特許第5918989号(P5918989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918989
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】揮散装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20160428BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20160428BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20160428BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D85/00 A
   B65D83/00 F
   A01M1/20 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-275169(P2011-275169)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-123593(P2013-123593A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100088100
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 千明
(72)【発明者】
【氏名】水中 幹士
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 厚
(72)【発明者】
【氏名】高市 剛
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−174942(JP,U)
【文献】 特開2010−195445(JP,A)
【文献】 特開2007−276831(JP,A)
【文献】 特開2004−121314(JP,A)
【文献】 特開2012−075748(JP,A)
【文献】 実開昭48−013342(JP,U)
【文献】 実開昭55−070147(JP,U)
【文献】 特開平08−057031(JP,A)
【文献】 実開平03−049015(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/12
A01N 25/18
C09K 3/00
B65D 83/00
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状薬剤を収容した容器体と、該容器体の上部に設けられ前記液状薬剤を吸収して揮散する揮散体とを備え、該揮散体及び前記容器体間に当該容器体の開口部を閉鎖する仕切部引き抜き可能に設けられた揮散装置において、
板状に形成された前記揮散体に、前記液状薬剤を揮散する揮散部と、該揮散部に前記液状薬剤を吸い上げる吸上部とを一体的に設け、
該吸上部を交互に折り返された折返し形状に形成し、前記仕切部引き抜き前に前記仕切部の上部で前記吸上部が折り畳まれた折畳状態を形成可能に構成する一方、前記仕切部引き抜き後に前記吸上部が前記容器体内へ向けて展開された展開状態を形成可能に構成したことを特徴とする揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状薬剤を揮散する揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤などの液状薬剤を揮散する装置としては揮散装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この揮散装置では、液状薬剤を収容した容器を備えており、該容器の口部は栓部材で閉鎖されている。該栓部材は、押圧部材で押圧できるように構成されており、該押圧部材で前記栓部材を押圧することで、当該栓部材を前記容器内に落下させ、前記口部を開口できるように構成されている。
【0004】
前記押圧部材には揮散体が設けられており、該揮散体には、吸上芯が接続されている。これにより、前記栓部材を前記容器内に落下させた状態で、前記吸上芯を前記容器内へ落下させるように構成されており、該吸上芯で吸い上げられた前記液状薬剤を前記揮散体で揮散できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−169450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の揮散装置にあっては、口部より落下した栓部材が容器内に残存することとなる。
【0007】
このため、前記容器体が透明性を有する場合には、見栄えが悪化するとともに、容器内で栓部材が移動することから、該栓部材が容器にぶつかり打音が発生し得る。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、使用時での不具合を防止することができる揮散装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の揮散装置にあっては、液状薬剤を収容した容器体と、該容器体の上部に設けられ前記液状薬剤を吸収して揮散する揮散体とを備え、該揮散体及び前記容器体間に当該容器体の開口部を閉鎖する仕切部引き抜き可能に設けられた揮散装置において、板状に形成された前記揮散体に、前記液状薬剤を揮散する揮散部と、該揮散部に前記液状薬剤を吸い上げる吸上部とを一体的に設け、該吸上部を交互に折り返された折返し形状に形成し、前記仕切部引き抜き前に前記仕切部の上部で前記吸上部が折り畳まれた折畳状態を形成可能に構成する一方、前記仕切部引き抜き後に前記吸上部が前記容器体内へ向けて展開された展開状態を形成可能に構成した。
【0010】
すなわち、容器体の開口部は、仕切部によって閉鎖されており、搬送時等での液状薬剤の不用意な漏れが防止される。
【0011】
このとき、この仕切部は、引き抜き可能に設けられており、当該揮散装置を使用する際には、当該仕切部が引き抜かれ、取り除かれる。すると、前記容器体上部の揮散体に設けられた吸上部が前記容器体内に延出し、当該容器体内の前記液状薬剤を前記揮散体に吸い上げる。これにより、前記液状薬剤は、前記揮散体より揮散される。
【0014】
また、前記揮散部及び前記吸上部は、板形状の部材によって一体形成されており、前記揮散部と前記吸上部とが別体で構成された場合と比較して、構成の簡素化が図られる。
【0015】
また、前記揮散部と前記吸上部との間に接続部分が存在されず、前記液状薬剤の流通が促進される。
【0017】
さらに、前記揮散体の吸上部は、交互に折り返された折返し形状に形成されており、前記仕切部が引き抜かれる前の使用前では、前記仕切部の上部において、前記吸上部が折り畳まれた折畳状態を形成することで、コンパクト化が図られる。
【0018】
この状態において、前記仕切部が引き抜かれると、折畳状態の前記吸上部には、その復元力によって伸長方向へ力が作用する。すると、この仕切部は、前記容器体内へ向けて展開した展開状態となり、前記容器体内の液状薬剤が当該吸上部によって吸い上げられる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明の揮散装置にあっては、容器体の開口部を閉鎖した仕切部を引き抜いて取り除くことにより、前記容器体上部の揮散体に設けられた吸上部を前記容器体内に延出し、当該容器体内の前記液状薬剤を前記吸上部で前記揮散体に吸い上げて揮散することができる。
【0020】
このため、容器の口部を閉鎖した栓部材を押圧部材で押圧して容器内に落下させる構造上、容器内に残存した栓部材が透けて見えたり、該栓部材が容器にぶつかって打音を発生するといった不具合を解消することができる。
【0021】
したがって、使用時に生じ得る不具合の発生を防止することができる。
【0023】
また、前記揮散部及び前記吸上部が板形状の部材によって一体形成されるため、前記揮散部と前記吸上部とが別体で構成された場合と比較して、構成の簡素化を図ることができる。
【0024】
また、前記揮散部と前記吸上部との間に接続部分が存在しないため、前記液状薬剤の流通を促進することができる。また、接続不良による目詰まりや、液状薬剤の吸上不足に起因した不具合を確実に防止することができる。
【0025】
さらに、部材の製造コストや管理コストを抑えることもできる。
【0026】
さらに、前記揮散体の吸上部は交互に折り返された折返し形状に形成されており、前記仕切部が引き抜かれる前の使用前では、前記仕切部の上部において、前記吸上部が折り畳まれた折畳状態を形成することで、所定の長さを要する前記吸上部をコンパクトに保持することができる。
【0027】
この状態において、前記仕切部が引き抜かれると、折畳状態の前記吸上部には、その復元力によって伸長方向へ力が働く。この復元力を利用することで、板状に形成された吸上部を、前記容器体内へ向けて展開し容器体の底部へ向けて延出することができる。
【0028】
このため、前記吸上部を容器体の底部まで延出する為に、吸上部の先端に錘を設ける場合と比較して、構成の簡素化を図ることができるとともに、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態を示す説明図である。
図2】同実施の形態の容器体を示す説明図である。
図3】同実施の形態の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態にかかる揮散装置1を示す図であり、該揮散装置1は、液状薬剤2を揮散する装置である。
【0032】
この液状薬剤2としては、芳香剤、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、忌避剤等が挙げられ、本実施の形態では、前記液状薬剤2が芳香剤で構成された場合を例に挙げて説明する。
【0033】
この揮散装置1は、内側を構成する内側構成部11と、外側を構成する外側構成部12(図中破線で図示)とによって構成されている。
【0034】
該外側構成部12は、矩形容器状に形成された紙箱21によって構成されており、前記内側構成部11を、当該紙箱21内に収容した状態で隠蔽できるように構成されている。該紙箱21の上部開口部は、天板22によって閉鎖されており、該天板22には、複数の長穴が並設されている(図示省略)。これらの長穴によって当該紙箱21には、揮散した液状薬剤を放出する放出部が形成されており、当該紙箱21の側面には、引き抜き穴23が開設されている。
【0035】
前記内側構成部11は、前記液状薬剤2が収容された容器体31と、該容器体31を包囲するトレイ32とを備えている。該トレイ32は、プレス成形されたフィルム状部材によって形成されており、当該フィルム状部材は、プラスチック素材で形成されている。
【0036】
このトレイ32は、前記容器体31の図中奥側の一側面側を覆う第一側面部41と、前記容器体31の図中手前側の他側面を覆う第二側面部と、前記第一側面部41の下縁と前記第二側面部の下縁とを連設する底面部42とによって構成されており(図中では第二側面部省略)、該底面部42に対して前記両側面部41を側方へ傾倒することで当該底面部42上を開放して前記容器体31を配置できるように構成されている。
【0037】
なお、図中では、説明の都合上、前記第二側面部を省略した状態を示しているが、該第二側面部は、前記第一側面部41と対称形状に形成されている。
【0038】
前記底面部42の中央部には、上方へ向けて膨出形成された矩形状の台座部51が形成されており、当該台座部51上の前記容器体31を載置できるように構成されている。
【0039】
前記第一側面部41は、前記容器体31を保持するための容器体用凹部61が形成されており、その前部には(図中左方)、内側へ向けて膨出形成された前壁部62が形成されている。また、前記容器体用凹部61の後部には(図中右方)、内側へ向けて膨出形成された後壁部63が形成されており、前記容器体用凹部61に収容された容器体31を前記前壁部62と前記後壁部63とによって保持できるように構成されている。
【0040】
前記前壁部62及び前記後壁部63の上部には、所定の間隔をおいて内側に膨出形成された段部71が形成されており、該段部71は、前記容器体用凹部61より内側に突出した段差面を形成している。前記後壁部63及び前記前壁部62の上部には、前後に開口したスリット72が形成されており、該スリット72は、前記段部71による段差面の内側に形成されている。
【0041】
前記後壁部63の上部には、前記スリット72を介して、矩形状の後部下方矩形部81が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されており、該後部下方矩形部81の上部には、当該後部下方矩形部81より小さな矩形状の小矩形部82が前記段部71より内側に向けて膨出形成されている。
【0042】
該小矩形部82の前方側には、矩形状の折返し部91が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されており、該折返し部91の下面は、前記小矩形部82の下面と同高さに設定され、その上面は前記小矩形部82の上面より高位置に設定されている。
【0043】
前記小矩形部82の上部には、該小矩形部82より大きな後部上方矩形部101が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されており、前記後部上方矩形部101と前記小矩形部82間、及び該小矩形部82と前記後部下方矩形部81間には、後方へ向けて開口した間隙102,102が形成されている。
【0044】
前記前壁部62の上部には、前記スリット72を介して、直角三角形状の三角部111が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されており、該三角部111の上部には、略矩形状の係止部112が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されている。該係止部112は、前記折返し部91より低位置に設けられており、当該係止部112の上面には、上方へ向けて延出した支え部113が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されている。前記係止部112の前方上部には、細長の差込部114が凹設されており、該差込部114は、前記係止部112の上面より当該係止部112の中途部まで延出している。
【0045】
この係止部112の上部には、前部上方矩形部121が前記段部71より内側へ向けて膨出形成されており、前記前部上方矩形部121と前記係止部112間には、前方へ向けて開口した間隙122が形成されているとともに、当該前部上方矩形部121と前記後部上方矩形部101との間にも間隙123が形成されている。
【0046】
前記第二側面部は、この第一側面部41と対称形状に形成されており、両側面部41を対面させた状態で、両側面部41の前記容器体用凹部61間に前記容器体31を保持できるように構成されている。
【0047】
このトレイ32の上部には、前記液状薬剤2を吸収して揮散する揮散体131が収容されており、該揮散体131は、板状に形成された濾紙によって構成されている。この揮散体131には、幅方向に延在する切れ目が複数箇所に設定されており、各切れ目によって折曲可能な折曲部が構成されている。
【0048】
具体的に説明すると、前記揮散体131の先端部には、第一折曲部141が設定されており、当該第一折曲部141から先端までの第一領域142は、下側に折曲された状態で、前記係止部112の前記差込部114に差し込まれ係止されている。この第一折曲部141より基端側の第二領域143は、前記後方へ向けて延設されており、前記係止部112の前記支え部及113び前記折返し部91の上面に支持されている。
【0049】
前記第一折曲部141より基端側には、第二折曲部151が設定されており、該第二折曲部151は、前記折返し部91の後縁と合致する位置に設けられている。この第二折曲部151より基端側の第三領域152は、前記折返し部91及び前記小矩形部82間を介して下方へ延出している。前記第二折曲部151の基端側には、第三折曲部153が設定されており、前記第二折曲部151から前記第三折曲部153間に設けられた前記第三領域152は、前記第二折曲部151側の端部が前記後部下方矩形部101の下面に当接するとともに、前記第三折曲部153側の端部が前記後部下方矩形部81の上面に当接した状態で、前記折返し部91及び前記小矩形部82間に保持されている。
【0050】
前記第三折曲部153より基端側の第四領域161は、前方へ向けて延出されており、その基端側に設定された第四折曲部162は、前記係止部112下面と前記三角部111の斜面との角部にて折り返されている。この第四折曲部162より基端側の第五領域163は、後方下側へ向けて延出しており、前記第四折曲部162より基端側に設けられた第五折曲部164は、前記後部下方矩形部81の前面と前記容器体31の天面との角部分で折曲されている。
【0051】
前記第五折曲部164より基端側の第六領域171は、前部上方へ向けて延出しており、前記第五折曲部164より基端側に設定された第六折曲部172より基端側の第七領域173先端は、前記係止部112下面と前記三角部111の斜面との角部に達するように設定されている。
【0052】
これにより、前記第六領域171と前記第七領域173とは、直線状に配置されているが、当該揮散体131は、前記第六折曲部172において折曲可能に構成されている。
【0053】
このように、前記揮散体131は、交互に折り返された返し形状に形成されており、この折り畳まれた折畳状態181において、前記第四領域161から前記第七領域173が前記三角部111と前記後部下方矩形部81と前記容器体31との間に保持されている。
【0054】
また、この保持状態では、当該トレイ32の前記第一側面部41の前記段部71と前記第二側面部の段部との間に保持されており、当該揮散体131が前記容器体31の中央部に配置されるように構成されている。
【0055】
この容器体31は、図2にも示すように、矩形容器状に形成されており、当該容器体31の上部開口部201の開口縁部には、側方に延出したフランジ部202が形成されている。
【0056】
この容器体31には、仕切部としてのアルミ状のシート211が設けられており、該シート211によって前記上部開口部201が開放可能に閉鎖されている。
【0057】
このシート211は、前記フランジ部202に剥離可能に溶着されたシート本体221と、該シート本体221の一縁より折り返された折返し部222とによって構成されており、前記シート本体221が前記上部開口部201を閉鎖するように構成されている。
【0058】
前記折返し部222は、前記シート本体221上に折り返されるように構成されており、この折返し部222は、前記シート本体221より幅狭の細長に形成されている。該折返し部222の先端部は、前記フランジ部202の端部より延出する長さ寸法に設定されており、この延出部分は、前記トレイ32の側面に開口した前記スリット72及び前記紙箱12に形成された引き抜き穴23を介して、外部に延出するように構成されている。
【0059】
これにより、当該揮散装置1を使用する際には、図1にも示したように、前記紙箱21の前記引き抜き穴23より延出した前記シート211の前記折返し部222を引っ張ることで、前記フランジ部202に溶着された前記シート本体221を折返し部分側から全域に渡って剥離できるように構成されており、剥離されたシート211を前記紙箱21の前記引き抜き穴23から引き抜けるように構成されている。
【0060】
このとき、前記トレイ32の前記三角部111と前記後部下方矩形部81間に配置された状態で前記容器体31の前記シート211によって下方から支持された折畳状態181の前記揮散体131の前記第四領域161から前記第七領域173は、図3に示すように、前記シート211が剥離された前記上部開口部201を介して、前記容器体31内へ向けて展開するように構成されており、この展開状態301において、前記第七領域173の端部が前記容器体31の底面に達することで、当該容器体31内の前記液状薬剤2を前記第七領域173から前記第五領域163を介して、前記第四領域161から第一領域142まで吸い上げられるように構成されている。
【0061】
これにより、前記揮散体131の一端側を構成する前記第一領域142から第四領域161は、吸い上げられた液状薬剤2を揮散する揮散部311を構成するとともに、当該揮散部311以外の前記第五領域163から前記第七領域173は、前記液状薬剤2を吸い上げる吸上部312を構成するように設定されている。
【0062】
なお、前記揮散部311及び前記吸上部312は、前記液状薬剤2の状態により変化するものであり、厳密には、前記液状薬剤2より露出した部分からは前記液状薬剤2が揮散するため、前記揮散部311を構成することととなる。
【0063】
以上の構成にかかる本実施において、液状薬剤2を収容した容器体31の上部開口部201は、仕切部を構成するシート211によって閉鎖されており、搬送時等での前記液状薬剤2の不用意な漏れを防止することができる。
【0064】
このとき、このシート211は、引き抜き穴23から引き抜き可能に設けられており、当該揮散装置1を使用する際には、当該シート211を引き抜いて取り除くことで、前記上部開口部201を開放することができる。
【0065】
すると、前記容器体31の上部に配置された揮散体131の吸上部312が前記容器体31内に延出し、当該容器体31内の前記液状薬剤2を前記揮散体131の揮散部311に吸い上げる。これにより、前記液状薬剤2の前記揮散部311からの揮散を開始することができる。
【0066】
このため、容器の口部を閉鎖した栓部材を押圧部材で押圧して容器内に落下させる構造上、容器内に残存した栓部材が透けて見えたり、該栓部材が容器にぶつかって打音を発生するといった不具合を解消することができる。
【0067】
したがって、使用時に生じ得る不具合の発生を防止することができる。
【0068】
そして、前記揮散体131は、板形状に形成されており、その一端側が前記液状薬剤2を揮散する前記揮散部311を構成する。また、当該揮散部311以外の部分は、前記液状薬剤2を前記揮散部311へ吸い上げる前記吸上部312を構成している。
【0069】
このように、前記揮散部311と前記吸上部312とが板形状の部材によって一体形成されるため、前記揮散部311と前記吸上部312とが別体で構成された場合と比較して、構成の簡素化を図ることができる。
【0070】
また、前記揮散部311と前記吸上部312との間に接続部分が存在されず、前記液状薬剤2の流通を促進することができる。このため、接続不良による目詰まりや、液状薬剤2の吸上不足に起因した不具合を確実に防止することができる。
【0071】
さらに、部材の製造コストや管理コストを抑えることもできる。
【0072】
さらに、前記揮散体131の前記吸上部312は交互に折り返された折返し形状に形成されており、前記シート211が引き抜かれる前の使用前では、当該シート211の上部において、前記吸上部312が折り畳まれた折畳状態181を形成することで、所定の長さを要する前記吸上部312をコンパクトに保持することができる。
【0073】
この状態において、前記シート211が引き抜かれると、前記折畳状態181の前記吸上部312には、その復元力によって伸長方向へ力が働く。この復元力を利用することで、板状に形成された前記吸上部312を前記容器体31内へ向けて展開し当該容器体31の底部へ向けて延出することができる。
【0074】
このため、前記吸上部312を容器体31の底部まで延出する為に、吸上部312の先端に錘を設ける場合と比較して、構成の簡素化を図ることができるとともに、低コスト化を実現することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 揮散装置
2 液状薬剤
31 容器体
131 揮散体
181 折畳状態
201 上部開口部
211 シート
301 展開状態
311 揮散部
312 吸上部
図1
図2
図3