン7の後述する羽根部40の遠心力が過度に大きくなることを抑制できる。その結果、撹拌ファン7の引張応力が過度に大きくなることを抑制できるので、撹拌ファン7の寿命を、より長くできる。また、撹拌ファン7は、質量バランス調整作業を経て完成している。これにより、撹拌ファン7の回転時に振動が生じることは、抑制されている。
【0070】
撹拌ファン7は、軸方向S1に細長く延びる略円柱形状の軸部20と、軸部20から放射状に延びる複数の羽根部40と、排出部50と、を有している。
【0071】
軸部20は、主軸部21と、羽根固定部22と、を有している。
【0072】
主軸部21は、中実の柱状に形成されている。即ち、主軸部21は、内部が詰まった柱状の部材として設けられている。
【0073】
主軸部21は、一端部23と、中間部24と、他端部25と、を有している。軸方向S1に沿って、他端部25と、中間部24と、一端部23とが、この順に配列されている。
【0074】
他端部25は、軸方向S1における主軸部21の他端部を構成しており、且つ、撹拌ファン7の他端部を構成している。他端部25は、略円柱形状に形成されている。この他端部25は、図示しない電動モータからの駆動力を入力されるように構成されている。他端部25は、中間部24と連続している。
【0075】
中間部24は、軸方向S1に細長く延びる円柱状部分であり、他端部25から一端部23側に向かうに従い、直径が段階的に大きくなる形状に形成されている。中間部24の外周面は、軸受27,27と嵌合している(
図1参照)。各軸受27,27は処理室2に保持されている。これにより、撹拌ファン7は、軸受27,27を介して、処理室2に回転可能に支持されている。撹拌ファン7の回転方向は、周方向C1の一方である。中間部24は、一端部23と連続している。
【0076】
再び
図2〜
図4を参照して、一端部23は、羽根部40側に進むに従い、直径が連続的に大きくなる部分として設けられている。一端部23は、羽根固定部22と連続している。
【0077】
羽根固定部22は、複数の羽根部40を固定するために設けられている。即ち、羽根固定部22は、羽根部40と結合されている部分として設けられている。羽根固定部22は、主軸部21の一端部を形成している。軸方向S1において、羽根固定部22の長さは、軸部20の長さよりも短く設定されている。
【0078】
羽根固定部22は、中実部28と、円筒部29と、を有している。中実部28および円筒部29は、軸方向S1に沿って、上記の順に並んでいる。
【0079】
中実部28は、羽根部40との十分な結合強度を確保するために設けられている。具体的には、中実部28は、金属材料が詰まった部分として設けられている。即ち、中実部28は、孔が形成されていない部分として設けられている。中実部28は、一端部23と連続している。中実部28は、円筒部29と連続している。
【0080】
円筒部29は、処理室2内のローラ10(
図1参照)と向かい合うように配置されている。ローラ10上の容器101と、円筒部29との距離は、鉛直方向において、たとえば、10cm〜20cm程度である。円筒部29は、羽根部40に生じる熱応力を低減するための中空部分として設けられている。
【0081】
円筒部29は、円筒部29の内側において軸方向S1に延びる孔部30を有している。孔部30は、円筒部29の一端面29a、即ち、軸部20の一端面に開放されており、当該一端面29aから中実部28に向かって、軸方向S1に沿って延びている。なお、羽根固定部22のうち一端面29aとは反対側の他端29c(他端面)は、主軸部21の一端部23に連続している。孔部30は、略円柱状の空間を形成している。孔部30は、一端面29aから当該孔部30の奥側に進むに従い、直径が段階的に小さくなるように設定されている。この孔部30の他端部は、テーパ状に形成されることで、中実部28に近い部分ほど、直径が小さく設定されている。
【0082】
孔部30の内周面は、第1円筒面31と、第2円筒面32と、テーパ状部33と、を有している。
【0083】
第1円筒面31、第2円筒面32、および、テーパ状部33は、軸方向S1に沿って順に並んでいる。第1円筒面31、および、第2円筒面32は、円筒部29の奥側に進むに従い内径が順次小さくなるように配置されている。
【0084】
第1円筒面31は、一端面29aに連続する円筒状の部分として設けられている。本実施形態では、軸方向S1における長さは、第1円筒面31の長さ、テーパ状部33の長さ、第2円筒面32の長さの順に大きい。第1円筒面31と第2円筒面32との境界部には、面取り部34が形成されており、第1円筒面31は、この面取り部34を介して第2円筒面32に接続されている。
【0085】
第2円筒面32は、軸方向S1における孔部30の中間部に配置されており、第1円筒部31の位置に対して円筒部29の奥側の位置に配置されている。第2円筒面32の内径は、第1円筒面31の内径よりも小さく設定されている。第2円筒面32は、テーパ状部33に接続されている。
【0086】
テーパ状部33は、孔部30の奥側に進むに従い、軸方向S1と直交する断面での直径が小さくなる先細り形状に形成されている。テーパ状部33の底部は、孔部30の最奥側の部分を構成している。
【0087】
本実施形態では、円筒部29の外径は、約80mm〜100mmに設定されている。円筒部29の内径(第1円筒部31の直径)は、約50mm〜70mmに設定されている。上記の構成を有する羽根固定部22は、複数の羽根部40を固定している。
【0088】
本実施形態では、羽根部40は、径方向R1の外方に向かう風を発生させるために設けられている。羽根部40は、周方向C1に等間隔(等ピッチ)に複数設けられており、羽根固定部22から放射状に延びている。本実施形態では、羽根部40は、6つ設けられている。これらの羽根部40の構成は同様である。
【0089】
羽根部40は、板状に形成されており、径方向R1のうちの一方向に沿って延び、且つ、軸方向S1に延びている。羽根部40の先端と、撹拌ファン7の中心軸線B1との間の距離、即ち、撹拌ファン7の半径は、250mm〜300mm程度に設定されている。
【0090】
羽根部40の厚みは、羽根部40の根元部41において最も大きく設定されている。羽根部40の厚みは、羽根部40の先端部42に近づくに従い小さくなるように設定されており、且つ、本実施形態では、羽根部40の先端部42において、突起部43が設けられている。
【0091】
羽根部40の根元部41は、羽根固定部22に連続している。軸方向S1における根元部41の一端41a(上部)は、中実部28の外周部に固定されている。軸方向S1における根元部41の他端41b(下部)は、円筒部29の外周部に固定されている。
【0092】
このような羽根部40において、根元部41における熱応力が、撹拌ファン7の熱応力のなかで最大となる。特に、熱処理装置1による熱処理時、撹拌ファン7において生じる応力(熱応力)は、羽根部40の根元部41の一端部41a(上部)および他端部41b(下部)において、最も大きくなる傾向にある。そこで、本実施形態では、この応力をより低減させるための構成として、排出部50が設けられている。
【0093】
排出部50は、円筒部29内の気体を円筒部29の羽根固定部22の外部へ排出するために設けられている。気体は、矢印Fに示すように円筒部29の一端面29a側から円筒部29内に進入し、排出部50を通って撹拌ファン7の外部に排出される。これにより、円筒部29の孔部30の内部における気体の滞留を抑制し、円筒部29を対流により熱交換を促進することができる。その結果、円筒部29の外径部側と内径部側との温度差を抑制する。これにより、円筒部29(羽根固定部22)における熱応力(熱の偏り)を抑制させる。以下、排出部50の構成について、より具体的に説明する。
【0094】
排出部50は、本実施形態では、円筒部29の羽根固定部22に形成されている。より具体的には、排出部50は、排出孔部51を有している。
【0095】
排出孔部51は、円筒部29を径方向R1に貫通するように形成された貫通孔である。本実施形態では、排出孔部51は、周方向C1に等ピッチに複数形成されている。より具体的には、排出孔部51の中心軸線S51は、周方向C1に沿って等ピッチに(60度ピッチに)配置されており、羽根部40と排出孔部51とが交互に配置されている。なお、各排出孔部51の構成は同様である。
【0096】
排出部孔51は、軸部20の円筒部29の一端面29aから離隔した位置において、羽根固定部22の外部(外表面)に開放されている。本実施形態では、排出孔部51は、円筒部29における孔部30の内周面に開放されているとともに、円筒部29の外周面29bに開放されている。換言すれば、排出孔部51は、円筒部29内の孔部30に連続し、且つ、撹拌ファン7の外表面に開放されている。
【0097】
本実施形態では、排出孔部51の中心軸線S51は、軸方向S1における羽根固定部222の円筒部29の中心部に配置されている。なお、排出孔部51の中心が軸方向S1における円筒部29の中心部に配置されていてもよいし、排出孔部51の中心以外の箇所が円筒部29の中心部に配置されていてもよい。また、排出孔部51は、周方向C1に隣接する2つの羽根部40,40の間において1つ設けられている。中心軸線S51は、周方向C1における2つの羽根部40,40の間の中心に配置されている。
【0098】
排出孔部51は、軸方向S1に細長い長孔形状に形成されている。本実施形態では、排出孔部51は、円筒部29の内周面のうちの少なくとも2つの円筒面(本実施形態では、2つの円筒面31,32)に亘って形成されている。排出孔部51の内周面51aは、径方向R1に沿って延びる平坦面である。換言すれば、排出孔部51の内周面51aを径方向R1に沿って進んだときにおいて、当該内周面51aには起伏が設けられていない。なお、排出孔部51の内周面51aは、径方向R1に沿って進んだときにおいて、起伏または傾斜が設けられていてもよい。径方向R1における排出孔部51の端部に面取り部などが形成された場合、排出孔部51の内周面51aには、傾斜が設けられることとなる。
【0099】
排出孔部51の中心軸線方向(径方向R1)に沿って視たときにおいて、排出孔部51は、円弧状の隅部51bを有している。本実施形態では、隅部51bは、軸方向S1における排出孔部51の両端部に形成されている。排出孔部51の中心軸線方向(径方向R1)に沿って視たときにおいて、各隅部51bは、半円状に形成されている。
【0100】
前述したように、本実施形態では、撹拌ファン7は、耐熱鋼を用いて形成されている。そして、本実施形態では、撹拌ファン7の軸部20および羽根部40が1000℃の雰囲気下で回転駆動するときにおいて、軸部20および羽根部40の引張強さをaとし、軸部20および羽根部40のうち応力が最も高い箇所(羽根固定部22と羽根部40との接続部としての根元部41のうち、軸方向S1における端部41aまたは端部41b)の応力をbと定義する。この場合において、b/a≦0.7となるように排出孔部51の形状が設定されている。
【0101】
応力に関する上記のb/a≦0.7とするための構成のさらなる具体例を説明する。この場合の構成の一例として、(B1×n1)/A1≧0.1とする構成を挙げることができる。A1は、軸部20の一端面29a側における孔部30の内周面(第1円筒面31)のうち、軸方向S1と直交する断面における開口面積である。また、B1は、排出孔部51の軸方向と直交する断面(半径方向R1に沿って見た側面)における排出孔部51の開口面積である。また、n1は、撹拌ファン7における排出孔部51の数である。なお、(B1×n1)/A1<0.1とした場合、円筒部29の孔部30内において、円筒部29を内側から冷却するための気流の流量が十分でなく、円筒部29の外表面と内部との温度差に起因する熱応力が大きくなり易い。
【0102】
また、応力に関する上記のb/a≦0.7とするための構成の一例として、B21/A2≧0.07とする構成を挙げることができる。A2は、軸方向S1における羽根固定部22の全長である。B21は、円筒部29の一端面29aから排出孔部51までの距離である。なお、B21/A2<0.07とした場合、円筒部29の奥側において十分な気流を発生させ難い。その結果、円筒部29を内側から冷却するための気流の流量が十分でなく、円筒部29の外表面と内部との温度差に起因する熱応力が大きくなり易い。
【0103】
また、応力に関する上記のb/a≦0.7とするための構成の一例として、B22/A2≦0.5とする構成を挙げることができる。B22は、羽根固定部22のうち一端面29aとは反対側の他端29cから排出孔部51までの距離である。なお、B22/A2>0.5とした場合、円筒部29の奥側において十分な気流を発生させ難い。その結果、円筒部29を内側から冷却するための気流の流量が十分でなく、円筒部29の外表面と内部との温度差に起因する熱応力が大きくなり易い。
【0104】
また、応力に関する上記のb/a≦0.7とするための構成の一例として、(B3×n3)/A3≧0.1とする構成を挙げることができる。A3は、円筒部29の周方向C1における当該円筒部29の外周面29bの全長(円周長)である。B3は、周方向C1における排出孔部51の長さである。n3は、排出孔部51の数である(本実施形態では、n3=6)。なお、(B3×n3)/A3<0.1とした場合、円筒部29の内部から排出孔部51を用いた気体の排出量を十分に確保し難い。その結果、円筒部29を内側から冷却するための気流の流量が十分でなく、円筒部29の外表面と内部との温度差に起因する熱応力が大きくなり易い。
【0105】
以上説明したように、本実施形態によると、排出部50の排出孔部51は、軸部20の一端面29aから離隔した位置において羽根固定部22の外部に開放されている。この構成によると、円筒部29の一端面29aから円筒部29の内部に向かう気流Fを、円筒部29内に取り込むことができる。円筒部29の一端面29a側から円筒部29内に進入した気体は、排出部50の排出孔部51を通して羽根固定部22の外部に排出される。このように、円筒部29内において気流Fが生じることで円筒部29の内側で対流による熱交換が促進される。その結果、撹拌ファン7の外表面側の部分との温度差を抑制できる。よって、円筒部29と羽根部40の根元部41との間の温度勾配を、より小さくできる。すなわち、羽根部40の根元部41に生じる熱応力をより小さくできる。その結果、撹拌ファン7の負荷の低減を通じて撹拌ファン7の寿命をより長くできる。
【0106】
また、本実施形態によると、排出孔部51は、円筒部29内の孔部30に連続し且つ撹拌ファン7の外表面に開放されている。この構成によると、円筒部29内の空間と撹拌ファン7の外部とを連続させる排出孔部51を形成するという簡易な構成で、撹拌ファン7の回転駆動時において円筒部29内に気流Fを発生させることができる。また、排出孔部51が形成されているぶん、撹拌ファン7の質量をより小さくできるので、撹拌ファン7をより軽量化できる。
【0107】
また、本実施形態によると、排出孔部51は、羽根固定部22の外表面に開放されている。この構成によると、円筒部29の羽根固定部22に貫通孔を形成する簡易な構成で、排出孔部51を形成することができる。
【0108】
また、本実施形態によると、排出孔部51は、軸部20の軸方向S1における羽根固定部22の中心部に配置されている。この構成によると、円筒部29内において気流Fを十分に確保しつつ、軸部20のうち円筒部29と円筒部29以外の箇所との境界部において、中実の部分をより多く確保できる。よって、軸部20の強度をより高くできる。
【0109】
また、本実施形態によると、排出孔部51の中心軸線方向に沿って見たときにおいて、排出孔部51は、円弧状の隅部51bを有している。この構成によると、円筒部29のうち、排出孔部51における形状が滑らかな形状とされる。その結果、排出孔部51の周囲に応力集中が生じることをより確実に抑制できる。
【0110】
また、本実施形態によると、円筒部29において、内径の異なる複数の円筒面31,32が形成されている。これにより、撹拌ファン7において円筒部29を形成しつつ、円筒部29のうち一端面29aが形成されている先端側とは反対側の基端側において、軸部20に十分な厚みを持たせることができる。これにより、羽根部40と羽根固定部22との結合部分における互いの結合強度を十分に確保できる。また、円筒部29の孔部30内の空間の大きさを十分に確保できる。これにより、円筒部29の内部から外部への気流Fの流量をより大きくできるので、排出孔部51を用いた円筒部29の冷却効果をより高くできる。
【0111】
また、本実施形態によると、排出孔部51は、周方向C1に隣接する2つの羽根部40,40の間において1つ設けられており、且つ、周方向C1における2つの羽根部40,40の間の中心部に配置されている。この構成によると、撹拌ファン7の駆動時において最も応力が高くなる傾向にある、羽根部40の根元部41から比較的離隔した位置において、排出孔部51を形成することができる。
【0112】
また、本実施形態によると、排出孔部51は、軸方向S1に細長く延びる長孔形状に形成されている。この構成によると、排出孔部51は、円筒部29内の空間のうち、軸方向S1におけるより広い範囲に亘って、確実に気流Fを発生させることができる。
【0113】
また、本実施形態によると、b/a≦0.7となるよう排出孔部51の形状が設定されている。この構成によると、撹拌ファン7のうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部20と羽根部40との接続部分(羽根固定部22の周辺部分)にクラックなどの破損が生じることを、より確実に抑制できる。
【0114】
また、本実施形態によると、(B1×n1)/A1≧0.1に設定されている。この構成によると、撹拌ファン7のうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部20と羽根部40との接続部分(羽根固定部22の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0115】
また、本実施形態によると、B21/A2≧0.07に設定されている。この構成によると、撹拌ファン7のうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部20と羽根部40との接続部分(羽根固定部22の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。特に、円筒部29の一端面29a側における上記接続部分の応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0116】
また、本実施形態によると、B22/A2≦0.5に設定されている。この構成によると、撹拌ファン7のうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部20と羽根部40との接続部分(羽根固定部22の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。特に、羽根固定部22の他端29c側における上記接続部分の応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0117】
また、本実施形態によると、B21/A2≧0.07である条件と、B22/A2≦0.5である条件の双方が満たされている。この構成によると、撹拌ファン7のうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部20と羽根部40との接続部分(羽根固定部22の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。特に、円筒部29の一端面29a側における上記接続部分、および、羽根固定部22の他端29c側における上記接続部分の双方の応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0118】
また、本実施形態によると、(B3×n3)/A3≧0.1に設定されている。この構成によると、撹拌ファン7のうち応力が最も高くなる傾向にある箇所としての、軸部20と羽根部40との接続部分(羽根固定部22の周辺部分)における応力を、十分に小さい値にすることができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0120】
(1)たとえば、上述の実施形態では、排出孔部51が羽根部40と羽根部40との間に1つ設けられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、
図5の変形例に示すように、円筒部29において、周方向C1に隣接する羽根部40と羽根部40との間に2つ以上の排出孔部51A,51B,51Cが形成されていてもよい。
【0121】
排出孔部51A,51B,51Cは、周方向C1に隣接する2つの羽根部40,40間において、円筒部29において軸方向S1に沿って複数設けられた排出孔部である。排出孔部51A,51B,51Cは、たとえば、円筒部29における羽根部40と羽根部40との間のそれぞれに設けられている。排出孔部51A,51B,51Cは、順に、円筒部29の一端面29a側から軸方向S1に沿って並んで配置されている。
【0122】
各排出孔部51A,51B,51Cは、たとえば、軸方向S1に細長い長孔形状に形成されている。本実施形態では、排出孔部51A,51B,51Cにおいて、円筒部29の一端面29a寄りの排出孔部51Aの開口面積は、円筒部29の基端部寄りの排出孔部51Cの開口面積よりも小さく設定されている。本実施形態では、排出孔部51Aの開口面積<排出孔部51Bの開口面積<排出孔部51Cの開口面積にすることができる。但し、排出孔部51Aの開口面積=排出孔部51Bの開口面積=排出孔部51Cの開口面積であってもよいし、開口面積の大きさの順が上記と逆であってもよい。
【0123】
上記の構成により、円筒部29の下側(一端面29a)側からガスを吸い込むので、円筒部29内の上の方(奥側)の圧力が高くなる。よって、排出孔部51A,51B,51Cの大きさが同じだと、上側の排出孔部51Cから出るガスの流速が上がり、その結果、排出孔部51Cの縁部の温度が上がる。よって、上側の排出孔部51Cをより大きく形成することで、上記の流速を低い値にする。より好ましくは、各排出孔部51A,51B,51Cからのガスの流速を等しくすることで、各排出孔部51A,51B,51Cの縁部の熱伝達率を合わせることができる。
【0124】
本実施形態では、周方向C1における各排出孔部51A,51B,51Cの長さ(幅)は、同じに設定されているけれども、異なっていてもよい。また、軸方向S1における各排出孔部51A,51B,51Cの長さは、排出孔部51Aが最も小さく、排出孔部51Bが2番目に小さく、排出孔部51Cが最も大きい。
【0125】
この変形例によると、円筒部29において、羽根部40,40の間に、複数の排出孔部としての排出孔部51A,51B,51Cが設けられている。この構成によると、排出孔部51A,51B,51Cの開口面積の合計値をより大きくできる。また、円筒部29内において、より満遍なく気流Fを生じさせることができる。これにより、排出孔部51A,51B,51Cを用いた円筒部29の冷却効果をより高くできる。
【0126】
また、この変形例によると、排出孔部51A,51B,51Cは、2つの羽根部40,40の間において、軸方向S1に沿って複数設けられている。この構成によると、円筒部29のより奥側まで確実に気流を発生させることができる。
【0127】
また、この変形例によると、複数の排出孔部51A,51B,51Cにおいて、円筒部29の一端面29a寄りの排出孔部51Aの開口面積は、円筒部29の基端部寄りの排出孔部51Cの開口面積よりも小さく設定されている。この構成によると、円筒部29の奥側の排出孔部51Cを気体が通過するときの抵抗力を、より小さくできる。その結果、円筒部29のうち気流Fが比較的生じ難い円筒部29内の空間の奥側においても、より確実に気流Fを発生させることができる。これにより、円筒部29内における気体の流れの分布をより均一にできる。よって、円筒部29における温度分布の偏り(熱応力)をより小さくできる。
【0128】
(2)なお、上述の変形例では、複数の排出孔部51A,51B,51Cは、羽根部40,40の間において、軸方向S1に並んで配置されていた。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、
図6に示すように、周方向C1に隣接する2つの羽根部40,40の間において、周方向C1に沿って複数の排出孔部51D,51Eが配置されていてもよい。排出孔部51D,51Eは、たとえば、排出孔部51の形状と略同様の形状を有している。そして、排出孔部51D,51Eは、2つの羽根部40,40の間において、周方向C1に沿って等ピッチに配置されている。すなわち、周方向C1に沿って並ぶ、羽根部40の中心、排出孔部51Dの中心、排出孔部51Eの中心、および、羽根部40は、周方向C1に等間隔に配置されている。ただし、等間隔でなくてもよい。
【0129】
この変形例では、排出孔部51D,51Eは、2つ前記羽根部の間において、周方向C1に沿って等ピッチに設けられている。この構成によると、周方向C1に関して、円筒部29内により万遍なく気流Fを発生させることができる。
【0130】
(3)また、上述の実施形態および変形例では、排出孔部51の内周面51aが滑らかな面に形成されていた。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、
図7に示すように、排出孔部51の内周面51aに、整流部55が形成されていてもよい。整流部55は、円筒部29内から円筒部29外に流れる気流を整流するために設けられている。この整流部55は、排出孔部51の内周面51aから突出するフィンとして形成されている。なお、整流部55は、排出部50の内周面51aを窪ませて形成された形状を有していてもよい。
【0131】
このような整流部55が設けられることで、円筒部29内から円筒部29外へ排出される気体の流量をより大きくできる。
【0132】
また、上述の実施形態および変形例では、円筒部29を径方向R1に貫通する排出孔部を排出部50として形成する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。排出部は、軸部20の一端面29aから離隔した位置において円筒部29の内部に開放され且つ羽根固定部22の外部に開放されていればよい。たとえば、軸部20を軸方向S1に貫通する排出孔部が形成されてもよい。
【実施例】
【0133】
実施例においては、撹拌ファンの軸部および羽根部が1000℃の雰囲気下で回転駆動するときにおいて、軸部および羽根部の引張強さをaとし、軸部および羽根部のうち応力が最も高い箇所の応力をbとした場合に、b/a≦0.7となるように排出孔部の形状が設定されることについて、説明する。
【0134】
[1.軸部の軸方向の一端における円筒部の内周面の開口面積をA1とし、排出孔部の軸方向と直交する断面における排出孔部の開口面積をB1とし、排出孔部の数をn1とした場合において、(B1×n1)/A1≧0.1とすることの意義の説明]
[実施例の作製]
上記実施形態の
図2に示す撹拌ファン7と同形状の撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、実施例1〜5を作製した。なお、実施例1〜5の材料は、JIS(日本工業規格)のSCH13の設定にすることで、1000℃における引張強さa=88MPaとした。実施例1〜5について、(B1×n1)/A1は、以下の通りである。
実施例1:(B1×n1)/A1=0.1
実施例2:(B1×n1)/A1=0.5
実施例3:(B1×n1)/A1=1.0
実施例4:(B1×n1)/A1=1.5
実施例5:(B1×n1)/A1=2.0
【0135】
[比較例の作製]
排出孔部が形成されていない点以外は、実施例と同様の構成を有する撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、比較例を作製した。即ち、比較例は、排出孔部を有しておらず、(B1×n1)/A1=0である。
【0136】
[実験条件]
実施例について、下記に示す条件で、有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションを実行した。
【0137】
条件:羽根部が下側に位置するように撹拌ファンが立てられた姿勢で当該撹拌ファンが1000℃に加熱された状態において、所定の回転速度(1000rpm)で撹拌ファンを回転させた。このときにおける、羽根部の根元部のうち軸方向の両端部(上部および下部)のそれぞれの応力を算出した。羽根部の根元部のうち軸方向の両端部のどちらも、撹拌ファンの駆動時において、応力が最も高くなる箇所である。尚、本実施例における応力は、ミーゼス応力である。
【0138】
そして、撹拌ファンの1000℃のときの引張強さ(88MPa)をaとし、羽根部の根元部のうち軸方向の両端部のそれぞれの応力をbとしたときの応力比(b/a)をグラフ化した。なお、以下では、グラフについては、各比較例および実施例の結果の傾向を示す線も併せて示している。
【0139】
比較例についても、上記と同様の条件で、比較例の羽根部の根元部のうち軸方向の両端部の応力を算出し、さらに、応力比(b/a)をグラフ化した。
【0140】
[計算結果]
結果を、
図8に示す。
図8を参照して、比較例では、羽根部の根元部の上部および下部の何れにおいても、応力比(b/a)が0.7を大きく超えている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が大きく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましくないことが示された。
【0141】
一方、実施例1〜5では、羽根部の根元部の上部および下部の何れにおいても、応力比(b/a)が0.7未満の小さな値となっている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が小さく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましいことが示された。なお、比較例1と実施例1との間における応力比(b/a)の変化は、実施例1と実施例2との間における応力比(b/a)の変化と比べて、急峻である。よって、(B1×n1)/A1≧0.1とする臨界的意義が明確である。
【0142】
また、実施例1〜5において、(B1×n1)/A1の値が大きく変化しているにも係わらず、応力比(b/a)については、0.3程度という小さな変動幅であった。よって、(B1×n1)/A1≧0.1のときには、応力比(b/a)について、顕著な変化は見られなかった。以上の次第で、(B1×n1)/A1≧0.1とすることで、撹拌ファンにおける応力比を十分に小さくできること、より具体的には、応力比b/a≦0.7を実現できることが実証された。
【0143】
[2.軸方向における羽根固定部の全長をA2とし、羽根固定部のうち一端面とは反対側の他端から排出孔部までの距離をB22とした場合において、B22/A2≦0.5とすることの意義の説明]
[実施例の作製]
上記実施形態の
図2に示す撹拌ファン7と同様の形状の撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、実施例6,7,8,9を作製した。なお、実施例6〜9の材料は、実施例1と同じである。また、実施例6〜9について、B22/A2は、以下の通りである。
実施例6:(B22/A2)=0.26
実施例7:(B22/A2)=0.33
実施例8:(B22/A2)=0.38
実施例9:(B22/A2)=0.50
【0144】
[比較例の作製]
実施例6〜9と同様の構成を有する撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、比較例2,3を作製した。なお、比較例2,3におけるB22/A2は、以下の通りである。
比較例2:(B22/A2)=0.55
比較例3:(B22/A2)=0.60
【0145】
[実験条件]
実施例6〜9および比較例2,3についての実験条件は、実施例1〜5についての実験条件と同様である。そして、実施例6〜9および比較例2,3について、羽根部の根元部の上部における応力比(b/a)をグラフ化した。
【0146】
[計算結果]
結果を、
図9に示す。
図9を参照して、比較例2,3では、前述したように、羽根部の根元部の上部において、応力比(b/a)が0.7を明らかに超えている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が大きく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましくないことが示された。
【0147】
一方、実施例6〜9では、羽根部の根元部の上部において、応力比(b/a)が0.7未満の小さな値となっている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が小さく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましいことが示された。よって、(B22/A2)≦0.5とする臨界的意義が明確である。
【0148】
[3.軸方向における羽根固定部の全長をA2とし、円筒部の一端面から排出孔部までの距離をB21とした場合において、B21/A2≧0.07とすることの意義の説明]
[実施例の作製]
上記実施形態の
図2に示す撹拌ファン7と同様の形状の撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、実施例10〜14を作製した。なお、実施例10〜14の材料は、実施例1と同じである。また、実施例10〜14について、B21/A2は、以下の通りである。
実施例10:(B21/A2)=0.07
実施例11:(B21/A2)=0.12
実施例12:(B21/A2)=0.24
実施例13:(B21/A2)=0.30
実施例14:(B21/A2)=0.38
【0149】
[比較例の作製]
実施例10〜14と同様の構成を有する撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、比較例4を作製した。なお、比較例4におけるB21/A2は、以下の通りである。
比較例4:(B21/A2)=0.03
【0150】
[実験条件]
実施例10〜14および比較例4についての実験条件は、実施例1〜5についての実験条件と同様である。そして、実施例10〜14および比較例4について、応力比(b/a)をグラフ化した。
【0151】
結果を、
図10に示す。
図10を参照して、比較例4では、前述したように、羽根部の根元部の下部において、応力比(b/a)が0.7を大きく超えている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が大きく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましくないことが示された。
【0152】
一方、実施例10〜14では、羽根部の根元部の下部において、応力比(b/a)が0.7未満の小さな値となっている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が小さく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましいことが示された。なお、羽根部の下部に関して、比較例4と実施例10との間における応力比(b/a)の変化は、実施例10と実施例11との間における応力比(b/a)の変化と比べて、急峻である。よって、(B21/A2)≧0.07とする臨界的意義が明確である。
【0153】
[4.円筒部の周方向における円筒部の外周面の全長をA3とし、周方向における排出孔部の長さをB3とし、排出孔部の数をn3とした場合において、(B3×n3)/A3≧0.1とすることの意義の説明]
[実施例の作製]
上記実施形態の
図2に示す撹拌ファン7と同様の形状の撹拌ファンを、コンピュータ上でモデル化することにより、実施例15〜18を作製した。なお、実施例15〜18の材料は、実施例1と同じである。実施例15〜18について、(B3×n3)/A3は、以下の通りである。
実施例15 :(B3×n3)/A3=0.15
実施例16,17:(B3×n3)/A3=0.30
実施例18 :(B3×n3)/A3=0.50
【0154】
なお、実施例15,16は、開口面積が(A1/12)mm
2の排出孔部を2つ有している。また、実施例17,18は、開口面積が(A1/6)mm
2の排出孔部を2つ有している。
【0155】
[実験条件]
実施例15〜18についての実験条件は、実施例1〜5についての実験条件と同様である。そして、実施例15〜18および比較例1について、応力比(b/a)をグラフ化した。
【0156】
[計算結果]
結果を、
図11に示す。
図11を参照して、比較例1では、羽根部の根元部の上部および下部の何れにおいても、応力比(b/a)が0.7を大きく超えている。
【0157】
一方、実施例15〜18では、羽根部の根元部の上部および下部の何れにおいても、応力比(b/a)が0.7未満の小さな値となっている。したがって、羽根部の根元部にかかる負荷が小さく、撹拌ファンのさらなる長寿命化の実現に好ましことが示された。なお、羽根部の上部に関して、比較例1と実施例15との間における応力比(b/a)の変化は、実施例15と実施例16との間における応力比(b/a)の変化と比べて、急峻である。よって、(B3×n3)/A3≧0.1とする臨界的意義が明確である。
【解決手段】熱処理装置用の撹拌ファン7は、軸部20と、複数の羽根部40と、を有している。軸部20は、各羽根部40を固定する羽根固定部22を含んでいる。羽根固定部22は、軸方向S1に延びる円筒部29を有している。円筒部29の内側の孔部30は、軸部20の一端面29aに開放されている。円筒部29には、円筒部29内の気体を羽根固定部22の外部へ排出するための排出孔部51が形成されている。排出孔部51は、軸部20の一端面29aから離隔した位置において羽根固定部22の外部に開放されている。