【文献】
Osteoarthritis and Cartilage, 2010, Vol.18, No.12, pp.1608-1619
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Xが、SEQ ID NO:6〜9、SEQ ID NO:30〜41、SEQ ID NO:63およびSEQ ID NO:73〜76からなる群よりのタンパク質またはその機能的フラグメントのいずれか1つまたはその組合せから選択される、請求項6、14または15のいずれか一項記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、プロテオグリカンを発現する細胞または組織への活性作用物質の選択的な送達のための、ヘパリン結合ペプチド(HB)の活性作用物質(例えばX)へのコンジュゲーションに関する。いくつかの態様において、HB-活性作用物質コンジュゲートを使用して、活性作用物質を、プロテオグリカンを発現する細胞または組織(例えば、軟骨、脳および脊髄組織、皮膚および皮下組織を含むが、それらに限定されるわけではない)に送達することができる。
【0020】
より具体的には、本明細書におけるいくつかの態様は、任意でリンカーペプチドによって、治療タンパク質またはその一部である活性作用物質に融合させたSEQ ID NO:1〜3またはSEQ ID NO:20〜22のヘパリン結合ペプチド(HB)に関する。いくつかの態様において、活性作用物質は小分子であり、プロテオグリカンを含む細胞および組織への小分子の送達を可能とし、SEQ ID NO:1〜3またはSEQ ID NO:20〜22のHBペプチドを、直接的または間接的連結(例えば化学的リンカーの使用)によって小分子にコンジュゲーションさせることができる。いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートを含む組成物は、プロテオグリカンを発現する組織および細胞への1つまたは複数の異なる治療タンパク質および作用物質の送達のために使用することができる。
【0021】
本発明の局面は、HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
n(ここで、HBはヘパリン結合タンパク質であり、Xは活性作用物質、例えば治療タンパク質もしくはその一部または治療小分子であり、nは少なくとも1の整数である)を含む選択的な治療組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は、組換えHBおよび治療タンパク質(またはその一部)を含む組換え融合タンパク質である。SEQ ID NO:1〜3またはSEQ ID NO:30〜22の群から選択されるHBペプチドの任意の組合せを、リンカータンパク質の存在下でまたは非存在下で、活性作用物質の任意の組合せに使用することができ、HBペプチドは、活性作用物質のN末端および/またはC末端に位置することができ、活性作用物質のN末端および/またはC末端に付着した1つまたは複数のHBペプチド-リンカーが存在することができる。例えば、いくつかの態様において、融合物またはコンジュゲートは(HB-リンカー)
n-X
m-(リンカー-HB)
o(ここで、n、mおよびoは整数であり、mは少なくとも1であり、n+oは少なくとも1である)を含むことができる。
【0022】
いくつかの態様において、組成物の成分は、組成物のHB部分のN末端に対して、以下の順番で配置されることができる:HB-X、X-HB、HB-リンカー-X、(HB-リンカー)
2-X、X-リンカー-HB、X-HB-X、HB
n-X-HB
n、(HB-リンカー)
n-X-(リンカー-HB)
n、HB-X-HB-Xなど。さらに、組成物はHB-X構築物(ここで、Xは種々のタンパク質または小分子を表す)の混合物を含むことができる(すなわち、HB-X
1およびHB-X
2を含む組成物など)。例示的なリンカーは、アミノ酸GGGを含むペプチドである。
【0023】
本発明は、本明細書に記載された特定の方法、プロトコール、および試薬などに限定されず、したがって変更し得ることが理解されるべきである。本明細書に使用される用語は、特定の態様を単に説明するためのものであり、本発明の範囲を制限する意図はなく、これは特許請求の範囲によってのみ規定される。特記しない限り、本明細書に使用された全ての技術用語および科学用語は、一般的に、本発明が属する技術分野の当業者に理解されるものと同じ意味を有する。全ての遺伝子IDは、特記しない限り、国立生物工学情報センター(NCBI)データベースで入手可能なヒト遺伝子を指す。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲に使用されているような単数形は、内容から明瞭に別段の指示がない限り、複数形も包含し、逆も同様である。「または(or)」という用語は、例えば「いずれか(either)」によって修飾されていなければ包含的である。実効の例以外、または別段の指示がある以外、本明細書に使用された成分または反応条件の量を表現している全ての数字は、全ての場合において「約(about)」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。核酸またはポリペプチドについて示された、全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量(molecular weight)または分子量(molecular mass)値はおよそであり、説明のために提供されることがさらに理解されるべきである。
【0025】
同定された全ての特許および他の刊行物は、例えば、本発明と関連して使用され得るこのような刊行物に記載された方法を記載および開示する目的のために、参照により本明細書に明確に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のその開示のためにのみ提供される。これに関して、先行発明によりまたは任意の他の理由のために、本発明者らがそのような開示に先行する権利が与えられないという承認として解釈されるべきではない。これらの文書の内容に関する日付または表現に関する全ての記載は、出願人の入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性に関する承認をなすものではない。
【0026】
本発明は、ヘパリン結合タンパク質が会合する特定の組織への、活性作用物質および治療部分、例えばタンパク質または小分子の選択的な送達を提供する。より具体的には、本態様は、治療部分、例えば小分子、またはサイトカインまたは成長因子またはその機能的部分に連結または融合される、新規なタンパク質性ヘパリン結合モチーフ(HB)を提供する。
【0027】
定義
簡便のために、出願全体(明細書、実施例および添付の特許請求の範囲を含む)に使用される特定の用語がここに集められている。特記しない限り、本明細書に使用された全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者よって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0028】
「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」と同義語として使用され得、これはペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーを指す。典型的には、タンパク質またはポリペプチドは、少なくとも約25アミノ酸の最小長を有する。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、多量体タンパク質、例えば1つを超えるドメインまたはサブユニットを含むタンパク質を包含することができる。本明細書に使用される「ペプチド」という用語は、典型的には、25個未満のアミノ酸長、例えば約4アミノ酸長から約25アミノ酸長を含む、ペプチド結合で連結されたアミノ酸ポリマーを指す。タンパク質およびペプチドは、ペプチド結合によって連結された直線状に並んだアミノ酸から構成され得、生物学的に、組換え的にまたは合成的に作製されようと、および天然または非天然アミノ酸から構成されようと、本定義に含まれる。完全長タンパク質および25個を超えるアミノ酸のそのフラグメントの両方が、タンパク質の定義に包含される。前記用語はまた、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、脂質化、タンパク質分解的切断(例えばメタロプロテアーゼによる切断)などのようなポリペプチドの同時翻訳修飾(例えばシグナルペプチド切断)および翻訳後修飾を有するポリペプチドを含む。さらに、本明細書に使用されるような「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対して欠失、付加、および置換(一般的には当業者に公知であるような保存的な性質の)などの改変を含むタンパク質を指す。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発を通してのような計画的であっても、あるいはタンパク質を産生する宿主の突然変異またはPCR増幅法もしくは他の組換えDNA法に因る誤りを通してなどの偶発的なものであることができる。ポリペプチドまたはタンパク質は、ペプチド結合によって連結された直線状に並んだアミノ酸から構成されるが、ペプチドとは対照的に、明確に定義されたコンフォメーションを有する。タンパク質は、ペプチドとは対照的に、一般的には25個以上のアミノ酸からなる。本発明の目的のために、本明細書に使用される「ペプチド」という用語は、典型的には、一本鎖D-もしくはL-アミノ酸からなるアミノ酸、またはペプチド結合によって接続されたD-およびL-アミノ酸の混合物の配列を指す。一般的には、ペプチドは少なくとも2つのアミノ酸残基を含み、約25個未満のアミノ酸長である。
【0029】
タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、多くの場合、一般的に20個の天然アミノ酸と称される20個のアミノ酸以外のアミノ酸(例えば、合成の非天然アミノ酸)を含有すること、および所与のポリペプチド中の、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸は、グリコシル化および他の翻訳後修飾のような天然プロセスによって、または当技術分野において周知である化学的修飾技術によってのいずれかで修飾されることができることが理解されるだろう。本発明のポリペプチド中に存在することができる公知の修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合的付着、ヘム部分の共有結合的付着、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド誘導体の共有結合的付着、脂質または脂質誘導体の共有結合的付着、ホスファチジルイノシトールの共有結合的付着、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合的な架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、フォーミュレーション(formulation)、γ-カルボキシル化、糖化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレン化(selenoylation)、硫酸化、トランスファーRNAにより媒介されるアミノ酸のタンパク質への付加、例えばアルギニン化、およびユビキチン化が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0030】
合成の非天然アミノ酸、置換アミノ酸、または1つもしくは複数のD-アミノ酸を含む非天然アミノ酸の、HBペプチドおよび/または活性作用物質ペプチドまたはタンパク質(または組成物の他の成分)への組み込みが特定の状況において望ましい。D-アミノ酸含有ペプチドは、L-アミノ酸含有形と比較して、インビトロまたはインビボにおける増加した安定性を示す。したがって、D-アミノ酸を組み込んだペプチドの構築は、インビボまたは細胞内のより大きな安定性が望まれるまたは必要である場合には、特に有用であることができる。より具体的には、D-ペプチドは、内因性ペプチダーゼおよびプロテアーゼに対して抵抗性であり、それにより、連結された薬物およびコンジュゲートのより良好な経口経上皮および経皮送達、膜耐久性複合体の改善されたバイオアベイラビリティ(さらなる考察については以下を参照)、ならびにこのような特性が望ましい場合の血管内および間質内の延長された寿命が与えられる。D-異性体ペプチドの使用はまた、連結された薬物および他のカーゴ分子の経皮および経口経上皮送達を増強することができる。さらに、D-ペプチドは、ヘルパーT細胞への主要組織適合性複合体クラスII拘束性提示により効率的に処理されることができず、全生物において体液性免疫応答を誘導することは可能性が低い。それゆえ、ペプチドコンジュゲートを、例えば、D-異性体形の細胞貫通ペプチド配列、L-異性体形の切断部位、およびD-異性体形の治療ペプチドを使用して構築することができる。いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、D-および/またはL-アミノ酸残基を含む。理由は、天然L-アミノ酸残基の使用は、全ての分解産物が細胞または生物にとって比較的無毒性であるという利点を有するからである。
【0031】
またさらなる態様において、HB-Xは、レトロ-インベルソペプチドであり得る。「レトロ-インベルソペプチド」は、少なくとも1つの位置におけるペプチド結合の方向の反転を有する、すなわち、アミノ酸の側鎖に関してアミノ末端とカルボキシ末端の反転を有するペプチドを指す。したがって、レトロ-インベルソ類似体は、天然ペプチド配列のような側鎖のトポロジーをおよそ維持しつつ、反転した末端および反転したペプチド結合の方向を有する。レトロ-インベルソペプチドは、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸、または、L-アミノ酸とD-アミノ酸の混合物(全てD異性体であるアミノ酸まで)を含むことができる。部分的なレトロ-インベルソペプチド類似体は、配列の一部のみが反転し、エナンチオマーアミノ酸残基で置換されているポリペプチドである。このような類似体の逆行性反転部分は、反転したアミノ末端およびカルボキシ末端を有するので、逆行性反転部分にフランキングするアミノ酸残基は、それぞれ、側鎖類似のα置換ジェミナルジアミノメタンおよびマロネートによって置換される。レトロ-インベルソ形の細胞貫通ペプチドは、膜を横切って移動する際に天然形と同じ効率で働くことが判明した。レトロ-インベルソペプチド類似体の合成は、Bonelli, F. et al., Int J Pept Protein Res. 24(6):553-6 (1984); Verdini, A and Viscomi, G. C., J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1:697-701 (1985);および米国特許第6,261,569号に記載され、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。部分的なレトロ-インベルソペプチド類似体の固相合成のためのプロセスが記載され(欧州特許第97994-B号)、これもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0032】
「変異体」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸または核酸の欠失、付加、置換または側鎖の修飾によって、天然のポリペプチドまたは核酸とは異なるが、天然分子の1つまたは複数の特異的機能または生物学的活性を保持する、ポリペプチドまたは核酸を指す。アミノ酸置換は、アミノ酸が、異なる天然のアミノ酸残基または非慣用的なアミノ酸残基で置換されている改変を含む。このような置換は、ポリペプチドに含まれるアミノ酸残基が、極性、側鎖官能基またはサイズのいずれかに関して類似した特徴の別の天然のアミノ酸で置換されている場合には、「保存的」と分類され得る。本明細書に記載されているような変異体によって包含される置換は、ペプチドに存在するアミノ酸残基が、異なる特性を有するアミノ酸で置換されている(例えば、荷電アミノ酸または疎水性アミノ酸が、アラニンで置換されている)場合、または代替的には、天然アミノ酸が非慣用的なアミノ酸で置換されている場合に「非保存的」であり得る。また、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関して使用される場合の「変異体」という用語の中には、それぞれ、基準ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較した(例えば、野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較した)、一次構造、二次構造または三次構造の変化が包含される。
【0033】
変異体は、以下に記載のような、保存的または非保存的アミノ酸の変化を含むことができる。ポリヌクレオチド変化により、基準配列によってコードされるポリペプチド中のアミノ酸の置換、付加、欠失、融合および切断短縮がもたらされることができる。変異体はまた、変異体の基礎であるペプチド配列中に通常存在しないアミノ酸および他の分子の挿入および置換(例えば、ヒトタンパク質に通常存在しないオルニチンの挿入であるが、それらに限定されるわけではない)を含む、アミノ酸の挿入、欠失または置換を含むことができる。1つのアミノ酸を別のアミノ酸で置換することから得られる「保存的アミノ酸置換」は、類似の構造的および/または化学的特性を有する。機能的に類似したアミノ酸を与える保存的置換表は、当技術分野において周知である。例えば、以下の6つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4)アルギニン(R)、リジン(K);(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。例えば、Creighton, PROTEINS (W.H. Freeman & Co.,1984)を参照されたい。保存的アミノ酸の選択は、ペプチド中の置換しようとするアミノ酸の場所に基づいて選択され得、例えば、アミノ酸がペプチドの外部にあり、かつ溶媒に曝されているか、または内部にあり、かつ溶媒に曝されていないかに基づいて選択され得る。いくつかの態様において、ポリペプチド(非保存的アミノ酸置換を含む)も、「変異体」という用語に包含される。本明細書に使用されるような「非保存的」置換という用語は、アミノ酸残基を、異なる化学的特性を有する異なるアミノ酸残基で置換することを指す。非保存的置換の非制限的な例には以下が挙げられる:アスパラギン酸(D)をグリシン(G)で置換;アスパラギン(N)をリジン(K)で置換;およびアラニン(A)をアルギニン(R)で置換。このような保存的および非保存的アミノ酸置換の選択は、当業者の技能範囲内である。
【0034】
「誘導体」という用語は、例えばユビキチン化、標識化、PEG化(ポリエチレングリコールを用いての誘導体化)、または他の分子の付加によって化学的に修飾されたタンパク質またはペプチドを指す。分子はまた、通常分子の一部ではない追加の化学部分を含む場合、別の分子の「誘導体」である。このような部分は、分子の溶解度、吸収、生物学的半減期などを改善することができる。該部分は、代替的には、分子の毒性を減少できるか、または分子の望ましくない副作用を消失もしくは減弱させるなどできる。このような効果を媒介することのできる部分は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (21st ed., Tory, ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006)に開示されている。
【0035】
「誘導体」または「変異体」と合わせて使用される場合の「機能的」という用語は、誘導体または変異体の由来する実体または分子の生物学的活性と実質的に類似した生物学的活性を有する、タンパク質分子を指す。この文脈における「実質的に類似」という用語は、ポリペプチドの生物学的活性が、基準、例えば対応する野生型ポリペプチドと比べて、少なくとも50%活性、例えば少なくとも60%活性、70%活性、80%活性、90%活性、95%活性、100%活性またはさらにはそれ以上(すなわち、変異体または誘導体は、野生型よりも高い活性を有する)、例えば110%活性、120%活性、またはそれ以上(包括的)であることを意味する
【0036】
「機能的部分」または「機能的フラグメント」という用語は、完全長分子と同じ効果を媒介する、例えば、増殖のような細胞応答を刺激するか、または所望の生理学的効果に関連するシグナルもしくはシグナルカスケードに影響を及ぼす、天然分子の部分(例えば天然タンパク質または化学実体のレセプター結合部分)を指す。
【0037】
本明細書に使用されるようなペプチド、ポリペプチドまたは分子の「フラグメント」という用語は、分子の任意の連続的なポリペプチドサブセットを指す。本明細書に使用される「タンパク質フラグメント」という用語は、天然のアミノ酸配列(例えば、タンパク質またはHB(SEQ ID NO:1)またはその変異体(例えばSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3)である天然の活性作用物質)から誘導可能な合成および天然アミノ酸配列の両方を含む。タンパク質は、天然タンパク質をフラグメント化することによって得ることができる場合、または天然アミノ酸配列またはこの配列をコードする遺伝子材料(DNAまたはRNA)の配列の知識に基づいて合成することができる場合に、「天然アミノ酸配列から誘導可能である」と言われる。したがって、分子の「フラグメント」は、分子の任意のポリペプチドサブセットを指すことを意味する。本明細書に開示されているようなSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のHBペプチド変異体の活性を有しかつ可溶性であるHBのフラグメントもまた、本発明における使用のために包含される。
【0038】
例えば、本明細書に開示されているような方法に有用なSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の機能的フラグメントは、インビボにおいてSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のポリペプチドの少なくとも30%の活性を有する。別の言葉で言えば、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のフラグメントは、単独でまたは活性作用物質と融合させると、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3と比較して少なくとも30%の同活性を得ることができ、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3を含むHB融合タンパク質を軟骨外植片または脊髄外植片(実施例に開示)と共にインキュベーションした場合に、本明細書に開示されているような洗い流してから24時間後に組織にHB-融合タンパク質を保持することができる、任意のフラグメントである。「フラグメント」は、少なくとも約6、少なくとも約9、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約250、少なくとも約300、およびその間の全ての整数の核酸またはアミノ酸であることができる。例示的なフラグメントは、C末端切断短縮、N末端切断短縮、またはC末端およびN末端の両方の切断短縮を含む(例えば、N末端、C末端またはその両方から、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、またはそれ以上のアミノ酸の欠失)。当業者は、単純な欠失分析によってこのようなフラグメントを作ることができる。このようなSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のフラグメントは、それぞれ、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のN末端および/またはC末端から欠失した、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸または10個を超えるアミノ酸であることができる。いくつかの態様において、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3からN末端および/またはC末端アミノ酸を順次欠失させ、単独でまたは活性作用物質に融合させ生じたペプチドフラグメントの機能を評価することによって、本発明に使用するためのHBの機能的フラグメントを同定することができる。多数のより小さなフラグメントを用いて機能的フラグメントを作ることができる。これらを、ペプチドリンカーで架橋することによって付着させることができる。野生型コンフォメーションを維持するためのリンカーを容易に選択することができる。当業者は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3を含むHB-融合タンパク質と比較して、組織に保持され、活性作用物質X(実施例に開示)による生物学的効果を引き起こす、HB-Xコンジュゲートの機能を容易に評価することができる。実施例に開示されているような軟骨アッセイなどのインビボアッセイを使用して、HBペプチドフラグメントが、本明細書に開示されているようなSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3に対応するHBの生物学的活性の少なくとも30%を有する場合、HB(フラグメント)-X融合タンパク質のHBペプチドフラグメントは有効なHBフラグメントと考えられ、かつ本明細書に開示されているような融合タンパク質および方法に使用することができる。いくつかの態様において、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のフラグメントは、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のアミノ酸20個未満、または15個未満、または10個未満、または5個未満であり得る。しかしながら、上記したように、フラグメントは、少なくとも4個、少なくとも約9個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約30個、少なくとも約40個、少なくとも約50個、少なくとも約100個、少なくとも約250個、少なくとも約500個、またはその間の任意の整数の核酸またはアミノ酸でなければならない。
【0039】
「野生型」という用語は、タンパク質もしくはその一部をコードする天然の通常ポリヌクレオチド配列、または通常インビボで存在するようなタンパク質配列もしくはその一部をそれぞれ指す。
【0040】
「突然変異体」という用語は、その遺伝子材料における任意の変化、特に野生型ポリヌクレオチド配列に対する変化(すなわち、欠失、置換、付加または改変)、または野生型タンパク質配列に対する任意の変化を有する、生物または細胞を指す。「変異体」という用語は、「突然変異体」と同義語として使用され得る。遺伝子材料の変化により、多くの場合、タンパク質の機能の変化が生じると想定されるが、「突然変異体」および「変異体」という用語は、その変化がタンパク質の機能を改変(例えば、増加、減少、新たな機能を付与)させるかどうか、またはその変化が、タンパク質の機能に対して全く影響を及ぼさないかどうか(例えば、突然変異または変異はサイレントである)に関係なく、野生型タンパク質の配列の変化を指す。
【0041】
元来のタンパク質と比較して、タンパク質またはペプチドまたはその機能的誘導体の変異体に言及して使用される場合の「実質的に類似した」という用語は、特定の対象配列が、1つまたは複数の置換、欠失または付加だけポリペプチド配列と異なるが、タンパク質の機能の少なくとも50%、またはそれ以上、例えば少なくとも60%、70%、80%、90%またはそれ以上(包括的)を保持することを意味する。ポリヌクレオチド配列の決定の際に、実質的に類似したアミノ酸配列をコードすることのできる全ての対象ポリヌクレオチド配列は、コドン配列の差異に関わらず、基準ポリヌクレオチド配列と実質的に類似していると考えられる。ヌクレオチド配列は、(a)所与のポリヌクレオチドが、天然ポリヌクレオチドのコード領域にハイブリダイズする場合、または(b)所与のポリヌクレオチドが、中程度にストリンジェントな条件下で天然ポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、かつコードされたタンパク質が天然タンパク質と類似した生物学的活性を有する場合;または(c)ポリヌクレオチド配列が、(a)または(b)に定義されたヌクレオチド配列と比較して、遺伝子コードの結果として縮重している場合、所与の核酸配列に対して「実質的に類似」している。実質的に類似したタンパク質は、典型的には、天然タンパク質の対応する配列に対して約80%超で類似している。
【0042】
「相同の」または「相同体」という用語は同義語として使用され、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを記載するために使用される場合、2つのポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、または命名されたその配列が、適切なヌクレオチドの挿入もしくは欠失またはアミノ酸の挿入もしくは欠失を伴って、最適にアラインされ、例えばBLAST、バージョン2.2.14をアラインメントのためのデフォルトパラメーターと共に使用して比較される場合に、高い相同性のためには、典型的には少なくとも70%のヌクレオチドが同一であることを示す。ポリペプチドについては、ポリペプチド中のアミノ酸の少なくとも30%が同一であるべきであり、またはより高い相同性のためには少なくとも50%同一であるべきである。本明細書において使用される「ホモログ」または「相同の」という用語はまた、構造に関する相同性を指す。遺伝子またはポリペプチドのホモログの決定は、当業者によって容易に確認され得る。規定の比率に関して、規定の相同率は、少なくともアミノ酸のその類似率を意味する。例えば、85%の相同性は、少なくとも85%のアミノ酸類似性を指す。
【0043】
配列の比較のために、典型的には1つの配列が基準配列として作用し、これと試験配列とを比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および基準配列をコンピューターに入力し、必要であればサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。その後、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、基準配列と比較して試験配列の配列同一率を算出する。必要であればまたは所望であれば、比較のための配列の最適なアラインメントを、多種多様な任意のアプローチによって実施することができ、これらは当業者には周知である。
【0044】
核酸配列、タンパク質またはポリペプチドに言及した「異種な」という用語は、これらの分子がその細胞に天然には存在しないことを意味する。例えば、細胞に挿入された(例えば、タンパク質発現ベクターの状況で)本明細書に記載された融合タンパク質をコードする核酸配列は、異種核酸配列である。
【0045】
本明細書において使用される「作用物質」または「化合物」という用語は、疾病または状態を処置または予防または制御するために、対象に投与される、化学実体もしくは生物学的産物、または化学実体もしくは生物学的産物の組合せを指す。化学実体または生物学的産物は、好ましくは、必ずしもではないが、低分子量化合物であるが、より大きな化合物、または任意の有機もしくは無機分子であり得、これには、改変および非改変核酸、例えばアンチセンス核酸、RNAi、例えばsiRNAまたはshRNA、ペプチド、ペプチド模倣体、レセプター、リガンド、および抗体、アプタマー、ポリペプチド、核酸類似体、またはその変異体が含まれる。例えば、作用物質は、核酸オリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であることができ、これには、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、RNAi作用物質(例えばsiRNA)、リポタンパク質、アプタマー、ならびにその改変および組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、活性作用物質は、核酸、例えばmiRNAまたはその誘導体もしくは変異体である。いくつかの態様において、核酸作用物質、例えばRNAiまたはmiRNA作用物質を含むHB-Xコンジュゲートを、リンカー部分を用いてHBペプチドに接続(例えばコンジュゲート)することができ、これにより、miRNAまたはRNAi作用物質はDNAと相互作用することを可能にできる。いくつかの態様において、リンカー部分は可逆的部分であり、例えばmiRNAまたはRNAi作用物質は、標的細胞または組織の場所でHBペプチドから遊離されることができる。
【0046】
本明細書において使用される「融合した」という用語は、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドが第2のタンパク質またはペプチドと物理的に会合していることを意味する。いくつかの態様において、融合は、典型的には共有結合であるが、他の種類の結合も、「融合した」という用語に包含され、これには、例えば、静電気的相互作用、または疎水性相互作用などを介した連結が含まれる。共有結合は、融合タンパク質としての連結または化学結合した連結、例えば、2つのシステイン残基間で形成されたジスルフィド結合を介したものを含み得る。
【0047】
本明細書において使用される「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のポリペプチド配列を一緒に接続することによって作られたタンパク質を意味する。本発明に包含される融合ポリペプチドは、HBペプチドまたはその突然変異体をコードするDNA配列を、第2のポリペプチドをコードするDNA配列と接続して、1つのオープンリーディングフレームを形成する、キメラ遺伝子構築物の翻訳産物を含む。別の言葉で言えば、「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」は、ペプチド結合によってまたはいくつかのペプチドを介して接続された2つ以上のタンパク質の組換えタンパク質である。融合タンパク質はまた、HBペプチドと、活性作用物質、例えば、融合タンパク質の治療ペプチドまたはポリペプチドとの間のペプチドリンカーを含み得る。
【0048】
いくつかの態様において、融合タンパク質は、例えば、1つのタンパク質をコードする核酸配列を、別のタンパク質をコードする核酸に接続して、それらが1つのオープンリーディングフレームを構成し、これが細胞内で目的とする全てのタンパク質を有する1つのポリペプチドへと翻訳されることができることによって、産生され得る。タンパク質の配列順序は変化することができる。非制限的な例として、HBペプチドをコードする核酸配列は、治療タンパク質またはペプチドなどの第1の融合パートナー(例えばX)をコードする遺伝子の5'末端または3'末端のいずれかの末端にインフレームで融合される。このように、遺伝子の発現時に、HBペプチドは機能的に発現され、X(例えば治療ペプチドまたはタンパク質)のN末端またはC末端に融合される。特定の態様において、ポリペプチドプローブの改変は、HBペプチドの機能が、第1の融合パートナーX(例えば治療ペプチド)への融合によって、その生物学的活性の点において依然として実質的に影響を受けないようなものである。いくつかの態様において、HB-X融合タンパク質をコードする核酸構築物はまた、HBペプチドをコードする核酸と、X(例えば治療ペプチドまたはタンパク質)をコードする核酸配列との間の位置する、リンカーをコードする核酸配列を有する。いくつかの態様において、HB-X融合タンパク質は、HBペプチドまたはX(例えば治療タンパク質またはペプチド)の機能が融合によって有意に損なわれないようなものと考えられる。
【0049】
本明細書において使用される「と会合する」という用語は、1つの実体が別の実体と物理的に会合または接触していることを意味する。したがって、活性作用物質「と会合している」HBペプチドは、活性作用物質へのHBペプチドの共有結合的または非共有結合的のいずれかで接続している可能性がある。会合は、特に会合が共有結合である場合にはリンカー部分によって媒介されることができる。「会合」または「相互作用」または「と会合する」という用語は、本明細書において同義語として使用され、HBペプチドと活性作用物質との、直接的な連結または間接的な連結のいずれかによる、会合または相互作用に言及して使用される。
【0050】
本明細書において使用される「コンジュゲート」または「コンジュゲーション」または「連結された」という用語は、2つ以上の実体が付着して1つの実体を形成することを指す。コンジュゲートは、ペプチド-小分子コンジュゲートおよびペプチド-タンパク質/ペプチドコンジュゲートの両方を包含する。例えば、本発明の方法は、別の実体、例えば活性作用物質、例えば治療タンパク質/ペプチドまたは小分子などの部分と接続されたHBペプチドのコンジュゲーションを提供する。本明細書に開示されているような付着は、リンカー、化学的修飾、ペプチドリンカー、化学的リンカー、共有結合もしくは非共有結合、またはタンパク質との融合によって、または当業者に公知の任意の手段によってであることができる。接続は永続的または可逆的であることができる。いくつかの態様において、いくつかのリンカー分子(化学的リンカーまたはペプチドリンカー)を含めて、コンジュゲート中の各リンカーおよび各タンパク質または分子の所望の特性を活用することができる。可動性リンカーおよびコンジュゲートの溶解度を増加させるリンカーが、単独でまたは本明細書に開示されたような他のリンカーと共に使用するために考えられる。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現させることによって、コンジュゲート中の1つまたは複数のタンパク質に連結させることができる。リンカーは酸切断性リンカー、光切断性リンカーおよび感熱性リンカーであることができる。コンジュゲーション方法は、当業者には周知であり、かつ本発明における使用のために包含される。
【0051】
あるいは、接続された2つ以上の実体は間接的な連結によって連結されることができる。間接的な連結は、HBペプチドと活性作用物質との間の会合を含み、HBペプチドおよび活性作用物質は「リンカー部分」を介して付着し、例えばそれらは直接連結されていない。直接的な連結は、リンカー部分が必要とされない任意の連結を含む。1つの態様において、直接的な連結は、化学的または物理的相互作用を含み、2つの部分、すなわち標的部分と結合部分が、それらが互いに引き付けあうように相互作用する。直接的相互作用の例には、共有結合的相互作用、非共有結合的相互作用、疎水/親水結合、イオン結合(例えば、静電気結合、クーロン力による引力、イオン双極子結合、電荷移動)、ファンデルワールス結合、または水素結合、および化学結合(共有結合の形成を含む)が挙げられる。したがって、1つの態様において、標的部分(例えばそのフラグメントの抗体)および結合部分は、リンカーを介して連結しておらず、例えば、それらは直接連結されている。さらなる態様において、標的部分および結合部分は互いに静電気的に会合している。
【0052】
「コンジュゲートした」という用語は、共に接続された少なくとも2つの実体の付着を指す。2つの実体の接続は直接的(例えば共有結合または非共有結合を介して)または間接的(例えばリンカーなどを介して)であることができる。
【0053】
「リンカー」という用語は、2つ以上の実体を接続するために使用される任意の手段、実体または部分を指す。例えば、本明細書に開示されているようなHBペプチドを、活性作用物質X(例えば治療タンパク質またはペプチド)にリンカー部分を使用して接続させることができる。リンカーは共有結合リンカーでも、または非共有結合リンカーでもあることができる。共有結合リンカーの例には、共有結合、または連結しようとする1つもしくは複数のタンパク質に共有結合的に付着したリンカー部分を含む。リンカーはまた、非共有結合、例えば白金原子のような金属中心を通した有機金属結合であることができる。共有結合のために、種々の官能基、例えばアミド基、例えば炭酸誘導体、エーテル、エステル(有機および無機エステルを含む)、アミノ、ウレタン、尿素などを使用することができる。連結の準備をするために、エフェクター分子および/またはプローブは、酸化、ヒドロキシル化、置換、還元などによって修飾されて、カップリングのための部位を提供することができる。リンカーは酸切断性リンカー、光切断性リンカーおよび感熱性リンカーであることができる。コンジュゲーション方法は、当業者には周知であり、かつ本発明における使用のために包含される。いくつかの態様において、HBペプチドを核酸に付着させるためのリンカー部分は、シクロ-プロパピロロインドール架橋剤である。リンカー部分には、化学的リンカー部分、または例えばペプチドリンカー部分が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、HBペプチドと活性作用物質との間のリンカーすなわちペプチドリンカーは、ポリマーと、例えばクロロギ酸p-ニトロフェニル、カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N'-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、cis-アコニット酸無水物、およびこれらの化合物の混合物からなる群より選択されるリンカーと反応させることによって形成されることができる。本明細書に開示されているようなHBペプチドまたは活性作用物質(例えば治療タンパク質またはペプチド)の機能を有意に減少させない改変が好ましいことが理解されるだろう。
【0054】
「組換え」という用語は、核酸分子を記載するために使用される場合、その入手源または操作のために、天然では会合しているポリヌクレオチド配列の全部または一部と会合していない、ゲノム、cDNA、ウイルス、半合成、および/または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または組換え融合タンパク質に関して使用されるような組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドからの発現によって産生されたポリペプチドを意味する。宿主細胞に関して使用されるような組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドが導入された宿主細胞を意味する。組換え体はまた、本明細書において、材料が異種材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質またはベクター)の導入によって改変された材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質またはベクター)を言及するために使用される。
【0055】
「ベクター」という用語は、宿主細胞に、ベクターが連結されている異種核酸を輸送する、またはその発現を媒介することのできる核酸分子を指し;プラスミドは、「ベクター」という用語によって包含される属の一種である。「ベクター」という用語は、典型的には、複製起点、および宿主細胞における複製および/または維持に必要な他の実体を含む、核酸配列を指す。ベクターが作動可能に連結されている遺伝子および/または核酸配列の発現を指令することのできるベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。一般的に、有用な発現ベクターは、多くの場合、「プラスミド」の形態であり、それは、環状二本鎖DNA分子を指し、これはそのベクター形態では染色体に結合しておらず、典型的には、コードされたDNAの安定発現または一過性発現のための実体を含む。本明細書に開示されているような方法に使用され得る他の発現ベクターには、プラスミド、エピソーム、細菌人工染色体、酵母人工染色体、バクテリオファージ、またはウイルスベクターが挙げられるが、それらに限定されるわけではなく、このようなベクターは、宿主ゲノムに組み込まれることができるか、または特定の細胞内で自律的に複製することができる。ベクターはDNAまたはRNAベクターであることができる。等価な機能を果たす当業者に公知の他の形態の発現ベクター、例えば自己複製染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに組み込まれたベクターも使用することができる。好ましいベクターは、それらが連結されている核酸の自律複製および/または発現を行なうことができるものである。
【0056】
「対象」および「個体」という用語は本明細書において互換的に使用され、動物、例えばヒトを指し、これに、本発明に記載の薬学的組成物を用いて、予防的処置を含む処置が提供される。本明細書に使用されるような「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」という用語は本明細書において互換的に使用され、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、および非哺乳動物、例えばニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。1つの態様において、対象はヒトである。別の態様において、対象は疾病モデルとしての実験動物または動物代替物である。該用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、成体および新生仔の対象、ならびに、胎仔(雄または雌)が網羅されると考えられる。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギおよびマウスが挙げられる。対象という用語は、さらにトランスジェニックな種を含むことを意味する。
【0057】
「組織」という用語は、インタクトな細胞、血液、血液製剤、例えば血漿および血清、骨、関節、軟骨、神経組織(脳、脊髄およびニューロン)、筋肉、平滑筋および臓器を含むことを意味する。
【0058】
「疾病」または「疾患」という用語は本明細書において互換的に使用され、機能の遂行を中断または妨害する、および/または罹患したヒトまたはヒトと接触したヒトに症状(例えば、不快感、機能障害、苦痛、またはさらには死)を引き起こす、生体または臓器の幾つかの状態の任意の変化を指す。疾病または疾患はまた、ジステンパー、病的状態(ailing)、不快(ailment)、病期(malady)、障害(disorder)、病(sickness)、病気(illness)、愁訴(complaint)、素因(inderdisposion)、罹患(affection)とも関連することができる。
【0059】
「軟骨に関連する状態」または「軟骨に関連する臨床状態」という用語は、関節軟骨における任意の欠損を指す。該用語は、軟骨の破断または剥離、半月板の欠損(部分的または完全な断裂を含む)、半月板および/または膝蓋骨に影響を及ぼす傷害または疾病、変形性関節症(本明細書においては「OA」とも称される)、例えば、変形性膝関節症、変形性指関節症、変形性手関節症、変形性股関節症、変形性足首関節症、変形性肘関節症、変形性足指関節症、変形性肩関節症、および脊椎関節症、外傷性軟骨破断または剥離、強直性脊椎炎、関節胞炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、軟骨疾患、軟骨肉腫、軟骨軟化症、多発性軟骨炎、再発性多発性軟骨炎、骨頭すべり症、離断性骨軟骨炎、軟骨異形成、肋軟骨炎、X連鎖低リン血症性くる病、骨軟骨種、軟骨肉腫(悪性)、変形性関節症感受性(1〜6型)、脊椎症、骨軟骨症、原発性軟骨肉腫、軟骨異形成、ティーツェ症候群、フランソア(Francois)皮膚軟骨角膜ジストロフィー、多発性骨端異形成(1〜5型)、精神遅滞を伴う耳介軟骨石灰化、筋消耗および骨変化、手根足根骨軟骨腫症、軟骨無形成症、軟骨石灰化症(1〜2型)、遺伝性軟骨腫症、軟骨異形成症(性分化疾患)、軟骨腫、軟骨無発生症(1A、1B、2、3、4、ランガーサルディーノ(Langer-Saldino)型)、軟骨無発生症-軟骨低発生症II型、骨発生不全症(1、2およびIII型)、濃縮軟骨無形成、偽性軟骨異形成症、家族性指骨関節症、捻曲性異形成症、軟骨骨異形成症-腎炎、鼻翼軟骨コロボーマ-内眼角外方偏位、鼻翼軟骨低形成-コロボーマ内眼角外方偏位、ピエール・ロバン症候群-胎児軟骨異形成、異常脊椎内軟骨腫症、軟骨無形性症(局所的)-異形成腹筋、離断性骨軟骨炎、家族性関節軟骨石灰化症、気管気管支軟化症、軟骨炎、軟骨骨異形成症、マフッチ症候群、ジェキア・コズロウスキー骨格形成異常、軟骨異栄養症、頭蓋骨関節症、ティーツェ症候群、股関節形成不全-内軟骨腫−外軟骨腫、ベッセル・ハーゲン病、軟骨腫症(良性)、内軟骨腫症(良性)、アパタイト結晶沈着に因る軟骨石灰化症、マイエンベルグ・アルトヘル・ユーリンガー症候群、内軟骨腫症-低身長症-聴覚消失、アストレー・ケンダル症候群、滑膜骨軟骨腫症、家族性関節軟骨石灰化症、発達遅延と黒色棘細胞症を伴う重度な軟骨無形成症、軟骨石灰化症、ケウテル(Keutel)症候群、スタネスク症候群、線維軟骨形成症、軟骨低形成症を包含するが、それらに限定されるわけではない。
【0060】
「組成物」または「薬学的組成物」は本明細書において互換的に使用され、通常、当技術分野において慣用的であり、組織または対象にHB-Xコンジュゲートを投与するのに適した、賦形剤、例えば薬学的に許容される担体を含有する、組成物を指す。さらに、局所(例えば口腔粘膜、気道粘膜)および/または経口投与のための組成物は、当技術分野において公知であり、かつ本明細書に記載されている、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、うがい薬、または散剤を形成することができる。組成物はまた、安定化剤および保存剤を含むことができる。担体、安定化剤および補助剤の例については、University of the Sciences in Philadelphia (2005) Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons, 21st Ed.を参照されたい。
【0061】
本明細書に使用される「処置する」、「処置している」および「処置」という用語は、疾病または疾患の1つもしくは複数の症状または測定可能なマーカーの軽減または測定可能な緩和を指すが、一方、このような特定の関心対象の疾病または疾患(自己免疫疾患および筋炎を含む)に限定することを意味するものではない。測定可能な緩和は、測定可能なマーカーまたは症状のあらゆる統計学的に有意な下降を含む。いくつかの態様において、処置は予防的処置である。
【0062】
「治療有効量」という用語は、所望の治療結果、例えば、種々の疾病状態または状態に関連する作用の減少または阻止を達成するために、例えば対象における自己免疫疾患の症状を低減するのに必要な期間における有効な投与量を指す。「治療有効量」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける疾病または疾患を処置または予防するのに効果的である、本明細書に開示されているようなHB-Xコンジュゲートの量を指す。HB-Xコンジュゲートの治療有効量は、対象の疾病状態、年齢、性別および体重、ならびに対象において治療化合物Xが所望の応答を誘起する能力ような因子に応じて変化することができる。治療有効量はまた、治療剤の任意の毒性作用または有害作用よりも、治療的に有益な効果がまさる量である。いくつかの態様において、治療有効量は「有効量」であり、これは本明細書に使用されているように、疾病または疾患の症状の少なくとも1つまたはいくつかを軽減する薬学的組成物の治療剤の量を指す。したがって、本明細書の目的のための「有効量」は、当技術分野において公知であるようなこのような考慮によって決定され、かつ改善された生存率もしくはより迅速な回復、または処置する疾病の少なくとも1つの症状および他の指標の改善もしくは排除(これらは当業者による適切な尺度である)を含むが、それらに限定されるわけではない改善を達成する量である。本明細書に開示されているHB-X融合タンパク質は、薬学的に許容される塩として投与されることができ、かつ単独投与されることができるか、または薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤およびビヒクルと組み合わせた活性成分として投与されることができることを注記すべきである。
【0063】
「予防有効量」という用語は、所望の予防結果を達成するのに必要な期間、有効な投与量であるHB-Xコンジュゲートの量を指す。典型的には、予防量のHB-Xコンジュゲートが、疾病発症前または疾病の初期段階に対象に投与されるので、いくつかの態様において、予防有効量は、治療有効量よりも少ない。HB-Xコンジュゲートの予防有効量はまた、化合物の任意の毒性作用または有害作用よりも、有益な効果がまさる量である。
【0064】
本明細書において使用される「予防する」、「予防している」および「予防」という用語は、疾病または疾患、例えば自己免疫疾患の1つまたは複数の症状または測定可能なマーカーの顕現の回避または遅延を指す。症状またはマーカーの顕現の遅延は、このような症状またはマーカーが、疾病または疾患を同程度発症する可能性または感受性を有する対照または非処置対象において顕現する時間と比較した遅延である。「予防する」、「予防している」および「予防」という用語は、疾病の症状またはマーカーの回避または予防だけでなく、疾病または疾患を同程度発症する可能性または感受性を有する対照または非処置個体における症状またはマーカーと比較して、あるいは疾病または疾患に冒された集団の歴史的または統計学的尺度に基づいて生じる可能性のある症状またはマーカーと比較して、疾病の症状またはマーカーのいずれか1つの低減された重度または程度を含む。「低減された重度」とは、対照または基準と比較して、症状または測定可能な疾病マーカーの重度または程度の少なくとも10%の低減、例えば少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらには100%の低減(すなわち症状または測定可能なマーカーは全くない)を意味する。
【0065】
本明細書において使用される「投与している」および「導入している」という用語は本明細書において互換的に使用され、HB-Xコンジュゲートが所望の部位に少なくとも部分的に局在するような方法または経路によって、本発明のHB-Xコンジュゲートを対象に配置することを指す。本発明の化合物は、対象における効果的な処置が行なわれる任意の適切な経路によって投与されることができる。
【0066】
本明細書において使用される「非経口投与」および「非経口的に投与する」という語句は、通常、注射による、経腸および局所投与以外の投与形態を意味し、これには、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内注射および注入が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。本明細書において使用される「全身投与」、「全身的に投与する」、「末梢投与」および「末梢的に投与する」という語句は、動物の系に入り、したがって、代謝および他の同様なプロセスに供されるようなHB-Xの投与、例えば皮下投与を意味する。
【0067】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症をもたらすことなく、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適し、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合った、化合物、材料、組成物および/または剤形を指すために使用される。
【0068】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、主題作用物質をある臓器または生体のある部分から、別の臓器または生体のある部分へと運ぶまたは輸送するのに関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば液状または固体状の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容され」なければならない。
【0069】
本明細書において使用される「減少した」または「減少する」または「減少」という用語は一般的に、基準と比較して、統計学的に有意な量の減少を意味する。疑いを回避するために、「減少した」は、基準レベルと比較して、少なくとも10%の統計学的に有意な減少、例えば、基準レベル(その用語は本明細書に定義した通りである)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上、100%以下(100%を含む)の減少(すなわち、基準試料と比較して無のレベル)、または10〜100%の任意の減少を意味する。
【0070】
本明細書において使用される「増加した」または「増加」という用語は一般的に、統計学的に有意な量の増加;例えば、基準レベルと比較して、少なくとも10%の統計学的に有意な増加、例えば、基準レベル(その用語は本明細書に定義した通りである)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%またはそれ以上(100%を含む)の増加、例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍の増加またはそれ以上の増加を意味する。
【0071】
本明細書において使用される「高い」という用語は一般的に、基準と比較して統計学的に有意な量だけ高い;例えば、基準レベルよりも少なくとも10%高い統計学的に有意な値、例えば、基準レベルと比較して、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも60%高い、少なくとも70%高い、少なくとも80%高い、少なくとも90%高い、少なくとも100%高い(100%を含む)、例えば少なくとも2倍高い、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも10倍以上高いことを意味する。
【0072】
本明細書において使用される「対象」という用語は、組成物のHB部分によって標的化される組織の応答を調節するのに有用である任意の動物を指す。対象は、野生、飼育動物、商業的動物またはコンパニオン動物、例えば鳥類または哺乳類であることができる。対象はヒトであることができる。本発明の1つの態様において、本明細書に開示されているような治療組成物はまた、ヒトにおける治療処置に適することができ、恒温脊椎動物、例えば哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、および非ヒト哺乳動物、例えばニワトリ、アヒルまたはシチメンチョウにも適用可能であると考えられる。いくつかの態様において、対象は疾病モデルとしての実験動物または代用動物である。
【0073】
「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性を伴うことなく哺乳動物に投与され得る化合物および組成物を指す。「薬学的に許容される担体」という用語は、組織培養培地を除外する。例示的な薬学的に許容される塩には、鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など、および有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知である。いくつかの薬学的に許容される担体は、本明細書に記載の組成物の徐放を与えるために使用され得る。例えば、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸ゲル形が、関節内注射に使用され、かつこれを使用してHB-X組成物の徐放をもたらすことができる。
【0074】
本明細書において使用される「処置している」、「処置」および「処置するために」という用語は、有益なもしくは望ましい結果の発生、例えば、症状を軽減する、または一時的もしくは永久的にのいずれかで疾病もしくは疾患が引き起こされるのを排除すること、疾患の症状の出現および/もしくは進行を緩徐化すること、または疾病の進行を妨げることを示すために使用される。「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)措置の両方を指す。有益なまたは望ましい臨床結果には、症状の軽減、自閉症の程度の減少、病態の併発の安定化状態(すなわち悪化しない)、疾病の進行の遅延または緩徐化、疾病状態の寛解または緩和が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。「効果的な計画」は、所望の結果のレベルを達成するのに効果的な経過(十分な期間におよぶ十分な処置または量)をかけて投与される。効力のモニタリングは、特定の疾病またはその症状に関する当技術分野において公知の方法によって実施されることができる。
【0075】
HB-Xコンジュゲート
本明細書に開示されているような本発明の局面は、例えば(HB-リンカー)
n-X
m-(リンカー-HB)
o(ここで、HBはヘパリン結合タンパク質であり、Xは活性作用物質、例えば治療タンパク質もしくはその一部または治療小分子であり、n、mおよびoは整数であり、mは少なくとも1であり、n+oは少なくとも1である)を含む、治療組成物を含む。
【0076】
いくつかの態様において、HB-XコンジュゲートはHB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
n(ここで、nは少なくとも1の整数である)である。HBを、活性作用物質XのN末端もしくはC末端、またはN末端およびC末端の両方に付着させることができる。いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、組換えHBおよび治療タンパク質を含む組換え融合タンパク質である。いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、本明細書に開示されているようなHBペプチドおよび小分子を含む。両方の場合において、HBペプチドを、リンカー実体を用いてまたは用いずに活性作用物質に付着(例えばコンジュゲート)させることができる。
【0077】
いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートの成分は、組成物のHB部分のN末端に対して以下の順番で配置され得る:HB-X、X-HB、HB-リンカー-X、(HB-リンカー)n-X、X-(リンカー-HB)n、X-HBn-X、HBn-X-HBn、(HB-リンカー)n-Xm-(リンカー-HB)n、HBn-Xm-HBn-Xmなど。
【0078】
いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、SEQ ID NO:1〜3または20〜22の少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約9個、または少なくとも約10個、または10個を超えるHBペプチドを含むことができる。1個を超えるHBペプチドを有するHB-Xコンジュゲートは、全て同じ種類のHBペプチドを有することができるか(例えば、全てのHBペプチドはSEQ ID NO:2を含む)、またはSEQ ID NO:1〜3もしくは20〜22からの異なるHBペプチドの任意の組合せを含むことができる。いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、HBペプチドと会合した少なくとも1つのリンカーを含むことができ、例えば、HB-Xコンジュゲートに存在する各HBはリンカーと会合することができる。あるいは、いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートが1個を超えるHBペプチドを含む場合、HB-Xコンジュゲート中の全てのHBペプチドがリンカーと会合している必要はない。HBペプチドは、HB-Xコンジュゲート中の活性作用物質の配列間に無作為的にまたは非無作為的に分散されることができ、例えば、例示的な例として、HB-X-X-X-HB-X-X-X-HBまたはX-X-HB-X-HB-X-HB-X-X-X-HB-などである。X活性実体間のHBペプチドのこのような無作為的にまたは非無作為的な分散は、本明細書に開示されているように、リンカーを用いてまたは用いずに起こることができる。
【0079】
さらに、組成物は、HB-X構築物(ここで、Xは異なるタンパク質または小分子を表す)の混合物を含むことができる(すなわち、HB-X
1およびHB-X
2を含む組成物など)。
【0080】
いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約9個、または少なくとも約10個、または10個を超える活性作用物質(X)を含むことができる。活性作用物質は、本明細書に開示されているような治療タンパク質もしくはペプチド、または小分子であることができる。
【0081】
ヘパリン結合タンパク質(HB)
本発明は、治療部分または活性作用物質、例えば小分子、またはサイトカインまたは成長因子またはその機能的部分に連結または融合したタンパク質性ヘパリン結合モチーフ(HB)に関する。いくつかの態様において、HBペプチドは、アミノ酸残基配列:
を有するペプチドから選択されることができる。いくつかの態様において、HBペプチドは、アミノ酸残基配列:
を有するペプチドから選択されることができる。
【0082】
いくつかの態様において、組成物のHB部分は、多くのリジンおよびアルギニン残基を通して正に荷電し;硫酸基によって負に荷電した細胞または組織プロテオグリカンに結合する。特定の態様において、SEQ ID NO:1の残基を有するHBの16位に見られる天然システイン残基を、アルギニン(SEQ ID NO:2)(C16R)またはリジン(SEQ ID NO:3)(C16K)で置換することによって、HBを突然変異させて、正電荷を増強させる。HBを、ペプチドリンカーを包含させてまたは包含させずに繰り返すことができる。リンカーを有する例示的な直列HBペプチド構築物は、HB-リンカー-HB-X(ここで、HB-リンカー-HBはSEQ ID NO:2のHB変異体を含み、アミノ酸:
を有する);またはHB-リンカー-HB-リンカー-HB-X(ここで、HB-リンカー-HB-リンカー-HBは、残基:
を有する)で示される。いくつかの態様において、リンカーを有する直列HBペプチド構築物は、HB-リンカー-HB-X(ここで、SEQ ID NO:3のHB変異体を含むHB-リンカー-HB構築物は、アミノ酸:
を有する);またはHB-リンカー-HB-リンカー-HB-X(ここで、SEQ ID NO:3のHB変異体を含むHB-リンカー-HB-リンカー-HBは、残基:
を有する)で示される。いくつかの態様において、直列HB構築物は同じHB構築物を含む。代替的な態様において、直列HBペプチド構築物は、HBペプチドの種々の組合せ、例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3の任意の組合せを任意の順で含むことができると想定される。例示的な例として、直列HBペプチド構築物は、SEQ ID NO:2-リンカー- SEQ ID NO:3-リンカー- SEQ ID NO:3-Xを含むことができる。いくつかの態様において、直列HBペプチド構築物は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3のみのHBペプチドの組合せを含む。
【0083】
リンカー
XへのHBペプチドの付着は、化学的修飾、ペプチドリンカー、化学的リンカー、共有結合もしくは非共有結合、またはタンパク質との融合などであるが、それらに限定されるわけではないリンカーを用いて、または当業者に公知の任意の手段によってであることができる。接続は永続的または可逆的であることができる。いくつかの態様において、いくつかのリンカーを含めて、コンジュゲート中の各リンカーおよび各タンパク質の所望の特性を活用することができる。可動性リンカーおよびコンジュゲートの溶解度を高めるリンカーが、単独でまたは本明細書に開示されているような他のリンカーと共に使用することが考えられる。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現させることによって、コンジュゲート中の1つまたは複数のタンパク質に連結させることができる。リンカーは、酸切断性リンカー、光切断性リンカーおよび感熱性リンカーであることができる。コンジュゲーションのための方法は当業者には周知であり、かつ本発明への使用のために包含される。
【0084】
いくつかの態様において、HBペプチドを、活性作用物質X(該活性作用物質は治療ペプチドまたはタンパク質である)に、ペプチドリンカーによって接続させることができる。ペプチドリンカーは、リンカーをコードするDNAを発現させることによって、コンジュゲート中の1つまたは複数のタンパク質に連結させることができる。いくつかの態様において、ペプチドリンカーはGGGである。任意で、リンカーペプチドは、例えば少なくとも約2個、3個、4個またはそれ以上のグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を含む短い可動性リンカーを用いて、HBペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端の一方または両方に接続される。いくつかの態様において、1つのこのようなリンカーはモチーフ(GGGGS)(SEQ ID NO:42)を含み、かつ1つまたは複数のコピーで存在し得る。いくつかの態様において、リンカーは正に荷電したアミノ酸残基を含む。
【0085】
本発明によると、HBペプチドは、当技術分野において公知の任意の適切な手段を介して活性作用物質に連結させることができ、例えば、米国特許第4,625,014号、第5,057,301号および第5, 514,363号を参照されたい(これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0086】
本明細書に開示されているようなHBペプチドを、X、例えば第1の融合パートナー(例えば治療タンパク質またはペプチド)とコンジュゲーションするための多種多様な方法が、当技術分野において公知である。このような方法は、例えば、米国特許第6,180,084号および米国特許第6,264,914号のHermanson (1996, Bioconjugate Techniques, Academic Press)によって記載され、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられ、これには、例えば、応用免疫学に慣用的に使用される担体タンパク質にハプテンを連結させるために使用されるための方法を含む(Harlow and Lane, 1988, "Antibodies: A laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照)。いくつかの場合、HBペプチドおよび/または治療タンパク質もしくはペプチドは、例えば、コンジュゲーション手順またはそこで使用されている化学基に依存して、コンジュゲーション時に効力または機能を失う可能性があると認識されている。しかしながら、多種多様なコンジュゲーション法があれば、当業者は、コンジュゲーションしようとするHBペプチドおよび治療ペプチドのような実体の効力または機能に影響を及ぼさないかまたは最小限にしか影響を及ぼさないコンジュゲーション法を見出すことができる。
【0087】
いくつかの態様において、HBペプチドを、架橋によって活性作用物質(X)にコンジュゲートさせることができる。架橋試薬には、グルタルアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および水溶性カルボジイミド、好ましくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)が挙げられる。当業者には公知であるように、チオエーテル、チオエステル、マレイミドおよびチオール、アミン-カルボキシル、アミン-アミン、および有機化学マニュアル、例えばElements of Organic Chemistry, Isaak and Henry Zimmerman Macmillan Publishing Co., Inc. 866 Third Avenue, New York, N.Y. 10022に列挙されているその他を含むが、それらに限定されるわけではない、任意の架橋化学反応を使用することができる。
【0088】
活性作用物質にHBペプチドをコンジュゲートさせるための他の連結アプローチには、アミノカプロン酸セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはヘテロ二官能性架橋剤、例えばカルボニル反応性およびスルフヒドリル反応性架橋剤を含むが、それらに限定されるわけではない。ヘテロ二官能性架橋試薬は、通常、タンパク質および他の巨大分子上の2つの異なる標的官能基に2工程または3工程のプロセスで結合することのできる2つの反応性基を含み、これは、ホモ-二官能性架橋剤の使用に多くの場合伴う重合の度合いを制限することができる。このような多工程プロトコールは、コンジュゲートサイズおよび成分のモル比の大きな制御を与えることができる。
【0089】
いくつかの態様において、HBペプチドは、米国特許出願公開公報第US2002/0132990号および第US2004/0023902号(これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されているような、プロタミンリンカーを使用して、核酸活性作用物質、例えばRNAi作用物質またはmiRNA作用物質にコンジュゲートされる。特に、リンカーがプロタミンまたはプロタミン様作用物質である場合、HBペプチドに会合したプロタミンの調製を記載した方法、試薬および参考文献は、米国仮特許出願番号第60/957,023号および米国特許出願第US2007/012152号および第US2010/0209440号に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、本発明における使用のために包含されるプロタミンリンカーは、米国特許第2010/0209440号に開示されたSEQ ID NO:1〜6を含む。
【0090】
本明細書に開示されているようなHBペプチドを、X、(例えば第1の融合パートナー(例えば、治療タンパク質またはペプチド)とのコンジュゲーションのための適切な方法は、例えばカルボジイミドコンジュゲーションを含む(Bauminger and Wilchek, 1980, Meth. Enzymol. 70: 151-159)。あるいは、部分を、Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7269-7273 (1996)およびNagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1794-1799 (1998)(その各々が参照により本明細書に組み入れられる)によって記載されているような標的物質に結合させることができる。使用することのできる別のコンジュゲーション法は、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化、その後、適切な反応物の還元的アルキル化およびグルタルアルデヒド架橋である。
【0091】
本明細書に開示されているようなHBペプチドをX(例えば第1の融合パートナー(例えば治療タンパク質またはペプチド)にコンジュゲートさせるための多種多様なリンカーを使用することができ、これには、例えばアミノカプロン酸セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはヘテロ二官能性架橋剤、例えばカルボニル反応性およびスルフヒドリル反応性架橋剤が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ヘテロ二官能性架橋試薬は、通常、タンパク質および他の巨大分子上の2つの異なる標的官能基に2工程または3工程のプロセスで結合することのできる2つの反応性基を含み、これは、ホモ二官能性架橋剤の使用に多くの場合伴う重合の度合いを制限する可能性がある。このような多工程プロトコールは、コンジュゲートサイズおよび成分のモル比の大きな制御を与える可能性がある。
【0092】
いくつかの態様において、リンカーは、米国特許第6,165,476号、第5,856,456号、米国特許出願第2010/0063258号および国際特許出願第WO2012/142515号(その各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されているような免疫グロブリンヒンジ領域リンカーである。
【0093】
いくつかの態様において、HB-X融合タンパク質は、米国特許出願第2010/0063258号(これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されているような無細胞系で産生されることができる。
【0094】
例示的なリンカー配列は、例えば、(i)IgA1の膜ロングアイソフォーム(malL)のテール領域:
、(ii)IgA1の膜変異体ロングアイソフォーム(余分なcysを有するmalL)のテール領域:
、(iii)IgA1の膜ショートアイソフォーム(6アミノ酸のN末端欠失を含むmals)のテール領域:
、(iv)膜結合形のIgA2のテール領域:
、(v)膜結合形のIgDのテール領域:
、(vi)膜結合形のIgEのテール領域:
、(vii)膜結合形のIgGのテール領域:
、および(viii)膜結合形のIgMのテール領域
を含む。
【0095】
他の態様において、リンカー配列は、分泌形または可溶形の免疫グロブリンのテールセグメントから得られる。例示的なリンカー配列は、例えば、(i)可溶形のIgA1のテール領域:
、(ii)可溶形のIgA2のテール領域:
、(iii)可溶形のIgDのテール領域:
、および(iv)可溶形のIgMのテール領域:
を含む。
【0096】
特定の態様において、リンカー間のジスルフィド結合の形成を可能とし、これによりHB融合タンパク質の二量体を形成するために、遊離システイン残基を含むリンカー配列を有することが望ましくあり得る。他の態様において、例えば、リンカー中の1つまたは複数のシステイン残基を、セリン、アラニンまたはグリシンのような別の残基に突然変異させることによって、リンカー配列を改変させ、遊離システイン残基を除去することが望ましくあり得る。改変させて遊離システイン残基が除去された膜結合免疫グロブリンのテール領域から得られたリンカー配列の例には:
(i)
(ここで、Xは、セリン、アラニンまたはグリシンである)(SEQ ID NO:55)、(ii)
(ここで、各Xは、独立して、セリン、アラニンまたはグリシンから選択される)(SEQ ID NO:56)、(iii)
(ここで、各Xは、独立して、セリン、アラニンまたはグリシンから選択される)(SEQ ID NO:57)、(iv)
(ここで、Xは、セリン、アラニンまたはグリシンである)(SEQ ID NO:58)、および(v)
(ここで、Xは、セリン、アラニンまたはグリシンである)(SEQ ID NO:59)が挙げられる。改変させて遊離システイン残基が除去された分泌形の免疫グロブリンのテール領域から得られたリンカー配列の例には、(i)
(ここで、Xは、セリン、アラニンまたはグリシンである)(SEQ ID NO:60)、(ii)
(ここで、Xは、セリン、アラニンまたはグリシンである)(SEQ ID NO:61)、および(iii)
(ここで、Xは、セリン、アラニンまたはグリシンである)(SEQ ID NO:63)が挙げられる。
【0097】
活性作用物質-HBペプチドとコンジュゲートさせるための治療タンパク質
本明細書に記載の組成物の重要性および有用性は、軟骨修復における組成物の適用に例示され、融合タンパク質はHB-IGF-1である。関節への外傷、例えば前十字靭帯(ACL)断裂を含むものにより、変形性関節症の発症リスクは高まる。さらに、このリスクは、外科的な機能の再建によっても回復できず(Lohmander et al., 35 Am. J. Sports Med. 1756 (2007))、これは関節損傷後の初期の炎症反応および異化反応に関連し得る。Lohmander et al., 42 Arthritis Rheum. 534 (1999); Lohmander et al., 48 Arthritis Rheum. 3130 (2003); Irie et al., 10 Knee 93 (2003)。この期間における治療的介入は、これらの異化プロセスに対抗し、軟骨修復を促進するために特に重要であり得る。
【0098】
IGF-1は、軟骨生合成を刺激するプロトタイプの循環因子である。Daughaday et al.,19 J. Clin. Endocrinol. Metab. 743 (1959); McQuillan et al., 240 Biochem. J. 423 (1986); Jones & Clemmons, 16 Endocrine Rev. 3 (1995)。それはまた、異化刺激に対抗するように作用する。Luyten et al., 267 Arch. Biochem. Biophys. 416 (1988); Tyler, 260 Biochem. J. 543 (1989)。結果として、研究者らは長年、軟骨修復のための療法としてIGF-1を使用することを探求してきた。Trippel, 43 J. Rheumatol. Suppl. 129 (1995)。IGF-1および他の成長因子の局所送達は、しなしながら、関節におけるその短い半減期によって厳しく制限されている。研究者らは、IGF-1を用いた遺伝子療法および関節軟骨への長期間の放出制御を可能とするハイドロゲルに封入されたIGF-1の選択肢を開発した。有望ではあるが、これらの技術は、臨床試験に到達するのが遅い。Evans et al., 7 Nat. Rev. Rheum. 244 (2011)。
【0099】
例示的なラットIGF-1タンパク質は、アミノ酸残基:
を有する。例えば、Tokunou et al., 22 FASEB J. 1886 (2008)参照。
【0100】
例示的なヒトIGF-1は、アミノ酸残基:
を有する。また、遺伝子ID:3489(ヒトIGF1)も参照されたい。別の例示的なヒトIGF-1(変異体)は、アミノ酸残基配列:
を有する。生物学的活性を有するヒトIGF-1の変異体(国際公開公報第92/03477号;GenBank: CAA01451.1参照)はアミノ酸残基:megpetlcgaelvdalqfvcgdrgfyfnkptgygsssrrapqtgivdeccfrscdlrrlemycaplkpaksa(SEQ ID NO:9)を有する。
【0101】
IGF-1のN末端の切断短縮、例えばN末端アミノ酸GPEの欠失は、生物学的活性を保持することが知られている。したがって、いくつかの態様において、本発明への使用に包含されるヒトIGF-1(変異体)は、アミノ酸残基配列:
を有する。
【0102】
したがって、いくつかの態様において、組換えHB-リンカー-HB-X融合タンパク質(ここで、HBは、C16R変異体であり、リンカーはGGGであり、XはSEQ ID NO:7のヒトIGF-1の変異体である)は、アミノ酸配列:
を有し;別の組換えHB-リンカー-HB-リンカー-HB-X(ここで、HBはC16R変異体であり、リンカーはGGGであり、XはヒトIGF-1(SEQ ID NO:7)の変異体である)は:
により示されることができる。
【0103】
いくつかの態様において、SEQ ID NO:7のIGF-1の変異体は、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:9で置換されることができる。いくつかの態様において、HB C16R(例えばSEQ ID NO:2)は、HB C17R(例えば、MKRKKKGKGLGKKRDPRLRKYK; SEQ ID NO:21)で置換されることができる。(SEQ ID NO:7の)完全長ヒトIGF-1とHB C17Rの例示的な融合物は、アミノ酸:
を有する。いくつかの態様において、(SEQ ID NO:7の)完全長ヒトIGF-1とHB C16Rの例示的な融合物(例えば、HB-IGF)は、アミノ酸:
を有する。
【0104】
いくつかの態様において、HB C16R(例えばSEQ ID NO:2)またはHB C17R(SEQ ID NO:21)は、HB C16K(SEQ ID NO:3)またはHB C17K
で置換されることができる。例えば、別の例において、完全長ヒトIGF-1(例えばSEQ ID NO:7)とHB C17Kの融合物は、アミノ酸:
を有する。HB C17Rに融合したSEQ ID NO:8に対応するヒトIGF-1の切断短縮形は:
のアミノ酸配列を有し、成熟ヒトIGF-1とHB C17Kの融合物は:
を有する。
【0105】
HBペプチド上の最初のN末端メチオニンを欠失した、例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3、すなわち、
を含む、前記のHB-融合タンパク質の変異体を構築することができる。
【0106】
表1は作用物質へのHBペプチドの融合の種々の態様の例を開示する。例示的な作用物質(例えばX)として、IGF-1が使用される。
【0108】
また、HBペプチドが、活性作用物質、例えばIGF-1のような活性作用物質のN末端もしくはC末端またはN末端およびC末端に位置することができることが包含される。いくつかの態様において、HBペプチドは、HBペプチドと活性作用物質との間の各移行部におけるリンカーを含むまたは含まずに、活性作用物質のN末端もしくはC末端またはN末端およびC末端に位置することができる。したがって、HBがN末端ではなくC末端に位置し、かつIGF-1タンパク質とHB配列C末端との間にリンカーが存在しているまたは存在していない、表1の多様な配列(例えばSEQ ID NO:12〜71)が包含される。追加の態様において、HBがC末端およびN末端の両方に位置し、かつIGF-1タンパク質とHB配列C末端またはN末端との間にリンカーが存在しているまたは存在していない、表1の多様な配列(例えばSEQ ID NO:12〜71)が包含される。SEQ ID NO:1〜3または30〜22の群から選択されるHBペプチドの任意の組合せを、リンカータンパク質の存在下または非存在下で、活性作用物質との任意の組合せに使用することができ、HBペプチドは、活性作用物質のN末端および/またはC末端に位置することができ、活性作用物質のN末端および/またはC末端に付着した1つまたは複数のHBペプチド-リンカーが存在することができる。例えば、いくつかの態様において、融合物またはコンジュゲートは(HB-リンカー)
n-X
m-(リンカー-HB)
o(ここで、n、mおよびoは整数であり、mは少なくとも1であり、n+oは少なくとも1である)を含むことができる。
【0109】
本発明者らは以前に、軟骨生合成を刺激するために、ラットヘパリン結合ドメインと融合させた工学操作されたラットIGF-1タンパク質を使用するアプローチを実証し、ヘパリン結合IGF-1(HB-IGF-1)融合タンパク質は、関節内注射後に軟骨に保持される(Miller et al., 62 Arth. Rheum. 3686 (2010))。ここでは、Millerが使用したような野生型ラットHBペプチドを使用する代わりに、本発明者らは、ヒト野生型HBペプチド(例えば、本明細書のSEQ ID NO:1に対応する)を改変し、驚くべきことに、本明細書に開示されたようなSEQ ID NO:2または3のHB構築物(ここで、SEQ ID NO:1のC16またはSEQ ID NO:20のC17は、システイン(C)からアルギニン(R)またはリジン(K)へと変化させている)により、(i)HB-IGF-1融合タンパク質の有意に増加した発現および収量、ならびに(ii)関心対象の組織におけるHB-融合タンパク質の増加した保持の両方がもたらされることを実証する。したがって、C16(SEQ ID NO:1)またはC17(SEQ ID NO:20)を変化させて正電荷を増強させるという野生型ヒトHBペプチドにおける新規な突然変異により、驚くべきことに、HB-X融合タンパク質の発現および産生の予期せぬ増加がもたらされた。
【0110】
したがって、本明細書は、関節内注射後のSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:3を含むHB-IGF-1融合タンパク質の動態を実証し、インビボにおける関節軟骨上のHB-IGF-1の機能的刺激を示し、かつ関節損傷により誘発されたラット関節炎モデルにおけるHB-IGF-1のインビボにおける治療効力を実証する。
【0111】
したがって、いくつかの態様において、例えばIGF-1タンパク質またはその機能的フラグメント(例えば、SEQ ID NO:6〜9または63の群からの配列から選択される任意のIGF-1変異体)であるが、それらに限定されるわけではない活性作用物質にコンジュゲートさせた、SEQ ID NO:1〜3または20〜22のHBペプチド、特にSEQ ID NO:2、3、21または22の少なくとも1つまたは組合せを含むHB-Xコンジュゲートは、本発明において軟骨に関連する疾病または疾患を処置する方法に使用するために包含される。
【0112】
本発明者らは、本明細書において、驚くべきことに、IGF-1単独(例えば、作用物質に融合していない)とは異なり、本明細書に開示されているようなHB-IGF-1融合タンパク質が関節内注射後に軟骨の細胞外マトリックスに保持されるだけでなく、依然として軟骨の細胞を刺激することができ、かつ治療に有効であることを実証する。より具体的には、インビボにおいて軟骨へのHB-IGF-1の結合の動態を決定するために、関節組織を注射後に収集し、組織抽出物をウェスタン分析によって分析した(
図1)。IGF-1の注射から2日後、収集されたどの関節組織にも残っているIGF-1は検出されなかった。これとは対照的に、HB-IGF-1は、関節および半月板軟骨の両方に保持されていたが、膝蓋腱には保持されていなかった。同様な結果が、注射の4日後にも観察された。注射から6から8日後までに、軟骨抽出物にはHB-IGF-1は依然として検出可能であったが、免疫反応性バンドは微かであり、より易変であった。これらの結果は、IGF-1とは異なり、本発明のHB-IGF-1融合タンパク質は、関節内注射から8日後まで関節軟骨に保持されることを実証する。血清中のIGF-1の薬物動態を
図2に示し、これは、関節内に注射されたHB-IGF-1が、改変されていないIGF-1と比較して、全身循環中への漏出を顕著に減少させたことを示す。
【0113】
さらに、HB-IGF-1は、インビボにおいて軟骨生合成の持続された刺激をもたらした。HB-IGF-1は、軟骨細胞外マトリックス中の硫酸コンドロイチンへのその増加した結合にも関わらず、インビボにおいて細胞内IGF-1レセプターを依然として活性化することができる。注射後に収集された半月板軟骨への硫酸塩の取り込みを測定し、食塩水のみの注射後の取り込みに対して正規化した(
図3)。注射から2日後、HB-IGF-1は、IGF-1よりも有意により高い硫酸塩取り込み率を刺激した(HB-IGF:2.10±0.52; IGF:0.49±0.11; N = 4〜5/群; P = 0.032)。注射から4日後、硫酸塩取り込みは依然として、IGF-1群よりも、HB-IGF-1群の方が有意により高かった(HB-IGF:1.82±0.09; IGF:1.05±0.21; N = 5/群; P = 0.011)。
【0114】
さらに、HB-IGF-1は、内側半月の切除後にインビボで軟骨を防御する。より具体的には、HB-IGF-1は、外科的に誘発されたラットOAモデルにおいて効果的である。ラットに内側半月断裂(MMT)手術をし、HB-IGF、IGFまたは食塩水を1週間に1回注射した。MMT手術の3週間後、変形性膝関節症(OA)の組織学的評価を実施した。主要評価項目について(
図4)、全てのOARSIスコアが、IGF-1で処置された対照動物と比較して、HB-IGF-1で処置された動物の関節において有意により低かった(HB-IGF:12.9±1.5; IGF:18.7±1.2; N = 9-10/群; P = 0.008)。HB-IGF-1処置膝とIGF-1処置膝の間の有意差がまた、表2に示されているように、全変性幅および軟骨全層におよぶ減少の2回目の分析で観察された:
【0115】
(表2)ラットMMTモデルにおける軟骨分析(結果は平均値±SEMとして示される)
【0116】
いくつかの態様において、本明細書に開示されたような組成物は、所望の部位における生理活性タンパク質の送達および選択的保持を可能とする治療融合タンパク質を提供する。HB-IGF-1は、関節軟骨および半月板に、注射から4〜8日後に、プロテオグリカンの合成を刺激するのに十分なレベルで保持された。IGF-1(HBに融合していない)は同様には保持されなかった。したがって、インビボにおけるHB-IGF-1の局所送達は、ラット半月板断裂関節炎モデルにおいて疾病の進行を減少させることができる。HB-IGF-1は、IGF-1またはビヒクルと比較して、改変OARSIスコアによって測定されるような軟骨傷害の進行を有意に減少させた。2回目の分析は、より低い軟骨変性スコアおよび全深部軟骨減少の防止を実証し、このことは、軟骨に対する全体的に有益な効果を示唆する。
【0117】
IGF-1は、軟骨のための主要なタンパク質同化増殖因子の1つであるが、IGF-1のみの関節内注射を用いて、軟骨を修復し変形性関節炎(OA)を予防する試みは成功していない。Rogachefsky et al., 1993; Schmidt et al., 2006。本発明のデータは、これらのネガティブな結果は、IGF-1自体の効果の欠失に起因するのではなく、むしろ、「遊離」IGF-1が、関節内への送達後に十分な時間、軟骨に保持されない(IGF-1は24時間未満保持された)からであることを実証する。
【0118】
さらに、これらのデータは、一般的に軟骨のための注射可能なタンパク質療法への意義を有する。将来の治療薬の開発は、標的機序が軟骨細胞への持続的な送達をもたらすために必要とされるかどうかを評価すべきである。軟骨における保持の動態は、他のモデルまたは実験において検証することができ、よって、特定の作用物質のネガティブな実験結果は、作用物質それ自体の失敗とは解釈されない。興味深いことに、FGF-18(このモデルで治療的であることが示された別の増殖因子)は、ヘパリン結合増殖因子である((Moore et al., 2005) Hu et al., 1998; Chuang et al., 2010))。
【0119】
本明細書の実施例に実証されているように、HB-PTH(しかしPTH単独ではない)もまた軟骨外植片に保持されることが実証された。
【0120】
さらに、全身薬物動態データは、IGFレベルが、インスリンレセプターへの結合を通して血糖値を変化させるに十分なほどに高くなかったことを示唆する。全身レベルの上昇が約24時間までに限定されている場合、IGFレベルの長期上昇に関する懸念は軽減される。
【0121】
さらに、本明細書で観察された予期せぬ結果は、関節および半月板軟骨の両方のHB-IGFに対する強い応答であった。半月板の電荷密度は不均一であり、関節軟骨よりも低いが、HB-IGF-1は、半月板におけるプロテオグリカンの合成を刺激するに十分なレベルで保持された。このことは、HB-IGFが、関節軟骨および半月板の両方に対して直接防御的であり得、したがって、半月板損傷後に特に効果的であり得ることを実証した。
【0122】
OA療法としてのHB-IGFは、初期段階のOAと比較して、後期段階のOAにおいて効果が低い場合がある。なぜなら、HB-IGFは、軟骨における長期保持のためにマトリックスにおいて硫酸プロテオグリカンの存在を必要とし得るからである。しかしながら、HB-IGFは、以前健康であった関節への急性外傷性関節損傷の場合に効果的で新規な軟骨保護療法として使用されることができる。
【0123】
他の態様において、HB-融合タンパク質は、線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)またはその機能的部分を含む。FGFファミリーメンバーは、広域な分裂促進活性および細胞生存活性を有し、かつ多種多様な生物学的プロセス(胚発達、細胞増殖、形態形成、組織修復を含む)に関与している。したがって、例えば、成熟ヒトFGF-18を、HB-融合タンパク質に組み込むことができ、FGF-18はアミノ酸配列:
(SEQ ID NO:
31)を有する。また、遺伝子ID:8817を参照されたい。HBを、FGF-18(例えば、HB-FGF、FGF-HB、HB-リンカー-FGF、またはFGF-リンカー-HB)またはFGF-18の部分、例えば、成熟FGF-18の残基1-169のN末端またはC末端に融合させることができる。
【0124】
いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、副甲状腺ホルモン(PTH)またはその一部を含む。PTHは、カルシウムレベルの維持および骨恒常性に関与し、かつ関節損傷後の軟骨の減少を防ぎ得る。例えば、Harrington et al., 290 Anatom. Rec. 155 (2007)を参照されたい。したがって、例えば、PTHは、アミノ酸配列:
を有する、成熟PTHであり得る。
【0125】
いくつかの態様において、HBを、PTHまたはPTHの部分、例えば成熟PTHのアミノ酸残基1〜31、1〜34、1〜37、1〜38、1〜44または1〜84のアミノ末端またはカルボキシ末端に融合させることができる。いくつかの態様において、PTHの部分は、
に対応するN末端1〜34アミノ酸のフラグメント(PTH(1-34)とも称される)であり得る。いくつかの態様において、HBペプチドに融合させたPTHの部分は、以下のアミノ酸配列から選択され得る:PTH(1-31):
。
【0126】
本明細書の実施例において実証されているように、HB-PTH(1-34)(PTH(1-34)単独ではない)もまた、軟骨外植片において保持されることが実証された。いくつかの態様において、HB-PTH(1-34)融合タンパク質は、PTH(1-34)-リンカーHB融合タンパク質であり、アミノ酸:
を含む。
【0127】
さらに、PTHは、PTHの類似体、例えば環状PTH-(1-31)であり得る。組換えヒトPTH(1-34)は現在、Eli Lily & Co (Indianapolis, IN)によってFORTEO(登録商標)(テリパラチド[rDNA起源]注射液)として市販されている。OSTABOLIN-C(商標)、(ZT-031;環状PTH-(1-31))は、Zelos Therapeutics, Inc. (West Conshohocken, PA)による臨床試験において研究されている。
【0128】
さらに他の態様において、HB-融合タンパク質は、PTHrPまたはその一部を含む。PTHrPは、損傷後に新たに再生された軟骨の軟骨保護に関与している。Wang et al., 19 Osteoarth. Cartil. 213 (2011); Sampson et al., Ann. Meeting Am. Soc. Bone Mineral Res. (2009)。成熟PTHrPはアミノ酸:
を有する。また、PLHLH、遺伝子ID:5744も参照されたい。PTHrP HB融合タンパク質は、例えば、PTHrP-リンカー-HB; PTHrP(1-34)-リンカー-HB; PTHrP(1-36)-リンカー-HB; PTHrP(1-37)-リンカー-HB; PTHrP(1-40)-リンカー-HBなどのように並べられ得る。
【0129】
PTHrP-HB融合タンパク質の別の例は、HBに融合させることのできるPTHrPの合成部分
、(ここで、NはAib(2-アミノイソ酪酸)である)(SEQ ID NO:39))、例えば、
(ここで、NはAib(2-アミノイソ酪酸)である)を含む。このPTHrP類似体または誘導体におけるAibは、α-アミノイソ酪酸(2-アミノイソ酪酸、α-メチルアラニンまたは2-メチルアラニンとも呼ばれる)を示す。このPTHrP関連ポリペプチドは、合成的にまたは組換え手段によって、またはその組合せによって製造されることができる。Wang et al., 292 Science 498 (2001); Ryu & Schultz, 3 Nat. Methods 263 (2006)を参照されたい。
【0130】
記載されているように、本発明の組成物は、HB-X2または2つ以上の異なるHB-X融合タンパク質などを含むことができ、ここで、Xは2つの異なる活性作用物質を表す。したがって、例えば、組成物は、例えば、軟骨を再生するための、または損傷後に再生された軟骨を安定化させるための方法などに使用するために、HB-PTHrPおよび/またはHB-PTH、および/またはHB-IGF-1の任意の組合せを含むことができる。
【0131】
さらに別の例示的なHB融合タンパク質は、HBをIL1RA(インターロイキン-1レセプターアンタゴニスト)と融合させる(例えばHB-リンカー-IL1RAまたはIL1RA-リンカー-HB)。IL1RAは、インターロイキン1サイトカインファミリーのメンバーである。IL1RAは、免疫細胞、上皮細胞および脂肪細胞を含む様々な種類の細胞によって分泌され、かつIL1βの炎症誘発作用の天然阻害剤である。このタンパク質は、インターロイキン1α(IL1A)およびインターロイキン1β(IL1B)の活性を阻害し、かつ多種多様なインターロイキン1関連免疫応答および炎症応答を調節する。Arend, 13 Cytokine Growth Factor Rev. 323 (2002)を参照されたい。いくつかの態様において、HBは、例えば、軟骨および/または半月板の傷害または疾病の処置に使用するための、あるいは、眼または炎症の状態の処置のための、IL-1/IL-1RAキメラ(例えば、Hou et al., PNAS,2013, 110(10):3913-8に開示されていたような)に融合している。成熟IL1RAは、アミノ酸配列:
を有する。また、遺伝子ID:3557を参照されたい。
【0132】
本発明の別の態様において、HB融合物は、HGMB2(HMG2とも呼ばれる)に融合したHBを含む。関節軟骨は、ほぼ摩擦のない関節動作および機械負荷の分散を可能とする生体力学特性を与える組織である。軟骨は、単一細胞系統から構成されるが、様々な軟骨層における細胞の構成、表現型および機能の相違が認識されている。表層帯(SZ)が最も独特である。SZ細胞は、プロテオグリカン-4(PRG4)とも呼ばれるラブリシン、または重要な関節潤滑剤である表層帯タンパク質(SZP)を産生し;IL-1のような異化性サイトカインによる刺激により応答性であり;かつ、間葉系幹細胞マーカーを発現する。HMGB2の発現は、関節軟骨のSZに限定され、HMGB2とWnt/β-カテニン経路の間の相互作用はSZの維持を調節し、軟骨細胞の生存を促進する。重要なことには、ヒトおよびマウスにおける関節の加齢により、OA様変化の開始に相関したHMGB2の発現は減少する。Taniguchi et al., 106 PNAS 16817 (2009)。ヒトHMG2は以下のアミノ酸配列を有する(UniProtKB/Swiss-Prot: P26583.2;また遺伝子ID: 3148も参照されたい):
(SEQ ID NO:
82)。
【0133】
いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、ソマトスタチン(SST)またはその機能的フラグメントもしくは類似体を含む(例えば、HBペプチドは、小分子オクトレオチド(商品名SANDOSTATIN(登録商標))、パシレオチド(SOM230、商標名SIGNIFOR(登録商標))、ランレオチド(商標名:SOMATULINE(登録商標))にコンジュゲートされることができる)。SSTまたはその機能的フラグメントもしくは変異体もしくは類似体を含む、このようなHB-融合タンパク質は、軟骨および/または半月板の欠損および障害ならびに抗炎症状態の処置に使用することができる。ヒトSSTは、以下のアミノ酸配列を有する(UniProtKB/Swiss-Prot: Hs.12409;また、遺伝子ID: 6750も参照されたい):
。
【0134】
いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)またはその機能的フラグメントもしくは類似体を含む。SSTまたはその機能的フラグメントもしくは変異体もしくは類似体を含む、このようなHB-融合タンパク質は、軟骨および/または半月板の欠損および障害ならびに抗炎症状態の処置に使用することができる。ヒトプレプロタンパク質ANGPTL3は、以下のアミノ酸配列を有する(UniProtKB/Swiss-Prot: Q9Y5C1;また、遺伝子ID: 27329またはNP_055310.1"も参照されたい):
。
【0135】
いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)の機能的フラグメントを含む。ANGPTL3の機能的フラグメントには以下に対応する、ヒトANGPTL3(241-455):
;ヒトANGPTL3(225-455):
;ヒトANGPTL3(207-455):
が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0136】
HBが会合する脳プロテオグリカンは、中枢神経系への治療剤の選択的送達のための手段を提供する。例えば、Brandtlow & Zimmerman, 80 Physiol. Rev. 1267 (2000)を参照されたい。本明細書の実施例に実証されているように、HB-IGF-1融合タンパク質は、脊髄に保持される。したがって、いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、脳および脊髄への送達のための活性作用物質を含むことができる。
【0137】
いくつかの態様において、HB-融合タンパク質は、IL-10を含む。抗炎症性サイトカインであるIL-10は、報告によると、多発性硬化症(MS)を有する対象において有益である;抗炎症性サイトカインIL-10の誘発は、MS患者において臨床的な利点を与えた。Ersoy et al., 12 Eur. J. Neurol. 208 (2005)。したがって、別の態様は、HB-X融合物(ここで、XはIL-10またはその一部である)を提供する。
【0138】
あるいは、Xが組換えHB-X融合タンパク質の治療タンパク質部分である場合、Xは、神経栄養因子、例えばニューロトロフィン、例えば神経成長因子(NGF;遺伝子ID:4803)、脳由来神経栄養因子(BDNF、遺伝子ID:627)、ニューロトロフィン-3(NT-3、遺伝子ID:4908)、ニューロトロフィン-4(NTF4、遺伝子ID:4909)、毛様体神経栄養因子(CNTF、遺伝子ID:1270)、中脳アストロサイト由来神経栄養因子(MANF、遺伝子ID:7873)、または脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF、遺伝子ID:441549);グリア細胞株由来神経栄養因子ファミリーリガンド、例えばグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF、遺伝子ID:2668)、ニュールツリン(NRTN、遺伝子ID:4902)、アルテミン(ARTN、遺伝子ID:9048)、またはパーセフィン(PSPN、遺伝子ID:5623)から選択されることができる。
【0139】
いくつかの態様において、活性作用物質Xは、神経新生サイトカイン、例えばインターロイキン-6(IL-6、遺伝子ID:3569)、インターロイキン-11(IL11、遺伝子ID:3589)、インターロイキン-27(IL27、遺伝子ID:246778)、白血病抑制因子(LIF、遺伝子ID:3976)、毛様体神経栄養因子(CNTF、遺伝子ID:1270)、カルジオトロフィン1(CTF1、遺伝子ID:1489)、ニューロポイエチン(マウスのNPオルソログ、ヒト偽遺伝子、遺伝子ID:647088)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLGF1、遺伝子ID:23529)、または線維芽細胞増殖因子2(FGF2、遺伝子ID:2247)から選択されることができる。
【0140】
いくつかの態様において、活性作用物質Xは、抗炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン-4(ILR4、遺伝子ID:3565)およびインターロイキン-10(ILR10、遺伝子ID:3586)から選択されることができる。
【0141】
いくつかの態様において、活性作用物質Xは、神経保護剤、例えばニューレグリン-1(NRG1、遺伝子ID:3084)および血管内皮増殖因子(VEGFA、遺伝子ID:7422、VEGFB、遺伝子ID:7423、VEGFC、遺伝子ID:7424)から選択されることができる。
【0142】
あるいは、いくつかの態様において、活性作用物質Xは、他の治療タンパク質、例えばCEREBROLYSIN(登録商標)(FPF-1070ブタ脳ペプチド調製物、Ever Neuro Pharma, Austria)、増殖分化因子11(GDF11、遺伝子ID:10220)、ストロマ細胞由来因子-1(SDF1、またCXCL12、遺伝子ID:6387)、ミオスタチン(MSTN、遺伝子ID:2660)、副甲状腺ホルモン(PTH、遺伝子ID:5741);副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrPまたはPLHLH、遺伝子ID:5744);インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL1RN、遺伝子ID:3557);線維芽細胞増殖因子18(FGF18、遺伝子ID:8817);高移動度グループボックス2(HMGB2、遺伝子ID:3148);治療抗体またはその一部、例えばRemicade(登録商標)(インフリキシマブ、抗TNF-α、Janssen Biotech, Horsham, PA)、Humira(登録商標)(アダリムマブ、抗TNF、Abbot Labs., N. Chicago, IL)またはEnbrel(登録商標)(エタネルセプト、ヒト免疫グロブリンG1のFc成分に融合した可溶性組換えTNFレセプター2、Amgen, Thousand Oaks, CA)から選択されることができる。
【0143】
いくつかの態様において、活性作用物質Xは、グルココルチコイドレセプター、例えば核内レセプターサブファミリー3、C群、メンバー1(NR3C1、遺伝子ID:2908)であることができる。
【0144】
いくつかの態様において、活性作用物質Xは、前記の治療タンパク質のいずれかの一部、変異体、類似体または誘導体であることができる。
【0145】
活性作用物質-治療小分子
さらに他の態様において、HBは、治療小分子の選択的送達を行なうために利用されることができる。例えば、小分子TR2-01829(PRO1の最適な類似体)は軟骨形成特性を有する。より具体的には、軟骨形成経路の下でMSCの分化を指令することが示された小分子開発候補であるPRO1または最適な類似体は、OAのための再生療法に有用であることを証明し得る。さらに、2-ヒドロキシ-N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド(HS-Cf)は、TNF-α-刺激ブタ軟骨細胞におけるNO産生およびiNOS発現の強力な阻害剤であった。TNF-αにより誘発されたIRF-1活性をダウンレギュレーションすることによって(これは軟骨細胞の活性化を抑制し、軟骨の破断を防止した)、HS-Cfは、OA療法の可能性ある疾病修飾薬物であり得る。Liu et al., 31 J. Clin. Immunol. 1131 (2011)。インビトロおよびマウスでの研究は、小分子カルトゲニンが変形性関節症の処置を助けることもできることを示唆する。5(18) SciBX (2012年5月3日)。
【0146】
小分子を、組成物のHB部分に、公知の任意の数のアプローチによって連結させることができる。多くの二価または多価連結剤が、タンパク質分子を他の分子に結合させるのに有用である。例えば、代表的なカップリング剤は、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンのような有機化合物を含むことができる。この列挙は、当技術分野において公知である様々なクラスのカップリング剤の網羅を意味するのではなく、むしろ、より一般的なカップリング剤の例である。Killen & Lindstrom, 133 J. Immunol. 1335 (1984); Jansen et al., 62 Imm. Rev. 185 (1982)を参照されたい。いくつかの態様において、文献に記載された架橋試薬物質は、本明細書に開示されたようなHB組成物に使用するために包含される。例えば、Ramakrishnan, et al., 44 Cancer Res. 201 (1984)(これは、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記載する);Umemoto et al.の米国特許第5,030,719号(これは、オリゴペプチドリンカーにより抗体に結合させたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載する)を参照されたい。特定のリンカーには、(a)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド塩酸塩;(b)SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)-トルエン(Pierce Chem. Co.、Cat.(21558G));(c)SPDP(スクシンイミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co.、Cat#21651G):(d)スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co.、Cat.#2165-G);および(f)EDCにコンジュゲートさせたスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミド:Pierce Chem. Co.、Cat.#24510)が挙げられる。
【0147】
上記した連結または連結剤は、異なる特質を有する成分を含み、したがって、異なる物理化学的特性を有するコンジュゲートが得られる。例えば、アルキルカルボン酸のスルホ-NHSエステルは、芳香族カルボン酸のスルホ-NHSエステルよりも安定である。NHS-エステル含有リンカーは、スルホ-NHSエステルよりも溶解度が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体障害を有するジスルフィド結合を含み、かつ安定性の増加したコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド結合は、一般的に、他の結合よりも安定性が低い。なぜなら、ジスルフィド結合はインビトロで切断されることができ、その結果、利用可能なコンジュゲートはより少なくなるからである。スルホ-NHSは、特に、カルボジイミドカップリングの安定性を増強させ得る。カルボジイミドカップリング(例えばEDC)は、スルホ-NHSと共に使用される場合、カルボジイミドカップリング反応のみよりも、加水分解に対してより抵抗性であるエステルを形成する。
【0148】
本明細書に開示されているような方法および組成物に使用するための例示的な架橋分子には、表3および4に列挙されるものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0149】
(表3)例示的なホモ二官能性架橋剤(同じ種類の反応性基をいずれかの末端に有するホモ二官能性架橋試薬。試薬は、試薬がどのような化学基に架橋するか(左の列)およびその化学組成(中央の列)によって分類されている。製品は、長さが長くなる順に各セル内に列挙されている)。
【0150】
(表4)例示的なヘテロ二官能性架橋剤(異なる反応性基をいずれかの末端に有するヘテロ二官能性架橋試薬。試薬は、試薬がどのような化学基に架橋するか(左の列)およびその化学組成(中央の列)によって分類されている。製品は、長さが長くなる順に各セル内に列挙されている)。
【0151】
小分子、および該当する場合HB-X組成物の、融合タンパク質は、プロドラッグを含むことができる。「プロドラッグ」という用語は、このようなプロドラッグが哺乳動物対象に投与されると、活性親薬物をインビボで放出する任意の化合物を指す。化合物のプロドラッグは、典型的には、修飾によりインビボで切断されて親化合物が放出され得るように、化合物中に存在する1つまたは複数の官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグの例には、ヒドロキシル官能基のエステル(例えば酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体)およびカルバメート(例えばN,N-ジメチルアミノカルボニル)、ならびに、アミノ官能基のアミド、カルバメートおよび尿素誘導体などが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。プロドラッグ形は、多くの場合、溶解度、組織適合性、または哺乳動物生物における遅延放出の利点を与える。Bundgard, DESIGN PRODRUGS, 7, 21 (Elsevier, Amsterdam, 1985); Silverman, ORGANIC CHEMISTRY DRUG DESIGN & DRUG ACTION, 352 (Academic Press, San Diego, CA)を参照されたい。さらに、本発明のプロドラッグ誘導体は、バイオアベイラビリティを増強させるために当業者には公知の他の特徴と組み合わせ得る。
【0152】
処置の方法におけるHB-Xコンジュゲート
本発明の別の局面は、対象に有効量のHB-Xコンジュゲート、例えば、HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
n(ここで、Xは活性作用物質である)を含む組換え融合タンパク質を投与することを含む、軟骨に関連する状態(例えば傷害または疾病)を処置する方法に関する。いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のための活性作用物質は治療タンパク質である。いくつかの態様において、治療タンパク質は、副甲状腺ホルモン(PTH);副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP);インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA);線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)、抗神経成長因子抗体;線維芽細胞増殖因子9(FGF-9);肝細胞増殖因子;TGFβ-スーパーファミリータンパク質、例えばTGFβ、TGFβ3、BMP2またはBMP7;またはその一部、類似体、誘導体もしくは機能的フラグメントから選択される。
【0153】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートは、少なくとも1つの副甲状腺ホルモン(PTH)治療タンパク質、例えば、SEQ ID NO:32〜37の群から選択される任意のタンパク質またはその機能的フラグメントから選択されるものを含むことができる。
【0154】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートは、少なくとも1つの治療タンパク質、例えば、IGF-1またはその変異体もしくは機能的フラグメント(SEQ ID NO:6〜9, SEQ ID NO:63); FGF-18(SEQ ID NO:
31); PTHまたはその変異体もしくは機能的フラグメント(SEQ ID NO:32〜37); PTHrP(SEQ ID NO:38, 39); IL-1 RAまたはIL-1/IL-1 RAキメラ(SEQ ID NO:40); HMG(SEQ ID NO:
82); SST(SEQ ID NO:72): ANGPTL3またはその変異体もしくは機能的フラグメント(SEQ ID NO:73〜76); -41, SEQ ID NO:63およびSEQ ID NO:73〜76またはその機能的フラグメントの群から選択される任意のタンパク質またはその機能的フラグメントから選択されるものを含むことができる。
【0155】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートは、例えば、SSTアゴニスト、例えばオクトレオチド、パシレオチドまたはランレオチドであるが、それらに限定されるわけではない、少なくとも1つの小分子を含むことができる。いくつかの態様において、IGF-1タンパク質またはその機能的フラグメントもしくは変異体(例えばSEQ ID NO:6〜9またはSEQ ID NO:63)を含む本明細書に開示されているようなHB-Xコンジュゲートは、低身長症および/または遅延した成長を有する関連状態を有する対象の処置に使用することができる。
【0156】
本発明の別の局面は、対象に、ある量のHB-Xコンジュゲート、例えばHB-Xnまたは(HB-リンカー)n-Xn(ここで、Xはグルココルチコイドレセプターである)を含む組換え融合タンパク質を投与すること、およびさらにコルチコステロイドに同時にまたは別々に投与することを含む、軟骨に関連する状態(例えば傷害または疾病)を処置する方法に関する。
【0157】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態は、関節軟骨欠損(破断または剥離を含む)、半月板欠損(部分的または完全な断裂を含む)、変形性関節症、外傷性軟骨破断もしくは剥離、半月板および/または膝蓋腱に対する疾病もしくは傷害、強直性脊椎炎、関節包炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、またはX連鎖低リン血症性くる病である。
【0158】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態は、軟骨の破断または剥離、半月板の欠損(部分的または完全な断裂を含む)、あるいは半月板および/または膝蓋骨に影響を及ぼす傷害または疾病である。いくつかの態様において、軟骨に関連する状態は、以下の群からの疾病のいずれかまたは組合せから選択される:変形性関節症(本明細書においては「OA」とも称され、これは軟骨の崩壊から生じる)、例えば、変形性膝関節症、変形性指関節症、変形性手関節症、変形性股関節症、変形性足首関節症、変形性肘関節症、変形性足指関節症、変形性肩関節症、および脊椎関節症、外傷性軟骨破断または剥離、強直性脊椎炎、関節胞炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、軟骨疾患、軟骨肉腫、軟骨軟化症、多発性軟骨炎、再発性多発性軟骨炎、骨頭すべり症、離断性骨軟骨炎、軟骨異形成、肋軟骨炎、X連鎖低リン血症性くる病、骨軟骨種、軟骨肉腫(悪性)、変形性関節症感受性(1〜6型)、脊椎症、骨軟骨症、原発性軟骨肉腫、軟骨異形成、ティーツェ症候群、フランソア皮膚軟骨角膜ジストロフィー、多発性骨端異形成(1〜5型)、精神遅滞を伴う耳介軟骨石灰化、筋消耗および骨変化、手根足根骨軟骨腫症、軟骨無形成症、軟骨石灰化症(1〜2型)、遺伝性軟骨腫症、軟骨異形成症(性分化疾患)、軟骨腫、軟骨無発生症(1A、1B、2、3、4、ランガーサルディーノ型)、軟骨無発生症-軟骨低発生症II型、骨発生不全症(1、2およびIII型)、濃縮軟骨無形成、偽性軟骨異形成症、家族性指骨関節症、捻曲性異形成症、軟骨骨異形成症-腎炎、鼻翼軟骨コロボーマ-内眼角外方偏位、鼻翼軟骨低形成-コロボーマ内眼角外方偏位、ピエール・ロバン症候群-胎児軟骨異形成、異常脊椎内軟骨腫症、軟骨無形性症(局所的)-異形成腹筋、離断性骨軟骨炎、家族性関節軟骨石灰化症、気管気管支軟化症、軟骨炎、軟骨骨異形成症、マフッチ症候群、ジェキア・コズロウスキー骨格形成異常、軟骨異栄養症、頭蓋骨関節症、ティーツェ症候群、股関節形成不全-内軟骨腫-外軟骨腫、ベッセル・ハーゲン病、軟骨腫症(良性)、内軟骨腫症(良性)、アパタイト結晶沈着に因る軟骨石灰化症、マイエンベルグ・アルトヘル・ユーリンガー症候群、内軟骨腫症−低身長症−聴覚消失、アストレー・ケンダル症候群、滑膜骨軟骨腫症、家族性関節軟骨石灰化症、発達遅延と黒色棘細胞症を伴う重度な軟骨無形成症、軟骨石灰化症、ケウテル症候群、スタネスク症候群、線維軟骨形成症、軟骨低形成症。
【0159】
軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを用いる処置を受け入れられる対象は、関節疾患または軟骨の減少もしくは傷害の1つまたは複数の症状(関節腫脹、関節痛、関節発赤、関節弛緩、軽度な関節炎の症状、出血性関節滲出、炎症性関節滲出、関節過剰可動性、非炎症性関節滲出または他の種類の群からの1つまたは複数の症状を含む)を有する対象から選択される。
【0160】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物の投与のために選択される対象は、家族性離断性骨軟骨炎を有する対象であり、該対象はACAN遺伝子の突然変異を有する。ACAN遺伝子は、軟骨の成分であるアグリカンタンパク質を作製する指令を与える。アグリカンは、軟骨の他の成分に付着し、軟骨にその強さを与える分子のネットワークを構築する。加えて、アグリカンは、水分子を引き付け、かつ軟骨にそのゲル様の構造を与える。この特徴により軟骨は圧迫に抵抗することが可能となり、骨および関節は防御される。家族性離断性骨軟骨炎に関連するACAN遺伝子の突然変異により、軟骨の他の成分に付着できない異常なタンパク質が生じる。その結果、軟骨は異常で組織が破壊され弱くなり、家族性離断性骨軟骨炎に特徴的な病変および変形性関節症に至る。
【0161】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物の投与のために選択される対象は、例えば閉経周辺期および閉経後の状態に関連する、骨減少に関連する疾病または骨粗鬆症を有する。また、ページェット病、骨腫瘍に関連する高カルシウム血症、およびその病因によって以下に分類されるような全種類の骨粗鬆症:原発性骨粗鬆症、高カルシウム血症、退行期骨粗鬆症、I型または閉経後骨粗鬆症、II型または老人性骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症、突発性若年性骨粗鬆症、続発性骨粗鬆症、内分泌異常、甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、卵巣無形成、またはターナー症候群、副腎皮質機能亢進症、またはクッシング症候群、副甲状腺機能亢進症、骨髄異常、多発性骨髄腫および関連疾患、ならびに全身性肥満細胞症、播種性癌骨粗鬆症、ゴーシェ病、結合組織異常、骨形成不全症、ホモシスチン尿症、エーラース・ダンロス症候群、マルファン症候群、メンケス症候群、種々の原因の不動性または無動状態、スデック萎縮症、慢性閉塞性肺疾患、慢性アルコール依存症、慢性的なヘパリン投与および慢性的な抗痙攣薬の摂取の処置および予防も包含される。
【0162】
本明細書に開示されているような軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物を用いる処置を受け入れられる患者は、疾病のリスクがあるが、症状を示していない患者(例えば、無症候性患者)、ならびに、現在症状を示している患者を含む。OAまたは骨粗鬆症の場合、実質的に誰でも、特に女性が、十分に長く生きれば、OAおよび骨粗鬆症を患うリスクがある。
【0163】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物の投与のために選択される対象は、軟骨に関連する疾病または疾患、例えばOAの遺伝的リスクを有することが知られている対象である。いくつかの態様において、患者は、女性であり、例えば閉経後の女性であるか、または年齢が少なくとも65歳の女性であるか、または以前骨折したことがあるか、もしくは代謝性骨疾患、例えば骨粗鬆症に罹患したことがある親戚を有する患者である。当業者には一般的に公知である方法を使用して、患者を、代謝性骨疾患を発症する増加したリスクを有すると同定することができる。
【0164】
いくつかの態様において、軟骨に関連する状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物の投与のために選択される対象は、以下の状態の少なくとも1つを有する;関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ(JRA)、乾癬性関節炎、ライター症候群(反応性関節炎)、クローン病、潰瘍性大腸炎およびサルコイドーシス(Orcel, et al., Bone demineralization and cytokines; Rev Rhum Mal Osteoartic.1992; 59:16S-22S; Brown, et al., The radiology of rheumatoid arthritis. Am Fam Physician. 1995. 52:1372-80; De Vos, et al., Bone and joint diseases in inflammatory bowel disease. Aliment Pharmacol Ther. 1998;12(5):397-404; Falcini, et al., The primary role of steroids on the osteoporosis in juvenile rheumatoid patients evaluated by dual energy X-ray absorptiometry. J Endocrinol Invest. 1996;19(3):165-9; Scutellari, et al., Rheumatoid arthritis: sequences. Eur J Radiol. 1998: Suppl 1:S31-8)。
【0165】
関節リウマチは、骨量の減少に関連している(Cortet, et al., Evaluation of bone mineral density in patients with rheumatoid arthritis. Influence of disease activity and glucocorticoid therapy. Rev Rhum Engl Ed. 1997 July-Sep. 30, 1997; 64(7-9):451-8)。炎症性関節炎の典型的な変化は、傍関節性骨粗鬆症、軟骨減少、および皮質骨または辺縁骨の浸食を含む(Lawson, et al., Lyme arthritis: radiologic findings. Radiology. 1985;154(1):37-43; Grassi, et al., The clinical features of rheumatoid arthritis. Eur J Radiol. 1998;1:S18-24)。
【0166】
いくつかの態様において、慢性炎症性関節症、例えば関節リウマチ、大量のサイトカインを産生しこれにより局所的な骨吸収の増加および傍関節骨破壊がもたらされる滑膜細胞を有する対象が、軟骨関連状態の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物の投与のために選択される(Orcel, P et al., Bone demineralization and cytokines. Rev Rhum Mal Osteoartic. 1992; 59(6 Pt 2):16S-22S)。
【0167】
本発明の別の局面は、対象に、ある量のHB-Xコンジュゲート、例えば、HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
n(ここで、Xは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、中脳アストロサイト由来神経栄養因子(MANF)、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、パーセフィン(PSPN)、インターロイキン-6、インターロイキン-11、インターロイキン-27、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子、カルジオトロフィン1、ニューロポイエチン、カルジオトロフィン様サイトカイン、FPF-1070、線維芽細胞増殖因子2、ニューレグリン-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはその機能的部分、類似体もしくは誘導体から選択される治療タンパク質である)を含む組換え融合タンパク質を投与することを含む、神経学的状態(例えば疾患または疾病)を処置する方法に関する。
【0168】
いくつかの態様において、処置しようとする神経学的状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳損傷、脊髄損傷、末梢神経変性、脳卒中、ハンチントン病、ピック病、糖尿病性神経障害、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、プリオン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、遺伝性痙性対麻痺、脊髄小脳萎縮症、フリートライヒ運動失調症、アミロイドーシス、またはシャルコー・マリー・トゥース症候群から選択される神経学的疾病の群から選択される。
【0169】
したがって、いくつかの態様において、以下の疾病および疾患(アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、血管性認知症、加齢性および軽度認知障害を含むが、それらに限定されるわけではない)の少なくとも1つを有する対象が、神経学的疾病または疾患の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物の投与のために選択される。いくつかの態様において、処置のために選択される対象は、アルツハイマー病およびパーキンソン病からなる群より選択される神経変性疾患を有する。
【0170】
いくつかの態様において、高浸透圧症;酸性pH;熱傷性脳症;鉛脳症;自己免疫性脳炎;多発性硬化症;虚血後再灌流;急性高血圧;マイクロ波照射;肝性脳症:てんかん発作;腫瘍;発達;循環血流量過多症;低体温症;照射後;高圧状態;髄膜炎;リンパうっ滞性脳症;ウェルニッケ・コルサコフ症候群;家族性精神遅滞および筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような神経学的疾患を有する対象が処置のために選択される。
【0171】
本明細書に開示されているような神経学的疾病または疾患の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物を用いる処置を受け入れられる対象は、疾病のリスクがあるが、症状を示していない対象(例えば、無症候性対象)、ならびに、現在症状を示している対象を含む。アルツハイマー病の場合、実質的に誰もが、十分に長く生きれば、アルツハイマー病に罹るリスクがある。それゆえ、本発明の方法は、対象患者のリスクを全く評価することなく、一般集団に予防的に投与することができる。本明細書に開示されているような方法は、アルツハイマー病の公知の遺伝的リスクを有する個体に特に有用である。このような個体は、この疾病を経験した親戚を有する個体、および、本明細書に開示されているような遺伝子的または生化学的マーカーの分析によってリスクが決定された個体を含む。
【0172】
アルツハイマー病(AD)は、老人性認知症に至る進行的な疾病である。一般的には、Selkoe, TINS 16, 403-409 (1993); Hardy et al., WO 92/13069; Selkoe, J. Neuropathol. Exp. Neurol. 53, 438-447 (1994); Duff et al., Nature 373, 476-477 (1995); Games et al., Nature 373, 523 (1995)を参照されたい。大まかに言って、疾病は2つのカテゴリーに該当する:高齢(65歳以上)に起こる後期発症、および老人期よりかなり前、すなわち35歳から60歳までの間に発症する早期発症。両方のタイプの疾病において、病態は同じであるが、β異常は、より若い年齢で始まった場合にはより重度かつより広域となる傾向がある。疾病は、ニューロンの減少の直接的な結果としてMRI画像で見られるような頭蓋円蓋部から離れた場所での有意な脳の萎縮によって、および老人斑および神経原線維変化という2種類の脳の巨視的病変によって、巨視的レベルで特徴付けられる。老人斑は、直径150μm以下の組織崩壊したニューロンプロセスおよび細胞外アミロイド沈着(これは、典型的には中心に集中し、脳組織切片の顕微鏡による分析によって巨眼的に見える)を含む領域である。神経原線維変化は、2つの線維が互いに対でねじれたものからなるタウタンパク質の細胞内沈着である。
【0173】
アルツハイマー病リスクの遺伝子マーカーは、APP遺伝子の突然変異、特にそれぞれハーディおよびスウェーデン突然変異と称される717位ならびに670位および671位における突然変異を含む(前記Hardy、TINS参照)。他のリスクマーカーは、プレセニリン遺伝子、PS1およびPS2、ならびにApoE4の突然変異、アルツハイマー病の家族歴、高コレステロール血症またはアテローム性動脈硬化症である。現在アルツハイマー病を患っている対象は、特徴的な認知症、ならびに、上記したリスク因子の存在から認識されることができる。さらに、アルツハイマー病を有する対象を同定するための多くの診断検査が利用可能である。これらは、CSFタウおよびAβ42のレベルの測定を含む。上昇したタウおよび増加したAβ42レベルは、アルツハイマー病の存在を示す。アルツハイマー病を患っている個体はまた、MMSEまたはADRDA基準によって診断されることができる。分析のための組織試料は、典型的には、患者からの血液、血漿、血清、粘液、または脳脊髄液である。試料は、任意の形態のAβペプチド、典型的にはAβ42に対する免疫応答の兆候について分析される。免疫応答は、例えば、Aβペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞の存在から決定され得る。Aβに特異的な抗体を検出するELISA法は、当業者には一般的に公知である。
【0174】
無症候性患者において、処置は、任意の年齢(例えば10、20、30歳)で開始されることができる。しかしながら、通常、患者が40、50、60または70歳に達するまで処置を開始する必要はない。処置は、典型的には、ある期間におよぶ複数回の投与量を含む。処置は、CSFにおけるAβペプチドの存在をアッセイすることによってモニタリングされることができる。AβペプチドがCSFに依然として存在すれば、本明細書に開示されているような神経変性疾患のためのHB-Xコンジュゲートを用いての追加の処置、および/またはアルツハイマー病のための追加の療法の処置が推奨される。ダウン症候群の可能性がある患者の場合、処置は、出産前に治療剤を母体にまたは生誕後すぐに投与することによって開始されることができる。
【0175】
いくつかの態様において、本明細書に開示されているような神経学的疾病または疾患の処置のためのHB-Xコンジュゲートを含む組成物はまた、一般的に他の神経変性疾患または認知障害疾患の処置に有用である:例えば、認知症、うつ病、錯乱、クロイツフェルトヤコブ病または狂牛病、ハンチントン病、運動協調性の低下、多発性硬化症、パーキンソン病、ピック病および他の脳蓄積障害(例えばアミロイドーシス、ガングリオドーシス、脂質蓄積障害、ムコ多糖症)、失神および血管性認知症。したがって、処置は、無症候的に神経変性疾患に患った対象に向けられることができ;それは認知機能を改善することができる。
【0176】
本発明の別の局面は、対象にある量のHB-Xコンジュゲート、例えばHB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
n(ここで、Xは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、中脳アストロサイト由来神経栄養因子(MANF)、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、パーセフィン(PSPN)、インターロイキン-6、インターロイキン-11、インターロイキン-27、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子、カルジオトロフィン1、ニューロポイエチン、カルジオトロフィン様サイトカイン、FPF-1070、線維芽細胞増殖因子2、ニューレグリン-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはその機能的部分、類似体もしくは誘導体から選択される治療タンパク質である)を含む組換え融合タンパク質を投与することを含む、眼疾患または眼病を処置する方法に関する。
【0177】
いくつかの態様において、以下からの1つまたは複数の眼病を有する対象が、眼病または眼疾患の処置のためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために選択される:角膜潰瘍/角膜擦過傷、タイゲソン点状表層角膜症、角膜血管新生、フックスジストロフィー、乾性角結膜炎、網脈絡膜炎、網脈絡膜瘢痕、脈絡膜変性、遺伝性脈絡膜ジストロフィー、網膜剥離、網膜分離症、高血圧性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、網膜変性、黄斑変性、網膜上膜、網膜周辺部変性、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜色素変性症、眼球乾燥症、または網膜出血。
【0178】
いくつかの態様において、以下からの(しかしそれらに限定されるわけではない)1つまたは複数の眼病を有する対象が、眼病または眼疾患の処置のためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために選択される:糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(ROP)、加齢黄斑変性(AMD)、網膜静脈閉塞症、放射線網膜症。いくつかの態様において、「眼の炎症により媒介される状態」(これは、本明細書においては抗炎症剤を用いる処置から恩恵がもたらされ得る眼の任意の状態を指し、これは、ブドウ膜炎、黄斑浮腫、急性黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌またはウイルス感染、多病巣性脈絡膜炎、糖尿病性ブドウ膜炎、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、フォークト・小柳・原田(VKH)症候群、ヒストプラスマ症およびブドウ膜滲出を含むことを意味するが、それらに限定されるわけではない)を有する対象が、眼病または眼疾患の処置ためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために選択される。
【0179】
本発明の別の局面は、対象にある量のHB-Xコンジュゲート、例えば、HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
n(ここで、Xは、TNFレセプター2、インターロイキン-4またはインターロイキン-10から選択される治療タンパク質またはその一部である)を含む組換え融合タンパク質を投与することを含む、対象における炎症を処置する方法に関する。
【0180】
いくつかの態様において、炎症の処置のためのHB-Xを含む組成物は、活性作用物質としてサイトカイン(例えば抗炎症性サイトカイン)またはケモカインを含む。
【0181】
本明細書において使用されるような「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして他の細胞に対して作用し、かつ細胞活性に影響を及ぼし、かつ炎症を制御する、任意のリンパ細胞によって放出されるタンパク質についての一般用語である。サイトカインは、典型的には、哺乳動物細胞によって天然に産生され、インビボにおいてミクロからピコモル濃度で体液性調節因子として作用する、可溶性タンパク質またはペプチドである。サイトカインは、通常の条件下または生理学的条件下のいずれかで、個々の細胞および組織の機能的活性を調節することができる。抗炎症性サイトカイン(例えばIL-4、IL-10、IL-11、W-13、IL-13およびTGFβ)は、炎症のメディエーターではない。サイトカインのさらなる例には、リンホカイン、モノカインおよび伝統的なポリペプチドホルモンが挙げられる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン:プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体ホルモン(LH);肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン:腫瘍壊死因子-αおよび-β:ミュラー管抑制因子(MIS);マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGF-β;血小板増殖因子;形質転換増殖因子(TGF)、例えばTGF-αおよびTGF-β:インスリン様増殖因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-βおよび-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12(これらに限定されるわけではない);腫瘍壊死因子、例えばTNF-αまたはTNF-β;および他のポリペプチド因子(白血病抑制因子(LIF)およびkitリガンド(KL)を含む)が含まれる。
【0182】
「ケモカイン」という用語は、血液細胞に作用して、それらを移動させおよび/または活性化状態となるように誘導してその免疫系の機能を行なわせる、任意のタンパク質についての一般用語である。ケモカインは、当技術分野において周知である。例示的なケモカインには、例えば、TECK、ELC、BLC-1、CTACK、RANTES、フラクタルカイン、エキソタキシン(exotaxin)、エオタキシン-2、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MDC、ロイコタクチン、SDF-1β、リンホタクチン、TARC、ITAC、ENA-70、ENA-78、IP-10、NAP-2、インターロイキン-8(IL-8)、HCC-1、MIP-1α、MIP-1β、MIP-1δ、I-309、GRO-α、GRO-β、GRO-γ、MPIF-1、I-LINKおよびGCP-2が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0183】
いくつかの態様において、低身長症および/または遅延した成長を有する関連状態を有する対象の処置のための組成物は、IGF-1タンパク質またはその機能的フラグメントもしくは変異体(例えばSEQ ID NO:6〜9またはSEQ ID NO:63)である活性作用物質を含む。
【0184】
いくつかの態様において、対象における炎症の処置のためのHB-Xを含む組成物は、ステロイド系抗炎症剤である活性作用物質を含む。好ましくは、ステロイド系抗炎症剤は、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサアセトニドからなる群より選択される。好ましい態様において、ステロイド系抗炎症剤は、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンからなる群より選択される。より好ましい態様において、ステロイド系抗炎症剤はデキサメタゾンである。別の態様において、生体内分解性インプラントは、1つを超えるステロイド系抗炎症剤を含む。
【0185】
いくつかの態様において、炎症の処置のためのHB-Xを含む組成物は抗炎症剤を含む。好ましくは、抗炎症剤は、鎮痛剤;抗リウマチ剤;胃腸薬;痛風製剤:グルココルチコイド;眼科用製剤;呼吸器系剤;鼻用製剤;および粘膜剤からなる群より選択される。
【0186】
いくつかの態様において、以下からの1つまたは複数の炎症関連疾病を有する対象が、炎症または炎症関連疾病もしくは疾患の処置のためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために選択される:関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患;乾癬;多発性硬化症;神経変性疾患;うっ血性心不全;脳卒中;大動脈弁狭窄;腎不全;ループス;膵炎;アレルギー;線維症;貧血;アテローム性動脈硬化症;代謝疾患;骨疾患;心血管疾患、化学療法/放射線に関連する合併症;I型糖尿病;II型糖尿病;肝疾患;胃腸障害;眼病;アレルギー性結膜炎;糖尿病性網膜症;シェーグレン症候群;ブドウ膜炎;肺疾患、腎疾患;皮膚炎;HIV関連悪液質;脳性マラリア;強直性脊椎炎;ハンセン病;貧血;および線維筋痛症。
【0187】
いくつかの態様において、炎症性腸疾患(IBD)(特にクローン病および潰瘍大腸炎を含む)を有する対象が、炎症または炎症関連疾病の処置のためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために選択される。別の態様において、処置される疾病は関節炎、関節リウマチ、乾癬、アルツハイマー病、またはパーキンソン病である。さらに別の好ましい態様において、疾病は放射線療法後に関連する疾病またはアテローム性動脈硬化症である。
【0188】
いくつかの態様において、対象が有する以下の炎症または炎症関連疾病の処置のためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために対象が選択される:クローン病または潰瘍性大腸炎からなる群より選択される炎症性腸疾患;消化管合併症、例えば下痢;肝疾患は、自己免疫性肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、または劇症肝不全からなる群より選択される;セリアック病および非特異的大腸炎からなる群より選択される消化管疾患;骨疾患は骨粗鬆症である;肺疾患は、アレルギー性鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性肉芽腫性炎症、嚢胞性線維症およびサルコイドーシスからなる群より選択される;アテローム硬化性心疾患、うっ血性心不全および再狭窄からなる群より選択される心疾患;および、糸球体腎炎および血管炎からなる群より選択される腎疾患。
【0189】
いくつかの態様において、炎症の処置のためのHB-Xを含む組成物を用いる処置のために選択される対象は、自己免疫疾患を有する。いくつかの態様において、炎症または自己免疫疾患の処置のためにHB-Xを含む組成物を用いて処置しようとする対象は、以下からの1つまたは複数の以下の状態を有する:関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性心筋炎、敗血症、グレーブス病(過活動性甲状腺)、橋本甲状腺炎(不活発な甲状腺)、1型糖尿病、セリアック病、クローン病および潰瘍性大腸炎、ギラン・バレー症候群、原発性胆汁性硬化症/肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、レイノー現象、強皮症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、慢性疲労症候群(CFS)、乾癬、自己免疫性アジソン病、強直性脊椎炎、急性播種性脳脊髄炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、イヌにおける多発性関節炎、ライター症候群、高安動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症および線維筋痛症(FM)。慢性炎症は、近年、様々な疾病状態において疑われる原因としておよび/または寄与因子として関心を受けている。おそらく、このような状態の中で最も顕著なのは心血管疾患であるが、同様に、癌も、多くの場合、慢性炎症に発生的に関連していると考えられている。
【0190】
薬学的組成物の投与
治療タンパク質またはペプチドを含むHB-Xコンジュゲートの有効量、例えば治療有効量を、1回量または複数回の投与で患者に投与し得る。複数回の投与が投与される場合、投与は、例えば1時間、3時間、6時間、8時間、1日間、2日間、1週間、2週間、または1か月間、互いに間隔を置き得る。例えば、HB-Xを含む組成物は、例えば2、3、4、5、6、7、8、10、15、20週間またはそれ以上かけて投与されることができる。任意の特定の対象についての具体的な投与計画は、個体の必要性および組成物を投与する者または投与を監督する者の専門的判断に応じて、経時的に調整されるべきであることが理解されるべきである。例えば、治療薬の投与量は、低用量が十分な治療活性を与えない場合には増加させることができる。
【0191】
担当医が最終的に、適切な量および投与計画を決定するが、HB-Xの有効量は、0.0001、0.01、0.01、0.1、1、5、10、25、50、100、500、または1,000mg/kgの投与量で与えることができる。有効投与量は、インビトロまたは動物モデル試験バイオアッセイまたはシステムから導かれた用量反応曲線から推定され得る。
【0192】
特定の患者または対象についての投与量は、慣用的な考察を使用して(例えば、適切な慣用的な薬理学的プロトコールを用いて)当業者によって決定されることができる。医師は、例えば、比較的低用量を最初に処方し、続いて、適切な応答が得られるまで用量を増加させ得る。患者に投与される投与量は、患者において経時的に、有益な治療応答を起こすに十分なものであるか、または例えば、適応に応じて症状または他の適切な活性を減少させるのに十分なものである。投与量は、特定の製剤の効力、および活性作用物質X、例えば本明細書に開示されているような治療ペプチドまたはタンパク質の活性、安定性または血清半減期、および患者の状態、処置しようとする疾病、ならびに、処置しようとする患者の体重または表面積によって決定される。投与量のサイズはまた、特定の対象への特定のベクター、製剤または同等なものの投与に伴う、任意の有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定される。そのHB-Xを含む治療組成物は、任意で、1つまたは複数の適切なインビトロおよび/またはインビボの動物疾病モデル、例えば本明細書に開示されているような軟骨アッセイにおいて、または当業者に一般的に公知の他のモデルにおいて試験され、経時的な効力、組織代謝および組織における保持が確認され、当技術分野において周知の方法に従って投与量が推定される。特に、投与量は、最初は、関連アッセイにおける、処置対非処置(例えば、処置された細胞または動物モデル対処置されていない細胞または動物モデルの比較)の活性、安定性または他の適切な尺度によって決定されることができる。製剤は、関連製剤のLD50、および/または例えば多数の全般的に健康な患者に適用された、種々の濃度のHB-Xの任意の副作用の観察によって決定された速度で投与される。投与は1回量または分割投与量を介して行なわれることができる。
【0193】
疾病の処置または予防において投与されるHB-Xの有効量の決定において、医師は、循環中血漿中レベル、製剤の毒性、および疾病の進行を評価する。選択される投与量レベルはまた、使用される本発明の具体的な化合物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時刻、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態および病歴、ならびに医学分野において周知の同様な因子を含む、様々な因子に依存するだろう。
【0194】
いくつかの態様において、本明細書に開示されているようなHB-Xは、適正な医療行為に従って、個々の患者の臨床状態、投与部位および投与法、投与スケジュール、患者の年齢、性別、体重および医療従事者には公知の他の因子を考慮しながらある投与量で投与されることができる。
【0195】
本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物の投与計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答または予防応答)が提供されるように調整されることができる。例えば、1回のボーラスを投与することもできるし、いくつかの分割投与量を経時的に投与してもよく、または投与量は治療状況の緊急性によって指示されるように比例的に減少または増加させてもよい。投与し易くするためおよび投与量を均一にするために、単位剤形の非経口組成物を製剤化することが特に有利である。
【0196】
さらに、薬学的組成物中のHB-Xの実際の投与量レベルは、対象に毒性を及ぼすことなく、特定の対象、組成物および投与形態について所望の治療応答が達成されるために効果的な活性成分の量が得られるように変更することができる。本明細書に開示されているようなHB-Xを含む薬学的組成物は、「治療有効量」および/または「予防有効量」であることができる。一般的に、明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物の適切な1日量は、HB-Xが投与される疾病症状の低減のような治療効果を生じるのに有効な最も低い用量である活性作用物質Xの量である。このような有効量は、一般的に、上記の因子に依存する。
【0197】
所望であれば、HB-Xを含む組成物の1日有効投与量は、1日を通じて適切な間隔を置いて別々に投与される2、3、4、5、6またはそれ以上の分割投与量として、任意で、単位剤形で投与されることができる。
【0198】
投与量の値は、軽減しようとする疾病の種類および重度により変化し得ることを注記すべきである。任意の特定の対象についての具体的な投与計画は、個体の必要性および組成物を投与する者または投与を監督する者の専門的判断に応じて、経時的に調整されるべきであり、本明細書に示された投与量範囲は単なる例示であり、特許請求された組成物の範囲または実施を制限する意味はないことがさらに理解されるべきである。
【0199】
化合物の効力および毒性、例えばED50(投与量は、集団の50%において効果的である)およびLD50(投与量は集団の50%において致死的である)は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定されることができる。毒性作用と治療作用の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50の比として表現されることができる。大きな治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。
【0200】
例えば、治療有効量は、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常、マウス、ウサギ、イヌまたはブタ)のいずれかにおいて最初に推定されることができる。動物モデルはまた、所望の濃度範囲および投与経路を達成するために使用される。その後、このような情報は、他の対象における有用な投与量および投与経路を決定するために使用されることができる。一般的に、治療有効量は、所望の治療効果に依存する。例えば、軟骨関連疾病または疾患の処置のためのHB-Xの治療有効量は、本明細書の実施例に開示されているような内側半月の切除(例えば内側半月断裂(MMT)手術)後のインビボラットモデル(これは外科的に誘発されたOAラットモデルである)における、HB-X、例えばHB-IGF-1の効果によって評価されることができる。HB-Xコンジュゲート(例えばHB-IGF-1)の注射後、膝の変形性関節症(OA)の組織学的評価を実施し、全OARSIスコアを、本明細書の実施例に記載されているように、対照処置動物と比較して、HB-Xコンジュゲート(例えばHB-IGF-1)で処置された動物の関節について決定する。
【0201】
当技術分野における通常の技能を有する医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医は、薬学的組成物に使用される本発明の化合物の投与量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで開始することもできるし、所望の効果が達成されるまで投与量を次第に増加させることもできる。また、ヒトは、一般的に、本明細書で例示されたマウスまたは他の実験動物よりも長期間かけて処置され、この処置は、疾病プロセスの長さおよび薬物の効力に比例した長さを有することが注記される。投与量は1回量または数日間の期間をかけての複数回投与量であり得るが、1回の投与量が好ましい。
【0202】
いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、療法のためにヒトおよび他の動物に、経口的に、鼻腔内に(例えばスプレーによる)、直腸内に、膣内に、関節内注射によって、非経口的に、大槽内に、および局所的に(パウダー、軟膏または液滴による)(例えば頬側および舌下を含む)を含む、任意の適切な投与経路によって投与されることができる。
【0203】
HB-Xコンジュゲートは、当技術分野において公知または本明細書に記載の任意の経路によって、例えば経口的に、非経口的に(例えば静脈内または筋肉内)、腹腔内に、直腸内に、皮膚に、鼻腔内に、膣内に、吸入で、皮膚に(パッチ)または眼内に投与されることができる。HB-Xコンジュゲートは、任意の投与量または投与計画で投与され得る。
【0204】
いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、生体インプラントまたは移植片の一部として対象に投与さることができる。いくつかの態様において、生体インプラントまたは移植片を、本明細書に開示されているようなHB-Xコンジュゲートと共に、ある期間かけてインキュベートし、その後、対象にインプラントまたは移植片を埋入する。当業者に公知の任意の生体インプラントが本明細書における使用に包含され、例えば、骨軟骨または半月板同種移植片であるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、生物学的スキャフォールドを本明細書に開示されているようなHB-Xコンジュゲートと共にある期間かけてインキュベートし、その後、対象にスキャフォールドを埋入する。いくつかの態様において、スキャフォールドは、生体適合性および/または生分解性スキャフォールドである。
【0205】
いくつかの態様において、HB-Xコンジュゲートは、ハイドロゲル組成物で対象に投与される。任意の生物学的に適合性のハイドロゲル組成物(例えば自己組織化ペプチドを含むハイドロゲルであるが、それに限定されるわけではない)を使用することができる。いくつかの態様において、自己組織化ペプチドを含むハイドロゲルはRADA-16(PURAMATRIX(登録商標)としても知られる)およびKLD-12である。自己組織化ペプチドハイドロゲル、例えば米国特許公開公報第2013/0129712号、第2013/0079421号および欧州特許出願第EP 1802743号およびKisiday et al., PNAS, 2002; 99(5); 9996-10001(これらは各々その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているものなどが当業者に公知である。
【0206】
いくつかの態様において、ハイドロゲルは、配列
および/または配列
を有するペプチドを含み得る。いくつかの態様において、ハイドロゲルは、
を含む。したがって、本発明のいくつかの局面において、HB-Xコンジュゲートをそれを必要とする対象に投与するための方法に関し、HB-Xコンジュゲートは、
の群から選択されるペプチドを含むハイドロゲル中に存在する。いくつかの態様において、本発明は、HB-Xおよびハイドロゲル(例えば、
の群から選択されるペプチドを含むハイドロゲル)を含む組成物を投与することを含む、軟骨に関連するまたは半月板に関連する臨床状態を処置する方法に関する。いくつかの態様において、本発明は、HB-Xおよびハイドロゲル(例えば、
の群から選択されるペプチドを含むハイドロゲル)を含む組成物を投与することを含む、神経疾病または神経疾患を処置する方法に関する。
【0207】
作用物質または化合物が対象に送達される場合、それらは、例えば経口的に(例えばカプセル剤、懸濁剤または錠剤で)または非経口投与によって、任意の適切な経路によって投与されることができる。非経口投与には、例えば、筋肉内、静脈内、関節内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、または腹腔内投与が挙げられることができる。作用物質はまた、経口的に、経皮的に、局所的に、吸入によって(例えば気管支内、鼻腔内、経口吸入、または鼻腔内液滴)、または直腸に投与されることができる。投与は、適応に応じて局所的または全身的であることができる。作用物質はまた、当業者には周知であるウイルスベクターを使用して送達されることができる。薬学的に許容される製剤は、水性ビヒクルに懸濁し、慣用的な皮下針を通してまたは輸液ポンプを使用して導入されることができる。
【0208】
局所投与および全身投与の両方が本発明によって企図される。局所投与の望ましい特徴には、活性化合物の局所有効濃度を達成すること、ならびに、活性化合物の全身投与による有害副作用を回避することが挙げられる。局所送達技術は、例えば、51 J. Biomed. Mat. Res. 96 (2000); 100 J. Control Release 211 (2004); 103 J. Control Release 541 (2005); 15 Vet. Clin. North Am. Equine Pract. 603 (1999); 1 Semin. Interv. Cardiol. 17 (1996)に記載されている。
【0209】
個体に投与される作用物質の量は、全般的な健康状態、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性のような個体の特徴、ならびに、適応となるような疾病の程度、重度および種類に依存する。当業者は、これらおよび他の因子に依存して、適切な投与量を決定することができるだろう。
【0210】
したがって、本発明の治療法に関して、HB-Xコンジュゲート(例えば、治療タンパク質またはペプチドを含むHB-X融合タンパク質)の投与は、特定の投与形態、投与量、または投与頻度に限定されるものではないことが意図され;本発明は、全ての投与形態(筋肉内、静脈内、腹腔内、小胞内、関節内、病巣内、皮下、または本明細書に開示されているような疾病もしくは疾患を処置するのに適切な投与量を与えるに十分な任意の他の経路を含む)を企図する。
【0211】
適切な薬学的に許容される担体を用いて所望の投与量で製剤化した後、本明細書に開示されているようなHB-Xを含む薬学的組成物は、対象に投与されることができる。HB-Xを含む薬学的組成物は、任意の適切な手段を使用して対象に投与されることができる。一般的に、適切な投与手段は、局所、経口、非経口(例えば静脈内、皮下または筋肉内)、直腸、大槽内、膣内、腹腔内、眼内、または鼻腔経路を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0212】
特定の態様において、HB-Xを含む薬学的組成物を、処置の必要とされる領域に局所的に投与することが望ましくあり得;これは、例えばであって限定するものではないが、手術中の局所的注入、局所適用(例えばカテーテルを用いての注射による)によって、またはインプラントの使用によって(インプラントは多孔性、非多孔性、またはゲル性材料、例えば膜、例えばサイラスティック(sialastic)膜、線維、または市販の代用皮膚である)達成され得る。いくつかの態様において、本明細書に開示されているようなHB-Xは、局所クリーム、パッチ、筋肉内注射などを使用して筋肉に適用される。
【0213】
いくつかの態様において、HB-Xは、対象に経口的に(例えばカプセル剤、懸濁剤または錠剤で)または非経口投与によって投与されることができる。慣用的な経口投与法は、錠剤、懸濁剤、液剤、乳剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤などとしてHB-Xの投与が使用できることを含む。HB-Xを経口的にまたは静脈内に送達し、生物学的活性を保持した公知の技術が好ましい。非経口投与は、例えば、筋肉内、静脈内、関節内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、または腹腔内投与を含むことができる。HB-Xまた、経口的に、経皮的に、局所的に、吸入によって(例えば気管支内、鼻腔内、経口吸入または鼻腔内液滴)または直腸に投与されることができる。投与は、適応に応じて局所性または全身性であることができる。作用物質、例えばHB-Xをコードする核酸作用物質もまた、ベクター、例えばウイルスベクターを使用して、当業者には周知である方法によって送達されることができる。
【0214】
本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物が非経口的に投与される場合、それは一般的に、単位投与量注射剤形(例えば液剤、懸濁剤、乳剤)で製剤化される。注射に適した薬学的製剤は、無菌水溶液または分散液、および、無菌注射溶液または分散液に再構成するのための無菌粉末を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、その適切な混合物、および植物油を含む、溶媒または分散媒体であることができる。
【0215】
本明細書において使用されているような「単位剤」形という用語は、処置しようとする哺乳動物対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指す;各単位は、必要とされる薬学的担体と共に、所望の治療効果を生じるように計算された予め決定された量の活性化合物を含む。本発明の単位剤形の規格は、(a)本明細書に開示されているようなHB-Xの独特な特徴および達成しようとする具体的な治療効果または予防効果、ならびに(b)個体における過敏症の処置のための活性成分としてのHB-Xを配合する分野の固有の限界によって定められかつ直接依存する。
【0216】
本明細書に開示されているようなHB-Xを含む薬学的に許容される組成物は、水性ビヒクル中に懸濁され、かつ慣用的な皮下針を通してまたは輸液ポンプを使用して導入されることができる。
【0217】
本明細書に記載の方法は、HB-Xを、細胞に、例えばヒト細胞にインビトロまたはエクスビボで送達するために使用され得る。あるいは、HB-Xを投与する方法は、インビボ(例えば治療または予防)プロトコールの一部として対象に存在する細胞上で実施することができる。例えば、損傷後の軟骨再生のための療法などの、方法を使用して、対象におけるIGF-1により媒介される適応症を処置または予防することができる。したがって、本発明は、永久的な軟骨の減少を処置(例えば、その発症を治癒、抑制、寛解、遅延もしくは予防、またはその再発もしくは再燃を予防)または予防する方法を提供する。方法は、対象に、HB-X組成物を、軟骨の減少を阻止もしくは減少または軟骨の再生を増加させるに十分な量で投与し、これにより、対象における関節変性を処置または予防することを含む。
【0218】
薬学的組成物
本発明の組成物は、薬学的に許容される製剤に含むことができる。このような薬学的に許容される製剤は、生理学的に適合性である、薬学的に許容される担体または賦形剤、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含み得る。例えば、担体は、関節内注射に適切であることができる。賦形剤は、薬学的に許容される安定化剤を含む。本発明は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィアまたはビーズの形態の合成または天然ポリマーを含む、任意の薬学的に許容される製剤、および、水中油滴型エマルション、ミセル、混合ミセル、合成膜小胞、およびゲル、例えばヒアルロン酸ゲルを含む液体系の製剤に関する。
【0219】
いくつかの態様において、本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物は、任意の適切な手段で、例えば無菌注射液として製剤化されることができ、例えば、これはHB-Xを、必要量の適切な溶媒中に、所望であれば様々な他の成分と共に組み込むことによって調製されることができる。いくつかの態様において、本明細書に開示されているようなHB−Xを含む組成物は、ハイドロゲル中で製剤化されることができ、例えば、自己組織化ペプチドを含むハイドロゲルはRADA-16(PURAMATRIX(登録商標)としても知られる)およびKLD-12であるが、それらに限定されるわけではない。
【0220】
本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物の薬理学的製剤は、任意の適合性の担体、例えば様々なビヒクル、補助剤、添加剤および希釈剤を含む注射用製剤で患者に投与されることができ;あるいは、本発明に使用される化合物は、遅延放出皮下インプラントまたは標的化送達システム、例えばモノクローナル抗体、ベクターによる送達、イオントフォレーシス、ポリマーマトリックス、リポソームおよびミクロスフィアの形態で患者に非経口的に投与されることができる。本発明において有用な送達システムの例には、米国特許第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号; 第4,959,217号; 第4,925,678号; 第4,487,603号; 第4,486,194号; 第4,447,233号; 第4,447,224号; 第4,439,196号および第4,475,196号に提示されているものが挙げられる。他のこのようなインプラント、送達システムおよびモジュールは、当業者には周知である。
【0221】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持されることができる。非水性ビヒクル、例えば綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、またはピーナッツ油、およびエステル、例えばミリスチン酸イソプロピルもまた、化合物組成物のための溶媒系として使用され得る。さらに、組成物の安定性、無菌性および等張性を増強させる様々な添加剤、例えば、抗微生物保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝化剤も添加されることができる。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって確実にされることができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含めることが望ましい。注射可能剤形の延長吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの使用によってもたらされることができる。しかしながら、本発明によると、使用される任意のビヒクル、希釈剤または添加剤が化合物と適合性でなければならない。
【0222】
別の態様において、本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物は、液体系の製剤を含むことができる。任意の公知の液体系の薬物送達システムを本発明の実施に使用することができる。例えば、多小胞リポソーム、多重膜リポソームおよび単層膜リポソームは全て、封入されている活性化合物の持続された放出速度が確立されることができる限り、使用することができる。徐放性の多小胞リポソーム薬物送達システムを作製する方法は、PCT出願公開公報第WO 9703652、WO 9513796およびWO 9423697に記載され、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0223】
合成膜小胞の組成は、通常、リン脂質の組合せ、通常、ステロイド、特にコレステロールとの組合せである。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。合成膜小胞の産生に有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドが挙げられ、好ましい態様は、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、およびジオレオイルホスファチジルグリセロールを含む。
【0224】
HB-Xを含む液体系の小胞の調製において、活性化合物の封入効率、活性化合物の活性度、得られる小胞集団の均一性およびサイズ、活性化合物対脂質の比、調製物の透過性、調製物の不安定性、および製剤の薬学的許容性のような変数が考慮されるべきである。
【0225】
別の態様において、HB-Xは、小胞、特にリポソームで送達されることができる(Langer (1990) Science 249:1527-1533を参照)。さらに別の態様において、HB-Xは、徐放システムで送達されることができる。1つの態様において、ポンプが使用され得る(前記Langer (1990)を参照)。別の態様において、ポリマー材料が使用されることができる(Howard et al. (1989) J. Neurosurg. 71:105を参照)。本発明の活性作用物質がHB-Xをコードする核酸である別の態様において、核酸を、適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、それを、例えばレトロウイルスベクター(例えば米国特許第4,980,286号参照)の使用によって、または直接的な注射によって、または微粒子衝撃(例えば遺伝子銃;Biolistic, Dupont)の使用によってそれが細胞内にくるように投与することによって、あるいは脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクション剤でコーティングすることによって、あるいは、それを核内に浸入することが知られているホメオボックス様ペプチドと連結させて投与すること(例えばJoliot et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照)などによって、インビボで、そのコードされているタンパク質の発現を促進するように投与されることができる。あるいは、核酸は細胞内に導入され、相同的組換えによって発現のために宿主細胞DNAに組み入れられることができる。
【0226】
導入前に、本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物は、ガンマ線照射または電子ビームによる滅菌のような当技術分野の数多くの利用可能な技術のいずれかによって滅菌されることができる。
【0227】
本発明の別の態様において、本明細書に開示されているようなHB-Xまたはその変異体を含む組成物は、任意の他の治療剤と共に(例えば組み合わせて)投与および/または製剤化されることができる。投与のために、本明細書に開示されているようなHB-Xは、好ましくは薬学的組成物として製剤化される。本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含み、前記化合物は、関心対象の状態を処置するのに効果的である量で組成物中に存在する。適切な濃度および投与量は、当業者によって容易に決定されることができる。
【0228】
薬学的に許容される担体は、当業者にはよく知られている。液体溶液として製剤化された組成物のための、許容される担体は、食塩水および滅菌水を含み、かつ任意で抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤、および他の一般的な添加剤を含み得る。組成物はまた、丸剤、カプセル剤、顆粒剤または錠剤として製剤化されることができ、これは、本発明の化合物に加えて、希釈剤、分散剤および表面活性剤、結合剤および潤滑剤を含む。当業者はさらに、本発明の化合物を、適切な方法で、許容される慣行、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. 1990に開示されている慣行などに従って製剤化し得る。
【0229】
本発明の組成物は、任意の形態であることができる。これらの形態には、本発明の1つまたは複数のレゾルビンおよび/またはプロテクチンまたはその類似体を含む、液剤、懸濁剤、分散剤、軟膏剤(ointment)(経口用軟膏剤を含む)、クリーム剤、ペースト剤、ゲル剤、散剤(歯磨き粉を含む)、練り歯磨き粉、ロゼンジ剤(lozenge)、軟膏剤(salve)、チューイングガム、口内スプレー剤、トローチ剤、サシェ剤、洗口剤、エアゾール剤、錠剤、カプセル剤、経皮パッチが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0230】
本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物の製剤は、当業者には公知の多くの手段によって調製されることができる。いくつかの態様において、製剤は、例えば、(i)複数回の治療有効投与量を与えるに十分な量の本明細書に開示されているようなHB-X;(ii)各製剤を安定化させるに有効である量の水の添加;(iii)エアゾール缶から複数回の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤;および(iv)任意のさらなる任意選択の成分、例えば共溶媒としてのエタノールを、合わせることによって;かつ成分を分散させることによって、エアゾール製剤としての投与のために調製されることができる。成分は、慣用的なミキサーまたはホモジナイザーを使用して、振とうによって、または超音波エネルギーによって分散されることができる。バルク製剤は、バルブからバルブへと移す方法の使用によって、加圧充填によって、または慣用的な冷却充填法の使用によって、より小さな個々のエアゾールバイアルへと移すことができる。懸濁エアゾール製剤に使用される安定化剤は噴射剤に可溶性である必要はない。十分に可溶性ではないものは、適切な量で薬物粒子上にコーティングされることができ、コーティングされた粒子を、その後、上記したような製剤へと組み込むことができる。
【0231】
特定の態様において、核酸作用物質またはポリペプチド作用物質であるHB-Xを含む組成物を、対象に、薬学的組成物として薬学的に許容される担体と共に投与することができる。特定の態様において、これらの薬学的組成物は任意でさらに、1つまたは複数の追加の治療剤を含む。特定の態様において、追加の治療剤または治療剤群は自己免疫疾患または自己免疫薬物、例えば免疫抑制剤などである。もちろん、当業者に公知であるこのような治療剤は、容易に代用されることができるが、このリストは網羅的または制限的なものと考えられるべきではない。
【0232】
湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、芳香剤および香料、保存剤、および抗酸化剤も組成物中に存在することができる。薬学的に許容される抗酸化剤の例には、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0233】
本発明の製剤は、静脈内、経口、鼻腔内、局所、経皮、頬側、舌下、直腸内、膣内および/または非経口投与に適したものを含む。製剤は、慣用的には、単位剤形で提示され得、かつ製薬分野において周知の任意の方法によって調製され得る。担体材料と合わせて単一剤形を産生することができる活性成分の量は、一般的に、治療効果を生じる化合物の量である。一般的には、100%の中で、この量は、約1%から約99%、好ましくは約5%から約70%、最も好ましくは約10%から約30%の活性成分の範囲である。
【0234】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(芳香基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用)、散剤、顆粒剤の剤形で、または水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤として、または水中油滴型もしくは油中水滴型エマルションとして、またはエリキシルもしくはシロップとして、またはトローチ剤として(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用)、および/または洗口剤などとしてであり得、各々、活性成分として予め決定された量の本発明の化合物を含む。本発明の化合物はまた、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤として投与されてもよい。
【0235】
経口投与用の本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、活性成分は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下のいずれかと混合されている:充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;湿潤剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えばアガーアガー、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;溶液緩染剤、例えばパラフィン:吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ;潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物;ならびに、着色剤。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝化剤を含み得る。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのこのような賦形剤を使用して、軟および硬ゼラチンカプセル中の充填剤として使用され得る。
【0236】
錠剤は、任意で1つまたは複数の補助的な成分と共に圧縮または成形によって製造され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、適切な機械で、不活性液状希釈剤を用いて加湿させた粉末化化合物の混合物を成形することによって製造され得る。
【0237】
本発明の薬学的組成物の錠剤および他の固体剤形、例えば糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、任意で、コーティング剤およびシェル、例えば腸溶性コーティング剤および製薬分野において周知の他のコーティング剤を用いて獲得または調製され得る。それらはまた、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の比率で使用して、その中の活性成分の遅延放出または制御放出がなされるように製剤化され得、これにより、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアが与えられ得る。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通したろ過によって、または安定化剤を無菌固体組成物(これは滅菌水またはいくつかの他の無菌注射媒体に使用直前に溶解させることができる)の形態で組み込むことによって滅菌され得る。これらの組成物はまた任意で乳白剤を含み得、かつそれらは活性成分のみを、または優先的に、消化管の特定の部分に、任意で遅延した様式で放出する組成物であり得る。使用することができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適宜、1つまたは複数の上記の賦形剤を含む、マイクロカプセル剤形であることができる。
【0238】
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。
【0239】
活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤の他に、経口用組成物はまた、補助剤、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、芳香剤、着色剤、香料および保存剤を含み得る。
【0240】
懸濁液は、活性化合物の他に、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーアガーおよびトラガカント、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0241】
いくつかの場合、本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物は、直腸または膣内投与に適した製剤で、例えば坐剤としてであり得、これは、1つまたは複数の本発明の化合物を、1つまたは複数の適切な非刺激性の賦形剤または担体(これは例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩を含み、これは室温で固体であるが、体温では液体であり、それゆえ、活性化合物を放出する)と混合することによって調製され得る。このような投与のために適切な担体および製剤は、当技術分野において公知である。
【0242】
HB−Xの局所または経皮投与のための、例えば筋肉内投与のための剤形には、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤および吸入剤が挙げられる。本明細書に開示されているようなHB-Xは、無菌条件下で、薬学的に許容される担体と、および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝化剤または噴射剤と混合され得る。
【0243】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤、例えば動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物を含み得る。散剤およびスプレー剤は、本発明の化合物に加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含むことができる。スプレー剤は、追加的に、慣用的な噴射剤、例えばクロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性の非置換ハイドロカーボン、例えばブタンおよびプロパンを含むことができる。
【0244】
経皮パッチは、生体にHB-Xの制御送達を与えるという追加の利点を有する。このような剤形は、化合物を適切な媒体中に溶解または分散させることによって製造されることができる。吸収増強剤はまた、皮膚を通っての化合物の流入を増加させるために使用されることができる。このような流入速度は、速度制御膜を与えることによって、または活性化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることのいずれかによって制御されることができる。
【0245】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌で等張な水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または無菌粉末(これは使用直前に無菌の注射溶液または分散液へと復元され得る)と組み合わせた、1つまたは複数の本発明の化合物を含み、これは、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤、製剤を目的とするレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含み得る。
【0246】
本発明の薬学的組成物に使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えばレシチンの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持されることができる。
【0247】
これらの組成物はまた、補助剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの包含によって確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることも望ましくあり得る。さらに、注射可能な剤形の延長吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの包含によってもたらされ得る。
【0248】
いくつかの場合、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を緩徐化させることが望ましい。これは、水への溶解度の低い結晶性または無定形材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。その後、薬物の吸収速度は、その溶出速度に依存し、これは同様に溶出速度は結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。あるいは、非経口投与される剤形の遅延吸収は、薬物を油ビヒクル中に溶解または懸濁することによって達成される。
【0249】
注射デポー形は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中で、対象化合物のマイクロカプセル封入マトリックスを形成することによって製造される。薬物とポリマーの比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度は制御されることができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、生体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルション中に薬物を捕捉することによって調製される。
【0250】
特定の態様において、HB-Xは、本明細書に記載または当業者に公知の1つまたは複数の精製法によって、単離および/または精製もしくは実質的に精製されることができる。一般的には、純度は、少なくとも90%、特に95%、多くの場合99%超である。特定の態様において、天然化合物は、より広い属の一般的な記載から除外される。
【0251】
いくつかの態様において、組成物は、少なくとも1つのHB-Xを、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例には、以下であるがそれに制限されるわけではない:糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび坐剤用ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;および薬学的製剤に使用される他の無毒性で適合性の物質。
【0252】
特定の態様において、本明細書に開示されているようなHB-Xを含む組成物は、1つまたは複数の酸性官能基を含むことができ、したがって、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。本明細書において使用される「薬学的に許容される塩、エステル、アミドおよびプロドラッグ」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを引き起こすことなく患者の組織と接触させるために使用するのに適し、妥当なベネフィット/リスク比と釣り合い、かつ本発明の化合物のその意図する用途に対して効果的である、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミドおよびプロドラッグを指す。「塩」という用語は、本発明の化合物の比較的無毒性な無機および有機酸付加塩を指す。
【0253】
これらの塩は、化合物の最終単離および精製中にインサイチューで、または、その遊離塩基形の精製化合物を、適切な有機酸または無機酸と別々の反応をさせて、このように形成された塩を単離することによって調製され得る。これらは、アルカリおよびアルカリ土類金属に基づいた陽イオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに、無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミン陽イオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むが、それらに限定されるわけではない)を含み得る(例えば、Berge S. M., et al., "Pharmaceutical Salts," J. Pharm. Sci., 1977;66:1-19を参照、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0254】
「薬学的に許容されるエステル」という用語は、比較的無毒性の本発明の化合物のエステル化生成物を指す。これらのエステルは、化合物の最終単離および精製中にインサイチューで、またはその遊離酸形またはヒドロキシルの精製化合物を、適切なエステル化剤と別々に反応させることによって調製されることができる。カルボン酸は、触媒の存在下でアルコールとの処理を介してエステルに変換されることができる。該用語はさらに、生理的条件下で溶媒和されることのできる低級炭化水素基、例えばアルキルエステル、メチル、エチルおよびプロピルエステルを含むことを意味する。
【0255】
本明細書に使用される「薬学的に許容される塩またはプロドラッグ」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを引き起こすことなく患者の組織と接触させるために使用するのに適し、妥当なベネフィット/リスク比と釣り合い、かつその意図する用途に対して効果的である、塩またはプロドラッグである。これらの化合物は、可能である場合、本発明の化合物の双性イオン形を含む。
【0256】
「塩」という用語は、本発明の化合物の比較的無毒性の無機および有機酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終単離および精製中にインサイチューで、またはその遊離塩基形の精製化合物を、適切な有機酸または無機酸と別々に反応させて、このようにして形成された塩を単離することによって調製されることができる。これらは、アルカリおよびアルカリ土類金属に基づいた陽イオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに、無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミン陽イオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含むが、それらに限定されるわけではない)を含み得る(例えば、Berge S. M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66, 1を参照、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0257】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで急速に転換されて、活性なHB-X、例えば機能的に活性な治療ペプチドまたはタンパク質をコードする生物学的に活性または機能的に活性なHB-Xを生じる、化合物または作用物質を指す。いくつかの態様において、HB-Xプロドラッグは、血中の加水分解によって、例えば、前駆治療タンパク質の活性治療タンパク質への切断を介して活性化されることができ、これは、インスリンが、そのプロタンパク質から活性なインスリンタンパク質へと活性化される方法と類似している。徹底的な考察が、T. Higachi and V. Stella, "Pro-drugs as Novel Delivery Systems," Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Seriesおよび Bioreversible Carriers in: Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に提供され、その両方が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に使用されているようなプロドラッグは、インビボでの投与時に、生物学的に、薬学的にまたは治療的に活性な形態の化合物へと代謝または別様に変換される化合物である。プロドラッグは、HB-Xの代謝安定性もしくは輸送特徴を改変させるように、副作用もしくは毒性を遮蔽するように、またはHB-Xの他の特徴もしくは特性を改変させるように設計され得る。インビボでのHB-Xの薬力学プロセスおよび薬物代謝または翻訳後タンパク質プロセシングの知識により、一旦薬学的に活性な化合物が同定されれば、製薬分野の熟練者は、一般的に、インビボで活性化されて、対象においてHB-Xに存在する治療タンパク質のレベルを増加させることのできる、HB-Xプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady (1985) Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, N.Y., pages 388-392を参照)。適切なプロドラッグの選択および調製のための慣用的な手順は、例えば、"Design of Prodrugs," ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。プロドラッグの適切な例には、対応する酸のメチル、エチルおよびグリセロールエステルが挙げられる。
【0258】
選択される投与経路に関係なく、適切な水和形で使用され得る本発明の化合物、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の慣用的な方法によって、薬学的に許容される剤形へと製剤化される。
【0259】
ベクター:
別の態様において、本発明は、本明細書に開示されているような方法、組成物およびキットに使用するためのHB-X融合タンパク質をコードするベクターを提供する。いくつかの態様において、ベクターは発現ベクターであり、研究者らが選択した活性作用物質をコードする核酸配列の挿入を可能とする。いくつかの態様において、本発明は、
から選択される少なくとも1つのヘパリン結合ペプチド(HB)をコードする核酸を含むベクターに関する。いくつかの態様において、ベクターは、研究者らが選択した活性作用物質をコードする核酸配列を、HB配列の3'または5'またはその両方に挿入するためのマルチクローニングサイトを含む。いくつかの態様において、ベクターは、複数のHBペプチドを含む。いくつかの態様において、ベクターはまた、リンカーペプチドをコードする少なくとも1つの核酸(例えば少なくともGGGを含む)を、Xをコードする核酸配列がHBペプチド核酸配列の3'または5'またはその両方に挿入されるかどうかに依存してマルチクローングサイトの前の、HBペプチド配列の3'または5'に含む。いくつかの態様において、ベクターはまた、少なくとも1つの活性作用物質(X)をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0260】
いくつかの態様において、ベクターは、少なくとも1つのHB-X
nまたはX
n-HB
n融合タンパク質(ここで、HBは、
から選択されるヘパリン結合ペプチドであり;Xは活性作用物質であり、nは少なくとも1の整数である)をコードする核酸配列を含む。
【0261】
いくつかの態様において、ベクターは、少なくとも1つの(HB-リンカー)
n-X
nまたは少なくとも1つのX
n-(HB-リンカー)
n融合タンパク質、または少なくとも1つの(HB-リンカー)
n-X
m-(HB-リンカー)
o融合タンパク質(ここで、HBは、
から選択されるヘパリン結合ペプチドであり;Xは活性作用物質であり、mは少なくとも1の整数であり、n+oは少なくとも1の整数である)をコードする核酸配列を含む。
【0262】
キット
別の態様において、本発明は、本発明の方法の実施のためのキットを提供する。キットは好ましくは、HBペプチドおよびHBペプチドを活性作用物質(X)に付着させるための手段を含む1つまたは複数の容器を含む。いくつかの態様において、キットは、(i)
からなる群より選択される少なくとも1つのHBペプチド;およびHBペプチドを小分子へとコンジュゲートとさせるための化学的リンカーを含む。
【0263】
いくつかの態様において、キットは、本明細書に開示されているような
から選択される少なくとも1つのヘパリン結合ペプチド(HB)をコードする核酸を含むベクター、および、少なくとも1つの活性作用物質をコードする核酸配列をベクターにサブクローニングするための適切な試薬(例えば制限酵素およびライゲーション酵素など)を含み得る。いくつかの態様において、キット中のベクターはまた、リンカーペプチドをコードする核酸配列を含み、これは、活性作用物質をクローニングしようとする場所に依存して、HBペプチドをコードする核酸配列の3'または5'(またはその両方)であり得る。
【0264】
別の態様において、キットはHB-Xコンジュゲートを含み得、ここで、Xは疾病または状態、例えば軟骨に関連する疾病または疾患、神経学的疾患、眼疾患または炎症などの処置のための治療タンパク質またはペプチドである。
【0265】
キットは任意で、HB-Xコンジュゲートと共に投与しようとする追加の治療薬を含んでいてもよい。キットは、軟骨に関連する疾病または疾患、神経学的疾患、眼疾患または炎症を有する対象へのHB-Xコンジュゲートの投与のための説明書を含み得る。
【0266】
キットはまた、任意で、光または他の有害な条件によるHB-Xコンジュゲートの分解を防御するための、適切なシステム(例えば不透明な容器)または安定化剤(例えば抗酸化剤)を含んでいてもよい。
【0267】
本発明の別の局面において、本明細書に開示されているようなHB-Xコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む1つまたは複数の容器を含むキットを提供する。キットは任意で、HB-Xコンジュゲートと共に投与しようとする追加の治療薬を含んでいてもよい。キットは、軟骨に関連する疾病または疾患、神経学的疾患、眼疾患または炎症を有する対象の投与のための説明書を含み得る。
【0268】
キットは任意で、哺乳動物における疾病の処置のための、例えば、軟骨に関連する疾病または疾患、神経学的疾患、眼疾患または炎症の処置のための、HB-Xコンジュゲートの使用を提供する指示書(すなわちプロトコール)を含む説明資料を含み得る。
【0269】
説明資料は典型的には資料または印刷物を含むが、それらに限定されるわけではない。このような説明書を保存し、それらを末端ユーザーに伝達することのできる任意の媒体が、本発明によって企図される。このような媒体は、電子保存媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCD ROM)などを含むが、それらに限定されるわけではない。このような媒体は、このような説明資料を提供するインターネットサイトアドレスを含み得る。
【0270】
いくつかの態様において、本発明は、以下のいずれかの番号付けした項目において定義され得る:
1.HBが、
から選択されるヘパリン結合ペプチドであり;Xが活性作用物質であり、かつnが少なくとも1の整数である、少なくとも1つのHB
n-X
nを含む組成物。
2.リンカーをさらに含み、組成物が(HB-リンカー)
n-X
nによって表される、項目1に記載の組成物。
3.リンカーが配列GGGを含むペプチドである、項目2に記載の組成物。
4.
から選択される、組成物のHB-リンカー部分を有する、項目3に記載の組成物。
5.Xが、神経栄養因子;ニューロトロフィン;神経成長因子(NGF);脳由来神経栄養因子(BDNF);ニューロトロフィン-3(NT-3);ニューロトロフィン-4(NT-4);毛様体神経栄養因子(CNTF);中脳アストロサイト由来神経栄養因子(MANF);保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF);グリア細胞株由来神経栄養因子ファミリーリガンド;グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF);ニュールツリン(NRTN);アルテミン(ARTN);またはパーセフィン(PSPN);神経新生サイトカイン;インターロイキン-6;インターロイキン-11;インターロイキン-27;白血病抑制因子;毛様体神経栄養因子;カルジオトロフィン1;ニューロポイエチン;カルジオトロフィン様サイトカイン;線維芽細胞増殖因子2;抗炎症性サイトカイン;インターロイキン-4;インターロイキン-10;神経保護剤;ニューレグリン-1;血管内皮増殖因子(VEGF); Cerebrolysin(登録商標)(FPF-1070);エタネルセプト(Enbrel(登録商標)、ヒト免疫グロブリンG1のFc成分に融合した可溶性組換えTNFレセプター2);増殖分化因子11(GDF11);ストロマ細胞由来因子-1(SDF-1);ミオスタチン(増殖分化因子8(GDF8));副甲状腺ホルモン(PTH);副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP);インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA);線維芽細胞増殖因子18(FGF-18);高移動度タンパク質2(HMG-2、高移動度グループボックス2(HMGB2)としても知られる);グルココルチコイドレセプター;治療抗体もしくはその一部、例えばRemicade(登録商標)(インフリキシマブ、抗TNF-α、Janssen Biotech, Horsham, PA)、Humira(登録商標)(アダリムマブ、抗TNF、Abbot Labs., N.Chicago, IL)もしくは抗神経成長因子抗体;線維芽細胞増殖因子9(FGF-9);肝細胞増殖因子;TGFβ-スーパーファミリータンパク質、例えばTGFβ、TGFβ3、BMP2、もしくはBMP7;または他の治療タンパク質;または前記のいずれかの機能的部分、変異体、類似体もしくは誘導体;または小分子活性作用物質から選択されるタンパク質である、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
6.HB
n-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nが融合タンパク質である、前記項目のいずれか一項に記載の組成物。
7.XまたはリンカーがHBのN末端に融合している、項目1〜6に記載の組成物。
8.XまたはリンカーがHBのC末端に融合している、項目1〜6に記載の組成物。
9.n=2であり、かつXが、任意で少なくとも1つのリンカーペプチドを含むHBのN末端およびC末端の両方に融合している、項目1〜6に記載の組成物。
10.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nを含む組換え融合タンパク質の有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、Xは、副甲状腺ホルモン(PTH);副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP);インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA);線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)、抗神経成長因子抗体;線維芽細胞増殖因子9(FGF-9);肝細胞増殖因子;TGFβ-スーパーファミリータンパク質、例えばTGFβ、TGFβ3、BMP2、もしくはBMP7;またはその一部、類似体、誘導体もしくは機能的フラグメントから選択される治療タンパク質である、軟骨に関連する臨床状態(例えば傷害または疾病)を処置する方法。
11.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nを含む組換え融合タンパク質の有効量を対象に投与する段階、さらに、同時にまたは別々にコルチコステロイドを投与する段階を含み、ここで、Xは、グルココルチコイドレセプターである、軟骨に関連する状態(例えば傷害または疾病)を処置する方法。
12.軟骨に関連する状態が、破断または剥離を含む関節軟骨欠損、部分的または完全な断裂を含む半月板欠損、変形性関節症、外傷性軟骨破断もしくは剥離、強直性脊椎炎、関節包炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、またはX連鎖低リン血症性くる病である、項目10または11に記載の方法。
13.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nを含む組換え融合タンパク質の有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、Xは、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、中脳アストロサイト由来神経栄養因子(MANF)、保存ドーパミン神経栄養因子(CDNF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン(NRTN)、アルテミン(ARTN)、パーセフィン(PSPN)、インターロイキン-6、インターロイキン-11、インターロイキン-27、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子、カルジオトロフィン1、ニューロポイエチン、カルジオトロフィン様サイトカイン、FPF-1070、線維芽細胞増殖因子2、ニューレグリン-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはその機能的部分、類似体もしくは誘導体から選択される治療タンパク質である、神経学的状態(例えば疾患または疾病)を処置する方法。
14.神経学的状態が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳損傷、脊髄損傷、末梢神経変性、脳卒中、ハンチントン病、ピック病、糖尿病性神経障害、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、プリオン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、遺伝性痙性対麻痺、脊髄小脳萎縮症、フリートライヒ(Friedreich)運動失調症、アミロイドーシス、またはシャルコー・マリー・トゥース(Charcot Marie Tooth)症候群である、項目13に記載の方法。
15.項目1〜9のいずれか一項に記載の組成物を投与する段階を含む、角膜潰瘍/角膜擦過傷、タイゲソン(Thygeson)点状表層角膜症、角膜血管新生、フックス(Fuchs)ジストロフィー、乾性角結膜炎、網脈絡膜炎、網脈絡膜瘢痕、脈絡膜変性、遺伝性脈絡膜ジストロフィー、網膜剥離、網膜分離症、高血圧性網膜症、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、網膜変性、黄斑変性、網膜上膜、網膜周辺部変性、遺伝性網膜ジストロフィー、網膜色素変性症、眼球乾燥症、または網膜出血のような眼病を処置する方法。
16.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nを含む組換え融合タンパク質の有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、Xは、TNFレセプター2、インターロイキン−4またはインターロイキン−10から選択される治療タンパク質またはその一部である、炎症を処置する方法。
17.Xが小分子である、項目1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
18.融合タンパク質が、以下から選択される、項目6または32に記載の組成物
。
。
19.HB
n=2であり、かつHBがXのN末端およびC末端の両方に融合しており、HBとN末端またはC末端との融合が、任意で、少なくとも1つのリンカーペプチドを含む、項目1〜6に記載の組成物。
20.HB
n-X
nが(HB-リンカー)
n-X
m-(HB-リンカー)
oを含み、ここで、mは少なくとも1の整数であり、かつn+oは少なくとも1の整数である、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
21.HB
n-X
nが
から選択される2つ以上の異なるHBペプチドを含む、項目20に記載の組成物。
22.少なくとも2つのHB
n-X
nコンジュゲートを含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
23.Xが、SEQ ID NO:6〜9、SEQ ID NO:30〜41、SEQ ID NO:63およびSEQ ID NO:73〜76からなる群よりのタンパク質またはその機能的フラグメントのいずれか1つまたはその組合せから選択される、項目6、21または22のいずれか一項に記載の組成物。
24.活性作用物質Xをプロテオグリカンを発現している細胞または組織に送達するための、項目1〜9および17〜23のいずれか一項に記載の組成物。
25.組織が軟骨組織、神経組織、皮膚または皮下組織である、項目24に記載の組成物。
26.ハイドロゲルを含む、項目1〜9および17〜25のいずれか一項に記載の組成物。
27.ハイドロゲルが自己組織化ペプチドハイドロゲルである、項目26に記載の組成物。
28.自己組織化ペプチドハイドロゲルが、
から選択されるペプチドの少なくとも1つまたは組合せを含む、項目27に記載の組成物。
29.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nが、ハイドロゲル上またはハイドロゲル内に存在する、項目10〜16のいずれか一項に記載の方法。
30.ハイドロゲルが自己組織化ペプチドハイドロゲルである、項目29に記載の方法。
31.自己組織化ペプチドハイドロゲルが、
から選択されるペプチドの少なくとも1つまたは組合せを含む、項目30に記載の方法。
32.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nが、生体インプラント上または生体インプラント内に存在する、項目10〜16のいずれか一項に記載の方法。
33.生体インプラントが骨軟骨または半月板同種移植片である、項目32に記載の方法。
34.HB-X
nまたは(HB-リンカー)
n-X
nを含む組換え融合タンパク質の有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、Xは、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)、ソマトスタチン(SST);またはそのフラグメント、部分、類似体、誘導体もしくは機能的フラグメントから選択される治療タンパク質である、軟骨に関連する臨床状態(例えば傷害または疾病)を処置する方法。
35.SSTの類似体が、オクトレオチド、パシレオチドまたはランレオチドから選択される、項目34に記載の方法。
36.
から選択される少なくとも1つのヘパリン結合ペプチド(HB)をコードする核酸を含む、ベクター。
37.少なくとも1つの活性作用物質(X)をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、項目36に記載のベクター。
38.少なくとも1つのリンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、項目36に記載のベクター。
39.核酸配列が、少なくとも1つのHB-X
nまたはX
n-HB
n融合タンパク質をコードし、ここで、HBは、
から選択されるヘパリン結合ペプチドであり、Xは活性作用物質であり、かつnは少なくとも1の整数である、項目37に記載のベクター。
40.核酸配列が少なくとも1つの(HB-リンカー)
n-X
nまたは少なくとも1つのX
n-(HB-リンカー)
n融合タンパク質または少なくとも1つの(HB-リンカー)
n-X
m-(HB-リンカー)
o融合タンパク質をコードし、ここで、HBは、
から選択されるヘパリン結合ペプチドであり、Xは活性作用物質であり、mは少なくとも1の整数であり、かつn+oは少なくとも1の整数である、項目38に記載のベクター。
41.リンカーがGGGを含む、請求項36または38に記載のベクター。
42.Xまたはリンカーをコードする核酸配列が、HBをコードする核酸に対して5'にある、項目36〜41のいずれか一項に記載のベクター。
43.Xまたはリンカーをコードする核酸配列が、HBをコードする核酸に対して3'にある、項目36〜41のいずれか一項に記載のベクター。
44.HBペプチドをコードする核酸配列が、Xまたはリンカーをコードする核酸の5'および3'にある、項目36〜41のいずれか一項に記載のベクター。
45.ベクターが発現ベクターである、項目36〜44のいずれか一項に記載のベクター。
46.i.
からなる群より選択される少なくとも1つのHBペプチド;および
ii.HBペプチドを小分子にコンジュゲートするための化学的リンカー
を含む、キット。
47.項目36または38に記載のベクターと、活性作用物質(X)をコードする核酸配列を該ベクターに挿入するための試薬とを含む、キット。
48.項目36〜45のいずれか一項に記載のベクターを含む、細胞株。
【0271】
態様は、これから非制限的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0272】
材料および方法
軟骨結合アッセイ:
軟骨外植片を、1〜2週令の新生仔ウシの後膝関節から収集した(Research 87 Inc., Boylston MA)。関節軟骨を薄片化し、直径3mmの円板によって厚さ1mmとなるまで叩き、低グルコースDMEM中で37℃でインキュベートした。
【0273】
軟骨円板を、培地のみ、PTH、またはeHB-PTHと共にインキュベートした。24時間後、全軟骨円板を、ペプチドの全く添加されていない新鮮な培地中で3回洗浄した。その後、軟骨をインキュベーションに戻し、ペプチドの非存在下で2日後または4日後に収集した。
【0274】
軟骨円板からのタンパク質の抽出および分析:
軟骨円板を、液体窒素中で冷却しながら個々に微粉砕した。粉末を、0.1%TritonX-100、1mM PMSFおよびプロテアーゼ阻害剤混液(Sigma)を含む溶解緩衝液中に再懸濁し、4℃で一晩かけて回転させた。得られた抽出物を遠心分離によって清澄化し、タンパク質濃度を660nmのProtein Assay(Pierce)を用いてアッセイした。
【0275】
ウェスタン分析のために、等量のタンパク質(3μgの全タンパク質/レーン)を含む抽出物の一部を、還元条件下で煮沸し、4〜12%のBis-Trisゲル上で電気泳動した。軟骨外植片におけるPTHの存在のウェスタンブロット分析のための、ウサギポリクローナル抗PTH抗体はAbcam(ab40630)製であった。膜を、1:1000希釈度の抗体ab40630を用いて、その後、1:5000の希釈度の二次ヤギ抗ウサギ抗体を用いて、PTHについてプローブした。
【0276】
脊髄におけるHB-IGFIの保持の評価のために:
リタイア雄繁殖ラットをCharles Riverから入手した。ラットを安楽死させ、組織を収集した。解剖後に脊髄組織を採取し、同じような部分となるように分割した。各部分を秤量し、その後、24ウェルプレート中の1mLの無血清DMEM中で37℃でインキュベートした。その後、培地を、何も付加されていないか、1μg/mlのIGF-1を含むか、または1μg/mlのHB-IGF-1を含むのいずれかである、無血清DMEMと交換した。IGF-1はヒト組換えIGF-1(Increlex, Tercica)であった。IGF-1をHB(C17R)(SEQ ID NO:21)に融合させた。HB-IGF-1をヒト組換えHB-C17R-IGF-1として発現させ、大腸菌(E.coli)における発現後に封入体から抽出した。脊髄をHB-IGF-1と共に1日間インキュベーションした後、培地を、何も添加されていない無血清DMEMと交換した。1セットの組織を「0日目」の試料として回収し、-20℃で凍結保存した。その後、組織試料を洗い出しから24時間後(「1日目」)に採取した。
【0277】
脊髄からのタンパク質の抽出および分析:
タンパク質を、凍結した脊髄組織から、1mlの溶解緩衝液/100mgの組織中でホモジナイズすることによって抽出した。溶解緩衝液は、1mMのPMSFおよびプロテアーゼ阻害剤混液(Sigma)と共に0.1%のTrition X-100を含んでいた。全タンパク質濃度を測定し、等量の全タンパク質を含む抽出物の一部を還元試料緩衝液中で煮沸し、ウェスタン分析のために4〜12%のBis-Trisゲル上にローディングした。
【0278】
C17KおよびC17R HBペプチドを含む融合タンパク質の発現の決定:
可溶性HB-IGF-1の優れた発現が、野生型(SEQ ID NO:20)およびC17S配列(SEQ ID NO; 41)と比較して、増強HBペプチド(例えばC17RおよびC17K)配列を用いて検出された。以下のプラスミドからのタンパク質発現を評価した:(i)pET24a(+)におけるプラスミド04 HB(C17K)-IGF-1、(ii)pET24a(+)におけるプラスミド05 HB(C17R)-IGF-1、(iii)pET24a(+)におけるプラスミド06 HB(C17S)-IGF-1、および(iv)pET24a(+)におけるプラスミド07: HB-IGF-1。HB-IGF-1および突然変異体(上記に列挙)をT7 Express E.coli細胞に形質転換し、1Lのバッチ中のルリア・ベルターニ(LB)培地中で増殖させた。タンパク質発現を、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトシドを用いて4時間誘導し、その後、細胞を遠心分離によって収集した。タンパク質を、10mlのBugBuster Master Mix native extraction reagent (Novagen)を用いて抽出した。10μlの各試料を4〜12%のBis-Trisゲル上で還元条件下で泳動した。発現レベルを、ウェスタンブロットによってIGF-1抗体ab9572(AbCam)を使用して比較した。
【0279】
C17KおよびC17R HBペプチドを含む融合タンパク質の産生収量の決定:
増強HB(C17R)ペプチドを含む可溶性HB-IGF-1融合タンパク質の精製に対する優れた収量が検出された。以下のプラスミドからの融合タンパク質の以下の収量が評価された:(i)pET24a(+)におけるプラスミド05 HB(C17R)-IGF-1、または(ii)pET24a(+)におけるプラスミド07: HB-IGF-1。
【0280】
HB-IGF-1およびHB(C17R)-IGF-1(上記に列挙)をT7 Express E.coli細胞へと形質転換し、ILバッチ中のルリア・ベルターニ(LB)培地中で増殖させた。タンパク質発現を、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトシドを用いて4時間誘導し、その後、細胞を遠心分離によって収集した。タンパク質を、BugBuster Master Mix native extraction reagent (Novagen)を用いて抽出した。試料をHiLoad 16/60 Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーカラム上にローディングすることによって精製を行なった。各画分に2mlが溶出された。10μlの各画分を、4〜12%のBis-Trisゲル上に還元条件下で泳動した。各画分中のIGF-1を、ウェスタンブロットによってIGF-1抗体ab9572(AbCam)を使用してアッセイした。C17R変異体(eHB)については画分3〜12(示されている画分)に、野生型変異体については画分4〜10にタンパク質が検出された。
【0281】
増強HB(C17R)が、封入体からのHB-IGF-1融合タンパク質の優れた収量を可能とすることを実証するために、HB-IGF-1およびHB(C17R)-IGF-1をコードするプラスミド(例えば、上記に列挙されているような、pET24a(+)におけるプラスミド05 HB(C17R)-IGF-1、または(ii)pET24a(+)におけるプラスミド07:HB-IGF-1)を、T7 Express E.coli細胞に形質転換し、1Lのバッチ中のルリア・ベルターニ(LB)培地中で増殖させた。誘導試料については、タンパク質の発現を、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトシドを用いて4時間誘導した。非誘導試料は、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトシドを用いずに4時間増殖させた。その後、細胞を遠心分離によって収集した。細胞を、6Mの塩酸グアニジン、20mMのリン酸ナトリウム、500mMのNaClを含む、8mlの溶解緩衝液(pH7.8)中で溶解した。細胞溶解液を、50mMのTris、100mMのNaClを含む緩衝液中で透析した。5μlの各試料を、4〜12%のBis-Trisゲル上で還元条件下で泳動した。試料を、IGF-1について、IGF-1抗体ab9572(AbCam)を使用してウェスタンブロットによって、およびクーマシー染色によって分析した。
【0282】
実施例1. HB-IGF-1融合タンパク質
HB-IGF-1構築物は、成熟IGF-1タンパク質のアミノ末端に融合したヘパリン結合ドメインを発現させるように作製された。HB-IGF-1融合タンパク質は、大腸菌における組換え発現によって産生され、リフォールディングされ、逆相クロマトグラフィーによって精製された。ヒト組換えIGF-1は市販されており、例えばINCRELEX(登録商標)(メカセルミン [rDNA起源], Ipsen Biopharmaceuticals, Inc., Basking Ridge, NJ)。
【0283】
実施例2. インビボでの結合および薬物動態
実験は、雄Lewisラット(251〜275g、Charles River, Wilmington, MA)を用いて実施された。全ての動物手順は、Harvard Medical Area Standing Committee on Animalsによって承認された。
【0284】
ラットは、100μgのHB-IGF-1、100μgのIGF-1、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む1回の関節内注射を、右膝蓋大腿関節に受けた。関節軟骨、内側半月板および膝蓋腱試料を、注射から2、4、6および8日後に収集した。試料を秤量し、液体窒素中で微粉砕し、組織1mgあたり10μlの溶解緩衝液(100mMのNaCl、50mMのTris、0.5%のTriton X-100、5mMのEDTA、1mMのPMSF、およびプロテアーゼ阻害剤混液[Roshe])を用いて抽出した。等量のタンパク質塊を有する抽出物の一部を、ウェスタンブロットによって分析した。血清IGF-1レベルを、ヒトIGF-1には反応性であるがげっ歯類IGF-1には反応性ではないELISA(R&D Systems #DY291)によって測定した。
【0285】
実施例3. 軟骨生合成アッセイ
ラットを、100μgのHB-IGF-1、100μgのIGF-1またはPBSを含む1回の関節内注射を右膝蓋大腿関節に受けるように無作為に割り当てた。動物を注射から2日後または4日後に屠殺した。屠殺後、右膝関節からの半月板を収集し、37℃で、5μCi/mlの
35S-硫酸塩を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で18時間インキュベートした。インキュベーション後、試料を4回、15分間、硫酸塩を含むPBS中で洗浄して、取り込まれていない放射標識を除去した。試料を一晩かけて1mg/mlのプロテイナーゼKを用いて60℃で消化し、放射能標識の取り込みを、液体シンチレーションカウンターで測定した。
【0286】
実施例4. 関節傷害ラットモデル
手術手順のために、ラットを、3つの群の1つに無作為に割り当てた:100μgのHB-IGF-1、100μgのIGF-1またはPBSを含む50μlの関節内注射液を右膝関節に。初回注射は、内側半月断裂(MMT)の1日前に投与された。MMTモデルは以前に記載されているように使用された。Gerwin et al., 18 Osteoarthr. Cartil. S24 (2010)。簡潔に言えば、皮膚切開は、膝の内側の面を横切って行なわれた。内側側副靭帯を、鈍的切開によってさらし、横切開した。内側半月板は内側に曲げられ、これを切断して完全断裂を模倣した。その後の関節内注射をMMTの7日後および14日後に投与した。動物を手術から21日後に屠殺した。
【0287】
組織学的ステージ分類および切片化を実施した。膝関節を収集し、4%パラホルムアルデヒド中に固定した。その後、関節を5%ギ酸脱灰溶液(ImmunoCal, Decal Chemical Corp, Tallman, NY)に移した。関節を半分に切断して、前切片および後切片を形成し、パラフィンに包埋させた。約200μm離れて採取された8μmの切片をトルイジンブルーを用いて染色した。
【0288】
内側脛骨プラトーを分析し顕微鏡画像を撮影した。最大の損傷度を示す中心の大半の切片を、盲検的スコアリングのために選択した。損傷を、修正マンキンスコアリングシステムを使用してスコアリングした。損傷は、3つの異なる計量を使用して測定された:軟骨マトリックスの減少幅、全軟骨変性幅、および有意な変性幅。
【0289】
軟骨マトリックス減少幅は、100%のマトリックス減少度だけ測定され、一方、PGまたは軟骨細胞変性の領域は無視される。測定は、表面(深さ0%)およびタイドマーク(100%)の深さで行なわれた。全軟骨変性幅は、任意の種類の変性変化に罹った関節軟骨の領域の全幅を測定した。有意な軟骨変性幅は、軟骨の50%を超える厚さに影響を及ぼした損傷の程度を測定した。有意な軟骨変性幅は、コラーゲンマトリックス、PG、または軟骨細胞の変性の任意の形態を含んでいた。全ての結果は平均値±SEMとして表現される。
【0290】
実施例5:
本発明者らは、SEQ ID NO:20におけるアミノ酸残基17(SEQ ID NO:1のアミノ酸残基16に対応する)の改変は、組織におけるHB-融合タンパク質の収量および保持を増加させ得ることを実証した。SEQ ID NO:20の17-merのHBペプチドを使用して、本発明者らは、C17S
または野生型HB(SEQ ID NO:20)を含むHB-IGF-1融合タンパク質と比較して、増強HB(eHB)ペプチド:C17K(SEQ ID NO:22)およびC17R(SEQ ID NO:21)を含む融合タンパク質と共にインキュベートした軟骨外植片において、可溶性HB-IGF-1が予期せぬ優れた保持を示すことを実証する。さらに、C17S
または野生型HB(SEQ ID NO:20)を含むHB-IGF-1融合タンパク質と比較して、増強HB(eHB)ペプチド:C17K(SEQ ID NO:22)およびC17R(SEQ ID NO:21)を含む融合タンパク質と共にインキュベートした軟骨外植片において、可溶性HB-IGF-1が予期せぬ優れた発現を示す(
図5)。
【0291】
さらに、驚くべきことに、本発明者らは、野生型HB(SEQ ID NO:20)を含むHB-IGF融合タンパク質とインキュベートした軟骨外植片と比較して、C17R(SEQ ID NO:21)を含むHB-IGF-1融合タンパク質と共にインキュベートした軟骨外植片を用いて、可溶性HB-IGF-1を精製した時に有意により高い収量を検出した(
図6)。
【0292】
次に、本発明者らはまた、可溶性HB-IGFのより高い精製収量は、野生型HB(SEQ ID NO:20)を含むHB-IGF-1とインキュベートした軟骨外植片と比較して、C17R(SEQ ID NO:21)を含むHB-IGF-1融合タンパク質と共にインキュベートした軟骨外植片から得られた封入体(誘導および非誘導)から得ることができることを実証する(
図7)。
【0293】
したがって、本発明者らは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:20における負に荷電したアミノ酸の修飾、例えば、SEQ ID NO:20のアミノ酸17のシステイン残基の、正に荷電した残基(例えばアルギニンまたはリジン)への変化(またはSEQ ID NO:1のシステインアミノ酸残基16の変化)は、驚くべきことに、組織に保持されたHB-融合タンパク質の量の有意な増加をもたらすことができるだけでなく、全組織抽出物(
図6)および組織抽出物に由来する封入体の両方からの組織から得られたHB-融合タンパク質の収量を有意に増加させ得ることを実証する(
図7)。
【0294】
実施例6:
実施例1〜4において、本発明者らは、IGF-1とヘパリン結合(HB)との融合物は、非常に豊富な硫酸コンドロイチンプロテオグリカンとの相互作用を通して、軟骨組織内に融合タンパク質がより長く保持されることを可能とすることを実証する。しかしながら、他の組織もまた、その細胞外マトリックスに豊富な負に荷電したプロテオグリカンを有する。したがって、本発明者らは、HB-IGF-1融合タンパク質が、脊髄から収集された神経組織においてタンパク質がより長く保持されるかどうかを評価した。
【0295】
脊髄外植片をIGF-1またはHB-IGF-1の存在下で1日間インキュベーションした後、組織抽出物において両方のタンパク質が、IGF-1についてのウェスタンブロットによって検出された(
図8)。洗い流した1日後、検出可能な融合していないIGF-1が、組織に残っていることは全く検出されなかった。これとは対照的に、HB-IGF-1タンパク質は、脊髄組織抽出物において検出可能で残存していた(
図8)。
【0296】
したがって、本発明者らは、HB-IGF-1が、脊髄組織にエクスビボで少なくとも24時間保持され、一方、改変されていない(融合していない)IGF-1は保持されないことを本明細書において実証した。したがって、タンパク質に融合させたHBは、軟骨以外の組織(神経組織および組織の細胞表面上に豊富な硫酸コンドロイチンプロテオグリカンを有する他の組織)にタンパク質がより長く保持されることを可能にする。
【0297】
実施例7:
実施例1〜4において、本発明者らは、IGF-1とHBドメインの融合は、軟骨におけるIGF-1融合タンパク質の標的化されかつ持続された保持を可能とすることを実証する。しかしながら、本明細書において考察されているように、HBドメインの融合は、IGF-1タンパク質に限定されない。したがって、HBを、複数の治療タンパク質の標的化送達のための戦略としてあらゆる活性作用物質に融合させることができる。
【0298】
副甲状腺ホルモン(PTH)のペプチド、例えばアミノ酸1〜34(PTH(1-34))は、軟骨修復に利点を有する可能性のある骨粗鬆症における臨床使用に承認されたペプチドである。ラット変形性関節症モデルにおいて、それは変形性関節症の発症の程度を減少させることが示された(Chang et al., 2009)。
【0299】
本明細書において実証されているように、本発明者らは、PTH-HB融合タンパク質を使用して、ウシ組織培養外植片を使用して、軟骨におけるPTHの保持を評価した。
【0300】
以下のPTHペプチドが合成によって作製された(ペプチド2.0、Chantilly VA):
1. PTH(1-34)-ビオチン:
2. PTH(1-34)-リンカー-HB-ビオチン:
ビオチンは、PTH(1-34)およびPTH(1-34)-リンカー-HBペプチドに、同定および追跡目的で付加された。同様に、ビオチンを含まないPTH(1-34)-リンカー-HB構築物は、治療目的で使用されることができる。さらに、本明細書に開示されているように、リンカーを用いないで使用することもできる。軟骨外植片におけるPTHの存在のウェスタンブロット分析のための、ウサギポリクローナル抗PTH抗体はAbcam(ab40630)製であった。
【0301】
ウェスタン分析は、PTHおよびPTH-HBペプチドの両方の検出を実証した(
図9A)。PTHペプチドの非存在下で2日間インキュベーションした後、組織に残存しているPTHはほんの僅かしか検出されなかった(
図9B)。これとは対照的に、組織に残存しているPTH-eHBペプチドは強く検出された(
図9B)。さらに、PTH-HBペプチドは、PTHペプチドの非存在下で4日間インキュベーションした後、組織に非常に豊富に残存していた(データは示さず)。ここでも、PTHペプチドはほんの僅かしか検出されなかった(データは示さず)。
【0302】
したがって、本発明者らは、ヘパリン結合配列
への融合によるPTH(1-34)ペプチドの改変は、軟骨組織におけるPTHペプチドのより長い保持を可能とすることを本明細書において実証した。したがって、PTH-HBペプチドを、損傷後またはOA中の軟骨減少を予防するために軟骨組織において保持させることができる。
【0303】
参考文献
本明細書および明細書全体を通して引用された参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。