特許第5918911号(P5918911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918911
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/28 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   B60P1/28 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-527069(P2015-527069)
(86)(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公表番号】特表2015-529167(P2015-529167A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2013004531
(87)【国際公開番号】WO2014049927
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-210852(P2012-210852)
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石原 和典
(72)【発明者】
【氏名】岩城 毅
(72)【発明者】
【氏名】池田 純
(72)【発明者】
【氏名】北 泰樹
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−000918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00− 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、この車体フレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記車体フレームに対して上下方向に回動自在に取り付けられた荷台と、を備えたダンプトラックにおいて、
前記荷台の底面には、前記車体フレームの前後方向に沿ってレールが設けられ、
前記レールは、前記荷台の底面から下方に延びると共に、前記車体フレームの左右方向に間隔を空けて対峙する2つのレール側板と、これら2つのレール側板のそれぞれの下端面と当接するレール底板と、を有して成ると共に、前記車体フレームからゴムパッドを介して反力を受ける中空構造体であり、
前記車体フレームは、前記車体フレームの左右方向に間隔を空けて対峙する2つのフレーム側板と、これら2つのフレーム側板のそれぞれの上端面に接合され、前記ゴムパッドを介して前記レール底板と対向するフレーム天板と、を有して成り、
前記レール側板の板厚をTs、前記レール底板の板厚をTb、前記フレーム天板の板厚をTfとしたとき、Ts<Tb<Tfの関係を満たすことを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記レール底板には、前記ゴムパッドが複数設けられ、
前記レールは、前記複数のゴムパッドが設けられている領域内に限って、Ts<Tb<Tfの関係を満たすように構成されることを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項1の記載において、
前記フレーム天板には、前記ゴムパッドが複数設けられ、
前記レールは、前記複数のゴムパッドと接触する領域内に限って、Ts<Tb<Tfの関係を満たすように構成されることを特徴とするダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂等の運搬対象物を運搬するダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダンプトラックは、4輪を配置した車体フレームを備えている。この車体フレ
ームの前方上部には、運転室およびコントロールボックスが配置されている。また、車体
フレームには、この車体フレーム上の中央から後方にかけて荷台が取り付けられている。
【0003】
この荷台は、車体フレームの後方に取り付けられたヒンジピンと、このヒンジピンより
車体フレームの前方に取り付けられたホイストシリンダとによって、車体フレームに連結
されている。そして、この荷台は、ホイストシリンダの伸縮動作に伴って、ヒンジピンを
中心に上下方向に回動する(起伏動作する)。
【0004】
ダンプトラックの荷台には、例えば油圧ショベル等にて土砂や砕石等の運搬対象物が山
積みされる。そして、ダンプトラックは、荷台を倒伏状態から起立状態に移行させること
によって、荷台に積載された運搬対象物を降ろすことができる構成とされている(例えば
、特許文献1,2参照)。
【0005】
荷台は、底部を形成する底板と、この底板の前側に位置し前面を形成する前板と、底板
の両側に位置する一対の側板と、によって積載部が構成されている。荷台の前板は、その
上部に、運転室およびコントロールボックスを覆うように、前方に突出させた天板部が連
結されている。
【0006】
また、荷台の底板の下面には、一対のレールが、前後方向(長手方向)に亘って取り付
けられている。各レールは、荷台の底板から下方に延びる2つのレール側板と、2つのレ
ール側板のそれぞれの下端面に当接するレール底板とを有して成る中空のボックス構造体
である。なお、レール底板には、緩衝材としてのゴムパッドが取り付けられていることが
多い。このゴムパッドは、走行中に荷台が振動するのを防止したり、荷台に土砂を積み込
む際の車体フレームに対する衝撃を吸収したりするためのものである。
【0007】
さらに、荷台の底板の下面には、左右方向に延びる複数のスティフナ(補強用部材)が
、一対のレールと交差するようにして、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。な
お、各スティフナは、溝形鋼(チャンネル)から成る構造体である。荷台の底板、前板、
一対の側板、天板部、一対のレールおよび各スティフナは、溶接により接合されており、
荷台の底板の剛性は、一対のレールおよび複数のスティフナにて確保されている。
【0008】
荷台の積載部に運搬対象物が山積みされた場合、荷台には、この運搬対象物から高い負
荷が掛かる。この荷台に掛かる負荷は、荷台の底板を介して、レールおよびヒンジピンに
連結された部分、すなわちヒンジピンブラケットにて受けられる。そして、レールに掛か
る負荷は、レールを支持する車体フレームに分担される。また、荷台のヒンジピンブラケ
ットに掛かる負荷は、ヒンジピンを介して、車体フレームに分担される。
【0009】
ここで、ヒンジピンブラケットは、荷台を起立させて運搬対象物を降ろすときに高い負
荷が掛かるため、比較的厚い板材が使用されており、高い剛性が確保されている。一方、
レールは、荷台の底板の下面の前後方向に亘る広い範囲に配置されているため、比較的薄
い板材をボックス構造とすることで剛性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−176269号公報
【特許文献2】米国特許第5555699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、荷台が車体フレームに着座した状態(倒伏姿勢の状態)では、レールは車体
フレームから(ゴムパッドを介して)反力を受けるので、レールには、上下方向に押し潰
されるような力が掛かっている。そのため、図11に示すように、レール底板は、レール
側板との接合部を支点として中央が頂部となるように変形する。よって、レール底板の中
央(凸型頂点)には、大きな曲げモーメントが作用する。それによって、大きな曲げ応力
が発生するため、レール底板の中央部はき裂が発生する虞がある。また、レール底板とレ
ール側板との接合部には大きなたわみ角が発生するため、この接合部にも大きな応力が発
生する。そのため、レール底板とレール側板との接合部は、破損しやすい箇所となってい
る。
【0012】
この接合部の損傷の発生を防止するためには、接合部の板厚を厚くして、応力を下げる
ようにすれば良い。しかし、この場合、荷台の質量が増加してしまい、許容積荷質量の減
量、走行燃費の悪化、タイヤ寿命の低下等の問題が生じるため、得策ではない。
【0013】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、荷台の底
板に設けられたレールの板厚を厚くする箇所をなるべく少なくして軽量化を図りつつ、レ
ールの剛性を高め、構造物の信頼性を向上したダンプトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るダンプトラックは、車体フレームと、この車体フレームの後部に配置されたヒンジピンと、このヒンジピンを介して前記車体フレームに対して上下方向に回動自在に取り付けられた荷台と、を備え、さらに、前記荷台の底面には、前記車体フレームの前後方向に沿ってレールが設けられ、前記レールは、前記荷台の底面から下方に延びると共に、前記車体フレームの左右方向に間隔を空けて対峙する2つのレール側板と、これら2つのレール側板のそれぞれの下端面と当接するレール底板と、を有して成ると共に、前記車体フレームからゴムパッドを介して反力を受ける中空構造体であり、前記車体フレームは、前記車体フレームの左右方向に間隔を空けて対峙する2つのフレーム側板と、これら2つのフレーム側板のそれぞれの上端面に接合され、前記ゴムパッドを介して前記レール底板と対向するフレーム天板と、を有して成り、前記レール側板の板厚をTs、前記レール底板の板厚をTb、前記フレーム天板の板厚をTfとしたとき、Ts<Tb<Tfの関係を満たすことを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、レール側板の板厚Tsよりレール底板の板厚Tbを厚くする構成とし
たので、レールの剛性が高められる。そのため、車体フレームから反力を受けても、レー
ル底板の上下方向への曲げ変形は小さくなる。よって、レール底板とレール側板との接合
部の応力が低くなり、破損が防止される。このとき、レール側板の板厚Tsはレール底板
の板厚Tbより薄くしているので、レールの板厚を全体的に厚くする場合に比べて軽量化
を図ることができる。
【0016】
ところで、荷台は、定期的に補修あるいは交換して使用される消耗部品であるが、車体フレームは、そのような消耗部品という位置付けではない。そのため、荷台の補修や交換はやむを得ないとしても、車体フレームを補修または交換するような状況になることは望ましくない。そこで、本発明では、レール底板の板厚Tbよりフレーム天板の板厚Tfを厚くした。こうすることで、車体フレームが荷台より先に破損する可能性は低くなり、通常のメンテナンス時には、荷台のみを定期的に補修したりあるいは交換したりすれば済む。
【0017】
このように、本発明は、レール側板の板厚Ts<レール底板の板厚Tbの関係を満たす構成としたので、レールの剛性を高める際に、レール底板の板厚をレール側板より板厚を厚くするだけで良くなる。よって、レールの軽量化を図りつつ、剛性を高めることができる。このことは、荷台の長寿命化にも貢献することになる。また、本発明は、レール底板の板厚Tb<フレーム天板の板厚Tfの関係を満たす構成としたので、メンテナンス性にも優れている。
【0018】
次に、上記構成において、前記レール底板には、前記ゴムパッドが複数設けられ、前記レールは、前記複数のゴムパッドが設けられている領域内に限って、Ts<Tb<Tfの関係を満たすように構成されていても良い。このようにすると、レール全体のうち複数のゴムパッドが設けられている領域以外の部分は、レール底板の板厚を厚くしなくて済むので、荷台質量の増加を最小限に留めることができる。
【0019】
また、上記構成において、前記フレーム天板には、前記ゴムパッドが複数設けられ、前記レールは、前記複数のゴムパッドと接触する領域内に限って、Ts<Tb<Tfの関係を満たすように構成されていても良い。このようにすると、レール全体のうち複数のゴムパッドを接触する領域以外の部分は、レール底板の板厚を厚くしなくて済むので、荷台質量の増加を最小限に留めることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に係るダンプトラックは、上記構成を備えることにより、荷台の底
板に設けられたレールの板厚を厚くする箇所をなるべく少なくして軽量化を図りつつ、レ
ールの剛性を高め、構造物の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
図2図1に示すダンプトラックの荷台を起立させた状態の要部の概略を示す斜視図である。
図3図1に示すダンプトラックの荷台の側面図である。
図4図3に示す荷台の底面図である。
図5図1のB−B断面図である。
図6図4に示す荷台の底面の変形例に係る構造を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るダンプトラックの荷台を起立させた状態の要部の概略を示す斜視図である。
図8図7に示すダンプトラックの荷台の側面図である。
図9図8に示す荷台の底面図である。
図10図9に示す荷台の底面の変形例に係る構造を示す図である。
図11】従来のダンプトラックにおいて、荷台のレールが受ける反力とレールの変形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るダンプトラックを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るダンプトラックの側面図である。また、図2は、
図1に示すダンプトラックの荷台を起立させた状態の要部の概略を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、第1実施形態に係るダンプトラック1は、車体フレーム2、一対の
前輪3、一対の後輪4、および荷台5を備えている。一対の前輪3は、車体フレーム2の
前部の左右両端に回転可能に取り付けられている。また、一対の後輪4は、車体フレーム
2の後部の左右両端に回転可能に取り付けられている。さらに、荷台5は、土砂や砕石等
の運搬対象物Aを積載する部分であって、車体フレーム2上に起伏可能に取り付けられて
いる。
【0025】
車体フレーム2は、いわゆる車体であって、図2に示すように、一対のフレーム材2a
にて構成されている。これら一対のフレーム材2aは、前後方向に細長く延びたフレーム
形状を成しており、荷台5が車体フレーム2に着座した状態では、荷台5の一対のレール
12がちょうど一対のフレーム材2aに載置されるように構成されている。即ち、一対の
フレーム材2aは、図4に示す一対のレール12(後述)と同じような形状から成る。
【0026】
また、車体フレーム2の後部には、荷台5を起立又は倒伏させる(上下方向に回動させ
る)際の回転中心となるヒンジピン6が取り付けられている。この車体フレーム2のうち
のヒンジピン6より前方には、この車体フレーム2と荷台5とを連結する油圧シリンダと
しての一対のホイストシリンダ7が取り付けられている。これら一対のホイストシリンダ
7は、車体フレーム2の前後方向の略中央部に取り付けられている。また、車体フレーム
2の左側の前輪の上方には、オペレータが乗車する運転室であるキャブ8が設けられ、車
体フレーム2の前部には、油圧機器が収容されたパワーユニット10が設けられている。
【0027】
よって、オペレータがキャブ8からホイストシリンダ7を駆動すると、荷台5は、ホイ
ストシリンダ7の収縮動作に伴ってヒンジピン6を中心に下方に回動し、車体フレーム2
に着座する倒伏姿勢となる。また、荷台5は、ホイストシリンダ7の伸長動作に伴ってヒ
ンジピン6を中心に上方に回動し、運搬対象物Aを放出する起立姿勢(図2参照)となる
【0028】
なお、図1の符号9は、荷台5が左右方向に移動することを防止するために車体フレー
ム2の側部と当接するガイドである。
【0029】
次に、荷台5の構造について詳しく説明する。図3は、第1実施形態に係るダンプトラ
ックの荷台の側面図である。また、図4は、図3に示す荷台の底面図である。図3および
図4に示すように、荷台5は、底板(フロア)11a、前板(フロント)11b、および
2つの側板(サイド)11cにより上方および後方が開放された略箱型の形状を成してお
り、その内部に運搬対象物Aを積載するための積載部11が形成されている。なお、底板
11a、前板11b、および側板11cはそれぞれ溶接により接合されている。
【0030】
また、前板11bの上部には、略板状の天板(キャノピ)11dが取り付けられている
。この天板11dは、前板11bの上部からダンプトラック1の前方上部を覆うように前
方に突出させて取り付けられている。すなわち、この天板11dは、車体フレーム2上に
荷台5が着座する倒伏状態で、この荷台5からの搬送対象物Aの落下によるキャブ8、コ
ントロールボックス9、パワーユニット10等の損傷を防止するために設けられている。
【0031】
さらに、図4に示すように、底板11aの下面には、車体フレーム2の前後方向に亘っ
て、中空のボックス形状から成る一対のレール12が取り付けられている。これら一対の
レール12は、荷台5が車体フレーム2に着座した状態において、ちょうど車体フレーム
2の各フレーム材2aの上面に載置されるように、各フレーム材2aと同じような形状と
なっている。その形状を具体的に説明すると、一対のレール12は、荷台5の後方から中
間部にかけて互いに略平行に延び、中間部から荷台5の前方にかけて互いに離隔するよう
に外方にやや折れ曲がった形状となっている。
【0032】
次に、これら一対のレール12の断面形状と板厚の関係について説明する。図5は、車
体フレーム2上に荷台5を着座させた倒伏状態におけるレール12と車体フレーム2の要
部断面図(図1のB−B断面図)である。図5に示すように、レール12は、荷台5の底
板11aから下方に延びる2つのレール側板12aと、これら2つのレール側板12aの
平らな下端面12a−1と当接するレール底板12bとを有し、荷台5の底板11aとレ
ール側板12aとレール底板12bとの間に空間が形成された中空のボックス構造となっ
ている。
【0033】
2つのレール側板12aは、板厚Tsを有する板状体であって、車体フレーム2の左右
方向に間隔を空けて対峙される。一方、レール底板12bは、板厚Tbを有する板状体で
あって、2つのレール側板12aと溶接により接合される。このように形成されたレール
12は、2つのレール側板12aとレール底板12bとが溶接により一体化されるので、
中空であっても高い剛性が確保されている。なお、レール底板12bは、幅方向の両側縁
がレール側板12aの外側面よりやや外側に突出させた状態で、各レール側板12aの下
端に取り付けられている。すなわち、レール底板12bの幅は、2つのレール側板12a
の間隔よりやや大きい。
【0034】
このレール底板12bの下面には、断面が矩形状のゴムパッド13が取り付けられてい
る。その数は、1つのレール12に対して5個である(図2〜4参照)。これにより、荷
台5は、車体フレーム2に着座したときや、積載物を積み込んだときの衝撃が緩和される
と共に、ゴムパッド13と車体フレーム2との間の摩擦力により安定した姿勢で着座する
こととなる。
【0035】
また、レール12の中間部よりやや後ろ側の位置には、ヒンジブラケット15がそれぞ
れ取り付けられている。これらヒンジブラケット15には、ヒンジピン6が回転可能に挿
通されている。すなわち、ヒンジピンブラケット15は、ヒンジピン6を回転可能に支持
する。
【0036】
また、荷台5の底板11aの下面には、各レール12に交差させて複数、例えば7本の
スティフナ14が溶接により接合されている。これらスティフナ14は、前後方向に間隔
を空けて底板11aの下面に水平に取り付けられている。なお、スティフナ14は、断面
略凹型のチャンネル形状(中空構造)に形成され、その長さは、底板11aの左右方向の
長さ(幅)と略等しくなっている。よって、スティフナ14は、底板11aの左右方向に
全体的に亘って設けられることになる。
【0037】
一方、車体フレーム2のフレーム材2aは、車体フレーム2の左右方向に間隔を空けて
配置される2つのフレーム側板2a−1と、これら2つのフレーム側板2a−1の上端面
に溶接により接合された、板厚Tfを有する板状体のフレーム天板2a−2とを有して構
成されている。
【0038】
第1実施形態では、例えば、レール側板12aの板厚Ts=12mm、レール底板12
bの板厚Tb=18mm、フレーム天板2a−2の板厚Tf=30mmで構成されていて
、各板厚の関係が、レール12の長手方向の全体に亘って、「Ts<Tb<Tf」を満た
すようになっている。ただし、第1実施形態で板厚を従来のものより厚くした部材は、レ
ール底板12bのみである。
【0039】
以上から、第1実施形態では、レール底板12bの板厚Tbをレール側板12aの板厚
Tsより厚くしたので、レール底板12bの上下方向への曲げ変形が小さくなり、レール
側板12aとレール底板12bとの接合部や、レール底板12bの中央部など、従来は高
応力箇所であった部分(図11参照)の応力を低減することができる。しかも、第1実施
形態では、レール底板12bの板厚Tbだけを従来のものより厚くしているので、レール
側板12aとレール底板12bの両方の板厚を厚くして剛性を高める場合に比べて、荷台
5の軽量化を図ることができる。
【0040】
また、第1実施形態では、レール底板12bの板厚Tbを厚くできる範囲の上限を、車
体フレーム2のフレーム天板2a−2の板厚Tf未満(例えば、Tf=30mmの場合、
Tbは30mm未満)としたので、万一の場合であっても、車体フレーム2より先にレー
ル12が破損するはずである。そして、このような場合に、第1実施形態では、レール1
2の補修あるいは荷台5の交換を行うだけで、ダンプトラックを使用することができるの
で、大掛かりなメンテナンス作業が必要なくなり、メンテナンスコストも抑えることがで
きる。
【0041】
ここで、第1実施形態では、レール12の板厚を、全体に亘って「Ts<Tb<Tf」
の関係を満たすように構成したが、例えば、図6に示す変形例のように、レール12のう
ち、ゴムパット13が取り付けられている領域(図6中の点線で囲まれた領域)に限って
、レール側板12aの板厚Ts=12mm、レール底板12bの板厚Tb=18mm、フ
レーム天板2a−2の板厚Tf=30mmで構成して、「Ts<Tb<Tf」の関係を満
たすようにし、それ以外の領域は、例えば従来通り、Ts=Tb=12mm、Tf=30
mmの板厚にしても良い。こうすると、レール底板12bを全体に亘って板厚Tb=18
mmにする場合に比べて、レール12を軽量化することができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図を用いて説明する。図7は本発明の第2実施形
態に係るダンプトラックの荷台を起立させた状態の要部の概略を示す斜視図、図8は第2
実施形態に係るダンプトラックの荷台の側面図、図9は第2実施形態に係るダンプトラッ
クの荷台の底面図である。
【0043】
第2実施形態は、ゴムパッド13を車体フレーム2に取り付ける構成とした点が第1実
施形態と相違するが、それ以外の構成は同じである。そこで、以下の説明では、この相違
点について行うこととし、同一の構成については同一符号を付して、その説明は省略する
【0044】
図7図9に示すように、第2実施形態では、荷台105のレール12の底面にゴムパ
ッド13は設けられておらず、車体フレーム2を構成するフレーム天板2a−2(図5
照)の上面にそれぞれ5個ずつ取り付けられている。なお、この第2実施形態でも、レー
ル側板12aの板厚Ts=12mm、レール底板12bと板厚Tb=18mm、フレーム
天板2a−2の板厚Tf=30mmとなっており、これらの板厚の寸法関係は、レール1
2の長手方向の全体に亘って、「Ts<Tb<Tf」を満たしている。
【0045】
このように構成された本発明の第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の
効果が得られる。即ち、レール側板12aとレール底板12bとの接合部や、レール底板
12bの中央部など、従来は高応力箇所であった部分の応力を低減することができる。し
かも、第2実施形態では、レール底板12bの板厚Tbだけを従来のものより厚くしてい
るので、レール側板12aとレール底板12bの両方の板厚を厚くして剛性を高める場合
に比べて、荷台105の軽量化を図ることができる。また、第2実施形態では、レール1
2の補修あるいは荷台105の交換を行うだけで、ダンプトラックを使用することができ
るので、大掛かりなメンテナンス作業が必要なくなり、メンテナンスコストも抑えること
ができる。
【0046】
ここで、第2実施形態では、レール12の全体の板厚を、「Ts<Tb<Tf」の関係
を満たすように構成したが、例えば、図10に示す変形例のように、レール12のうち、
ゴムパット13と接触する領域(図10の点線で囲まれた領域)に限って、レール側板1
2aの板厚Ts=12mm、レール底板12bの板厚Tb=18mm、フレーム天板2a
−2の板厚Tf=30mmで構成して、「Ts<Tb<Tf」の関係を満たすようにし、
それ以外の領域は、例えば従来通り、Ts=Tb=12mm、Tf=30mmの板厚にし
ても良い。こうすると、レール底板12bを全体に亘って板厚Tb=18mmにする場合
に比べて、レール12を軽量化することができる。
【0047】
なお、上記した第1、第2実施形態では、ゴムパッド13が設けられた構成を例示した
が、ゴムパッド13を設けることなく、荷台5,105と車体フレーム2とが直接接触す
るような構成の場合であっても、レール側板12aの板厚Tsと、レール底板12bの板
厚Tbと、フレーム天板2a−2の板厚Tfとを、「Ts<Tb<Tf」の関係を満たす
ようにすれば、第1、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
また、第1実施形態において、ゴムパッド13とレール底板12bとの間に隙間調整用
のシムを設ける構成、第2実施形態において、ゴムパッド13とフレーム天板2a−2と
の間に隙間調整用のシムを設ける構成を採用することもできる。この場合、荷台5,10
5と車体フレーム2との間の隙間をシムで調節できるから、レール12の局部に応力が集
中することを防止することができる。また、荷台5,105が車体フレーム2に安定した
姿勢で載置することができるといった利点もある。
【符号の説明】
【0049】
1 ダンプトラック
2 車体フレーム
5 荷台
6 ヒンジピン
11a 荷台の底板
12 レール
12a レール側板
12a−1 レール側板の下端面
12b レール底板
13 ゴムパッド
105 荷台
図1
図3
図4
図6
図8
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図5
図7
図11