特許第5919006号(P5919006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北興化学工業株式会社の特許一覧

特許5919006散布性および付着性の改良された水性懸濁農薬製剤
<>
  • 特許5919006-散布性および付着性の改良された水性懸濁農薬製剤 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919006
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】散布性および付着性の改良された水性懸濁農薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20160428BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 57/14 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 43/70 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 37/22 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 43/88 20060101ALI20160428BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20160428BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20160428BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20160428BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   A01N25/04 102
   A01N25/00 101
   A01N43/16 A
   A01N57/14 E
   A01N43/70
   A01N37/22
   A01N43/90 102
   A01N43/88 101
   A01N37/18 A
   A01M7/00 Z
   A01P3/00
   A01P7/04
   A01P13/00
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-17215(P2012-17215)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-155137(P2013-155137A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年10月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成23年9月29日〜30日 日本農薬学会 農薬製剤・施用法研究会主催の「第31回農薬製剤・施用法シンポジウム講演要旨集」において文書をもって発表
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242002
【氏名又は名称】北興化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蛎崎 洋
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒津 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 佳彦
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−269838(JP,A)
【文献】 特開2004−026845(JP,A)
【文献】 特開平09−075786(JP,A)
【文献】 特開2010−037200(JP,A)
【文献】 特開2003−073229(JP,A)
【文献】 特表平10−503123(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/061043(WO,A1)
【文献】 特開平10−117659(JP,A)
【文献】 特開平11−169055(JP,A)
【文献】 特開2013−155136(JP,A)
【文献】 藤山薫,「農薬液体製剤の物性評価方法について−回転粘度計におけるレオロジー測定−」,第28回農薬製剤・施用法シンポジウム講演要旨,日本農薬学会,2008年,第28−33頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A01M
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05〜10.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度を5〜50mPa・sに調製する工程を有することを特徴とする、水性懸濁農薬製剤の調製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水性懸濁農薬製剤の調製法で調製された水性懸濁農薬製剤の原液を、蓄圧式散布機を使用して、蓄圧式散布機内の圧力が0.05MPa以下の低圧で、湛水下水田に直接散布することを特徴とする、散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧式散布機からの散布飛距離が長く、薬剤が稲体へ付着しにくいため散布された薬剤が水田中にロスなく投下され、かつ水田中へ農薬活性成分が速やかに拡散する水性懸濁農薬製剤、およびその水性懸濁農薬製剤の原液を湛水下水田に直接散布する散布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湛水下水田への水性懸濁農薬製剤の散布方法としては、田植え機に装着した散布装置から田植えと同時に水性懸濁農薬製剤を水田中に滴下する方法、水性懸濁農薬製剤の入った容器を畦畔から手振りすることで水田中に散布する方法などがある。しかし、田植え機に装着した散布装置から水性懸濁農薬製剤を水田中に滴下する方法は、田植え前、あるいは田植え後に散布する薬剤には不適であり、また、容器を畦畔から手振りすることで散布する方法は、水性懸濁農薬製剤の畦畔からの散布飛距離が短く、例えば短辺30m以上の面積の大きい水田へ処理する場合には、水田中に有効成分が均一に拡散しきれないため、水田中に入り込んで手振り散布しなければならないという問題がある。
【0003】
そこで、必ずしも田植えと同時に処理する必要がなく、面積の大きい水田に処理する場合でも水田中に有効成分を均一に拡散させることができる方法として、φ1〜2mm程度の口径を有するノズルを装着した蓄圧式散布機を用いて散布する方法が提案されている。この方法は、畦畔からの水性懸濁農薬製剤の散布飛距離を手振り散布に比べ長くすることができるため、水田中に有効成分を拡散させやすくなる。
【0004】
このような蓄圧式散布機を用いて水性懸濁農薬製剤を散布する技術としては、濃厚な液体農薬を水田の代掻時から田植え後の水稲の幼苗期に、薬液ボトルとφ0.5〜3mm程度のノズルが装着された水テッポウ型散布機により散布する方法(特許文献1参照)、水和剤もしくは顆粒水和剤を水に懸濁させた形態、フロアブル形態または乳剤形態の水稲用液状農薬を直射的に湛水下水田へ散布する方法(特許文献2参照)、除草活性成分と水を必須成分として含有する除草剤フロアブルを、原液またはこれを水で希釈して耐圧容器に入れて1〜5kg/cmで加圧し、φ1〜2mmの細孔を有するノズルを用いて散布することを特徴とする、湛水田における除草剤フロアブルの散布方法(特許文献3参照)があげられる。
【0005】
しかしながら、これらの散布方法での水性懸濁農薬製剤の散布飛距離は、散布される水性懸濁農薬製剤の種類に左右され、水性懸濁農薬製剤の種類によっては散布飛距離が短いなどの問題が発生する。特許文献3については、フロアブル原液の粘度についても10〜800mPa・sの範囲との記載があるが、ずり速度との関係は明らかでなく、また、耐圧容器内の圧力は1〜5kg/cm(約0.1〜0.5Mpa)とする必要があり、散布容器内の圧力が低くなると散布飛距離が短くなるため、容器内圧力を高く維持するために頻繁にポンプを作動させる必要があるなどの問題がある。
【0006】
一方で、水田中への有効成分の速やかな拡散あるいは包装容器からの水性懸濁農薬製剤の良好な吐出性のために、製剤粘度についても種々の検討がなされおり、特定の農薬活性成分を含有し粘度250〜30センチポイズ(ずり速度38.40sec−1・20℃)となる物性を有することを特徴とする水田用懸濁状除草剤組成物(特許文献4、5参照)、農薬活性成分、増粘剤等よりなり、20℃における粘度が200〜1000mPa・sであり、かつSVI値が2〜10である水性懸濁農薬製剤を非透水性紙製の成形容器に充してなることを特徴とする水性懸濁農薬製剤包装物、および包装物に設けた細孔より水性懸濁農薬製剤を直接湛水下水田に滴下することを特徴とする散布方法(特許文献6、7参照)が提案されている。
しかしながら、これらの製剤粘度に関する技術は、蓄圧式散布機からの散布飛距離を想定したものではなく、粘度測定時のずり速度も0〜38.40sec−1であり、湛水中への水性懸濁農薬製剤の速やかな分散や成型容器からの吐出量の均一性を改良したものである。
【0007】
また、水性懸濁農薬製剤の水稲への付着性の改良(付着しにくくする)についても種々の検討がなされており、除草活性成分、保護コロイド剤(ポリビニルアルコール、水溶性セルロースエーテルなど)、水よりなることを特徴とする湛水下水田の直接散布用水性懸濁農薬製剤(特許文献8〜12参照)が提案されている。
しかしながら、これらの技術は薬剤が稲体へ付着しにくくすることはできるが、蓄圧式散布機からの散布飛距離は考慮されておらず、面積の大きい水田へ処理する場合には、水田中に農薬活性成分が均一に拡散しきれないなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−54638号公報
【特許文献2】特開平10−117659号公報
【特許文献3】特開平11−169055号公報
【特許文献4】特開昭62−84002号公報
【特許文献5】特開昭62−84003号公報
【特許文献6】特開平10−316501号公報
【特許文献7】特開平10−316502号公報
【特許文献8】特開平10−251107号公報
【特許文献9】特開平10−316503号公報
【特許文献10】特開平11−158006号公報
【特許文献11】特開平10−287503号公報
【特許文献12】特開2004−26845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、蓄圧式散布機からの散布飛距離が長く、畦畔から水性懸濁農薬製剤を散布した場合でも面積の大きい水田に有効成分を均一に拡散させることができ、かつ薬剤が稲体へ付着しにくいため散布された薬剤を水田中にロスなく投下させることができる水性懸濁農薬製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討し、農薬活性成分、保護コロイド剤、増粘剤および水を含有し、ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする水性懸濁農薬製剤が、蓄圧式散布機からの散布飛距離が長く、良好な拡散性を維持しつつ、かつ薬剤が稲体へ付着しにくくなることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明を要約すると次のようになる。
〔1〕農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05〜10.0重量部)、増粘剤および水を含有し、ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度が5〜50mPa・sであることを特徴とする、水性懸濁農薬製剤。
〔2〕農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05〜10.0重量部)、増粘剤および水を含有し、ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度を5〜50mPa・sに調製する工程を有することを特徴とする、水性懸濁農薬製剤。
〔3〕保護コロイド剤がポリビニルアルコールまたは水溶性セルロースエーテルであることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の水性懸濁農薬製剤。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の水性懸濁農薬製剤の原液を、蓄圧式散布機を使用して湛水下水田に直接散布することを特徴とする、散布方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性懸濁農薬製剤は、蓄圧式散布機内の圧力が0.10Mpa以下の低圧であっても散布飛距離が長く、畦畔から水性懸濁農薬製剤を散布した場合でも、面積の大きい水田に有効成分を均一に拡散させることができ、かつ薬剤が稲体へ付着しにくいため散布された薬剤を水田中にロスなく投下させることができる。
【0013】
したがって、蓄圧式散布機内の圧力が低い場合であっても一定の散布飛距離を維持できるため、高齢者や女性でも容易に蓄圧式散布機を加圧させ作業することが可能であり、散布中に蓄圧式散布機内の圧力が多少低下しても散布飛距離は維持できるため、散布作業中に蓄圧式散布機を加圧する回数も低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の水性懸濁農薬製剤について詳細に説明する。本発明の水性懸濁農薬製剤を構成する成分、製剤の調製方法、製剤の使用態様などは以下のとおりである。
【0015】
<構成成分>
(1)農薬活性成分
本発明で使用できる農薬活性成分は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調節剤などの一般に農薬の活性成分として使用されるものであればよい。また、農薬活性成分を2種以上併用しても何らかまわない。このような農薬活性成分としては次のものが挙げられる。
【0016】
例えば、殺虫剤の例としては、有機リン系、カーバメート系、ネオニコチノイド系、ピレスロイド系、マクロライド系、クロロニコチニル系、ピリジンアゾメチン系、チオウレア系、オキサダイアジン系、フェニルピラゾール系、ネライストキシン系、ベンゾイルヒドラジド系およびベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤、天然殺虫剤、殺ダニ剤、生物農薬などが挙げられる。
【0017】
例えば、殺菌剤の例としては、無機銅類、有機銅類、無機硫黄剤、有機硫黄剤、有機リン系、フタリド系、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系、トリアゾール系、イミダゾール系、メトキシアクリレート系、ストロビルリン系、アニリノピリミジン系、ジチオラン系、キノキサリン系、アミノピリミジン系、フェニルピロール系、トリアジン系、シアノアセトアミド系、グアニジン系、ヒドロキシアニリド系の殺菌剤、抗生物質系殺菌剤、天然物殺菌剤、生物農薬などが挙げられる。
【0018】
例えば、除草剤の例としては、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系、尿素系、スルホニルウレア系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、脂肪酸系、アミノ酸系、ニトリル系、シクロヘキサンジオン系、フェニルフタルイミド系、有機リン系、シネオール系、インダンジオン系、ベンゾフラン系、トリアゾロピリミジン系、オキサジノン系、アリルトリアゾリノン系、イソウラゾール系、ピリミジニルチオフタリド系、トリケトン系、トリアゾリノン系、テトラゾリノン系、オキサゾリジンジオン系、無機除草剤、生物農薬などが挙げられる。
例えば、植物成長調節剤の例としては、エチレン剤、オーキシン剤、サイトカイニン剤、ジベレリン剤などが挙げられる。
【0019】
なお、これらに含まれる個々の具体的な農薬活性成分は、例えば「農薬ハンドブック2011年版」(社団法人 日本植物防疫協会、平成23年2月25日発行)、「SHIBUYA INDEX 9th Edition」(平成13年12月15日発行)、「The Pesticide Manual Eleventh Edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されており、また、上記以外の公知あるいは、今後開発される農薬活性成分を適用することもでき、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
上記農薬活性成分は、費用対効果の観点から水性懸濁農薬製剤中に、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜45重量%の範囲で添加することができる。
【0020】
(2)保護コロイド剤
本発明において、保護コロイド剤を添加することによって、製剤の稲体へ付着性が改良され、また農薬活性成分の拡散性が良好に維持される。本発明で使用できる保護コロイド剤は、例えば、ポリビニルアルコール、水溶性セルロースエーテル(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、アラビアガム、水溶性大豆多糖類(商品名ソヤファイブ)、ゼラチン、アルブミン、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
【0021】
また、これら保護コロイド剤の製剤中での含有量は、水性懸濁農薬製剤中に通常0.05〜10重量%であり、好ましくは0.1〜3.0重量%である。含有量が0.05重量%未満になると水性懸濁農薬製剤が稲体へ付着しやすくなり、10重量%より多くなると水性懸濁農薬製剤が水田中へ散布された後、農薬活性成分が均一に拡散しにくくなるなどの問題が発生するためである。
また、本発明では保護コロイド剤として、ポリビニルアルコールまたは水溶性セルロースエーテルを使用すると、水性懸濁農薬製剤の稲体への付着性、水田中への農薬活性成分の拡散性がより優れたものになる。
【0022】
(3)増粘剤
本発明において、増粘剤は製剤の粘度調製、および製剤の貯蔵安定性のために添加される。本発明で使用できる増粘剤は一般に使用されるものであればよく、例えばキサンタンガム、ラムザンガム、プルラン、トラガントガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、ウエランガム、カゼイン、デキストリン、ダイユータンガム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウムマグネシウム、含水無晶形二酸化ケイ素、結晶セルロースなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。また、これら増粘剤の製剤中での含有量は特に限定されないが、水性懸濁農薬製剤中に、通常0.005〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%である。
【0023】
(4)その他の成分
本発明において、本発明の要件である特定のずり速度における粘度を超えないこと、および、付着性などの発明の効果を損なわないことを限度に必要に応じて、上記必須成分のほかにその他の成分を添加しても構わない。その他の成分としては、例えば消泡剤としてシリコン系、脂肪酸系物質など、凍結防止剤としてエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど、防腐防バイ剤としてソルビン酸カリウム、p−クロロ−メタキシレノール、p−オキシ安息香酸ブチル、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンなど、農薬活性成分の安定化剤として酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤などが挙げられるが、ここに例示した成分に限定されるものではない。
【0024】
<ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度>
本発明の水性懸濁農薬製剤は、ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度を5〜50mPa・sとする必要がある。ずり速度5000〜10000(1/s)の範囲は、先端φ1〜2mmの細孔を有するノズルを装着したピストン形式の蓄圧式散布機を高齢者や女性が容易に加圧可能な圧力(約0.05〜0.10MPa)にて、水性懸濁農薬製剤を散布する場合のノズル先端におけるずり速度範囲であり、このずり速度範囲における粘度が50mPa・sより高い製剤では、蓄圧式散布機からの散布飛距離が短く、面積の大きい水田へ散布する場合には、水田中に農薬活性成分が均一に拡散しきれないなどの問題が生じるためである。また、ずり速度が5mPa・s未満になると散布時に薬液が霧状になってしまい、散布飛距離が低下し、更にはドリフトの恐れも生じるためである。
【0025】
ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の水性懸濁農薬製剤の粘度は、増粘剤の種類によって一義的に決まるものではなく、農薬活性成分、保護コロイド剤、増粘剤などのそれぞれの種類と添加量によって変わるものであるため、本発明においてはこれらを明細書に記載の含有量の範囲で適宜組み合わせて水性懸濁農薬製剤の粘度を5〜50mPa・sとなるように調整すればよい。
【0026】
<水性懸濁農薬製剤の調製方法>
本発明の水性懸濁農薬製剤の調製方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって調製できる。
農薬活性成分、保護コロイド剤、増粘剤および必要に応じてその他の成分を、水に添加し混合する。なお、農薬活性成分を予めJet粉砕機などで微粉砕化して使用してもよく、また、農薬活性成分、保護コロイド剤、増粘剤および必要に応じてその他の成分を水に添加後、ガラスビーズなどを用いて湿式粉砕することによって調製してもよい。また、農薬活性成分を高沸点溶剤に溶解して調製してもよい。
調製した水性懸濁農薬製剤のずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度は、測定し確認する。ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度の測定は、レオメーターを用いて計ればよい。
【0027】
<水性懸濁農薬製剤の使用態様>
本発明の水性懸濁農薬製剤は、原液のまま、蓄圧式散布機を用いて畦畔から湛水下水田へ直接散布する。なお、水性懸濁農薬製剤を、水で1.5から10倍程度に希釈して蓄圧式散布機を用いて散布しても何ら問題ない。蓄圧式散布機は、先端φ1〜2mmの細孔を有するノズルを装着することが望ましい。
本発明の水性懸濁農薬製剤の湛水下水田への10aあたりの散布量は、通常0.1〜3.0リットル、好ましくは0.2〜2.0リットル、更に好ましくは0.3〜1.0リットルである。
【実施例】
【0028】
次に、実施例にて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。従って、農薬活性成分、保護コロイド剤、増粘剤を前述した種々のものに置き換えて、以下の実施例と同様な方法で調製することにより、蓄圧式散布機からの散布飛距離が長く、面積の大きい水田に有効成分を均一に拡散させることができ、かつ薬剤が稲体へ付着しにくい水性懸濁農薬製剤とすることができる。
なお、実施例中の「部」とあるのは、すべて重量部を示す。
【0029】
また、ずり速度5000〜10000(1/s)における20℃の粘度は、レオメーター(RHEOSTRESS 6000(Thermo社製))を使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)、5000(1/s)および10000(1/s)の粘度を測定した。ずり速度38.4(1/s)は、本願発明におけるずり速度の範囲ではないが、B型粘度計でも測定可能なずり速度の範囲から、一般的なずり速度の対照として測定した。あわせて5000〜10000(1/s)のずり速度全域の粘度を確認した。
【0030】
[実施例1]
水89.80部にポリビニルアルコール1.00部、カスガマイシン原体4.00部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌し溶解する。その後、大豆油5.00部を添加しTKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)にて混合し、キサンタンガム0.20部を添加し、スリーワンモーター(HEIDON製)でよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は200mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は40mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は35mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0031】
[実施例2]
実施例1のポリビニルアルコール1.00部をアラビアガム2.00部、キサンタンガム0.20部を0.10部、水89.80部を88.90部とした以外は実施例1に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は220mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は38mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は37mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0032】
[実施例3]
実施例1のポリビニルアルコール1.00部をヒドロキシプロピルメチルセルロース1.50部、キサンタンガム0.20部をコロイド性含水ケイ酸アルミニウム0.30部とウエランガム0.10部、水89.80部を89.10部とした以外は実施例1に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は180mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は31mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は30mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0033】
[実施例4]
実施例1のポリビニルアルコール1.00部を5.00部、キサンタンガム0.20部を0.10部、水89.80部を85.90部とした以外は実施例1に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は190mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は42mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は40mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0034】
[実施例5]
実施例1のポリビニルアルコール1.00部を0.05部、水89.80部を90.75部とした以外は実施例1に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は275mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は38mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は35mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0035】
[実施例6]
水76.85部にポリビニルアルコール3.00部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、MEP原体20.00部を添加しTKホモミキサーにて混合し、キサンタンガム0.15部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は280mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は40mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は38mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0036】
[実施例7]
実施例6のポリビニルアルコール3.00部をメチルセルロース0.10部、キサンタンガム0.15部をラムザンガム0.10部、水76.85部を79.80部とした以外は実施例6に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は350mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は49mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は46mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0037】
[実施例8]
実施例6のポリビニルアルコール3.00部を水溶性大豆多糖類3.00部、キサンタンガム0.15部を0.05部、水76.85部を76.90部とした以外は実施例6に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は250mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は45mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は41mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0038】
[実施例9]
水94.00部にヒドロキシエチルセルロース2.50部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、シメトリン原体3.00部、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム0.40部を添加しTKホモミキサーにて混合し、キサンタンガム0.10部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は220mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は35mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は32mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0039】
[実施例10]
水95.70部にポリビニルアルコール1.00部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、シメトリン原体3.00部、結晶セルロース0.30部を添加しTKホモミキサーにて混合して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は380mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は48mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は45mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0040】
[実施例11]
水82.90部にアラビアガム7.00部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、ブタクロール原体10.0部を添加しTKホモミキサーにて混合し、キサンタンガム0.10部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は300mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は43mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は41mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0041】
[実施例12]
実施例11のアラビアガム7.00部をポリビニルアルコール2.00部、キサンタンガム0.10部を0.15部、水82.90部を87.85部とした以外は実施例11に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は230mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は39mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は37mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0042】
[実施例13]
水70.80部にポリビニルアルコール1.00部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、ピロキロン原体24.00部とエチレングリコール4.00部を添加しTKホモミキサーにて混合し、ラムザンガム0.20部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は180mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は33mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は31mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0043】
[実施例14]
実施例13のポリビニルアルコール1.00部をアラビアガム2.00部、ラムザンガム0.20部を0.15部、水70.80部を69.85部とした以外は実施例13に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は195mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は36mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は34mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0044】
[実施例15]
水73.85部にアラビアガム2.00部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、ブプロフェジン原体20.00部とプロピレングリコール4.00部を添加しTKホモミキサーにて混合し、ウエランガム0.15部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は210mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は38mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は36mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0045】
[実施例16]
実施例15のアラビアガム2.00部をヒドロキシプロピルメチルセルロース1.50部、水73.85部を74.35部とした以外は実施例15に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は200mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は36mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は35mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0046】
[実施例17]
水81.35部にポリビニルアルコール1.50部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌し溶解する。その後、ブロモブチド原体17.00部を添加しTKホモミキサーにて混合し、結晶セルロース0.15部を添加し、スリーワンモーターでよく攪拌して、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は325mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は42mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は41mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0047】
[実施例18]
実施例17のポリビニルアルコール1.50部を水溶性大豆多糖類3.00部、結晶セルロース0.15部をラムザンガム0.10部、水81.35部を79.90部とした以外は実施例17に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は300mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は40mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は39mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0048】
[比較例1]
実施例1のポリビニルアルコール1.00部をポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル1.00部とした以外は実施例1に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は210mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は38mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は36mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0049】
[比較例2]
実施例1のキサンタンガム0.20部を0.30部、水89.80部を89.70部とした以外は実施例1に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は270mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は57mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は55mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0050】
[比較例3]
実施例2のアラビアガム2.00部を4.00部、水88.90部を86.90部とした以外は実施例2に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は250mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は78mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は64mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0051】
[比較例4]
実施例7のメチルセルロース0.10部をポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー5.00部、水79.80部を74.90部とした以外は実施例7に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は220mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は37mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は34mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0052】
[比較例5]
実施例6のポリビニルアルコール3.00部を5.00部、キサンタンガム0.15部を0.10部、水76.85部を74.90部とした以外は実施例6に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は320mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は75mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は71mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0053】
[比較例6]
実施例9のコロイド性含水ケイ酸マグネシウム0.40部を0.30部、キサンタンガム0.10部を0.20部とした以外は実施例9に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は220mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は61mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は57mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0054】
[比較例7]
実施例10のポリビニルアルコール1.00部をポリオキシエチレンアルキルエーテル0.50部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.50部、結晶セルロース0.30部を0.50部、水95.70部を95.50部とした以外は実施例10に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は280mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は60mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は55mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0055】
[比較例8]
実施例11のアラビアガム7.00部を15.00部、キサンタンガム0.10部を0.05部、水82.90部を74.90部とした以外は実施例11に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は400mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は80mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は75mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0056】
[比較例9]
実施例12のポリビニルアルコール2.00部を3.00部、キサンタンガム0.15部を結晶セルロース0.50部、水87.85部を86.50部とした以外は実施例12に準じて調製し、水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は330mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は72mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は65mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0057】
[比較例10]
実施例13のポリビニルアルコール1.00部を15.00部、水70.80部を56.80部とした以外は実施例13に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は450mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は73mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は71mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0058】
[比較例11]
実施例13のポリビニルアルコール1.00部を除き、エチレングリコール4.00部をPOEスチリルフェニルエーテル1.00部、水70.80部を74.80部とした以外は実施例13に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は250mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は41mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は40mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0059】
[比較例12]
実施例15のアラビアガム2.00部を0.01部、水73.85部を75.84部とした以外は実施例15に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は150mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は25mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は22mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0060】
[比較例13]
実施例15のアラビアガム2.00部を13.00部、水73.85部を62.85部とした以外は実施例15に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は1122mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は96mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は94mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0061】
[比較例14]
実施例17のポリビニルアルコール1.50部を除き、POEアルキルエーテル0.50部とドデシルベンゼンスルホン酸Na0.50部を添加し、水81.35部を81.85部とした以外は実施例17に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は285mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は42mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は40mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に5〜50mPa・sであった。
【0062】
[比較例15]
実施例17の結晶セルロース0.15部をラムザンガム1.00部、水80.00部を80.50部とした以外は実施例17に準じて調製し、本発明の水性懸濁農薬製剤を得た。得られた水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、ずり速度38.4(1/s)の時は875mPa・s、ずり速度5000(1/s)の時は87mPa・s、ずり速度10000(1/s)の時は85mPa・sであった。なお、レオメーターにてずり速度5000〜10000(1/s)にずり速度を上げて測定している間の水性懸濁農薬製剤の20℃の粘度は、常に50mPa・sより高かった。
【0063】
次に、試験例により、本発明の水性懸濁農薬製剤の有用性を示す。
<試験例1 散布飛距離確認試験>
直噴専用の径1.0mmの丸孔を有するノズル(ミスターオートHS−401X:工進社製)を取り付けた5リットル容の蓄圧式散布機(ミスターオートHS−503W:工進社製)の容器内に実施例に準じて調製した水性懸濁農薬製剤2リットルを入れ、蓋を閉めて、ピストンポンプを上下させることで加圧した。蓄圧式散布機内の圧力を0.05MPa、0.10MPa、0.30MPaの3条件で水性懸濁農薬製剤を散布し、それぞれの条件における散布飛距離を測定した。結果は、表1、2のとおりである。
なお、蓄圧式散布機内の圧力を0.05MPa、0.10MPaにピストンポンプを用いて加圧するのは容易であったが、0.10MPa以上に加圧するためにはピストンポンプを上下させるのにかなりの労力が必要である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
<試験例2 水中拡散性試験>
水田に1.5m×15mの試験区を作り水深5cmとなるように水を入れた。その後、ピペットを用いて、実施例に準じて調製した水性懸濁農薬製剤11.25mlを高さ1m地点から図1のA点に滴下した。24時間経過後、A〜I点から採水し農薬活性成分濃度を測定し、水中拡散性を確認した。なお、水中拡散性は、次式のとおり、容器内に農薬活性成分が均一に拡散した場合の理論水中濃度に対する割合で示した。
【0067】
【数1】
【0068】
水中拡散性は、各地点(A〜Iの地点)の値が100%に近いほど良好となる。結果は表1、2のとおりである。
【0069】
<試験例3 稲体への付着性試験>
1/5000アールのワグネルポットに水田土壌を充填し、水を加えて化学肥料を混入し代かきを行った後、2.5葉期の水稲苗をポットあたり2本移植した。試験は1処理区3ポット(合計6本)で実施し、水稲移植5日後に実施例に準じて調製した水性懸濁農薬製剤50μLを水稲の第2葉の葉身中央部に葉面より1cmの高さからマイクロシリンジにて滴下して、葉身に水性懸濁農薬製剤が付着した稲体数を調査した。稲体に水性懸濁農薬製剤が付着しやすい場合は、水田中に所定量の薬量が投下されにくいことになる。結果は表1、2のとおりである。
【0070】
表1、2の内容から明らかなように、実施例1〜18の水性懸濁農薬製剤の散布飛距離は、蓄圧式散布機内の圧力が0.05MPaの場合でも6〜8mとなり散布飛距離が長く、農薬活性成分の水中での拡散性も良好に維持され、付着性試験も良好な結果であった。一方、ずり速度5000または10000(1/s)における20℃の粘度が50mPa・sより高い比較例2、3および5〜10、13、15の製剤の場合は、散布機内の圧力が0.3MPaと高いときは散布距離が8mと比較的良好な比較例製剤もあったが、圧力が0.05MPaの場合は、これらの比較例製剤は散布飛距離が2〜4mと短かった。また、保護コロイド剤の製剤重量部が0.05〜10.0重量部の範囲にない比較例8、12、13の製剤の場合は、拡散性がやや劣る結果となり、保護コロイド剤を使用していない比較例1、4、7、11および14の場合は、稲体への付着性が高くなり(6株すべてに付着)、実施例1〜18とは顕著な差が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、<試験例2 水中拡散試験>の模式図である。
図1