特許第5918992号(P5918992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918992
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】浴用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20160428BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160428BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/19
   A61K8/362
   A61K8/37
   A61Q19/10
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-281341(P2011-281341)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-129635(P2013-129635A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】原田 涼子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 雄一
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−240992(JP,A)
【文献】 特開2005−097238(JP,A)
【文献】 特開2011−190190(JP,A)
【文献】 特開2011−021005(JP,A)
【文献】 特開2011−184361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸ガス発生物、
(B)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上の非イオン界面活性剤 1〜15質量%、及び
(C)ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の非イオン界面活性剤
を含有し、成分(C)と成分(B)の質量比((B)/(C))が4〜45であり、かつ
粉末、顆粒、粒状、ブリケット錠、又は錠剤のいずれかである浴用剤組成物。
【請求項2】
成分(B)が、25℃で固体又は半固体である請求項1に記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
成分(B)のポリエチレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸残基の炭素数が、4〜24である請求項1又は2に記載の浴用剤組成物。
【請求項4】
成分(C)のソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸残基の炭素数が、4〜24である請求項1〜3のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項5】
成分(A)が、酸及び炭酸塩を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項6】
成分(A)に含まれる酸が、フマル酸である請求項1〜5のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項7】
さらに、数平均分子量4000〜20000の水溶性バインダー(D)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【請求項8】
さらに、油性成分を10質量%以下含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の浴用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸ガス発生物を配合した入浴剤は、血行促進効果に優れていることが知られている(例えば、特許文献1参照)。こうした入浴剤において、十分な温まり効果をも付与すべく、これまでにも種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献2には、炭酸ガス発生物と油性成分とを組み合わせ、油性成分に炭酸ガスを溶解させた入浴剤組成物が提案されており、特許文献3には、炭酸ガスと脂肪酸、脂肪酸グリセリド、非イオン活性剤を組み合わせた入浴剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−70609号公報
【特許文献2】特開2005−97238号公報
【特許文献3】特開2010−215551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの入浴剤であると、配合する油性成分や界面活性剤の量によっては、入浴剤の成型時に染み出し等が発生して外観が損なわれたり、浴水面での浮遊物等が増大したりするおそれがあるだけでなく、油浮きが生じたりするおそれもあり、十分な温まり感との両立は必ずしも容易ではない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、浴中から浴後にわたって高い温まり感をもたらすとともに、良好な保存安定性を有し、かつ浴水面での浮遊物等をも抑制し得る浴用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、種々検討してきたところ、炭酸ガス発生物に特定の界面活性剤を特定の量比で併用することにより、十分な温まり感と浴水面での浮遊物等の抑制とを両立できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)炭酸ガス発生物、
(B)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上の非イオン界面活性剤 1〜15質量%、及び
(C)ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の非イオン界面活性剤
を含有し、成分(C)と成分(B)の質量比((B)/(C))が4〜45である浴用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の浴用剤組成物は、保存安定性に優れ、成型時における染み出し等を抑制して良好な外観を呈することができる。加えて、これを用いて入浴すれば、十分に高い温まり感が得られるとともに、浴水面における浮遊物等の発生をも効果的に抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の浴用剤組成物は、炭酸ガス発生物(A)を含有する。成分(A)の炭酸ガス発生物としては、本発明の浴用剤組成物を浴水に投入したときに炭酸ガスを発生するものであればよいが、酸と炭酸塩とを組み合わせたものが好ましい。酸としては、有機酸及び無機酸のいずれも使用できるが、なかでも水溶性で固体のものが好ましく、有機酸がより好ましい。有機酸としては、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸、マレイン酸、フタル酸、グルタル酸、シュウ酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、保存安定性の点から、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
【0011】
無機酸としては、例えば、ホウ酸、メタケイ酸、無機ケイ酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム等が挙げられ、保存安定性の点から、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。これらの炭酸塩は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0013】
成分(A)の炭酸ガス発生物の含有量は、適度な炭酸ガス発生量を確保する点及び保存安定性の点から、本発明の浴用剤組成物中に40〜95質量%であるのが好ましく、50〜90質量%であるのがより好ましい。
好ましい酸と炭酸塩の含有量比率は、20:80〜90:10であり、より好ましくは40:60〜80:20であり、さらに好ましくは50:50〜70:30である。
【0014】
本発明の浴用剤組成物は、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上の非イオン界面活性剤(B)を含有する。成分(B)の非イオン界面活性剤は、本発明の浴用剤組成物において炭酸ガスの皮膚への浸透を促進する効果を発揮して十分な温まり感をもたらすことを発明者らは今回初めて知見した。また、後述するように成分(C)の非イオン界面活性剤とも相まって、成分(C)と成分(B)の質量比((B)/(C))が4〜45であることにより、炭酸ガスの皮膚への浸透を著しく高めることで十分な温まり感を発揮しつつ良好な保存安定性と浴水面における浮遊物等の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸残基としては、炭素数4〜24のものが好ましく、なかでも炭素数12〜18のものがより好ましく、さらにステアリン酸、オレイン酸等の炭素数18のものがよりいっそう好ましく、ステアリン酸がまたさらに好ましい。かかるポリエチレングリコール脂肪酸としては、例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられ、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜400、好ましくは100〜300のものが挙げられる。具体的には、例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(250E.O)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O)が挙げられる。なお、カッコ内の数字はエチレンオキサイドの付加モル数を表す(以下、同様)。
【0016】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜100、好ましくは20〜80のものが挙げられる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O)が挙げられる。
【0017】
成分(B)の非イオン界面活性剤は、本発明の浴用剤組成物中に均一に分散させる観点、及び後述する成分(C)との相乗効果を高める観点から、室温(25℃)で固体又は半固体であるのが好ましい。なお、固体又は半固体であるとは、ペースト状のものをも含む意味であり、かつ流動性を示さず、粘度を測定することができない状態を意味する。
【0018】
成分(B)の非イオン界面活性剤の合計含有量は、炭酸ガスの皮膚への浸透促進効果の向上を図る観点、及び肌の感触の低下を抑制する観点から、1〜15質量%であり、2〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。
【0019】
本発明の浴用剤組成物は、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の非イオン界面活性剤(C)を含有する。成分(C)の非イオン界面活性剤は、本発明の浴用剤組成物において、成分(B)による炭酸ガスの皮膚への浸透の促進効果を阻害することなく、浴水面における浮遊物等の発生を効果的に抑制することができ、また成型時における染み出し等を防止することもできる。
【0020】
ソルビタン脂肪酸エステルの脂肪酸残基としては、炭素数4〜24のものが好ましく、なかでも炭素数12〜18のものがより好ましく、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。かかるソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノ脂肪酸ソルビタン、ジ脂肪酸ソルビタン、トリ脂肪酸ソルビタン、セスキ脂肪酸ソルビタンのいずれであってもよいが、モノ脂肪酸ソルビタンが好ましい。具体的には、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンが挙げられる。なかでも、モノステアリン酸ソルビタンが好ましい。
【0021】
プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸残基としては、炭素数4〜24のものが好ましく、なかでも炭素数12〜18のものがより好ましく、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。かかるプロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、モノ脂肪酸プロピレングリコール、ジ脂肪酸プロピレングリコール、トリ脂肪酸プロピレングリコールのいずれであってもよいが、モノ脂肪酸プロピレングリコールが好ましく、具体的には、例えば、モノステアリン酸プロピレングリコールが挙げられる。
【0022】
グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸残基としては、炭素数4〜24のものが好ましく、なかでも炭素数8〜18のものがより好ましく、具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。かかるグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステルのいずれであってもよいが、モノグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、モノステアリン酸グリセリンが挙げられる。
【0023】
成分(C)の非イオン界面活性剤の合計含有量は、浴水面における浮遊物等を抑制する観点、及び肌の感触の低下を抑制する観点から、0.02〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜1.0質量%であるのがより好ましい。
【0024】
本発明の浴用剤組成物において、成分(C)と成分(B)の質量比((B)/(C))は、浴水面での浮遊物等抑制効果の向上を図る観点、及び肌の感触の低下を抑制する観点から、4〜45であり、5〜20が好ましく、5〜15がより好ましい。
【0025】
なお、本発明の浴用剤組成物には、本発明の効果に影響をもたらさない程度であれば、さらに成分(B)及び成分(C)以外の非イオン界面活性剤を含有してもよい。本発明の浴用剤組成物中における、成分(B)及び成分(C)以外の非イオン界面活性剤の含有量は、5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがより好ましく、0.8質量%以下であるのがさらに好ましく、0.4質量%以下であるのがまたさらに好ましく、またさらに実質的に含有しないことが好ましい。
【0026】
本発明の浴用剤組成物は、さらに上記成分以外の成分として、油性成分を含有してもよいが、含有しなくてもよい。本発明の浴用剤組成物であれば、油性成分を含有せずとも、十分な温まり感と浴水面での浮遊物等抑制との両立を図りつつ良好な肌感触をもたらすことができる。かかる油性成分としては、例えば、オクタン酸セチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソオクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類;天然油脂や天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等のグリセリド類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;精油やシリコーン油類が挙げられる。かかる油性成分の含有量は、浴水面の状態および保存安定性の観点から、本発明の浴用剤組成物中に10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましく、0.8質量%以下であるのがさらに好ましく、0.4質量%以下であるのがさらに好ましく、さらにまた実質的に含有しないことが好ましい。
【0027】
本発明の浴用剤組成物は、さらに成分(D)として、水溶性バインダーを含有してもよい。水溶性バインダーの含有量は、保存安定性に優れ、成型時における染み出し等を抑制して良好な外観を呈することができる観点、及び肌の感触の低下を抑制する観点から、本発明の浴用剤組成物中に1〜20質量%であるのが好ましく、さらに3〜15質量%であるのがより好ましい。水溶性バインダー(D)は熱可塑性であり、水溶液でないことが好ましい。このような水溶性バインダー(D)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェノールエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールがさらに好ましい。また、水溶性バインダーの数平均分子量は、製剤化の観点から、ポリスチレンを標準としたGPC法で4000〜20000が好ましく、6000〜13000がより好ましく、7000〜9000がさらに好ましい。水溶性バインダーとしてポリエチレングリコールを測定する場合には、溶媒として水/エタノールを用いる。また、これらの水溶性バインダーを用いる場合には、数平均分子量の異なる水溶性バインダーを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の浴用剤組成物は、保存安定性に優れ、成型時における染み出し等を抑制して良好な外観を呈することができる観点、浴水面での浮遊物等抑制効果の向上を図る観点から、さらにケイ酸カルシウム、ブドウ糖等の賦形剤を含有してもよい。
【0029】
本発明の浴用剤組成物には、その他上記成分以外の成分として、通常浴用剤に用いられる成分を適宜含有させてもよい。かかる成分としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の、上記成分(A)に用いられ得る炭酸塩以外の無機塩、カチオン化セルロース等の上記成分(D)以外の水溶性高分子、エタノール、ステアリルアルコール、イソプロピルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等のアルコール、生薬等の薬効成分、色素、香料等が挙げられる。
【0030】
本発明の浴用剤組成物は、押出造粒等の圧縮造粒方法や、プレス打錠機やブリケットマシーンを用いた圧縮成形法等の常法に従って製造することができ、その形態は粉末、顆粒、粒状、ブリケット錠、錠剤等のいずれであってもよく、また成分の一部を予め造粒あるいは成型してその余の成分と混合した後に成形した形態であってもよい。本発明の浴用剤組成物の1回あたりの使用量(質量)は、浴水150Lあたり20〜200gが好ましく、30〜100gがより好ましい。これにより、適度な炭酸ガス発生量を確保でき、浴中から浴後にわたって肌に良好な感触を付与することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0032】
[実施例1〜7及び比較例1〜8]
表1〜2に示す組成の浴用剤組成物を錠剤(50g)として調製した。次いで、下記方法にしたがって、温まり感及び浴水面の状態についての評価を行った。これらの結果を表1〜2に示す。
【0033】
《温まり感の評価》
20〜40歳代のパネラー10名を用いて、各錠剤をそれぞれ150Lのお湯(40℃)に投入し、均一にしたお湯にパネラーを入浴させ、入浴中、入浴後の温まり感を下記の基準で評価し、10名の平均値を評価点とした。
5:温まる
4:やや温まる
3:さら湯と同等
2:やや温まらない
1:温まらない
【0034】
《浴水面の状態の評価》
各サンプル(50g)をそれぞれ150Lのお湯(40℃)に投入し、均一になるように攪拌した。投入後10分の浴水面の状態を下記の基準で目視評価を行った。
◎:浮遊物等がほとんどなく、透明度の高い浴水面である
○:浮遊物等が少ない
△:浮遊物等がやや多い
×:浮遊物等が多い
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1〜2の結果より、比較例1〜8では、十分な温まり効果が得られなかったり、温まり効果は良好であるものの浴水面において浮遊物が確認された。これに対し、実施例1〜7では、いずれも温浴効果及び浴水面の状態ともに良好であった。
【0038】
[実施例8〜9及び比較例9〜10]
表3に示すように、予め一部の成分を造粒物とし、これとその余の成分とを混合してか粒状浴用剤組成物を調製した。次いで、下記方法にしたがって、保存安定性に影響を及ぼす圧縮時の染み出し及び調製直後の外観についての評価を行った。これらの結果を表3に示す。
【0039】
《圧縮時の染み出し》
打錠セル内に打錠セルの大きさに切り取ったNo.5Cの定量濾紙を2枚重ねた上に、30℃に保温した造粒物32.8gをいれ、設定10MPaの成形圧で30秒間圧縮した。圧縮後、造粒物に直接接しない側の濾紙の重量を測定し、試験前の濾紙の重量を差し引き、染み出し量(mg)とした。
【0040】
《入浴剤外観》
調整した入浴剤組成物の配合直後の外観(色素の発色)について、下記の基準にしたがって目視により評価した。
◎:外観が非常に良好である。
○:外観が良好である。
×:外観の悪化を認める。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果より、成分(B)の非イオン界面活性剤を含有しない比較例9〜10は、実施例8〜9に比べ、染み出し量が多い上に色素の発色も認められ、浴用剤として外観上不適であった。