(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918994
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20160428BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160428BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
H01B17/58 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-285286(P2011-285286)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135559(P2013-135559A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀俊
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−149690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿通される電線挿通穴を有する電線貫通部と、前記電線貫通部の外周に設けられ、車体のグロメット取付穴に係合される車体係合部とを備えたグロメットであって、
前記電線挿通穴の内周面は、シボ加工面に形成されていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
請求項1記載のグロメットであって、
前記電線挿通穴の内周面には、電線挿通方向に沿ってリブが突設されていることを特徴とするグロメット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のグロメットであって、
前記電線挿通穴の端部には、周方向に沿って防水用リブが突設されていることを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスを配策するグロメット取付穴に装着するグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワイヤーハーネスを車体パネルの穴を通して配策する場合に、車体パネル周辺での電線の保護や穴の防水、防塵等のために、グロメットが使用される(特許文献1、2参照)。かかるグロメットの一従来例が
図5に示されている。
【0003】
図5において、グロメット50は、ゴム材より形成されている。グロメット50は、電線挿通穴54を有する電線貫通部52と、この電線貫通部52の外周に間隔を置いて設けられた2つの車体係合部60とを備えている。各車体係合部60は、それぞれ車体パネル70のグロメット取付穴71に係合されている。
【0004】
ところで、グロメット50の電線挿通穴54には、パイプ(図示せず)を利用して電線(図示せず)が通される。つまり、外径が電線挿通穴54の内径より若干だけ小さく、且つ、摩擦抵抗の小さいパイプ内に電線を通し、電線を通したパイプを電線挿通穴54に通す。パイプを電線挿通穴54に完全に貫通させた後、パイプのみを電線挿通穴54より抜き取る。これで、電線挿通穴54に電線を通すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−131617号公報
【特許文献2】特開2009−296738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のグロメット50では、パイプを電線挿通穴54に挿入する際に、パイプの外周面が電線挿通穴54の内周面に面接触するので、大きな摩擦抵抗を受けるため、作業性が非常に悪いという問題があった。電線挿通穴54が長ければ長いほど、パイプには大きな摩擦抵抗が作用するため、作業性が悪くなる。最悪の場合には、グロメットが破損する場合もある。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、電線の挿通作業性が良いグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
【0009】
本発明は、電線が挿通される電線挿通穴を有する電線貫通部と、前記電線貫通部の外周に設けられ、車体のグロメット取付穴に係合される車体係合部とを備えたグロメットであって、前記電線挿通穴の内周面は、シボ加工面に形成されていることを特徴とするグロメットである。
【0010】
前記電線挿通穴の端部には、周方向に沿って防水用リブが突設されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線を通したパイプを電線挿通穴に挿入する際に、従来例に較べてパイプと電線貫通部間の接触面積が小さくなり、摩擦抵抗が小さくて済む。従って、電線の挿通作業が良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1
参考例を示し、(a)グロメットの正面図、(b)はグロメットの側面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は(c)のB部拡大図である。
【
図2】本発明の第1
参考例を示し、電線貫通部の電線挿通穴にパイプを挿入する過程を説明する斜視図である。
【
図3】本発明の第2
参考例を示し、(a)グロメットの正面図、(b)はグロメットの側面図、(c)は(a)のC−C線断面図、(d)は(c)のD部拡大図である。
【
図4】本発明の
一実施形態を示し、(a)グロメットの正面図、(b)はグロメットの側面図、(c)は(a)のE−E線断面図、(d)は(c)のF部拡大図である。
【
図5】従来例を示し、(a)グロメットの正面図、(b)はグロメットの側面図、(c)は(a)のG−G線断面図、(d)は(c)のH部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(第1
参考例)
図1(a)〜(d)は本発明の第1
参考例を示す。
図1(a)〜(d)において、グロメット1Aは、例えばゴム材より形成されている。グロメット1Aは、円筒状の電線貫通部2と、この電線貫通部2の2箇所に一体に設けられた車体係合部10とを備えている。
【0015】
各車体係合部10は、電線貫通部2の外周側に一体に設けられている。各車体係合部10の一方側は、内周側から外周側に向かって傾斜するテーパ面11に形成されている。各車体係合部10の外周部には、係合溝12が全周に亘ってそれぞれ形成されている。この各係合溝12に各車体パネル20のグロメット取付穴21の周縁が入り込み、車体パネル20に係合されている。グロメット取付穴21の内周側と各車体係合部10の外周側は、全周に亘って密着される。これにより、グロメット取付穴21を通って水、塵埃等が出入りできないようになっている。
【0016】
電線貫通部2の2つの車体係合部10の間の位置には、蛇腹部3が二箇所に形成されている。2つの車体パネル20(例えば一方が車体本体パネルで他方がドアパネル)の間隔が相対的に変移すると、蛇腹部3の伸縮によってグロメット1Aが追従できるようになっている。電線貫通部2の内部には、円形状の電線挿通穴4が形成されている。電線挿通穴4の内周面には、電線挿通方向Lに沿ってほぼ全長に亘って4本のリブ5が突設されている。4本のリブ5は、円周方向の等間隔の位置に配置されている。
【0017】
次に、グロメット1Aの電線挿通作業を説明する。先ず、摩擦抵抗が小さく、且つ、剛性の高いパイプ22内に電線(図示せず)を通す。次に、
図2に示すように、電線を通したパイプ22を電線貫通部2の電線挿通穴4に通す。パイプ22を電線挿通穴4に貫通させた後、電線を残してパイプ22のみを電線挿通穴4より抜き取る。これで、電線挿通穴4に電線を通すことができる。
【0018】
パイプ22を電線挿通穴4に挿入する過程では、パイプ22の外周面が電線挿通穴4のリブ5に接触(ほぼ線接触)し、従来例に較べてパイプ22と電線貫通部2間の接触面積が小さいため、小さな摩擦抵抗でパイプ22を挿入できる。又、パイプ22のみを電線挿通穴4より引き抜く過程でも、同様の理由によって小さな摩擦抵抗でパイプ22を引き抜くことができる。従って、電線の挿通作業性が良い。
【0019】
(第2
参考例)
図3(a)〜(d)は本発明の第2
参考例を示す。この第2
参考例のグロメット1Bは、第1参
考例のものと比較して、電線挿通穴4の内周面のリブ5が電線挿通穴4の端部には設けられていない。そして、リブ5が設けられていない電線挿通穴4の端部には、円周方向に沿って1条の防水用リブ6が全周に亘って突設されている。
【0020】
他の構成は、前記第1
参考例と同様にあるため、同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
この第2
参考例でも前記第1
参考例と同様の理由によって、電線の挿通作業性が良い。
【0022】
電線挿通穴4の端部には、円周方向に沿って防水用リブ6が突設されている。従って、電線挿通穴4からの水、塵埃等の侵入を極力防止できる。
【0023】
(
一実施形態)
図4(a)〜(d)は本発明の
一実施形態を示す。この
一実施形態のグロメット1Cは、第1
参考例のものと比較して次の点が相違する。つまり、電線挿通穴4の内周面には、リブ5が突設されていない。その替わりに、電線挿通穴4の内周面は、シボ加工が施され、シボ加工面に形成されている。シボ加工の凹凸形態は、パイプとの接触面積を極力小さくできる形態が好ましい。
【0024】
他の構成は、前記第1
参考例と同様にあるため、同一構成箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
この
一実施形態では、パイプを電線挿通穴4に挿入する過程では、パイプの外周面が電線挿通穴4のシボ加工された内周面に接触し、従来例に較べてパイプと電線貫通部2間の接触面積が小さいため、小さな摩擦抵抗でパイプを挿入できる。パイプのみを電線挿通穴4より引き抜く過程でも、同様の理由によって小さな摩擦抵抗でパイプを引き抜くことができる。従って、電線の挿通作業性が良い。
【0026】
電線挿通穴4の端部には、前記第2
参考例のように、円周方向に沿って1条の防水用リブ6を全周に亘って突設しても良い。
【0027】
(変形例)
第1
参考例では、電線挿通穴4の内周面にリブ5が突設され、
一実施形態では、電線挿通穴4の内周面がシボ加工面とされているが、電線挿通穴4の内周面にリブ5を設け、且つ、内周面をシボ加工面としても良い。
【0028】
第1及び第2
参考例では、リブ5は、電線挿通穴4の内周面に4本突設されているが、1本でも、2本でも、3本でも良く、又、5本以上であっても良い。リブは、ストレートであるが、曲線(螺旋状)でも良い。
【0029】
第2
参考例では、防水用リブ6は、電線挿通穴4の端部に1本突設されているが、複数本(2本、3本等)でも良い。
【符号の説明】
【0030】
1A,1B グロメット
2 電線貫通部
4 電線挿通穴
5 リブ
6 防水用リブ
10 車体係合部
20 車体パネル(車体)
21 グロメット取付穴