特許第5918997号(P5918997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5918997
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160428BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20160428BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20160428BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   H01L21/304 643Z
   H01L21/304 643A
   B08B3/10 Z
   G02F1/13 101
   H01L21/306 J
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-287742(P2011-287742)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138073(P2013-138073A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直澄
(72)【発明者】
【氏名】宮 勝彦
【審査官】 樫本 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−204712(JP,A)
【文献】 特開2011−071401(JP,A)
【文献】 特開2009−254965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
B08B 3/10
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内において一方の主面を上側に向けた状態で基板を保持する基板保持部と、
前記基板の前記一方の主面に液体を供給する液体供給部と、
前記一方の主面に前記液体が供給されている状態で、前記基板を前記一方の主面に垂直な軸を中心として回転させ、前記基板の回転を継続しつつ、前記一方の主面上への前記液体の供給を停止することにより、前記一方の主面上に残存した前記液体の一部を前記基板上から除去し、前記一方の主面上に前記液体の所定の厚さの液膜を形成する基板回転機構と、
前記一方の主面に前記液体が供給されている状態で、前記基板の他方の主面に常温よりも低温の冷却用液体を供給することにより前記基板を予備冷却するとともに、前記一方の主面上における前記液膜の形成と並行して、前記冷却用液体を前記他方の主面に継続して供給することにより前記基板を冷却する冷却部と、
前記他方の主面への前記冷却用液体の供給が停止された状態で、前記液膜を冷却して凍結させる凍結部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記液体供給部から前記一方の主面に供給される前記液体の温度が常温よりも低いことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記冷却用液体が、前記液体供給部から供給される前記液体と同じであることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記冷却部による前記他方の主面への前記冷却用液体の供給が、前記凍結部による前記液膜の冷却開始直前まで行われることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記液体供給部から供給される前記液体が純水であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
凍結した前記液膜である凍結膜に加熱された解凍用液体を供給して前記凍結膜を除去する凍結膜除去部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記基板回転機構が、前記液体供給部から前記一方の主面に前記液体が供給されている状態で、前記基板を第1の回転速度にて回転させ、前記液体供給部からの前記液体の供給が停止された状態で、前記基板を前記第1の回転速度よりも低い第2の回転速度にて回転させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)チャンバ内において一方の主面を上側に向けた状態で保持された基板を、前記一方の主面に垂直な軸を中心として回転させつつ、前記一方の主面に液体を供給する工程と、
b)前記基板の回転を継続しつつ、前記一方の主面上への前記液体の供給を停止することにより、前記一方の主面上に残存した前記液体の一部を前記基板上から除去し、前記一方の主面上に前記液体の所定の厚さの液膜を形成する工程と、
c)前記a)工程および前記b)工程と並行して、前記基板の他方の主面に常温よりも低温の冷却用液体を継続して供給することにより、前記a)工程の際に前記基板を予備冷却するとともに、前記b)工程の際に前記基板の冷却を継続する工程と、
d)前記他方の主面への前記冷却用液体の供給を停止し、前記液膜を冷却して凍結させる工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程において前記一方の主面に供給される前記液体の温度が常温よりも低いことを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の基板処理方法であって、
前記d)工程において、前記他方の主面への前記冷却用液体の供給が、前記液膜の冷却開始直前に停止されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記a)工程において前記基板を第1の回転速度にて回転させ、前記b)工程において前記基板を前記第1の回転速度よりも低い第2の回転速度にて回転させることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板処理装置を用いて酸化膜等の絶縁膜を有する基板に対して様々な処理が施される。例えば、基板の表面に洗浄液を供給することにより、基板の表面上に付着したパーティクル等を除去する洗浄処理が行われる。
【0003】
特許文献1では、基板の表面に脱イオン水(DIW:De Ionized Water)等の液膜を形成し、当該液膜を冷却ガスにより冷却して凍結させた後、リンス液で解凍除去することにより、基板表面のパーティクルを除去する技術が開示されている。また、特許文献2では、上述の凍結洗浄において、常温よりも冷却した脱イオン水を基板の表面に供給して液膜を形成する技術が開示されている。特許文献1および特許文献2の装置では、基板を回転させ、基板の表面に吐出された液体の一部を基板上から除去する(すなわち、液体を振り切る)ことにより、基板の表面上に液膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−71875号公報
【特許文献2】特開2009−254965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような凍結洗浄を行う基板処理装置では、基板上の液膜を凍結させるための冷却ガスとして、液体窒素内を通る配管を通過して約−190℃まで冷却された窒素ガス等が利用される。このような冷却ガスを、基板の処理が行われるチャンバ内へと導入するためには、高性能な断熱設備が必要であり、装置の製造コストが増大してしまう。しかしながら、断熱設備の性能を下げると冷却ガスの温度が高くなり、液膜の凍結に要する時間が長くなってしまう。
【0006】
特許文献2の装置では、冷却された脱イオン水にて液膜を形成することにより、液膜の凍結に要する時間の短縮や、液膜の凍結に要する冷却コストの抑制が図られている。しかしながら、基板を回転させて液膜を形成する間に、基板の周囲のガス等から液膜に熱が流入し、液膜の温度が上昇してしまうため、凍結に要する時間の短縮や、凍結に要する冷却コストの抑制に限界がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、液膜の凍結に要する冷却コストを抑制し、また、液膜の凍結に要する時間を短くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、チャンバと、前記チャンバ内において一方の主面を上側に向けた状態で基板を保持する基板保持部と、前記基板の前記一方の主面に液体を供給する液体供給部と、前記一方の主面に前記液体が供給されている状態で、前記基板を前記一方の主面に垂直な軸を中心として回転させ、前記基板の回転を継続しつつ、前記一方の主面上への前記液体の供給を停止することにより、前記一方の主面上に残存した前記液体の一部を前記基板上から除去し、前記一方の主面上に前記液体の所定の厚さの液膜を形成する基板回転機構と、前記一方の主面に前記液体が供給されている状態で、前記基板の他方の主面に常温よりも低温の冷却用液体を供給することにより前記基板を予備冷却するとともに、前記一方の主面上における前記液膜の形成と並行して、前記冷却用液体を前記他方の主面に継続して供給することにより前記基板を冷却する冷却部と、前記他方の主面への前記冷却用液体の供給が停止された状態で、前記液膜を冷却して凍結させる凍結部とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記液体供給部から前記一方の主面に供給される前記液体の温度が常温よりも低い
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記冷却用液体が、前記液体供給部から供給される前記液体と同じである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記冷却部による前記他方の主面への前記冷却用液体の供給が、前記凍結部による前記液膜の冷却開始直前まで行われる
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記液体供給部から供給される前記液体が純水である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、凍結した前記液膜である凍結膜に加熱された解凍用液体を供給して前記凍結膜を除去する凍結膜除去部をさらに備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記基板回転機構が、前記液体供給部から前記一方の主面に前記液体が供給されている状態で、前記基板を第1の回転速度にて回転させ、前記液体供給部からの前記液体の供給が停止された状態で、前記基板を前記第1の回転速度よりも低い第2の回転速度にて回転させる。
請求項に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)チャンバ内において一方の主面を上側に向けた状態で保持された基板を、前記一方の主面に垂直な軸を中心として回転させつつ、前記一方の主面に液体を供給する工程と、b)前記基板の回転を継続しつつ、前記一方の主面上への前記液体の供給を停止することにより、前記一方の主面上に残存した前記液体の一部を前記基板上から除去し、前記一方の主面上に前記液体の所定の厚さの液膜を形成する工程と、c)前記a)工程および前記b)工程と並行して、前記基板の他方の主面に常温よりも低温の冷却用液体を継続して供給することにより、前記a)工程の際に前記基板を予備冷却するとともに、前記b)工程の際に前記基板の冷却を継続する工程と、d)前記他方の主面への前記冷却用液体の供給を停止し、前記液膜を冷却して凍結させる工程とを備える。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の基板処理方法であって、前記a)工程において前記一方の主面に供給される前記液体の温度が常温よりも低い。
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の基板処理方法であって、前記d)工程において、前記他方の主面への前記冷却用液体の供給が、前記液膜の冷却開始直前に停止される。
請求項11に記載の発明は、請求項8ないし10のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記a)工程において前記基板を第1の回転速度にて回転させ、前記b)工程において前記基板を前記第1の回転速度よりも低い第2の回転速度にて回転させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、液膜の凍結に要する冷却コストを抑制することができる。また、液膜の凍結に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図2】基板の処理の流れを示す図である。
図3】比較例の基板処理装置における液膜の形成時間と、液膜の厚さおよび温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。図1に示すように、基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1では、基板9上に凍結膜を形成し、当該凍結膜を除去することにより、基板9上からパーティクル等を除去する凍結洗浄処理が行われる。
【0018】
基板処理装置1は、基板保持部2と、カップ部21と、第1液体供給部31と、第2液体供給部32と、凍結部4と、基板回転機構5と、加熱液供給部6と、チャンバ7と、制御部8とを備える。制御部8は、第1液体供給部31、第2液体供給部32、凍結部4、基板回転機構5および加熱液供給部6等の構成を制御する。基板保持部2は、チャンバ7内において基板9の一方の主面91(以下、「上面91」という。)を上側に向けた状態で基板9を保持する。基板9の上面91には、回路パターン等が形成されている。カップ部21は、チャンバ7内において基板9および基板保持部2の周囲を囲む。基板回転機構5は、基板9の中心を通るとともに基板9の上面91に垂直な回転軸を中心として、基板9を基板保持部2と共に水平面内にて回転する。
【0019】
第1液体供給部31は、予め冷却された液体を基板9の上面91の中央部に向けて吐出する。また、第2液体供給部32から基板9の他方の主面92(以下、「下面92」という。)の中央部に向けて、第1液体供給部31から供給される液体と同じ液体が吐出される。本実施の形態では、第1液体供給部31および第2液体供給部32から、約0.5℃に冷却された純水(好ましくは、脱イオン水(DIW:De Ionized Water))が基板9の上面91および下面92に供給される。
【0020】
凍結部4は、基板9の上面91に向けて冷却ガスを供給する。冷却ガスは、第1液体供給部31から供給される純水の凝固点である0℃よりも低い温度まで冷却されたガスである。凍結部4は、冷却ガスを吐出する冷却ガスノズル41と、冷却ガスノズル41を回転軸421を中心として水平に回動するノズル回動機構42とを備える。ノズル回動機構42は、回転軸421から水平方向に延びるとともに冷却ガスノズル41が取り付けられるアーム422を備える。冷却ガスとしては、冷却された窒素(N)ガスが用いられる。冷却ガスの温度は、好ましくは、−100℃〜−20℃であり、本実施の形態では、約−50℃である。
【0021】
加熱液供給部6は、基板9の上面91の中央部に、加熱された液体である加熱液を供給する。図1では、図示の都合上、加熱液供給部6を第1液体供給部31の上方に描いているが、実際には、第1液体供給部31が基板9の上方から外側に退避した状態で、加熱液供給部6が基板9の外側から上方へと移動する。また、第1液体供給部31が基板9の上方に位置する際には、加熱液供給部6が基板9の上方から外側に退避する。加熱液としては、常温よりも高い温度まで加熱された純水(好ましくは、脱イオン水)が用いられる。加熱液の温度は、好ましくは50℃〜90℃であり、本実施の形態では、約80℃である。
【0022】
図2は、基板処理装置1における基板9の処理の流れを示す図である。基板処理装置1では、まず、基板9がチャンバ7内に搬入されて基板保持部2により保持され、制御部8の制御により、基板回転機構5による基板9の回転が開始される(ステップS11)。基板9の回転数は、例えば、300rpm〜900rpmであり、本実施の形態では400rpmである。
【0023】
続いて、制御部8により第1液体供給部31および第2液体供給部32が制御され、第1液体供給部31から基板9の上面91に対する純水の供給が開始され、第2液体供給部32から基板9の下面92に対する純水の供給が開始される(ステップS12,S13)。基板9の上面91および下面92に供給された純水は、基板9の回転により、基板9の中央部から外縁部に向かって上面91および下面92の全面に亘って拡がり、基板9のエッジから外側へと飛散する。基板9から飛散した純水は、カップ部21により受けられて回収される。
【0024】
基板処理装置1では、第1液体供給部31および第2液体供給部32からの純水の供給が所定の時間だけ継続され、基板9の温度が、第1液体供給部31および第2液体供給部32から供給される純水とほぼ同じ温度まで冷却される(ステップS14)。以下の説明では、ステップS14における基板9の冷却を、「予備冷却」という。本実施の形態では、予備冷却により、基板9全体が約0.5℃まで冷却される。
【0025】
その後、基板回転機構5による基板9の回転数が減少し、基板9の予備冷却時よりも小さい回転数に変更される。基板9の回転数は、例えば、50rpm〜300rpmであり、本実施の形態では80rpmである。続いて、第1液体供給部31から基板9の上面91への純水の供給が停止される(ステップS15)。基板処理装置1では、低速にて回転する基板9の上面91において、上面91上に残っている純水の一部が基板9の中央部からエッジへと向かい、基板9から外側へと飛散する。そして、基板9の上面91上には、純水の薄い液膜が形成される(ステップS16)。液膜の厚さは、基板9の上面91の全面に亘っておよそ均一であり、本実施の形態では、約50μmである。なお、液膜の厚さは必ずしも均一である必要はない。
【0026】
基板処理装置1では、基板9の上面91上に液膜が形成される際にも、第2液体供給部32により、回転中の基板9の下面92に純水が継続的に供給され、基板9の下面92が冷却される。換言すれば、第2液体供給部32は、冷却された冷却用液体を液膜形成中の基板9の下面92に供給し、基板9を冷却する冷却部である。
【0027】
液膜の形成が終了すると、第2液体供給部32からの純水の供給が停止される(ステップS17)。続いて、制御部8の制御により、凍結部4のノズル回動機構42による冷却ガスノズル41の回動が開始され、基板9の中央部とエッジとの間で冷却ガスノズル41が往復移動を繰り返す。そして、基板処理装置1の外部に設けられた冷却ガス供給源から冷却ガスノズル41へと冷却ガスが供給され、冷却ガスノズル41から回転中の基板9の上面91に向けて供給される。これにより、基板9の上面91の全面に亘って冷却ガスが供給され、上面91上の液膜が冷却されて凍結する(ステップS18)。以下、凍結した液膜を「凍結膜」とも呼ぶ。なお、基板処理装置1では、基板9の中央部の上方にて停止した冷却ガスノズル41から冷却ガスの供給が行われ、基板9の回転により冷却ガスが基板9の中央部から外縁部へと拡がることにより凍結膜が形成されてもよい。
【0028】
基板9上では、基板9とパーティクル等との間に浸入した純水が凍結(凝固)して体積が増加することにより、パーティクル等が基板9から微小距離だけ浮き上がる。その結果、パーティクル等と基板9との間の付着力が低減され、パーティクル等が基板9から脱離する。また、純水が凍結する際に、基板9の上面91に平行な方向に体積が増加することによっても、基板9に付着しているパーティクル等が基板9から剥離する。
【0029】
凍結膜の形成が終了すると、凍結部4からの冷却ガスの供給が停止され、冷却ガスノズル41が基板9の上方から外側に移動する。続いて、基板回転機構5による基板9の回転数が増加し、凍結膜の形成時よりも大きい回転数に変更される。基板9の回転数は、例えば、1500rpm〜2500rpmであり、本実施の形態では2000rpmである。
【0030】
次に、制御部8により加熱液供給部6が制御され、加熱液供給部6から基板9の上面91に向けて加熱液が供給される。加熱液は、基板9の回転により、基板9の中央部から外縁部に向かって上面91の全面に亘って拡がる。これにより、上面91上の凍結膜が急速に解凍され(すなわち、液化され)、加熱液と共に基板9のエッジから外側へと飛散する(ステップS19)。基板9の上面91に付着していたパーティクル等は、基板9上から飛散する液体と共に基板9上から除去される。基板9上から外側へと飛散した液体は、カップ部21により受けられて回収される。基板処理装置1では、加熱液供給部6は、基板9上の凍結膜に解凍用液体である加熱液を供給して凍結膜を除去する凍結膜除去部の役割を果たす。
【0031】
凍結膜の除去が終了すると、図示省略のリンス液供給部から基板9の上面91上にリンス液(例えば、常温の脱イオン水)が供給され、基板9のリンス処理が行われる(ステップS20)。リンス処理中の基板9の回転数は、好ましくは、300rpm〜1000rpmであり、本実施の形態では、800rpmである。その後、基板9の回転数を1500rpm〜3000rpm(本実施の形態では、2000rpm)に変更し、基板9の回転により、基板9上のリンス液を除去する乾燥処理が行われる(ステップS21)。基板9の乾燥処理が終了すると、基板回転機構5による基板9の回転が停止する(ステップS22)。
【0032】
以上に説明したように、基板処理装置1では、基板9の上面91に液膜が形成される際に、回転中の基板9の下面92が第2液体供給部32により冷却される。これにより、液膜形成時における基板9および液膜の温度上昇が抑制される。その結果、凍結部4により冷却された際に、液膜の凍結に要する時間を短くすることができる。また、凍結部4からの冷却ガスの温度を高くしても迅速に液膜を凍結することができる。このため、冷却ガス供給源から冷却ガスノズル41へと冷却ガスを供給する配管等の断熱設備を簡素化することができる。その結果、凍結部4による液膜の凍結に要する冷却コストを抑制することができる。
【0033】
基板処理装置1では、第2液体供給部32から基板9の下面92への純水の供給は、凍結部4による基板9への冷却ガスの供給が開始される直前まで行われることが好ましい。これにより、基板9および液膜の温度を低く維持した状態で液膜の凍結を開始することができる。
【0034】
ところで、液膜の形成時に基板の下面の冷却が行われない基板処理装置(以下、「比較例の基板処理装置」という。)では、液膜を形成するための基板の回転時間、すなわち、液膜の形成時間が長くなると、基板の周囲のガス等から基板および液膜に流入する熱量が増大し、基板および液膜の温度が上昇してしまう。
【0035】
図3は、比較例の基板処理装置における液膜の形成時間と、基板上の所定位置における液膜の厚さおよび液膜の温度との関係を示す図である。図3の横軸は液膜の形成時間を示し、左側および右側の縦軸はそれぞれ、基板上の所定位置における液膜の厚さ、および、液膜の温度を示す。図3中の実線95は液膜の厚さを示し、破線96は液膜の温度を示す。
【0036】
図3に示すように、液膜の形成時間を長くすると、液膜を薄くすることはできるが、液膜の温度が上昇してしまい、液膜の凍結に要する時間が長くなったり、凍結部から供給される冷却ガスの温度を非常に低くする必要が生じる。このため、比較例の基板処理装置では、液膜の形成時間を十分に確保することができず、液膜を所望の厚さまで薄くすることが難しい。液膜の厚さは、基板からのパーティクル等の除去率に関係しており、液膜の厚さが所望の厚さから大きくずれると、パーティクル等の除去率が低下してしまう。
【0037】
これに対し、本実施の形態に係る基板処理装置1では、上述のように、液膜の形成時に基板9を下面92から冷却して基板9および液膜の温度上昇を抑制することができる。このため、液膜の形成時間を十分に確保することができ、所望の厚さの液膜を形成することができる。その結果、基板9からのパーティクル等の除去率を向上することができる。
【0038】
基板処理装置1では、第2液体供給部32により冷却用液体である純水が基板9の下面92に供給されることにより、冷却ガスを基板9の下面92に供給して冷却する場合に比べて、液膜形成時の基板9の冷却を効率良く行うことができる。なお、液膜の凍結時には、基板9の下面92に残っている純水も上面91上の液膜と共に凍結させることになるが、基板9の熱容量が、上面91および下面92上の純水の熱容量に比べて大きいため、下面92上の純水を凍結するために必要となる熱量は、基板9の温度上昇の抑制により不要となった熱量に比べて小さくなる。したがって、基板処理装置1において液膜の凍結に必要な熱量は、比較例の基板処理装置において液膜の凍結に必要な熱量よりも小さくてすむ。
【0039】
基板処理装置1では、第2液体供給部32から下面92に供給される液体が、第1液体供給部31から上面91に供給される液体と同じであるため、第1液体供給部31および第2液体供給部32の配管の一部を共通にしたり、当該配管の冷却機構を共通化する等、基板処理装置1の構成を簡素化することができる。また、基板9の上面91および下面92に供給された液体をまとめて回収して基板処理装置1の処理に再利用することもできる。
【0040】
上述のように、基板9上の凍結膜は、体積膨張率が比較的大きい純水により形成されるため、他の液体により凍結膜を形成する場合に比べて、パーティクル等の基板9に対する付着力をより一層低減することができる。その結果、基板9からのパーティクル等の除去率を向上することができる。また、加熱液を供給して基板9から凍結膜を除去することにより、基板9に付着しているパーティクル等を凍結膜と共に効率良く除去することができる。基板処理装置1では、加熱液を、第1液体供給部31および第2液体供給部32から供給される液体と同じ液体とすることにより、凍結膜の解凍時に基板9から飛散する液体も回収して再利用することができる。
【0041】
本発明の関連技術に係る基板処理装置では、液膜形成中の基板9を冷却する冷却部として、第2液体供給部32に代えて、基板9の下面92に向けて冷却されたガス(例えば、窒素ガス)を供給する機構が設けられてもよい。このように、基板9の冷却にガスが利用されることにより、液膜形成時よりも基板9の回転数が小さい凍結膜形成時において、基板9の下面92から純水が上面91へと回り込んで凍結してしまうおそれがなく、凍結膜の膜厚の均一性を向上することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0043】
基板処理装置1の第2液体供給部32から基板9の下面92に供給される液体は、純水には限定されない。例えば、冷却された炭酸水や水素水等が、第2液体供給部32から基板9の下面92に供給されてもよい。また、イソプロピルアルコールやフッ化水素酸等のように、第1液体供給部31から供給される純水よりも凝固点が低い液体が、純水の凝固点以下の温度まで冷却された状態で基板9の下面92に供給されてもよい。あるいは、凝固点以下の温度まで過冷却された純水が、基板9の下面92に供給されてもよい。このように、第1液体供給部31から供給される純水の凝固点以下の低温の液体が基板9の下面92に供給されることにより、液膜形成時における基板9および液膜の温度上昇をより一層抑制することができる。なお、過冷却とは、物質の相変化において、変化するべき温度以下でもその状態が変化しないでいる状態を指す。
【0044】
基板処理装置1では、第1液体供給部31から基板9の上面91に供給される液体は、必ずしも、予め冷却された純水である必要はなく、例えば、常温の純水が基板9の上面91に供給され、当該純水により液膜が形成されてもよい。この場合、第1液体供給部31に純水を供給する機構の冷却設備や断熱設備等を省略することができ、基板処理装置1の構造を簡素化することができる。また、第1液体供給部31から、純水以外の液体(炭酸水、水素水、SC1(アンモニア過酸化水素水)、ターシャリーブタノール(TBA)等)が供給され、当該液体により液膜が形成されてもよい。
【0045】
凍結部4による液膜の凍結は、液膜を形成する液体の凝固点よりも低温の窒素以外の冷却ガス(例えば、酸素、空気、オゾン、アルゴン)が、基板9の上面91に供給されることにより行われてもよい。液膜の凍結は、液膜を形成する液体の凝固点よりも低温の冷却ガスや液体が、基板9の下面92に供給されることにより行われてもよい。また、加熱液供給部6では、純水以外の様々な液体が、解凍用液体として常温よりも高い温度まで加熱され、基板9の上面91に供給されてもよい。また、解凍用液体として常温以下の液体が利用されてもよい。
【0046】
基板処理装置1により処理される基板は、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等であってもよい。
【0047】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0048】
1 基板処理装置
2 基板保持部
4 凍結部
5 基板回転機構
6 加熱液供給部
7 チャンバ
9 基板
31 第1液体供給部
32 第2液体供給部
91 上面
92 下面
S11〜S22 ステップ
図1
図2
図3